特許第6053771号(P6053771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053771
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】界面活性剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/22 20060101AFI20161219BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20161219BHJP
   C09K 8/584 20060101ALI20161219BHJP
   C09K 8/035 20060101ALI20161219BHJP
   C10M 159/24 20060101ALI20161219BHJP
   B01F 17/12 20060101ALI20161219BHJP
   C23G 5/06 20060101ALI20161219BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20161219BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C11D1/22
   C11D3/37
   C11D3/20
   C11D3/395
   C11D3/04
   C09K8/584
   C09K8/035
   C10M159/24
   B01F17/12
   C23G5/06
   C10N30:04
   C10N40:20
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-517504(P2014-517504)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公表番号】特表2014-525947(P2014-525947A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012002705
(87)【国際公開番号】WO2013000571
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】11005239.6
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブス−ザウター,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】ブライツケ,ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ショーエンカエス,ウド
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】ジュッフリーダ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】マセソン, リー
(72)【発明者】
【氏名】キンスレー,カーミット
(72)【発明者】
【氏名】コックス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル,ジェフリー リン
(72)【発明者】
【氏名】ウィンダー,ジョン バリー
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−533649(JP,A)
【文献】 特表2004−526017(JP,A)
【文献】 特表2004−530022(JP,A)
【文献】 特表2001−511474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/22
B01F 17/12
C09K 8/035
C09K 8/584
C10M 159/24
C11D 3/04
C11D 3/20
C11D 3/37
C11D 3/395
C23G 5/06
C10N 30/04
C10N 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアリールスルホン酸塩分子を含む界面活性剤組成物であって、前記界面活性剤組成物の前記アルキルアリールスルホン酸塩分子の30重量%より多くが、互いに独立して、式:
[R−X−Ar(SO[Mn+
の1種以上の化学種であり、式中、
Xは、直鎖非環式脂肪族ヒドロカルビル鎖であり、
Rは、Xの非末端炭素原子に結合しており、かつHならびにC1、C2およびC3アルキル基から選択され、
XおよびRは、合わせて10個の炭素原子を有し、
Arは、フェニルであり、
Mは、カチオンであり、
nは、1、2および3から選択され、かつ
aおよびbは、前記アルキルアリールスルホン酸塩分子が電気的中性となるように選択され、
ここで、前記界面活性剤組成物の前記アルキルアリールスルホン酸塩分子の20重量%より多くが、メチルであるRを有しており、かつ
前記界面活性剤組成物の前記アルキルアリールスルホン酸塩分子の40重量%より多くが、Xの2個の末端炭素原子のうちのいずれかに結合している炭素原子(ヒドロカルビル鎖X上のβ位)に前記フェニル基を結合させている、
界面活性剤組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤組成物の前記アルキルアリールスルホン酸塩分子の40重量%より多くが、請求項1に記載される式の化学種である、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
a.補助界面活性剤
b.水溶性ポリマー
c.酵素
d.ビルダー
e.漂白剤
f.酸
g.塩基および
h.芳香剤
からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
他のアルキルアリールスルホン酸塩化学種またはアルキルアリールスルホン酸塩化学種の異性体混合物(例えば、1分子当たり9個〜14個の炭素原子を有する非環式脂肪族炭化水素鎖(疎水性)を有する分子、またはその疎水性鎖中にC11〜C14の同数の炭素原子を有する分子の異性体混合物)を含む、請求項3に記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルキルアリールスルホン酸塩化学種と、他のアルキルアリールスルホン酸塩化学種とを、30:70より大きい比で含む、請求項4に記載の界面活性剤組成物。
【請求項6】
水溶液における界面活性剤としての、請求項1〜5のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物の使用。
【請求項7】
