(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アノード溶液が、金属/空気バッテリの電解質貯蔵槽から供給されており;前記電流を流す工程中、前記カソード溶液の濃度が徐々に増加して濃水酸化アルカリ溶液が生成し;生成した該濃水酸化アルカリ溶液の少なくとも一部が金属/空気バッテリの電解質へ加えられる請求項1記載の方法。
膜電解セルを含む電解質再生装置であって、該膜電解セルが、間隙を介して相隔たるアノード及び酸素消費カソード、ならびに該アノード及び該カソードの間の空間に置かれたカチオン交換膜を有し、該カチオン交換膜がアノード室とカソード室とを定め、前記アノード室に使用済み電解質を充填して、式[M(OH)n]−p(式中、Mは多価金属カチオンであり、nは3以上の整数であり、pは1または2である)を有する水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含むアノード溶液を形成させる装置。
前記アノード室及び前記カソード室がそれぞれアノード液循環回路及びカソード液循環回路に接続され、該アノード液循環回路内に固体/液体分離手段が設置されるか、または該アノード液循環回路と流体連通させて固体/液体分離手段が設置される請求項8記載の装置。
水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含有する第1タンクが前記アノード液循環回路に接続され、水酸化アルカリを含有する第2タンクが前記カソード液循環回路に接続される請求項9記載の装置。
第1膜電解セルと第2膜電解セルとを含む電解質再生装置であって、各セルがアノード及び酸素消費カソード、ならびに該アノードと該カソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜を含み、該膜がアノード室とカソード室とを定め、2個の前記セルの前記アノード室が接続され、2個の前記セルの前記カソード室が接続され、第1のアノード室に使用済み電解質を充填して、式[M(OH)n]−p(式中、Mは多価金属カチオンであり、nは3以上の整数であり、pは1または2である)を有する水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含むアノード溶液を形成させる装置。
前記アノード室及び前記カソード室のうち少なくとも1個がそれぞれアノード液循環回路及び/またはカソード液循環回路に接続され、該アノード液循環回路内に固体/液体分離手段が設置されるか、または該アノード液循環回路と流体連通させて固体/液体分離手段が設置される請求項12記載の装置。
電気自動車のサービスステーションにおいて、該サービスステーションに到着した電気自動車の金属/空気バッテリの電解質を再生する方法であって、該方法が、前記自動車に搭載の前記金属/空気バッテリに接続された貯蔵槽から使用済み電解質を取り出すこと、請求項1〜7に記載の電気分解によって該電解質を再生すること、及び再生した電解質または新しい電解質を前記貯蔵槽に供給することを含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な記載においては、本発明の十分な理解を提供するため、多数の具体的詳細を記載する。しかしながら、本発明は、これらの特定の詳細なしで実施してもよいことは当業者によって理解されるであろう。他の例においては、本発明を不明瞭にしないため、周知の方法、手順及び要素は詳細に記載されていない。
【0025】
本発明の一態様は、電気分解プロセスを使用した使用済み電解質の再生である。
【0026】
アルカリ溶液は、電気分解に基づく方法を用いてアルミン酸塩水溶液から分離可能且つ回収可能であることが現在わかっている。本発明のこの態様に従って、酸素消費カソードを利用する膜電解セルを使用して、水酸化物錯アニオンの水溶液からアルカリ溶液(例えば、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム)を回収することができる。この水酸化物錯アニオンは、適度な強アルカリ環境に可溶な、例えば式[M(OH)
n]
−pの水酸化物錯アニオンであり、式中、Mは金属を示し、nは3以上の整数であり、pは1以上の整数(例えば、pは1または2)である。より詳細には、Mは、やや溶けにくいかまたは非水溶性の式M(OH)
m(m<n)の水酸化物を形成する金属を示す。したがって、本発明の方法を使用して、両性水酸化物のアニオンのアルカリ塩から水酸化アルカリ溶液を回収することができる。この両性水酸化物のアニオンとは例えば、アルミン酸イオンAl(OH)
4−、亜鉛酸イオンZn(OH)
42−、及び亜スズ酸イオンSn(OH)
3−[対応する両性水酸化物はそれぞれAl(OH)
3、Zn(OH)
2及びSn(OH)
2]等である。水酸化物錯アニオンは水和されていてもよく、前述の式においては単純化の目的で水分子が示されていないことが理解される必要がある。
【0027】
以下で報告される実験研究は、酸素消費カソードを備え、且つアノード液としてK[Al(OH)
4]溶液を用いて作動する膜電解セルに電流を流すと、アノードでは、水酸化物イオンの酸化によって単体の酸素が発生し、同時にアノード溶液からAl(OH)
3が沈殿し、カソードでは、酸素(例えば、大気中の酸素)が還元されて水酸化物イオンを生成する、ということを示している。カリウムイオンがカチオン交換膜を通ってアノード側からカソード側に連続的に移動すると、セルのカソード側では水酸化カリウム溶液が徐々に生成され、回収される。例えば5%以上の濃度等の十分高い濃度の水酸化カリウム溶液になったら、セルからカソード液を取り出して、金属/空気バッテリの貯蔵槽へ再循環させることができる。
【0028】
いくつかの用途においては、電気分解による水酸化カリウムの再生を実施可能にするため、カソードにおける水素発生を可能な限り抑制しなければならない。注目すべきことに、酸素消費カソードを使用する膜電解セルにおいては、K[Al(OH)
4]溶液の電気分解中、カソードでの単体の水素の発生は観測されない。比較のため述べると、1% KOH w/wから1リットルの30% KOH w/wが従来方法で生成すると、STP条件下では約83リットルの水素ガスがカソードで生成する。
【0029】
したがって、本発明の膜電解セルで生じる反応は以下のように要約することができる。アノードでは水酸化物イオンが酸化され、以下の反応に従って酸素が発生する。
【0030】
4OH
−(水溶液)→O
2(気体)+2H
2O+4e
【0031】
アノード液中では、水酸化アルミニウムが沈殿する。
【0032】
[Al(OH)
4]
−(水溶液)→Al(OH)
3(固体)+OH
−(水溶液)
【0033】
カソードでは、酸素(例えば大気中の酸素、あるいはアノード側から供給される単体の酸素)が消費され、水酸化物イオンが生成する。
【0034】
O
2(気体)+4e
−+2H
2O→4OH
−
【0035】
したがって、本発明の一態様は、空気消費カソードを備えた膜電解セルに電流を通すこと、アノード溶液中の水酸化アルカリ濃度を減少させること、及びカソード溶液中の水酸化アルカリ濃度を増加させることを含む方法であって、上記のセルの上記のアノード溶液は水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含有する。これらの濃度変化は、セルに電流を通した結果である。
【0036】
水酸化物錯アニオンは通常、式[M(OH)
n]
−pの水酸化物錯アニオンであり、すなわち[M(OH)
n]
−1または[M(OH)
n]
−2であり、式中、Mは多価金属カチオン(Al
+3またはZn
+2等)であり、nは3以上の整数である。
【0037】
一実施形態においては、本発明は、使用済み電解液を再生する方法を提供し、この方法は
アノードと;
酸素消費カソードと;
上記のアノードと上記のカソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜であって、この膜がアノード室とカソード室とを定める膜と
を含む膜電解セルを準備すること;
上記のアノード室に上記の使用済み電解質を充填してアノード溶液を形成させること;
上記のカソード室にアルカリ溶液を充填してカソード溶液を形成させること;及び
上記の膜電解セルに電流を流し、これにより上記のアノード溶液中の水酸化アルカリ濃度を減少させ、且つ上記のカソード溶液中の水酸化アルカリ濃度を増加させること
を含む。
【0038】
一実施形態においては、アノード溶液は、水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含む。一実施形態においては、水酸化物錯アニオンは式[M(OH)n]
−pを有し、式中、Mは多価金属カチオンであり、nは3以上の整数であり、pは1または2である。一実施形態においては、カソード液中の水酸化アルカリ濃度の増加により、カソード液中で濃水酸化アルカリ溶液が生じる。膜電解セルのカソード室で生成したこの濃水酸化アルカリ溶液は、金属/空気バッテリ用電解質として使用することができる。一実施形態においては、上記の膜電解セルのアノード側で発生する単体の酸素が、上記の酸素消費カソードの外面に供給される。一実施形態においては、アノード溶液は、金属/空気バッテリの電解質貯蔵槽から供給されており;カソード溶液の濃度が徐々に増加して濃水酸化アルカリ溶液が生成し;生成した濃水酸化アルカリ溶液の少なくとも一部が金属/空気バッテリの電解質へ加えられる。
