(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信制御部は、前記所定サイズよりも小さい複数のパケットを同時に送信する場合、当該複数のパケットのうちの一部の宛先を前記親機以外として、当該複数のパケットを前記親機に対して送信する、
請求項1に記載の通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線LANの標準規格であるIEEE802.11nでは、送信データを多数連結することで1回のフレーム送信で大量のデータを送信するフレームアグリゲーションという機能が規定されている。フレームアグリゲーション機能を動作させるためには、複数のフレームが送信待ちの状態になっている必要があり、例えば、一定サイズ以上のパケットを送信する場合に、当該パケットが複数のフレームに分割され、フレームアグリゲーション機能により一括で送信される。
そのため、pingを用いたスループット測定において、ユーザの無線利用時の状態に合ったスループットを測定するために、フレームアグリゲーション機能が動作するように、一定サイズ以上のICMPパケット(Echo Request、Echo Reply)を送受信しなければならない。
【0007】
ここで、
図10(A)に、pingのパケットサイズと、往復遅延時間(RTT:Round-Trip Time)及び当該往復遅延時間から算出されるスループットとの関係を示す。なお、
図10等では、夫々の関係を単純化し、模式的に示している。
図10(A)に示すように、パケットサイズが10000バイト未満の場合、実際の無線利用時に比べて低いスループットが算出される。これは、フレームアグリゲーションではパケットサイズが大きいほど効率が向上すること、及びパケットサイズが小さいほど通信時間に対してICMPの処理時間が支配的になることを理由としている。他方、パケットサイズが20000又は30000バイトを超える辺りから算出結果が安定し、実態と合ったスループットが算出されることが分かる。
【0008】
このように、pingを用いて正確なスループットを測定するための1つの方法として、パケットサイズを大きくする方法があるが、単にパケットサイズを大きくしたのでは、以下に示す問題が生じてしまう。
図10(B)を参照して、パケットサイズを大きくした場合に生じる問題について説明する。なお、
図10(B)では、理解を容易にするために、具体的なモデルケースを用いているが、以下に示す問題は、このようなケースに限られるものではない。
【0009】
TV放送等の映像コンテンツを宅内の好きな場所で視聴できるように、ユーザが所有する通信装置に映像コンテンツを配信する映像配信サービスが知られている。このような映像配信サービスでは、
図10(B)に示すように、宅内に映像配信装置を設置し、通信装置と映像配信装置とが無線LANのアクセスポイントを介して通信することで映像コンテンツの配信が行われる。
映像配信サービスを導入する場合、先ず、ユーザ宅において十分なスループットが確保できるか確認する必要がある。スループットの測定では、本来であれば、通信装置−映像配信装置間のスループットを測定する必要があるものの、サービス導入前のユーザ宅では、映像配信装置が設置されていないため、通信装置−アクセスポイント間のスループットを測定することになる。
【0010】
ここで、上述のように、pingを用いたスループット測定では、パケットサイズを大きくする必要があるが、パケットサイズを大きくすると、パケットのフラグメント及びデフラグメントが発生してしまう。この点、通信装置や映像配信装置のような通信の終端にある装置では、パケットのフラグメント(及びデフラグメント、以下省略)を行うことが想定されている一方で、アクセスポイントのように通信を中継する装置では、パケットのフラグメント等を行うことが想定されていない。そのため、通信装置−アクセスポイント間のpingの往復遅延時間は、通信装置−映像配信装置間の往復遅延時間よりも、アクセスポイントのフラグメント等にかかる余分な時間の分だけ長くなってしまう傾向があり、結果、測定するスループットも実際のスループットよりも低く算出されてしまう傾向がある。
【0011】
図10(B)で例示した映像配信サービスの場合、測定したスループットを元にサービスの導入や配信する映像の画質(高画質/低画質)等をアドバイスすることがある。そのため、測定したスループットが実際のスループットよりも低い場合、事業者側にとってみればサービス導入の機会を逃してしまうことに繋がり、また、ユーザ側にとってみれば本来であれば高画質の視聴ができるにも関わらず低画質での視聴を勧められてしまう可能性がある。
