(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053780
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】リチウムイオン伝導性ガーネット型化合物
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20161219BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20161219BHJP
C04B 35/00 20060101ALI20161219BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20161219BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20161219BHJP
C01G 35/00 20060101ALI20161219BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20161219BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
C01G25/00
C04B35/50
C04B35/00 J
H01M10/0562
H01M10/052
C01G35/00 C
C01G33/00
H01B1/06 A
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-520569(P2014-520569)
(86)(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公表番号】特表2014-529327(P2014-529327A)
(43)【公表日】2014年11月6日
(86)【国際出願番号】EP2012059321
(87)【国際公開番号】WO2013010692
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年3月19日
(31)【優先権主張番号】102011079401.8
(32)【優先日】2011年7月19日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ アイゼレ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒンダーベアガー
(72)【発明者】
【氏名】アラン ロジャット
(72)【発明者】
【氏名】ボリス コツィンスキー
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−073963(JP,A)
【文献】
特開2010−272344(JP,A)
【文献】
特開平08−325014(JP,A)
【文献】
特開2006−062896(JP,A)
【文献】
特開2012−224520(JP,A)
【文献】
特表2007−528108(JP,A)
【文献】
特開2012−018792(JP,A)
【文献】
THANGADURAI V,INVESTIGATIONS ON ELECTRICAL CONDUCTIVITY AND CHEMICAL COMPATIBILITY BETWEEN FAST LITHIUM ION CONDUCTING GARNET-LIKE LI6BALA2TA2O12 AND LITHIUM BATTERY CATHODES,JOURNAL OF POWER SOURCES,スイス,ELSEVIER SA,2005年 3月24日,V142 N1-2,P339-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00
C01G 33/00
C01G 35/00
C04B 35/00
C04B 35/50
H01B 1/06
H01M 10/052
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般化学式:
Lin[La(3-a′)A′(a′)][Zr(2-b′)B′(b′)][Al(c′)Si(c″)]O12
で示され、
ここで、La及びA′は、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置を表し、ここで
A′は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、かつ
0<a′<2であり、
ここで、Zr及びB′は、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置を表し、ここで
B′は、Ta、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、かつ
0<b′≦2であり、かつ
ここで、Al及びSiは、該ガーネット型結晶構造の四面体の位置を表し、ここで
0≦c′≦0.5であり、
0≦c″≦0.4であり、かつ
c′+c″>0であり、
ここで、n=7+a′−b′−3・c′−4・c″かつ5.5≦n≦6.875である、ガーネット型結晶構造を有する化合物であって、
c′が0より大きいか、又は、
c″が0より大きい、