【0039】
より詳細には、本発明の一態様は、
間隙を介して相隔たるアノードと酸素消費カソード、及びこれらの電極間で電極を隔て、それによりアノード側とカソード側とを定めるカチオン交換膜を含む膜電解セルを準備すること;
金属/空気バッテリの使用済み電解質を上記のアノード側に入れることであって、この電解質が、例えばK[Al(OH)
4]もしくはNa[Al(OH)
4]またはそれらの混合物等の、アルカリ塩形態での水酸化物錯アニオンの水溶液からなる、入れること;
水酸化アルカリ溶液を上記のカソード側に入れること;
上記のセルに電流を流すこと;
カソード側で濃水酸化アルカリ溶液を生成させること;ならびに
この濃水酸化アルカリ溶液を、金属/空気バッテリの電解質として使用すること
を含む方法である。
【0040】
一実施形態においては、カソード側で濃水酸化アルカリ溶液を生成させることは、カソード溶液中での水酸化アルカリ濃度を増加させることを意味する。
【0041】
本発明の他の態様は、膜電解セルを含む装置であり、この膜電解セルは、間隙を介して相隔たるアノードと酸素消費カソード、及びこのアノードとカソードの間の空間に置かれたカチオン交換膜を有し、このカチオン交換膜はアノード室とカソード室とを定める。
【0042】
適切な膜電解セル配置の模式図を
図3に示す。本発明において実施可能な膜電解セル(1)は、アノード室(5)及びカソード室(6)からなり、番号(2)及び(4)はそれぞれアノード及びカソードを示す。セルは、カチオン透過膜(3)によって分けられている。アノード室及びカソード室には、開口部(9)及び(10)が、例えばその上部区域に備えられている。しかしながら、これらの室の底部にはさらなる開口部を設置することができ、これにより反応生成物をセルから容易に排出することができる。膜電解セル(1)は、ガス拡散層(4A)を備えたカソードの外面に外気を供給することができる好適な手段を備えた外被(図示されていない)に囲われている。図
4に示される代替配置においては、開口部(9)からカソードの外面4Aに伸びる導管(12)を使用して、アノードで発生する酸素を上記の空気カソードへと運び、これによりカソードへの酸素の供給を強める。例えば、アノードで生成した酸素を貯蔵タンク(50)に貯蔵してもよく、アノード側から外面4Aへの酸素の流量は、例えばバルブ51及び52等の好適な手段によって制御することができる。したがって、貯蔵タンク(50)からカソード側へ運ばれる酸素の量は、生成の必要に応じて調節することができる。
【0043】
アノード(2)は一般に、例えば厚さ約0.05mm〜2.5mmの薄板の形態で準備する。アノード材料は、酸素発生過電圧が低いことが好ましく、好適なアノードは、ニッケル、銀、酸化銀、酸化ルテニウム、酸化ニッケルコバルト及び酸化白金等の金属、金属酸化物または合金で作製されてもよい。
【0044】
カソード(4)はガス拡散電極であり、その構造は当技術分野において周知である。好適な電極は、例えばElectric Fuel Corporation及びFuelcellearthから市販されている。空気電極は、
図1の金属/空気バッテリに関連して上記の一般項においても記載した。番号4A及び4Bはそれぞれ、外面、すなわち大気中の酸素に曝されたガス拡散層と、電解質に接触した内面を表す。例えば、好適な空気カソードは米国特許第8,142,938号において記載されている。このカソードでは、電流コントローラと電極担持体の両方の役割を果たす、編んで作られたニッケル網上に、銀/酸化ジルコニウム粒子混合物からなる酸素還元触媒が結合剤と共に載せられている。別の好適なカソード組立体は、孔の中につめた電極活性材料を有して本質的に平面である鑽孔した部材と、この鑽孔した部材の周囲を囲む電子伝導性金属枠とからなる。電極組立体の片面には疎水性膜をつける。電極活性材料は、米国特許第8,142,938号において記載されるように銀/酸化ジルコニウム粒子を含んでもよいが、酸素還元を促進することが可能な他の粒子も使用することができる(例えば、白金粒子、二酸化マンガン等)。膜電解セルの空気カソードとして使用するのに好適な電極組立体は、当技術分野で公知の印刷技術によって作製することができる。一作製法を以下で詳細に説明する。
【0045】
セル中にある膜(3)では、アルカリカチオン(例えばK
+、Na
+)が、アノード液からカソード液へと膜を通って移動することが可能でなくてはならない。本発明での使用に好適なカチオン交換膜(一般に、その表面には負に帯電した基が付いている)は、以下の特性を1つ以上満たすことが好ましい:良好な機械強度、カチオンに対する低いイオン抵抗性とアニオンに対する高いイオン抵抗性、及びアルカリ性環境での良好な化学安定性。多数の市販イオン交換膜の特性を見出すことができ、例えばJournal of Membrane Science 263 p. 1-29 (2005)で公開されている総説で見出すことができる。例えば、上記の参考文献の表3下部で言及されているNeosepta CMX(株式会社トクヤマ製、日本)を使用することができる。
【0046】
アノード室及びカソード室は、電気分解中に生じる温度変化を検出する、電解液中に入れられた温度計(7、8)を任意に備える。以下で報告する実験結果では、実験室スケールの小さなセルに電流を流すことによって、溶液温度のおだやかな増加が示されたことに留意が必要である。産業スケールでは、温度測定を利用して、この温度測定が作動範囲(用途の違いによって異なってよい)外の値を示したら加熱/冷却手段を発動させる自動フィードバック信号を発生させてもよい。一般に、15℃〜95℃の範囲内で温度を維持してもよい。
【0047】
作動の際は、使用済み電解液から得たK[Al(OH)
4]等の、水酸化物錯アニオン(例えば式[M(OH)
n]
−または[M(OH)
n]
2の水酸化物錯アニオン)のアルカリ塩の水溶液を、膜電解セル(1)のアノード側(5)へ開口部(9)から供給する。アルミニウム/空気バッテリから取り出した使用済み電解質は通常、金属水酸化物の沈殿に起因して幾分濁っていることに留意が必要である。濁った使用済み電解質は、本発明の電気分解に直接かけてもよく、あるいは例えば濾過や遠心分離等の従来の固体/液体分離技術を使用することによって使用済み電解質から透明水相を回収して、透明のK[Al(OH)
4]溶液を本発明のアノード液として使用する。通常、アノード液の濃度は20〜250グラムAl/リットル(例えば、1〜7M Al)である。本発明の電気分解中、金属水酸化物(例えばAl(OH)
3)が沈殿してアノード溶液中に堆積するため、以下で詳細に記載する連続作動形式に従って、水相から沈殿を分離してアノード側へ透明溶液を戻す、固体/液体分離手段を備えた循環回路を通してアノード溶液を流れさせることに留意が必要である。
【0048】
開始カソード溶液として、1wt%以上、好ましくは3wt%以上、例えば1%〜30wt%、より好ましくは5%〜20wt%の初期濃度(C
i)を有する水酸化アルカリ溶液を一般に使用する。開始カソード溶液の濃度が低くなると、アルミニウム/空気バッテリの電解質として使用するのに適するよう十分濃度の高い溶液に最終的になるためにセルへ供給しなければならないエネルギー量は大きくなる。一般に、本発明の電気分解は、カソード側での水酸化アルカリの最終濃度(C
f)が1%以上増加(C
f≧C
i+1)した後、終了してもよい。しかしながら、カソード液の濃度が10wt%以上、例えば10wt%〜40%となるまでプロセスを続けさせることが一般に好ましい。所望の濃度に達したらカソード側(6)セルからカソード溶液を取り出し、貯蔵槽(図示なし)へ移す。貯蔵されている濃水酸化アルカリ溶液の一部を新しい水で希釈し、次の生成サイクルの開始カソード溶液を形成させてもよいことに留意が必要である。
【0049】
本発明の方法に従って、0.01〜0.5A/cm
2の電流密度で0.5時間以上、実験室スケールの小さなセルを作動させてもよい。電気分解の間、終始一定の電流密度を印加してもよい。または作動を調節するために、すなわち電流密度を減少または増加させるために、測定電圧を使用して、1つ以上のフィードバック信号を電解セルに与えてもよい。
【0050】
前述においては、1回作動形式に関して本発明の方法を説明してきた。しかしながら、
図3及び
図4に示す膜電解セル(1)は、アルカリ溶液の準連続回収または連続回収を可能にする装置に組み込むことができ、そのアルカリ溶液は最終的に金属/空気バッテリの電解質貯蔵槽に加えることができる。
【0051】
したがって、本発明の別の態様は、
カチオン交換膜によって隔てられたアノード室とカソード室とを有する膜電解セルに電流を流すこと;
水酸化物錯アニオン{例えば、上記で規定された式[M(OH)
n]