このようにpingを用いてアクセスポイントとの間(無線区間)のスループットを測定する場合、フレームアグリゲーションとの関係からデータサイズを大きくしなければ正確な測定ができない一方で、フラグメント等との関係からデータサイズを大きくすると正確な測定ができないという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、無線区間のスループットを正確に測定可能な通信装置及び算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様においては、電波を発信する親機と無線接続された通信装置であって、前記親機に対してパケットを送信する送信制御部と、前記パケットに対する応答パケットを、前記親機から受信する受信制御部と、前記パケットを送信してから前記応答パケットを受信するまでの時間を、前記通信装置と前記親機との間の往復遅延時間として取得するとともに、取得した前記往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出する算出部と、を備え、前記送信制御部は、送信するパケットのサイズの入力を受け付けると、入力値が所定サイズ以上の場合には、合計サイズが前記入力値と同じになるようにパケット数を調整した、前記所定サイズよりもサイズの小さい複数のパケットを、前記親機に対して同時に送信する通信装置を提供する。
【0014】
また、前記送信制御部は、前記所定サイズよりも小さい複数のパケットを同時に送信する場合、当該複数のパケットのうちの一部の宛先を前記親機以外として、当該複数のパケットを前記親機に対して送信することとしてもよい。
【0015】
また、前記送信制御部は、前記親機に対してサイズの異なる第1パケットを複数送信し、前記受信制御部は、複数の前記第1パケットの夫々に対する応答パケットであり、前記第1パケットのサイズに関わらず一定のサイズの第1応答パケットを、前記親機から受信し、前記算出部は、前記第1パケットを送信してから前記第1応答パケットを受信するまでの第1往復遅延時間を、複数の前記第1パケットのサイズの夫々に関連付けて取得する取得部と、取得した複数の前記第1往復遅延時間に基づいて、前記第1パケットのサイズの増加量に対する当該第1パケットが前記親機に到達するまでの上り遅延時間の増加量を算出する増加量算出部と、前記第1パケットのサイズの増加量に対する前記上り遅延時間の増加量に基づいて、前記親機との間の上り方向のスループットを算出する速度算出部と、を備えることとしてもよい。
【0016】
また、前記送信制御部は、前記親機に対してサイズの異なる第2パケットを複数送信し、前記受信制御部は、前記親機から、複数の前記第2パケットの夫々に対して当該第2パケットと同じサイズの第2応答パケットを受信し、前記取得部は、前記第2パケットを送信してから前記第2応答パケットを受信するまでの第2往復遅延時間を、複数の前記第2パケットのサイズの夫々に関連付けて取得し、前記増加量算出部は、取得した複数の前記第2往復遅延時間に基づいて、前記第2パケットのサイズの増加量に対する前記第2往復遅延時間の増加量を算出し、前記速度算出部は、パケットのサイズの増加量に対する上り遅延時間の増加量及び前記第2往復遅延時間の増加量に基づいて、前記親機との間の下り方向のスループットを算出することとしてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様においては、電波を発信する親機と無線接続された通信装置において前記親機との間のスループットを算出する算出方法であって、前記親機に対してパケットを送信するステップと、前記パケットに対する応答パケットを、前記親機から受信するステップと、前記パケットを送信してから前記応答パケットを受信するまでの時間を、前記通信装置と前記親機との間の往復遅延時間として取得するとともに、取得した前記往復遅延時間に基づいて、前記通信装置と前記親機との間のスループットを算出するステップと、を含み、前記送信するステップは、送信するパケットのサイズの入力を受け付けると、入力値が所定サイズ以上の場合には、合計サイズが前記入力値と同じになるようにパケット数を調整した、前記所定サイズよりもサイズの小さい複数のパケットを、前記親機に対して同時に送信する算出方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無線区間のスループットを正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態の概要]
初めに、
図1を参照して、無線区間のスループットを正確に算出する通信装置1の第1実施形態の概要について説明する。
図1(A)に示すように、第1実施形態の通信装置1は、アクセスポイント2と無線接続され、無線区間(通信装置1−アクセスポイント2間)のスループットを測定する。アクセスポイント2は、無線LANのアクセスポイント(親機)であり、周囲に電波を発信することで無線LAN環境を構築する。通信装置1は、任意の端末装置であり、本実施形態では、スマートフォン、携帯電話、タブレットPC、ゲーム機等の携帯型の通信装置を用いる。
