特許第6053882号(P6053882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053882
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】インペラ及び流体機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20161219BHJP
   F04D 29/24 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F04D29/30 C
   F04D29/24 C
   F04D29/24 D
   F04D29/30 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-148769(P2015-148769)
(22)【出願日】2015年7月28日
(62)【分割の表示】特願2012-68413(P2012-68413)の分割
【原出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2015-187449(P2015-187449A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮祐
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−199870(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/128299(WO,A1)
【文献】 特開2002−332991(JP,A)
【文献】 特開平11−022695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
F04D 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環形状をなすハブと、
前記ハブの外周面に沿って放射状に配置される複数のブレードと、
を備え、
回転軸線に沿って前記ブレードの前縁側から流れ込んだ流体が、前記回転軸線に交差する半径方向の外側に向かって前記ブレードの後縁側から排出されるインペラにおいて、
前記ブレードの圧力面は、前記ハブ側から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面と、
前記第1圧力面から回転方向の前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面と、
前記第2圧力面から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第3圧力面と、
を有し、
第3圧力面は、先端部が第1圧力面より回転方向の前方側に位置する、
ことを特徴とするインペラ。
【請求項2】
前記第1圧力面と前記第3圧力面は、前記ハブに対して回転方向の前方へ傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記ブレードの圧力面は、少なくとも外周側に前記第2圧力面が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記ブレードの圧力面は、内周側が回転方向の前方側に向けて湾曲する湾曲形状をなす一方、外周側が前記第1圧力面と前記第2圧力面と前記第3圧力面を有するS字形状をなすことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のインペラ。
【請求項5】
前記第2圧力面は、前記ハブから前記ブレードにおける回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のインペラ。
【請求項6】
前記第2圧力面は、回転方向の前方側に位置する前記ブレードの先端部の負圧面に対向していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のインペラ。
【請求項7】
中空形状をなすケーシングと、
円環形状をなすハブの外周面に沿って複数のブレードが放射状に配置されて前記ケーシング内に回転自在に支持される請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のインペラと、
前記インペラに対して流体が該インペラの前縁側から軸方向に沿って吸入される吸入通路と、
前記インペラで圧送された流体が該インペラの軸方向に交差する半径方向の外側に向かって前記ブレードの後縁側から排出される排出通路と、
を備えることを特徴とする流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心式や斜流式などの圧縮機やポンプなどにて、流体を昇圧可能なインペラ及びこのインペラを有する流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、流体機械として、流体を圧送する遠心圧縮機は、ケーシングと、このケーシングの内部で回転可能に配置されたインペラ(羽根車)と、このインペラを回転可能な駆動装置とから構成されている。従って、駆動装置によりインペラを回転させることで、このインペラの軸線方向前側からケーシングの内部に流体を取り込み、この流体をインペラの径方向外側に圧送してケーシングの外部に送り出すことができる。
【0003】
遠心圧縮機のインペラとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された圧縮機のインペラは、ブレードの回転方向後側に隣接配置されたブレードとの間にブレードの翼根に沿って切欠きを設けることで、ハブの表面に沿って切欠きに流れてきた二次流れが切欠きを通ってハブの背面側に吸い出され、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−133267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した圧縮機のインペラにあっては、ブレードの翼根に切欠きを設けることで、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を低減することができる。しかし、近年、圧縮機においては、コンプレッサ効率の更なる高効率化が求められているのが現状である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を低減させることで高効率化を可能とするインペラ及び流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のインペラは、円環形状をなすハブと、前記ハブの外周面に沿って放射状に配置される複数のブレードと、を備え、回転軸線に沿って前記ブレードの前縁側から流れ込んだ流体が、前記回転軸線に交差する半径方向の外側に向かって前記ブレードの後縁側から排出されるインペラにおいて、前記ブレードの圧力面は、前記ハブ側から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面と、前記第1圧力面から回転方向の前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面と、前記第2圧力面から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第3圧力面と、を有し、第3圧力面は、先端部が第1圧力面より回転方向の前方側に位置する、ことを特徴とするものである。