前記水溶液が、50ppm(重量/重量に基づく)より高い、高いCa2+またはMg2+濃度を有する、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記水溶液が、3重量%より高いNaClの濃度を有する、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
前記水溶液が、5〜65℃の温度である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
洗濯用洗剤、特に10〜40℃の冷水条件下において固体汚れを除去するための洗濯用洗剤としての、請求項1〜5のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物の使用。
【請求項11】
強化石油採取(EOR)用界面活性剤、還流改善剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、掘削流体、フラクチャリング流体、スペーサー流体、ドリル切削洗浄剤、坑井洗浄剤および掘削流体用発泡剤からなる群から選択される油田およびEOR用途における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物の使用。
【請求項12】
分散助剤、防錆剤、冷却潤滑剤、中和剤、基油またはカルシウム塩としての過塩基性スルホン酸塩からなる群から選択される金属加工用途における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物の使用。
【請求項13】
テキスタイル加工、ペイント、インク、被覆剤および接着剤、乳化重合、顔料分散剤および湿潤助剤、ならびに作物保護製剤における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の界面活性剤組成物の使用。
【請求項14】
アルキルアリール分子を含む組成物であって、前記組成物の前記アルキルアリール分子の30重量%より多くが、式:
R−X−Ar
のものであり、式中、
Xは、直鎖非環式脂肪族ヒドロカルビル鎖であり、
Rは、Xの非末端炭素原子に結合しており、かつHならびにC1、C2およびC3アルキル基から選択され、
XおよびRは、合わせて10個の炭素原子またはその両方を有し、
Arは、フェニルであり、
ここで、界面活性剤組成物の前記アルキルアリール分子の20重量%より多くが、メチルであるRを有し、かつ
前記界面活性剤組成物の前記アルキルアリール分子の40重量%より多くが、Xの2個の末端炭素原子のいずれかに結合している炭素原子(ヒドロカルビル鎖X上のβ位)に前記フェニル基を結合させている、
組成物。
【請求項15】
アルキルアリール分子を含む請求項14に記載の組成物であって、前記組成物の前記アルキルアリール分子の40重量%より多くが、請求項14に記載された式のものである、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルベンゼンスルホン酸塩、すなわちアルキルベンゼンのスルホン化誘導体は、界面活性剤が必要とされる様々な用途(洗剤、硬質表面洗浄剤、掘削流体、切削液など)において一般的に使用されている公知の界面活性剤である。アルキルベンゼン分子は、典型的には石油ベースの供給原料からの炭化水素の沸点範囲画分を蒸留することによって生成される、非環式脂肪族アルキル鎖を含む。この沸点範囲画分は、典型的に、1分子当たり10個〜13個の間の炭素原子を有する炭化水素(C10〜C13炭化水素)を主として含有する。このアルキル鎖は、典型的に、脱水素され、ベンゼンとアルキル化されて、アルキルベンゼン、すなわちアルキルベンゼンスルホン酸塩分子の疎水性部分を形成する。このアルキルベンゼン分子はさらに、典型的には三酸化硫黄によるスルホン化により誘導体化されて、アルキルベンゼンスルホン酸塩を生成する。ここで、スルホン酸塩基は、アルキルベンゼンのベンゼン部分に結合しており、界面活性剤分子の親水性部分である。
【0003】
過去には、高分岐アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)界面活性剤が、洗剤において使用されていた。しかしながら、これらは、低生分解性であることが分かり、易生分解性の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)に取って代わられた。LASに対するさらなる改善は、「改変LAS」すなわち「MLAS」(MLAS)の生成を含み、これは、LAS分子に対する2つの改変、すなわち、界面活性を改善する、より高い濃度の2−フェニル異性体と、溶解度を改善する、アルキル鎖への限られた量のメチル分岐の導入とからなる。
【0004】
典型的なアルキルベンゼンスルホン酸塩は、それらの利用可能性および優れた費用/性能属性により普及しているが、それらは、硬水イオン(カルシウムおよびマグネシウムイオン)による相互作用を被り易く、これが、それらの溶解度、したがって界面活性剤として機能するそれらの能力を、効果的に低下させる。より冷たい温度が、この作用を悪化させる。C10〜13MLASでさえも、界面活性および溶解度に関して改善されてはいるが、水硬度イオン(water hardness ion)および/またはより冷たい水温により悪影響を受ける。
アルキルアリールスルホン酸塩を含む界面活性剤組成物は、例えば欧州特許出願公開第2233461A1号明細書、英国特許第917432A号明細書および英国特許第1068528A号明細書から知られており、このうち欧州特許出願公開第2233461A1号明細書は、2−フェニル異性体を含む高直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩をより詳細に開示している。本発明は、少なくとも2−フェニルを含むアルキルベンゼンスルホン酸塩の含有量が40重量%より多くかつ高度のメチル分岐がアルキル鎖に存在する点で、上記の従来技術と異なっている。
【0005】
したがって、界面活性剤または洗剤組成物の有効性を評価するために、種々の性能パラメータ(例えば、固有洗浄力性能(洗浄能力)、Ca2+(水硬度)耐性、表面活性、塩(NaCl)耐性および冷水洗浄力性能)を測定することが重要であろう。
【0006】
固有洗浄力の試験は、界面活性剤の洗浄能力の目安を与えるものであり、したがって洗浄力性能の試験である。Ca2+耐性/濁度測定は、水硬度に応じた、界面活性を得るために有効な可溶性界面活性剤レベルに関する情報を提供する。水硬度の上昇(カルシウムイオン量の増加)に伴って、LAS型界面活性剤の溶解度は通常は低下し、界面活性剤が沈殿し始め、溶液が濁る。
【0007】
界面活性剤組成物の界面活性を評価するために、界面活性剤組成物の表面張力が、水硬度に応じて測定され得る。界面活性を最大化するために、この測定により、所与の界面活性剤についての最適溶解度条件が決定される。
