特許第6053764号(P6053764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053764
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】選択エミッタを有する光電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20161219BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20161219BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 21/225 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01L31/06 300
   H01L31/04 440
   H01L31/04 240
   H01L21/22 E
   H01L21/225 D
   H01L21/318 B
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-515249(P2014-515249)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-524140(P2014-524140A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】FR2012050932
(87)【国際公開番号】WO2012172226
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月16日
(31)【優先権主張番号】1155352
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン・パヴィエ−サロモン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ギャル
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァイン・マヌエル
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02943180(FR,A1)
【文献】 国際公開第2000/001019(WO,A1)
【文献】 特開昭63−283172(JP,A)
【文献】 特開2007−184251(JP,A)
【文献】 特開2007−281448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−50/15、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−p型シリコン基板(1)上にn型ドーパントを含む反射防止層(7)を堆積するステップであって、前記堆積は、前記基板(1)におけるn型ドーパント原子の拡散を促進することができる化合物の存在下で実施される、ステップと、
−前記反射防止層(7)の少なくとも1つの領域のnドーパントの局所拡散によって、前記基板(1)の少なくとも1つの領域をオーバードーピングし、少なくとも1つのn++オーバードープエミッタ(6)を形成するステップと、
−前記少なくとも1つのn++オーバードープエミッタ(6)上に少なくとも1つのn型導電材料(3)を堆積し、
前記反射防止層(7)を含む面とは反対の前記基板(1)の面上に少なくとも1つのp型導電材料(4)を堆積するステップと、
−前記反射防止層(7)からのnドーパントを前記基板内で拡散することができるアニールによって、nエミッタ(5)の形成と同時にn接点(3)及びp接点(4)を形成するステップと、
を含む、選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項2】
前記反射防止層(7)は窒化ケイ素で作られることを特徴とする、請求項1に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項3】
前記反射防止層(7)はリンドープであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項4】
前記n型ドーパント原子の拡散を促進することができる化合物はアンモニア、NHであることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのn++エミッタ(6)は、レーザードーピングによって形成されることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのn++エミッタ(6)は、パルスレーザーによる照射によって形成されることを特徴とする、請求項5に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのn++エミッタ(6)は、紫外線から赤外線にわたる範囲から選択され得る波長を有するパルスレーザーによって形成されることを特徴とする、請求項5または6に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項8】