−pの水酸化物錯アニオン}のアルカリ塩を含有するアノード溶液を、上記のアノード室を通して再循環させることであって、この溶液は金属/空気バッテリの電解質貯蔵槽から供給されている、再循環させること;
水酸化アルカリを含有するカソード溶液を、上記のカソード室を通して再循環させ、それによりこのカソード溶液の濃度を徐々に増加させること;
任意に、上記のアノード溶液中に沈殿する固体を分離すること(例えば、上記のアノード室から排出される流出アノード液流から上記の固体を分離し、本質的に透明で、固体を含まないアノード液流を上記のアノード室に戻すこと);及び
カソード液からの濃水酸化アルカリ溶液を金属/空気バッテリの電解質へ加えること
を含む方法である。
【0052】
本発明は、膜電解セルを含む電解質再生装置に関しており、この膜電解セルは、間隙を介して相隔たるアノードと酸素消費カソード、及びこのアノードとカソードの間の空間に置かれたカチオン交換膜を有し、このカチオン交換膜はアノード室とカソード室とを定める。
【0053】
一実施形態においては、アノード室とカソード室を接続して、アノード側からこのカソードの外面への酸素の移動を可能にする。
【0054】
一実施形態においては、水酸化物錯アニオンのアルカリ塩を含有する第1タンクをアノード液循環回路に接続し、水酸化アルカリを含有する第2タンクをカソード液循環回路に接続する。
【0055】
一実施形態においては、アノード室とカソード室をそれぞれアノード液循環回路とカソード液循環回路に接続し、アノード液循環回路内に固体/液体分離手段を設置するか、またはアノード液循環回路と流体連通させて固体/液体分離手段を設置する。
【0056】
例えば、本発明の電解質再生装置は、アルカリ電解質を有する金属/空気バッテリを動力源とする電気自動車へのサービスを提供する、電気自動車バッテリ整備センターに設置してもよい。この整備センターに到着したら、少なくとも一部の使用済みアルカリ電解質を電気自動車から排出させ、本発明の装置による再生に付してもよい。
【0057】
したがって、別の態様においては、本発明は、電気自動車のサービスステーションにおいて、このサービスステーションに到着した電気自動車の金属/空気バッテリの電解質を再生する方法を提供し、この方法は、上記の自動車に搭載の金属/空気バッテリに接続された貯蔵槽から使用済み電解質を取り出すこと、この電解質を再生すること、及び再生した電解質または新しい電解質を上記の貯蔵槽に供給することを含む。再生は、上記の電気分解に基づく方法によって行う。
【0058】
一実施形態においては、再生方法は
アノードと;
酸素消費カソードと;
上記のアノードと上記のカソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜であって、この膜がアノード室とカソード室とを定める膜と
を含む膜電解セルを準備すること;
上記のアノード室に上記の使用済み電解質を充填してアノード溶液を形成させること;
上記のカソード室にアルカリ溶液を充填してカソード溶液を形成させること;及び
上記の膜電解セルに電流を流し、これにより上記のアノード溶液中の水酸化アルカリ濃度を減少させ、且つ上記のカソード溶液中の水酸化アルカリ濃度を増加させること
を含む。
【0059】
図5は、電気自動車バッテリ整備センターに設置することができる装置の模式図である。この装置は、膜電解セル(1)及び上記のセル構成要素(2)〜(8)に加え、タンク(16)及び(17)に保持されているアノード溶液及びカソード溶液をそれぞれ、膜電解セル(1)のアノード側(5)及びカソード側(6)を通して再循環させることが可能なアノード液循環経路及びカソード液循環経路(42、43)も含む。
【0060】
金属/空気バッテリ(図示なし)から取り出した使用済み電解質は、貯蔵タンク(27)で保持されている。貯蔵タンク(27)は供給回路(44)によってタンク(16)に接続しており、使用済み電解質は、例えばポンプ(28)等の好適な手段で駆動され、供給回路(44)を通ってタンク(16)に流される。アノード液循環経路(42)には、ポンプ(14)、またはタンク(16)に保持されたアノード液をアノード室(5)へ供給する他の駆動手段が備えられている。アノード液は、アノード室(5)の底部より取り出され、回路(42)、及び濾過装置(32)等の固体/液体分離手段を通ってタンク(16)に直接戻される。アノード室での金属水酸化物M(OH)
m(例えばAl(OH)
3)の沈殿に起因して、セル(1)から取り出されたアノード液は水相と固相からなっており、したがって本質的に透明な溶液がタンク(16)に戻されてもよいように固体M(OH)
m(例えばAl(OH)
3)を分離するため、セル(1)からタンク(16)へアノード液を戻すのに使用される回路(42)には、例えば濾過装置(32)等の分離器等の固体/液体分離手段が備えられていることが好ましいことに留意が必要である。タンク(16)底部の出口開口部は、容器(29)に接続された導管を通してアノード液流を廃棄するのに使用される。カリウムレベルが低すぎるか、検出された不純物レベルが既定の最大レベルを超えているか、または装置での連続循環に対して固体含有量が高すぎると判断されたら、任意のポンプ(18)を作動させてタンク(16)の内容物を廃棄する。既に前述のとおり、アノードで発生する酸素は、任意の気体出口(26)を通して大気に放出させてもよく、または好適な供給システム(図示なし)によって、(例えば、一時的な保管後に)カソードへ接続して流してもよい。
【0061】
タンク(16)は、アノード溶液の温度を調節する冷却/加熱手段を備えていてもよい。例えば、アノード室(5)に入れられた熱電対(7)によって生成される温度信号に応じて、冷却/加熱(22)手段を作動させてもよい。タンク(16)に保持されたアノード溶液の様々な特性、例えば伝導度、pHまたは粘度等を、pHメータ等の好適な装置(一括して番号24で示す)によって連続的または断続的に測定してもよい。また、例えばポンプ(28)によって駆動される使用済み電解質の流速、ポンプ(18)によるアノード液タンクの排出、及び水を用いた循環溶液の希釈といったプロセス変数は、上記の測定に応じて調節してもよい。
【0062】
次にカソード液循環経路(43)について述べると、カソード室(6)に入る流入カソード液流、及びカソード室(6)から出る流出カソード液流はポンプ(15)によって駆動されており、カソード溶液はタンク(17)に保持される。タンク(17)中の水酸化アルカリ溶液濃度は時間経過と共に増加し、例えば5%以上、好ましくは10〜40wt%、例えば20〜30wt%の所定の濃度に達したら、バルブ/ポンプ(33)を空けて、例えば重力または駆動手段によってアルカリ溶液を貯蔵タンク(19)に流し、この貯蔵タンク(19)から電気自動車(図示なし)に搭載の金属/空気バッテリの貯蔵槽に供給してもよい。要素(23)及び(25)は、それぞれ要素(22)及び(24)と同様に機能する。
【0063】
水は、水貯蔵タンク(21)からタンク(16)及び/または(17)へ、それぞれバルブ及びポンプ(20、30)によって制御される2つの異なる供給回路を通って供給される。例えば、所望容量の濃水酸化アルカリ溶液をタンク(17)からタンク(19)に移したら、バルブ(33)を閉じ、ポンプ及びバルブ(20)を開け、貯蔵タンク(21)に保持される新しい水によってタンク(17)に残るアルカリ溶液を希釈し、本発明の電気分解の開始カソード溶液として使用するのに好適な希水酸化アルカリ溶液をタンク(17)で形成させる。
【0064】
前述のとおり、
図5に示す装置は、金属/空気バッテリの電解質を本体外で再生する作業を行う電気自動車バッテリ整備センターに設置してもよい。電気自動車が到着したら、自動車に搭載の金属/空気バッテリから電解質を取り出してタンク(27)に入れる(あるいは、タンク(16)に直接入れる)。貯蔵タンク(19)で回収した再生電解質は、自動車のバッテリにつながった貯蔵槽へ供給する。
【0065】
しかしながら、本発明の別の変形体では、電気自動車に動力を供給する金属/空気バッテリシステムに本発明の装置を組み入れることにより、本体での電解質再生を可能にする。したがって、本発明の変形体は、
電解質循環用貯蔵槽を備えた金属/空気バッテリと;
膜電解セルを含む電解質再生装置であって、この膜電解セルは、間隙を介して相隔たるアノードと酸素消費カソード、及びこのアノードとカソードの間の空間に置かれたカチオン交換膜を有し、このカチオン交換膜はアノード室とカソード室とを定め、このアノード室とカソード室はそれぞれアノード液循環回路及びカソード液循環回路に接続されている電解質再生装置;
とを含む電気化学エネルギー生成装置であり、
上記のアノード液循環は、固体/液体分離手段を任意に備えており、上記の膜電解セルの少なくとも1室は、上記の金属/空気バッテリの電解質貯蔵槽と流体連通している。
【0066】
図6は、上記した膜電解セルに基づく電解質再生装置につなげられた金属/空気バッテリ(41)を含む電力発生装置を示す。金属/空気バッテリ及びその電解質貯蔵槽は、それぞれ番号(41)及び(70)で示されている。番号(41)は、当技術分野において周知の配置を有する電池スタックを示している(例えば、米国特許第4,908,281号を参照のこと)。電解質の再循環経路も示されており、この経路は、貯蔵槽(70)から電池スタックを通して再度貯蔵槽へ電解質を駆動するポンプ(36)を有する。
