(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053802
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】患者を監視し、患者のせん妄を検出する監視システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20161219BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
A61B5/16ZDM
A61B5/10 310A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-534014(P2014-534014)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-528314(P2014-528314A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2012055178
(87)【国際公開番号】WO2013050912
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月8日
(31)【優先権主張番号】61/544,321
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヘイデ エステル マリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘインリッヒ アドリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ファルック トマス
【審査官】
松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−174168(JP,A)
【文献】
特表2005−512949(JP,A)
【文献】
特開2004−110486(JP,A)
【文献】
特表2008−520311(JP,A)
【文献】
特開平07−124126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/16
A61B5/11
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の自動監視及び前記患者のせん妄の検出に対する監視システムにおいて、
経時的に前記患者の画像データを得る監視ユニットと、
前記得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する画像分析ユニットと、
前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類する評価ユニットであって、前記評価ユニットが、前記検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントを決定する、前記評価ユニットと、
前記高い又は低い運動カウントの持続時間及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示すせん妄スコアを決定するせん妄決定ユニットと、
を有する監視システム。
【請求項2】
前記せん妄決定ユニットが、より長い、より強い及び/又はより頻繁なせん妄典型運動事象が生じると前記患者のせん妄のより高い可能性及び/又はより高い強度を示す、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記せん妄決定ユニットが、前記高い又は低い運動カウントの持続時間から、及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から、せん妄タイプインジケータを決定し、前記せん妄タイプインジケータが、過活動せん妄、機能減退せん妄、並びに混合された過活動及び機能減退せん妄を含むせん妄のタイプを示す、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記せん妄決定ユニットは、第1の時間間隔内の過活動期間の累積された持続時間が第1の持続時間閾値を超過する場合に過活動せん妄を示すように前記せん妄タイプインジケータを決定し、前記第1の時間間隔内の機能減退期間の累積された持続時間が第2の持続時間閾値を超過する場合に機能減退せん妄を示すように前記せん妄タイプインジケータを決定する、
請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
前記せん妄決定ユニットは、日中と夜間との間で運動カウントの実質的な差が存在する場合に及び/又は所定の時間間隔内の運動カウントが第3及び第4の運動カウント閾値の間である場合に非せん妄を示すように前記せん妄スコアを決定する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
前記監視ユニットが、前記患者の画像データを連続的に又は規則的な間隔で得る、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項7】
前記画像データ及び/又は前記検出された運動事象から前記患者に関する追加の情報を決定する情報決定ユニットであって、前記追加の情報が、所定の時間間隔内の前記患者の平均活動、検出された運動パターン、前記患者の体の所定の部分の運動事象並びに前記患者の活動の変化及び/又は傾向を含む、当該情報決定ユニットを有する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項8】
