(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の流体濃度の測定方法および測定装置では、各光透過部における光路長さが厳密に判明しており、それゆえあらかじめ光路長さが設定された計算式を用いて流体の濃度を容易に求めることができる。その一方で、光透過性の
チューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる流体
として、特に血液の濃度が測定できると、医療等の分野において極めて役立つであろうということが予想される。
【0005】
しかしながら上記従来の方法および装置を、光透過性の
チューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる
血液の濃度測定に適用しようとすると、光透過性の
チューブ壁を持つ樹脂チューブを横切る光路に光を通過させる必要があるが、光路長さとなる
樹脂チューブの内径も
チューブ壁厚さも実測が困難であり、
しかも樹脂チューブ
は変形によって内径も壁厚さも変化する可能性があり、それゆえ
チューブ内を流れる血液の濃度の測定は極めて困難で、従来は実質上その測定ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上述の点に鑑みて従来の流体濃度の測定方法および測定装置の課題を有利に解決するものであり、この発明の流体濃度の測定方法は、光透過性の
チューブ壁を持つ
樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定するに際し、
その
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の光供給箇所で前記
樹脂チューブ内に光源から
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給し、
それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の3箇所の受光箇所でそれぞれ、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内および
樹脂チューブ内を流れる
血液内を通過して来た光を受光して光の強度を求め、
それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記
3箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式を求め、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式を求め、その関係式に基づいて前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力することを特徴とするものである。
【0007】
また、この発明の
血液濃度の測定装置は、光透過性の
チューブ壁を持つ
樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定する装置において、
前記
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所に位置する光供給箇所で前記
樹脂チューブ内に
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給する光源と、
それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の受光箇所でそれぞれ、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内およびその
樹脂チューブ内の
血液内を通過して来た光を受光してその光の強度を示す信号を出力する受光素子と、
それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記複数箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式をもとめ、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより求めた、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式に基づいて、前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力する
血液濃度出力手段と、
を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
かかるこの発明の流体濃度の測定方法によれば、
光透過性のチューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定するに際し、その
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の光供給箇所で光源が前記
樹脂チューブ内に
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給し、それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の受光箇所でそれぞれ、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内および
樹脂チューブ内を流れる
血液内を通過して来た光を受光して光の強度を求め、それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記
3箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式を求め、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより、
前記樹脂チューブのチューブ壁厚さ
および内径の項を打ち消して前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式を求め、その関係式に基づいて前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するので、
樹脂チューブのチューブ厚さや
内径が不明であったり変化したりしても、
また血液が動脈血であると静脈血であるとにかかわらず、樹脂チューブ内を流れる