【0008】
動的表面張力測定は、表面寿命に応じた表面張力(または界面活性)の測定である。特に、洗濯および洗浄などの動的プロセスについては、界面活性剤の動的特性の方が、静的特性よりもはるかに重要である。
【0009】
塩(NaCl)耐性は、高イオン強度の溶液への界面活性剤の溶解度を測定することによって求められる。溶液の透明度の測定は、特定の塩濃度における界面活性剤の溶解度の目安を与える。高い塩耐性は、高い塩負荷量が見られる技術的用途にとって重要であろう。例としては、原油回収増進(EOR)、乳化重合または金属加工流体が挙げられる。
【0010】
最後に、界面活性剤の冷水洗浄力性能を、それの冷水条件下において固体汚れを除去する能力を測定することによって評価することも重要であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、易生分解性であり可溶性であることおよび良好な表面活性を有することに加えて、著しく改善された硬水耐性、すなわち、より高い水硬度および低温条件において良好な物理的用途(洗濯)特性を有し、かつイオン強度に対する優れた耐性を有する、新規の界面活性剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、アルキルアリールスルホン酸塩分子を含む界面活性剤組成物であって、その界面活性剤組成物のアルキルアリールスルホン酸塩分子の30重量%より多く、好ましくは40重量%より多く、最も好ましくは50重量%より多くが、互いに独立して、式:
[R−X−Ar(SO[Mn+
の1種以上の化学種(好ましくは混合物)であり、式中、
Xは、直鎖非環式脂肪族ヒドロカルビル鎖であり、
Rは、Xの非末端炭素原子に結合しており、かつH、C1、C2およびC3アルキル基から、あるいはC1、C2およびC3から選択され、
XおよびRは、合わせて10個の炭素原子を有し、
Arは、フェニルであり、
Mは、Hまたは別のカチオン、典型的にはNaなどのアルカリ金属、または他のカチオン(例えば、Ca2+、Mg2+、K、NH、モノ−イソプロパノールアミンなどの(アルカノール−)アミンまたは他の窒素含有カチオン)であり、
nは、1、2および3から選択され、かつ
aおよびbは、アルキルアリールスルホン酸塩分子が電気的中性となるように選択され、
ここで、当該界面活性剤組成物のアルキルアリール分子の20重量%より多くが、メチルであるRを有している、
界面活性剤組成物が提供される。
【0013】
当該界面活性剤組成物のアルキルアリールスルホン酸塩分子の40重量%より多く、より好ましくは60重量%より多く、最も好ましくは70重量%より多くが、Xの2個の末端炭素原子のいずれかに結合している炭素原子(ヒドロカルビル鎖X上のβ位)に、すなわち2−フェニル異性体位置で、フェニル基を結合させている。
【0014】
好ましくは、当該界面活性剤組成物のアルキルアリールスルホン酸塩分子の50重量%より多くが、メチルまたはエチル、最も好ましくはメチルであるRを含む。
【0015】
アルキルアリールスルホン酸塩は、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。
【0016】
当該界面活性剤組成物は、以下からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含み得る。
a.補助界面活性剤
b.充填剤
c.水溶性ポリマー
d.酵素
e.ビルダー
f.漂白剤
g.酸
h.塩基
i.芳香剤および
j.pH、粘度特性および溶解度を調整するように設計された他の薬剤。
【0017】
当該界面活性剤組成物は、他のアルキルアリールスルホン酸塩化学種またはアルキルアリールスルホン酸塩の異性体混合物をさらに含み得る。当該組成物は、1分子当たり9個〜14個の炭素原子を有する非環式脂肪族炭化水素鎖(疎水性)を有する分子の異性体混合物を含み得る。そうした「従来の」アルキルアリールスルホン酸塩混合物は、典型的に、それらの疎水性鎖中の炭素原子数による分子分布を含む。典型的に、この分布は、疎水性鎖中に10個の炭素原子を有する分子を10〜25重量%含む。当該組成物はまた、その疎水性鎖中にC11〜C14の同数の炭素原子を有する分子の異性体混合物、例えば、その疎水性鎖中に12個の炭素原子を有する分子の混合物を含み得る。そうした混合物は、例えばブテンのオリゴマー化により、商業的に製造されている。
【0018】
当該界面活性剤組成物は、50:50の比までの、30:70より大きい、好ましくは40:60より大きい比の、本発明に従うアルキルアリールスルホン酸塩化学種と、他のアルキルアリールスルホン酸塩分子の化学種とを含み得る。
【0019】
本発明はまた、水溶液または油を基剤とした溶液における界面活性剤としての、上記の界面活性剤組成物の使用を対象として含む。
【0020】
水溶液は、50ppmより高い、90ppmより高い、特に135ppmより高い、180ppmより高い、さらには300ppmより高い、高いCa2+またはMg2+濃度を有し得る。
【0021】
水溶液は、高いイオン強度、例えば、3%より高い、特に4%より高い、さらには6%より高いNaCl濃度を有し得る。
【0022】
水溶液は、5〜65℃、好ましくは10〜40℃の温度であり得る。上記の界面活性剤組成物は、洗濯用洗剤としての、特に冷水条件(10〜40℃)下において固体汚れを除去するための、特定の用途を見出す。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、界面活性剤組成物は、油田および原油回収増進(EOR)用途(例えば、化学的EOR用界面活性剤、還流改善剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、掘削流体、フラクチャリング流体、スペーサー流体、ドリル切削洗浄剤、坑井洗浄剤、掘削流体用発泡剤)における使用に適用され得るであろうが、これらに限定されない。
【0024】
なおさらなる例には、金属加工用途および潤滑剤用途(例えば、分散助剤、防錆剤、冷却潤滑剤、中和剤、基油、またはカルシウム塩としての過塩基性スルホン酸塩)が含まれ得るであろう。
【0025】
用途には、テキスタイル加工、ペイント、インク、被覆剤および接着剤(例えば、乳化重合、顔料分散剤および湿潤助剤のため)、作物保護製剤、または表面活性特性が望まれるあらゆる他の用途における使用もまた含まれ得るであろう。
【0026】
本発明はまた、アルキルアリール分子を含む組成物であって、その組成物のアルキルアリール分子の30重量%より多く、好ましくは40重量%より多く、最も好ましくは50重量%より多くが、互いに独立して、式:
R−X−Ar
のもの(好ましくは混合物である)であり、式中、
Xは、直鎖非環式脂肪族ヒドロカルビル鎖であり、
