(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る制御装置一体型回転電機について、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズや縮尺はそれぞれ独立している。例えば構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズや縮尺が異なっている場合もある。また、制御装置一体型回転電機の構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
【0011】
実施の形態1.
以下、図に従って、本発明の実施の形態1による制御装置一体型回転電機を説明する。実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、エンジンの駆動補助および電力の発電に用いられる交流発電電動機に好適に適用しうる。
図1は、車両に搭載される、制御装置一体型回転電機の構成を説明するための断面図を示している。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3などから構成されている。制御装置一体型回転電機1では、プーリー13に近い部分がフロント側に該当する。回転電機本体2から制御装置3に向かう方向はリア側と呼ばれている。回転電機本体2は、回転子巻線6と固定子巻線11を有している。
【0012】
回転電機本体2の回転子軸4には回転子5が固定されている。回転子5には回転子巻線6が巻装されている。フロントブラケット7には軸受9が取り付けられている。リアブラケット8には軸受10が取り付けられている。回転子軸4は、軸受9と軸受10によって回転可能に支持されている。固定子巻線11は、固定子12に巻装されている。固定子12は、フロントブラケット7とリアブラケット8によって挟み込まれて保持されている。プーリー13は、回転子軸4のフロントブラケット7から突出した先端部に取り付けられている。回転子軸4の回転は、プーリー13から伝動ベルトを介してエンジンに伝達される。
【0013】
回転子5の回転状態は、回転位置検出センサ14によって検出する。回転位置検出センサ14は、回転子軸4のリアブラケット8から突出した後端部に設置されている。回転電機本体2には、一対のスリップリング15と、一対のブラシ17とが取り付けられている。スリップリング15は、回転子巻線6に電流を供給する。ブラシ17は、ブラシホルダ16によって保持されていて、スリップリング15に摺接する。制御装置3は、固定子巻線11に電気的に接続されたパワー回路部18と、回転子巻線6に電気的に接続された界磁回路部19と、パワー回路部18と界磁回路部19を制御する制御回路部20とを備えている。
【0014】
パワー回路部18は、パワーモジュール23から構成されている。界磁回路部19は、界磁モジュール24から構成されている。制御回路部20は制御基板25から構成されている。ヒートシンク21は、安価で熱伝導性が良好なアルミニウム合金などの金属で形成されており、リアブラケット8に固定保持されている。放熱フィン22は、ヒートシンク21のリアブラケット側(フロント側)の面に冷却能力を高めるために形成されている。パワーモジュール23は、ヒートシンク21の放熱フィン22が形成された面とは逆の面に搭載されている。パワーモジュール23は、電源配線23aと、制御信号配線23bと、固定子巻線配線23cと、グランド配線23d(
図2参照)を備えている。
【0015】
ヒートシンク21のパワーモジュール23が搭載さている面と同じ面に界磁モジュール24が1個搭載されている。界磁モジュール24は、電源配線24aと、制御信号配線24bと、ブラシプラス配線24c1(
図2参照)と、ブラシマイナス配線24c2(
図2参照)と、グランド配線24d(
図2参照)とを備えている。パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20は、ケース26に収納されている。ケース26は、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、PBT(Poly Butylene Terephthalate)等の熱可塑性樹脂で形成され、天井部と底部の一部が開口した形状となっている。制御装置カバー28は、制御装置3のリアブラケット8とは反対の面に設置されている。ケース26の内部にはエポキシ樹脂が注入されている。このエポキシ樹脂からなる封止樹脂体27は、パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20を封止している。
【0016】
図2は、制御装置一体型回転電機の概略電気回路図を示す図である。外部のバッテリー50は、電力変換回路60に接続されている。電力変換回路60は、パワーモジュール23(パワー回路部18)、界磁モジュール24(界磁回路部19)、制御基板25(制御回路部20)、平滑コンデンサ29などから構成されている。パワーモジュール23は、スイッチング素子としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を2個内蔵している。6個のパワーモジュール23によって二組の3相インバータ回路が形成されている。制御基板25には、基材として電気的特性と機械的特性のよいガラスエポキシ樹脂が用いられる。平滑コンデンサ29は、パワー回路部18を構成するスイッチング素子(パワーモジュール23)が動作する時に生じるリップル電流を吸収する。
【0017】
界磁モジュール24は、モールド成形で形成されている。平滑コンデンサ29は、電源配線(電源配線23a,電源配線24a,電源配線26a,電源配線36a)とグランド配線(グランド配線23d,グランド配線24d,グランド配線26c,グランド配線36c)の間に設置される。制御基板25には、パワー回路部18と界磁回路部19を制御するための実装部品と、外部機器との間で信号の送受信を行うための外部接続コネクタが実装されている。平滑コンデンサ29には、表面実装タイプの平滑コンデンサと挿入実装タイプの平滑コンデンサが適用される。電力変換回路60は、固定子巻線11と外部の直流電力(バッテリー50)との間の電力変換を行う。
【0018】
図3は、制御装置3を、制御装置カバー28が設置される方向(リア側)から見た上面図である。ケース26の内部に形成されている封止樹脂体27は、パワー回路部18(パワーモジュール23)、界磁回路部19(界磁モジュール24)および制御回路部20(制御基板25)を封止している。電源配線26aとグランド配線26cはともにケース26の底面にインサートモールド成形されている。グランド配線26cは、ケース26をヒートシンク21に設置した後で、ヒートシンク21にねじで締結して接続される。制御装置3の領域Aには、パワー回路部18を構成するスイッチング素子が動作する時に生じるリップル電流を吸収する平滑コンデンサ29が配置される。平滑コンデンサ29には、電解コンデンサや導電性高分子コンデンサが適用される。