【0021】
上述したように、pingを用いたスループット測定では、フレームアグリゲーションとの関係から複数のフレームを同時に送信しなければならない。この点、複数のフレームを同時に送信するために単にデータサイズを大きくしたのでは、
図1(B)に示すように、パケットのフラグメント及びデフラグメントが必要になってしまう。アクセスポイント2は、通信を中継する装置であるため、フラグメント等の処理に余分な時間がかかってしまい、結果、通信装置1−アクセスポイント2間でpingを用いたスループット測定を行うと、実際の通信時とは異なるスループットが測定されてしまう。
【0022】
そこで、
図1(C)に示すように、第1実施形態の通信装置1では、アクセスポイント2との間でサイズの小さいパケットを複数同時に送受信することで、プラグメント等を発生させないようにしている。なお、個々のパケットのサイズは、フラグメント等が発生しないサイズであり、具体的なサイズはネットワークの種類や設定により異なるが、例えば、イーサネット(登録商標)や無線LANでは約1500バイトである。
【0023】
一例として、スループット測定に用いるpingのパケットサイズを30000バイトとする場合について考える。
図1(B)に示す例では、通信装置1は、30000バイトのパケットを、サイズの小さい複数のパケットにフラグメントし、フレームアグリゲーション機能でまとめて同時に送信する。
このような場合、アクセスポイント2は、受信時に、サイズ小の複数のパケットをサイズ大のパケットにデフラグメントする必要があり、また、応答時に、サイズ大の応答パケットをサイズ小の複数の応答パケットにフラグメントしなければならない。
【0024】
これに対して、
図1(C)に示す例では、通信装置1は、1500バイト程度のサイズ小のパケット20個をフレームアグリゲーション機能でまとめて同時に送信することで、合計で30000バイトのパケットをアクセスポイント2に対して送信する。
このような場合、個々のパケットのサイズが小さいためフラグメント等が発生することがない一方で、複数のパケットが同時に送信されるためフレームアグリゲーション機能は発揮される。その結果、フラグメント等による遅延というアクセスポイント2に特有の問題が生じることなく、通信装置1は、アクセスポイント2との間のpingの応答に基づいて、無線区間のスループットを正確に測定することができる。
【0025】
[通信装置1の構成]
続いて、第1実施形態の通信装置1の構成について説明する。
図2は、第1実施形態の通信装置1の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、通信装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を含んで構成される。
【0026】
通信部11は、送信アンテナ及び受信アンテナを含んで構成され、制御部13から出力された信号を変調してRF(Radio Frequency)信号を生成し、送信アンテナを介してアクセスポイント2等の外部機器に対して無線送信する。また、通信部11は、受信アンテナを介して受信したRF信号を復調して制御部13に出力する。
記憶部12は、ROM及びRAM等のメモリ又はハードディスク等の記憶媒体である。記憶部12は、制御部13を機能させるためのプログラム及び制御部13が動作する際に生成されるデータを記憶する。
【0027】
制御部13は、例えば、CPUにより構成され、記憶部12に記憶されている各種プログラムを実行することにより、送信制御部131、受信制御部132及び算出部133として機能する。
【0028】
送信制御部131は、送信するパケットのサイズの入力を受け付けると、入力値に応じたサイズのパケット(Echo Request)をアクセスポイント2に対して送信する。具体的には、送信制御部131は、入力値が所定サイズ以上の場合には、合計サイズが当該入力値と同じになるようにパケット数を調整した、所定サイズよりもサイズの小さい複数のパケットを、アクセスポイント2に対して同時に送信する。
なお、所定サイズは、フラグメント等の発生の閾値となるサイズであり、例えば、約1500バイトである。また、複数のパケットは、全てのパケットサイズが同一であってもよく、少なくとも一部のパケットサイズが異なるものであってもよい。
【0029】
このように送信制御部131がサイズ小のパケットを複数同時に送信することで、アクセスポイント2においてフラグメント等の処理を行う必要がなくなる。一方、
