(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の排気により駆動される排気タービンと、前記排気タービン毎に設けられ、当該排気タービンにより駆動されて前記内燃機関へ給気するコンプレッサと、前記排気タービン及び前記コンプレッサと同軸で回転する回転機と、を備える複数の過給機を制御する制御装置であって、
前記過給機を回転させるために前記回転機に供給可能な電力を取得する電力取得部と、
前記過給機ごとに前記コンプレッサの状態量を取得する状態量取得部と、
前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記複数の過給機の各々がサージ領域にあるか否かを判定するサージ判定部と、
前記サージ判定部で前記複数の過給機のいずれかがサージ領域にある場合に、前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記電力取得部が取得した電力から前記過給機ごとの前記回転機に割り当てる電力を決定する電力決定部と
を備える制御装置。
前記電力決定部は、前記過給機ごとの前記コンプレッサの回転数の差が所定値以内である場合に、複数の過給機の組み合わせに係る全体の過給効率が向上するように、前記回転機に割り当てる電力を決定する
請求項2または請求項3に記載の制御装置。
内燃機関の排気により駆動される排気タービンと、前記排気タービン毎に設けられ、当該排気タービンにより駆動されて前記内燃機関へ給気するコンプレッサと、前記排気タービン及び前記コンプレッサと同軸で回転する回転機と、を備える複数の過給機を制御する制御方法であって、
前記過給機を回転させるために前記回転機に供給可能な電力を取得するステップと、
前記過給機ごとに前記コンプレッサの状態量を取得するステップと、
前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記複数の過給機の各々がサージ領域にあるか否かを判定するステップと、
前記サージ判定部で前記複数の過給機のいずれかがサージ領域にある場合に、前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記電力取得部が取得した電力を前記過給機ごとに分配するステップと
を有する制御方法。
内燃機関の排気により駆動される排気タービンと、前記排気タービン毎に設けられ、当該排気タービンにより駆動されて前記内燃機関へ給気するコンプレッサと、前記排気タービン及び前記コンプレッサと同軸で回転する回転機と、を備える複数の過給機を制御する制御装置のコンピュータを、
前記過給機を回転させるために前記回転機に供給可能な電力を取得する電力取得部、
前記過給機ごとに前記コンプレッサの状態量を取得する状態量取得部、
前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記複数の過給機の各々がサージ領域にあるか否かを判定するサージ判定部と、
前記サージ判定部で前記複数の過給機のいずれかがサージ領域にある場合に、前記状態量取得部が取得した状態量に基づいて、前記電力取得部が取得した電力から前記過給機ごとの前記回転機に分配する電力を演算する分配電力演算部
として機能させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、一実施形態における過給システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、情報の経路を実線で示し、電力の経路を一点鎖線で示し、吸排気の経路を二点鎖線で示している。
図1において、過給システム1は、制御装置100と、ハイブリッド過給機200−1〜200−n(nは、n≧2の整数)とを備える。ハイブリッド過給機200−i(iは、1≦i≦nの整数)は、排気タービン210−iと、コンプレッサ220−iと、発電機230−iと、軸240−iとを備える。
加えて、
図1には、エンジン910と、コンバータ920−1〜920−nと、系統連系インバータ930と、電力系統940と、上位装置950とが示されている。
【0017】
ハイブリッド過給機200−1〜200−nの各々は、空気の圧縮および発電を行う。
本実施形態において、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの各々は、過給機の一例である。
排気タービン210−1〜210−nは、それぞれ、エンジン910の排気により駆動されて、軸240−1〜240−nを回転させる。
軸240−1〜210−nは、それぞれ、排気タービン210−1〜210−n、コンプレッサ220−1〜220−nおよび発電機230−1〜230−nに接続されている。軸240−1〜210−nは、それぞれ、排気タービン210−1〜210−nが生成する回転力をコンプレッサ220−1〜220−nおよび発電機230−1〜230−nへ伝達する。
【0018】