【0019】
図4は、制御装置一体型回転電機の制御装置3を示した図であり、封止樹脂体27と制御基板25が取り除かれている。同図は、制御装置を制御装置カバー28が設置される方向(リア側)から見た上面図であり、制御装置のパワー回路部と界磁回路部が示されている。界磁モジュール24は、外部のバッテリー50に電気的に接続するための電源配線24aと、プラス側のブラシ17に通電するためのブラシプラス配線24c1と、マイナス側のブラシ17に通電するためのブラシマイナス配線24c2と、制御回路部の制御基板25に接続するための制御信号配線24bと、ヒートシンク21と同電位となるグランド配線24dを備えている。ケース26は、ネジと接着剤によってヒートシンク21のリア側に固定されている。
【0020】
制御装置3にはモールド成形されたパワーモジュール23が6個搭載されている。各々のパワーモジュール23は、外部のバッテリー50に電気的に接続するための電源配線23aと、固定子巻線11に電気的に接続するための固定子巻線配線23cと、制御回路部の制御基板25に接続するための制御信号配線23bと、ヒートシンク21と同電位となるグランド配線23dを備えている。平滑コンデンサ29は、領域Aに配置されている。銅の配線からなる、電源配線26a、固定子巻線配線26bおよびグランド配線26cは、ケース26の底面にインサートモールド成形されている。ケース26の領域Aには開口部30が形成されている。
【0021】
以上のように構成されている本発明の実施の形態による制御装置一体型回転電機1は、エンジンに対する駆動補助としての電動機の機能と、発電のための発電機の機能とを備えている。制御装置一体型回転電機1が、エンジンに対する駆動補助として機能する際には、外部のバッテリー50からパワー回路部18に供給された直流電力が、パワー回路部18のスイッチング素子(パワーモジュール23)のON/OF制御によって3相交流電流に変換されて固定子巻線11に供給される。
【0022】
外部のバッテリー50から供給される直流電力は、界磁回路部19で調整されて回転子巻線6に供給される。回転子巻線6の周囲には、回転磁界が生じるので、回転子軸4が回転する。回転子軸4の回転は、プーリー13から伝動ベルト(図示せず)を介してエンジン(図示せず)に伝達される。制御回路部20(制御基板25)は、外部機器(図示せず)および回転位置検出センサ14からの情報に基づいて、パワー回路部18および界磁回路部19を制御する。
【0023】
制御装置一体型回転電機1が、発電機として機能する際には、エンジンの回転力が伝動ベルトおよびプーリー13を介して回転子軸4に伝達される。これにより、回転子5が回転して固定子巻線11に3相交流電力が励起される。制御回路部20はパワー回路部18のスイッチング素子(パワーモジュール23)のON/OFを制御し、固定子巻線11に励起された3相交流電力を直流電力に変換する。変換された直流電力は外部のバッテリー50に供給され、外部のバッテリー50が充電される。
【0024】
次に本発明の実施の形態1に係る平滑コンデンサ29の実装構造を説明する。
図5は、
図3および
図4に示された領域Aを、ケース26をヒートシンク21の方向(フロント側)から見て拡大して示している。同図は、表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aが、ケース26に一体成形された金属配線に接続された状態を示している。ケース26の底面には、ケースと一体成形されている銅の配線からなる電源配線26a(陽極金属配線)とグランド配線26c(陰極金属配線)が形成されている。
図5の電源配線26aと
図2に示した電源配線26aは、同電位となっている。グランド配線26cは、ケース26をヒートシンク21に設置した後で、ヒートシンク21にねじで締結して接続される。
【0025】
平滑コンデンサ29は、2本のリード29aを有している。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aは、パワーモジュール23に内蔵されたスイッチング素子が動作する際の、リップル電流を吸収するために接続されており、本実施の形態では4個のコンデンサが並列に搭載されている。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aのリード29aは、はんだで電源配線26aおよびグランド配線26cに接合されている。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aには、アルミ電解コンデンサや導電性高分子コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ等を用いることができる。
【0026】
図6は、
図5に示した切断線6−6における断面図であり、
図5の下側から見た方向の断面を示している。封止樹脂体27は、ケース26に収納されている制御基板25とパワーモジュール23と界磁モジュール24を封止している。ヒートシンク21には、開口部21оと収納部21xとが形成されている。ヒートシンク21の収納部21xは、フロント側に向かって膨らんでいて、ケース26のパワーモジュール23が搭載される面の反対方向に延在している。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aは、ヒートシンク21の収納部21xと、ケース26の底面で形成された空間に収納されている。ケース26の内部に封止樹脂を注入しても、ヒートシンク21の開口部21оがケース26の底面で塞がれているため、平滑コンデンサ29が収納されている空間へは封止樹脂が浸入しない。
【0027】
このように、パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20を樹脂で封止しても、平滑コンデンサ29の周囲は封止されないため、制御装置3の湿度や振動に対する信頼性を改善することができる。この時、制御装置3の平滑コンデンサ29に収納部が密閉されていることで結露等が発生する場合は、シリカゲル等の乾燥剤を収納部21xの内部に設置しておいてもよい。また、平滑コンデンサ29を、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフェン樹脂、アクリル樹脂、電気絶縁ワニス等によって防湿コーティングしておいてもよい。
【0028】
図7は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図である。同図は、