図3(A)に示すように、アクセスポイント2は、複数のパケット(Echo Request)が送信された場合、個々のパケットに対して応答(Echo Reply)を行わなければならないため、アクセスポイント2におけるICMPの処理負荷が増大してしまう。
【0030】
そこで、送信制御部131は、所定サイズよりも小さい複数のパケットを同時に送信する場合、
図3(B)に示すように、当該複数のパケットのうちの一部の宛先をアクセスポイント2以外として、当該複数のパケットをアクセスポイント2に対して送信することとしてもよい。
図3(B)に示す例では、宛先Aのパケットは、アクセスポイント2を宛先とするICMPパケット(Echo Request)であり、宛先Bのパケットは、アクセスポイント2以外を宛先とするUDPパケットである。なお、宛先Bは、実際に存在する機器のアドレスであってもよく、また、実際には存在しないアドレスであってもよい。アクセスポイント2にとってみれば、自身宛(宛先A)のパケットに対してのみ応答すればよいため、アクセスポイント2におけるICMPの処理負荷を軽減することができる。
【0031】
図2に戻り、受信制御部132は、送信したパケット(Echo Request)に対する応答パケット(Echo Reply)を、アクセスポイント2から受信する。
【0032】
算出部133は、パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの時間を、通信装置1とアクセスポイント2との間の往復遅延時間(RTT)として取得するとともに、取得した往復遅延時間に基づいて、通信装置1とアクセスポイント2との間(無線区間)のスループットを算出する。具体的には、算出部133は、以下の式に基づいて無線区間のスループットを算出する。
スループット[Mbps]=パケットサイズ[Byte]×8×2/RTT[msec]/1000
【0033】
[通信装置1の処理]
以上、本実施形態に係る通信装置1の構成について説明した。続いて、通信装置1が無線区間のスループットを算出する際の処理の流れについて説明する。
図4は、通信装置1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0034】
初めに、ステップS1において、通信装置1では、測定開始操作を受け付ける。この操作を受け付けると、通信装置1は、アクセスポイント2に対して要求パケット(Echo Request)を送信する。アクセスポイント2では、要求パケットを受信すると、通信装置1に対して応答パケット(Echo Reply)を返信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、pingの応答時間を取得する。
【0035】
このpingの応答を所定回数繰り返すと、通信装置1は、ステップS2において、往復遅延時間(RTT)を取得する。具体的には、通信装置1は、所定回数分のpingの応答時間の平均値や中央値等の任意の値を往復遅延時間として取得する。また、通信装置1は、取得した往復遅延時間からスループットを算出する。
このようにしてスループットを算出すると、ステップS3において、通信装置1は、算出したスループットを所定の態様で出力し、処理を終了する。
【0036】
[第1実施形態の効果]
以上説明した第1実施形態の通信装置1によれば、通信装置1は、フラグメント等が必要ないサイズ小のパケット数を調整することで、フレームアグリゲーションを機能させつつ、無線区間(通信装置1−アクセスポイント2間)のスループットを測定する。
これにより、通信装置1は、アクセスポイント2におけるフラグメント等による余分な時間を生じさせることなく、無線区間のスループットを正確に測定することができる。
【0037】
また、通信装置1は、送信するパケットの一部をアクセスポイント2以外を宛先とするパケットとすることで、アクセスポイント2におけるICMPの処理負荷を軽減することができ、結果、無線区間のスループットを正確に測定することができる。
【0038】
[第2実施形態の概要]
続いて、通信装置1の第2実施形態について説明する。無線区間のスループットを測定する場合、
図5に示すように、通信装置1からアクセスポイント2に向けて送信される通信経路(アップリンク)、及びアクセスポイント2から通信装置1に向けて送信される通信経路(ダウンリンク)の双方のスループットを測定することが好ましい。そこで、第2実施形態の通信装置1では、アップリンク及びダウンリンクの双方のスループットを測定する。
【0039】
[アップリンクのスループット測定の概要]
アップリンクのスループットを測定する場合、通信装置1が送信したパケットがアクセスポイント2に到達するまでの上りの遅延時間を取得できればよいものの、通信装置1では、パケットが通信装置1とアクセスポイント2との間を往復するのにかかる往復遅延時間を取得し、上りのみにかかる遅延時間は取得できない。そこで、第2実施形態の通信装置1では、以下の方法によりアップリンクのスループットを測定する。