前記せん妄決定ユニットが、前記患者に関する追加の生理学的情報を追加的に使用することにより前記せん妄スコアを決定する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項9】
前記せん妄決定ユニットが、前記患者に関する前記追加の生理学的情報を、せん妄を示す基準生理学的情報と比較する、
請求項8に記載の監視システム。
【請求項10】
せん妄を示す前記基準生理学的情報の典型的なパターンを記憶する記憶ユニットを有する、
請求項9に記載の監視システム。
【請求項11】
前記患者に関する追加の生理学的情報を取得する生理学的データ取得ユニットを有する、
請求項8に記載の監視システム。
【請求項12】
患者の自動監視に対する方法において、
経時的に前記患者の画像データを得るステップと、
前記得られた画像データから前記患者の運動事象を検出するステップと、
前記検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントを決定するステップと、
前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類するステップと、
前記高い又は低い運動カウントの持続時間及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示すせん妄スコアを決定するステップと、
を有する、方法。
【請求項13】
患者を監視する自動監視システムにおいて使用するプロセッサにおいて、
前記患者から経時的に得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する第1の処理ユニットと、
前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類し、前記検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントを決定する第2の処理ユニットと、
前記高い又は低い運動カウントの持続時間及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示すせん妄スコアを決定する第3の処理ユニットと、
を有するプロセッサ。
【請求項14】
患者を監視する自動監視システムにおいて使用する処理方法において、
前記患者から経時的に得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する第1の処理ステップと、
前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類し、前記検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントを決定する第2の処理ステップと、
前記高い又は低い運動カウントの持続時間及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示すせん妄スコアを決定する第3の処理ステップと、
を有する処理方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行される場合に請求項14に記載の処理方法のステップを前記コンピュータに実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を監視し、患者のせん妄(delirium)を検出する監視システム及び対応する監視方法に関する。更に、本発明は、このような監視システムにおいて使用するプロセッサ及び対応する処理方法に関する。更に、本発明は、前記処理方法を実施するコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
せん妄は、ICU(集中治療室)患者の大部分に生じる多元的病因を持つ精神神経症候群である。せん妄は、増大された死亡率、長期化された入院、及び減少された独立した生活、収容の増大された割合及び長期の認識機能障害を発症する増大されたリスクのような長期的影響に関連する。ICUにおけるせん妄に関連付けられた、より長い入院及び合併症は、ケアの大幅に高いコストを引き起こす。ICUにおけるせん妄の罹患率は、11%ないし87%の範囲を取る。せん妄の正確かつ早期の検出及び治療は、患者予後を向上させ、せん妄関連ヘルスケアコストを抑制する鍵である。
【0003】
現在、ICU患者のせん妄の診断に対して、(CAM−ICUのような)いくつかの有効なスクリーニング質問票が使用される。これらの方法を用いて、患者は、多くとも一日三回、チェックされる。せん妄の変動する特徴のせいで、せん妄状態エピソードは、容易に見逃される。なお、スクリーニング手段が使用される場合でさえ、せん妄の不十分検出(under-detection)は、依然として当てはまる。正確かつ早期の検出方法は、適切な臨床的介入のより効果的な応用を生じてもよく、より良い結果及び減少された誘発される死亡率を生じる。したがって、(半)自動化された連続的かつ客観的なせん妄監視システム及び方法に対する必要性が存在する。
【0004】