図5と同様に、制御装置3の領域Aを、ケース26をヒートシンク21の方向(フロント側)から見て拡大して示している。ケース26の底面に、ヒートシンク21の開口部21оの周囲を囲うように封止剤31による堰堤31xを設置している。封止剤31には、シリコーン系、エポキシ系、アクリル系、シアノアクリレート系等の接着剤やオーリングを用いることができる。
【0029】
図8は、
図6と同じく、
図7の下側から見た方向の断面を示している。ケース26は、樹脂製の封止剤31でヒートシンク21に接着される。ケース26には、平滑コンデンサ29の周囲を囲む封止剤の堰堤31xが形成されている。ヒートシンク21の開口部21оの周囲を囲う堰堤31xにも、ケース26とヒートシンク21とを接着する封止剤31を用いれば、同じ設備で同時に塗布ができる。さらに、部材管理の手間も軽減できるため、生産性が向上する。ケース26の底面に、ヒートシンク21の開口部21оの周囲を囲うように堰堤31xを形成することで、平滑コンデンサ29を収納した空間への封止樹脂体27の浸入を、より確実に防止することができる。
【0030】
図9は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図6と同様の断面図である。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aが収納部21xに収納されている。本実施の形態ではヒートシンク21の収納部21xに貫通孔32を設けている。収納部21xの底面21x1は傾斜している。接着剤には、大別して室温放置で硬化するタイプと、加熱して硬化させるタイプがある。室温硬化タイプは硬化に時間を要するため、組立ての途中で用いると、次の工程に投入する時間が遅れて生産性が低下する。
【0031】
一方、熱硬化タイプは短時間で硬化可能である。熱硬化タイプの接着剤を使うと、加熱時に平滑コンデンサ29が収容されている収納部21xの空気が膨張して外部に排出される。空気は未硬化の堰堤31xを排除して封止剤に貫通孔が形成され、封止樹脂体27が浸入する可能性が生じる。収納部21xの底面21x1に貫通孔32を設けておけば、加熱時に封止剤31に貫通孔が形成されることを防止でき、生産性の良好な熱硬化タイプの接着剤を封止剤31に用いることが可能となる。
【0032】
収納部21xに貫通孔32を設けることで、ヒートシンク21の収納部21xへの水の浸入が懸念される。この場合、貫通孔32は、ヒートシンク21の収納部21xにおいて、制御装置一体型回転電機を車両に設置した状態で底面となる箇所に設けておく。さらに、貫通孔32が最も低い位置となるように、貫通孔32を設けた面に傾斜を設けておけば、平滑コンデンサ29の収納部に浸入した水が排出されやすい。また、平滑コンデンサ29を、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフェン樹脂、アクリル樹脂、電気絶縁ワニス等で防湿コーティングしておいてもよい。
【0033】
図10は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図6と同様の断面図である。ヒートシンク21の収納部21xは、側面21x2に貫通孔32が形成されている。ヒートシンク21の貫通孔32を、ケース26の樹脂封止が完了した後の工程においてフィルタ33で塞いでおけば、水の浸入による平滑コンデンサの故障が防止できる。また、例えば最終工程の後で、室温で硬化するタイプの接着剤で塞ぐこともできる。貫通孔32を4フッ化エチレンの多孔質膜からなる防水性と通気性を有するフィルタ33で塞げば、水の浸入の防止と同時に、平滑コンデンサ29の収納部の結露の防止も可能となる。防水通気性を有するフィルタ33はケース26の樹脂封止工程の前に設置しておいてもよく、平滑コンデンサ29の収納部の外側および内側のどちらに設置してもよい。
【0034】
図11は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図6と同様の断面図である。平滑コンデンサ29を収納する収納部が、ヒートシンク21とは別部品のカバー34で構成されている。カバー34は、フロント側に向かって膨らんでいる収納部34xを有し、回転電機本体2のリア側に取り付けられている。ヒートシンク21は、カバー34のリア側に固定されていて、カバー34の収納部34xに対応する位置に開口部21оが形成されている。カバー34は、樹脂封止の後にヒートシンク21に、鍔部34zを、取付けることができる。封止樹脂体27が平滑コンデンサ29の収納部に漏れていないことを確認することが可能となり、不良品の市場流出を防止できる効果がある。カバー34の鍔部34zは、ねじや接着剤、あるいはその両方でヒートシンク21に固定される。カバー34は、ヒートシンク21と同様にアルミニウム合金等の金属で形成してもよく、また、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂で形成してもよい。
【0035】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているヒートシンクと、電力変換回路が有する制御基板とパワーモジュールを収納し、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されており、ヒートシンクのリア側に固定されているケースと、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、ケースに形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもヒートシンクが有する収納部に収納されていることを特徴とする。
【0036】
本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、平滑コンデンサをヒートシンクの収納部に収納し、収納部の開口部をケースの底面で塞ぐことで、制御基板を有する電力変換回路を樹脂で封止する際に、平滑コンデンサの周囲は封止されず、湿度や振動に対する信頼性が改善できる。また、本発明に係る制御装置一体型回転電機において、収納部の底面は、傾斜していることを特徴とする。また、本発明に係る制御装置一体型回転電機において、ケースには、平滑コンデンサの周囲を囲む樹脂製の堰堤が形成されていることを特徴とする。この本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、平滑コンデンサの収納部への封止樹脂の浸入を、より確実に防ぐことができる。また、制御基板を有する電力変換回路を樹脂で封止する際に、ヒートシンクの開口部から封止剤が漏れる可能性を低減することができる。本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、平滑コンデンサを密閉構造とすることで、平滑コンデンサの耐水性も向上できる。
