特許第6053997号(P6053997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6053997
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 11/04 20060101AFI20161219BHJP
   H03H 11/20 20060101ALI20161219BHJP
   H03H 7/06 20060101ALI20161219BHJP
   H03H 7/21 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H03H11/04 H
   H03H11/20 Z
   H03H7/06
   H03H7/21
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-528041(P2016-528041)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2015083051
【審査請求日】2016年5月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】平井 暁人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英司
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−194304(JP,A)
【文献】 特開2003−204247(JP,A)
【文献】 特表平09−509806(JP,A)
【文献】 特開2010−021826(JP,A)
【文献】 特開平08−256034(JP,A)
【文献】 特表2009−533903(JP,A)
【文献】 特開2013−009155(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103716040(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 11/04
H03H 7/06
H03H 7/21
H03H 11/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変抵抗と容量素子とを含むフィルタ回路と、
直流電流が印加された前記可変抵抗間の直流電圧のみを検出し、高周波信号に影響しない可変抵抗間直流電圧検出手段と、
前記可変抵抗に印加された直流電流と等しい直流電流が印加される基準抵抗と、
前記基準抵抗間の直流電圧を検出する基準抵抗間直流電圧検出手段と、
前記可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧と、前記基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分を検出する直流電圧差分検出手段と、
前記可変抵抗に直流の定電流を印加する第1の直流電流源と、
前記第1の直流電流源と等しい直流電流を前記基準抵抗に印加する第2の直流電流源とを備え、
前記可変抵抗間直流電圧検出手段は、前記可変抵抗間の直流電圧のみを増幅し、高周波信号に影響しない第1の増幅器を有すると共に、前記基準抵抗間直流電圧検出手段は、前記基準抵抗間の直流電圧を増幅し前記第1の増幅器と等しい電圧利得を有する第2の増幅器を有し、
前記直流電圧差分検出手段は、前記第1の増幅器の出力と前記第2の増幅器の出力との差分を検出し
前記可変抵抗の抵抗値を、前記直流電圧差分検出手段で検出された直流電圧の差分が設定値以内となる値にアナログ的に制御することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ回路を、それぞれが可変抵抗と容量素子とを含む複数のフィルタ回路からなるポリフェーズフィルタ回路とし、
前記可変抵抗間直流電圧検出手段は、前記複数の可変抵抗のうち、少なくともいずれか一つの可変抵抗間の直流電圧を検出し、
前記直流電圧差分検出手段は、前記可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された一つの可変抵抗間の直流電圧と、前記基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分を検出することを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