【0067】
使用済み電解質は、電解質貯蔵槽(70)から、導管またはポンプ(35)を通ってアノード液タンク(16)へと流される。
図6に示す装置の作動は、
図5の装置の作動と同様である。本発明に従って作製され、タンク(19)で回収された再生水酸化アルカリ溶液は、ポンプまたは他の流動手段(60)を使用して、回路または管を通って貯蔵槽(70)へ流される。
【0068】
図6に示す電気化学エネルギー生成装置は、電気自動車内に組み入れてもよい。電解質再生装置は電気を動力として作動するので、金属/空気バッテリの電解質の再生は、好都合な場所にある任意の休憩所、特に自動車所有者の家で行うことができる。
【0069】
本発明の別の態様は、金属/空気バッテリ(及び任意に他の動力源、例えばリチウムバッテリ)によって動力供給される電気自動車において、上記の金属/空気バッテリの再循環している電解質を保持する貯蔵槽が、電気を動力源とする電解質再生装置、特に膜電解セルを含む上記の装置と流体連通していることを特徴とする電気自動車である。
【0070】
本発明の別の態様は、使用済み電解液を再生する方法であり、この方法は
第1膜電解セルと第2膜電解セルとを準備することであって、各セルが
アノードと;
酸素消費カソードと;
上記のアノードと上記のカソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜であって、この膜がアノード室とカソード室とを定める膜と
を含む、準備すること;
上記の第1セルの上記のアノード室に上記の使用済み電解質を充填して、第1アノード溶液を形成させること;
上記の第1セルの上記のカソード室にアルカリ溶液を充填して、第1カソード溶液を形成させること;
上記の第1膜電解セルに電流を流し、これにより上記の第1アノード溶液中の水酸化アルカリ濃度を減少させ、且つ上記の第1カソード溶液中の水酸化アルカリ濃度を増加させること;
上記の第2セルの上記のアノード室に上記の第1アノード溶液を充填して、第2アノード溶液を形成させること;
上記の第2セルの上記のカソード室にアルカリカソード溶液を充填して、第2カソード溶液を形成させること;
上記の第2膜電解セルに電流を流し、これにより上記の第2アノード溶液中の水酸化アルカリ濃度を減少させ、且つ上記の第2カソード溶液中の水酸化アルカリ濃度を増加させること
を含む。
【0071】
一実施形態においては、アルカリ溶液はKOHまたはNaOHを含む。一実施形態においては、電気分解1の前に第1セルに充填されたアルカリ溶液のKOH/NaOH濃度は、電気分解2の前に第2セルに充填されたアルカリ溶液のKOH/NaOH濃度よりも高い。
【0072】
一実施形態においては、第1セルに電流を流す工程後、第1カソード溶液を再生電解質貯蔵槽へ移す。一実施形態においては、第2セルに電流を流す工程後、第2カソード溶液を第1電解セルのカソード室へ移す。したがって、セル2での第2電気分解プロセス後、形成したカソード液を電解セル1のカソード室へ移し、カソード溶液1を形成させる。したがって、続いて電気分解1の工程を行う場合カソード溶液1を準備する必要はなく、電気分解2のプロセスの毎回の終了時に、カソード液2から常に取り出すことができる。
【0073】
一実施形態においては、上記の方法は、2つの電解セルの使用を含む。この方法は、アルミン酸アルカリ溶液から例えばKOHを分離する効率を高めるように設計した、膜電解セルで行う2工程電気分解プロセスを含む。1個の膜セルを含む単一の電気分解プロセスの間、カソード液中のKOH濃度は徐々に増加し、アノード液中のKOH濃度は減少する。いくらかの時間電気分解をした後、濃度勾配(カソード液中での高濃度とアノード液中での低濃度)によって、アノード液からカソード液へのK
+イオン透過効率が減少する。この効果を克服するため、2個の膜電解セルを含む方法を使用する。本態様に従って、一実施形態においては、バッテリからの使用済み電解質を電解セル1のアノード室にアノード溶液として入れる。使用済み電解質のKOH濃度は、一実施形態においては約30%である。カソード液としては、約15%のKOH溶液を入れる。セルに電流を流すことによって電気分解プロセスを開始する。電気分解中、K
+イオンはアノード液からカソード液へとセル膜を通って移動する。いくらかの時間電気分解をした後、アノード液中のKOH濃度は約30%から約15%へと減少する。同時に、カソード液中のKOH濃度は約15%から約30%へと増加する。この時点で、カソード溶液を再生電解質として使用することができ、バッテリへと移すことができる。アノード液(この時点では約15%のKOH濃度)は、第2電解セルのアノード室へ移し、第2セルのアノード液を形成させる。第2セルのカソード液には、数%の濃度でKOHを含む溶液(例えば2〜3% KOHまたは3〜5% KOH)を入れる。この低めのKOH濃度は、電解中、アノード液からカソード液へのK
+イオン透過効率を高める。次に、セルに電流を流すことによって第2セルでの電気分解を開始する。電流を供給した結果、K
+イオンはアノード室からカソード室へと膜を通って移動する。したがって、カソード液中のKOH濃度は増加し(例えば1〜5%から約15%へ)、一方、カソード液中のKOH濃度は減少する(例えば15%から約1〜5%へ)。このプロセスの工程により、より多くのKOHを使用済み電解液から抽出することができる。この第2セル電気分解で得られたアノード溶液は廃棄することができる。この第2セル電気分解で得られたカソード溶液は、この時点で電気分解1プロセスに望ましいKOH濃度(〜15%)を有するので、電解セル1のカソード室へ移す。2個の電解セルでの2つの電気分解プロセスは、様々な時間にわたり、順次、または並行して行うことができる。各電気分解1プロセスの完了後、この時点で再生電解質を含む濃KOHカソード溶液1をバッテリへ移すか、バッテリの一部である電解質貯蔵槽へ移すか、または他の任意の電解質貯蔵槽へ移す。第2電気分解プロセス(電気分解2)で使用するカソード液は、一実施形態においては、KOHと水から作製することができる。別の実施形態においては、カソード液2として使用するカソード液は、KOHを含む固体/湿った固体の洗浄水であることができる。
【0074】
一実施形態においては、1個の電解セルのシステムで使用される特徴は、2個のセルのシステムでも使用されてよい。
【0075】
一実施形態においては、2工程電気分解プロセスを1個の電解セルで行う。本態様に従って、一実施形態においては、セルのアノード溶液として使用済み電解質を入れる。水酸化アルカリ溶液をカソード液セルに入れる。セルに電流を流すことによって第1電気分解工程を行う。電気分解によって、カソード液中の水酸化アルカリ濃度が増加する。この第1電気分解工程中、アノード液中の水酸化アルカリ濃度は減少する。この第1電気分解工程後、セルからカソード液を取り出し、新しいカソード溶液をカソード室に入れる。第1電気分解工程から得たアノード溶液は、アノード室に残す。
【0076】
セルに電流を流すことによって第2電気分解工程を行う。電気分解によって、カソード液中の水酸化アルカリ濃度が増加する。この第2電気分解工程中、アノード液中の水酸化アルカリ濃度はさらに減少する。一実施形態においては、この第2電気分解工程後、セルからカソード液を取り出し、新しいカソード溶液をカソード室に入れる。第2電気分解工程から得られたアノード溶液は廃棄してもよい。
【0077】
別の実施形態においては、電気分解プロセスは、連続作動する多数の電解セルの「列」で行う。この多数の電解セルは、列にあるセルのアノード部分を通る液体流(アノード液流)と、列にあるセルのカソード部分を通る液体流(カソード液流)が逆方向に流れるように相互接続している。このようなアノード液とカソード液の構成を提供するため、列にあるセル番号1のアノード室の出口を、セル番号2のアノード室の入り口に接続し、その他同じように接続し;列にある最後のセルのカソード室の出口を、最後の手前にあるセルのカソード室の入り口に接続し、その他同じように接続する。使用済み電解質を、セル番号1のアノード室の入り口に供給し、低濃度のアルカリ溶液を、最後のセルのカソード室の入り口に供給する。再生した電解質は、セル番号1のカソード室の出口から排出され、アルミニウム化合物を含有する低濃度アルカリ溶液は、最後のセルの出口から廃棄される。
【0078】
一実施形態においては、本発明は使用済み電解液を再生する装置を提供し、この装置は
第1膜電解セルと第2膜電解セルとを含み、各セルが
アノードと;
酸素消費カソードと;
上記のアノードと上記のカソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜であって、この膜がアノード室とカソード室とを定める膜と
を含み;
使用済み電解質が第1セルのアノード室に充填されて第1アノード溶液を形成し、アルカリ溶液が第1セルのカソード室に充填されて第1カソード溶液を形成し;且つ
