【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、独立請求項の特徴を有する本発明によって解決される。本発明の有利な展開が、従属請求項において特徴づけられる。ここで、すべての特許請求項の文言が参照により本明細書の内容に組み込まれる。本発明はまた、独立請求項および/または従属請求項のすべての合理的な、特にすべての言及されている組み合わせをも含む。
【0010】
個々の方法ステップは下記に詳細に記載されている。ステップは提示されている順序で実施される必要はなく、一方で、概説されることになる方法はまた、明記されていないさらなるステップを有してもよい。
【0011】
本発明の目的を解決するために、脊椎動物の骨盤および/または肩腕領域の骨構造および/または脊柱の椎骨の空間位置および向きを判定するための方法が提案され、当該方法は、
a)脊柱および/または骨盤および/または肩腕領域の骨構造の少なくとも一部の少なくとも1つのX線画像、たとえば、正面または背面からの脊柱の平面図、またはさらには側面図を記録するステップと、
b)光学的方法(すなわち、可視光または赤外光による、すなわち、380nmから780nm、または780nmから1000nmの間の波長による)または超音波方法(すなわち、飛行時間測定)によって脊椎動物の背部の少なくとも一部の表面データを記録するステップと、
c)ここで、ステップa)およびステップb)は、最大X線記録時間に対応する1秒、好ましくは0.5秒、より好ましくは0.3秒、さらにより好ましくは0.1秒、または最も好ましくは0.05秒の最大時間間隔で同時に実施され、時間間隔は各記録の始まりに対して参照され、
d)鮮明なX線画像によって、骨または骨の特定の部分もしくは領域もしくは端部、あるいは関節のような、骨構造の要素の位置を判定するステップと、
e)たとえば、椎骨の棘突起の終端部によって生じる隆起のような、表面データにおける表面構造の特徴的な要素の位置を判定するステップと、
f)骨構造の要素の位置を、表面構造の特徴的な要素の位置から推論するステップと、
g1)少なくとも1つのX線画像および表面データから骨構造の一致する要素を解剖学的固定点として判定するステップ、または
g2)脊椎動物の背部上のマーカによって解剖学的固定点を判定するステップであって、それによって、マーカは、表面データ内およびX線写真上の両方で見えるように選択される、判定するステップと、
h)解剖学的固定点を用いて少なくとも1つの記録されたX線画像および表面データを重ね合わせるステップと、
i)表面データおよび少なくとも1つのX線画像から骨構造の要素の3次元モデルを計算するステップであって、ここで、モデルは、
i1)椎骨および/もしくは骨盤の位置、すなわち、3つの空間座標、ならびに/または
i2)脊柱および/もしくは棘突起の湾曲、ならびに/または
i3)個々の椎骨および/もしくは骨盤の向き、すなわち、3つの方位角(矢状方向、側方および回転)、ならびに/または
i4)棘突起および脊柱の発達の変位、ならびに/または
i5)肩甲骨および/もしくは肩腕領域の骨構造の位置および向き
を含む、計算するステップと
を含む。
【0012】
該方法は通常、ヒトに使用するために提供されるが、背部の対応する領域が光学的測定または超音波測定に使用し得る限り、脊柱を有する他の生物に一般的に適用することができる。
【0013】
少なくとも1つのX線画像がX線を用いて記録される。これは、2.5×10−
11〜0.8×10−
11m(8〜25pm)の波長に対応する50〜150keVの光子エネルギーを有する電磁波を含む。
【0014】
たとえば、骨構造の選択される要素であってもよい解剖学的固定点は、X線記録と表面データとを位置合わせする役割を果たす。たとえば、少なくとも1つのX線写真と、表面データから得られる骨構造の要素との共通点が、選択基準として使用されてもよい。
【0015】
椎骨の位置および棘突起の位置に基づいて、各椎骨について3つの方位角が判定される。これによって、個々の椎骨の実際の特性が考慮に入れられる、脊柱全体の正確なモデル化が可能になる。
【0016】
記録システムにおいて両方の測定方法を統合すること、および、両方の測定を同時に実施することによって、既存の問題が解決される。2つの方法間で発生する可能性がある姿勢の差を、同時記録手順によって除外することができ、それによって、表面パラメータの知識を用いてX線画像から拡大−縮小率を再計算することが可能である。開始位置、すなわち、脊柱または骨構造の正確な位置および形状を知ることによって、たとえ深刻な変形があっても、放射線を用いない光学的または超音波表面測定を検査において実施することができる。この事例において、放射線を用いない表面測定による連続したショットが各々、それぞれ出力画像または出力データおよびそれぞれのずれに関係付けられる。
【0017】
