特許第6053952号(P6053952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6053952熱交換システム及びその熱交換システムの起動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6053952
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】熱交換システム及びその熱交換システムの起動方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/08 20060101AFI20161219BHJP
   F22B 1/16 20060101ALI20161219BHJP
   F24J 3/08 20060101ALI20161219BHJP
   F28B 1/00 20060101ALI20161219BHJP
   F28B 3/00 20060101ALI20161219BHJP
   F01K 7/32 20060101ALI20161219BHJP
   F01D 19/00 20060101ALI20161219BHJP
   F03G 4/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F22B1/08
   F22B1/16 Z
   F24J3/08
   F28B1/00
   F28B3/00
   F01K7/32
   F01D19/00 L
   F03G4/00 511
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-546931(P2015-546931)
(86)(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公表番号】特表2016-506489(P2016-506489A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2013075052
(87)【国際公開番号】WO2014090596
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年8月4日
(31)【優先権主張番号】12196620.4
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515156186
【氏名又は名称】エヌエーエム エナジー ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】NEM ENERGY B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】ロップ,ペーター シモン
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−042844(JP,A)
【文献】 特開昭63−208677(JP,A)
【文献】 特開昭63−194110(JP,A)
【文献】 特公昭47−006441(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0033827(US,A1)
【文献】 米国特許第04164202(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第02436129(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00− 1/30
F22B35/14
F24J 3/08
F01K13/02
F01D19/00
F01K 7/32
F03G 4/00
F28B 1/00
F28B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱リザーバ由来の期待される超臨界熱水流体から蒸気タービン用の過熱作動流体を生成する熱交換システムであって、
シェル(10)を備えたヘッダー式ヒータであって、前記シェル(10)の吸込口は、地熱リザーバから前記シェル(10)内へ前記期待される超臨界熱水流体を輸送する供給管(20)に通じており、吐出口は、凝縮熱水流体を前記シェル(10)から処理器へ輸送するドレン管(30)に通じている前記ヘッダー式ヒータと、
前記蒸気タービンの復水器から前記シェル(10)内の熱交換管束系内へ給水を循環させ、前記蒸気タービン用に前記熱交換管束系から過熱蒸気を回収する作動流体管(70、80)と、を含み、
噴霧装置(40)は、前記熱交換管束系の第1管束(11)上に噴霧するために、前記シェル(10)内に配置され、
混合装置(60)は、作動流体下流側の第2管束(12)の出力由来の作動流体を前記第1管束(11)の出力由来の作動流体と混合して、前記第2管束の入力での前記熱水流体の温度が飽和温度よりわずかに高くなるようにするために、前記第1管束(11)の前記出力と前記第2管束(12)の前記入力の間に配置される、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換システムであって、
前記混合装置(60)は、エゼクタである、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換システムであって、
前記熱交換管束系は、前記第2管束(12)よりも作動流体下流側に配置された第3管束(13)を含む、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の熱交換システムであって、
過熱低減器、供給弁(21)の下流側の供給管(20)内に配置される、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の熱交換システムであって、
前記噴霧装置(40)は、前記ドレン管(30)に接続された噴霧ポンプ(41)から給水される、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の熱交換システムであって、