精神障害運動活動パターンは、せん妄患者における頻繁に現れるフィーチャである。運動変化に基づいて、せん妄の3つの臨床的サブタイプ、過活動(hyperactive)、機能減退(hypoactive)及び混合(mixed)が、区別される。機能減退、過活動及び混合運動サブタイプの定義は、異なる精神運動症状に基づく。過活動せん妄は、運動活動の増大された量、活動の制御の喪失、情動不安、及び放浪により特徴づけられる。機能減退せん妄を持つ患者は、活動の減少された量、及び行動の減少された速度のようなフィーチャを示す。混合せん妄を持つ患者は、機能減退と過活動との間でシフトする。
【0005】
せん妄を検出する精神障害運動活動パターンの測定は、少数の研究において報告されている。これらの研究において、オンボディ加速度計に基づく技術が、活動を測定するのに使用された。結果は、運動変化の測定がせん妄検出に対する潜在的な候補であることを示した。
【0006】
全身運動検出に対するビデオ監視の使用は、近年、ビデオと睡眠中の健康な対象の身体運動を監視する手首アクティグラフィ(actigraphy)とを比較することにより証明された(Heinrich, A., van Vugt, H., A new video actigraphy method for non-contact analysis of body movement during sleep (2010), European Sleep Research Society ESRS, Journal on Sleep Research, vol. 19 (suppl. 2))。両方の技術の運動データは、小さい、中間及び大きい運動に対応した。小さい及び時々中間の運動は、移動する身体部分が、アクティグラフィシステムを付着されたものではない場合に、従来の手首アクティグラフィにより見逃された。
【0007】
手首アクティグラフィ方法の不利点は、これが付着された身体の部分の運動を測定することである。したがって、身体の他の部分の運動は、見逃される。運動挙動の変化は、身体の一部分に限定されず、1つの体肢のみの運動は、見逃された運動、結果としてせん妄の不十分検出を生じるかもしれない。更に、追加のオンボディセンサは、患者を苛立たせる又は困惑させるかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の不利点を防ぐ(半)自動化された連続的かつ客観的なせん妄監視システム及び方法を提供することである。更に、対応するプロセッサ及び処理方法並びにコンピュータプログラムが、提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様において、患者を監視し、前記患者のせん妄を検出する監視システムが、提示され、前記監視システムは、
‐経時的に前記患者の画像データを得る監視ユニットと、
‐前記得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する画像分析ユニットと、
‐前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類する 評価ユニットと、
‐せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生からせん妄スコアを決定するせん妄決定ユニットであって、前記せん妄スコアが、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示す、当該せん妄決定ユニットと、
を有する。
【0010】
本発明の他の態様において、
‐患者から経時的に得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する第1の処理ユニットと、
‐前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類する第2の処理ユニットと、
‐せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生からせん妄スコアを決定する第3の処理ユニットであって、前記せん妄スコアが、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示す、当該第3の処理ユニットと、
を有するプロセッサが、提示される。
【0011】
本発明の更に他の態様において、コンピュータ上で実行される場合に、前記処理方法のステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムが、提供される。
【0012】
本発明の好適な実施例は、従属請求項に規定される。請求された方法、プロセッサ及びコンピュータプログラムが、請求されたシステム及び従属請求項に規定されたものと同様の及び/又は同一の好適な実施例を持つ。
【0013】
本発明によると、例えばビデオアクティグラフィの使用によるこのような監視は、体の選択された又は全ての部分の運動が追加のオンボディセンサなしで測定されることができるとわかっているので、経時的な前記患者の画像データは、(例えばビデオアクティグラフィを使用して)得られ、評価される。更に、局所的な画像分析は、前記運動に関連したより詳細な分析を可能にし、単なる活動カウントを越える。このような監視は、ICU患者の全身運動を獲得し、せん妄に対して典型的である運動変化を検出する有望かつ控えめな方法を提供する。更に、前記得られた画像データは、一般に、体全体の運動を獲得するので、全身運動だけでなく、別々の体肢の活動も、分析されることができる。
【0014】
