(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053800
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】眼内注射のための装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20161219BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/32 510F
A61F9/007 130D
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-533821(P2014-533821)
(86)(22)【出願日】2012年9月17日
(65)【公表番号】特表2014-531280(P2014-531280A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012068238
(87)【国際公開番号】WO2013050236
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】11184406.4
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アラステア・ロバート・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ハイトン
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0259195(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02189173(EP,A2)
【文献】
特表2005−516737(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第2799977(FR,A1)
【文献】
国際公開第2008/097072(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内注射のための装置であって、
針(54)を有するシリンジ(52)を収容するように構成された本体(50)と;
本体(50)に嵌め込み式に連結された外側スリーブ(57)と;
外側スリーブ(57)にヒンジ連結された少なくとも2つのアーム(61)のそれぞれが、針(54)の先端部分を包み込むように構成された内側部分(65)を含む、該アーム(61)とを備え、
ここで、内側部分(65)は、最初は完全には分離されておらず、弱い線、面、または立体構造によって連結されており、
ここで、本体(50)が前記外側スリーブ(57)に対して遠位に動くと、本体(50)はアーム(61)に係合し、内側部分(65)を完全に分離させ、かつアーム(61)を引き離し、それによって針を露出させる、該装置。
【請求項2】
少なくとも2つのアーム(61)は、第1の配置と第2の配置との間で互いに離間するようにまた一緒になるように可動である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも2つのアーム(61)は、第1の配置と第2の配置との間で径方向に旋回運動または摺動運動を行うように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
少なくとも2つのアーム(61)は、付勢機構に逆らって離れるようにまたは一緒になるように動く、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
本体(50)は長手方向に可動である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
本体(50)が外側スリーブ(57)に対して遠位に動くと、本体(50)の遠位端が少なくとも2つのアーム(61)に力を加える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
アーム(61)は、前記第1の配置において封止されている、請求項1〜6のいずれか
1項に記載の装置。
【請求項8】
内側部分(65)は、最初は弱い面によって連結されており、弱い面は、2つのアーム(61)の内側部分の分離が弱い面に沿った分裂によって完了するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内注射のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼、例えば眼障害または眼疾患を持つ哺乳類の眼などに治療剤(therapeutic substance)を投与するために、眼内注射デバイスが使用されることがある。
【0003】
視力を脅かす多くの眼障害または眼疾患が、眼内送達(より具体的には硝子体内送達)によって後眼部に薬剤(薬学的なもの、生物学的なもの、等)および/または植込み型デバイスを送達することを必要とする。そのような眼内送達のための技法の1つが、硝子体内への眼内注射によって達成される。
【0004】
従来の眼内注射のための装置は、薬剤の充填済みシリンジを含みうる。従来の充填済みシリンジには、針の滅菌状態を維持するために、ニードル・カバーが与えられる。しかし、ニードル・カバーは通常、摩擦によって針に保持され、それによりニードル・カバーの緩みが生じる可能性がある。針のどの部分でも使用前に滅菌状態でなくなると、そのシリンジは廃棄しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、使用するときまで針が覆われたままでいることを確実にし、かつニードル・カバーの取り外しを容易にする、眼内注射のための装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な実施形態は、使用するときまで針が覆われたままでいることを確実にし、かつニードル・カバーの取り外しを容易にする、眼内注射のための装置について説明する。
【0007】
例示的な一実施形態では、本発明による眼内注射のための装置が、針を有するシリンジを収容するように構成された本体と、本体に嵌め込み式に連結された外側スリーブと、外側スリーブにヒンジ連結された(hingedly coupled)少なくとも2つのアームとを含む。アームのそれぞれは、針の少なくとも一部分を包み込むように構成された内側部分を含む。本体が前述の外側スリーブに対して遠位に動くと、本体はアームと係合し、内側部分を分離させる。
【0008】
例示的な一実施形態では、少なくとも2つのアームは、第1の配置と第2の配置との間で互いに離間するようにまた一緒になるように可動である。
【0009】
例示的な一実施形態では、少なくとも2つのアームは、第1の配置と第2の配置との間で径方向に旋回運動または摺動運動を行うように構成される。
【0010】
例示的な一実施形態では、少なくとも2つのアームは、付勢機構に逆らって離れるようにまたは一緒になるように動く。