ベンソン型ボンベ(50)、前記熱交換管束系の前記第1管束(11)及び前記第2管束(12)の間の前記作動流体管内に配置される、
ことを特徴とする熱交換システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の熱交換システムの起動方法であって、
a)前記期待される超臨界熱水流体の温度を、前記熱水流体の飽和点まで低下させることと、
b)前記作動流体管内で蒸発が開始するように、前記作動流体の循環を低い圧力レベルで開始することと、
c)前記熱交換システムの全部分を温めるために、前記ヘッダー式ヒータへの前記期待される超臨界熱水流体の供給を、低い圧力レベル及び低い流量で開始することと、
d)前記期待される超臨界熱水流体内での飽和処理を支援するために、前記混合装置及び前記噴霧装置を起動させることと、
e)前記期待される超臨界熱水流体の温度を上昇させることと、
f)前記期待される超臨界熱水流体の圧力を上昇させることと、
g)前記蒸気タービンを起動させるために、前記熱水流体及び前記作動流体の流量を増加させることと、
を含む、
ことを特徴とする起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、地熱リザーバ由来の期待される超臨界熱水流体から蒸気タービン用の過熱作動流体を生成する熱交換システム、及び、請求項7に記載の、その熱交換システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱深部掘削プラント由来の超臨界熱水流体は、将来における、発電の潜在的代替源として期待されている。そのため、そのような代替源の経済性を調査するために、例えば、アイスランド深部掘削プロジェクト(IDDP:Iceland Deep Drilling Project)が、アイスランドの国際産業政府共同企業体によって実施されている。地殻内5kmまで掘削すると、430〜550℃の範囲の流体温度及び250barまでの流体圧力を達成することができる。一次試験及び分析では、このような坑井は、超臨界流体を生成するが、掘削深度が約2kmの従来の高温地熱井と比べて、桁違いに高い電力出力を有するだろうということが示されている。
【0003】
このような深部掘削井由来の流体は、シリカ濃度が高く、酸性度が約pH3であるため、蒸気タービンを駆動するための作動流体として不適切である。この課題を克服する解決策は、熱交換器を用いることである。熱交換器を用いると、第1回路のこのような汚濁流体から第2回路の清浄流体へ熱を伝達することができる。それゆえ、ヒータは、一般的に、シェルを備え、その吸込口は、期待される超臨界熱水流体を地熱リザーバからシェル内へ輸送する第1回路の供給管に通じており、吐出口は、凝縮熱水流体をシェルから処理器へ輸送するドレン管に通じている。第2回路の作動流体管内では、清浄給水が、蒸気タービンの復水器からシェル内部の熱交換管束系内へ循環し、清浄過熱蒸気が、熱交換管束系から蒸気タービンへ戻る。蒸気タービン自体は、発電機に接続されている。深部掘削井由来の酸性の熱水流体に関する問題として、シリカ濃度が高いと、熱交換管束系の外面で局部的に生成される、ヒータのシェル内の流体の第1復水中で、スケールが生成され、強酸性になるという問題がある。これにより、ヒータ及び熱交換システム全体の性能が低下し、結果として、全体の電力出力が低下することになる。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、前述の課題を回避する、熱交換システム及びその熱交換システムの起動方法を提供することである。
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の熱交換システム、さらに、請求項7に記載の熱交換システム起動方法により、達成される。
【0006】
噴霧装置は、シェル内部の熱交換管束系の第1管束に噴霧するために、ヒータシェル内に配置され、期待される超臨界熱水流体の湿り度を上昇させる。従って、シリカが溶液内に付着した状態を保つのに十分な湿気が、依然として、熱交換システムからヒータのシェル内に得られるので、熱水流体の第1復水が生成されない。混合装置は、熱交換管束の第1管束の出力と作動流体下流側の第2管束の入力の間に配置され、(作動流体から見て)第2管束の入力における熱水流体の温度が、飽和温度よりわずかに高くなるように制御される。従って、第2管束の周囲での熱水流体の凝縮を回避することができる。
【0007】
本発明による熱交換システムの起動方法は、
a)期待される超臨界熱水流体の温度を、熱水流体の飽和点まで低下させ、
b)作動流体管内で蒸発が開始するように、作動流体の循環を低い圧力レベルで開始し、
c)熱交換システムの全部分を温めるために、ヘッダー式ヒータへの期待される超臨界熱水流体の供給を、低い圧力レベル及び低い流量で開始し、
d)期待される超臨界熱水流体内での飽和処理を支援するために、混合装置及び噴霧装置を起動させ、
e)期待される超臨界熱水流体の温度を上昇させ、
f)期待される超臨界熱水流体の圧力を上昇させ、
g)蒸気タービンを起動させるために、熱水流体及び作動流体の流量を増加させる
工程を備える。
【0008】
従って、本発明は、ヒータ及び熱交換システム全体の性能低下を回避して、全体の電力出力を高いレベルに保つことができる、熱交換システム及びその起動方法を提供する。
【0009】
一実施形態において、エゼクタが混合装置として用いられる。そして、必要な温かい作動流体は増圧することができ、如何なる移動部も含まない簡易且つ小型な装置を用いて、混合点まで戻される。
【0010】
本発明の別の実施形態において、熱交換管束系は、第2管束よりも作動流体下流側に配置された、第3管束を備え、熱交換器表面の効率及び制御性を最適化する。
【0011】
別の実施形態において、過熱低減器が、供給弁の下流側の供給管内に配置される。これによって、流入する熱水流体が、熱交換器のシェル内に入る前に、温度が低下する効果を有する。
【0012】
好適な実施形態において、噴霧装置は、ドレン管に接続された噴霧ポンプから給水される。これによって、噴霧装置には外部水源が必要ないという利点がある。