Rは、Xの非末端炭素原子に結合しており、かつHならびにC1、C2およびC3アルキル基から、あるいはC1、C2およびC3から選択され、
XおよびRは、合わせて10個の炭素原子を有し、
Arは、フェニルである、
特にアルキルアリールスルホン酸塩分子を含有する界面活性剤組成物の製造における使用のための組成物に関し、ここで、その界面活性剤組成物のアルキルアリール分子の20重量%より多くが、メチルであるRを有している。
【0027】
当該組成物のアルキルアリール分子の40重量%より多く、より好ましくは60重量%より多く、最も好ましくは70重量%より多くが、Xの2個の末端炭素原子のいずれかに結合している炭素原子(いずれかの末端炭素原子に対してα位)(これは、一般に「2−フェニル」異性体位置と称される)に、フェニル基を結合させている。
【0028】
好ましくは、当該組成物(混合物)のアルキルアリール分子の50重量%より多くが、メチルまたはエチル、最も好ましくはメチルであるRを有している。
【0029】
アルキルアリール分子は、アルキルベンゼンである。
【0030】
本発明の利点は、以下の図、特定の実施形態の詳細な説明を参照して、および下記の実施例から、当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、40℃における、他のLAS化学種と比較したC10MLASの固有洗浄力を示すグラフである。
図2図2は、20℃における、C10MLASとC1013LASとの混合物のカルシウム耐性を示すグラフである。
図3図3は、20℃における、C10MLASとC1013LASとの混合物のカルシウム耐性を示すグラフである。
図4図4は、40℃における、C10MLASとC1013LASとの混合物のカルシウム耐性を示すグラフである。
図5図5は、他のLAS化学種と比較したC10MLASについての動的表面張力曲線を示すグラフである。
図6図6は、25℃および90ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図7図7は、25℃および90ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図8図8は、25℃および180ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図9図9は、25℃および180ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図10図10は、40℃および180ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図11図11は、40℃および180ppmのCa2+における、C10MLASとC1013LASとの混合物の表面寿命に対する表面張力値を示すグラフである。
図12図12は、他のLAS化学種と比較した、C10MLASの塩耐性を示すグラフである。
図13図13は、冷水条件下において固体汚れを除去するために従来の洗濯用洗剤にC10MLASおよびC10LASを添加することによる利益を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、特に、メチル分岐(典型的には50+%=モノ−メチル分岐)および2−フェニル異性体位置におけるフェニル異性体の高分布(典型的には80+%=高2−フェニル)により改変されたLASである改変アルキルベンゼンスルホン酸塩(MLAS)を含む、界面活性剤組成物に関する。
【0033】
MLASの調製は、標準LASを製造するために通常使用されるもの以外に2つのものを必要とし、それらは、分岐パラフィンまたはオレフィンの供給源、および高2−フェニル異性体含有量をもたらすアルキル化触媒である。市販のLASは、従来より、まず灯油から直鎖パラフィンを抽出し、次いでパラフィンを脱水素化してオレフィンを生成し、次いでこれを、ベンゼンとアルキル化させて直鎖アルキルベンゼン(LAB)を生成し、次いでこれを、発煙硫酸またはSO−空気混合物でスルホン化してLASを形成することによって製造されている。メチル分岐パラフィンは、直鎖パラフィンを異性体化して分岐パラフィンを形成することによって製造され得、または、より短い鎖のオレフィンを二量体化して、分岐オレフィンを形成することができるであろう。また、分岐パラフィンおよび/または分岐オレフィンを、燃料流れから選択的に抽出することができるであろう。
【0034】
本発明の界面活性剤組成物は、特に、種々の性能パラメータ(例えば、固有洗浄力性能(洗浄能力)、Ca2+(水硬度)耐性、表面活性および塩(NaCl)耐性)に関して評価された。また、本発明の界面活性剤組成物の性能は、冷水汚れ除去についても測定された。
【0035】
図1を参照すると、40℃における固有洗浄力の試験は、本発明のC10MLASが、より低い(90ppmより低い)Ca2+濃度において、C1013LAS試料、C11MLAS試料およびC1213MLAS試料である他の界面活性剤試料と比較して、より低い性能を有することを示している。しかしながら驚くべきことに、C10MLASは、90ppmより高い、特に135ppmより高い、少なくとも180ppmまでの、より高いCa2+濃度において、ますます高まる性能を示す。
【0036】
図2は、高められたCa2+濃度(水硬度の上昇)を含有する溶液中の、市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)に勝るC10MLASの有益な効果を示している。また、この図は、市販のLASについての改善された硬水耐性の利益を得るために70重量%以上の量のC10MLASを市販のLASと混合することによる相乗効果を示している。この効果は、既に150ppmのCa2+において、特に、200ppmのCa2+より高い、少なくとも250ppmのCa2+までにおいて明らかである。
【0037】
図3は、(およそ175ppmのCa2+を含有する溶液において)10%しかC10MLASを加えなかった場合に既に、C1013LASと混合される場合のC10MLASの有益な効果を示している。50/50混合物は、100%C10MLASの試験の結果と非常に類似した結果を示しており、その効果は、少なくとも350ppmのCa2+まで著しい。市販のC1013LASは、10.5重量%のC10分子を含むものであり、この図はしたがって、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含む洗剤組成物であって、LAS分子は炭化水素鎖に結合したフェニル基を含むところ、30重量%より多く、好ましくは40重量%より多く、最も好ましくは50重量%より多くのLAS分子がC10の炭化水素鎖を有するものである洗剤組成物の利益もまた示している。この図はさらに、洗剤組成物のC10含有量を増加させてLASについての改善された硬水耐性を得るために、C10MLASをC1013LASと混合することによって得られ得る利益を示している。図4は、40℃のより高い温度で行われた同じ試験についての同様の傾向を示している。