第1セルでの電気分解後に、第1セルからのアノード液が第2セルのアノード室に移されるように、第2セルのアノード室が第1セルのアノード室に接続され;KOHを含むカソード溶液が第2セルのカソード室に充填されて第2カソード溶液を形成する。
【0079】
一実施形態においては、本発明は、第1膜電解セルと第2膜電解セルとを含む電解質再生装置を提供し、各セルはアノード及び酸素消費カソード、ならびにこのアノードとカソードとの間の空間に置かれたカチオン交換膜を含み、この膜はアノード室とカソード室とを定め、上記の2個のセルのアノード室は接続され、上記の2個のセルのカソード室は接続されている。
【0080】
一実施形態においては、アノード室及びカソード室のうち少なくとも1つがそれぞれアノード液循環回路及び/またはカソード液循環回路に接続され、上記のアノード液循環回路内に固体/液体分離手段が設置されるか、またはアノード液循環回路と流体連通させて固体/液体分離手段が設置される。
【0081】
一実施形態においては、装置は、再生電解質貯蔵槽をさらに含む。一実施形態においては、電解質を再生する装置(電解質再生装置)の作動中、第1セルに電流を流す。第1セルに電流を流した後、第1カソード溶液を再生電解質貯蔵槽へ移す。一実施形態においては、第2セルに電流を流す工程後、第2カソード溶液を第1電解セルの第1カソード室へ移す。したがって、セル2での第2電気分解プロセス後、形成したカソード液を電解セル1のカソード室へ移し、カソード溶液1を形成させる。したがって、続いてセル1で電気分解工程を行う場合、カソード溶液1を準備する必要はなく、電気分解2のプロセスの毎回の終了時に、カソード液2から常に取り出すことができる。
【0082】
一実施形態においては、第1アノード室と第2アノード室とを接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第1カソード室と第2カソード室とを接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第1カソード室と再生電解質貯蔵槽とを接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第1カソード室と金属−空気バッテリの電解質貯蔵槽とを接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第1カソード室及び/または第2カソード室をアルカリ溶液貯蔵槽に接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第2アノード室を廃棄物容器に接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、第1アノード室を金属−空気バッテリの電解質貯蔵槽に接続する導管を装置が含む。一実施形態においては、装置の様々な容器/貯蔵槽の間で溶液を移動させるためにポンプを使用する。一実施形態においては、濾過装置または他の分離手段を使用して、本発明の装置で使用する溶液から固体を分離するか、または濾別する。
【0083】
一実施形態においては、上記の装置は2個の電解セルを含む。この装置は、KOHとAlOH
3の間での分離効率を高めるように設計した、膜電解セルで行う2工程電気分解プロセスを可能にする。
【0084】
一実施形態においては、2個よりも多い電解セルを本発明のシステムで使用する。本態様に従って、一実施形態においては、各電解セルのアノード液中及び/またはカソード液中のKOH濃度は他のセルでのKOH濃度とは異なるので、各セルのカソード液でのKOH再生効率は増加する。一実施形態においては、本発明の電解質再生システムは、3個または4個または5個または6〜10個の電解セルを含む。本態様にしたがって、一実施形態においては、3個の電解セルを含むシステムを使用する。開始時のカソード液中のKOH濃度は、第1セルで高い値であり、第2セルで中間の値であり、第3セルで低い値である。高いKOH濃度を有する使用済み電解質を第1電解セルのアノード室に入れ、アノード液1を形成させる。電気分解を行い、アノード液(この時点でKOHは低くなっている)を、第2カソード溶液に対する第2電気分解プロセス用に第2セルに移す。第2電気分解プロセス後、アノード液を、第3カソード溶液に対する第3電気分解プロセス用に第3セルに移す。このような縦続プロセスを、例えば4〜5番等のより大きな番号の電解セルへと延長することができる。1個よりも多いセルを含むこのような縦続プロセスは、一実施形態においては電解質再生の効率を増加させる。これは、アノード液室とカソード液室の間の濃度勾配がより好適である結果、膜を通るK
+イオンの透過が促進されるためである。
【0085】
一実施形態においては、電気分解1、電気分解2またはそれらの組合せのプロセスは、約10時間または約15時間または約20時間行なった。一実施形態においては、電気分解プロセスの時間は1時間〜20時間、5時間〜15時間、1時間〜50時間、1時間〜100時間、0.1時間〜100時間、1分〜5時間、10時間〜30時間、1分〜1時間、2時間〜25時間、10時間〜75時間の範囲であった。一実施形態においては、電気分解プロセスの時間は、膜電解セルに電流が流れた時間、またはセルに電流を印加したときセルに強制的に電流が流された時間である。一実施形態においては、セルに流される電流は電気電流であり、セル内でのプロセスは、化学種が酸化/還元反応を経る電気化学プロセスであるので電気電流伝導が可能となる。
【0086】
一実施形態においては、電気分解1、電気分解2またはそれらの組合せのプロセスは室温で行なった。一実施形態においては、高温で、または室温よりも低温でプロセスを行なった。一実施形態においては、始めは室温でプロセスを行なったが、電気分解中、自己加熱(例えば電流通過/化学反応及び電気化学反応等の結果、セル及び/または溶液を加熱)のため温度が上昇した。一実施形態においては、室温で電気分解を開始し、プロセス中、温度が32℃に上昇した。一実施形態においては、室温で電気分解を開始し、30℃〜40℃、25℃〜55℃、20℃〜30℃、25℃〜65℃、25℃〜80℃の温度範囲に上昇する。一実施形態においては、5℃〜10℃、10℃〜20℃、15℃〜25℃、20℃〜30℃、30℃〜40℃、40℃〜50℃、50℃〜60℃、10℃〜80℃、60℃〜80℃、80℃〜100℃の温度範囲で電気分解プロセスを開始した。一実施形態においては、電気分解は温度制御して行い、所望の範囲内で温度を保つ。本態様にしたがって、一実施形態においては、冷却/加熱装置を使用して所望の温度を維持する。温度制御は、例えば通気や電解セルの周りに冷却水を流すこと等、当技術分野で公知の任意の方法によって行う。
【0087】
一実施形態においては、電気分解1、電気分解2またはそれらの組合せのプロセスは、100mA/cm
2の電流密度で行なった。一実施形態においては、50mA/cm
2の電流密度でプロセスを行なった。一実施形態においては、本発明の電気分解プロセスでの電流密度の範囲は、10mA/cm
2〜50mA/cm
2、50mA/cm
2〜100mA/cm
2、10mA/cm
2〜500mA/cm
2、25mA/cm
2〜75mA/cm
2、50mA/cm
2〜250mA/cm
2、50mA/cm
2〜150mA/cm
2、150〜300mA/cm
2、300〜400mA/cm
2、400〜600mA/cm
2であった。一実施形態においては、電流密度は、他の実験パラメータと適合する任意の値であることができ、所望の電気分解結果を生じる任意の値であることができる。
【0088】
一実施形態においては、電気分解プロセスで使用するカソード液、アノード液またはそれらの組合せの容量は、100cc、110ccまたは120ccである。一実施形態においては、電気分解プロセスで使用するカソード液、アノード液またはそれらの組合せの容量は、100cc〜110cc、100cc〜120cc、100cc〜200cc、50cc〜150cc、20cc〜200cc、75cc〜125cc、10cc〜100cc、100cc〜1000cc、100cc〜500cc、500cc〜1000ccの範囲である。一実施形態においては、1個の金属−空気バッテリからの使用済み電解質を電気分解プロセスに使用する。1個のバッテリから1処理単位以上の使用済み電解質を電気分解プロセスに使用してもよい。一実施形態においては、1個よりも多い金属−空気バッテリからの使用済み電解質を電気分解再生プロセスに使用する。1個以上のバッテリからの数処理単位の使用済み電解質を貯蔵槽に貯めてもよく、必要であればこれを、特定の使用済み電解質の容量で、特定の回数、電気分解プロセスにかけてもよい。一実施形態においては、電気分解プロセスで使用するカソード液、アノード液またはそれらの組合せの容量は、必要な任意の容量であることができる。一実施形態においては、電気分解プロセスに使用する溶液の質量は、グラム、キログラムまたはトンの範囲であることができる。カソード液、アノード液またはそれらの組合せに使用する任意の範囲の溶液質量または溶液容量を、本発明のプロセスで使用可能である。
【0089】