コンプレッサ220−1〜220−nは、それぞれ、軸240−1〜240−nを介して排気タービン210−1〜210−nにより駆動され、空気を圧縮してエンジン910へ給気する。
発電機230−1〜230−nは、それぞれ、軸240−1〜240−nを介して排気タービン210−1〜210−nによりコンプレッサ220−1〜220−nとともに駆動され、発電する際に排気タービン210−1〜210−nに対して力学的な負荷を与える。他方、エンジン910の負荷が低い場合、コンバータ920−1〜920−nを介して電力系統940から電力の供給を受けて発電機230−1〜230−nを回転させるモータリングを行う。これにより、コンプレッサ220−1〜220−nは、排気タービン210−1〜210−nのみによって回転力を与えられる場合と比較して、より多く回転することができる。
本実施形態において発電機230−1〜200−nの各々は、回転機の一例である。
【0019】
エンジン910は、コンプレッサ220−1〜220−nからの給気を受けて燃料を燃焼させ、排気タービン210−1〜210−nへ排気を供給する。エンジン910は、内燃機関の一例に該当する。
電力系統940は、発電機230−1〜230−nなどの電源装置からの電力を電力負荷(電力を消費する機器)へ供給する。
例えば、過給システム1が船舶に設けられており、電源装置として発電機230−1〜230−nとディーゼル発電機とが設置されている場合、電力系統940は、発電機230−1〜230−nやディーゼル発電機からの電力を、船内の各機器へ供給する。定速航行中などはディーゼル発電機が停止し、発電機230−1〜230−nが、船内にて必要な電力を発電する。
【0020】
コンバータ920−1〜920−nと系統連系インバータ930とで、発電機230−1〜230−nの発電電力の電圧を変換して電力系統940へ供給する。例えば、発電機230−1〜230−nの各々が三相交流にて発電してコンバータ920−1〜920−nへ出力すると、コンバータ920−1〜920−nは、それぞれ、発電機230−1〜230−nからの電力を直流に変換して系統連系インバータ930へ出力する。系統連系インバータ930は、コンバータ920−1〜920−nからの電力を統合して、系統電圧(電力系統940に規定されている電圧)の三相交流など電力系統940の仕様に応じた電力に変換して電力系統940へ出力する。
また、モータリングを行う際は、コンバータ920−1〜920−nと系統連系インバータ930とで、電力系統940の電力の電圧を変換して発電機230−1〜230−nに供給する。
【0021】
なお、系統連系インバータ930に代えて、コンバータ920−1〜920−nの各々に1台ずつ
インバータを配置するようにしてもよい。
上位装置950は、例えば電力系統940全体の制御装置など制御装置100よりも上位側の装置であり、制御装置100に対して電力指令値を送信する。なお、上位装置950は、電力系統に接続される負荷が要求する電力と、発電機230−1〜230−n以外の発電機が発電する電力とに基づいて、発電に係る電力指令値を決定する。また、上位装置950は、エンジン910の状態に基づいて、給電に係る電力指令値を決定する。具体的には、上位装置950は、エンジン910の状態と電力指令値とを関連付けたテーブルを予め記憶しておき、現在のエンジン910の状態に対応する電力指令値を当該テーブルから読み出すことで、電力指令値を決定する。エンジン910の状態とは、例えば、
定速運転状態、低負荷状態など管理者の判断によって決定される状態であっても良いし、回転数や速度などの状態量に基づいて決定される状態であっても良い。
【0022】
制御装置100は、ハイブリッド過給機200−1〜200−nを制御する。本実施形態において、制御装置100は、制御部の一例である。
図2は、制御装置100の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、制御装置100は、電力指令値取得部110と、状態情報取得部120と、サージ判定部130と、回転数差判定部140と、発電電力決定部150と、制御情報出力部160とを備える。発電電力決定部150は、電力割当部151と、サージング解消電力割当調整部152と、回転数差減少電力割当調整部153とを備える。
【0023】
電力指令値取得部110は、発電機230−1〜230−nに発電させる際、発電機230−1〜230−nの出力に関する指令値を取得する。また、電力指令値取得部110は、モータリングを行う際、ハイブリッド過給機200−1〜200−nを回転させるために発電機230−1〜230−nに供給可能な電力に関する指令値を取得する。具体的には、電力指令値取得部110は、上位装置950が送信する電力指令値を受信する。本実施形態において、電力指令値取得部110は、電力取得部の一例である。