【0008】
従って、インペラが回転すると、第1圧力面によりハブの表面に沿う流れが生成され、前方側のブレードの負圧面側に低エネルギ流体が停滞しようとするが、第2圧力面からこの前方側のブレードの負圧面側への流れが生成されることから、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体が低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。また、第3圧力面により前方側のブレードの負圧面側への流れが生成されるため、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を低減することができる。
【0011】
本発明のインペラでは、前記第1圧力面と前記第3圧力面は、前記ハブに対して回転方向の前方へ傾斜していることを特徴としている。
【0012】
従って、第1圧力面及び第3圧力面により生成される流体により、前方側のブレードの負圧面側におけるハブ側に滞留する低エネルギ流体を低減することができる。
【0013】
本発明のインペラでは、前記ブレードの圧力面は、少なくとも外周側に前記第2圧力面が設けられることを特徴としている。
【0014】
従って、前方側のブレードの負圧面側に停滞する低エネルギ流体は、ブレードの外周側に発生しやすいことから、ブレードの外周側に第2圧力面を設けることで、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を効率良く低減することができる。
【0015】
本発明のインペラでは、前記ブレードの圧力面は、内周側が回転方向の前方側に向けて湾曲する湾曲形状をなす一方、外周側が前記第1圧力面と前記第2圧力面と前記第3圧力面を有するS字形状をなすことを特徴としている。
【0016】
従って、内周側が湾曲形状をなして外周側がS字形状をなすことで、流体を効率的に圧送することができる。
【0017】
本発明のインペラでは、前記第2圧力面は、前記ハブから前記ブレードにおける回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられることを特徴としている。
【0018】
従って、ブレードのハブ側に第2圧力面を設けることで、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体を効率良く低減することができる。
【0019】
本発明のインペラでは、前記第2圧力面は、回転方向の前方側に位置する前記ブレードの先端部の負圧面に対向していることを特徴としている。
【0020】
従って、第2圧力面により発生した流体を対向するブレードの先端部の負圧面に流すことで、ここに滞留する低エネルギ流体を効率良く低減することができる。
【0021】
また、本発明の流体機械は、中空形状をなすケーシングと、円環形状をなすハブの外周面に沿って複数のブレードが放射状に配置されて前記ケーシング内に回転自在に支持される前記インペラと、前記インペラに対して流体が該インペラの前縁側から軸方向に沿って吸入される吸入通路と、前記インペラで圧送された流体が該インペラの軸方向に交差する半径方向の外側に向かって前記ブレードの後縁側から排出される排出通路と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
従って、インペラが回転すると、吸入通路から流体がインペラの前縁から軸方向に沿って吸入され、インペラで圧縮された流体が排出通路からインペラの軸方向に交差する半径方向の外側に向かってブレードの後縁側から排出される。このとき、インペラは、第1圧力面によりハブの表面に沿う流れが生成され、前方側のブレードの負圧面側に低エネルギ流体が停滞しようとするが、第2圧力面によりこの前方側のブレードの負圧面側への流れが生成されることから、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体が低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のインペラ及び流体機械によれば、ブレードの圧力面に、ハブ側から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面と、第1圧力面から回転方向の前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面と、第2圧力面から回転方向の前方に対して90度以下の角度で延出する第3圧力面とを設けるので、第2圧力面により前方側のブレードの負圧面側への流れが生成されることから、ブレードの負圧面側に滞留する低エネルギ流体が低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施例に係る遠心圧縮機のインペラの断面図である。
図2図2は、本実施例のインペラの正面図である。
図3図3は、本実施例のインペラの斜視図である。
図4図4は、本実施例の遠心圧縮機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るインペラ及び流体機械の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る遠心圧縮機のインペラの断面図、図2は、本実施例のインペラの正面図、図3は、本実施例のインペラの斜視図、図4は、本実施例の遠心圧縮機の概略図である。
【0027】
本実施例において、図4に示すように、実施例1の遠心圧縮機10は、ケーシング11と、インペラ12と、吸入通路13と、排出通路14とを有している。ケーシング11は中空形状をなし、中央部に回転軸15が図示しない軸受により回転自在に支持され、この回転軸15の端部に図示しない駆動装置が連結されている。回転軸15は、外周部にインペラ(羽根車)12が固定されている。このインペラ12は、円環部材としてのハブ21と、このハブ21の外周面に放射状をなして配置される複数のブレード(羽根)22とにより構成されている。この場合、ハブ21は、回転軸15に固定され、外周面が回転軸方向から回転軸方向に交差(直交)する方向へと湾曲した形状をなし、各ブレード22がこの軸方向に湾曲した外周面に周方向に所定間隔をもって固定され、ケーシング11のシュラウド23との間に所定隙間が確保されている。
【0028】