ーザーパルスは10psから1μsまで続くことを特徴とする、請求項5、6、または7に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項9】
前記レーザーは515nmに実質的に等しい波長を有することを特徴とする、請求項5から8の何れか一項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項10】
前記n型又はp型導電材料はシルクスクリーニングによって堆積されることを特徴とする、請求項1からの何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項11】
前記nエミッタ(5)並びに前記接点(3)及び(4)は、850と1050°Cとの間の温度、2,000と6,500mm/との間の通過速度で、赤外線加熱炉におけるアニールによって同時に形成されることを特徴とする、請求項1から10の何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項12】
前記基板(1)は50マイクロメートルと500マイクロメートルとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1から11の何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【請求項13】
前記反射防止層(7)は20ナノメートルと100ナノメートルとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1から12の何れか1項に記載の選択エミッタを有する光電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n型又はp型ドープシリコン基板、並びに低nドーピングの領域及び高nドーピングの領域を含む、選択エミッタを有する光電池の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、太陽光発電、より好ましくは光子からの電力の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
光電池の作動は主に、電池を形成する半導体性質を有する材料の価電子帯と伝導帯との間の電子の遷移を発生させる光子の吸収に基づく。このような電子移動は、光電池を形成する材料のドーピングにより、過剰な電子を有する領域(n型ドーピング)並びに電子欠乏領域(p型ドーピング)を作り出すことができる。
【0004】
通常、光電池は、n型ドープシリコン層で覆われたp型ドープシリコン基板を含む。このようなスタックは、光電池の太陽光への露出によって生じた光キャリアの収集に必要なpn接合を形成する。n型ドープシリコン層はさらに、良好な光子吸収を確保する反射防止層で覆われる。後者は、発生した電流を集めることを可能にする電気接点を含む。
【0005】
しかしながら、一定の制約が尊重される必要があり、nドーピング領域は同時に:
−電気接点との良好なオーミック接点を確保し、故に高いドーピングレベルを有する必要があり;
−反射防止層を用いて材料のパッシベーションを容易にし、故に、高ドーピング率に関連するオージェ再結合を制限するために低ドーピング率を有する必要がある。
【0006】
こうして、選択エミッタ電池と呼ばれる光電池が開発された。このような電池は、n型又はp型基板において、強nドーピングの領域並びに低nドーピングの領域を有する。
【0007】
従来技術の選択エミッタ光電池(図1F)は故に、nエリアもしくは領域(region)又はnエミッタとも呼ばれる低nドーピングの領域を含む。さらに、このタイプの光電池では、エミッタはまた、電気接点を形成するために、正確に定義された強nドーピングの領域(n++領域又はn++エミッタ)を含む。nエミッタは故に、反射防止層によるパッシベーションを容易にし、オージェ再結合を低減し、一方で、n++エミッタが電気接点に接続され、良好なオーミック接点を提供する。
【0008】
典型的に、従来技術による選択エミッタを有するこのような光電池の製造方法は、以下のステップを含む:
−p型ドープシリコン基板において、ドーパント(POCl)のガス拡散によってnエミッタを形成するステップ(非特許文献1)。このステップは、数十分間にわたり850から950°Cに近い温度で基板を維持することを意味する(図1A及び1B)。
−レーザードーピングによってn++エミッタを形成するステップ(非特許文献2)、又は、nエミッタの場合よりも高い温度でのドーパント(POCl)の第2のガス拡散によってn++エミッタを形成するステップ(図1C)。nエミッタのある特定の領域はオーバードープされる。
−PECVD(「プラズマ化学気相堆積法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)」)によって、典型的に窒化ケイ素である反射防止層を堆積するステップ(図1D)。
−以下によって電気接点を形成するステップ:
−基板の上部面にメタライゼーションゲート(n接点)を堆積するステップ。それは典型的に、銀を含むシルクスクリーニングペーストである。このメタライゼーションゲートのパターンは、n++エミッタ上に正確に位置合わせされ、接点のアニーリングの際のnエミッタの短絡を回避する(図1E)。確かに、メタライゼーションがn領域の上部で移動する場合、後者は薄いため、アニールの際に金属がそれを横断し、n領域を基板と接触させることがある。
−基板の下部面全体上に、アルミニウムを含むペースト(p接点)を堆積するステップ。それは一方で、光電池のp型ドープ部分との接触を確保することを可能にし、他方で、BSF(「裏面電界(Back Surface Field)」)によって、つまり電界効果パッシベーションによって、その電気特性を改善することを可能にする(図1E)。それは多量にp型ドープされた層であり、表面から電子を遠ざけ、電子−正孔再結合速度を減少させることができ、そしてこれは、電池効率を改善することができる。
−例えば885°Cの温度、6,500mm/minのベルト速度である連続加熱炉において、ペースト(銀及びアルミニウム)の同時アニールによって電気接点を形成するステップ(非特許文献3)。そのアニールステップは非常に批判的であるが、それは、単一のステップで良好なオーミック接点が基板の上部面及び下部面で達成され、かつ、下部面のパッシベーションがBSF効果によって実施されることが確保される必要があるからである(図1F)。
【0009】
従来技術の方法では、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されているように、nエミッタを形成するステップ及びn接点とp接点をアニールするステップは両立せず、故に同時に実施することができない。確かに、ドーパント(POCl)のガス拡散によってnエミッタを形成するステップは比較的長く(数十分間)、また、前記接点の堆積後に実施された場合には電気接点の下の領域の短絡をもたらし得る。他方で、電気接点の形成に使用される方法であるシルクスクリーニングで使用されるペーストは、ドーパントの拡散に使用される加熱炉に適合しないが、それは、それらが拡散加熱炉を取り返しのつかないほど汚染し得る大量の金属を含むからである。
【0010】
従来技術の方法は故に、両立できないステップを含み、それぞれが非常に特殊なエネルギー入力を必要とする。反対に、本発明は所定の選択エミッタ光電池の製造ステップを組み合わせることによって、このようなエネルギー制約を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2943180号明細書(FR2943180)
【特許文献2】国際公開第00/01019号(WO00/01019)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.C.C.Tsai,“Shallow Phosphorus Diffusion Profiles in Silicon”,Proc. of the IEEE 57(9),1969,pp.1499−1506
【非特許文献2】A.Ogane et al,“Laser−Doping Technique Using Ultraviolet Laser for Shallow Doping in Crystalline Silicon Solar Cell Fabrication”,Jpn.J.Appl.Phys.48(2009)071201
【非特許文献3】B.Sopori et al,“Fundamental mechanisms in the fire−through contact metallizaition of Si solar cells:a review”,17th Workshop on Crystalline Silicon Solar Cells&Modules:Materials and Process,Vail,Colorado,USA,August 5−8 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人は、nエミッタ、n接点、p接点、及びBSF効果が単一のアニールステップの間に同時に達成される、選択エミッタを有する光電池の製造方法を開発した。したがって本発明は、アニール及びnドーパント拡散ステップの両立不能性と結び付けられた従来技術の所定の問題を解消することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
より具体的に、本発明は、以下のステップを含む選択エミッタを有する光電池の製造方法に関する:
−n型又はp型シリコン基板上にn型ドーパントを含む反射防止層を堆積するステップであって、前記堆積は、n型シリコン基板におけるn型ドーパント原子の拡散を促進することができる化合物の存在下で実施される、ステップ;
−反射防止層の少なくとも1つの領域のnドーパントの局所拡散によって、基板の少なくとも1つの領域をオーバードーピングし、少なくとも1つのn++オーバードープエミッタを形成するステップ;
−少なくとも1つのn++オーバードープエミッタ上に少なくとも1つのn型導電材料を堆積し、
反射防止層を含む面とは反対の基板の面上に少なくとも1つのp型導電材料を堆積するステップ;