【0037】
また、本発明に係る制御装置一体型回転電機は、前記ヒートシンクが有する収納部は、底面に貫通孔が形成されていることを特徴とする。封止剤として例えばシリコーン接着剤が使用できる。一方、ケースをヒートシンクに取付ける際にも接着剤を使用するため、両者の接着剤の塗布と硬化は同時に行うことが生産性上望ましい。上記接着剤は、室温放置で硬化するタイプと加熱して硬化させるタイプがある。室温硬化タイプは硬化に時間を要するため、組立ての途中で用いると、次の工程に投入する時間が遅れて生産性が低下する。一方、熱硬化タイプは短時間で硬化可能である。加熱時には平滑コンデンサの収納部の空気が膨張して外部に排出される。空気は未硬化の封止剤を排除して封止剤に貫通孔が形成され、封止樹脂が浸入する傾向が生じる。収納部に通気孔を設けることで、封止剤の貫通孔の形成が防止でき、生産性を向上できる。
【0038】
また、本発明に係る制御装置一体型回転電機において、ヒートシンクが有する収納部は、側面に貫通孔が形成されていることを特徴とする。また貫通孔は、フィルタで塞がれていることを特徴とする。この本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、収納部の通気孔からの水の浸入による平滑コンデンサの故障が防止できる。この通気孔を塞ぐのは最終工程の後でも可能であるので、室温放置で硬化する接着剤を問題なく用いることができる。また、撥水フィルタ等を貼り付けると収納部内の結露防止の効果も加わる。
【0039】
また、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているカバーと、カバーのリア側に固定されていて、カバーが有する収納部に対応する位置に開口部が形成されているヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されているケースと、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、ケースに形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもカバーが有する収納部に収納されていることを特徴とする。この本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、平滑コンデンサの樹脂封止の後で収納部の部品をヒートシンクに取付けられるため、封止樹脂が平滑コンデンサの収納部に漏れていないことを確認することが可能となり、信頼性が増す。
【0040】
実施の形態2.
図に従って、本発明の実施の形態2による制御装置一体型回転電機を説明する。本実施の形態も実施の形態1と同様、制御装置一体型回転電機を、車両の駆動補助および電力の発電に用いる交流発電電動機へ適用した例である。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3とを備えている。
図12は、本実施の形態による制御装置の領域Aを、ケース26をヒートシンク21の方向(フロント側)から見て、拡大して示した図である。ケース26の領域Aには、開口部37が形成されている。ケース26の開口部37は、モジュール基板で覆われる。モジュール基板には制御装置3の組立て工程とは別の工程で、複数の平滑コンデンサ29を接続して、モジュール基板と平滑コンデンサをモジュール化しておく。
【0041】
図13は、
図12と同じ方向(フロント側)からコンデンサモジュール35を見た上面図である。同図において、コンデンサモジュール35のモジュール基板36は、PPS、PBT等の熱可塑性樹脂からなり、銅の電源配線36aと銅のグランド配線36cとともに一体成形されている。平滑コンデンサ29は、パワーモジュール23に内蔵されたスイッチング素子が動作する際の、リップル電流を吸収するために電力変換回路60に搭載されている。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aのリード29aは電源配線36aおよびグランド配線36cと、はんだ(図示せず)で接合されている。平滑コンデンサ29にはアルミ電解コンデンサ、導電性高分子コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ等が適用できる。
【0042】
コンデンサモジュール35は、開口部37の位置で、ケース26に、制御装置カバー28が設置される方向から搭載されるので、開口部37はモジュール基板36によって塞がれる。コンデンサモジュール35に形成されている電源配線36aは、ケース26の電源配線26aと接続される。コンデンサモジュール35に形成されているグランド配線36cは、ケース26をヒートシンク21に設置した後に、ヒートシンク21にねじで締結して接続される。コンデンサモジュール35のモジュール基板36は、ガラスエポキシ樹脂やセラミックスや金属で形成してもよい。
【0043】
図14は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の実装構造を示す図であり、
図6と同様の断面図である。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aは、ヒートシンク21のパワーモジュール23が搭載される面の反対方向に延在させた収納部21xと、ケース26の底面と、コンデンサモジュール35のモジュール基板36とで形成された空間に収納されている。ケース26の内部に封止樹脂体27を形成しても、ヒートシンク21の開口部21оがケース26の底面とモジュール基板36で塞がれているため、平滑コンデンサ29が収納されている空間へは封止樹脂体27が浸入しない。
【0044】
このように、本実施の形態でも、パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20を樹脂で封止しても、平滑コンデンサの周囲は封止されないため、制御装置3の湿度や振動に対する信頼性を改善することができる。さらに、本実施の形態では、制御装置3の組立て工程とは別の工程で、複数の平滑コンデンサ29をモジュール基板36に接続してモジュール化している。コンデンサモジュールは複数の平滑コンデンサをケース26に一括で接続するため、生産性が向上する効果が得られる。さらに、ケース26への取付け前に、電気検査で不良のコンデンサモジュールを排除できるため、廃却費が低減できる効果もある。
【0045】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、ヒートシンクが有する収納部に対応する位置に開口部が形成されているケースと、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されていて、ケースに形成されている開口部を塞ぐモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもヒートシンクが有する収納部に収納されていることを特徴とする。