それぞれが可変抵抗と容量素子とを含む複数のフィルタ回路からなるポリフェーズフィルタ回路と、
直流電流が印加された前記複数の可変抵抗間の直流電圧をそれぞれ検出する複数の異なる特性をもつ可変抵抗間直流電圧検出手段と、
前記複数の可変抵抗と等しい直流電流が印加される基準抵抗と、
前記基準抵抗間の直流電圧を検出する基準抵抗間直流電圧検出手段と、
前記複数の可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧と、前記基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分をそれぞれ検出する複数の直流電圧差分検出手段とを備え、
前記複数の異なる特性をもつ可変抵抗の抵抗値を、当該複数の可変抵抗に対応した直流電圧差分検出手段で検出された直流電圧の差分が設定値以内となる値にアナログ的に制御することを特徴とするフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、無線通信で高周波信号を処理するフィルタまたはポリフェーズフィルタを備えたフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器において、高周波の受信信号を処理する半導体集積回路が用いられている。例えば、レーダ用のスーパーヘテロダイン受信機を構成する半導体集積回路においては、受信信号を帯域制限するフィルタや、受信信号の周波数変換に伴うイメージ妨害波を抑圧するために、複数の抵抗及び複数のコンデンサによって構成されるポリフェーズフィルタと呼ばれるフィルタを用いることが知られている。抵抗Rと容量Cで構成されるフィルタや、ポリフェーズフィルタは、抵抗や容量の絶対値ばらつきに応じて、以下で表されるイメージ抑圧中心周波数Fcが変化する。
Fc=1/(2πRC)
【0003】
例えば、特許文献1に示された半導体集積回路では、ポリフェーズフィルタ内の抵抗を可変抵抗回路とし、ポリフェーズフィルタ内と同じ容量と抵抗で構成されるローパスフィルタとハイパスフィルタを設け、ローパスフィルタとハイパスフィルタに基準周波数信号を入力し、各フィルタから得られる2つの出力信号のレベルがほぼ等しくなるようにポリフェーズフィルタ内の可変抵抗回路の抵抗値を制御することで、素子ばらつきの補正を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−21826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、高精度な基準信号が必要となるため回路規模やコストの増大といった課題があった。また、可変抵抗間のばらつきに対しては補正することができないといった課題もあった。
【0006】
この発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することのできるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るフィルタ装置は、可変抵抗と容量素子とを含むフィルタ回路と、直流電流が印加された可変抵抗間の直流電圧のみを検出し、高周波信号に影響しない可変抵抗間直流電圧検出手段と、可変抵抗に印加された直流電流と等しい直流電流が印加される基準抵抗と、基準抵抗間の直流電圧を検出する基準抵抗間直流電圧検出手段と、可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧と、基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分を検出する直流電圧差分検出手段と、可変抵抗に直流の定電流を印加する第1の直流電流源と、第1の直流電流源と等しい直流電流を基準抵抗に印加する第2の直流電流源とを備え、可変抵抗間直流電圧検出手段は、可変抵抗間の直流電圧のみを増幅し、高周波信号に影響しない第1の増幅器を有すると共に、基準抵抗間直流電圧検出手段は、基準抵抗間の直流電圧を増幅し第1の増幅器と等しい電圧利得を有する第2の増幅器を有し、直流電圧差分検出手段は、第1の増幅器の出力と第2の増幅器の出力との差分を検出し、可変抵抗の抵抗値を、直流電圧差分検出手段で検出された直流電圧の差分が設定値以内となる値にアナログ的に制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るフィルタ装置は、フィルタ回路の可変抵抗と基準抵抗に等しい直流電流を印加し、これら可変抵抗間の直流電圧と基準抵抗間の直流電圧との差分が設定値以内となる値に可変抵抗の抵抗値をアナログ的に制御するようにしたものである。これにより、回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1のフィルタ装置の構成図である。