【0013】
別の好適な実施形態において、ベンソン型ボンベが、熱交換管束系の第1管束及び第2管束の間の作動流体管内に配置される。これによって、作動流体吐出口温度がより良く制御されるという利点がある。また、シェル側温度を、第2管束の入口における飽和状態よりも確実に高くするうえでも、より効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下、本発明について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図面は本発明の実施形態の例を示しているにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
図1】熱交換システムの好適な実施形態の概略図である。
図2】ヒータのQ−T図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による熱交換システムの主要部分を図1に示す。図示の実施形態は、シェル10を含む縦型熱交換ヒータを備え、シェルの上部では、供給管20が、さらに図示はしない地熱リザーバからシェル10内へと、期待される超臨界熱水流体を輸送している。シェル10内では、地熱流体が、凝縮しながら上から下に流れ、凝縮された地熱流体はシェル10を離れ、ドレン管30を通って、さらに図示はしない処理器へ輸送される。供給管20及びドレン管30内の弁21、31は、この期待される超臨界熱水流体を深部掘削リザーバから処理器まで輸送している第1回路内の、熱水流体の圧力及び質量流量を制御するために、前もって確かめることができる。本実施形態では、3つの熱交換管束11、12、13が、熱交換管束系としてシェル10内に配置される。これら3つの熱交換管束を用いて、第1回路の期待される熱水流体から、さらに図示はしない蒸気タービン用の作動流体へ、熱を伝えることができる。それゆえ、これら3つの熱交換管束11、12、13は、シェル10内に直列に配置され、管70、80と共に熱交換システムの第2回路を形成する。その第2回路内で、給水は、蒸気タービンの図示しない復水器から、給水ポンプ71経由で熱交換管束系の熱交換管束11内へ循環する。熱交換管束系内で、給水は、囲まれた熱水流体から加熱され、過熱蒸気へ変換される。そして、過熱蒸気は第3熱交換管束13から蒸気タービンへ戻り、蒸気タービン内で膨張し、復水器内で給水に凝縮される。本発明によれば、熱交換システムは、熱交換管束系の第1管束11に噴霧するために、シェル10内に配置された噴霧装置40と、第2管束12の出力由来の作動流体を第1管束11の出力由来の作動流体と混合するために、第1管束11の出力と作動流体下流側の第2管束12の入力との間に配置された混合装置60とをさらに備える。噴霧装置40は、凝縮蒸気の湿り度を増加させ、その結果、第1復水を回避する。混合装置60は、温度を上昇させ、その結果、熱水流体が管束の外面で早期に凝縮するのを回避する。両手段によって、管束の外面でのスケール層形成が回避される。また、第1復水中に発生しうる極度の酸性は、束材に有害であるが、これも回避される。それゆえ、ヒータ及び熱交換システム全体の性能低下を回避することができ、また、全体の電力出力をより高いレベルに保つことができる。追加の噴霧ポンプ41、ベンソン型ボンベ50、及び、エゼクタとして構成される混合装置は、弁61と共に、熱交換システムの性能をさらに高めるよう設計することができる。
【0016】
図2は、前述の熱交換システムのQ−T図であり、流体温度T(℃)に対する交換熱Q(kW)がプロットされる。実線は、作動流体が温められる(破線)につれて、熱水流体が熱交換器内でどのように冷却されるか、を示す。示された図は、温度が435℃で圧力が125barの熱水流体状態(a)に基づく。熱交換システムの起動方法の実施形態案は、以下の工程を備える。
・期待される超臨界熱水流体の温度を、熱水流体の飽和点まで低下させる。これは、供給管20内の同調型(供給)弁21の下流側に配置された、別体の過熱低減器によって行うことができる。過熱低減器は、噴霧して温度を飽和点まで低下させるのに用いられる。
・作動流体管70、80内で蒸発が開始するように、作動流体の循環を低い圧力レベルで開始する(図2の区分I参照)。これは、給水ポンプ71を制御することによって行うことができ、さらに、ベンソン型ボンベ50により支援されうる。
・熱交換システムの全部分を温めるために、ヘッダー式ヒータへの期待される超臨界熱水流体の供給を、低い圧力及び低い流量レベルで開始する。これは、同調型(供給)弁21によって行うことができる。同時に、蒸気タービン自体は、バイパスモードに保つよう留意する。
・期待される超臨界熱水流体内での飽和処理を支援するために、混合装置60及び噴霧装置40を起動させる(同様に、図2の区分I)。シリカを溶液中に保つのに十分な湿気を得られるので、噴霧装置は、第1熱交換管束11の近傍で熱水流体にスケールが付着するのを回避する。環流制御弁61は、熱蒸気をエゼクタ60へ送り込み、第2熱交換管束12内の吸込口蒸気温度を混合させ、その結果、蒸気温度は、熱水流体温度の飽和状態よりもおおよそ5℃高くなり、熱交換管束12の外側での熱水流体の凝縮が回避される。
・期待される超臨界熱水流体の温度を、過熱低減器が閉じるまで上昇させる。そして、飽和点は区分IIから区分IIIまで移動するが、低圧では、スケール性は低い。
・シェル10内の期待される超臨界熱水流体の圧力を、全圧に到達するまで上昇させる。稼働中の混合装置及び噴霧装置によって、区分IIでの凝縮の回避及び区分Iでの適切な湿り度を、両区分間の移行中に達成することができる。
・蒸気タービンを起動させるために、熱水流体及び作動流体の流量を増加させる。それゆえ、作動流体の流量と同様に、熱水流体の流量も増加する。蒸気タービン起動段階中は、蒸気温度制御のために、線80(図示せず)内に追加の過熱低減器を必要としてもよい。蒸気タービンが起動すると、(供給)弁21は、負荷制御され、給水ポンプ71は、温度制御モードになる。(供給)弁21は、蒸気タービン負荷に十分な蒸気が発生するように、熱水流体の流量を制御することができる。
図1
図2