【0038】
上記のデータに基づく別の重要な態様は、より広範な一連のスルホン酸塩(カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む)を利用する可能性である。高い水硬度において可溶のままでいる能力は、カルシウム塩および/またはマグネシウム塩(または他の同様なカチオン)としてスルホン酸塩を提供する能力と相関する、というのは、これらの塩は、従来のLASのカルシウム塩およびマグネシウム塩と比べて、配合および使用のために適切に水に溶解するからである。
【0039】
図5は、C10LASおよび特にC10MLASが、より高いCa2+濃度においてC1013LASおよび市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)よりも良好な表面張力特性を有することを示している。C10MLASについて、他のLAS化学種と比べた場合、この効果は、既に50ppmのCa2+濃度において、特に150ppmより高いCa2+濃度において明らかである。
【0040】
図6は、C10MLASと市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)との混合物が、既に10重量%のC10MLASにおいて、純粋なSolfodacよりも低い表面張力(s.t.)値を示すことを示している。これらの実験は、90ppmの一定のCa2+濃度で行われ、表面張力が、表面寿命に関してモニタリングされた。さらに、C10MLASとC1013LASとの混合物もまた、図7において、50重量%のC10MLASで、表面寿命に対する表面活性についての良好な改善を示す。これは、若い表面(短時間)について特に当てはまる。この効果は、より長い時間においてはより長鎖の物質も低い表面張力に達するため横ばいになる。したがって、図6および図7は、C10MLASを他のLAS化学種(例えば、市販のLASおよびC1013LAS)と混合することによって得られ得る界面活性に関するさらなる利益を示している。
【0041】
図8〜11は、C10MLASを他のLAS化学種(例えば、市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)およびC1013LAS)と混合することによって得られ得る、表面寿命に関してモニタリングされる界面活性に関する利益(より低い表面張力)を、さらに一層高い水硬度レベル(180ppmのCa2+)において裏付けている。図8は、市販のLAS(Solfodac(登録商標))への30重量%のC10MLASの添加から既に著しい利益を示しており、一方、図9は、C1013LASへの10重量%のC10MLASの添加についての明確な利点を示している。図10および図11に示されるように、全体的な性能は、25℃よりも40℃においての方がいくらか高かった。
【0042】
図12は、C10MLASが、市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)に比べて、高塩負荷(NaCl)による影響をそれほど受けないことを示している。従来のLAS(Solfodac(登録商標))の沈殿は約3%のNaCl濃度において見られたが、C10MLASは、ほぼ5%の塩負荷まで沈殿を開始しなかった。混合物もまた、従来のLASよりも良好な塩耐性を示した。
【0043】
図13は、冷水洗浄力を促進するため、特に冷水条件下で固体汚れを除去するために、従来の洗濯用洗剤混合物(DET)にC10MLASおよびC10LASを添加することによる利益を示している。主要な市販の液体洗濯用洗剤混合物が、そのような洗剤混合物と本発明の界面活性剤組成物(C10MLAS)との1:1ブレンドほどよく機能しないことは明らかである。優れた冷水洗浄力性能は、そのような洗剤と本発明の界面活性剤組成物C10LASとの1:1ブレンドについても観察された。これらの結果と対照的に、市販の液体洗濯用洗剤混合物とC1114LAS(低2−フェニル)界面活性剤試料との1:1ブレンドは、冷水洗浄力性能の明確な低下を示す。
【0044】
したがって、本発明によれば、非常に驚くべきことに、フェニル基を炭化水素鎖に結合させた直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)を含む界面活性剤または洗剤組成物であって、30重量%より多く、好ましくは40重量%より多く、最も好ましくは50重量%より多くのLASがC9および/またはC10、最も好ましくはC10である炭化水素鎖を有する界面活性剤または洗剤組成物が、
・顕著な硬水耐性およびそれに対応して
・より高いCa2+負荷量および冷水温において良好な物性および用途(洗濯)特性を
・イオン強度に対する優れた耐性と共に
有することが見出された。
【0045】
好ましいLASは、高2−フェニルの、好ましくはモノ−メチル分岐された、改変LAS(MLAS)である。LASについての2−フェニル異性体は、LASフェニル異性体のうち最も溶解しにくいものであり、バルク水溶解度を低下させる分子は、カルシウム−界面活性剤塩についての溶解含有量(solubility content)(Ksp)を低下させるであろうことが予想されるであろう。しかしながら、これに反して、特に高2−フェニル含有量を有する、C9および/またはC10の範囲内のLASは、バルク溶解度を減じながらもカルシウムの耐性を高めることが示された(見掛けのKspを上昇させる)。
【0046】
使用法および用途
本発明のMLASは、アニオン界面活性剤として使用され得、特に、洗剤および洗浄剤ならびに工業的用途および化学技術的用途に好適である。
【0047】
開示されるMLASは、多様な家庭用ならびに工業および施設用(I&I)洗浄製剤において適用され得る。典型的な用途の例としては、洗浄剤、手洗い食器洗い用液体洗剤、洗濯用洗剤、洗濯用予備しみ抜き剤(pre−spotter)、ドライクリーニング用製品、およびパーソナルケア製品が挙げられる。本発明に従う消費者洗浄用製品は、液体、ゲル、ペースト、粉末、顆粒、錠剤、バー、およびパウチを含む様々な物理的形態を取り得る。
【0048】
本発明はさらに、慣用の成分に加えて50重量%まで、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.1〜15重量%の濃度で本発明のMLASを含有する、洗剤および洗浄製剤を提供する。
【0049】