血液の濃度を高精度に測定することができる。
【0009】
そしてこの発明の流体濃度の測定装置によれば、
光透過性のチューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定する装置において、前記
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所に位置する光供給箇所で光源が、前記
樹脂チューブ内に
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給し、それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光素子が、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内およびその
樹脂チューブ内の
血液内を通過して来た光を受光してその光の強度を示す信号を出力し、そして
血液濃度出力手段が、それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記複数箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式をもとめ、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより
前記樹脂チューブのチューブ壁厚さおよび内径の項を打ち消して求めた、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式に基づいて、前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するので、
樹脂チューブのチューブ厚さや
内径が不明であったり変化したりしても、
また血液が動脈血であると静脈血であるとにかかわらず、樹脂チューブ内を流れる
血液の濃度を高精度に測定することができる。
【0010】
なお、この発明の流体濃度の測定装置においては、前記
血液濃度出力手段は、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式を用いてあらかじめ求めて記憶した、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示すテーブルを用いて、前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するものでも良く、このようなテーブルを用いれば、
3箇所の受光箇所での光の強度から短時間で容易に
血液の濃度を求めて出力することができる。
【0011】
また、この発明の流体濃度の測定装置においては、前記
血液濃度出力手段は、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式に基づき、あらかじめ実験により求めて記憶した、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と実際の
血液の濃度との関係を示すテーブルを用いて、前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するものでも良く、このようなテーブルを用いても、
3箇所の受光箇所での光の強度から短時間で容易に
血液の濃度を求めて出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の流体濃度の測定方法の一実施例を示す説明図である。
【
図2】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図3】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図4】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図5】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図6】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図7】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図8】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図9】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図10】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図11】この発明の流体濃度の測定方法の一実施例を示す説明図である。
【
図12】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図13】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図14】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図15】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図16】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図17】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図18】上記実施例の流体濃度の測定方法を示す説明図である。
【
図19】この発明の流体濃度の測定装置の一実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、
図1〜10は、この発明の流体濃度の測定方法の一実施例における測定および計算手順を順次に示す説明図である。
この実施例の流体濃度の測定方法は、光透過性のチューブ壁を持つ実質的に透明な樹脂チューブ内を流れる、流体としての、特に血液の濃度を測定するものであり、ここでは、図1に示すように、光源としての3つの発光ダイオードKA,KB,KCからそれぞれ出力された光が、樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶその樹脂チューブの表面上の3箇所に位置する光供給箇所で樹脂チューブ内に供給され、樹脂チューブのそれらの発光ダイオードに近い側のチューブ壁と、樹脂チューブ内の血液と、それらの発光ダイオードから遠い側(反対側)のチューブ壁とを通過して、それらの光供給箇所に対しその樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する樹脂チューブの表面上の3箇所の受光箇所で3つの光センサSA,SB,SCに到達するものとし、光センサに到達する経路は、最も光強度が強い部分を考え、光源としての3つの発光ダイオードKA,KB,KCからそれぞれ出力された光は、