図2】この発明の実施の形態1のフィルタ装置における増幅手段の出力電圧と可変抵抗の抵抗値との関係を示す説明図である。
図3】この発明の実施の形態2のフィルタ装置の構成図である。
図4】この発明の実施の形態3のフィルタ装置の構成図である。
図5】この発明の実施の形態4のフィルタ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態によるフィルタ装置の構成図である。
本実施の形態によるフィルタ装置は、入力端子1、容量素子3、出力端子4、可変抵抗11、可変抵抗間直流電圧検出手段12、基準抵抗21、基準抵抗間直流電圧検出手段22、増幅手段31を備える。
【0011】
可変抵抗間直流電圧検出手段12と基準抵抗間直流電圧検出手段22は、それぞれに接続された可変抵抗11と基準抵抗21に等しい直流電流を流し、それぞれの抵抗間の直流電圧を検出し、出力する機能を有する。増幅手段31の入力端子は基準抵抗間直流電圧検出手段22と可変抵抗間直流電圧検出手段12の出力端子に接続され、基準抵抗間直流電圧検出手段22と可変抵抗間直流電圧検出手段12から出力される電圧の差分を増幅する機能を有する。すなわち、増幅手段31は、可変抵抗間直流電圧検出手段12で検出された直流電圧と、基準抵抗間直流電圧検出手段22で検出された直流電圧の差分を検出する直流電圧差分検出手段である。可変抵抗11の抵抗値制御端子は、増幅手段31からの出力端子に接続され、制御電圧に応じた抵抗値を保持する機能を有する。
【0012】
入力端子1は可変抵抗11の一方の端子に接続され、出力端子4には可変抵抗11の他方の端子が接続される。また、出力端子4には容量素子3の一方の端子が接続され、容量素子3の他方の端子は接地される。本実施の形態では、可変抵抗11と容量素子3はローパスフィルタを形成するものとしている。高周波信号は入力端子1から入力され、可変抵抗11及び容量素子3からなるローパスフィルタを通過後、出力端子4から出力される。ここで、入力端子1及び出力端子4は、直流成分における抵抗が十分高く、可変抵抗間直流電圧検出手段12から可変抵抗11に印加される電流はすべて可変抵抗11を通り、可変抵抗間直流電圧検出手段12のもう一つの端子に流れるものとする。
【0013】
なお、本発明のフィルタ装置は、入力端子1から高周波信号を印加してフィルタとして動作を行いながら可変抵抗11に対して直流電流を流し、その抵抗値を設定する。
【0014】
ここで基準抵抗21以外の全ての素子は半導体プロセスなどで製造されることを想定しており、基準抵抗21はICチップの外部に設置されることを想定している。可変抵抗11及び基準抵抗21に印加される電流は、半導体プロセスなどで製造されるため、ミスマッチばらつき(IC内ばらつき)が非常に小さいことを想定している。一方、ロットばらつき(IC間ばらつき)が大きいため、チップ毎に電流の絶対値や、可変抵抗11の増幅手段31出力電圧に対する抵抗値の傾きや抵抗値の絶対値、増幅手段31の増幅率の絶対値は変化する。
【0015】
ここで可変抵抗間直流電圧検出手段12の出力電圧をVOUT1とし、基準抵抗間直流電圧検出手段22の出力をVOUT2とする。また、可変抵抗11の抵抗値をRとし、基準抵抗21の抵抗値をRとする。基準抵抗間直流電圧検出手段22が基準抵抗21に印加する直流電流と、可変抵抗間直流電圧検出手段12が可変抵抗11に印加する電流それぞれの電流値をIとする。増幅手段31の電圧利得をB、出力電圧をVOUT3とすると、以下の式(1)が成り立つ。
OUT1=R・I
OUT2=R・I (1)
OUT3=B(VOUT2−VOUT1
【0016】
また、可変抵抗11の制御電圧VOUT3に対する抵抗値Rは以下の式(2)で表されるとする。
=VOUT3・D (2)
Dは図2の右図に示すように、可変抵抗11の抵抗値制御端子に印加される制御電圧に対する可変抵抗11の抵抗値変化の傾きである。ここでは傾きを正としている。上記式(1)(2)より、抵抗値Rは以下の式(3)で表される。
【0017】
今、増幅手段31の利得Bが非常に大きいとすると、以下の式(4)が成り立ち、可変抵抗11の抵抗値Rは基準抵抗21の抵抗値Rと同じになる。
【0018】