【0040】
図6(A)に示すように、アップリンクのスループットを測定する場合、通信装置1は、アクセスポイント2に対してサイズを変更してパケットを送信することを繰り返す一方で、アクセスポイント2から毎回同じサイズの応答パケットを受信する。なお、アップリンクのパケットサイズを可変にしつつ、ダウンリンクのパケットサイズを固定にする方法としては、例えば、サイズ可変のUDPパケットをアクセスポイント2に対して送信する一方で、エラーを示すサイズ固定のICMPパケット(例えば、port unreachable)を受信する方法が考えられる。
通信装置1は、パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの往復遅延時間(第1RTT_ALL)から、
図6(B)に例示する、アップリンクのパケットサイズの増加量(ΔSIZE_UP)に対する往復遅延時間の増加量(ΔRTT_UP)を取得する。
【0041】
ここで、アップリンクのパケットサイズは可変であるため、
図6(C)に示すように、上りのみにかかる上り遅延時間(RTT_UP)は、アップリンクのパケットサイズの増加に伴い増加する。他方、ダウンリンクのパケットサイズは固定であるため、
図6(D)に示すように、下りのみにかかる下り遅延時間(RTT_DOWN)は、アップリンクのパケットサイズの増加に関わらず常に略一定である。
そのため、
図6(B)に示すように、往復遅延時間(第1RTT_ALL)と上り遅延時間(RTT_UP)とでは、アップリンクのパケットサイズの増加量に対する遅延時間の増加量が一致、即ち、傾きが一致することになる。
【0042】
通信装置1は、パケットサイズの増加量(ΔSIZE_UP)に対する遅延時間の増加量(ΔRTT_UP)から、アップリンクのスループットを算出する。なお、本発明者らが既に提案している特願2015-013051号の段落0056〜段落0068に示すように、パケットサイズの増加量に対する遅延時間の増加量の関係を示す傾きは、スループットの逆数であるため、通信装置1は、アップリンクのスループット(Th_UP)を以下のようにして算出する。
1/Th_UP=ΔRTT_UP/ΔSIZE_UP・・・式(1)
【0043】
[ダウンリンクのスループット測定の概要]
図6に示す方法によりアップリンクのスループットが算出できるため、無線区間全体のスループットが算出できれば、ダウンリンクのスループットも算出できる。そこで、第2実施形態の通信装置1は、先ず、無線区間全体のスループットを算出し、その後、全体のスループットとアップリンクのスループットとから、ダウンリンクのスループットを測定する。
【0044】
具体的には、
図7(A)に示すように、通信装置1は、アクセスポイント2に対してサイズを変更してパケットを送信することを繰り返す一方で、アクセスポイント2から送信したパケットと同サイズの応答パケットを受信する。なお、アップリンク及びダウンリンクの双方において同サイズのパケットを送受信する方法としては、一例として、サイズ可変のICMPの要求パケット(Echo Request)をアクセスポイント2に対して送信するとともに、当該要求パケットに対応する応答パケット(Echo Reply)を受信する方法が考えられる。
【0045】
通信装置1は、パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの往復遅延時間(第2RTT_ALL)から、
図7(B)に示すように、パケットサイズの増加量(ΔSIZE_ALL)に対する往復遅延時間の増加量(ΔRTT_ALL)を取得し、その逆数を全体のスループット(Th_ALL)として算出する。
1/Th_ALL=ΔRTT_ALL/ΔSIZE_ALL
【0046】
そして、通信装置1は、全体のスループット(Th_ALL)とアップリンクのスループット(Th_UP)とからダウンリンクのスループット(Th_DOWN)を以下のようにして算出する。
(2/Th_ALL)=1/Th_UP+1/Th_DOWN
Th_DOWN=(Th_ALL*Th_UP)/(2*Th_UP−Th_ALL)・・・式(2)
【0047】
[第2実施形態の通信装置1の構成]
以上、第2実施形態の通信装置1の概要について説明した。続いて、第2実施形態の通信装置1を実現するための具体的な構成について説明する。
図8は、第2実施形態の通信装置1の機能構成を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図8に示すように、第2実施形態の通信装置1の制御部13は、送信制御部131と、受信制御部132と、算出部133と、を含んで構成される。