本発明のMLASに加えて、本発明の組成物および製剤は、他のアニオン、非イオンもしくはカチオン界面活性剤、またはそれらの混合物をも含有し得る。本発明の改変アルキルベンゼンスルホン酸塩と共に使用され得る慣用の界面活性剤は、例えば、Kurt KosswigによりUlmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Vol.A25(1994),p.747−818に記載されている。界面活性剤は、典型的には、1%〜60%のレベルで組成物および製剤中に存在する。
【0050】
存在し得る好適なアニオン界面活性剤としては、硫酸塩または他のスルホン酸塩型界面活性剤が挙げられる。他のスルホン酸塩型界面活性剤の例としては、従来の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、C10〜C13−LAS、C10〜C13−MLAS)、C13〜C17パラフィンスルホン酸塩、12〜20個のC原子の鎖長を有する、オレフィンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルスルホコハク酸塩、およびエステルスルホン酸塩(例えば、メチルエステルスルホン酸塩)が挙げられる。硫酸塩型界面活性剤の例としては、硫酸と合成および天然起源の脂肪アルコール(例えば、ココナツ脂肪アルコール、牛脂脂肪アルコール、オレイルアルコール、C8〜C18チーグラーアルコール、またはC10〜C20オキソアルコール)とのモノエステルが挙げられる。脂肪アルコールエーテル硫酸塩(例えば、ラウリルエーテル硫酸塩、C12〜C13アルコールエーテル硫酸塩、およびC12〜C15アルコールエーテル硫酸塩)もまた使用され得る。
【0051】
他の好適なアニオン界面活性剤は、飽和脂肪酸石鹸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸のアルカリ金属またはアルカノールアミン石鹸)を含む石鹸である。天然脂肪酸(例えば、ココナツ、パーム核または牛脂の脂肪酸)由来の石鹸混合物が好ましい。
【0052】
好適な非イオン界面活性剤としてはエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドと、アルキルフェノール、オキソアルコールまたは天然もしくはチーグラーアルコール、脂肪酸、脂肪アミンおよび脂肪酸アミドとの付加物が挙げられる。3〜15molのエチレンオキシドと、ココナツ脂肪アルコールおよび牛脂脂肪アルコールとの付加物、または8〜18個のC原子を有する合成アルコールとの付加物が、特に好ましい。また、商品名Biodac(登録商標)およびMarlox(登録商標)(Sasol)、Plurafac(登録商標)(BASF)、Dehypon(登録商標)LS(Cognis)で、および他の供給業者のもとで販売されている、既に市場にあるアルコール−EO−PO付加物が、使用され得る。C8〜C18−アルキルポリグルコシドおよびアミンオキシドを含む種類の界面活性剤もまた使用され得る。
【0053】
さらに、当該製剤中において、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤(例えば、両性電解質およびベタイン)を使用することが可能である。
【0054】
洗剤および洗浄剤のさらなる一般的な成分としては、ビルダー、酵素、ポリマー、漂白剤、漂白剤活性剤、充填剤、キャリア、加工助剤、香料、染料、可溶化剤、および液体製剤用溶媒が挙げられる。
【0055】
洗剤ビルダーは、本明細書における組成物中に好ましくは含まれ、固体製剤中においては、ビルダーは、場合によっては界面活性剤のための吸着剤として機能する。好適なビルダーとしては、アルカリ金属ケイ酸塩ビルダー、アルミノケイ酸塩ビルダー(例えば、ゼオライト)、リン酸塩、ホスホン酸塩、ポリカルボン酸塩、またはクエン酸塩が挙げられる。本発明の組成物は、0〜70%のビルダー成分を含み得る。酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、およびリパーゼ酵素またはそれらの混合物)もまた、5重量%までの濃度で組成物中に含まれ得る。
【0056】
洗剤および洗浄剤の分野における他に、本発明のMLASは、テキスタイル加工、金属加工、冷却潤滑剤、ペイント、油田用化学薬品、原油回収増進(EOR)、作物保護製剤、および工業的加工を含む、多様なさらなる用途において適用され得る。
【0057】
下記の実施例と共に、上記の図および特定の実施形態の詳細な説明は、本発明のより広い範囲を限定することが意図されるものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲内に含まれる、種々の改変物、等価物および代替形態を受け入れる。
【実施例】
【0058】
直鎖のメチル分岐したオレフィンをCBV20A H−モルデン沸石触媒を横切ってベンゼンとアルキル化させることによって、界面活性剤試料を調製した。これらのLABおよびMLAB試料を、薄膜スルホン化ユニットを用いてSOでスルホン化した。スルホン酸生成物を、30%活性スルホン酸ナトリウムを達成するように水酸化ナトリウムで中和した。
【0059】
以下の界面活性剤試料を使用した。
1)C10MLAS(高2−フェニル、モノ−メチル分岐)。
2)C10LAS(高2−フェニル、高直鎖)。
【0060】
他のLAS化学種。
1)C1013LAS(高2−フェニル、直鎖)。
2)C1213MLAS(高2−フェニル、モノ−メチル分岐)。
3)C11MLAS(高2−フェニル、モノ−メチル分岐)。
4)Solfodac(登録商標)AC−3−H(低2−フェニル、直鎖)[市販のC1013LAS]。
5)C1114LAS低2−フェニル(低2−フェニル、直鎖)。
【0061】
下記表1は、試験において使用された試料の詳細を示すものである。
【0062】
LAS/MLAS試料を調製するために使用されたパラフィン/オレフィンの供給源:
Olex:最初の原料は、原油由来の灯油である。オレフィンの基本的な特徴は、直鎖性(linearity)および内部オレフィンである。
Isalchem(登録商標)123、Isalchem(登録商標)11,Isalchem(登録商標)10:
最初の原料は灯油(原油)であり、それを用いて分岐アルコール(Isalchem)が調製されたものであり、これを脱水してメチルオレフィン(80+%メチル分岐)を生成する。
Aug−Pacol 1014:C10〜14パラフィン。Augusta,Italyで製造された灯油から抽出されたもの。
Solfodac(登録商標)AC−3−H:Terranovaから利用可能なUOP Detal技術により製造されたLABのスルホン化誘導体の商品名。
LC−Pacol 1213:C10〜14パラフィン。Lake Charles,USAで製造された灯油から抽出されたもの。
【0063】
【表1】
【0064】