ガーネット型結晶構造を有する化合物。
【請求項2】
5.9≦n≦6.6である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
6.0<n<6.5である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
B′が、Taを表すか、又はTaと、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される、少なくとも1種の元素とを表す、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
Al及びSiが、該ガーネット型結晶構造の四面体の位置24dを表し、及び
Zr及びB′が、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置16aを表し、及び
La及びA′が、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置24cを表す、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物を含む、リチウムイオン伝導体。
【請求項7】
該リチウムイオン伝導体が、リチウムイオン伝導性固体電解質である、請求項6記載のリチウムイオン伝導体。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物又は請求項6又は7記載のリチウムイオン伝導体を含む、ガルバニ電池。
【請求項9】
該ガルバニ電池が、バッテリーである、請求項8記載のガルバニ電池。
【請求項10】
該ガルバニ電池が、リチウム−硫黄電池、リチウム−酸素電池又はリチウムイオン電池である、請求項8又は9記載のガルバニ電池。
【請求項11】
該ガルバニ電池が、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物もしくは請求項6又は7記載のリチウムイオン伝導体をリチウムイオン伝導性固体電解質として含む、請求項8から10までのいずれか1項記載のガルバニ電池。
【請求項12】
該ガルバニ電池が、請求項6又は7記載のリチウムイオン伝導体をリチウムイオン伝導性固体電解質として、そのカソード及びそのアノードを隔てるために含む、請求項11記載のガルバニ電池。
【請求項13】
請求項1から5までのいずれか1項記載のガーネット型結晶構造を有する化合物の製造方法であって、次の処理工程:
a)次のものを含む、粉末混合物を準備する工程:
・少なくとも1種のリチウム化合物、
及び
・Laの少なくとも1種の化合物、及び
・Zrと、Ta、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される元素の少なくとも1種の化合物、及び
・Al及びSiの少なくとも1種の化合物、及び
・Ca、Sr、及びBaからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、
その際に、該粉末混合物が、リチウムとは異なる元素の該化合物を、ガーネット型結晶構造を有する形成すべき化合物のリチウム含有率が、5.5≦n≦6.875の範囲内であるように選択されている化学量論量で有する;
b)該粉末混合物を、600℃以上かつ1000℃以下の温度範囲内の温度でか焼する工程、及び
d)該粉末混合物を、900℃以上かつ1250℃以下の温度範囲内の温度で焼結する工程、あるいは
前記処理工程a)、b)及び
c)該粉末混合物を成形体にプレスする工程、並びに
d)該成形体を、900℃以上かつ1250℃以下の温度範囲内の温度で焼結する工程
を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のガーネット型結晶構造を有する化合物の製造方法。
【請求項14】
請求項1から5までのいずれか1項記載のガーネット型結晶構造を有する化合物の製造方法であって、次の処理工程:
a)次のものからなる、粉末混合物を準備する工程:
・少なくとも1種のリチウム化合物、
及び
・Laの少なくとも1種の化合物、及び
・Zrと、Ta、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される元素の少なくとも1種の化合物、及び
・Al及びSiの少なくとも1種の化合物、及び
・Ca、Sr、及びBaからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、
その際に、該粉末混合物が、リチウムとは異なる元素の該化合物を、ガーネット型結晶構造を有する形成すべき化合物のリチウム含有率が、5.5≦n≦6.875の範囲内であるように選択されている化学量論量で有する;
b)該粉末混合物を、600℃以上かつ1000℃以下の温度範囲内の温度でか焼する工程、及び
d)該粉末混合物を、900℃以上かつ1250℃以下の温度範囲内の温度で焼結する工程、あるいは
前記処理工程a)、b)及び
c)該粉末混合物を成形体にプレスする工程、並びに
d)該成形体を、900℃以上かつ1250℃以下の温度範囲内の温度で焼結する工程
を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のガーネット型結晶構造を有する化合物の製造方法。