【0048】
送信制御部131は、アクセスポイント2に対してサイズの異なる第1パケットを複数送信する。第1パケットは、アップリンクのスループットの算出に用いるパケットであり、例えば、アクセスポイント2からエラー通知(port unreachable等)を受けるようなUDPパケットである。
また、送信制御部131は、アクセスポイント2に対してサイズの異なる第2パケットを複数送信する。第2パケットは、全体(及びダウンリンク)のスループットの算出に用いるパケットであり、例えば、アクセスポイント2に対するpingの要求パケット(Echo Request)である。
【0049】
一例として、送信制御部131は、パケットの送信間隔を100msとし、1バイトから65000バイトまで1バイトずつサイズを増加させながら第1パケット又は第2パケットをアクセスポイント2に対して送信する。
なお、パケットの送信間隔が短すぎる場合には、単位時間あたりに送信するデータ量が増えすぎ、アクセスポイント2のバッファがオーバフローしてしまい、パケットロスが発生する確率が高くなってしまうため、送信制御部131は、パケットサイズに応じて送信間隔を変更しながら、アクセスポイント2に対してパケットを送信することとしてもよい。例えば、送信制御部131は、パケットサイズが大きい場合には送信間隔を長くすることで、パケットロスが発生する確率を抑えることができる。
【0050】
受信制御部132は、複数の第1パケットの夫々に対する応答パケットであり、第1パケットのサイズに関わらず一定のサイズの第1応答パケットを、アクセスポイント2から受信する。具体的には、受信制御部132は、第1応答パケットとして、UDPパケットに対するエラーを通知するICMPパケット(例えば、port unreachable等)を、アクセスポイント2から受信する。
また、受信制御部132は、複数の第2パケットの夫々に対して当該第2パケットと同じサイズの第2応答パケットを、アクセスポイント2から受信する。具体的には、受信制御部132は、第2応答パケットとして、pingの要求パケット(Echo Request)に対する応答パケット(Echo Reply)を、アクセスポイント2から受信する。
【0051】
なお、通信装置1は、アクセスポイント2との間のパケットの応答を、夫々のサイズについて複数回行うことが好ましい。
算出部133は、夫々のサイズについて複数回行ったパケットの応答結果(往復遅延時間)から無線区間のアップリンクのスループット及びダウンリンクのスループットを算出する。具体的には、算出部133は、取得部134と、増加量算出部135と、速度算出部136と、を含んで構成される。
【0052】
取得部134は、第1パケットを送信してから第1応答パケットを受信するまでの第1往復遅延時間(
図6(B)に示す第1RTT_ALL)を、複数の第1パケットのサイズの夫々に関連付けて取得する。
また、取得部134は、第2パケットを送信してから第2応答パケットを受信するまでの第2往復遅延時間(
図7(B)に示す第2RTT_ALL)を、複数の第2パケットのサイズの夫々に関連付けて取得する。
【0053】
増加量算出部135は、第1パケットのサイズ毎に取得した複数の第1往復遅延時間に基づいて、第1パケットのサイズの増加量(ΔSIZE_UP)に対する当該第1パケットがアクセスポイント2に到達するまでの上り遅延時間の増加量(ΔRTT_UP)を算出する。
また、増加量算出部135は、第2パケットのサイズ毎に取得した複数の第2往復遅延時間に基づいて、第2パケットのサイズの増加量(ΔSIZE_ALL)に対する第2往復遅延時間の増加量(ΔRTT_ALL)を算出する。
【0054】
具体的には、増加量算出部135は、複数の第1往復遅延時間(又は第2往復遅延時間)のうち、夫々のサイズのパケットに対応する最小の第1往復遅延時間(又は第2往復遅延時間)に対して最小二乗法等の手法を用いることで、パケットサイズの増加量に対する上り遅延時間(又は第2往復遅延時間)の増加量を算出する。
【0055】
速度算出部136は、第1パケットのサイズの増加量に対する上り遅延時間の増加量に基づいて、アクセスポイント2との間のアップリンクのスループットを算出する。具体的には、速度算出部136は、上述の式(1)に基づいて、アップリンクのスループットを算出する。
【0056】
また、速度算出部136は、第1パケットのサイズの増加量に対する上り遅延時間の増加量、及び第2パケットのサイズの増加量に対する第2往復遅延時間の増加量に基づいて、アクセスポイント2との間のダウンリンクのスループットを算出する。具体的には、速度算出部136は、上述の式(2)に基づいて、ダウンリンクのスループットを算出する。
【0057】
[第2実施形態の通信装置1の処理]