【0046】
本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、平滑コンデンサを収納する収納部の開口部をモジュール基板で塞ぐため、電力変換回路と制御基板を樹脂で封止する際に平滑コンデンサの周囲は封止されない。さらに、複数の平滑コンデンサをモジュール基板に接続してモジュール化しておき、ケースと一括で接続することで生産性が向上する。さらに、ケースへの取付け前に電気検査で不良コンデンサモジュールを除外できるため、廃却費が低減できる効果もある。
【0047】
実施の形態3.
図に従って、本発明の実施の形態3による制御装置一体型回転電機を説明する。本実施の形態も実施の形態1、2と同様、制御装置一体型回転電機を車両の駆動補助および電力の発電に用いる交流発電電動機へ適用した例である。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3とを備えている。
図15は、本実施の形態による領域Aを、ケース26を制御装置カバー28の方向(リア側)から見て、拡大して示した図である。製造上の都合でケース26の底面の電源配線26aとグランド配線26cの周辺には開口部39が形成されている(同図には蓋38は示されていない)。
【0048】
銅で形成された電源配線26aとグランド配線26cとをケース26の底面にインサートモールド成形し、グランド配線26cはケース26をヒートシンク21に設置した後に、ヒートシンク21にねじで締結して接続される。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bは、パワーモジュール23に内蔵されたスイッチング素子が動作する際の、リップル電流を吸収するため、4個並列で接続されている。平滑コンデンサ29のリード29aと、電源配線26aおよびグランド配線26cとは溶接で接続されている。平滑コンデンサ29にはアルミ電解コンデンサや導電性高分子コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ等を用いることができる。
【0049】
図16は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の実装構造を示す図である。同図は、
図15の切断線16−16に沿った制御装置3の断面図であり、同図の左側から見た方向の断面を示している。ケース26の溝部26yには、外部のバッテリー50に接続する電源配線26aとグランド配線26cが形成されている。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bは、ヒートシンク21のパワーモジュール23が搭載される面の反対方向に延在させた収納部21xと、ケース26の底面(溝部26y)と、蓋38とで形成された空間に収納されている。ケース26の内部に封止樹脂体27を形成しても、ヒートシンク21の開口部21оがケース26の底面および蓋38で塞がれているため、平滑コンデンサ29が収納されている空間へは封止樹脂体27が浸入しない。
【0050】
このように、パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20を樹脂で封止しても、平滑コンデンサ29の周囲は封止されないため、制御装置3の湿度や振動に対する信頼性が改善することができる。実施の形態1,2では表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aを使用したのに対し、本実施の形態では挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを使用している。挿入実装タイプを使用する場合、ケース26に平滑コンデンサの接続用の電源配線26aおよびグランド配線26cを一体成形する際、製造上の都合でケース26の底面では電源配線26aおよびグランド配線26cの周辺に開口部39が形成される。
【0051】
そこで、平滑コンデンサ29が収納されている空間への封止樹脂体27の浸入を防ぐために、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂、アルミニウム合金等の金属、あるいはセラミックス等で形成した蓋38の追加設置が必要となる。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを使用すると、表面実装タイプを使用する場合に比べて実装面積が縮小でき、制御装置3を小型化できる効果がある。なお、開口部39の面積が小さい場合は、蓋38を使用せずに、封止材で開口部39を塞ぐこともできる。
【0052】
図17は本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図16と同様の断面図である。実施の形態1の
図9に示した形態では、ヒートシンク21の収納部21xに貫通孔32を設けた。本実施の形態では、蓋38に封止樹脂体27を貫通する煙突状の構造物40を形成し、その先端を封止樹脂体27の表面から、制御装置カバー28の方向へ突出させている。本実施の形態でも、封止剤31を熱硬化させる場合に、平滑コンデンサ29の収納部で膨張した空気を通気孔41から排気できるため、実施の形態1の
図9示した形態と同様の効果が得られる。
【0053】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が溝部に形成されているケースと、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、ケースの溝部に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもヒートシンクが有する収納部に収納されていることを特徴とする。
【0054】
また、本発明に係る制御装置一体型回転電機において、蓋には、封止樹脂体を貫通する煙突状の構造物が形成されていることを特徴とする。本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、表面実装タイプの平滑コンデンサの代わりに、ここでは挿入実装タイプの平滑コンデンサを用いている。このタイプでは、ケースに平滑コンデンサ接続用の電極を一体成形する際、ケースの底面には電極周辺に開口部を形成しなければならない。平滑コンデンサの収納部を塞ぐには蓋を追加している。その結果、平滑コンデンサの実装面積が縮小でき、制御装置を小型化できる効果がある。
【0055】
実施の形態4.