【0011】
例示的な一実施形態では、内側部分は、最初は完全には分離されておらず、弱い線、面、または立体構造によって連結されている。
【0012】
例示的な一実施形態では、本体は、長手方向に可動である。
【0013】
例示的な一実施形態では、本体が外側スリーブに対して遠位に動くと、本体の遠位端が少なくとも2つのアームに力を加える。
【0014】
例示的な一実施形態では、アームは、前述の第1の配置において封止されている。
【0015】
本発明が説明された可能性に限定されるものではないことは、当業者には理解される。
【0016】
本発明の様々な態様の上述の利点および他の利点は、添付の図面を適切に参照しながら以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。
【0017】
概略的な図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の配置における、眼内注射のための装置の例示的な実施形態の断面の斜視図である。
【
図2】第2の配置における、眼内注射のための装置の別の例示的な実施形態の断面の斜視図である。
【
図3】第1の配置における、ハウジング・スリーブの例示的な実施形態の斜視図である。
【
図4】第2の配置における、ハウジング・スリーブの例示的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図4は、本発明による眼内注射のための装置の例示的な実施形態を示している。
図1の例示的な実施形態に示されるように、本装置は、遠位端に針54を有する充填済みシリンジ52を収容するように構成された中空本体50を含む。例示的な実施形態では、装置は、装置が作動されたときにシリンジ52の全内容物を送達する自動注射器でありうる。別の例示的な実施形態では、装置は、1回の注射ごとにシリンジ52の内容物の一部のみを投与するための再利用可能な一定容量送達デバイスでありうる。別の例示的な実施形態では、充填済みシリンジ52は、針を有する薬剤カートリッジか、または着脱可能なニードル・アセンブリと係合するためのインターフェースを有する薬剤カートリッジに置き換えられうることが、当業者には理解されるであろう。
【0020】
本体50は部分的に、外側スリーブ57内に嵌め込み式に嵌合する。内側ハウジング・スリーブ58が、外側スリーブ57の一部分に連結される。例示的な一実施形態では、内側ハウジング・スリーブ58は、外側スリーブ57に連結された、例えば中空シリンダとして形成されたシェル59と、両端で(例えば、シェル59にわたってある直径を形成するように)シェル59に連結された2つのアーム61とを含む。各アーム61は、シェル59に(したがって、外側スリーブ57に)ヒンジ連結された外側部分と、内側部分65とを有し、この内側部分65は、アーム61が(
図1および
図3に示されるように)第1の配置にあるときに、他方のアーム61の内側部分65に当接する。この例示的な実施形態では、シェル59およびアーム61は一体部材を形成するが、代替としてシェル59およびアーム61は独立した部材として設計されてもよいことが、当業者には理解される。この例示的な実施形態では、アーム61は、例えば、シェル59との(したがって、外側スリーブ57との)ばね懸架式ヒンジ連結、またはヒンジのような作用をもたらす弾性材料により、第1の配置に付勢される。
【0021】
例示的な一実施形態では、第1の配置においてアーム61の内側部分65、例えば半円筒形内側部分が針54を包み込むので、内側ハウジング・スリーブ58は成形ゴムまたはプラスチックのニードル・カバーの形態をとる。
図1に示されるように、内側部分65のそれぞれに切欠き63が形成され、第1の配置において針54を保護する穴を提供しうる。
【0022】
例示的な一実施形態では、外側スリーブ57または内側ハウジング・スリーブ58の遠位端は、標的とする解剖学的構造、例えば眼の上に置くのに適した、配置足部(placement foot)を含みうる。この例示的な実施形態の配置足部は、眼、例えば角膜の周辺との位置合わせを容易にすることができるように少なくとも部分的に透明な材料で形成することができることは、当業者には理解されよう。さらに、配置足部の下側、例えば眼と接する足部の面が、損傷なく眼を保持するための摩擦層または他の手段を含みうることは、当業者には理解されよう。
【0023】
図2の例示的な実施形態に示されるように、外側スリーブ57に対する本体50の遠位運動により、本体50の遠位端67がアーム61と係合されて、アーム61に遠位方向の力を加える。本体50のさらなる遠位運動により、アーム61およびそれらの内側部分65が、そのそれぞれのシェル59へのヒンジ連結部のまわりで回転することにより、第2の配置へと分離され、したがって、針54が露出される。アーム61が分離して別々に保持されながらもシリンジ52がその遠位方向への行程を続けてそれを完了するように、充填済みシリンジ52の遠位運動が本体50の運動と同期されうることは、当業者には理解されるであろう。この第2の配置では、針54は、装置の遠位端から突出し、したがって、注射するために例えば眼内に接近可能である。
【0024】
したがって、本装置のこの例示的な実施形態は、注射の前にニードル・カバーを取り外すための自動的な手段を提供する。
【0025】
例示的な一実施形態では、針54が引き抜かれ、また、本体50が外側スリーブ57に対して近位に動くと、アーム61にかかる付勢力がアーム61を第1の配置に戻し、針54が包み込まれて、針刺し損傷が防止される。
【0026】
図3および
図4は、装置またはシリンジ52の他の部材なしに、(
図1におけるような)第1の配置および(
図2におけるような)第2の配置での内側ハウジング・スリーブ58を示している。
【0027】
別の実施形態では、内側ハウジング・スリーブ58は、このスリーブのアーム61が最初は完全には分離されていないように成形されうる。この実施形態では、本体50および/またはシリンジ52の下方運動は、2つのアーム61を離すだけでなく、例えば特別に設計された弱い面に沿って2つのアーム61を分裂させることにより、2つのアーム61の分離を完了させる。この実施形態の利点は、針54の保護および封止をより確実に達成できることである。
【0028】
ここで、第2の配置にある装置を使用して、薬剤を眼に投与することができる。
【0029】
装置が眼の上に適切に設置されていれば、医師は、シリンジ52を本体50と一緒に注射部位に向かって遠位に前進させる、本体50および/またはシリンジ52に連結されたプランジャもしくは類似の押し下げ可能な要素を押し下げることができる。すると、薬剤を眼の所定の領域に送達することができる。
【0030】
本発明の全範囲および精神から逸脱することなく、本明細書で説明された装置、方法、および/またはシステム、ならびに実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)を行うことが可能であり、本発明がそのような修正およびそのあらゆる均等物を含むことは、当業者には理解されよう。