ケーシング11は、インペラ12に対して流体が、このインペラ12の軸方向に沿って吸入される吸入通路13が形成されており、流体をこの吸入通路13を介してインペラ12の前面部に取込可能となっている。この吸込通路13は、シュラウド23により区画されている。また、ケーシング11は、インペラ12の外周側に、このインペラ12で圧送された流体を、このインペラ12の軸方向に交差する径方向に沿って排出する排出通路(ディフューザ)14が形成されており、インペラ12で圧縮した流体をこの排出通路14に吐出可能となっている。この排出通路14は、ケーシング11のシュラウド23,24により構成されている。
【0029】
従って、駆動装置により回転軸15が回転すると、インペラ12が回転し、流体が吸入通路13を通してケーシング11内に吸い込まれる。すると、この流体は、回転するインペラ12を流過する過程で昇圧された後、排出通路14に吐出され、ここで圧縮流体の動圧が静圧に変換され、吐出口から外部に吐出される。
【0030】
このように構成された本実施例のインペラ12は、図1から図3に示すように、ハブ21の外周面に放射状をなして複数のブレード22が固定されて構成されている。そして、各ブレード22は、同形状をなし、矢印Aで表す回転方向に対して、前方側が圧力面P1であり、後方側が負圧面P2となっている。
【0031】
ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ1でシュラウド23側に向けて延出する第1圧力面31と、第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度θ2でシュラウド23側に向けて延出する第2圧力面32と、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ3でシュラウド23側に向けて延出する第3圧力面33とが形成されている。
【0032】
このブレード22の圧力面P1は、内周側の前縁端22a側にて、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dにかけて、回転方向Aの前方側に向けて湾曲することで、圧力面P1側が凹むような湾曲断面形状となっている。また、ブレード22の圧力面P1は、外周側の後縁端22bにて、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dにかけて、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33が形成されることで、S字断面形状となっている。
【0033】
この場合、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21の軸方向に交差する長手方向に対して、前縁端22aの湾曲断面形状から後縁端22bのS字断面形状に徐々に移行する形状となっている。即ち、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21の軸方向に交差する長手方向に対して、前縁端22aから後縁端22bに向けて前縁端22aから略1/3の位置でS字断面形状への移行が開始していく。つまり、ブレード22の圧力面P1は、前縁端22aから略1/3の位置で第2圧力面32が形成され始め、徐々に角度θ2が大きくなっていき、後縁端22bで所定の角度θ2となる。このようにブレード22の圧力面P1は、少なくとも後縁端22bに第2圧力面32が設けられることが望ましい。
【0034】
また、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dに向けて、第1圧力面31が基端部22cからブレード22における回転軸心方向の長さの1/4以下の位置に設けられている。また、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dに向けて、第2圧力面32が基端部22cからブレード22における回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられている。
【0035】
ここで、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33について、図1に基づいて具体的に説明する。第1圧力面31は、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ1でシュラウド23側に向けて延出しているが、この角度θ1は、90度よりも小さい角度であることが好ましい。第2圧力面32は、第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度θ2でシュラウド23側に向けて延出しているが、この第2圧力面32は、回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22d側の負圧面P2に対向していることが好ましい。第3圧力面33は、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ3でシュラウド23側に向けて延出しているが、この角度θ3は、90度よりも小さい角度であることが好ましい。つまり、第1圧力面31と第3圧力面33は、ハブ21側に傾斜していることが好ましく、第2圧力面32は、シュラウド23側に傾斜していることが好ましい。
【0036】
また、ブレード22の圧力面P1は、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33から構成されるが、この各圧力面31,32,33は、基端部22cから先端部22dに向けて平面形状または凸状の湾曲面であることが望ましい。そのため、各圧力面31,32,33が凸状の湾曲面であるとき、各圧力面31,32,33の角度θ1,θ2,θ3は、接線の角度である。また、第2圧力面32が回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22d側の負圧面P2に対向するとは、第2圧力面32の法線がブレード22の先端部22d側の負圧面P2に向くということである。
【0037】
なお、各ブレード22は、どの位置であってもほぼ同様の厚さであり、一方側が3つの圧力面31,32,33を有する圧力面P1であることから、後方側の負圧面P2も圧力面P1とほぼ同様の形状となっている。
【0038】
従って、インペラ12が回転し、流体が前縁端22a側から流入すると、この流体は、回転するインペラ12を流過する過程で昇圧され、後縁端22b側から排出される。このとき、インペラ12は、各ブレード22の圧力面P1における第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとする。しかし、第1圧力面31により生成された流れが、前方側のブレード22の負圧面P2のハブ21側に作用することで、ブレード22の負圧面P2のハブ21側に停滞する低エネルギ流体Bが低減される。また、第2圧力面32により生成された流れが、前方側のブレード22の負圧面P2のシュラウド23側に作用することで、ブレード22の負圧面P2のシュラウド23側に停滞する低エネルギ流体Bが低減される。