一実施形態においては、電気分解前、アノード液のKOH初期濃度は約30%であり、電気分解プロセス後、約15%の最終濃度に減少する。一実施形態においては、アノード液の初期濃度(電気分解前)とアノード液の最終濃度(電気分解後)は、25%〜30%(初期)と15%〜20%(最終)、25%〜30%(初期)と10%〜20%(最終)、25%〜35%(初期)と10%〜20%(最終)、25%〜45%(初期)と10%〜25%(最終)、20%〜40%(初期)と5%〜20%(最終)、15%〜20%(初期)と5%〜10%(最終)、15%〜50%(初期)と5%〜25%(最終)、15%〜25%(初期)と5%〜15%(最終)、10%〜50%(初期)と1%〜30%(最終)、10%〜20%(初期)と1%〜5%(最終)、5%〜15%(初期)と1%〜50%(最終)の範囲である。
【0090】
一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、カソード液1中のKOH初期濃度は、カソード液2中のKOH初期濃度よりも高い。一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、アノード液1中のKOH初期濃度は、アノード液2中のKOH初期濃度よりも高い。
【0091】
一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、カソード液1中のKOH最終濃度は、カソード液2中のKOH最終濃度よりも高い。一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、アノード液1中のKOH最終濃度は、アノード液2中のKOH最終濃度よりも高い。
【0092】
一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、カソード液1中のKOH最終濃度は、カソード液1中のKOH初期濃度よりも高い。一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、アノード液1中のKOH最終濃度は、アノード液1中のKOH初期濃度よりも低い。
【0093】
一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、カソード液2中のKOH最終濃度は、カソード液2中のKOH初期濃度よりも高い。一実施形態においては、2個のセルの電気分解システム及び方法では、アノード液2中のKOH最終濃度は、アノード液2中のKOH初期濃度よりも低い。
【0094】
一実施形態においては、「初期濃度」は、電気分解前の溶液の濃度を意味し、「最終濃度」は、電気分解後の溶液の濃度を意味する。
【0095】
一実施形態においては、電気分解前、カソード液のKOH初期濃度は約15%であり、電気分解プロセス後、約30%の最終濃度に増加する。一実施形態においては、カソード液の初期濃度(電気分解前)とカソード液の最終濃度(電気分解後)は、15%〜20%(初期)と25%〜30%(最終)、10%〜20%(初期)と25%〜30%(最終)、10%〜20%(初期)と25%〜35%(最終)、10%〜25%(初期)と25%〜45%(最終)、5%〜20%(初期)と20%〜40%(最終)、5%〜10%(初期)と15%〜20%(最終)、5%〜25%(初期)と15%〜50%(最終)、5%〜15%(初期)と15%〜25%(最終)、1%〜30%(初期)と10%〜50%(最終)、1%〜5%(初期)と10%〜20%(最終)、1%〜50%(初期)と5%〜15%(最終)の範囲である。所望の濃度を有する初期アノード溶液及び初期カソード溶液を入れることにより、及び電気分解パラメータを調節することにより、他のKOH濃度範囲が可能である。一実施形態においては、濃度のパーセントは重量パーセントである。
【0097】
「本体上」は、言及される装置またはシステムが、金属空気バッテリ(例えば電気自動車上のもの)の「上に(on)」もしくは「中に(in)」もしくは「中に(within)」もしくは「上に(on top)」または金属空気バッテリと接触して、置かれている(placed)か、または置かれている(located)か、または載せられていることを意味する。
【0098】
本体外は、言及される装置またはシステムが、金属空気バッテリの外に、または金属空気バッテリから離れて置かれている(placed)か、または置かれている(located)ことを意味する。本体外は、金属空気バッテリ(例えば電気自動車上のもの)の「上に(on)」もしくは「中に(in)」もしくは「中に(within)」もしくは「上に(on top)」ないことを意味するか、または金属空気バッテリと接触していないことを意味する。一実施形態においては、本体外の場所は、給油所、サービスステーション、道路脇の停車場、車庫、駐車場、家、庭、倉庫、自動車ケアセンター等である。
【0099】
アルカリまたはアルカリ溶液は、塩基性溶液である。アルカリ溶液は、7.0よりも大きいpH値を有する溶液である。アルカリ溶液は、塩基を含む溶液である。アルカリ溶液の例は、KOHまたはNaOHが水に溶解した溶液である。いくつかの実施形態においては、苛性溶液は、強塩基性溶液または濃アルカリ溶液である。いくつかの実施形態においては、アルカリ溶液は、アルカリ金属イオンを含む溶液である。
【0100】
一実施形態においては、本発明の方法は、「カソード溶液中で濃水酸化アルカリ溶液を生成すること」の工程を含む。一実施形態においては、「濃水酸化アルカリ溶液」は、金属−空気バッテリで電解質として溶液を使用するのに適したレベルまで濃縮されたアルカリ溶液(例えば、KOH水溶液またはNaOH水溶液)を指す。一実施形態においては、「濃水酸化アルカリ溶液」という用語は、電気分解プロセス前の濃度と比較して、電気分解プロセス後により濃縮されたアルカリ溶液(例えば、KOHまたはNaOH溶液)を指す。この態様にしたがって、一実施形態においては、「濃縮された」とは、電気分解処理前の溶液と比較して、より高い濃度を有することを意味する。濃縮された溶液は、例えば1%〜50% KOHまたはNaOH(重量パーセント)の任意の値をとってもよい。濃縮された溶液は、一実施形態において、20%〜40% KOHまたはNaOH溶液である。
【0101】
本発明の実施形態においては、KOHがNaOHで置き換わってもよい。したがって、KOHが記載されている本発明の実施形態には、KOHの代わりにNaOHの使用が適用でき、またはKOHと組み合わせたNaOHの使用が適用できる。
【0102】
一実施形態においては、「アルミン酸塩のKOH」は、Al(OH)
3に組み入れられてK
+[Al(OH)
4]
−(K[Al(OH)
4]とも表される)を形成するKOHを指す。アルミン酸塩のKOHは以下の反応で生じる。
【0103】
KOH+Al(OH)
3→K[Al(OH)
4]
また、以下のようにも記載される。
【0104】
KOH+Al(OH)
3→K
+[Al(OH)
4]
−
【0105】
「再生電解質貯蔵槽」は、再生した電解質を保持する貯蔵槽である。再生電解質槽は、金属−空気バッテリに接続することができる。再生電解質貯蔵槽は、電気自動車上に置くか、またはサービスステーションもしくは他の任意の場所に置くことができる。
【0106】
電解質再生装置は、電解質の再生に使用する装置またはシステムである。一実施形態においては、電解質再生装置またはシステムを使用して、もう使用することができない使用済み電解質から、その後に使用することができる再生電解質を調製する。一実施形態においては、電解質再生装置またはシステムを電解質の再生利用に使用する。
【0107】
「Ah/cc値」は電解質利用率の値であり、バッテリにより生成された全電気量を、開始時の新しい電解質の容量で割ることにより求められる。例えば、5Lの新しい電解質を用いてバッテリを開始させ1000Ahの電気が生成した場合、電解質利用率は以下のとおりである。
1000Ah/5000cc=0.2Ah/cc
【0108】
電解質利用率は、電解質に溶解したアルミニウムの量に大まかに比例している。0.2Ah/ccの利用率は、約75〜85g/Lのアルミニウムが溶解していることを意味する。
【0109】
膜電解セルに電流を流すことは、電解セルを使用して電気分解を行うことを意味する。例えば、第1膜電解セルに電流を流すことは、「電気分解1」を行うことを意味する。膜電解セルに電流を流すことは、電解セルのカソード及び/またはアノードの近くに存在する1種以上の化学物質の電気分解を行うことを意味する。
【0110】
一実施形態においては、貯蔵槽は、液体、溶液、固体、懸濁液、気体またはそれらの組合せを保持する容器である。一実施形態においては、貯蔵槽は容器(container)、タンク、容器(vessel)またはビンを含む。
【0111】
一実施形態においては、接続部は導管(conduit)、ホース、チューブ、管または導管(channel)を含む。一実施形態においては、本発明の装置にある接続部は、必要な場合に開けるか、または閉じることができるように、「開」及び「閉」の位置をとることができる。
【0112】