−反射防止層からのnドーパントを基板内で拡散することができるアニールによって、nエミッタの形成と同時にn接点及びp接点を形成するステップ。
【0015】
特にn接点及びp接点の形成を提供するアニールの間、n++オーバードープエミッタのnドーパントもまた拡散し得る。したがって、結果として生じる接点はさらに深い。
【0016】
「局所拡散」は、反射防止層の少なくとも1つの特定の領域のnドーパントのみが拡散され、n++エミッタを形成するn++領域を形成することを意味する。さらに、電気接点をアニールするステップ、故にnエミッタを形成するステップの間、n++領域を形成するために拡散したnドーパントを有する反射防止層の少なくとも1つの領域は、nエミッタの形成に関与しない。
【0017】
シリコンのタイプは、結晶化に使用される基板の元のインゴットの冶金によって定義される。典型的に、p型シリコンはホウ素でドープされ、n型シリコンはリンでドープされる。
【0018】
特定の好ましい実施形態によると、反射防止層は、有利にはPECVD(「プラズマ化学気相堆積法」)によって窒化ケイ素で作られる。さらにそれは、通常例えばドーパントガスを用いた堆積の間に、好ましくはリンでn型ドープされる。特にn接点及びp接点の形成を確保するアニールステップの後、反射防止層はもはやドープされていないことがある。
【0019】
n型ドーパント原子の拡散を促進することができる化合物は、有利にはアンモニアである。いかなる種類の理論も開発することなく、アンモニア、NHの存在下で得られる窒化ケイ素層は、窒素、Nの存在下で得られる従来技術の窒化ケイ素より低密度にすることができる。nドーパント、リン原子は故に、より自由に移動し得る。
【0020】
++領域は特にレーザードーピングによって、有利にはパルスレーザー、さらに有利には紫外線から赤外線にわたる範囲から選択され得る波長を有するパルスレーザーを用いた照射によって形成され得る。好ましい実施形態によると、レーザーは、実質的に515nmに等しい波長を有する。レーザードーピングステップは、結果として反射防止層の部分的除去をもたらし得る。
【0021】
++領域は、基板の上部面で良好な接点を提供することができ、一方でいかなる短絡をも回避する。確かにn++領域は非常に深く、n型及びp型導電材料のアニールによって電気接点を形成するステップの前に形成される。それらは、反射防止層の上部面に対して有利には0.5マイクロメータを超える深さに位置する。それらは有利には、n領域より深い。
【0022】
++エミッタの形成を提供するレーザードーピングステップの間、レーザーパルスは好ましくは、10psから1μsまで続く。
【0023】
有利な実施形態によると、n型及びp型導電材料は、シルクスクリーニングによって堆積される。この技術は、事前にマスクで覆われた基板上にペーストを堆積することを含む。ペーストは次いで、調整可能な速度及び圧力に応じて、スクレーパーにより押し付けられる。マスクの性質及び特にその厚さは、形成される電気接点に応じて定義される。n接点の場合、このようなペーストは有利にはガラスフリットをほぼ含まず、短絡のリスクを制限する。
【0024】
通常、基板は50マイクロメートルと500マイクロメートルとの間の厚さを有し、一方で、反射防止層は20と100ナノメートルとの間の厚さを有する。
【0025】
有利には、本発明による方法では、nエミッタ及び電気接点は、赤外線加熱炉においてアニールによって同時に形成される。このステップは好ましくは、850と1,050°Cとの間の温度、有利には2,000と6,500mm/minとの間の加熱炉における基板通過速度で実施される。さらに、加熱炉における輸送時間は、有利には1sと60sとの間である。
【0026】
したがって、ドーパント源は空気中で安定であり、特に基板が加熱炉を通過する間に拡散されることが特に有利である。
【0027】
本発明による方法では、n型ドーパント原子の拡散を促進することができる化合物の存在が極めて重要である。確かに、この化合物はドーピングステップにおいて、特にn型及びp型導電材料のアニールによって電気接点を形成する際により大きな移動度を提供し、そのステップの間にnドーパント原子の拡散によってnエミッタが形成される。
【0028】
本発明はまた、上述の製造方法によって得ることができる光電池に関する。このような電池は、少なくとも以下を含むn型又はp型シリコン基板を含む:
−基板の下部面に位置するp接点;
−nエミッタ;
−基板の上部面に位置する反射防止層;
−n接点を有し、その上に位置する反射防止層及びnエミッタから物理的に独立した、少なくとも1つのn++エミッタ。
【0029】