【請求項15】
か焼b)における温度範囲が850℃以上かつ950℃以下である、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
焼結d)における温度範囲が1100℃以上かつ1200℃以下である、請求項13から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
処理工程c)において該粉末混合物を一軸圧力下及び等方圧力下でプレスする、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーネット型結晶構造を有する化合物、リチウムイオン伝導体及びガルバニ電池に関する。
【0002】
技術水準
電気自動車及びハイブリッド自動車におけるリチウムバッテリー及びリチウムイオンバッテリーの使用は、該バッテリー安全性への高い要求がある。液体電解質、例えばDMC/EC/LiPF
6は、しばしば可燃性である。固体のセラミック電解質材料は、これに反して難引火性に過ぎず、かつ高い安定性を有するが、しかしながら、液体電解質と比べて、固体のセラミック電解質は、室温で相対的に低いリチウムイオン伝導率を有する。リチウムイオン伝導性化合物は、例えば、刊行物WO 2005/085138、WO 2009/003695 A2、WO 2010/090301 A1及びEP 2 159 867 A1に記載されている。
【0003】
発明の開示
本発明の対象は、一般化学式:
Li
n[A
(3-a′-a″)A′
(a′)A″
(a″)][B
(2-b′-b″)B′
(b′)B″
(b″)][C′
(c′)C″
(c″)]O
12
で示されるガーネット型結晶構造を有する化合物であり、
ここで、A、A′及びA″は、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置を表し、ここで
Aは、La、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
A′は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
A″は、Na及びKからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
0≦a′<2であり、かつ
0≦a″<1であり、
ここで、B、B′及びB″は、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置を表し、ここで
Bは、Zr、Hf及びSnからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
B′は、Ta、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
B″は、Te、W及びMoからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
0≦b′≦2であり、かつ
0≦b″≦2であり、
ここで、C′及びC″は、該ガーネット型結晶構造の四面体の位置を表し、ここで
C′は、Al及びGaからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
C″は、Si及びGeからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、
0≦c′≦0.5であり、かつ
0≦c″≦0.4であり、並びに
ここで、n=7+a′+2・a″−b′−2・b″−3・c′−4・c″かつ5.5≦n≦6.875である。
【0004】
本発明は、該ガーネット型結晶構造Li
7La
3Zr
2O
12が、高い移動度を有するリチウム原子を含む八面体の位置の三次元網目構造と、リチウムイオントラップとして作用する、該リチウムイオン移動度を低下させる四面体の位置とを含むという知見が基礎になっている。該移動性電荷担体の数、ひいては該リチウムイオン伝導率への八面体及び四面体の位置の占有の影響を調べるために、それゆえ、本発明の範囲内で、計算が実施され、該計算は、該リチウム含有率nが該イオン伝導率への影響を有することを示唆する。特に、本発明の範囲内で、ガーネット型結晶構造を有する化合物中の該移動性電荷担体の数、ひいては該リチウムイオン伝導率は、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置及び/又は八面体の位置及び/又は四面体の位置、特に十二面体の位置(24c)及び/又は八面体の位置(16a)及び/又は四面体の位置(24d)を、例えばLi
7La
3Zr
2O
12又はLi
5La
3Ta
2O
12、又はLi
5La
3Nb
2O
12から出発して、該リチウム含有率nが、5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、特に6.0<n<6.5の範囲内であるように意図的に、適した半径を有する元素により置き換えられることによって、最大限にすることができ、その際に意外なことに、概ね、6.3のリチウム含有率nの範囲内の最大イオン伝導率を達成できることが判明した。
【0005】