【0014】
【数1】
の経路をそれぞれ進むものとするモデルを考える。
【0015】
【数2】
とし、
樹脂チューブ内の血液の吸光係数をεH、濃度をCHとし、
センサ間距離を、センサSA−SB間およびSB−SC間:LN、センサSA−SC間:LFと設定し、
樹脂チューブの内径を、PA2−PA3:DA、PB2−PB3:DB、PC2−PC3:DCとする。
【0016】
次に、
図3に示すように、発光ダイオードKAのみが発光した場合を考える。PA1,PA2,PA3,PA4,PC3,PC4の各点を通過するときの光の強さをそれぞれIA1,IA2,IA3,IAG,IAC3,IAFとすると、ランベルト−ベールの法則により、
図4に示すように、
【数3】
となる。
【0017】
(2)式を(1)式で割ると、
【数4】
となる。
【0018】
同様に、
図5に示すように、発光ダイオードKCのみが発光した場合を考えると、
【数5】
となる。
【0019】
次に、(3)式×(4)式を考えると、
【数6】
【0020】
対数をとると、
【数7】
従って、
【数8】
となる。
【0022】
(3)式および(4)式を求めたのと同様にして、
図6に示す、
PA1−PA2−PA3−PA4
PA1−PA2−PB3−PB4
PB1−PB2−PB3−PB4
PB1−PB2−PA3−PA4
の4本の光路に対し、
図7および
図8に示すように各点を通過するときの光強度IA1,IA2,IA3,IAG,IAB3,IAN,IB1,IB2,IB3,IBG,IBA3,IBNをランベルト−ベールの法則により求めると、IAGは(1)と同じであるので、
【数9】
【0023】
(6)式および(7)式より、
【数10】
同様に、
【数11】
【0024】
次に、(8)式×(9)式を考えると、
【数12】
【0025】
対数をとると、
【数13】
従って、
【数14】
となる。
【0026】
次に、樹脂チューブの3箇所の内径DA,DB,DCの補正を行う。
IAG(
図3参照)とICG(
図5参照)、IAF(
図3参照)とICF(
図5参照)が異なる値をとるのは、DA≠DCであることによるので、
図9に示すように、DA−ΔdF=DxF=DC+ΔdFとなる内径DxFを考え、
図10に示すように、光路長にあわせてIAG,ICF,IAF,ICGをそれぞれ補正し、IHAGF,IHCF,IHAF,IHCGとする(DxFとΔdFとを用いて表す)と、
【数15】
となる。
なお、添え字Hは補正後に関するものであることを示し、添え字Gは光供給箇所の真下の受光箇所への光路に関するものであることを示し、添え字Nは光供給箇所の真下から近い方の受光箇所への傾斜した光路に関するものであることを示し、添え字Fは光供給箇所の真下から遠い方の受光箇所への傾斜した光路に関するものであることを示す(以下でも同様)。
【0027】
上記の値を用いて(5)式を内径DxFに対し当てはめると、
【数16】
【0028】
ここで、IHAF×IHCF、IHAGF×IHCGをそれぞれ求めると、
【数17】
【0030】
よって、(11)式に(12)式と(13)式を代入すると、
【数19】
となる。
【0033】
また、
図11,12および
図13,14を参照して上述したと同様に補正を行うと、内径DxNAとDxNCとに対し、
【数22】
が得られる。
【0034】
図11は、上記実施例の測定方法を実施し得る、この発明の流体濃度の測定装置の一実施例を示す構成図であり、この実施例の流体濃度の測定装置は、
光透過性のチューブ壁を持つ実質的に透明な樹脂チューブ内を流れる、流体としての血液の濃度を測定する装置であって、樹脂チューブTの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶその樹脂チューブTの表面上の3箇所に位置する光供給箇所で樹脂チューブ内Tに、動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率がほぼ等しい例えば590nm付近の波長の光を供給する光源としての3つの発光ダイオード1(
図1のKA,KB,KC)と、それらの発光ダイオード1との間に樹脂チューブTを配置されてそれらの発光ダイオード1にそれぞれ対向し、上記供給されてその樹脂チューブTの壁内およびその樹脂チューブT内の血液内を通過して来た光を受光してその光の強度を示す信号を出力する受光素子としての3つの光センサ2(
図1のSA,SB,SC)と、それら3つの光センサ2の出力信号を入力される通常のマイクロコンピュータ3と、そのマイクロコンピュータ3の出力信号を画面表示するディスプレイ装置4と、を具えている。
【0035】
ΔdNは微少量であるため0とすると、上記の三つの式から近似的に、
【数24】
とおけるので、上記(18)式に上記(16)式および(17)式を代入して、
となる。
【0036】
なお、管路内径D=4mm、LN=2mm、Δd=0.025mmの場合を考えると、
【数25】
【0037】
ここで、
図17の直角三角形ABCを考え、点A−B間の距離をDxとすると、
【数26】
また、
【数27】
【0038】
(20)式および(21)式より、
【数28】
【0039】
(20)式および(22)式より、
【数29】
となる。
【0040】
さらに、上記実施例の方法および装置では、光源として発光ダイオードを用いたが、これに代えて、例えばレーザーダイオードを用いても
良い。
【0041】
ここで、(22)式、(23)式、(26)式の構成を考えると、
【数32】
となって、LF,LNは固定値であり、IAF,IAG,IBG,ICF,ICG,IAN,IBN(A),IBN(C),ICNは測定値であるから、これらの式は測定値および固定値のみで構成される。
【0042】
そして、上記実施例の方法および装置では、3箇所の光供給箇所で光を供給し、各光供給箇所からの光を3箇所の受光箇所でそれぞれ受光して光の強度を求めているが、これに
代えて、4箇所以上の光供給箇所で光を供給し、各光供給箇所からの光を各光供給箇所に