エミッタの拡散及びアニールによる接点の形成に関するステップの組み合わせは、それらが明確に異なるエネルギー制約を含むことを考えると従来技術の教示に反することに留意すべきである。確かに、拡散によるnエミッタの形成は通常、850°Cの温度で30分間、真空加熱炉で実施され、一方で、電気接点は、800から900°Cの温度で3分間のみ、自由大気でアニールされる。これらの2つの方法の温度は類似しているが、それぞれのアニール時間は1/10の比率で異なる。確かに、導電材料のアニールによるn型及びp型電気接点の形成に必要なパワー入力は、拡散によるnエミッタの形成に必要な値よりさらに低い。このような差異は主に、ドーパント粒子(例えばリンなど)がシリコンにおいて非常に遅く拡散し、良好な効率を提供するのに十分ドープされたnエミッタを作り出すことができるようにするため、非常に長い時間を必要とする、という事実によって説明され得る。反対に、(特に銀又はアルミニウムで作られた)電気接点を確保する金属粒子は、より速く拡散する。アニールによる電気接点の形成はしたがって、低いパワー入力を必要とし、故にアニール時間はnドーパントの拡散より短い。さらに、金属粒子が深く拡散しすぎてnエミッタを完全に横断し、結果として電池の非常に悪い電池効率をもたらし得ること(短絡電池)を回避するように、アニール時間が短い状態であることを確実にすることも重要である。
【0030】
従来技術の方法では、本発明とは反対に、金属接点は、従来の(つまり石英で作られ、真空下の)拡散管における拡散によるnエミッタの形成の前に堆積することができない。確かにこれは、使用される高い温度及び特に拡散プロセスに必要とされる時間を考慮すると、接点に含まれる金属粒子の塩析による拡散管の汚染をもたらし得る。
【0031】
本発明による方法では、このような組み合わせは、低エネルギー条件下でnドーパント原子の拡散を促進することができる、有利にはアンモニアである化合物の存在によって可能にされる。したがって、良好な品質の、つまりVoc>620mVの値を提供するnエミッタは、従来技術の方法と比較して短い拡散時間であることにかかわらず、アニールステップの間の特にリンである原子の拡散によって得られ得る。これはVocは開回路電圧であり、それはダイオードの電気特性である。
【0032】
それはさらに、当業者の能力の範囲内で、光電池の構成に応じて異なる拡散及びアニールステップに調整される。確かに、アニール時間は特に、温度、しかしまたドーパント及び電気接点によって決まり、逆の場合も同様である。
【0033】
本発明及び結果として生じる利点は、添付の図面と関連して、以下の非限定的な図面及び実施例からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】従来技術による選択エミッタを有する光電池を形成するステップを示す図面である。図1Fは、従来技術の選択エミッタを有する光電池を示す。
図2】本発明による選択エミッタを有する光電池を形成するステップを示す図面である。図2Eは、本発明による選択エミッタを有する光電池を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
従来技術による選択エミッタを有する光電池の製造方法のステップが、以下で図1Aから図1Fに関連して説明される。これらの図面はより具体的には、異なる製造ステップにおける従来技術による光電池の断面図を示す。この非限定的な例において、基板はp型である。
【0036】
図1Aは、p型シリコン基板(1)を示す。
【0037】
図1Bでは、nエミッタ(5)が基板(1)のnドーピングによって形成される。リンでのnドーピングの場合、それは特に、POClの存在下でのガス拡散によるドーピングであり得る。このステップは故に、850から950°Cの温度で数十分間基板を維持することを含み、そのドーパント拡散は相対的に遅い。
【0038】
次いで、図1Cは、レーザードーピングによるn++エミッタ(6)の形成を示す。このステップはまた、ドーパント(POCl)の第2のガス拡散を実施することによって実施され得る。しかしながら、この場合、その温度は図1Cのnエミッタ(5)が形成されるための温度よりも高い温度であり得る。したがって、nエミッタの一定の領域はオーバードープされる。
【0039】
図1Dは、PECVDによる典型的に窒化ケイ素である反射防止層(2)の堆積を示す。
【0040】
従来技術による方法の最終ステップは、図1E及び図1Fに示すような電気接点(3)及び(4)の形成に関する。
【0041】
初めに、メタライゼーションゲートが基板の上部面に堆積され、n接点(3)を準備する。それは典型的に、銀を含むシルクスクリーニングペーストである。
【0042】
次いで、アルミニウムを含むペーストが基板の下部面全体に堆積され、p接点(4)を準備する。このようなペーストは一方で、光電池のp型ドープ部分との接点を形成することを可能とし、他方でBSFによってその電気性能を改善することを可能にする。
【0043】
電気接点の形成は、例えば885°Cの温度、6,500mm/minベルト速度での連続加熱炉におけるペースト(銀及びアルミニウム)の同時アニールによって完了され、図1Fに示すような従来技術の選択エミッタ光電池を提供する。
【0044】
本発明による選択エミッタを有する光電池の製造方法の異なる主なステップが、以下で図2Aから図2Eに関連して説明される。これらの図面はより具体的には、本発明による異なる製造ステップにおける光電池の断面図を示す。
【0045】
図2Aは、p型シリコン基板(1)、つまり電子が欠乏し、故に正に荷電されたとみなされる正孔を過剰に有する基板を示す。この基板は通常、ホウ素などの元素周期表の前の列に属する原子を用いたシリコン基板のドーピングによって得られる。
【0046】