該八面体の位置には、特に、Zr、Sn、Ta、Nb、Sb、Bi、Hf、Te、W及びMoのような大きな元素が適している、それというのも、これらにより、その中にリチウムイオンが存在する三次元網目構造が拡大され、ひいては該リチウム移動度を改善することができるからである。この種の効果は、La、ランタノイド、Ba、Sr、Ca、La、K及びNa、例えばBa、Sr、La及びKのような大きな元素での該十二面体の位置の占有によっても達成することができる。該四面体の位置には、特に、Al、Ga、Si及びGeのような元素が適している、それというのも、これらにより、該三次元網目構造の近くの該リチウムトラップの数を低下させることができ、それにより、結果として、該リチウムイオン伝導率を高めることができるからである。八面体、十二面体及び四面体の位置の説明される占有の組合せにより、有利には、該効果の好都合な相互作用に基づき、該リチウムイオン伝導率を最適化することができる。有利には、このようにして、室温での該リチウムイオン伝導率を改善することができる。そのうえ、該化合物は、有利には高い安定性を有し、かつ難引火性である。そして、本発明による化合物は、有利にはリチウムイオン伝導体として、例えばリチウムイオン伝導性固体電解質として、例えばリチウムをベースとするガルバニ電池中で、使用することができる。
【0006】
該化合物の製造のために、従来いくらかハフニウムを含有する工業品質のジルコニウム化合物を使用することが可能である。ゆえにBは、特に、工業グレードのジルコニウム化合物の場合に存在する割合のHfを有するZrを表してよい。
【0007】
該リチウム含有率nは、特に≧5.6又は5.7又は5.8又は5.85又は5.9又は5.95又は6.0及び/又は≦6.875又は6.75又は6.7又は6.6又は6.575又は6.5又は6.49又は6.4であってよい。例えば、該リチウム含有率は、5.5≦n≦6.875、特に5.8又は5.85≦n≦6.75の範囲内であってよい。
【0008】
一実施態様の範囲内で、5.9≦n≦6.6である。例えば、該リチウム含有率nは、5.9又は5.95≦n≦6.6又は5.5、特に6.0又は6.01又は6.1又は6.2≦n≦6.5又は6.49又は6.4又は6.39であってよい。好ましくは、該リチウム含有率は6.0≦n≦6.5である。例えば、該リチウム含有率は6.0又は6.01又は6.1又は6.2≦n≦6.5又は6.49又は6.4又は6.39であってよい。これらの範囲は、特に有利であることが判明している。
【0009】
該リチウム含有率nは、nを所望の範囲内に調節するために、例えば、該B′割合及び/又はB″割合(b′もしくはb″)及び/又は該C′割合及び/又はC″割合(c′もしくはc″)の増加により、低下させることができ、かつ該A′割合及び/又はA″割合(a′もしくはa″)の増加により、高めることができ、そして逆もまた当てはまる。
【0010】
更なる実施態様の範囲内で、B′は、Taを表すか、又はTaと、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される、少なくとも1種の元素とを表す。
【0011】
例えば、b′>0及び/又はb″>0であってよい。
【0012】
更なる実施態様の範囲内で、b′+b″>0である。
【0013】
B″は特に、Teを表してよい。
【0014】
更なる実施態様の範囲内で、C′はAlを表す。
【0015】
更なる実施態様の範囲内で、C″はSiを表す。
【0016】
例えば、c′>0及び/又はc″>0であってよい。
【0017】
更なる実施態様の範囲内で、c′+c″>0である。
【0018】
更なる実施態様の範囲内で、Aは、Laを表すか、又はLaと、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選択される、少なくとも1種の元素とを表す。特に、AはLaを表してよい。
【0019】
例えば、a′>0及び/又はa″>0であってよい。
【0020】
更なる実施態様の範囲内で、a′+a″>0である。
【0021】
更なる実施態様の範囲内で、ガーネット型結晶構造を有する該化合物は、一般化学式:
Li
n[La
(3-a′)A′
(a′)[Zr
(2-b′)B′
(b′)][Al
(c′)Si
(c″)]O
12
を有し、
ここで、La及びA′は、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置を表し、ここで
A′は、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、かつ
0<a′<2であり、
ここで、Zr及びB′は、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置を表し、ここで
B′は、Ta、Nb、Sb及びBiからなる群から選択される、少なくとも1種の元素を表し、かつ
0<b′≦2であり、かつ
ここで、Al及びSiは、該ガーネット型結晶構造の四面体の位置を表し、ここで
0≦c′≦0.5であり、
0≦c″≦0.4であり、かつ
c′+c″>0、特にc′>0及び/又はc″>0であり、かつ
ここで、n=7+a′+2・a″−b′−2・b″−3・c′−4・c″及び5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、例えば6.0≦n≦6.5である。
【0022】