一実施形態においては、本発明は、電気を動力源とする電解質再生装置を提供する。「電気を動力源とする」とは、電解質再生装置を使用して電気分解プロセスを行うことを意味する。電気分解プロセスは、電気を動力源とするか、または電気によって作動する。電気分解プロセスは、電解質再生装置またはシステムの電解セルに電流を流すことによって行う。
【0113】
一実施形態においては、本発明は電解質再生用システムを提供し、このシステムは本発明の電解質再生装置を含む。
【0114】
一実施形態においては、「1つの(a)」または「1つの(one)」または「1つの(an)」という用語は、1以上を指す。一実施形態においては、「2以上」という句は、特定の目的に適する任意の単位のものであってもよい。一実施形態においては、「約(about)」または「約(around)」または「約(approximately)」は、示された用語から±1%、またはいくつかの実施形態においては−1%、またはいくつかの実施形態においては±2.5%、またはいくつかの実施形態においては±5%、またはいくつかの実施形態においては±7.5%、またはいくつかの実施形態においては±10%、またはいくつかの実施形態においては±15%、またはいくつかの実施形態においては±20%、またはいくつかの実施形態においては±25%の誤差を含んでもよい。
【0115】
本発明の好ましい実施形態をさらに十分に説明するため、以下の実施例を示す。しかしながら、決してこれらを、本発明の幅広い範囲を制限するものとして解釈するべきではない。
【実施例】
【0116】
実施例1
使用済み電解質の電気分解−材料及び方法
【0117】
以下の実施例で使用する実験装置は、アノード(2)として機能するニッケル(Ni)板と、カソード(4)として機能する、以下に記載するような銀触媒系空気電極とを有する
図3に示すセルからなる。市販されているNeosepta CMXという種類の膜をカチオン透過膜(3)として使用した。膜の活性面積は9.6平方センチメートルであった。カソードの活性面積も9.6平方センチメートルであった。アノード電極面積は24平方センチメートルであった。アノード室及びカソード室の寸法は約6×3×8cm
3であった。電極を、DC電源の逆の極に(すなわち、陽極をアノード液室に、陰極をカソード液室に)接続した。電流密度はカソード面積を基に計算する。
【0118】
以下に記載する一連の実験でアノード溶液として使用したK[Al(OH)
4]試料の供給源は、0.2Ah/ccまたは0.4Ah/ccのレベルまで下降した後にアルミニウム/空気バッテリから取り出した使用済み電解質であった。いくつかの実験では使用済み電解質試料をそのまま使用したが、他の場合では試料を処理して透明水溶液分画を回収した。これを得るために試料を3500rpmで20分間遠心分離し、その後、透明上澄み液をアノード溶液として試験で使用した。
膜電解セルで使用する空気カソードの調製
【0119】
印刷可能触媒組成物:銀触媒(70グラム;米国特許第8,142,938号において記載のとおり調製)を10グラムのFEP(水性分散体の形態でDupontより入手可能、TE-9568)と混合する。この混合物を、1時間、回転振とう機に設置する。次に、この混合物に水(20グラム)及びイソプロパノール(20グラム)を加え、さらに25分間振とう機を回転させる。得られた組成物を1時間静置後、再度25分間混合する。得られた組成物は良好な流動性とチキソトロピー性を示し、印刷可能材料としての使用に適する。
電流コントローラの調製
【0120】
ニッケル網(Gerard Daniel Worldwideより市販されている(厚さ0.007のニッケルワイヤ、平織り200メッシュ)をギロチンナイフで切断して、寸法16.5cm×16.5cmの正方形にする。得られた網をエタノールで十分に洗浄し、空気圧を使用して金属粒子を網から吹き払う。面積〜10cm
2の円ができるよう網を切る。同じ直径のニッケル環を網に取り付けて電流コントローラを準備する。
電極の調製
【0121】
以下のように、触媒配合物を電流コントローラ上に塗布する。厚さ200〜300μmのポリプロピレンシート、電流コントローラ及び〜500μmのステンレススチール型板を、ポリプロピレンシートとステンレススチール型板がそれぞれ最下層と最上層を構成するように、印刷機(Ami Presco モデルMSP-9155)の上に重ねて置く。次に、ブレードまたはスクイージを使用して型板の上を通過させ、銀触媒配合物が型板を通って電流コントローラ網の孔の中にしみ込むようにして触媒配合物を塗布する。次に、ステンレススチール型板を取り除き、A4普通紙10枚を電流コントローラの上に置いて、その積層物をプレス機へ移し、そこで10トンの圧力を印加する。電極から紙を注意深く剥がしとった後、ポリプロピレンシートから電極を優しく取り外す。
電極組立体
【0122】
以下のように、電極と疎水性膜を組み合わせる。電極よりもわずかに大きい、多孔性の疎水性PTFE膜(Saint Gobain製またはGore製)を電極の上に置き、プレス機を使用して10トンの圧力を印加する。次に、電極組立体を約280℃で約20分、乾燥機にて焼結させる。
実施例2
K[Al(OH)
4]水溶液からの水酸化カリウムの回収
【0123】
K[Al(OH)
4]溶液(115cc、0.2Ah/cc)を膜電解セルのアノード室に入れた。使用した溶液は透明上澄み液であり、上の実施例1において記載したようにして得た。濃度10.4% w/w(110cc)の水酸化カリウム溶液をカソード室に入れた。
【0124】
電極間に電流を流し、21.6時間、実験を作動させた。実験の大半を通して、100mA/cm
2の電流密度を流したが、4.6時と6.02時の間の時間間隔では電流密度を50mA/cm
2に減らした。電流容量は19.9Ahであり、セルに投入したエネルギーは61.6Whであった。実験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約31℃であった。
【0125】
実験を通し、カソードでの水素発生の兆候は観測されなかった。水酸化カリウム溶液の濃度は、カソード液室中で10.4% w/wから27.0% w/wに増加した。KOHカソード液の容量は、約20cc増加した。アノード側では、水酸化アルミニウムが沈殿し、アノード液の容量は約20cc減少した。
【0126】
実験を繰り返したが、今回は、同じ透明のK[Al(OH)
4]溶液をより大きな容量(120cc)でアノード側に入れた。水酸化カリウム溶液(10.4% w/w;110cc)をカソード室に入れた。電極間に電流を流し;最初の1時間は、50mA/cm
2の電流密度を印加し;次に100mA/cm
2に上げ、実験の残りの時間はこの値を維持して18.9時間作動させた。電流容量は17.56Ahであり、セルに投入したエネルギーは47.75Whであった。実験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約31℃であった。
【0127】
繰返実験を通し、カソードでの水素発生の兆候は観測されなかった。KOH溶液の濃度は、カソード液室中で10.4% w/wから25.9% w/wに増加した。カソード液の容量は、約20cc増加した。アノード側では水酸化アルミニウムが沈殿し、アノード液の容量は約10cc減少した。
【0128】
図7は、前の2つの実験で記録された電圧対時間の曲線を示す(結果はそれぞれ暗色破線と明色灰色実線で示す)。
実施例3
K[Al(OH)
4]水溶液からの水酸化カリウムの回収
【0129】
K[Al(OH)
4]溶液(100cc、0.2Ah/cc)を膜電解セルのアノード室に入れた。K[Al(OH)
4]溶液は、アルミニウム/空気バッテリから取り出した使用済み電解質であり、処理なしでそのまま使用した。濃度10.4% w/w(110cc)の水酸化カリウム溶液をカソード室に入れた。
【0130】
電流密度100mA/cm
2で電極間に電流を流した。実験は18.5時間行った。電流容量は17.71Ahであった。実験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約32℃であった。
【0131】
カソード側で水素発生の兆候は観測されなかった。カソード液室中でのKOH溶液の濃度は、10.4% w/wから24.0% w/wに増加した。カソード液の容量は、約22cc増加した。アノード側では水酸化アルミニウムが沈殿し、水の移動と沈殿の増加に起因して、アノード液の容量は約45cc減少した。アノード溶液は濃厚で、粘性であった。
【0132】
実験を繰り返したが、今回は、同じK[Al(OH)
4]溶液をより大きな容量(110cc)でアノード側に入れた。水酸化カリウム溶液(10.4% w/w;120cc)をカソード室に入れた。電流密度100mA/cm
2で電極間に電流を流した。実験は約23時間行った。21.4時間後、測定した電圧が5ボルトであったので電流密度を50mA/cm
2に減らし、試験の終了までこのレベルを維持したことに留意が必要である。電流容量は20.72Ahであり、セルに投入したエネルギーは56.58Whであった。実験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約32℃であった。
【0133】
