【実施例】
【0026】
図1は、本発明の一実施例に係る遠心圧縮機のインペラの断面図、
図2は、本実施例のインペラの正面図、
図3は、本実施例のインペラの斜視図、
図4は、本実施例の遠心圧縮機の概略図である。
【0027】
本実施例において、
図4に示すように、実施例1の遠心圧縮機10は、ケーシング11と、インペラ12と、吸入通路13と、排出通路14とを有している。ケーシング11は中空形状をなし、中央部に回転軸15が図示しない軸受により回転自在に支持され、この回転軸15の端部に図示しない駆動装置が連結されている。回転軸15は、外周部にインペラ(羽根車)12が固定されている。このインペラ12は、円環部材としてのハブ21と、このハブ21の外周面に放射状をなして配置される複数のブレード(羽根)22とにより構成されている。この場合、ハブ21は、回転軸15に固定され、外周面が回転軸方向から回転軸方向に交差(直交)する方向へと湾曲した形状をなし、各ブレード22がこの軸方向に湾曲した外周面に周方向に所定間隔をもって固定され、ケーシング11のシュラウド23との間に所定隙間が確保されている。
【0028】
ケーシング11は、インペラ12に対して流体が、このインペラ12の軸方向に沿って吸入される吸入通路13が形成されており、流体をこの吸入通路13を介してインペラ12の前面部に取込可能となっている。この吸込通路13は、シュラウド23により区画されている。また、ケーシング11は、インペラ12の外周側に、このインペラ12で圧送された流体を、このインペラ12の軸方向に交差する径方向に沿って排出する排出通路(ディフューザ)14が形成されており、インペラ12で圧縮した流体をこの排出通路14に吐出可能となっている。この排出通路14は、ケーシング11のシュラウド23,24により構成されている。
【0029】
従って、駆動装置により回転軸15が回転すると、インペラ12が回転し、流体が吸入通路13を通してケーシング11内に吸い込まれる。すると、この流体は、回転するインペラ12を流過する過程で昇圧された後、排出通路14に吐出され、ここで圧縮流体の動圧が静圧に変換され、吐出口から外部に吐出される。
【0030】
このように構成された本実施例のインペラ12は、
図1から
図3に示すように、ハブ21の外周面に放射状をなして複数のブレード22が固定されて構成されている。そして、各ブレード22は、同形状をなし、矢印Aで表す回転方向に対して、前方側が圧力面P1であり、後方側が負圧面P2となっている。
【0031】
ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ1でシュラウド23側に向けて延出する第1圧力面31と、第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度θ2でシュラウド23側に向けて延出する第2圧力面32と、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ3でシュラウド23側に向けて延出する第3圧力面33とが形成されている。
【0032】
このブレード22の圧力面P1は、内周側の前縁端22a側にて、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dにかけて、回転方向Aの前方側に向けて湾曲することで、圧力面P1側が凹むような湾曲断面形状となっている。また、ブレード22の圧力面P1は、外周側の後縁端22bにて、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dにかけて、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33が形成されることで、S字断面形状となっている。
【0033】
この場合、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21の軸方向に交差する長手方向に対して、前縁端22aの湾曲断面形状から後縁端22bのS字断面形状に徐々に移行する形状となっている。即ち、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21の軸方向に交差する長手方向に対して、前縁端22aから後縁端22bに向けて前縁端22aから略1/3の位置でS字断面形状への移行が開始していく。つまり、ブレード22の圧力面P1は、前縁端22aから略1/3の位置で第2圧力面32が形成され始め、徐々に角度θ2が大きくなっていき、後縁端22bで所定の角度θ2となる。このようにブレード22の圧力面P1は、少なくとも後縁端22bに第2圧力面32が設けられることが望ましい。
【0034】
また、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dに向けて、第1圧力面31が基端部22cからブレード22における回転軸心方向の長さの1/4以下の位置に設けられている。また、ブレード22の圧力面P1は、ハブ21側の基端部22cからシュラウド23側の先端部22dに向けて、第2圧力面32が基端部22cからブレード22における回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられている。
【0035】
ここで、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33について、
図1に基づいて具体的に説明する。第1圧力面31は、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ1でシュラウド23側に向けて延出しているが、この角度θ1は、90度よりも小さい角度であることが好ましい。第2圧力面32は、第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度θ2でシュラウド23側に向けて延出しているが、この第2圧力面32は、回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22d側の負圧面P2に対向していることが好ましい。第3圧力面33は、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度θ3でシュラウド23側に向けて延出しているが、この角度θ3は、90度よりも小さい角度であることが好ましい。つまり、第1圧力面31と第3圧力面33は、ハブ21側に傾斜していることが好ましく、第2圧力面32は、シュラウド23側に傾斜していることが好ましい。
【0036】
また、ブレード22の圧力面P1は、第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33から構成されるが、この各圧力面31,32,33は、基端部22cから先端部22dに向けて平面形状または凸状の湾曲面であることが望ましい。そのため、各圧力面31,32,33が凸状の湾曲面であるとき、各圧力面31,32,33の角度θ1,θ2,θ3は、接線の角度である。また、第2圧力面32が回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22d側の負圧面P2に対向するとは、第2圧力面32の法線がブレード22の先端部22d側の負圧面P2に向くということである。