更なる実施態様の範囲内で、C′及びC″、特にAl及び/又はSiは、該ガーネット型結晶構造の四面体の位置24dを表すか、もしくはこれを占有する。
【0023】
更なる実施態様の範囲内で、B、B′及びB″、特にZr及びB′は、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置16aを表すか、もしくはこれを占有する。
【0024】
更なる実施態様の範囲内で、A、A′及びA″、特にA′は、該ガーネット型結晶構造の十二面体の位置24cを表すか、もしくはこれを占有する。
【0025】
Liは、例えば、該ガーネット型結晶構造の八面体の位置96h及び/又は四面体の位置24dを、例えばC′及びC″と一緒になって、占有してよい。
【0026】
該化合物の場合に、B′がNb、特にTa及び/又はNbである場合に、6.0<n<6.4又は5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、特に6.0≦n≦6.5、かつc′+c″>0及び/又はa′+a″>0であってよい;及び/又はb′=2である場合に、6.0<n<6.875、例えば6.0<n≦6.6、例えば6.0<n≦6.5、又は5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、特に6.0≦n≦6.5、かつc′+c″>0であってよいか、もしくは1.8<b′≦2である場合に、c′+c″>0、例えばc′+c″>0.1、又は6.0<n<6.875、例えば6.0<n≦6.5、又は5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、特に6.0≦n≦6.5、かつc′+c″>0であってよい;及び/又は0≦b′≦0.5、例えば0≦b′≦0.65、例えば0≦b′≦1である場合に、a′+a″>0、例えばa′+a″>0.2、及び/又はc′+c″>0であってよい;及び/又はC′がAlである場合に、c″>0及び/又はb′+b″>0、特にb′>0、及び/又はa′+a″>0、特にa′>0であってよいことが可能である。
【0027】
本発明の更なる対象は、本発明による化合物を含む、リチウムイオン伝導体、特にリチウムイオン伝導性固体電解質である。
【0028】
更に、本発明は、本発明による化合物又は本発明によるリチウムイオン伝導体を含む、ガルバニ電池、特に、例えばリチウムベースの、バッテリーに関する。
【0029】
一実施態様の範囲内で、その際に、該ガルバニ電池は、リチウム−硫黄電池、リチウム−酸素電池又はリチウムイオン電池である。
【0030】
更なる実施態様の範囲内で、該ガルバニ電池は、本発明による化合物もしくは本発明によるリチウムイオン伝導体をリチウムイオン伝導性固体電解質として、特に該カソード及び該アノードを隔てるために、含む。
【0031】
最後に、本発明は、本発明による化合物の製造方法並びに本方法により製造される化合物に関し、その際に、該方法は次の処理工程を含む:
a)次のものを含む、特に次のものからなる、粉末混合物を準備する工程:
・少なくとも1種のリチウム化合物、及び
・La、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、及び
・Zr、Hf、Sn、Ta、Nb、Sb、Bi、Te、W及びMoからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、及び
・場合により、Al、Ga、Si及びGeからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、及び/又は
・場合により、Ca、Sr、Ba、Na及びKからなる群から選択される、元素の少なくとも1種の化合物、
その際に、該粉末混合物が、リチウムとは異なる元素の該化合物を、ガーネット型結晶構造を有する形成すべき化合物のリチウム含有率が5.5≦n≦6.875、例えば5.9≦n≦6.6、特に6.0≦n≦6.5の範囲内であるように選択されている化学量論量で有する;
b)該粉末混合物を、≧600℃〜≦1000℃、特に≧850℃〜≦950℃の温度範囲内の温度で、例えば約900℃でか焼する工程、
c)場合により、該粉末混合物を成形体に、特に一軸圧力下及び等方圧力下で、プレスする工程、
d)該粉末混合物もしくは該成形体を、≧900℃〜≦1250℃、特に≧1100℃〜≦1200℃の温度範囲内の温度で、例えば約1150℃で焼結する工程。
【0032】
少なくとも1種の該リチウム化合物は、例えば、炭酸リチウム;硝酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択されていてよい。
【0033】
リチウムとは異なる該元素の化合物は、例えば、酸化物、硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択されていてよい。
【0034】
特に、その際に、リチウムは、過剰量で、例えば10質量%の過剰量で、焼結の際のリチウム損失を相殺するために、使用することができる。
【0035】
該出発化合物の純度は、特に≧90%であってよい。ジルコニウム化合物はその際に例外であってよく、かつ工業品質で使用してよく、これはその結果としてハフニウムの含分となりうる。
【0036】