ここで時系列における動作の説明を行う。図2に示すように、可変抵抗11間の電圧は任意の電圧に設定されており、増幅手段31による制御電圧は可変抵抗11の抵抗値制御端子に印加されていないものとする。なお、ここでは、可変抵抗11間の電圧は基準抵抗21間の電圧より高く設定されているとする。また、可変抵抗間直流電圧検出手段12と、基準抵抗間直流電圧検出手段22は動作を行っているものとする。次に、増幅手段31をオンすると、増幅手段31の出力は、可変抵抗11間電圧と基準抵抗21間電圧の差分に利得Bを乗算したものが制御電圧として出力される。そのため、負の電圧に転じようと負の傾きで変化する。増幅手段31の制御電圧は負の傾きで変化するため、その制御電圧に従い可変抵抗11の抵抗値が低下する。可変抵抗11の抵抗値が低下するため、可変抵抗11間電圧は低下し、基準抵抗21間電圧に近づく。
【0019】
このような動作を繰り返すことで、可変抵抗11間電圧は、基準抵抗21間電圧に漸近する。最終的に、増幅手段31の制御電圧は式(4)が成り立つ抵抗値となる電圧となり、可変抵抗11間電圧は、基準抵抗21間電圧と等しくなる。なお、可変抵抗11の抵抗値は基準抵抗21の抵抗値と完全一致しなくても、設定値以内の値のばらつきを許容することとする。また、増幅手段31の電圧利得を高くとることで、基準電流Iのばらつきや演算増幅器の電圧増幅率ばらつきの影響は排除できる。
【0020】
このように、フィルタ回路の抵抗を可変抵抗11で構成し、可変抵抗11と基準抵抗21の直流電圧をモニタし、その比較電圧によって可変抵抗11の抵抗値を決定することで、可変抵抗11の抵抗値は基準抵抗21の抵抗値と同等の値となり、抵抗素子のロットばらつきを抑制することが可能となり、抵抗分のロットばらつきの小さなフィルタを提供することができる。また、直流電圧値を検出しているため、例えば特許文献1に記載されているようなフィルタの素子値を外部信号源の入力信号周波数によって制御する構成ではなく、高周波信号を通すインピーダンスを決定することで、外部信号源の不要なフィルタを提供することが可能となる。ここでは、フィルタの構成をローパスフィルタとしたが、ハイパスフィルタやバンドパスフィルタ、バンドエリミネイションフィルタであってもよい。
【0021】
以上説明したように、実施の形態1のフィルタ装置によれば、可変抵抗と容量素子とを含むフィルタ回路と、直流電流が印加された可変抵抗間の直流電圧を検出する可変抵抗間直流電圧検出手段と、可変抵抗に印加された直流電流と等しい直流電流が印加される基準抵抗と、基準抵抗間の直流電圧を検出する基準抵抗間直流電圧検出手段と、可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧と、基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分を検出する直流電圧差分検出手段とを備え、可変抵抗の抵抗値を、直流電圧差分検出手段で検出された直流電圧の差分が設定値以内となる値に制御するようにしたので、回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することができる。
【0022】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2によるフィルタ装置を示す構成図である。実施の形態2のフィルタ装置は、実施の形態1における可変抵抗間直流電圧検出手段12と基準抵抗間直流電圧検出手段22とを具体的な素子で実現したものである。
【0023】
実施の形態2のフィルタ装置は、入力端子1、可変抵抗セル2、容量素子3、出力端子4、基準抵抗21、第2の直流電流源23、第2の演算増幅器24、第3の演算増幅器32を備える。可変抵抗セル2は、可変抵抗11、第1の直流電流源13、第1の演算増幅器14、抵抗15からなり、この可変抵抗セル2と容量素子3とで通常のローパスフィルタと同等の構成を形成している。第1の直流電流源13は、可変抵抗11の他方の端子に接続され、可変抵抗11の一方の端子は抵抗15を介して接地されている。第1の演算増幅器14の入力には可変抵抗11の入力側と出力側の両端子が接続され、第1の直流電流源13と可変抵抗11の間の接続端子をその正相入力端子に接続し、可変抵抗11と抵抗15の間の接続端子をその逆相入力端子に接続する。第1の演算増幅器14の出力端子は、第3の演算増幅器32の逆相入力端子に接続されている。ここで、実施の形態1における可変抵抗間直流電圧検出手段12は、第1の直流電流源13、第1の演算増幅器14及び抵抗15で実現されている。
【0024】