対応する4箇所以上の受光箇所でそれぞれ受光して光の強度を求めても
よく、光供給箇所および受光箇所がそれぞれ4箇所以上の場合には、
3箇所の光供給箇所および受光箇所の場合の効果に加えて、得られた結果を平均化する等により測定精度をより高めることができる。
【0043】
かくしてこの発明の流体濃度の測定方法によれば、
光透過性のチューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定するに際し、その
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の光供給箇所で光源が前記
樹脂チューブ内に
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給し、それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の受光箇所でそれぞれ、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内および
樹脂チューブ内を流れる
血液内を通過して来た光を受光して光の強度を求め、それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記
3箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式を求め、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより、
前記樹脂チューブのチューブ壁厚さ
および内径の項を打ち消して前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式を求め、その関係式に基づいて前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するので、
樹脂チューブのチューブ厚さや
内径が不明であったり変化したりしても、
また血液が動脈血であると静脈血であるとにかかわらず、樹脂チューブ内を流れる
血液の濃度を高精度に測定することができる。
【0044】
そしてこの発明の流体濃度の測定装置によれば、
光透過性のチューブ壁を持つ樹脂チューブ内を流れる流体
としての血液の濃度を測定する装置において、前記
樹脂チューブの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶ前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所に位置する光供給箇所で光源が、前記
樹脂チューブ内に
動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率が等しい互いに同一波長の光を供給し、それらの光供給箇所に対しその
樹脂チューブの直径方向の反対側に位置する前記
樹脂チューブの表面上の
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光素子が、前記供給されてその
樹脂チューブの
チューブ壁内およびその
樹脂チューブ内の
血液内を通過して来た光を受光してその光の強度を示す信号を出力し、そして
血液濃度出力手段が、それらの受光箇所での光の強度からランベルト−ベールの法則に基づき、前記複数箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光
が前記樹脂チューブを直交および斜交して前記
3箇所の受光箇所でそれぞれ受光
された場合の光の強度と
血液の濃度との関係を示す複数の関係式をもとめ、それらの関係式を前記
3箇所の光供給箇所について連立させることにより
前記樹脂チューブのチューブ壁厚さおよび内径の項を打ち消して求めた、前記
3箇所の受光箇所での光の強度と
血液の濃度との関係を示す関係式に基づいて、前記
3箇所の受光箇所での光の強度から
血液の濃度を求めて出力するので、
樹脂チューブのチューブ厚さや
内径が不明であったり変化したりしても、
また血液が動脈血であると静脈血であるとにかかわらず、樹脂チューブ内を流れる
血液の濃度を高精度に測定することができる。
【0045】
上記の(27)式に上記の各固定値と各測定値とを当てはめると、血液濃度(ヘマト(赤血球)濃度)CHが求められるが、計算が複雑であること、および実際の血液では赤血球による光の散乱があるため、ランベルト−ベールの法則を拡張して光の散乱のある媒体に適用したモディファイド・ランベルト−ベールの法則を適用する必要があり、この場合にも当然に厳密な計算は可能であるが、計算がさらに複雑になることから、この実施例の測定方法では、処理の単純化および、数学関数コマンドを持たない組み込みCPU(中央処理ユニット)で直接濃度を求める場合等を考慮して、実際の血液濃度CHと、上記式の光強度測定値を含む各項の値を指標とする血液濃度CHの値との間の変換テーブルをあらかじめ作成してメモリ内に記憶しておき、光強度測定値が得られたらそれらの値から変換テーブルおよび発光ダイオードKA,KB,KCの発光波長に対応する血液吸光係数εHの値等の上記既知の固定値を用いて血液濃度CHの値を読み出し、それを出力するようにしてもよい。
【0046】
図19は、上記実施例の測定方法を実施し得る、この発明の流体濃度の測定装置の一実施例を示す構成図であり、この実施例の流体濃度の測定装置は、光透過性の管壁を持つ管路としての実質的に透明な樹脂チューブ内を流れる、流体としての血液の濃度を測定する装置であって、樹脂チューブTの延在方向に沿って互いに隣接して並ぶその樹脂チューブTの表面上の3箇所に位置する光供給箇所で樹脂チューブ内Tに、動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率がほぼ等しい例えば590nm付近の波長の光を供給する光源としての3つの発光ダイオード1(
図1のKA,KB,KC)と、それらの発光ダイオード1との間に樹脂チューブTを配置されてそれらの発光ダイオード1にそれぞれ対向し、上記供給されてその樹脂チューブTの壁内およびその樹脂チューブT内の血液内を通過して来た光を受光してその光の強度を示す信号を出力する受光素子としての3つの光センサ2(
図1のSA,SB,SC)と、それら3つの光センサ2の出力信号を入力される通常のマイクロコンピュータ3と、そのマイクロコンピュータ3の出力信号を画面表示するディスプレイ装置4と、を具えている。
【0047】
