【実施例】
【0047】
実施例1
MOHAによるBCAT1酵素活性の阻害
MOHAのBCAT1酵素活性を阻害する能力を、分光光度法により確認した。この実験において、0.1mgのMDA−MB−231腫瘍細胞において見出されるBCAT1を、0.25μLの抗BCAT1抗体及び5μLのプロテインAアガロースビーズ(Invitrogen)を使用して免疫沈降した。ビーズをピリドキサール5’−リン酸(PLP)5μL、硫酸アンモニウム50mM、NADH0.05mM、DTT5mM、α−ケトグルタル酸5mM、ロイシン10mM、及びロイシンデヒドロゲナーゼ(EMD Chemicals)0.95U、並びに様々な濃度のMOHAを含有する反応緩衝液95μLに添加した。BCAT1結合ビーズの反応混合物への添加は、NADHの消費を導き、これは分光光度法により測定された(励起:330nm〜370nm;発光:450nm)。その後、10分間に亘って蛍光発光の変化率を推定した(10サイクル;1サイクル/分)。アッセイを、96ウェルプレートにおいて3回繰り返し行った。
図1は、MOHAが>100nMの濃度でBCAT1の酵素活性を阻害することを示している。
【0048】
実施例2
CD147の細胞表面での発現の阻害
MDA−MB−231細胞を35mm培養皿に播種し、約80%培養密度になるまで成長させた。その後、それらを25mMのMOHAで24時間処理した。実験の終わりに、細胞を、使用説明書に従ってEZ−Link Sulfo−NHS−Biotin(Pierce, Thermo Scientific)を使用した表面ビオチン化に供した。細胞溶解に続き、Immobilized Neutravidin Biotin Binding Protein(Pierce, Thermo Scientific)を使用して、ビオチン化タンパク質を等量(約0.4mg)の細胞溶解物から免疫沈降させ、75℃で10分間加熱することによって還元条件下でローディングバッファー中に溶出した。溶出されたビオチン化タンパク質を、SDS−PAGE電気泳動、及びCD147に対するウェスタン免疫ブロッティングに供した。また、この実験は、MOHA処理がん細胞に存在するCD147の総濃度を決定する手段として、非ビオチン化細胞溶解液0.2mgを含んでいた。
図2は、MOHAで処理されたMDA−MB−231細胞は、CD147の細胞表面での発現の下方制御を生じることを示している。
【0049】
実施例3
MMP2分泌の阻害
ヒト腫瘍におけるMMPの大半が、腫瘍細胞よりも間質線維芽細胞により産生されることから、がんにおけるMMP産生に対するBCAT1阻害剤の効果は、線維芽細胞を使用することによってより良く理解される。96ウェルプレートに播種されたコンフルエントなHDF単層を、2%BSAを含有する無血清DMEM中において、0mM、10mM、又は25mMのMOHAで処理した。培養上清を24時間後に採取した。存在する細胞数に対して標準化した後、馴化培地を非還元条件下でゼラチン酵素電気泳動解析に供した。50mM Tris緩衝溶液(pH7.5)中の2.5%Triton X−100において短い(30分の)インキュベーションを行って分解されたタンパク質を復元した後、ゲルを1%Triton X−100、CaCl
2 5mM及びZnCl
2 10μΜを含有する50mM Tris(pH7.5)において37℃で16時間インキュベートした。その後、ゲルをBlue Stain Reagent(Thermo Scientific)を使用して染色した。濃く染色されたタンパク質バックグラウンドに対する消化されたゼラチンの明るい領域として、MMPを可視化した。MMP2は、分子量によって決定される、HDFによって分泌される主要なゼラチナーゼである。
図3は、25mMのMOHAでHDFを処理した後にMMP2の濃度が70%まで減少していることを示している。
【0050】
実施例4
がん細胞増殖の阻害
MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−435、又はHT−29がん細胞を、1ウェル当たり2000細胞の細胞密度で96ウェルプレートに播種した。様々な濃度のMOHAで処理する前に、細胞を一晩接着させた。その後、それらを72時間に亘って増殖させた。Cyquant proliferation kit(Invitrogen)を使用してアッセイの最後に細胞数を決定した。
図4は、MOHAが、5mM〜10mMのIC
50値で腫瘍細胞の細胞増殖を阻害することを示している。
【0051】
実施例5
MOHAによる治療後の4T1乳癌を有するマウスの腫瘍成長の抑制
Balb/c雌マウスの乳腺脂肪体に、2×10
5のマウス4T1乳がん細胞を注入した。腫瘍細胞の接種から3日後に治療を開始し、9日間に亘って継続した。この調査は2つの動物群(n=8/群)を含む。コントロールマウスはビヒクル(PBS)を受け、治療マウスは表示される用量のMOHAの腹腔内投与を毎日受けた。腫瘍細胞の接種から12日後に治療を終了し、MOHAの最後の処置から2日後に終わらせた。
図5より、調査の終了時において、MOHAを受けたマウスは、約50%にも及ぶ原発腫瘍増殖の低減を経験していることが示された。
【0052】
実施例6
MOHAによる処理後のLPS刺激マクロファージのTNFα分泌の阻害
ヒト単球THP−1細胞(7.5×10
4細胞/96ウェルプレートのウェル)に由来するマクロファージを、200nMのPMAで96時間に亘って刺激した後に、MOHA不在下及び種々の濃度のMOHAの存在下において無血清培地中で6時間に亘って1μg/mLのLPSで活性化した。その後、馴化培地を採取し、細胞数当たりに標準化して、Biolegendから入手したELISAキットを使用してTNFαの存在を解析した。
図6は、THP−1由来マクロファージをMOHAで処理した後のTNFα分泌の抑制を示している。
【0053】
実施例7
CypA活性化の存在下又は不在下におけるマクロファージのMOHAによる処理後のMMP9分泌の阻害
ヒト単球THP−1細胞に由来するマクロファージを、200nMのPMAで96時間刺激した後に、200ng/mLのシクロスポリンA(CypA)の不在下又は存在下において、無血清培地中で24時間に亘り10mMのMOHAで処理した。接着した細胞に等しい数に対応する馴化培地を、SDS−PAGE電気泳動、及びMMP9に対するウェスタン免疫ブロッティングに供した。タンパク質発現レベルを、Image Jにより推定した。
図7は、10mMのMOHAで処理された後の非刺激及びCypA刺激THP−1−由来マクロファージからのMMP9分泌の阻害を示している。
【0054】
実施例8
MOHAによる治療後のコラーゲン誘発関節炎(CIA)を伴うマウスにおける関節炎の阻害
6〜8週齢のDBA/1マウスの尾の付け根に、完全フロイントアジュバント中に乳化されたウシII型コラーゲン100mgを皮下注射した。免疫化から21日目に、マウスに不完全フロイントアジュバント中に乳化されたウシII型コラーゲン100mgの追加抗原注射を与えた。この実験には2つの群(n=10)が含まれ、各群は4週間に亘って週末を除き毎日、経口で1000mg/KgのMOHA又はビヒクル(Cremophor El)コントロールを受けた。関節炎の臨床症状が視認され、疾患が確立した場合に治療を開始した。
【0055】
関節炎の進行は隔日で評価され、以下の0〜4のスケールに基づいてスコア付された:0=浮腫又は腫れがない、1=僅かな浮腫、及び足又は足首に限定される紅斑、2=中等度から重度の浮腫、及び足又は足首に限定される紅斑、3=浮腫及び手足全体の紅斑、並びに4=複数の関節を含む四肢の最大の炎症。動物当たりの関節炎の最大スコアは16であった。
【0056】