状態情報取得部120は、各機器の状態を示す情報を取得する。例えば、状態情報取得部120は、コンプレッサ220−1〜220−nの各々の給気温度や、給気圧力や、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの各々の回転数を取得する。また、状態情報取得部120は、発電機230−1〜230−nの各々の発電電力や、発電機230−1〜230−nの各々が出力する各相の電圧および電流を取得する。また、状態情報取得部120は、エンジン910の負荷や回転数を取得する。本実施形態において
状態情報取得部120は、状態量取得部の一例である。
【0024】
サージ判定部130は、状態情報取得部120の取得する状態情報に基づいて、ハイブリッド過給機200−1〜200−nのうちサージ領域にあるものの有無を判定する。
ここでいうサージないしサージングは、コンプレッサを流れる流量が下流側の圧力との関係において不足することで、圧力や流量の振動などの異常が生じることである。サージングによる振動が激しい場合、コンプレッサや配管系が破損するおそれがある。
また、ここでいうサージ領域とは、サージングが発生すると考えられる流量および圧力比の領域である。後述するように、サージ領域は、コンプレッサマップにおいてサージラインを用いて示される。
【0025】
回転数差判定部140は、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの回転数差の大きさ(回転数差の絶対値)が回転数差上限値以下か否かを判定する。より具体的には、回転数差判定部140は、ハイブリッド過給機200−1〜200−nについて、最大の回転数から最小の回転数を減算して回転数差の大きさを算出する。そして、回転数差判定部140は、得られた回転数差の大きさが回転数差上限値以下か否かを判定することで、回転数差上限値より大きい回転数差のハイブリッド過給機200−1〜200−nの有無を判定する。なお、回転数差上限値は、過給器200−1〜200−nの組み合わせ、給気室及び配管の形状、ならびに圧損等の各種条件に基づいて、制御装置100の管理者が予め設定しておく。
【0026】
電力決定部150は、発電機230−1〜230−nに発電させる際、発電機230−1〜230−nの各々に対する発電電力の指令値を決定する。また、電力決定部150は、モータリングを行う際、発電機230−1〜230−nの各々に対する給電電力の指令値を決定する。
電力割当部151は、電力指令値取得部110が取得した電力指令値を発電機230−1〜230−nの各々に、電力指令値として割り当てる。本実施形態において、電力割当部151は、割当部の一例である。
【0027】
サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域にあるハイブリッド過給機200−1〜200−n有りとサージ判定部130が判定すると、サージ領域にあるハイブリッド過給機200−1〜200−nの負荷を減少させるように電力指令値の割当調整を行う。例えば、発電機230−1〜230−nに発電させる際、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域にあるハイブリッド過給機200−1〜200−nに対して電力割当部151が割り当てた発電電力指令値から所定の値を減算する。そして、サージング解消電力割当調整部152は、減算分の電力を、他のハイブリッド過給機200−1〜200−nのいずれかに対して電力割当部151が割り当てた発電電力指令値に加算す
ることで、全体の発電電力を一定に保つ。また例えば、モータリングを行う際、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域にあるハイブリッド過給機200−1〜200−nに対して電力割当部151が割り当てた給電電力指令値に所定の値を加算する。そして、サージング解消電力割当調整部152は、加算分の電力を、他のハイブリッド過給機200−1〜200−nのいずれかに対して電力割当部151が割り当てた発電電力指令値から減算することで、全体の給電電力を一定に保つ。また、モータリングを行う際、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域にあるハイブリッド過給機200−1〜200nを解列し、当該ハイブリッド過給機200−1〜200−nに供給
されていた電力を、他のハイブリッド過給機200−1〜200−nのいずれかに対して電力割当部151が割り当てた発電電力指令値から減算することで、全体の給電電力を一定に保っても良い。
【0028】
回転数差減少電力割当調整部153は、回転数差上限値より大きい回転数差のハイブリッド過給機有りと回転数差判定部140が判定すると、回転数差が回転数差上限値以内になるように、電力指令値の割当調整を行う。具体的には、発電機230−1〜230−nに発電させる際、回転数差減少電力割当調整部153は、回転数最大のハイブリッド過給機の負荷を増加させ、回転数最小のハイブリッド過給機の負荷を減少させるように発電電力指令値の割当調整を行う。例えば、回転数差減少電力割当調整部153は、回転数最小のハイブリッド過給機に対する発電電力指令値から所定の値を減算することで、当該ハイブリッド過給機の発電電力を減少させて回転数を増加させる。また、回転数差減少電力割当調整部153は、減少分の電力を、回転数最大のハイブリッド過給機に対する発電電力指令値に加算することで、当該ハイブリッド過給機の発電電力を増加させて回転数を減少させる。また、モータリングを行う際、回転数差減少電力割当調整部153は、回転数最大のハイブリッド過給機に供給する電力を減少させ、回転数最小のハイブリッド過給機に供給する電力を増加させるように給電電力指令値の割当調整を行う。