図に従って、本発明の実施の形態4による制御装置一体型回転電機を説明する。本形態も実施の形態1〜3と同様、制御装置一体型回転電機を車両の駆動補助および電力の発電に用いる交流発電電動機へ適用した例である。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3とを備えている。
図18は、本実施の形態による領域Aを、ケース26を制御装置カバー28の方向(リア側)から見て、拡大して示した図である。ケース26の領域Aには、開口部37が形成されている。開口部37には、本実施の形態に係るコンデンサモジュールが接着固定される。
【0056】
図19は、リア側からコンデンサモジュール35を見た上面図である。同図において、コンデンサモジュール35のモジュール基板36は、PPS、PBT等の熱可塑性樹脂からなり、銅の電源配線36aと銅のグランド配線36cとともに一体成形されている。平滑コンデンサ29は挿入実装タイプのものを採用している。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bのリード29aと、電源配線36aおよびグランド配線36cとは溶接で接続されている。コンデンサモジュール35は、開口部37の位置で、ケース26に、制御装置カバー28が設置される方向(リア側)から搭載される。
【0057】
コンデンサモジュールの電源配線36aは、ケース26の電源配線26aと接続される。グランド配線36cは、ケース26をヒートシンク21に設置した後に、ヒートシンク21にねじで締結して接続される。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bとして、アルミ電解コンデンサや導電性高分子コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ等を用いることができる。コンデンサモジュール35のモジュール基板36には、ガラスエポキシ樹脂やセラミックスや金属を用いることもできる。
【0058】
図20は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の実装構造を示す図であり、
図16と同様の断面図である。モジュール基板36は、鍔部36zと溝部36yを有する。溝部36yには、電源配線36aおよびグランド配線36cが形成されている。蓋38は、モジュール基板36が有する鍔部36zに固定されている。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bは、ヒートシンク21のパワーモジュール23が搭載される面の反対方向に延在させた収納部21xと、ケース26の底面と、コンデンサモジュール35のモジュール基板36と、蓋38で形成された空間に収納されている。ケース26の内部に封止樹脂体27を形成しても、ヒートシンク21の開口部21оがケース26の底面とモジュール基板36と蓋38で塞がれているため、挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bが収納されている空間へは封止樹脂体27が浸入しない。なお、開口部39の面積が小さい場合は、蓋38を使用せずに、封止材で開口部39を塞ぐこともできる。
【0059】
このように、本実施の形態でも、パワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20を樹脂で封止しても、平滑コンデンサの周囲は封止されないため、制御装置の湿度や振動に対する信頼性を改善することができる。さらに、本実施の形態では、複数の平滑コンデンサ29をモジュール化しているため、制御装置3の生産性を向上し、廃却費を低減できる効果を有する。さらに、挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを使用しているため、実装面積が縮小でき、制御装置3を小型化できる効果も得られる。
【0060】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、ヒートシンクが有する収納部に対応する位置に開口部が形成されているケースと、鍔部と溝部を有し、この溝部には外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されているモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、モジュール基板が有する溝部は、ケースに形成されている開口部を挿通し、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもヒートシンクが有する収納部に収納されていることを特徴とする。本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、挿入タイプの平滑コンデンサを使用し、複数の平滑コンデンサをモジュール化したことで、小型化と生産性の改善の効果を得られる。
【0061】
実施の形態5.