試験の終わりに、最終的な血清を採取し、炎症性サイトカイン及び骨びらんに関与するタンパク質の存在を解析した。さらに、組織学的評価のため各群より3本の前足及び4本の後ろ足を選択した。切片を盲検的に評価し、ここに示されるスケールに従って炎症、パンヌス浸潤、軟骨損傷、及び骨びらんをスコア付した。
【0057】
炎症:0=正常、1=発症した関節の滑膜及び関節周囲組織における炎症細胞の最少の浸潤、2=手足が発症した関節に限定される場合、軽度の浸潤;3=手足が発症した関節に限定される場合、中等度の浮腫を伴う中等度の浸潤、4=顕著な浮腫を伴うほとんどの領域に影響を及ぼす顕著な浸潤、5=重度の浮腫を伴う重度のびまん性浸潤。
【0058】
パンヌス:0=正常;1=軟骨及び軟骨下骨におけるパンヌスの最少浸潤;2=発症した関節における硬組織の辺縁帯破壊を伴う軽度の浸潤;3=発症した関節における中等度の硬組織破壊を伴う中等度の浸潤;4=関節構造の顕著な破壊を伴う顕著な浸潤、ほとんどの関節;5=全て又はそれに近い関節構造の破壊と関連する重度浸潤、全ての関節に影響を及ぼす。
【0059】
軟骨損傷:0=正常、1=最少=発症した関節における明白な軟骨細胞の減少又はコラーゲン破壊を伴わないトルイジンブルー染色の最少から軽度の減少;2=軽度=発症した関節における限局性の軽度の(表在性)軟骨細胞の減少及び/又はコラーゲン破壊を伴うトルイジンブルー染色の軽度の減少;3=中等度=発症した関節における多発性の軽度の(中間層までの深さ)軟骨細胞の減少及び/又はコラーゲン破壊を伴うトルイジンブルー染色の中等度の減少;4=顕著=ほとんどの関節における多発性の顕著な(深層までの深さ)軟骨細胞の減少及び/又はコラーゲン破壊を伴うトルイジンブルー染色の顕著な減少;5=重度=全ての関節における多発性の重度の(石灰化線までの深さ)軟骨細胞の減少及び/又はコラーゲン破壊を伴うトルイジンブルー染色の重度びまん性減少。
【0060】
骨再吸収:0=正常;1=最少=小さい再吸収領域、低倍率ではすぐに明らかではない、発症した関節において稀な破骨細胞;2=軽度=より多くの再吸収領域、低倍率ではすぐに明らかではない、発症した関節におけるより多くの破骨細胞;3=中等度=皮質における全層欠損を伴わない骨髄海綿(medullary trabecular)骨及び皮質骨の明白な再吸収、一部の骨髄海綿骨の減少、低倍率で明らかな傷害、発症した関節におけるより多くの破骨細胞;4=顕著=皮質骨における全層欠損、しばしば、残存する皮質表面のプロファイルの歪みを伴う、髄骨の顕著な減少、多数の破骨細胞、ほとんどの関節に影響を及ぼす;5=重度=皮質骨における全層欠損及び全ての関節の関節構造の破壊。
【0061】
図8は、MOHAによる治療後のコラーゲン誘発関節炎CIAを伴うマウスにおける関節炎の症状発現の実質的な阻害を示している。
図9は、CIAを有するマウスのMOHAによる治療後に検査された全ての組織学的パラメーターの実質的な阻害を示している。骨再吸収に対するMOHAの効果は、最も明白であり、MOHAが骨びらんの低減に特に効果的であることを示している。
図10は、CIAを有するマウスのMOHAによる治療後の循環RANKL濃度の減少を示す。
【0062】
実施例9
MOHAによる処理後のMC3T3前駆破骨細胞のRANKL分泌の阻害
MC3T3前駆破骨細胞を、7.5×10
4細胞/ウェルの細胞密度で96ウェルプレートに播種し、一晩接着させた。その後、それらを1μg/mLのLPSで刺激し、種々の濃度のMOHAで24時間に亘って処理した。その後、馴化培地を採取し、細胞数当たりに標準化し、Abcamから入手したELISAキットを使用してRANKLの存在を解析した。
図11は、MOHAによる処理後のLPS刺激MC3T3細胞のRANKL分泌の阻害を示している。
【0063】
本明細書において参照される全ての記録、論文及び出版物には、書籍、学術論文、取扱説明書、特許出願、公開特許出願及び特許が含まれ、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。