分析方法:
直鎖アルキルベンゼン(LAB)および改変直鎖アルキルベンゼン(MLAB)試料を、以下の分析手順を用いて分析した。
【0065】
a.炭素鎖長、重量パーセント、および分岐を測定するためのキャピラリーGCおよびキャピラリーGCMS
水素炎イオン化検出(FID)または質量分析(MS)を伴うキャピラリーガスクロマトグラフィーにより、試料を分析した。GC条件を以下に示す。質量分析計は、電子衝撃を用いるAgilent MSDであった。
カラム:15m×.25mm×.25μのDB−1相
注入器:300°
検出器:320°
カラム流量:1.26ml/分
スプリット比:100:1
カラムランプ(column ramp):70°、1分維持、6度/分〜200°、次いで10度/分〜320°、5分維持
圧力プログラム:1.26ml/分を23分間、次いで2.5ml/分まで10ml/分/分
注入サイズ:オートサンプラーにより0.2μl
【0066】
既知の直鎖アルキルベンゼンの標準を、FIDおよびMS検出の両方を伴うGCにより調べた。次いで、GC溶出順序、保持時間、および質量スペクトルを、ここで調製された化合物と比較した。2−フェニル異性体は、その分子量および105amuにおいてピークを有する特徴的な質量スペクトルを有する。同様に、3−フェニル異性体は、その質量スペクトルにおいて119amuにピークを有する。ここで調製された物質のピーク割り当ては、それらの保持時間および質量スペクトルに基づき行った。メチル分岐アルキレートは、対応する直鎖同族体に先立って溶出する。第四級2−メチル−2−フェニルアルキレートは、119amuピークを含む質量スペクトルを有するが、3−フェニル異性体とはいくらか異なる時間に溶出する。
【0067】
b.MLAB試料およびLAB試料における分岐およびフェニル位置を確認するための13C NMR
全ての試料を、5mmのブロードバンドプローブを用いてBruker AVANCE 500MHz NMRで13C NMRにより分析した。重要な機器パラメータを、表2に列挙する。
【0068】
試料を、4.5グラムの生成物を0.05グラムのp−ジオキサン内部標準と合わせることによって調製した(それぞれ約0.1mgまで秤量した)。0.3mLのこの混合物をNMR管に移し、0.2mLの重水素化塩化メチレンロック溶媒に溶解させた。クロムアセチルアセトネートを、緩和剤として添加した。取得後、スペクトルを手動で位相調整(phase)し、ベースライン補正し、積分した。
【0069】
スペクトルを手動で位相調整し、ベースライン補正した。それぞれのMLAB試料についての分岐度を、全13CNMRスペクトルが100となるように正規化する(溶媒および内部標準の共鳴は排除した)ことによって求めた。メチル共鳴を、標準的なDEPT135およびDEPT90実験を用いて特定した。「パーセントメチル炭素」を、試料の平均炭素数(GCにより決定)を乗じ、2を減じる(直鎖LABのメチルを計上するため)ことによって、1分子当たりの平均分岐に変換した。
【0070】
【表2】
【0071】
13CNMRによる第四級MLAB
スペクトルを、手動で位相調整し、ベースライン補正した。全第四級MLAB含有量を、2−フェニル異性体の芳香族炭素および>2−フェニル異性体のベンジル炭素を用いることにより測定した。それぞれの共鳴についてのTMSを基準とした化学シフトが、表3に列挙されている。標準的なDEPT135およびDEPT90 13C NMR実験を用いて第四級炭素を確認した。全ての積分値を、任意の値が与えられたp−ジオキサン内部標準を基準として割り当てた。
【0072】
【表3】
【0073】
他のLAS化学種と比べたC10MLASおよびC10LASの利点を明らかにする以下の試験に関して、本発明をより詳細に説明し、例示する。固有洗浄力性能、Ca2+耐性/濁度、動的表面張力/Ca2+耐性、表面張力/表面寿命および塩(NaCl)耐性を測定するために、試験を行った。さらに、種々の界面活性剤試料の冷水汚れ除去能力を比較した。
【0074】
1.固有洗浄力性能:
固有洗浄力性能を、40℃の洗浄温度にて実験室洗濯機で測定した。ポリエステル−綿布帛上に界面活性剤感受性の顔料汚れを有した市販の試験スワッチを適用した。洗濯後の反射率の変化を用いて、洗浄を測定した。白色度の増加を、反射率計によって測定した。洗浄性能は、%白色度として表される。界面活性剤濃度は、1000ppm(欧州の洗濯条件の典型的な界面活性剤レベルを反映)であった。
【0075】
4つの硬度レベル、すなわち0、45、90および180ppmのCa2+硬度で、試験を実施した。それぞれの製品(C1013LAS、C10MLAS、C11MLASおよびC1213MLAS)について、洗浄力測定を6回行い、平均値を計算した。その結果を、標準偏差と一緒に図1に示す。
【0076】
2.Ca2+耐性/濁度:
次のように、界面活性剤溶液にCaClを添加して、20℃で溶液の透明度を測定することによって、カルシウムイオン耐性を求めた。1.0g/Lの透明な界面活性剤溶液200mlを、サーモスタットで調温されたビーカー中で、150rpmで撹拌する。17800ppmのCa2+(相当するCaCOとして計算)を含むCaCl溶液を、0.03ml/分または2.67ppmのCa2+毎分の速度で添加した。溶液の透明度を、光電極Mettler DP550を用いて測定し、自動記録した。この測定を、350ppmの最終Ca2+濃度に至るまで続けた。この実験を、25℃および40℃の両方において実施した。
【0077】
図2は、C10MLASのカルシウムイオン耐性を、市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)、ならびにC10MLASと市販のLASとの70/30重量%および90/10重量%混合物と、20℃において比較したものである。
【0078】
図3は、C10MLASの硬水耐性を、C1013LASと、ならびにC10MLASとC1013LASとの10/90重量%、30/70重量%および50/50重量%混合物と、20℃において比較したものである。図4は、40℃において実施された、同じ実験について得られた結果を示している。
【0079】
3.動的表面張力/Ca2+耐性:
500mlの界面活性剤溶液を、無脈動ポンプ(Ismatec BVP−2、ポンプヘッド1409601)を用いて容器および測定セルを通って連続的に循環させた。動的表面張力を、Lauda MPT2(泡圧張力計)を用い、20mm/秒の一定の空気流量で測定した。実際の表面寿命は、表面張力に応じて変化するが、0.1秒の桁である。容器をサーモスタットで調温し、溶液を300rpmで撹拌した。17800ppmのCa2+(相当するCaCOとして計算)を含むCaCl溶液を、0.075ml/分または2.67ppmのCa2+毎分の速度で容器に添加した。この測定を、350ppmの最終Ca2+濃度に至るまで続けた。