【0037】
なお、各ブレード22は、どの位置であってもほぼ同様の厚さであり、一方側が3つの圧力面31,32,33を有する圧力面P1であることから、後方側の負圧面P2も圧力面P1とほぼ同様の形状となっている。
【0038】
従って、インペラ12が回転し、流体が前縁端22a側から流入すると、この流体は、回転するインペラ12を流過する過程で昇圧され、後縁端22b側から排出される。このとき、インペラ12は、各ブレード22の圧力面P1における第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとする。しかし、第1圧力面31により生成された流れが、前方側のブレード22の負圧面P2のハブ21側に作用することで、ブレード22の負圧面P2のハブ21側に停滞する低エネルギ流体Bが低減される。また、第2圧力面32により生成された流れが、前方側のブレード22の負圧面P2のシュラウド23側に作用することで、ブレード22の負圧面P2のシュラウド23側に停滞する低エネルギ流体Bが低減される。
【0039】
このように本実施例のインペラ12にあっては、円環形状をなすハブ21と、このハブ21の外周面に沿って放射状に配置される複数のブレード22とを備え、ブレード22の圧力面P1として、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面31と、この第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面32とを設けている。
【0040】
従って、インペラ12が回転すると、第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとするが、第2圧力面32によりこの前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されることから、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bが低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【0041】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1として、第2圧力面32から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第3圧力面33を設けている。従って、第3圧力面33により前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されるため、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを低減することができる。
【0042】
本実施例のインペラ12では、第1圧力面31と第3圧力面32は、ハブ21に対して回転方向Aの前方へ傾斜している。従って、第1圧力面31及び第3圧力面33により生成される流体により、前方側のブレード22の負圧面P2側におけるハブ21側に滞留する低エネルギ流体Bを低減することができる。
【0043】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1は、少なくとも外周側に第2圧力面32を設けている。従って、前方側のブレード22の負圧面P2側に停滞する低エネルギ流体Bは、ブレード22の後縁端22b側に発生しやすいことから、ブレード22の後縁端22b側に第2圧力面32を設けることで、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0044】
本実施例のインペラ12では、ブレード22の圧力面P1の前縁端22a側(内周側)を回転方向Aの前方側に向けて湾曲する湾曲形状とする一方、後縁端22b側(外周側)を第1圧力面31と第2圧力面32と第3圧力面33によりS字形状としている。従って、前縁端22a側が湾曲形状をなして後縁端22b側がS字形状をなすことで、流体を効率的に圧送することができる。
【0045】
本実施例のインペラ12では、第2圧力面32がハブ21からブレード22における回転軸心方向の長さの1/2以下の位置に設けられている。従って、ブレード22のハブ21側に第2圧力面32が位置することで、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0046】
本実施例のインペラ12では、第2圧力面32が回転方向Aの前方側に位置するブレード22の先端部22dの負圧面P2に対向している。従って、第2圧力面32により発生した流体を対向するブレード22の先端部22dの負圧面P2に流すことで、ここに滞留する低エネルギ流体Bを効率良く低減することができる。
【0047】
また、本実施例の流体機械にあっては、中空形状をなすケーシング11と、円環形状をなすハブ21の外周面に沿って複数のブレード22が放射状に配置されてケーシング11内に回転自在に支持されるインペラ12と、インペラ12に対して流体がインペラ12の軸方向に沿って吸入される吸入通路13と、インペラ12で圧送された流体がインペラ12の軸方向に交差する方向に沿って排出される排出通路14とを備え、ブレード22の圧力面P1として、ハブ21側から回転方向Aの前方に対して90度以下の角度で延出する第1圧力面31と、この第1圧力面31から回転方向Aの前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面32を設けている。
【0048】
従って、インペラ12が回転すると、吸入通路13から流体がインペラ12の軸方向に沿って吸入され、インペラ12で圧縮された流体が排出通路14からインペラ12の軸方向に交差する方向に沿って排出される。このとき、インペラ12は、第1圧力面31によりハブ21の表面に沿う流れが生成され、前方側のブレード22の負圧面P2側に低エネルギ流体Bが停滞しようとするが、第2圧力面32によりこの前方側のブレード22の負圧面P2側への流れが生成されることから、ブレード22の負圧面P2側に滞留する低エネルギ流体Bが低減されることとなり、インペラ効率を向上することができる。
【0049】
なお、本発明のインペラ及び流体機械は、ブレードの圧力面に回転方向の前方に対して90度より大きい角度で延出する第2圧力面を設けるものであり、第1圧力面や第3圧力面の形状が限定されるものではない。
【0050】
また、上述の実施例では、インペラ12を、ハブ21の外周面に複数のブレード22を周方向に所定間隔をもって固定し、ケーシング11のシュラウド23との間に所定隙間を設けた、所謂、オープンインペラとしたが、この構成に限定されるものではなく、ハブの外周面に複数のブレードを周方向に所定間隔をもって固定し、各ブレードの外側にリング形状をなすシュラウドを固定した、所謂、クローズドインペラにも適用することができる。