これまで、ビデオ歩行分析などの動的および/または機能的測定方法の事例において、マーカポイントは運動中に、手動で個々に皮膚表面に付着されていたに過ぎない。動的光学表面測定(欧州特許第1,718,206号明細書)を使用することによって、歩行および機能的分析において広範囲の歪み全体を記録および分析することが可能である。運動パターンにおける骨構造の統合において可能な限り現実的であること、したがって、それらを判定することが可能であることも望ましい。骨系の元の形状および位置の正確な知識を得るために、X線記録を参照してこの知識を判定し、光学表面測定方法を用いてこれを整合させることが望ましい。X線記録および表面測定を同時に実行することによって、この目的のための手段がもたらされる。
【0018】
有利には、骨構造の要素、すなわち、a)脊柱の椎骨の棘突起および椎弓根、ならびに/または、b)骨盤領域、仙骨、腸骨の上端と上前腸骨棘および/もしくは上後腸骨棘、ならびに/または、c)鎖骨および肩鎖関節、ならびに/または、d)肩甲骨、ならびに/または、e)肩甲骨端部が判定される。
【0019】
表面データ内の特徴的な要素が表面特性の分析を通じて判定されることも有利であり、この分析によって、
a)表面データにおける湾曲および/または対称性が計算され、
b)湾曲および/または対称性の計算は、特定の所定の条件を満たすことを含み、この条件は少なくとも、
b1)表面の湾曲または対称性のいずれかを記述し、
b2)脊柱の椎骨の相対位置、湾曲、ねじれまたは等距離のいずれかを記述する。
【0020】
表面データおよびX線データの均一な真幅表現を生成するために、本方法においてX線画像がスケーリングされることが有利である。これによって、最小のずれでのデータの共通の分析が可能になる。
【0021】
本方法の有利な展開において、後の時点において少なくともさらなる光学的または超音波記録が実施され(いわゆる検査)、ここで、これらの測定の結果が先行するデータと複合される。これらの検査は同じまたは別のデバイスを使用して実施されてもよい。データの複合分析を可能にするためには、患者の位置および向きだけが同一であればよい。
【0022】
後の時点において実施される記録はまったく光学的のみであるか、または超音波を用いてのみ実施されることが特に有利である。したがって、患者のさらなる放射線暴露を避けるために、さらなるX線記録は実施されない。
【0023】
X線画像化技法と光学または超音波表面測定とを統合することによって、より大きい患者群が、検査において放射線を用いない表面測定から受益することが可能になる。この統合方法は、統計的および機能的画像化技法(歩行分析、走行および運動分析)の両方を通じて、放射線を用いない高度な分析の機会を提供する。
【0024】
同期または擬似同期測定結果に基づいて、X線記録の回数が低減され、したがって放射線量および癌の危険性を低減することができる光学または超音波表面測定を使用することによって、深刻な脊髄変形を有する患者の検査が可能である。
【0025】
脊柱の椎骨の位置および向きに関するデータが脊柱側弯角度を判定するのに使用されることも好ましい。いわゆる脊柱側弯角度とは、Cobb角の3次元一般化を意味し、これは、脊柱側弯を評価するための手段としての役割を果たすことが多い。Cobb角の一般的決定の結果として、最初に移行椎が判定される。移行椎は、脊椎の側弯の2つの転換点にある椎骨である。2つの移行椎の蓋板の各々について、接線が与えられる。これらの接線が交差する角度が、Cobb角である。代替的な方法は、接線の代わりに、上側の移行椎および下側の移行椎に垂直である2つの線を使用する。しかしながら、Cobb角は常に2次元X線画像を参照し、したがって、深さ情報を考慮に入れない。一方、脊柱側弯角度は、3つすべての空間寸法を考慮に入れ、それによって、脊柱の側方の曲がりに加えて、任意の存在する矢状方向湾曲および垂直ねじれも考慮に入れ、それゆえ、脊柱側弯の評価のためのはるかにより正確な測度を表す。
【0026】
好ましくは、表面データの記録は、3Dビデオラスタ立体画法、または平均化技法を用いた4Dビデオラスタ立体画法、または符号化光手法、または位相シフト法、またはライン走査法、または飛行時間法、または超音波法を使用し、ここで、(光学的)3Dビデオラスタ立体画法が特に好適である。
【0027】
3Dビデオラスタ立体画法は、一般的に、投光機およびビデオカメラを備え、三角測量の原理に基づいて動作する3次元光学画像化プロセスである。この事例において、投光機は、平行測定ラインまたは他の投影パターンを、測定装置の正面にある物体に投影する。ビデオカメラはこれを記録紙、コンピュータにデータを送信し、コンピュータは、ラインパターンの変形に基づいて物体のその空間表現を計算する。カメラおよび投影機は、互いから一定距離にある別の2つの固定点を形成する。同様に、カメラおよび投影機レンズの互いに対する角度も分かっている。これらの定数が、他のすべての距離および角度、ならびに投影面上の各点の空間位置が単純に計算されることを可能にする。3Dビデオラスタ立体画法は、主に医療環境において、放射線を用いない背部測定システムとして見出されている。