かかる実施例の流体濃度の測定装置にあっては、3つの発光ダイオード1から例えば順次に出力された各光が、樹脂チューブTのそれらの発光ダイオード1に近い側のチューブ壁と、樹脂チューブT内の血液と、それらの発光ダイオード1から遠い側(反対側)のチューブ壁とを通過して3つの光センサ2にそれぞれ到達し、それら3つの光センサ2の出力信号を入力されたマイクロコンピュータ3が、上述の変換テーブルおよび固定値を用いた簡単な演算により血液濃度CHの値を求め、それをディスプレイ装置4で表示する。それゆえマイクロコンピュータ3とディスプレイ装置4とは流体濃度出力手段に相当する。なお、この実施例では、3つの光センサ2の出力信号が適度なレベルになるように、3つの発光ダイオード1がそれぞれ発光する光の強度を適宜調節するが、この3つの発光ダイオード1をマイクロコンピュータ3に接続するとともに、3つの光センサ2の出力信号が適度なものかつ安定したものになるようにモニタリング用の光センサを各発光ダイオード1に増設してこれらもマイクロコンピュータ3に接続し、3つの発光ダイオード1がそれぞれ発光する光の強度をマイクロコンピュータ3でフィードバック制御するようにしても良い。
【0048】
従って、この実施例の流体濃度の測定装置によれば、マイクロコンピュータ3が、それら3箇所の受光箇所での3つの光センサ2の出力信号が示す光の強度から、ランベルト−ベールの法則に基づき、3箇所の光供給箇所の各々についてそこからの光を3箇所の受光箇所でそれぞれ受光する場合の光の強度と血液の濃度との関係を示す3つの関係式をもとめ、それらを3箇所の光供給箇所について連立させることにより求めた、管壁厚さとしての樹脂チューブTの壁厚さを含まずに3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度との関係を示す関係式に基づいて、3箇所の受光箇所での光の強度から血液の濃度を求めてディスプレイ装置4で表示出力するので、樹脂チューブTの壁厚さや発光強度が不明であったり変化したりしても、樹脂チューブT内を流れる血液の濃度を高精度に測定することができる。
【0049】
しかも、この実施例の流体濃度の測定装置によれば、マイクロコンピュータ3は、メモリに記憶した、3箇所の受光箇所での光の強度と流体の濃度との関係を示す関係式を用いてあらかじめ別途求めた、3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度との関係を示すテーブルを用いて、3箇所の受光箇所での光の強度から血液の濃度を求めてディスプレイ装置4で出力するので、3箇所の受光箇所での光の強度から短時間で容易に血液の濃度を求めて出力することができる。
【0050】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば上記実施例の方法および装置では、3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度との関係を示すテーブルを用いて、3箇所の受光箇所での光の強度から血液の濃度を求めて出力しているが、これに代えて、ランベルト−ベールの法則に基づき、3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度との関係を示す関係式を用いて光の強度から血液の濃度を演算により求めて出力するようにしても良く、その場合に、ランベルト−ベールの法則として、光の散乱を考慮したモディファイド・ランベルト−ベールの法則を適用して3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度との関係を示す関係式を求めても良い。
【0051】
また、上記3箇所の受光箇所での光の強度と血液の濃度とに上記関係式に基づく有意な関係があることが判明しているので、その関係に基づき、流体濃度出力手段としてのマイクロコンピュータ3が、あらかじめ実験により求めて記憶した、複数箇所の受光箇所での光の強度と実際の流体の濃度との関係を示すテーブルを用いて、それら複数箇所の受光箇所での光の強度から流体の濃度を求めて出力するようにしても良い。さらに、上記実施例の方法および装置では、動脈血の酸素化ヘモグロビンと静脈血の脱酸素化ヘモグロビンとの両方の吸光率がほぼ等しい光として、590nm付近の波長の光を用いているが、これに代えて、例えば520nm,550nm,570nmあるいは805nm付近の波長の光を用いても良い。
【0052】
さらに、上記実施例の方法および装置では、光源として発光ダイオードを用いたが、これに代えて、例えばレーザーダイオードを用いても良く、また、管路として樹脂チューブを用いたが、これに代えて、管路としてガラス管を用いても良く、そして、上記実施例の方法および装置では、液体としての血液の濃度を測定したが、これに代えて、他の液体の濃度測定に用いることもでき、その場合には光源から供給する光として、その液体による吸収率が高い波長の光を選択すると、管壁の厚さ等に応じて3箇所の受光箇所での光の強度に差異が出易いので好ましい。
【0053】
さらに、上記実施例の方法および装置では、3箇所の光供給箇所からの光が混ざらないようにそれらの光供給箇所から順次に光を供給し、各光供給箇所からの光を3箇所の受光箇所でそれぞれ受光して光の強度を求めているが、これに代えて、例えば3箇所の光供給箇所からの光に互いに異なる周波数の変調をかけてそれらの光を同時に供給し、3箇所の受光箇所でそれぞれ受光した光をそれらの周波数でフィルタリングすること(変調ロックイン方式)で、各光供給箇所からの光の強度を分別して処理するようにしても良い。
【0054】
そして、上記実施例の方法および装置では、3箇所の光供給箇所で光を供給し、各光供給箇所からの光を3箇所の受光箇所でそれぞれ受光して光の強度を求めているが、これに代えて、2箇所または4箇所以上の光供給箇所で光を供給し、各光供給箇所からの光を各光供給箇所に対応する2箇所または4箇所以上の受光箇所でそれぞれ受光して光の強度を求めてもよく、光供給箇所および受光箇所がそれぞれ2箇所の場合には、管路の壁厚さが判明するので、例えば樹脂チューブ等の管路の装着による誤差を吸収することができる。また光供給箇所および受光箇所がそれぞれ3箇所の場合には、管路の壁厚さおよび内径が判明するので、上記実施例の如くして検査対象の血液濃度を求めることができる。そして光供給箇所および受光箇所がそれぞれ4箇所以上の場合には、得られた結果を平均化する等により測定精度をより高めることができる。