基準抵抗21の一方の端子は第2の直流電流源23に接続され、他方の端子は接地されている。第2の演算増幅器24の入力端子は基準抵抗21の両端子に接続され、第2の直流電流源23と基準抵抗21の間の接続端子を正相入力端子に、接地端子側は逆相入力端子に接続されている。第2の演算増幅器24の出力端子は、第3の演算増幅器32の正相入力端子に接続されている。すなわち、実施の形態1の基準抵抗間直流電圧検出手段22は、第2の直流電流源23と第2の演算増幅器24で実現されている。第3の演算増幅器32の出力端子は、可変抵抗セル2の可変抵抗11の抵抗値制御端子に接続されている。第3の演算増幅器32は、直流電圧差分検出手段である実施の形態1の増幅手段31を具体的な回路で示したものである。
【0025】
ここで、第1の演算増幅器14、出力端子4、入力端子1の直流における入力抵抗は非常に高く、第1の直流電流源13から出力される直流電流はすべて可変抵抗11及び抵抗15に流れるものとする。同様に第2の演算増幅器24の直流における入力抵抗は非常に高く、第2の直流電流源23から出力される電流はすべて基準抵抗21に流れるものとする。
【0026】
今、第1の演算増幅器14の電圧利得をA、出力電圧をVOUT1とし、第1の直流電流源13及び第2の直流電流源23の電流値をI、可変抵抗セル2内の可変抵抗11の抵抗値をRとする。また、基準抵抗21の抵抗値をRとし、第2の演算増幅器24の電圧利得をA、出力電圧をVOUT2とする。第3の演算増幅器32の電圧利得をB、出力電圧をVOUT3とすると、以下の式(5)が成り立つ。
OUT1=A・R・I
OUT2=A・R・I (5)
OUT3=B(VOUT2−VOUT1
【0027】
また、可変抵抗11の制御電圧VOUT3に対する抵抗値Rは以下の式(6)で表されるとする。
=VOUT3・D (6)
ここで、Dは可変抵抗11の抵抗値制御端子に印加される制御電圧に対する可変抵抗11の抵抗値変化の傾きである。上記式(5)(6)より、抵抗値Rは以下の式(7)で表される。
【0028】
今、第1の演算増幅器14と第2の演算増幅器24及び第3の演算増幅器32の利得A及びBが非常に大きいとすると、以下の式(8)が成り立ち、可変抵抗セル2における可変抵抗11の抵抗値Rは基準抵抗の抵抗値Rと同じになる。
【0029】
一例を挙げて説明すると、初期状態で可変抵抗11が100Ω、基準抵抗21が50Ωであったとして、電流源13と電流源23が1mAだったとすると、増幅手段14の出力はA×100mV、増幅手段24の出力はA×50mVとなる。増幅手段32をONすると、増幅手段32は最終的には、A×B×(50mV−100mV)となる負電圧を出力する。ただし、実際には増幅手段32の周波数特性があるため、瞬時にこの電圧になるわけではなく、図2の左上図に示すように、最初に出力していた電圧から徐々に低電圧側に変化していく。徐々に変化する間に、可変抵抗11の抵抗値が基準抵抗21と一致してくるので、増幅手段32の出力電圧は、最終的に可変抵抗11が基準抵抗21と同じ値になる電圧に収束する。
【0030】
本実施の形態のフィルタ装置は、負帰還になるため、可変抵抗11が基準抵抗21より高い場合、増幅手段32の電圧は低電圧に向かい、可変抵抗11が基準抵抗21より低い場合、増幅手段32の電圧は高電圧に向かうので、最終的に可変抵抗11が基準抵抗21と同値となるように制御される。
【0031】
このように、フィルタの抵抗を可変抵抗11で構成し、可変抵抗11と基準抵抗21の直流電圧をモニタし、その比較電圧によって可変抵抗11の抵抗値を決定することで、可変抵抗11の抵抗値は基準抵抗21の抵抗値と同等の値となり、抵抗素子のロットばらつきを抑制することが可能となり、抵抗分のロットばらつきの小さなフィルタを提供することができる。また、直流電圧値を検出しているため、高周波信号を通すインピーダンスを決定することで、外部信号源の不要なフィルタを提供することが可能となる。
【0032】
以上説明したように、実施の形態2のフィルタ装置によれば、可変抵抗に直流の定電流を印加する第1の直流電流源と、第1の電流源と等しい直流電流を基準抵抗に印加する第2の直流電流源とを備え、可変抵抗間直流電圧検出手段は、可変抵抗間の直流電圧を増幅する第1の増幅器を有すると共に、基準抵抗間直流電圧検出手段は、基準抵抗間の直流電圧を増幅し第1の増幅器と等しい電圧利得を有する第2の増幅器を有し、直流電圧差分検出手段は、第1の増幅器の出力と第2の増幅器の出力との差分を検出するようにしたので、回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することができる。
【0033】
実施の形態3.