提案された監視システムは、控えめなシステムである。せん妄患者は、経時的に繰り返す特定の活動パターンを実行する。これらの運動の例は、例えばベッドシーツをむしること及び空気中でつかむことである。好ましくは、前記活動の大きさ及び前記活動の場所(体のどの部分か)は、本発明によって、せん妄傾向の運動パターンが生じるかどうかをチェックするのに使用される。一般に、本発明によって評価されうる潜在的な活動パラメータは、せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生を含む。
【0015】
提案された監視システムは、様々な測定された活動パラメータに基づいてせん妄スコアを計算する。このスコアは、初期段階にせん妄を検出及び治療するように臨床スタッフをサポートすることができる。現在使用されている質問票を用いると、患者は、多くとも一日三回チェックされる。提案された監視システムを用いると、一日のいつでも、規則的な間隔で又は連続的に、スコア及び活動レベルをチェックすることが可能である。
【0016】
好適な実施例において、前記評価ユニットは、検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントを決定するように構成され、前記せん妄決定ユニットは、高い又は低い運動カウントの持続時間から、及び/又はせん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から前記せん妄スコアを決定するように構成される。この文脈において、"運動カウント"は、前記患者の運動の強度として理解されるべきである。前記運動が大きい/強いほど、前記運動カウントが高く、これは、時々"活動カウント"又は"活動レベル"とも称される。好ましくは、高い又は低い運動カウントの持続時間並びにせん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生の両方が、前記せん妄スコアを決定するのに使用され、これは、前記決定されたせん妄スコアの高い精度及び信頼性を提供する。
【0017】
他の好適な実施例において、前記せん妄決定ユニットは、より長い、より強い及び/又はより頻繁にせん妄典型運動事象が生じると、前記患者のせん妄のより高い可能性及び/又はより高い強度を示すように前記せん妄スコアを決定するように構成される。
【0018】
好ましくは、前記せん妄決定ユニットは、高い又は低い運動カウントの持続時間から、及び/又はせん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生からせん妄タイプインジケータを決定するように構成され、前記せん妄タイプインジケータは、過活動せん妄、機能減退せん妄、並びに混合された過活動及び機能減退せん妄を含むせん妄のタイプを示す。異なる運動サブタイプは、運動挙動の差に基づく。前記サブタイプに関するより多くの情報は、前記患者に対するケアを調整する機会を与える。現在、連続的な客観的な形でせん妄の異なるサブタイプを検出することは、可能ではない。とりわけ、活動の量及び活動の速度は、せん妄のサブタイプに関する指標を与えることができる。加えて、活動カウント及び速度を越えた運動タイプの分類は、有益な情報を与えうる。
【0019】
更に好ましくは、前記せん妄決定ユニットは、第1の時間間隔内の過活動期間の累積された持続時間が第1の持続時間閾値を超過する場合に過活動せん妄を示すように前記せん妄タイプインジケータを決定し、前記第1の時間間隔内の機能減退せん妄の累積された持続時間が第2の持続時間閾値を超過する場合に機能減退せん妄を示すように前記せん妄タイプインジケータを決定するように構成される。この文脈において、過活動期間は、前記運動カウント(=活動カウント)が第1の運動カウント閾値を超過する第2の時間間隔より長い期間としてここで規定される。機能減退期間は、前記運動カウントが第2の運動カウント閾値より下に落ちる第2の時間間隔より長い期間としてここで規定される。
【0020】
有利には、前記せん妄決定ユニットは、日中と夜間との間で運動カウントの実質的な差が存在する場合に及び/又は所定の時間間隔内の前記運動カウントが第3及び第4の運動カウント閾値の間である場合に、非せん妄を示すように前記せん妄スコアを決定するように構成される。前記第3及び第4の運動カウント閾値は、好ましくは、それぞれ、第1及び第2の運動カウント閾値と同一である。この実施例は、せん妄検出の高い精度を提供する。
【0021】
好適な実施例によると、前記監視ユニットは、前記患者の画像データを連続的に又は規則的な間隔で得るように、特に(従来の又は赤外線)ビデオカメラの使用により前記患者のビデオデータを得るように構成される。好ましくは、ビデオアクティグラフィにおいて典型的に使用されるのと同じ機器が、ここで使用される。暗闇でも前記患者を監視するために、近赤外(NIR)カメラ又は1つ若しくは複数の画像センサのような赤外線カメラが、NIR照射と組み合わせて使用される。
【0022】
更に、一実施例において、前記監視システムは、前記画像データ及び/又は前記検出された運動事象から前記患者に関する追加の情報を決定する情報決定ユニットを有し、前記追加の情報は、所定の時間間隔内の前記患者の平均活動、検出された運動パターン、前記患者の体の所定の部分の運動事象、並びに前記患者の活動の変化及び/又は傾向の1つ又は複数を含む。このように、前記決定されたせん妄スコアに加えて、前記患者の状態の更に良好なピクチャを看護師又は医師に与えうる他の情報が、前記得られた画像データから抽出されてもよい。この追加の情報は、追加の画像データの取得とともに前記得られた画像データから容易に得られることができる。
【0023】