【0029】
効率適正化割当調整部154は、モータリングを行う際、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの組み合わせに係る全体の過給効率を最大化するように、給電電力指令値の割当調整を行う。例えば、効率適正化割当調整部154は、各ハイブリッド過給機200−1〜200−nの効率が均等になるように、給電電力指令値の割当調整を行う。具体的には、効率適正化割当調整部154は、効率の悪いハイブリッド過給機に供給する電力を増加させ、効率の良いハイブリッド過給機に供給する電力を減少させることで、給電電力指令値の割当調整を行う。
【0030】
制御情報出力部160は、発電電力決定部150が決定した発電機230−1〜230−nの各々に対する電力指令値を、系統連系インバータ930へ送信する。電力指令値が発電に係る電力指令値である場合、系統連系インバータ930は、コンバータ920−1〜920−nから取得する電力を電力指令値に基づいて調整することで、コンバータ920−1〜920−nを介して発電機230−1〜230−nの発電電力を制御する。他方、電力指令値が給電に係る電力指令値である場合、系統連系インバータ930は、コンバータ920−1〜920−nに供給させる電力を電力指令値に基づいて調整することで、コンバータ920−1〜920−nを介して発電機230−1〜230−nに供給する電力を制御する。
【0031】
このように、制御装置100は、制御情報出力部160から電力指令値を送信することで、系統連系インバータ930およびコンバータ920−1〜920−nを介して、発電機230−1〜230−nの発電電力及び給電電力を制御する。
【0032】
次に、
図3〜
図9を参照して、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの状態のばらつきによって生じる影響について説明する。
図1に示す構成のように複数のハイブリッド過給機200−1〜200−nが並列に配置されている場合、ハイブリッド過給機200−1〜200−nそれぞれの仕様の違いにより、性能のばらつきが生じ得る。あるいは、仕様が同じでも個体差、または、エンジン910からの配置位置や配管形状の差などにより、性能のばらつきが生じ得る。
【0033】
例えば、ハイブリッド過給機200−1〜200−n毎の運転時間の違いや、整備時期の違いから性能のばらつきが生じ得る。さらに、ハイブリッド過給機200−1〜200−nは、発電機230−1〜230−nを備えている点で、発電機230−1〜230−nの性能差がコンプレッサ220−1〜220−nの性能にも影響を与えるなど、発電機230−1〜230−nを備えていない通常の過給機よりも性能のばらつきが生じやすい。また、エンジン910からの配置位置や配管形状が異なることで、排気タービン210−1〜210−nに流入する排気の圧力や温度にばらつきが生じ、これによりハイブリッド過給機200−1〜200−nの性能のばらつきが生じ得る。
【0034】
かかるハイブリッド過給機200−1〜200−nの性能のばらつきは、他のハイブリッド過給機200−1〜200−nにも影響を及ぼし得る。この点について、
図3を参照して説明する。なお、以下では、ハイブリッド過給機200−1〜200−nが2台(n=2)の場合を例に説明するが、ハイブリッド過給機200−1〜200−nが3台以上(n≧3)の場合も同様に、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの性能のばらつきが、他のハイブリッド過給機200−1〜200−nにも影響を及ぼし得る。
【0035】
図3は、並列に設置されたハイブリッド過給機とエンジンとの接続関係の例を示す説明図である。同図において、エンジン910の備える吸気室911と、エンジン燃焼室912と、排気室913とが示されている。コンプレッサ220−1、220−2からの圧縮空気は、いずれも吸気室911へ流入し、エンジン燃焼室912は、当該圧縮空気を用いて燃料を燃焼させる。燃焼にて生じる排気(排気ガス)は、排気室913を経由して排気タービン210−1および210−2へ流入する。
【0036】
ここで、コンプレッサ220−1および220−2からの圧縮空気は、吸気室911で混合されてエンジン燃焼室912へ流入する。従って、コンプレッサ220−1または220−2のいずれか一方の出力する圧縮空気の圧力は、エンジン燃焼室912における燃焼状態に影響し、排気タービン210−1および210−2のいずれへの排気圧力にも影響し得る。例えば、コンプレッサ220−2の出力する圧縮空気の圧力が低下すると、排気タービン210−1および210−2のいずれへの排気圧力も低下し、ハイブリッド過給機200−1および200−2のどちらのトルクも低下し得る。