以上、第2実施形態に係る通信装置1の構成について説明した。続いて、第2実施形態の通信装置1が無線区間のアップリンク及びダウンリンクのスループットを算出する際の処理の流れについて説明する。
図9は、第2実施形態の通信装置1の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0058】
初めに、ステップS11において、通信装置1は、測定開始操作を受け付ける。この操作を受け付けると、ステップS12において、通信装置1は、アクセスポイント2に対してUDPパケットを送信する。アクセスポイント2は、UDPパケットを受信すると、ICMPパケット(port unreachable等)を通信装置1に対して返信する。通信装置1では、ICMPパケットを受信すると、UDPパケットを送信してからICMPパケットを受信するまでの第1往復遅延時間(第1RTT_ALL)を取得する。
【0059】
ステップS12の処理をUDPパケットのサイズを変えながら繰り返し行った後、ステップS13において、通信装置1は、パケットサイズ毎に取得した第1往復遅延時間の最小値から、パケットサイズの増加量に対する第1往復遅延時間の増加量を算出する。
なお、ステップS12では、アップリンクのUDPパケットのサイズは可変であるものの、ダウンリンクのICMPパケットのサイズは固定的であるため、ステップS13で算出したパケットサイズの増加量に対する第1往復遅延時間の増加量は、パケットサイズの増加量(ΔSIZE_UP)に対する上り遅延時間の増加量(ΔRTT_UP)と同じである。
【0060】
続いて、ステップS14において、通信装置1は、ステップS13で算出したパケットサイズの増加量に対する上り遅延時間の増加量から、アップリンクのスループット(1/Th_UP=ΔRTT_UP/ΔSIZE_UP)を算出する。
【0061】
続いて、ステップS15において、通信装置1は、アクセスポイント2との間でpingの応答を行う。具体的には、通信装置1は、アクセスポイント2に対してpingの要求パケット(Echo Request)を送信するとともに、アクセスポイント2からpingの応答パケット(Echo Reply)を受信する。通信装置1では、応答パケットを受信すると、要求パケットを送信してから応答パケットを受信するまでの第2往復遅延時間を取得する。
【0062】
ステップS15の処理をパケットサイズを変えながら繰り返し行った後、ステップS16において、通信装置1は、パケットサイズ毎に取得した第2往復遅延時間の最小値から、パケットサイズの増加量(ΔSIZE_ALL)に対する第2往復遅延時間(ΔRTT_ALL)の増加量を算出する。
続いて、ステップS17において、通信装置1は、ステップS16で算出したパケットサイズの増加量に対する第2往復遅延時間の増加量から、全体のスループット(1/Th_ALL=ΔRTT_ALL/ΔSIZE_ALL)を算出する。
【0063】
続いて、ステップS18において、通信装置1は、ステップS14で算出したアップリンクのスループット、及びステップS17で算出した全体のスループットから、ダウンリンクのスループット(Th_DOWN=(Th_ALL*Th_UP)/(2*Th_UP−Th_ALL))を算出し、処理を終了する。
【0064】
[第2実施形態の効果]
以上説明した第2実施形態の通信装置1によれば、アップリンクのパケットサイズを可変にする一方で、ダウンリンクのパケットサイズを固定にすることで、アクセスポイント2との間の往復遅延時間から上り遅延時間の傾向を把握することができ、結果、無線区間のアップリンクのスループットを算出することができる。また、アップリンク及びダウンリンクの双方のパケットサイズを可変にすることで、無線区間全体のスループットを算出することができ、全体のスループットとアップリンクのスループットとを比較することで、無線区間のダウンリンクのスループットも算出することができる。
しがたって、第2実施形態の通信装置1によれば、無線区間のアップリンク及びダウンリンクの双方のスループットを算出することができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0066】
例えば、上記実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態を夫々個別に説明しているが、第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせて適用することとしてもよい。具体的には、第2実施形態において変更するパケットサイズが所定サイズ(約1500バイト)を超えた場合に、第1実施形態の内容を適用し、フラグメントが発生しないように所定サイズ以下のパケットの数を調整することで、所望のサイズのパケットを送受信するといった適用方法が考えられる。