【0039】
このように本実施例のインペラ12にあっては、円環形状をなすハブ21と、このハブ21の外周面に沿って放射状に配置される複数のブレード22とを備え、ブレード22の圧力面P1として、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面31と、この第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面32とを設けている。
【0040】
従って、インペラ12が回転すると、第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとするが、第2圧力面32によりこの前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されることから、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bが低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【0041】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1として、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第3圧力面33を設けている。従って、第3圧力面33により前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されるため、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを低減することができる。
【0042】
本実施例のインペラ12では、第1圧力面31と第3圧力面32は、ハブ21に対して回転方向Aの前方へ傾斜している。従って、第1圧力面31及び第3圧力面33により生成される流体により、前方側のブレード22の負圧面P2側におけるハブ21側に滞留する低エネルギ流体Bを低減することができる。
【0043】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1は、少なくとも外周側に第2圧力面32を設けている。従って、前方側のブレード22の負圧面P2側に停滞する低エネルギ流体Bは、ブレード22の後縁端22b側に発生しやすいことから、ブレード22の後縁端22b側に第2圧力面32を設けることで、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0044】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1の前縁端22a側(内周側)を回転方向Aの前方側に向けて湾曲する湾曲形状とする一方、後縁端22b側(外周側)を第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33によりS字形状としている。従って、前縁端22a側が湾曲形状をなして後縁端22b側がS字形状をなすことで、流体を効率的に圧送することができる。
【0045】
本実施例のインペラ12では、第2圧力面32がハブ21からブレード22における回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられている。従って、ブレード22のハブ21側に第2圧力面32が位置することで、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0046】
本実施例のインペラ12では、第2圧力面32が回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22dの負圧面P2に対向している。従って、第2圧力面32により発生した流体を対向するブレード22の先端部22dの負圧面P2に流すことで、ここに滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0047】
また、本実施例の流体機械にあっては、中空形状をなすケーシング11と、円環形状をなすハブ21の外周面に沿って複数のブレード22が放射状に配置されてケーシング11内に回転自在に支持されるインペラ12と、インペラ12に対して流体がインペラ12の軸方向に沿って吸入される吸入通路13と、インペラ12で圧送された流体がインペラ12の軸方向に交差する方向に沿って排出される排出通路14とを備え、ブレード22の圧力面P1として、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面31と、この第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面32を設けている。
【0048】
従って、インペラ12が回転すると、吸入通路13から流体がインペラ12の軸方向に沿って吸入され、インペラ12で圧縮された流体が排出通路14からインペラ12の軸方向に交差する方向に沿って排出される。このとき、インペラ12は、第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとするが、第2圧力面32によりこの前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されることから、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bが低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【0049】
なお、本発明のインペラ及び流体機械は、ブレードの圧力面に回転方向の前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面を設けるものであり、第1圧力面や第3圧力面の形状が限定されるものではない。
【0050】
また、上述の実施例では、インペラ12を、ハブ21の外周面に複数のブレード22を周方向に所定間隔をもって固定し、ケーシング11のシュラウド23との間に所定隙間を設けた、所謂、オープンインペラとしたが、この構成に限定されるものではなく、ハブの外周面に複数のブレードを周方向に所定間隔をもって固定し、各ブレードの外側にリング形状をなすシュラウドを固定した、所謂、クローズドインペラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 遠心圧縮機(流体機械)
11 ケーシング
12 インペラ
13 吸入通路
14 排出通路
15 回転軸
21 ハブ
22 ブレード
23,24 シュラウド
31 第1圧力面
32 第2圧力面
33 第3圧力面
A 回転方向
B 低エネルギ流体
P1 圧力面
P2 負圧面
図1
図2
図3
図4