処理工程a)は、特に≧100℃で、例えば≧30分又は≧45分又は≧1hにわたって、行われてよい。
【0037】
該加熱速度は、処理工程d)において、例えば≧1K/分、例えば≧3K/分、であってよい。
【0038】
図面及び実施例
本発明による対象の更なる利点及び有利な態様は、図面により例証され、かつ以下の記載において説明される。その際に、該図面が、記載する特徴のみを有しており、かつ本発明を何らかの形で限定するためのものではないことに注意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】リチウム含有率nへの移動性電荷担体の数の依存に関する計算結果を説明するグラフ
【
図2】リチウム含有率nへのイオン伝導率の依存に関する実験結果を説明するグラフ
【
図3】Li
6.25La
3Ta
0.75Zr
1.25O
12のインピーダンススペクトル
【
図4】Al
0.17Li
6.49La
3Zr
2O
12のインピーダンススペクトル
【
図5】Al
0.2Li
6.4La
3Zr
2O
12の試料中の無作為に選択された結晶粒のSEM−EDS/WDSスペクトル
【0040】
図1は、ベース化合物Li
7La
3Zr
2O
12から出発して、ガーネット型結晶構造を有する多様に構成された化合物について、ガーネット化学式単位1個あたりのリチウム含有率に応じた、該移動性電荷担体の計算結果を示す。該電荷担体の計算のために、占有数を使用した。移動性電荷担体の活性化のための活性化エネルギーを、該計算において顧慮しなかった。
【0041】
参照番号2で表される曲線の延び具合は、五価の元素、例えばTa
5+での、さもなければZr
4+で占有された八面体の位置の占有についての結果を説明し、その際に参照番号1で表される曲線の延び具合は、該ジルコニウム割合を一定に保ちながら、三価の元素、例えばAl
3+での、さもなければLi
+で占有された四面体の位置の占有についての結果を描写する。
【0042】
図1は、実施された計算によれば、5.9〜6.5の範囲内の該八面体の位置の占有についての高いイオン伝導率及び5.3〜6.0の範囲内の該四面体の位置の占有についての高いイオン伝導率を予測することができ、その際に該移動性電荷担体の計算して求められた最大値は、該八面体の位置の占有の際にガーネット化学式単位1個当たりの約6.3個のリチウム原子であり、かつ該四面体の位置の占有の際にガーネット化学式単位1個当たり5.8個のリチウム原子であることを示す。図は、該八面体及び四面体の位置を同時にドープする際に、5.5〜6.5の範囲内の該イオン伝導率の最大値を予測することできることが推測されうる。
【0043】
製造
ガーネット型構造を有するTa、Nb、Al、Si及びSrを含有する化合物を、特にベース構造Li
7La
3Zr
2O
12から出発して、高められた温度での固体反応により製造した。該製造のために、化学量論量の、高い純度を有する出発物質を使用した。特にLi
2CO
3の形態の、例えば>99.0%の純度を有する、リチウムを、特に10%の過剰量で、使用した。該過剰量は、その際に、該焼結過程中のリチウム損失を補償するために利用した。特にLa
2O
3の形態の、例えば>99.99%の純度を有し、かつ特に900℃で12hにわたって乾燥させた、ランタンを使用した。特にZrO
2もしくはSrCO
3の形態の、例えば>99%の純度を有する、ジルコニウム及びストロンチウムを使用した。例えば、γ−Al
2O
3の形態の、例えば99.60%の純度を有する、アルミニウムを使用した。特にSiO
2もしくはTa
2O
5もしくはNb
2O
5の形態の、特に>99.85%の純度を有する、ケイ素、タンタル及びニオブを使用した。はかり入れた粉末を、水中で、ロータリーエバポレーターを用いて約100℃で1h混合した。該粉末混合物を900℃でか焼した。該生成物を、一軸圧力下及び等方圧力下にタブレットにプレスし、1150℃で5h焼結した。該加熱速度はこれらの場合に3K/分であった。
【0044】
第1表は、製造された化合物の組成及びイオン伝導率を示す:
第1表:組成及びイオン伝導率
【表1】
【0045】
焼結されたタブレットのイオン伝導率を、空気中で室温で、リチウムをブロックする金電極を使用して、インピーダンス分光計(Solatron;0.05Hz〜10MHz)を用いて測定した。
【0046】
図3には、Li
6.25La
3Ta
0.75Zr
1.25O
12のインピーダンススペクトルが、及び
図4には、Al
0.17Li
6.49La
3Zr
2O
12のインピーダンススペクトルが、例示的に示されている。該スペクトルの低い周波数範囲中での上向きの枝は、該材料のリチウムイオン伝導性の証拠である。
【0047】
室温で求められたイオン伝導率値は、第1表及び
図2に示されている。その際に、
図2は、製造された化合物のイオン伝導率が、ガーネット化学式単位1個当たりの該リチウム含有率に対してプロットされているグラフを示す。