図2Bは、p型シリコン基板(1)上へのn型ドープ反射防止層(7)の堆積を示す。この反射防止層(7)は、それがn型ドーパント、つまり負に荷電された電子を過剰に有する原子を含むという点で、図1D(従来技術)の反射防止層(2)とは異なる。それは、リン原子でドープされた窒化ケイ素層であり得る。SiNの堆積は通常、NH/SiH混合物を用いてホスフィンPHの流れの存在下で、PECVDによって実施される。アンモニアは前駆体ガスとして使用され、さらにリン原子の移動度を改善することができる。典型的に、NH/SiHモル比は、1と20との間である。
【0047】
p型ドープシリコン基板は故に、n型ドープ窒化ケイ素層で覆われる。従来技術とは反対に、反射防止層はn型ドープである。
【0048】
図2Cは、基板内でのn++オーバードープ領域(6)の形成を示す。n++領域(6)は、レーザー照射、好ましくはパルスレーザーによって形成され得、そのパルスの持続時間は、数十ナノ秒程度である。レーザー波長は、紫外線(例えば308nmでのエキシマレーザー)から赤外線(例えば1,064nmでの固体レーザー)にわたる範囲で選択され得る。それは好ましくは、515nmに実質的に等しい波長を有するレーザーである。
【0049】
n型ドープ反射防止層(7)は局所的に照射され、多量にドープされた領域を作り出す。
【0050】
この特定の実施形態によると、レーザードーピングは反射防止層の部分的除去に関連する。しかしながら、このような除去は、本発明の要点においては本質的ではない。
【0051】
図2Dは、n型領域上に電気接点(n接点(3))を、且つp型領域上に電気接点(接点(4))を形成する導電材料の堆積を示す。さらなる明確性のために、図2D及び図2Eでは、参照番号(3)及び(4)は、導電材料、つまりアニール前の電気接点及びアニール後に形成される電気接点を示す。
【0052】
典型的に銀で作られるn接点(3)を形成する導電材料が、n++エミッタ(6)上に堆積される。図2Eは反射防止層(7)と接触しないn接点(3)を示すが、それらはまた、ここで図示されていない本発明の別の実施形態によると反射防止層(7)と接触し得る。通常、p接点(4)はアルミニウムで作られる。電気接点は、光電池によって順次に発生する電流を集めることができる。
【0053】
従来技術とは異なり、本方法のこの段階では、nエミッタ(5)は未だ形成されていない。確かに図2Eは、n型ドープ窒化シリコンで作られた反射防止層(7)のドーパントの拡散によってnエミッタ(5)を形成し、同時に、アニールによってn接点(3)及びp接点(4)を形成することに関する。
【0054】
このステップは、単一のステップにおいて高温で、SiN:P反射防止層(7)に含まれるドーパントを拡散してnエミッタ(5)を形成することを含み、一方で、n接点(3)及びp接点(4)のアニールによる電気接点の形成、並びにBSFの活性化を含む。
【0055】
このステップは、連続赤外線加熱炉において実施され得る。
【0056】
[本発明の実施形態]
選択エミッタを有する光電池は、以下のステップによって形成される:
1.p型シリコン基板の表面は、7容量%のイソプロパノールを含むカリウム(potash)水溶液(KOH1%)に80°Cで40分間浸漬することによって、化学的にテクスチャ化される。
【0057】
2.75nmの厚さを有し、リンドープ窒化ケイ素、SiN:P(50sccmのPH)で作られた反射防止層が、NHの流れの存在下、NH/SiHの流れ比が1と20sccm(「毎分標準立法センチメートル(Standard Cubic Centimeters per Minute)」)の間の範囲となるように、PECVD(300°C、13.56MHz)によってp型ドープ基板の上部面に堆積される。
【0058】
3.反射防止層の領域が選択的に照射され、レーザードーピングによってn++エミッタを形成する。このレーザードーピングは、515ナノメートル波長を有するパルスレーザーを用いて実施される。パルスの持続時間は20nsであり、300kHzの周波数を有し、1.7Wの電力に対応する。こうして得られたn++領域の直径は、レーザー焼成に対して40マイクロメートルである。より大きな寸法の領域が、衝撃点を変えてレーザー焼成を繰り返すことによって得られ得る。
【0059】
4.電気接点が、シルクスクリーニングメタライゼーションによって形成される。並列ラインの形態であるn接点が銀ペーストで作られ(デュポン(Dupont)のPV142)、マスク開口は70マイクロメートルであり、開口目盛りは2.1ミリメートルであり、n++領域上に整列される。
【0060】
p接点が、基板の下部面全体に堆積されたアルミニウムペースト(モノクリスタル(Monocrystal)のPASE1202)で形成される。このような接点は、BSF現象を提供する強pドーピング領域を形成する。
【0061】
5.nエミッタ並びにn接点及びp接点の拡散による形成が、1,000°Cの温度、4,000mm/minの通過速度で、セントロサーム(Centrotherm)赤外線加熱炉において単一ステップで実施される。
【符号の説明】
【0062】
1 シリコン基板
2 反射防止層
3 n接点
4 p接点
5 nエミッタ
6 n++エミッタ
7 反射防止層
図1
図2