【0028】
4Dビデオラスタ立体画法(たとえば、欧州特許第1 718 206号明細書参照)は、同じく三角測量の原理を使用する、3Dビデオラスタ立体画法のさらなる発展型である。事実、第4の次元は時間であり、それによって、3Dビデオラスタ立体画法におけるような個々の画像の代わりに、画像シーケンス(「フィルム」)が記録される。コンピュータは、各フレームについて、測定されるべき物体の空間表現を計算する。3Dビデオラスタ立体画法の事例と同様に、4Dビデオラスタ立体画法は、医療環境において背部を測定するのに使用される。一定期間にわたって記録される画像シーケンスは、平均計算(平均化を用いる4D)または関数測定のようなさらなる計算が、患者の運動中に実施されることを可能にする。
【0029】
符号化光手法の事例では、ストライプパターンのシーケンスが投影機を通じて物体上に投影され、ビデオカメラによって記録される。ストライプのシーケンスは、2値化の原理に従う、すなわち、最初はn本の平行な測定ライン、次にn/2本、次にn/4本と続いていく測定ラインが、2本のラインのみが得られるまで投影される。この事例において、画像の記録およびシーケンス内のストライプパターンの変更は同期して行われ、それによって、各画像がシーケンスのストライプパターンを記録する。測定物体の空間表現が、三角測量によってフレームから計算される。
【0030】
符号化光手法の方法を使用することは、ストライプセンサの解像能力によって制限される。解像度をさらに増大させるために、符号化光手法の原理を、位相シフト法と組み合わせることができる。この目的のために、符号化光手法の各ストライプが、強度変調鋸歯状波信号を使用することによって、その最高解像度で表現される。走査された信号を余弦関数を用いてモデル化し、モニタリング点の位相位置を判定することによって、符号化光手法のストライプをさらに解像することができる。
【0031】
ライン走査法の事例では、単一の光ストライプが物体上に投影され、ビデオカメラによって記録され、さらなる計算のためにコンピュータに送信される。コンピュータは、三角測量によってストライプの空間位置を計算することができる。物体を完全にまたは部分的に検出するために、ストライプは物体を通り過ぎ、その後コンピュータがフレームを組み立て、物体の空間表現を計算する。ライン走査法は特に、X線スロット記録技法と良好に組み合わせることができる。
【0032】
従来の方法に加えて、DLP(デジタルライトプロセッシング)投影方法が種々のパターンの投影に使用されてもよい。DLPは、Texas Instruments(TI)によって開発され、たとえば、ビデオプロジェクタおよびホームシアタの背面投影型スクリーン、ならびにプレゼンテーションの分野、ならびに、「DLP Cinema」の名称で、デジタル映画の分野について、投射技術の商標として登録されている。
【0033】
飛行時間法(TOF)の事例では、光パルスが物体に向けられ、その後、カメラによって記録される。その後、光が物体に達してから戻るまでに必要とされる時間(ランタイム測定値)がピクセルごとに計算される。測定物体の空間表現が、合計ポイントからもたらされる。
【0034】
飛行時間測定はまた、超音波法の事例においても行われる。この事例において、超音波が物体に向けられ、その後、受信機によって再び拾われる。超音波が物体に達して戻るまでにかかる時間が測定され、空間表現を計算するのに使用される。
【0035】
有利には、3次元モデルは、モデルを少なくとも1つのX線画像に投影することによって検証される。必要なときには、モデルはこのように反復的に改善することもできる。
【0036】
本発明の目的は、脊椎動物の骨盤および/または肩腕領域の骨構造および/または脊柱の椎骨の空間位置および向きを判定するためのデバイスによってさらに解決される。デバイスは、
X線ビーム経路を有するX線記録装置と、
表面データを記録するための光学的(すなわち、可視光または赤外光による)記録装置であって、ここで、光学的記録装置は光ビーム経路を有する、光学的記録装置と、
光学経路とX線ビーム経路とを重ね合わせるための光学素子とを備える。たとえば、偏光ミラーまたはプリズムの使用が、光学素子として使用されてもよい。
【0037】
さらに、デバイスは、X線装置および光学的記録装置の両方を用いた記録を、これら2つの画像が、1秒、好ましくは0.5秒、特に好ましくは0.3、より好ましくは0.1秒、または最も好ましくは0.05秒の最大X線記録時間に対応する最大時間間隔だけ分離されるようにトリガするための手段と、
記録されたX線画像の少なくとも1つと光学的に得られた表面データとを重ね合わせるための手段と、
光学的に得られた表面データおよび少なくとも1つのX線画像から3次元モデルを計算するための手段と