このように、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの性能のばらつきの影響を他のハイブリッド過給機200−1〜200−nも分担するように動作する。
【0037】
図4は、ハイブリッド過給機の回転数に大きな差が生じる例における、ハイブリッド過給機200−1および200−2の状態を示すコンプレッサマップである。同図では、ある時間におけるハイブリッド過給機200−1および200−2の状態の変化を示している。
図4において、線L131は、時刻T11から時刻T12の間におけるハイブリッド過給機200−1の状態(特に、流量、および、入口と出口との圧力比)の変化を示し、線L132は、時刻T11から時刻T12の間におけるハイブリッド過給機200−2の状態の変化を示す。
【0038】
また、線L140は、サージラインを示す。
図4において、サージラインである線L140よりも左側(流量の小さい側)の領域A11は、サージングが発生すると考えられる流量および圧力比の領域であるサージ領域に該当する。
また、線L151、L152、L153およびL154は、何れもハイブリッド過給機200−1または200−2の回転数を、空気温度20℃の場合に換算した補正回転数にて示す等値線である。これらの線のうち、線L151が最も小さい回転数を示しており、回転数の小さい順に、線L151、L152、L153、L154となっている。
【0039】
図4の例では、ハイブリッド過給機200−2が、回転数の低下に伴ってサージ領域に到達しており、サージングが発生している可能性がある。このように、回転数の小さいハイブリッド過給機200−1〜200−nは、比較的サージングが発生し易い。したがって、複数のハイブリッド過給機200−1〜200−nの回転数にばらつきがある場合、回転数の小さいハイブリッド過給機200−1〜200−nにサージングが発生する可能性がある。
【0040】
ここで、サージングが発生したハイブリッド過給機200−1〜200−nの発電電力は、一般的なハイブリッド過給機の最大発電電力の数倍程度となる。そのため、充分な回転数を得られている状態では、最大発電電力の範囲内(すなわち、最大発電電力以下の発電電力)でハイブリッド過給機200−1〜200−nを運転させることでサージングを回避することができる。他方、複数のハイブリッド過給機200−1〜200−nの回転数差を小さくしつつ、最大発電電力の範囲内でハイブリッド過給機200−1〜200−nを動作させると、各機器の性能や必要な発電電力の大きさによっては、必要な発電電力を得られない可能性がある。
そのため、本実施形態では、ハイブリッド過給機200−1〜200−nに発電させる際に、制御装置100が、最大発電電力の範囲内で発電機230−1〜230−nの発電電力が同じになるように発電電力の制御を行うことで、サージングを回避する。
【0041】
他方、モータリングを行う場合、コンプレッサを流れる流量が増加し、かつ上流側の圧力と下流側の圧力との比が大きくなるため、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの状態は、サージ領域から離れる。つまり、モータリングを行う場合、ハイブリッド過給機200−1〜200−nは、サージングを起こしにくい状態となる。そのため、モータリングを行う場合、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの回転数差は、当該回転数差によって脈動が生じない程度に許容される。そのため、本実施形態では、モータリングを行う際に、制御装置100が、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの回転数差が所定の閾値以内になるように給電電力の制御を行うことで、サージングを回避する。
【0042】
次に、
図5を参照して、制御装置100の動作について説明する。
図5は、制御装置100が行う処理の手順の一例を示すフローチャートである。例えば、制御装置100は、上位装置950からモータリングを行う指示を受けると、同図の処理を開始する。
【0043】
図5の処理において、まず、電力指令値取得部110が電力指令値を取得する(ステップS111)。具体的には、電力指令値取得部110は、上位装置950が送信する電力指令値を受信する。
なお、電力指令値が変更された場合のみ上位装置950が電力指令値を送信するなど、上位装置950が電力指令値を送信する時間間隔が長い場合、電力指令値取得部110が電力指令値を記憶しておくようにしてもよい。この場合、電力指令値取得部110は、上位装置950からの電力指令値を受信する毎に記憶している電力指令値を更新する。そして、電力指令値取得部110は、ステップS111や、後述するステップS151において、記憶している電力指令値を読み出す。