他の実施例において、前記せん妄決定ユニットは、前記患者に関する追加の生理学的情報、特に前記患者のEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータを追加的に使用することにより前記せん妄スコアを決定するように構成される。前記追加の生理学的情報は、前記画像データの取得と同時に又は前に、提案された監視システムの一部であってもなくてもよい他の機器/ハードウェアにより得られる。例えば、好適な実施例において、生理学的データ取得ユニットは、前記患者に関する追加の生理学的情報、特に前記患者のEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータを取得するために設けられる。このようなデータ取得ユニットは、患者のEEGデータを測定する従来のユニット及び/又は従来の皮膚コンダクタンス測定ユニット(例えば、http://www.mindmedia.nl/CMS/en/products/sensors/item/166-nx-gsr1d.htmlに現在記載されているようなNeXus皮膚コンダクタンスセンサ、及び例えばhttp://www.mindmedia.nl/CMS/en/products/sensors/item/167-nx-exg2b.htmlに現在記載されているようなNeXus EEGセンサ)でありうる。
【0024】
前記追加の生理学的情報は、せん妄検出の精度を増大し、せん妄を示さない又はせん妄を検出するために評価するのに有用ではない運動を除外するのに使用されてもよい。例えば、パーキンソン病による運動変化は、患者がパーキンソン病を患っていることを検出するのに使用されることができるEEGを用いて除外されることができる。
【0025】
例えば、一実施例において、前記せん妄決定ユニットは、前記患者に関する前記追加の生理学的情報を、せん妄を示す基準生理学的情報と比較する、特に、前記患者のEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータを、せん妄を示すEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータの典型的なパターンと比較するように構成される。好ましくは、せん妄を示す前記基準生理学的情報は、コンピュータのハードディスク又は例えばしばしば病院内に備えられるデータ管理システムの中央記憶部のような記憶ユニットに記憶される。前記基準生理学的情報は、せん妄を示すEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータの典型的なパターンを含んでもよい。このように、この比較により、前記追加の生理学的情報は、せん妄を示さない又はせん妄を検出するために評価するのに有用ではない運動を除外するのに容易に使用されることができる。
【0026】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による監視システムの第1の実施例を示す。
【
図2】本発明による監視システムの第2の実施例を示す。
【
図3】提案された監視システムの一実施例により得られる患者に関する情報を示す図を示す。
【
図4】本発明による監視システムの第3の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明による監視システム1の第1の実施例のブロック図を示す。監視システム1は、経時的に前記患者の画像データ30を得る監視ユニット10を有する。前記監視ユニット10は、例えば、画像データ30(例えば、特定の時間間隔、例えば毎秒における新しい画像、又は連続的なビデオデータ)を取得する1つ又は複数の画像センサ又はカメラを有する。更に、監視システム1は、前記得られた画像データから前記患者の運動事象を検出する画像分析ユニット12と、前記検出された運動事象をせん妄典型運動事象及び非せん妄典型運動事象に分類する評価ユニット14と、せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生からせん妄スコア32を決定するせん妄決定ユニット16とを有し、前記せん妄スコアは、前記患者のせん妄の可能性及び/又は強度を示す。
【0029】
一実施例において、前記画像分析ユニット12、前記評価ユニット14及び前記せん妄決定ユニット16は、破線ボックスにより示されるように、共通のプロセッサ5上で実施される。前記プロセッサ5は、別々の処理ユニットにより前記ユニット12、14、16の各々を実施してもよい。代わりに、他の実施例において、複数のプロセッサ又はコンピュータは、前記ユニット12、14、16を実施するのに使用される。
【0030】
前記提案された監視システムは、例えばICU患者の必要に応じて、一回だけでなく規則的な間隔で又は連続的に、(半)自動化された連続的かつ客観的せん妄検出を可能にする。体の選択された又は全ての部分の運動は、特定の閾値が前記せん妄スコアにより超過される場合にアラームが発せられることができるようにせん妄の強度を示す単純な尺度であるせん妄スコア32の正確な決定を提供するように監視されることができる。
【0031】
本発明による監視システム2の他の実施例は、