を備える。
【0038】
記録方法において、両方の測定が、同様または同一の再現可能な幾何学的記録条件、および、したがって正確な姿勢の下で同時に実行されることが極めて重要であり、したがって、正確な姿勢および患者位置が2つの測定結果のために必要とされる。この目的のために、光学測定システムおよびX線システムが統合されることが必要である。絶対的に同期的な試験手順が最適であり、両方の測定方法について時間がずれた試験手順は、2つの異なる記録間に患者の位置の感知できるほどの変化がない場合にしか、許容可能でない。表面画像から分かる形状によって、X線画像の複数の異なる拡大率を計算および補正することができる。2つの画像化技法の技術的に欠陥のない複合(マッチング)はこのようにして可能である。
【0039】
すべての現行の、従来のX線記録システムが、ヒトの骨格の写真を撮影するのに適切である限り、本発明の基礎を形成することができる。X線装置は、面積が大きい画像記録フォーマットもしくは画像検出器を有するX線装置、または、従来のフィルムスクリーン記録技法を使用したX線機械、または、線量低減スロット記録技法を使用したX線機械であることが好ましい。
【0040】
画像記録側において、最大43cm×43cmの面積を有する圧倒的に面積が大きい検出器システムが放射線撮影に使用される。これによって、従来のフィルムスクリーン技法は排される。このように、すべての画像結果はデジタル形式で直接利用可能であり、画像処理ソフトウェアが、画像結果の最適化を可能にする。以前は、放射線撮影においてフィルムは露光されていた。患者に対するX線量を低減するために、同じく従来通りフィルムを露光させるが、記録あたりのX線量は大幅に低減するフィルムシステムが開発された。43cm×43cmの大きな視野が最初に両方の記録技法において露光される。照射される容積に関係する患者の身体の物理状態に応じて散乱放射が形成されるため、必要とされる線量は両方の事例において相対的に高い。この散乱放射は、全放射の最大90%を表す可能性があり、これは逆に、大きな容積を記録するときは事実上、放射の10%しか画像化されないことを意味する。
【0041】
スロット記録技法において、大規模X線視野の代わりに、細いストライプ画像の形態のスロットを通じてしかX線は与えられず、ここで、スロットは身体をトラバースする(走査法)。総記録時間は数秒になる。各走査には小さい身体容積しか含まれず、したがって、望ましくない散乱放射の生成が大いに回避される。これを高感度X線スロット検出器と組み合わせることによって、X線量が、従来のプロセスと比較して10分の1に低減されることが可能になる。スロット記録技法の欠点は、必要とされる記録時間がより長くなること、および、身体のすべての部分に対するシステムの可用性が制限されることにある。
【0042】
加えて、表面データを記録するための光学的記録デバイスは、好ましくは、3Dビデオラスタ立体画法もしくは平均化技法を用いた4Dビデオラスタ立体画法、または符号化光手法、または位相シフト法、またはライン走査法、または飛行時間法を使用するものである。
【0043】
デバイスの特に好適な実施形態において、表面データを記録するための光学的記録デバイスは、3Dビデオラスタ立体画法を使用し、以下の追加の構成要素、すなわち、
a)光学経路を照明する光源と、
b)光ビーム経路を介して光源によって脊椎動物の背部の脊柱領域上に光ストライプパターンを投影するように適合されているマスクまたはスロットダイヤフラムアレイと、
c)脊椎動物の背部の脊柱領域上のストライプパターンの画像を撮影することができるように、光ビーム経路およびX線ビーム経路の共通部分の光軸に垂直に配置される光検出器、たとえば、デジタルカメラと
を備える。
【0044】
さらに、デバイスが、上述した方法を実行するための手段をさらに備えることが特に好適である。これらはとりわけ、X線および光学的記録デバイスの測定結果を複合し記録するための手段、X線画像の拡大率を補正するための手段、少なくとも1つのX線画像と光学的に得られた表面データとを重ね合わせ、均一な真幅表現を生成するための手段、および、光学的に得られた表面データおよび少なくとも1つのX線画像から骨構造の要素の3次元モデルを計算するための手段を含む。
【0045】
さらなる詳細および特徴が、従属請求項に関連する好適な実施形態の以下の説明から明らかとなろう。このように、それぞれの特徴は、単独で、またはともに組み合わせて実施されてもよい。本発明の目的を解決するための方法は、これらの実施形態には限定されない。したがって、たとえば、挙げられていないすべての中間値およびすべての想定可能な部分間隔の代わりに、局所的な詳細を含む。
【0046】
これらの実施形態は図面に概略的に示されている。個々の図面内の同じ参照符号は、同一もしくは機能的に同一の要素、または、互いにそれらの機能に対応する要素を示す。具体的には、図面は以下を示す。