図4は、実施の形態3によるフィルタ装置を示す構成図である。実施の形態3のフィルタ装置は、フィルタ回路をポリフェーズフィルタ回路とし、それぞれのポリフェーズフィルタ回路の可変抵抗のうちいずれかの可変抵抗の直流電圧をモニタし、基準抵抗の直流電圧との比較電圧によって各ポリフェーズフィルタ回路の可変抵抗の抵抗値を決定するようにしたものである。
【0034】
実施の形態3のフィルタ装置は、入力端子1a,1b,1c,1d、可変抵抗セル2a,2b,2c,2d、容量素子3a,3b,3c,3d、出力端子4a,4b,4c,4d、基準抵抗21、第2の直流電流源23、第2の演算増幅器24、第3の演算増幅器32を備える。それぞれの可変抵抗セル2a〜2dは、可変抵抗11、第1の直流電流源13、第1の演算増幅器14、抵抗15からなり、可変抵抗セル2a〜2d内の基本的な構成は、実施の形態2と同様であるため、ここでの説明は省略する。なお、図4では可変抵抗セル2a内の構成のみ示しているが、可変抵抗セル2b,2c,2d内の構成も可変抵抗セル2a内の構成と同様である。また、基準抵抗21、第2の直流電流源23及び第2の演算増幅器24の構成についても実施の形態2と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0035】
また、実施の形態3の第3の演算増幅器32では、いずれか一つの可変抵抗セル2a〜2dの第1の演算増幅器14で検出された直流電圧と第2の演算増幅器24で検出された直流電圧を比較するよう構成されている。ここでは可変抵抗セル2aの第1の演算増幅器14で検出された直流電圧をその逆相入力端子に接続している。また、第3の演算増幅器32から出力された制御電圧は、可変抵抗セル2a〜2dにおけるそれぞれの可変抵抗11の抵抗値制御端子に与えられるよう構成されている。
【0036】
第1の直流電流源13及び第2の直流電流源23は、半導体プロセスなどで製造されることを想定しており、二つのミスマッチばらつきは非常に小さいことを想定している。それぞれの可変抵抗11は可変抵抗値制御端子に印加される電圧によって抵抗値が変化するものとする。抵抗15は、可変抵抗11に対し十分高い値とする。
【0037】
ここで、第1の演算増幅器14の電圧利得をA、出力電圧をVOUT1とし、第1の直流電流源13及び第2の直流電流源23の電流値をI、可変抵抗セル2a〜2d内のそれぞれの可変抵抗11の抵抗値をRとする。また、基準抵抗21の抵抗値をRとし、第2の演算増幅器24の電圧利得をA、出力電圧をVOUT2とする。第3の演算増幅器32の電圧利得をB、出力電圧をVOUT3とし、第1の演算増幅器14、第2の演算増幅器24及び第3の演算増幅器32の利得A及びBが非常に大きいとすると、以下の式(9)が成り立ち、可変抵抗セル2a〜2dにおけるそれぞれの可変抵抗11の抵抗値Rは、すべて基準抵抗の抵抗値Rと同じになる。
このように、ポリフェーズフィルタ回路の抵抗を可変抵抗11で構成し、いずれかのポリフェーズフィルタ回路の可変抵抗11と基準抵抗21の直流電圧をモニタし、その比較電圧によってそれぞれのポリフェーズフィルタ回路の可変抵抗11の抵抗値を決定することで、それぞれの可変抵抗11の抵抗値は基準抵抗21の抵抗値と同等の値となり、抵抗素子のロットばらつきを抑制することが可能となり、抵抗分のロットばらつきの小さなポリフェーズフィルタを提供することができる。また、直流電圧値を検出しているため、高周波信号を通すインピーダンスを決定することで、外部信号源の不要なポリフェーズフィルタを提供することが可能となる。また、第1の演算増幅器14、第2の演算増幅器24及び第3の演算増幅器32の電圧利得を高くとることで、基準電流Iのばらつきや演算増幅器の電圧増幅率ばらつきの影響を排除することができる。
【0038】
なお、上記例では、全ての可変抵抗セル2a〜2dに第1の直流電流源13、第1の演算増幅器14及び抵抗15を備えるとしたが、少なくともいずれか一つの可変抵抗セル2a〜2dに設ければよい。
【0039】
また、上記例では、ポリフェーズフィルタ回路として、四つのフィルタ回路を備えた構成を示したが、これに限定されるものではなく、三つのフィルタ回路または五つ以上のフィルタ回路を備えたポリフェーズフィルタ回路といったように、複数のフィルタ回路を備えたポリフェーズフィルタ回路に対して適用可能である。
【0040】
以上説明したように、実施の形態3のフィルタ装置によれば、フィルタ回路を、それぞれが可変抵抗と容量素子とを含む複数のフィルタ回路からなるポリフェーズフィルタ回路とし、可変抵抗間直流電圧検出手段は、複数の可変抵抗のうち、少なくともいずれか一つの可変抵抗間の直流電圧を検出し、直流電圧差分検出手段は、可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された一つの可変抵抗間の直流電圧と、基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分を検出するようにしたので、ポリフェーズフィルタであっても回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することができる。
【0041】
実施の形態4.