図2に概略的に示される。この実施例において、前記監視システムは、1つ又は複数の(全ての)病室50が(前記監視ユニット10を表す)少なくとも1つのカメラ20を備える病院に設置される。カメラ20は、患者の全身(患者ベッド52のみで図示されない)がピクチャ内であるように取り付けられる。カメラ20により得られたビデオデータ30は、前記ビデオデータが分析される(プロセッサ5を表す)計算システム6に送信される。前記活動は、画像分析ユニット12により前記ビデオデータからリアルタイムで抽出され、活動の大きさ、活動の場所、活動のタイプ(すなわち運動パターン)及び/又は時間が、記憶される。ビデオデータ30、特に検出された運動事象は、せん妄を示す典型的なパターン、パターンの繰り返し、活動の増加/減少、及び/又は運動の速度に関して評価ユニット14により分析される。好ましくは、検出された運動事象の高い及び/又は低い運動カウントは、評価ユニット14により決定され、前記(高い又は低い)運動カウントは、前記患者の運動の強度を示す。加えて、高い又は低い運動カウントの持続時間は、前記決定された運動カウントに対して決定される。
【0032】
前記高い又は低い運動カウントの持続時間、及び/又はせん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生は、前記せん妄スコアを決定するのにせん妄決定ユニット16により使用される。好ましくは、前記高い又は低い運動カウントの持続時間及び前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生の両方が、この目的で使用され、前記決定されたせん妄スコアのより高い精度及び信頼性を与える。
【0033】
全てのこのデータが、腕のような体の選択された部分又は全身に対して計算されることができる。前記ビデオデータ及び結局は他の関連情報から得られた異なる測定に基づいて、前記せん妄スコアは、計算される。
【0034】
前記活動の量及び活動の速度は、好ましくは、せん妄のサブタイプ(過活動、機能減退、混合)を分類するのに加えて、好ましくは、対応するせん妄タイプインジケータ34を生成及び出力するのに使用される。過活動せん妄は、第1の時間間隔内の過活動期間の累積された持続時間が第1の持続時間閾値を超過する場合に検出される。機能減退せん妄は、前記第1の時間間隔内の機能減退期間の累積された持続時間が第2の持続時間閾値を超過する場合に検出される。混合せん妄は、機能減退と過活動との間のシフトが存在する場合に検出される。非せん妄は、日中と夜間との間に運動カウントの実質的な差が存在する場合に、及び/又は所定の時間間隔内の運動カウントが(好ましくは、それぞれ第1及び第2の運動カウント閾値と同一である)第3及び第4の運動カウント閾値の間である場合に検出される。このように、一般に、前記せん妄タイプインジケータは、前記高い又は低い運動カウントの持続時間、及び/又は前記せん妄典型運動事象の持続時間、強度、タイプ、場所及び/又は発生から決定される。
【0035】
一実施例において、前記基準は、非せん妄患者の活動であることができる。μが、例えば(前記第1の時間間隔に対する例である)24時間の間の非せん妄患者の平均運動カウント(=活動カウント)を示す場合、例えば、前記第1の運動カウント閾値は、μ+σとして規定されることができ、ここでσは、標準偏差を示し、前記第2の運動カウント閾値は、μ−σとして規定されることができる。前記第2の時間間隔に対する例は、5分であることができる。
【0036】
同様に、前述の持続時間閾値は、以下のように規定されることができる。d1が、例えば24時間(=第1の時間間隔)の間の非せん妄患者の全ての過活動期間の累積された持続時間を示す場合、前記第1の持続時間閾値は、例えば2×d1(すなわち非せん妄患者が持つ持続時間の少なくとも2倍)として規定されることができる。d2が、例えば24時間(=第1の時間間隔)の間の非せん妄患者の全ての機能減退期間の累積された持続時間を示す場合、前記第2の持続時間閾値は、例えば2×d2として規定されることができる。
【0037】
このように、人は、彼/彼女が目立った過活動挙動、目立った機能減退挙動及び/又は著しく頻繁なせん妄典型運動を示す場合にせん妄患者であると判断されることができる。
【0038】
前記生成されたデータ、特に前記せん妄スコアは、ベッドサイド患者モニタ54及び/又は看護師モニタ56に表示され、好ましくは看護ステーションにおいて評価されることができる全ての患者の全体的な概観に含まれる。臨床スタッフにより設定された閾値に基づいて、アラームは、前記せん妄スコアが所定の閾値を超過する場合に与えられることができる。
【0039】
好ましくは、この実施例において(他の実施例においても)、前記せん妄スコアの他に、臨床スタッフは、患者状態をより良く洞察するように異なるパラメータにアクセスすることができる。この目的で、情報決定ユニット18は、前記画像データ及び/又は前記検出された運動事象から前記患者に関する追加の情報36を決定するために設けられる。
図3は、評価されることができる追加の情報データの例を示し、前記追加の情報データは、特に、最新の24時間の間の平均活動、活動の平均速度、現在の活動を含むが、パターン及びどれだけ頻繁にこれらが最新の24時間において繰り返されたかの1つ又は複数を含む。24時間分析は、前記臨床スタッフの入力に依存してより小さな又は大きな時間フレームに調整されることもできる。
【0040】
図3に示されるように、運動推定が実行され、運動ベクトル(右上画像の矢印)を返す。体内の異なる運動は、異なる向き及び長さの異なる矢印においてよく見える。
【0041】
本発明による監視システム3の他の実施例は、