【0044】
次に、電力割当部151は、電力指令値取得部110が取得した電力指令値を、発電機230−1〜230−nの各々に均等に割り当てる(ステップS112)。すなわち、電力割当部151は、電力指令値取得部110が取得した電力指令値を発電機の台数nで除算して、発電機1台あたりの給電電力指令値を算出する。
【0045】
次に、状態情報取得部120は、各機器の状態情報を取得する(ステップS113)。例えば、上述したように、状態情報取得部120は、コンプレッサ220−1〜220−nの各々の給気温度や、給気圧力や、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの各々の回転数を取得する。また、状態情報取得部120は、発電機230−1〜230−nの各々の
給電電力や、発電機230−1〜230−nの各々
に供給される各相の電圧および電流を取得する。また、状態情報取得部120は、エンジン910の負荷や回転数を取得する。
【0046】
次に、サージ判定部130は、状態情報取得部120が取得した状態情報に基づいて、
ハイブリッド過給機200−1〜200−nの全てがサージ領域外にあるか否かを判定す
る(ステップS114)。
サージ領域のハイブリッド過給機有りと判定した場合(ステップS114:NO)、サ
ージング解消電力割当調整部152は、サージ領域にあるハイブリッド過給機の給電電力
を増加させる(ステップS141)。例えば、サージング解消電力割当調整部152は、
サージ領域にあるハイブリッド過給機に対する
給電電力指令値に所定の値を加算する。
あるいは、サージング解消電力割当調整部152が、サージ領域にあるハイブリッド過
給機に対する
給電電力指令値の、ハイブリッド過給機200−1〜200−n全体に対す
る給電電力指令値における割合を所定の割合だけ増加させるようにしてもよい。
【0047】
さらに、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域から最も離れたハイブリッド過給機に対する
給電電力を増加させる(ステップS142)。
例えば、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域外にあるハイブリッド過給機の各々について、コンプレッサマップにおけるサージラインまでの距離を算出し、算出した距離の最も長いハイブリッド過給機を、サージ領域から最も離れたハイブリッド過給機として検出する。そして、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域から最も離れたハイブリッド過給機に対する
給電電力指令値から、ステップS141で加算した値を減算する。これにより、サージング解消電力割当調整部152は、ハイブリッド過給機200−1〜200−n全体に対する給電電力を一定に保つ。
【0048】
なお、ステップS141でサージ領域にあるハイブリッド過給機に対する給電電力指令値の割合を増加させたときは、サージング解消電力割当調整部152は、サージ領域から最も離れたハイブリッド過給機に対する給電電力指令値の割合を、ステップS141で増加させた分だけ減少させる。
【0049】
なお、サージング解消電力割当調整部152が給電電力の減算を行うハイブリッド過給機は、サージ領域から最も離れたハイブリッド過給機に限らず、給電電力を減少させてもサージングが発生しないと予想されるハイブリッド過給機であればよい。さらには、サージング解消電力割当調整部152が、給電電力の減少分を、複数のハイブリッド過給機に分担させるようにしてもよい。
ステップS142の後、ステップS113へ戻る。
【0050】
一方、ステップS114において、全てのハイブリッド過給機がサージ領域外にあると判定した場合(ステップS114:YES)、回転数差判定部140が、ハイブリッド過給機200−1〜200−nのうち回転数が最大のハイブリッド過給機と回転数が最小のハイブリッド過給機とを検出する(ステップS121)。
そして、回転数差判定部140は、検出した回転数が最大のハイブリッド過給機と回転数が最小のハイブリッド過給機との回転数差の大きさが回転数差上限値以下か否かを判定する(ステップS122)。
【0051】
回転数差の大きさが回転数差上限値より大きい判定した場合(ステップS122:NO)、回転数差減少電力割当調整部153は、ステップS121において回転数差判定部140が回転数最大のハイブリッド過給機として検出した過給機の回転数を減少させる(ステップS131)。例えば上述したように、回転数差減少電力割当調整部153は、回転数最大のハイブリッド過給機に対する給電電力指令値から所定の値を減算する。
【0052】
さらに、回転数差減少電力割当調整部153は、ステップS121において回転数差判定部140が回転数最小のハイブリッド過給機として検出した過給機の回転数を増加させる(ステップS132)。例えば上述したように、回転数差減少電力割当調整部153は、回転数最小のハイブリッド過給機に対する給電電力指令値に所定の値を加算する。