図に従って、本発明の実施の形態5による制御装置一体型回転電機を説明する。本実施の形態も実施の形態1〜4と同様、制御装置一体型回転電機を車両の駆動補助および電力の発電に用いる交流発電電動機へ適用した例である。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3とを備えている。
図21は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の実装構造を示す図であり、本実施の形態による領域Aの断面図である。ヒートシンク21には、
図11と同様に、開口部21о(第1の開口部)が形成されている。ケース26には、
図12と同様に、開口部37(第2の開口部)が形成されている。開口部21оと開口部37は同じ位置に形成されている。モジュール基板36には、電源配線36aおよびグランド配線36cが形成されている。カバー34は、鍔部34zと収納部34xを有する。鍔部34zはケース26に接着されている。
【0062】
モジュール基板36には、電源配線36aおよびグランド配線36cが形成されている。モジュール基板36は、カバー34が有する鍔部34zに接着されている。本実施の形態では表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aをモジュール基板36に接続するとともに、モジュール基板36にカバー34を取付けて、カバー付のコンデンサモジュール35を構成しておく。平滑コンデンサ29はモジュールの状態で、既にモジュール基板36とカバー34で形成された空間(収納部34x)に収納されている。ケース26の底面とヒートシンク21にはカバー34が貫通する開口部37と開口部21оとがあり、それらの開口部はモジュール基板36とカバー34で塞がれている。
【0063】
図22は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図21と同様の断面図である。本実施の形態では、モジュール基板36の底面に煙突状の構造物40を形成し、その先端を封止樹脂体27の表面から、制御装置カバー28の方向へ突出させている。封止剤31を熱硬化させる場合に、平滑コンデンサ29の収納部で膨張した空気を通気孔41から排気できるため、
図17に示した形態と同様の効果が得られる。
【0064】
図23は、本実施の形態の平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図20と同様の断面図である。本実施の形態では、挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを用いて、
図20に示した形態と同様の蓋付きのコンデンサモジュール35を構成している。平滑コンデンサ29はモジュールの状態で、既にモジュール基板36とカバー34と蓋38で形成された空間に収納されている。ケース26の底面とヒートシンク21にはカバー34が貫通する開口部37(第2の開口部)と開口部21о(第1の開口部)があり、それらの開口部はモジュール基板36とカバー34と蓋38で塞がれている。また、開口部39の面積が小さい場合は、蓋38を使用せずに、封止材で開口部39を塞ぐこともできる。
【0065】
なお、本実施の形態において、カバー34は、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂や、アルミニウム合金等の金属で形成できる。また、モジュール基板36は、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂を用いれば、電源配線36a、グランド配線36cと一体成形できる他、ガラスエポキシ樹脂やセラミックスや金属を用いることもできる。さらに、蓋38は、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂、アルミニウム合金等の金属、セラミックス等で形成できる。
【0066】
これら3つの実施の形態では、ケース26の内部に封止樹脂体27を形成しても、平滑コンデンサ29が収納されている空間へは封止樹脂体27が浸入しないため、制御装置の湿度や振動に対する信頼性を改善することができる。さらに、いずれの実施の形態も、複数の平滑コンデンサ29をモジュール化しているため、生産性を向上し、廃却費を低減できる効果を有する。なお、
図23の実施の形態は、挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを使用しているため、実装面積が縮小でき、制御装置3を小型化できる効果を得られる。
【0067】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、回転電機本体のリア側に取り付けられていて第1の開口部を有するヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、ヒートシンクが有する第1の開口部と同じ位置に第2の開口部が形成されているケースと、鍔部と収納部を有し、この鍔部はケースに接着されているカバーと、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されカバーを覆うモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、カバーが有する収納部は、第1の開口部と第2の開口部を挿通し、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもカバーが有する収納部に収納されていることを特徴とする。
また、本発明に係る制御装置一体型回転電機において、モジュール基板には、封止樹脂体を貫通する煙突状の構造物が形成されていることを特徴とする。本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、実施の形態1〜4と同様の効果が得られる。
【0068】
また、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、回転電機本体のリア側に取り付けられていて第1の開口部を有するヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定され、ヒートシンクが有する第1の開口部と同じ位置に第2の開口部が形成されているケースと、鍔部と収納部を有し、この鍔部はケースまたはヒートシンクに固定されているカバーと、鍔部と溝部を有し、この鍔部はカバーの有する鍔部に固定されていて、しかも溝部には外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されているモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、カバーが有する収納部は、第1の開口部と第2の開口部を挿通し、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもカバーが有する収納部に収納されていることを特徴とする。本発明に係る制御装置一体型回転電機によれば、実施の形態1〜4と同様の効果が得られる。
【0069】
実施の形態6.