カソード側で水素発生の兆候は観測されなかった。カソード側で回収したKOH溶液の濃度は、10.4% w/wから25.8% w/wに増加した。カソード液の容量は、約15cc増加した。アノード側では水酸化アルミニウムが沈殿し、この沈殿とカソード液への水の移動に起因して、アノード液の量は約50cc減少した。アノード溶液は濃厚で、粘性であった。
実施例4
K[Al(OH)
4]水溶液からの水酸化カリウムの回収
【0134】
K[Al(OH)
4]溶液(120cc、0.2Ah/cc)を膜電解セルのアノード室に入れた。K[Al(OH)
4]溶液は、アルミニウム/空気バッテリから取り出した使用済み電解質であり、処理なしでそのまま使用した。濃度5.7% w/w(100cc)の水酸化カリウム溶液をカソード室に入れた。
【0135】
電流密度100mA/cm
2で電極間に電流を流した。実験は16.7時間行った。電流容量は16.01Ahであり、装置に投入したエネルギーは45.13Whであった。実験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱によって約32℃であった。
【0136】
カソード側で水素発生の兆候は観測されなかった。KOH溶液の濃度は、5.7%(w/w)から23.4%(w/w)に増加した。カソード液の容量は、約19cc増加した。アノード側では水酸化アルミニウムが沈殿し、この沈殿とカソード側への水の移動に起因して、アノード液の容量は約55cc減少した。したがってアノード液はより濃厚となり、粘性であった。
【0137】
図8は、この実験で記録された電圧対時間曲線である。初めはカソード液濃度が低いため、電圧は高めである。
実施例5
K[Al(OH)
4]水溶液からの水酸化カリウムの回収
【0138】
この実施例において報告する実験は2部からなる。
実験の第1部
【0139】
120ccのK[Al(OH)
4]溶液(0.4Ah/cc)を膜電解セルのアノード室に入れた。K[Al(OH)
4]溶液は、アルミニウム/空気バッテリから取り出した使用済み電解質であり、処理なしでそのまま使用した。10.4%(w/w)水酸化カリウム溶液100ccをカソード室に入れた。
【0140】
電流密度100mA/cm
2で16.7時間、電極間に電流を流した。電流容量は15.48Ahであり、装置に投入したエネルギーは48.27Whであった。試験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約32℃であった。
図9は、この実験で記録された電圧対時間曲線である。
【0141】
カソード側で水素発生の兆候は観測されなかった。KOH溶液の濃度は、10.4%(w/w)から26.0%(w/w)に増加した。カソード液の容量は、約10cc増加した。アノード側では水酸化アルミニウムが沈殿し、この沈殿とカソード側への水の移動に起因して、アノード液の容量は約40cc減少した。したがってアノード液はより濃厚となり、粘性であった。
実験の第2部
【0142】
40ccのK[Al(OH)
4]溶液を、実験の第1部からそのままのアノード液に加えた。加えた容量のK[Al(OH)
4]溶液は、アルミニウム/空気バッテリより取り出した使用済み電解質から得たものであり、処理なしでそのまま使用した。実験の第1部で生成したカソード液はセルから取り出して、新しい水酸化カリウム溶液(112ccの10.4% w/w KOH溶液)をカソード側へ入れた。
【0143】
合計16.9時間、電極間に電流を流した。しかしながら試験の間、周期的に電流を半分に減らした。徐々に伝導度が減少する高粘性のアノード溶液を使用したため、セルにかかる電圧は5ボルトの設定値を時々超過した。したがって、電圧が5ボルトに達するたびに電流密度を半分に減らした。この部の実験の始めでは、100mA/cm
2の電流密度を8.8時間印加した。次に、電流密度を50mA/cm
2に減らした。約30分後、すなわち試験開始から9.3時間後、電流密度を25mA/cm
2に下げた。その後、11.9時間のとき、電流密度を再度12mA/cm
2に下げた。
【0144】
電流容量は9.89Ahであり、装置に投入したエネルギーは31.65Whであった。試験は、温度制御を全くせずに作動させ、セルに電流を流している間の温度は自己加熱のため約31℃であった。
【0145】
第2部の実験の間、カソード側で水素発生の兆候は観測されなかった。KOH溶液の濃度は、10.4%(w/w)から21.0%(w/w)に増加した。カソード液の容量は、約5cc増加した。アノード側では、アノード溶液が、ペースト様の本質的には固体の材料(水酸化アルミニウム)に変化した。
【0146】
図9は、2つの部の実験で記録された電圧対時間曲線を示す。一定の曲線(V〜3ボルト、暗色の曲線)は、第1部の実験中に測定された電圧を示すものである。断続的で不連続な明色の曲線は第2部の実験中に記録されたものであり、周期的に5ボルトの値に達し、その後急降下した。
実施例6
2工程電気分解による電解質の再生
【0147】
図11は、縦続接続2工程電気分解による電解質再生の例を模式的に示している。適度に使用済みの電解質をアルカリ性供給源として取り出し、第1電解セルのアノード室1に入れた。KOH溶液を第1電解セルのカソード室に入れ、セルに電流を流すことによって第1電気分解工程を行った。
【0148】
電気分解中、K
+イオンはセル1のアノード室からカソード室へ移動し、アノード室1ではAl(OH)
3が沈殿した。したがって、カソード液中のKOH濃度は増加し、アノード液中のKOH濃度は減少した。第1電気分解工程前及び工程後にアノード液及びカソード液中に存在する様々な化学物質の濃度を以下の表1及び
図12に示す。
【0149】
この第1電気分解工程後、アノード液1を第2電気分解セルのアノード室に移した。第2カソード液室にあるカソード溶液はKOH溶液である。電解セル2に電流を流すことによって電気分解を行った。この第2電気分解プロセス中、K
+イオンはセル2のアノード室からカソード室へ移動し、アノード室2ではAl(OH)
3が沈殿した。したがって、カソード液中のKOH濃度は増加し、アノード液中のKOH濃度は減少した。第2電気分解工程前及び工程後にアノード液及びカソード液中に存在する様々な化学物質の濃度を以下の表1及び
図12に示す。表1からわかるように、溶液は重量で掲載した(例えば、下の「合計」の行を参照のこと、重量はグラム単位)。
【表1】
【0150】
実験の詳細は以下のとおりである。電解セルは、耐アルカリ性透明プラスチック(Perspex(登録商標))で作製した。セルは密閉箱として組み立て、これを等容量の半セル2つへと、膜集合体によって密閉して分割した。この両方の半セルには、給気口ならびに液体注入口及び出口があり、蠕動ポンプによる液体循環が可能であった。
【0151】
膜集合体は、2つの格子状の枠と、その間の1枚のNeosepta CMXイオン交換膜から調製した。膜集合体をセルに組み込み(膜面積210.25cm
2)、液密封止を試験した。
【0152】
半セル内で、膜と反対側の壁面に電極を配置した。セルのアノード部では、電極としてニッケル板を使用した。空気吸込式カソード(Phinergy)は、カソード部の壁面の開口部内に組み込んだ。電気分解プロセスは室温で行ったが、電流伝達により、いくらかの自己加熱(35〜40℃以下)が生じた。
【0153】
プロセス(電気分解1と2の両方)では、一定の電流密度95mA/cm
2(膜面積あたり)で開始後、セル電圧が3.5Vの限界に達したら、自動的にゆるやかに電流を減少させた(セル電圧が限界を超えるのを避けるため)。
【0154】
電気分解1は16時間行い、合計344.24アンペア時間の電流をシステムに流した。電気分解2は6時間行い、合計129.09アンペア時間の電流をシステムに流した。
【0155】
表1及び棒グラフ(
図12)より、第1電気分解工程(電気分解1)後、アノード液中のKOHの合計質量は686gから85gへと減少したことがわかる。同時に、カソード液中のKOHの合計質量は178gから779gへと増加した。
【0156】
第2電気分解工程(電気分解2)後、アノード液中のKOHの合計質量は85gから20gへと減少した。同時に、カソード液中のKOHの合計質量は80gから145gへと増加した。強調すべきことは、第2セルでの第2電気分解プロセスのアノード液は、第1電気分解工程後に第1セルから取り出したものであることである。しかしながら、第2電気分解工程のカソード液は、第1電気分解セルから取り出したものではない。電気分解2のカソード液は調製したKOH溶液、またはKOHを含む他のプロセスの洗浄液から入れる。KOHを含むこのような洗浄液は、第1電気分解工程中にアノード液1室で沈殿する固体の洗浄により生じるか、または電気分解1を行う前に使用済み電解液から分離した固体沈殿の洗浄により生じうる。
【0157】
本発明の特定の特徴を本明細書において説明し、記載してきたが、多くの改造、代替、変形及び等価を当業者が行うであろう。したがって、このような全ての改造と変形が本発明の真の精神の範囲内であるものとして、付属の特許請求の範囲が網羅することを意図されていることを理解すべきである。