図5は、実施の形態4によるフィルタ装置を示す構成図である。実施の形態4フィルタ装置は、実施の形態3で示した第3の演算増幅器32を、各可変抵抗セル2a,2b,2c,2dに対応して、4つ(第3の演算増幅器32a,32b,32c,32d)設け、第3の演算増幅器32a〜32dのそれぞれの逆相入力端子に、各可変抵抗セル2a〜2dの第1の演算増幅器14で検出されたそれぞれの可変抵抗11の直流電圧を印加し、正相入力端子に第2の演算増幅器24で検出された直流電圧を印加するよう構成されている。また、第3の演算増幅器32a,32b,32c,32dのそれぞれの制御電圧を、可変抵抗セル2a〜2dの抵抗値制御端子に印加するよう構成されている。それ以外の構成は実施の形態3と同様であるため、対応する部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
実施の形態4では、可変抵抗セル2a〜2d内のそれぞれの可変抵抗11間の直流電圧を基準抵抗21の直流電圧と第3の演算増幅器32a〜32dでそれぞれ比較する。その比較結果である第3の演算増幅器32a〜32dの出力で、可変抵抗セル2a〜2dの制御電圧を与えている。このため、可変抵抗セル2a〜2d内の可変抵抗11の抵抗値が、実施の形態1で示した式(3)の傾きDのミスマッチばらつきが、可変抵抗セル2a〜2d毎にばらついている場合においても、特性ばらつきを抑制することが可能となり、抵抗分の素子ばらつきの小さな、また外部信号源の不要なポリフェーズフィルタを提供することが可能となる。
【0043】
なお、実施の形態4においても、上記実施の形態3と同様に、ポリフェーズフィルタ回路として、三つのフィルタ回路または五つ以上のフィルタ回路を備えたものであっても適用可能である。
【0044】
以上説明したように、実施の形態4のフィルタ装置によれば、それぞれが可変抵抗と容量素子とを含む複数のフィルタ回路からなるポリフェーズフィルタ回路と、直流電流が印加された複数の可変抵抗間の直流電圧をそれぞれ検出する複数の可変抵抗間直流電圧検出手段と、複数の可変抵抗と等しい直流電流が印加される基準抵抗と、基準抵抗間の直流電圧を検出する基準抵抗間直流電圧検出手段と、複数の可変抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧と、基準抵抗間直流電圧検出手段で検出された直流電圧の差分をそれぞれ検出する複数の直流電圧差分検出手段とを備え、複数の可変抵抗の抵抗値を、複数の可変抵抗に対応した直流電圧差分検出手段で検出された直流電圧の差分が設定値以内となる値に制御するようにしたので、ポリフェーズフィルタであっても回路規模の増大やコストの増大を抑えて、素子ばらつきの補正を実現することができ、かつ、各ポリフェーズフィルタ回路の可変抵抗のばらつきに対しても補正することができる。
【0045】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、この発明に係るフィルタ装置は、フィルタまたはポリフェーズフィルタにおける素子ばらつきを補正する構成に関するものであり、高周波の受信信号を処理する半導体集積回路において、受信信号を帯域制限するフィルタや、受信信号の周波数変換に伴うイメージ妨害波を抑圧するためのポリフェーズフィルタに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0047】
1,1a,1b,1c,1d 入力端子、2,2a,2b,2c,2d 可変抵抗セル、3,3a,3b,3c,3d 容量素子、4,4a,4b,4c,4d 出力端子、11 可変抵抗、12 可変抵抗間直流電圧検出手段、13 第1の直流電流源、14 第1の演算増幅器、15 抵抗、21 基準抵抗、22 基準抵抗間直流電圧検出手段、23 第2の直流電流源、24 第2の演算増幅器、31 増幅手段、32,32a,32b,32c,32d 第3の演算増幅器。
【要約】
可変抵抗(11)と基準抵抗(21)に等しい直流電流を印加する。可変抵抗間直流電圧検出手段(12)で可変抵抗(11)間の直流電圧を検出し、基準抵抗間直流電圧検出手段(22)で基準抵抗(21)間の直流電圧を検出する。増幅手段(31)で可変抵抗間直流電圧検出手段(12)の直流電圧と基準抵抗間直流電圧検出手段(22)の直流電圧との差分を検出し、この差分が設定値以内となるよう可変抵抗(11)の抵抗値を制御する。
図1
図2
図3
図4
図5