図に従って、本発明の実施の形態6による制御装置一体型回転電機を説明する。本実施の形態も実施の形態1〜5と同様、制御装置一体型回転電機を車両の駆動補助および電力の発電に用いる交流発電電動機へ適用した例である。制御装置一体型回転電機1は、回転電機本体2と制御装置3とを備えている。
図24は、本実施の形態に係る平滑コンデンサ29の実装構造を示す図であり、本実施の形態による領域Aの断面図である。カバー34は、フロント側に向かって膨らんでいる収納部34xを有し、回転電機本体2のリア側に取り付けられている。ヒートシンク21は、カバー34のリア側に取り付けられていて、カバーが有する収納部34xに対応する位置に開口部21оが形成されている。ケース26は、ヒートシンク21のリア側に固定されている。
【0070】
モジュール基板36は、ケース26に接着されていて、しかもバッテリー50に接続する電源配線36aとグランド配線36cが形成されている。電源配線36aは、モジュール基板36に一体成型されており、ヒートシンク21の方向に延在させている。表面実装タイプの平滑コンデンサ29Aをモジュール基板36に接続してコンデンサモジュール35を構成している。ヒートシンク21には、開口部21оが形成されている。開口部21оを、カバー34の方向に延在させた電源配線26aとグランド配線26c、およびコンデンサモジュール35が貫通する。モジュール基板36は、接着剤42でケース26の底面に固定されている。
【0071】
モジュール基板36の電源配線36aとグランド配線36cは、ヒートシンク21の方向に延在させたケース26の電源配線26aとグランド配線26cにそれぞれ溶接で接合されている。カバー34がヒートシンク21に設置されて、平滑コンデンサ29が、ケース26の底面とヒートシンク21とカバー34で形成された空間に収納されている。
【0072】
図25は本実施の形態の平滑コンデンサ29の別の実装構造を示す図であり、
図24と同様の断面図である。本実施の形態では、挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bを用いてコンデンサモジュール35を構成している。モジュール基板36は、鍔部36zと溝部36yを有する。鍔部36zは、ケース26に接着されていて、しかも溝部36yにはバッテリー50に接続する電源配線36aとグランド配線36cが形成されている。電源配線36aは、モジュール基板36に一体成型されており、ヒートシンク21の方向に延在させている。挿入実装タイプの平滑コンデンサ29Bをモジュール基板36に接続してコンデンサモジュール35を構成している。ヒートシンク21には、開口部21оが形成されている。開口部21оを、カバー34の方向に延在させた電源配線26aとグランド配線26c、およびコンデンサモジュール35が貫通する。モジュール基板36は、接着剤42でケース26の底面に固定されている。
【0073】
モジュール基板36の電源配線36aとグランド配線36cは、ヒートシンク21の方向に延在させたケース26の電源配線26aとグランド配線26cにそれぞれ溶接で接合されている。カバー34がヒートシンク21に設置されて、平滑コンデンサ29が、ケース26の底面とヒートシンク21とカバー34で形成された空間に収納されている。
【0074】
なお、本実施の形態において、モジュール基板36は、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂を用いれば電源配線36a、グランド配線36cと一体成形できる他、ガラスエポキシ樹脂やセラミックスや金属を用いることもできる。また、カバー34は、PPSやPBT等の熱可塑性樹脂やアルミニウム合金等の金属で形成でき、ねじ(図示せず)や接着剤(図示せず)、あるいはその両方でヒートシンク21に固定される。
【0075】
接着剤として熱硬化タイプを用いる場合は、加熱時にカバー34の内部の空気が膨張して外部に排出される。空気は未硬化の接着剤を排除して接着部に貫通孔が形成される。使用時には水が浸入して平滑コンデンサ29の信頼性が低下する可能性が生じるため、平滑コンデンサ29を、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフェン樹脂、アクリル樹脂、電気絶縁ワニス等で防湿コーティングしておいてもよい。または、あらかじめカバー34に貫通孔を設け、貫通孔をフッ化エチレンの多孔質膜からなる防水性と通気性を有するフィルタで塞いでおいてもよい。
【0076】
本実施の形態では、ケース26に収められたパワー回路部18、界磁回路部19および制御回路部20の樹脂封止が完了した後に、平滑コンデンサ29を設置することが可能となる。封止樹脂体27を硬化させる際の加熱による平滑コンデンサ29の性能劣化、および信頼性の低下を防止することができる。平滑コンデンサ29の周囲は樹脂で封止されていないため、湿度や振動に対する信頼性を改善することができる。さらに、複数の平滑コンデンサ29をモジュール化しているため、生産性を向上し、廃却費を低減できる効果を有している。
【0077】
従って、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているカバーと、カバーのリア側に取り付けられていて、カバーが有する収納部に対応する位置に開口部が形成されているヒートシンクと、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定されているケースと、ケースのフロント側に固定されていて、しかも外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されているモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもカバーが有する収納部に収納されていることを特徴とする。
【0078】
また、本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているカバーと、カバーのリア側に取り付けられていて、カバーが有する収納部に対応する位置に開口部が形成されているヒートシンク
と、制御基板とパワーモジュールを収納し、ヒートシンクのリア側に固定されているケースと、バッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されているモジュール基板と、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、モジュール基板に形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもカバーが有する収納部に収納されていることを特徴とする。本実施の形態に係る制御装置一体型回転電機によれば、実施の形態1〜5と同様の効果が得られる。
【0079】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
制御装置一体型回転電機は、回転子巻線と固定子巻線を有する回転電機本体と、回転子巻線と固定子巻線に接続され、制御基板とパワーモジュールと平滑コンデンサを有する電力変換回路と、フロント側に向かって膨らんでいる収納部を有し、回転電機本体のリア側に取り付けられているヒートシンクと、電力変換回路が有する制御基板とパワーモジュールを収納し、外部のバッテリーに接続される電源配線とグランド配線が形成されており、ヒートシンクのリア側に固定されているケースと、ケースに収納されている制御基板とパワーモジュールを封止する封止樹脂体と、を備え、電力変換回路が有する平滑コンデンサは、ケースに形成されている電源配線とグランド配線に接合され、しかもヒートシンクが有する収納部に収納されている。