【0080】
図5は、50ppmおよびそれ以上のCa2+濃度におけるC10LASおよびC10MLASの表面張力特性を、他のLAS化学種、特にC1013LASおよびSulfodac(登録商標)AC−3−Hと比較して示している。
【0081】
図6および7は、純粋な界面活性剤試料(C10MLAS、Sulfodac(登録商標)およびC1013LAS)の表面寿命に関する界面活性(表面張力)ならびにC10MLASと他のLAS化学種との混合物の挙動を、25℃および90ppmのCa2+において比較したものである。両方の実験について、表面寿命を、10秒から0.01秒に至るまで段階的に減少させた。
【0082】
図6は、C10MLASと市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)との10重量%、30重量%および50重量%混合物を、純粋試料と比較して示している。図7は、C10MLASとC1013LASとの50重量%混合物について得られた結果を、純粋試料と比較して示している。
【0083】
4.表面張力/表面寿命:
1.0g/Lの濃度の界面活性剤溶液の動的表面張力を、泡圧張力計Lauda MPT2を用いて25℃および40℃において測定した。全ての実験について、Ca2+濃度は180ppmで一定に保たれた。全ての実験について、表面寿命を、10秒から0.01秒に至るまで段階的に減少させた。
【0084】
図8は、純粋なC10MLAS試料およびSulfodac試料についてのみならず、10重量%、30重量%および50重量%のC10MLASと市販のLAS(Solfodac(登録商標)AC−3−H)との混合物の界面活性(表面張力)をも、25℃において比較したものである。10重量%および50重量%のC10MLASとC1013LASとの混合物、ならびに純粋なC10MLASおよびC1013LASもまた、25℃において評価した。結果を図9に示す。図10および図11は、同じ実験を40℃において繰り返した時に得られた結果を示している。
【0085】
5.塩(NaCl)耐性:
1.0g/Lの透明な界面活性剤溶液200mlを、サーモスタットで調温されたビーカー中で、20℃において150rpmで撹拌した。25%のNaCl溶液を、1ml/分の添加速度(dosage rate)で添加した。溶液の透明度を、光電極Mettler DP550を用いて測定した。C10MLASについての結果は、図12においてSolfodac(登録商標)AC−3−Hと比較される。
【0086】
6.冷水洗浄力性能:固体汚れを除去する能力
汚れ浸漬装置を用いて、種々の界面活性剤溶液の、固体のラード汚れを汚れ含浸綿布帛から除去する能力を測定した。手順は、以下の工程からなった。
・綿の濡れを測定するために一般的に使用される標準的な30mm円形綿布帛試験片(クーポン)を計量し、次いで溶融ラード中に浸漬させ、これによりおよそ200mgの溶融ラード汚れを各クーポンに付加した。クーポンを風乾させ、次いで各布クーポン上の汚れ重量を測定するために再計量した。
・試験界面活性剤溶液は、別個の250ml広口ガラス瓶に入っており、瓶は全て、16℃に設定された制御温度浴に沈んでいた。
・汚れたクーポンを、真空ベースの原動機により駆動されるクーポンを試験溶液の中におよび試験溶液から外に移動させるように設計されたラックに取り付けられた、金属ワニ口クリップで保持した。
・全てのクーポンを、それぞれの界面活性剤溶液中に、1時間の1期間の間、同時に沈め、次いで、試験溶液中への浸漬および試験溶液からのすくい上げを、1浸漬/1.5秒の速度で200回行った。次いで、残っている界面活性剤溶液をクーポンから洗い落すために、試験溶液を蒸留水に置き換え、クーポンを再度、1浸漬/1.5秒の速度で200回浸漬させた。
・クーポンを24時間風乾させ、界面活性剤溶液中に浸漬させた結果として生じた重量の変化を測定するために再計量した。
【0087】
短鎖C10MLASの、冷水洗浄力を促進する能力を、その性能を、冷水洗浄力性能のために設計(および宣伝)された、北米における主要な液体洗濯用洗剤である、Proctor & Gambleから入手可能な「Tide(商標)Coldwater Liquid Laundry Detergent」と比較することによって調べた。試験溶液は、以下のものからなった。
・「DET」と表記された試験溶液1は、0.01モルの塩化ナトリウム(イオン強度の影響を減らすため)および50mgのカルシウム(水硬度を示すためCaCOとして)を含有する蒸留水で希釈され、8に等しいpHを達成するように水酸化ナトリウムで調整された、0.1%活性液体洗濯用洗剤(上記)からなった。洗剤の組成を調べ、33.5%の総界面活性剤活性含有量を有すると決定し、これを用いて0.1%活性溶液を生成した。
・「DET:C1114LAS低2−フェニル」と表記された試験溶液2は、1:1ブレンド(各成分0.05重量%)からなった。ここで、C1114LAS低2−フェニルは、標準的なC12平均の市販のLASを表す。試験溶液1について上に記載されたように、試験溶液を、イオン強度、水硬度およびpHについて調整した。
・「DET:C10MLAS」と表記された試験溶液3は、1:1ブレンド(各成分0.05重量%)からなり、ここで、C10MLASは、80%より多くの2−フェニル異性体含有量を有しかつアルキル鎖沿いの分岐(主としてメチル)を40%より多く有するC10−アルキルベンゼンから作られた、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなった。試験溶液1について上に記載されたように、試験溶液を、イオン強度、水硬度およびpHについて調整した。
・「DET:C10LAS」と表記された試験溶液4は、1:1ブレンド(各成分0.05重量%)からなった。ここで、C10LASは、約70%の2−フェニル異性体含有量を有しかつアルキル鎖沿いの分岐をごく少量有するC10−アルキルベンゼンから作られた、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる。試験溶液1について上に記載されたように、試験溶液を、イオン強度、水硬度およびpHについて調整した。
【0088】
次に、上に示された試験プロトコルに記載されたように、試験溶液を調べた。結果を図13に示す。
【0089】
7.使用法および用途
洗浄剤(実施例7.1)、皿洗い液(実施例7.2)、洗濯用液体(実施例7.3)、洗濯用粉末(実施例7.4)、掘削流体(実施例7.5)、フラクチャリング流体(実施例7.6)およびEOR用途(実施例7.7)において本発明のMLASを使用するための典型的な配合例を、以下に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13