図2は、意外なことに、TaもしくはNbでの該八面体の位置並びに場合によりSrでの十二面体の位置の占有の際に、並びにAlもしくはSiでの四面体の位置の占有の際に、該イオン伝導率が意外なことに、概ね約6.3のリチウム含有率で、最大値を有することを説明する。その際に、実験的に求められた値は、計算により求められた曲線の延び具合に極めて類似している曲線の延び具合に従う。目立つのは、該四面体にドープされた化合物(1a:Al、1b:Si)の最大値が、該理論的な計算(1)により決定されるように、概ね5.8のリチウム含有率であるのではなくて、むしろその代わりに、該八面体にドープされた化合物(2:Ta)と同様に、概ね6.3であることである。このことは、理論的な計算の場合に、該リチウムイオンの運動についての活性化エネルギーの影響が顧慮されなかったことにより明らかにされることができ、該活性化エネルギーは明らかに実地において、四面体にドープされた化合物(1)について計算により求められた曲線の延び具合が、より高いリチウム含有率nの方向へ、特に概ね6.3の範囲内の最大値を有して、シフトする結果となる。
【0048】
第1表及び
図2は、製造された化合物のうち、5.2・10
-4S/cmを有するAl
0.23Li
6.31La
3Zr
2O
12が最高のイオン伝導率を有していたことを示す。Al
0.3Li
5.85Sr
0.25La
2.75Nb
0.5Zr
1.5O
12のイオン伝導率は、
図2中で参照番号3で表されている。第1表は、1.5・10
-4S/cmを有するAl
0.3Li
5.85Sr
0.25La
2.75Nb
0.5Zr
1.5O
12が、1.5・10
-4S/cmを有するLi
6.5La
3Ta
0.5Zr
1.5O
12と類似のイオン伝導率を有していたことを示す。
図2は、n=5.85を有するAl
0.3Li
5.85Sr
0.25La
2.75Nb
0.5Zr
1.5O
12 3が、最適なイオン伝導率(n 概ね6.3)を達成するには、低すぎるリチウム含有率nを有することを説明する。該リチウム含有率nはその際に、例えば、とりわけ該アルミニウム含有率の低下及び/又は該ストロンチウム含有率の増加により達成することができるかもしれない。ゆえに、Al
0.3Li
5.85Sr
0.25La
2.75Nb
0.5Zr
1.5O
12の、約6.3でのリチウム含有率nを有する類似の化合物への変性により、Li
6.5La
3Ta
0.5Zr
1.5O
12よりも明らかにより高いリチウムイオン伝導率を達成することができるかもしれないことを予測することができる。実験的に求められ、かつ計算により、特に該活性化エネルギーについて校正された曲線の延び具合は、例えば、概ね0.15のアルミニウム含有率又は概ね0.7のストロンチウム含有率又は0.15〜0.3のアルミニウム含有率及び0.25〜0.7のストロンチウム含有率で、1.5・10
-4S/cmよりも高い及び特に4.4・10
-4S/cmよりも高いかもしれないイオン伝導率を達成することができるかもしれないことを示唆する。
【0049】
全体として、
図2に示された実験結果は、該イオン伝導率が、該リチウムイオン移動度を高める空所の形成により及びリチウムトラップとして作用する、他の元素での四面体の位置の占有により高めることができ、その際に意外なことに、概ね、6.3のリチウム含有率nの範囲内の最大イオン伝導率を達成することができることを確認する。
【0050】
アプイニシオ−コンピュータシミュレーションを用いて、Al
3+が四面体の位置を占有する結晶構造が、最も低い全エネルギーを有することを立証することができた。そのことから、Al
3+が、ガーネット型結晶構造の四面体の位置を優先することが推論されうる。
【0051】
該アプイニシオ−コンピュータシミュレーションの結果は、該ガーネット型化合物Al
0.2Li
6.4La
3Zr
2O
12中でのアルミニウムの占有についてX線回折法及びリートベルト精密化を用いて求めた結果と一致している。より良い分解能のために、該測定の際に純Kα1線を使用した。リートベルト法を用いる該適合のために、プログラムTOPASを使用した。該リートベルト精密化の結果は、良質であった。第2表には、該リートベルト精密化の結果が示されている:
第2表:Al
0.2Li
6.4La
3Zr
2O
12中での該四面体及び八面体の位置の占有に関するリートベルト精密化の結果
【表2】
【0052】
第2表は、Al
0.2Li
6.4La
3Zr
2O
12中で、該四面体の位置24dが、X線感受性の元素、特にアルミニウムで占有されており、その際に該八面体の位置48g及び96hは、X線感受性の元素で占有されていないことを示す。該リチウム原子の位置は、該X線回折測定からは、決定することができなかった。
【0053】
図5は、Al
0.2Li
6.4La
3Zr
2O
12からなるタブレットによる横断切片の、多くのSEM−EDS/WDS分析による無作為に選択された異なる結晶粒の結果を示す。
図5は、アルミニウムが、双方の結晶中に予測された量で含まれていることを示す。そのことから、該アルミニウム原子が、該ガーネット型結晶構造中へ組み込まれており、かつ該材料中に副相として存在しないことが推論されうる。このことはまた、アルミニウムが、該四面体の位置24dを占有するという該リートベルト精密化の結果を支持する。
【符号の説明】
【0054】
1 三価の元素での四面体の位置の占有を有する化合物、 2 五価の元素での八面体の位置の占有を有する化合物、 λ イオン伝導率、 1a 四面体にAlでドープされた化合物、 1b 四面体にSiでドープされた化合物、 3 Al
0.3Li
5.85Sr
0.25La
2.75Nb
0.5Zr
1.5O
12