図4に概略的に示される。この実施例において、このようなせん妄予測スコア(例えば(Van den Boogaard, M., Picckers, P., et al., PRE-DELIRIC, PREdiction of DELIRium in ICu patients; development and validation of a delirium prediction model for intensive care patients (2010), Proceedings of the European delirium Association, 5th scientific congress on deliriumに記載されている)PRE−DELIRICスコア、CAM−ICU(混乱評価‐ICU)試験結果38)のような試験からの関連情報は、記入され、せん妄スコア32を計算するようにせん妄決定ユニット16に入力されることができる。前記試験結果38は、好ましくは、別々の記憶ユニット20に記憶される。
【0042】
更に、この実施例において、監視システム3は、EEG測定40で拡張される。せん妄の臨床的症状とスペクトルEEGの変化との間の関連性は、一貫した結果(consistent finding)である。EEGは、脳機能のリアルタイム変化を測定する可能性を与える。EEG測定の補足情報は、前記患者状態に関するより正確な情報及びより正確なせん妄スコアを与えることができる。EEGデータ40は、パーキンソン又はてんかんのような他の病気による運動挙動の変化を除外するのに使用されることができる。前記EEG40は、事前取得され、記憶ユニット20に記憶されてもよい。代わりに、これらは、EEGユニット22によりオンラインで取得されてもよい。
【0043】
同様に、他の実施例において、EEGデータ以外の(又はこれに加えて)前記患者に関する追加の生理学的情報は、せん妄スコア32の決定に対して使用されてもよい。特に、前記患者の皮膚コンダクタンスデータ42は、この目的で有利に使用されることができる。前記皮膚コンダクタンスデータ42は、記憶ユニット20に記憶されてもよく、又は皮膚コンダクタンス測定ユニット24によりオンラインで取得されてもよい。
【0044】
前記せん妄スコアを決定するのに追加されることができる他の追加の生理学的情報は、心拍数、血圧、呼吸速度に関する情報のようなバイタルサインを含んでもよい。このような情報は、例えば既知のPPG(フォトプレチスモグラフィ)アルゴリズムを使用して、前記得られた画像の分析から得られてもよい。代替的には、このような情報は、追加の従来の機器の使用により得られることができる。
【0045】
好ましくは、せん妄決定ユニット16において、前記患者に関する前記追加の生理学的情報40、42は、せん妄を示す(例えば記憶ユニット20に記憶された)基準生理学的情報と比較され、特に前記患者のEEGデータ及び/又は皮膚コンダクタンスデータを、せん妄を示すEEGデータの典型的なパターン及び/又は皮膚コンダクタンスデータと比較する。その結果は、好ましくは、せん妄を示さず、したがって前記せん妄スコアの決定から除外されることができる運動パターンを識別するのに使用される。このような追加の生理学的情報の使用は、このように、せん妄スコア決定の精度及び信頼性を増大させる。
【0046】
要約すると、提案された監視システム及び方法は、患者のせん妄の強度を決定する単純で控えめな正確かつ信頼できるやり方を提供する。好適な実施例は、せん妄のタイプ及び前記患者に関する追加の情報の決定を可能にする。本発明によって得られ、評価される画像データ、特にビデオデータは、せん妄の検出及び分類を更に増大させるようにより詳細に運動のタイプを分析する可能性をも提供する。本発明は、しかしながら、経時的な活動カウントを返すことができるのみならず、所望の応用に依存して更に区別された分析(例えば、手の場所、手の運動のタイプの分類)を更に可能にする。
【0047】
提案された監視システム及び方法は、好ましくは、全種類の患者監視システムにおいて、集中治療室における、一般病棟における及び介護付き住居におけるせん妄に対する臨床決定サポートとして適用されることができる。
【0048】
本発明は、図面及び先行する記載において詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、限定的ではなく、説明的又は例示的であると見なされるべきであり、本発明は、開示された実施例に限定されない。開示された実施例に対する他の変形例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求された発明を実施する際に当業者により理解及び達成されることができる。
【0049】
請求項において、単語"有する"は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞"1つの"は、複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットが、請求項に列挙された複数のアイテムの機能を満たしてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0050】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は一部として供給される光記憶媒体又は半導体媒体のような適切な持続性媒体に記憶/分配されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形で分配されてもよい。
【0051】
請求項内の参照符号は、範囲を限定すると解釈されるべきではない。