【0053】
なお、サージング解消電力割当調整部152の場合と同様、ステップS131において回転数差減少電力割当調整部153が、回転数最小のハイブリッド過給機に対する給電電力指令値の、ハイブリッド過給機200−1〜200−n全体に対する給電電力指令値における割合を所定の割合だけ増加させるようにしてもよい。この場合、ステップS132においてサージング解消電力割当調整部152は、回転数最大のハイブリッド過給機に対する給電電力指令値の、ハイブリッド過給機200−1〜200−n全体に対する給電電力指令値における割合を、ステップS131で増加させた分だけ減少させる。
ステップS132の後、ステップS113へ戻る。
【0054】
一方、回転数差の大きさが回転数差上限値以下であると判定した場合(ステップS122:YES)、効率適正化割当調整部154は、各ハイブリッド過給機200−1〜200−nの過給効率を算出し、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの過給効率の順位付けを行う(ステップS151)。また、効率適正化割当調整部154は、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの組み合わせに係る全体の過給効率を算出する(ステップS152)。
【0055】
次に、効率適正化割当調整部154は、全体の過給効率が向上するように、各ハイブリッド過給機200−1〜200−nに対する供給電力を調整する(ステップS153)。供給電力の調整方法として、例えば、以下に示す方法が挙げられる。まず、効率適正化割当調整部154は、過去の調整ごとに、全体の過給効率と、各ハイブリッド過給機200−1〜200−nの過給効率とを関連付けて調整結果として記憶する。次に、効率適正化割当調整部154は、過去の調整結果に基づいて、全体の過給効率と各ハイブリッド過給機200−1〜200−nの過給効率との関係及び傾向を推定する。次に、効率適正化割当調整部154は、推定結果にしたがって各ハイブリッド過給機200−1〜200−nに対する供給電力を調整する。
【0056】
例えば、効率適正化割当調整部154は、最も効率の悪いハイブリッド過給機に対する供給電力を増加させ、最も効率の良いハイブリッド過給機に対する供給電力を減少させる調整を行う。次に、効率適正化割当調整部154は、過去の調整結果と今回の調整結果とを比較し、結果全体の過給効率が向上したならば、同様に、最も効率の悪いハイブリッド過給機に対する供給電力を増加させ、最も効率の良いハイブリッド過給機に対する供給電力を減少させる調整を行う。他方、結果全体の過給効率が低下したならば、効率の悪い他のハイブリッド過給機に対する供給電力を増加させたり、効率の良い他のハイブリッド過給機に対する供給電力を減少させたり、最も効率の悪いハイブリッド過給機を解列する調整を行う。
上記手順を繰り返すことで、効率適正化割当調整部154は、全体の過給効率が向上するように、各ハイブリッド過給機200−1〜200−nに対する供給電力を調整することができる。なお、当該供給電力の調整方法は、あくまで一例であり、これに限られない。
ステップS153の後、ステップS113へ戻る。
【0057】
このように、本実施形態によれば、電力決定部150は、状態量取得部120が取得した状態量に基づいて、電力指令値取得部110が取得した電力から発電機230−1〜230−nに割り当てる電力を決定する。これにより、モータリング時にサージングを回避するように複数のハイブリッド過給機200−1〜200−nを制御することができる。特に、電力決定部200−1〜200−nは、コンプレッサ220−1〜220−nの回転数の差が所定値以内になるように、回転機230−1〜230−nに割り当てる電力を演算することで、サージングを回避することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、電力決定部150は、コンプレッサ220−1〜220−nの回転数の差が所定値以内である場合、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの組み合わせに係る全体の過給効率が向上するように、発電機230−1〜230−nに割り当てる電力を決定する。これにより、サージングを回避しつつ、ハイブリッド過給機200−1〜200−nの過給効率を向上させることができる。
【0059】
なお、制御装置100の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、サージ判定部130が、一部のハイブリッド過給機がサージ領域内にあると判定した場合に、サージ領域にあるハイブリッド過給機に対する供給電力を増加させる場合について説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態では、サージ領域にあるハイブリッド過給機を解列しても良いし、
図5の処理を中断して管理者にアラームを通知しても良い。