特許第6054002号(P6054002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054002
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】遊星歯車式変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   F16H3/66 Z
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-539332(P2016-539332)
(86)(22)【出願日】2016年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2016052886
(87)【国際公開番号】WO2016108294
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2016年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 伸人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓
(72)【発明者】
【氏名】塩原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】泉 浩平
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−035056(JP,A)
【文献】 特開2010−127325(JP,A)
【文献】 特表2014−500455(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009031543(DE,A1)
【文献】 特開2015−064042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転するように構成された入力軸と、
前記回転軸を中心に回転するように構成された第1中間軸と、
第1サンギヤ、第1プラネタリギヤ、第1リングギヤ、および前記入力軸と一体的に回転するように構成された第1キャリアを有する第1遊星歯車機構と、
前記第1リングギヤと一体的に回転するように構成された第2サンギヤ、第2プラネタリギヤ、第2リングギヤ、および第2キャリアを有する第2遊星歯車機構と、
前記第1中間軸と一体的に回転するように構成された第3サンギヤ、第3プラネタリギヤ、第3リングギヤ、および前記第2リングギヤと一体的に回転するように構成された第3キャリアとを有する第3遊星歯車機構と、
前記第1中間軸と一体的に回転するように構成された第4サンギヤ、第4プラネタリギヤ、第4リングギヤ、および前記第3リングギヤと一体的に回転するとともに動力を出力するように構成された第4キャリアとを有する第4遊星歯車機構と、
前記第1リングギヤおよび前記第2サンギヤと前記第1中間軸とを連結するように構成された第1クラッチと、
前記第1キャリアと前記第2キャリアとを連結するように構成された第2クラッチと、
前記第2キャリアと前記第1中間軸とを連結するように構成された第3クラッチと、
前記第1サンギヤの回転を制動するように構成された第1ブレーキと、
前記第2リングギヤおよび前記第3キャリアの回転を制動するように構成された第2ブレーキと、
前記第4リングギヤの回転を制動するように構成された第3ブレーキと、
を備える、遊星歯車式変速機。
【請求項2】
前記第4キャリアと一体的に回転するように構成された出力軸をさらに備える、請求項1に記載の遊星歯車式変速機。
【請求項3】
前記第1遊星歯車機構、前記第2遊星歯車機構、前記第3遊星歯車機構、前記第4遊星歯車機構は、回転軸方向に沿って、この順に配置される、請求項1または2に記載の遊星歯車式変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車式変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックなどの建設車両は、複数の遊星歯車機構を有する遊星歯車式変速機を備えている。遊星歯車式変速機は、各遊星歯車機構を適宜組み合わせて使用することによって、所望の減速比を得ることができる。従来の遊星歯車式変速機は、たとえば、米国特許第8480533号明細書(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8480533号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遊星歯車式変速機においては、燃費の改善および走行性能の向上のために速度段の増加が要望されており、重量低減および小型化のために部品数の低減が要望されており、最大牽引力の向上および最大車速の向上のために総段間比の拡大が要望されており、速度段のスムーズな切り換えのために段間比のばらつきの低減が要望されている。
【0005】
本発明の目的は、速度段の増加、部品数の低減、総段間比の拡大、および段間比のばらつきの低減を実現できる、遊星歯車式変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に係る遊星歯車式変速機は、入力軸、第1中間軸、第1遊星歯車機構、第2遊星歯車機構、第3遊星歯車機構、第4遊星歯車機構、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキ、および第3ブレーキを備えている。入力軸は、回転軸を中心に回転するように構成されている。第1中間軸は、回転軸を中心に回転するように構成されている。第1遊星歯車機構は、第1サンギヤ、第1プラネタリギヤ、第1リングギヤ、および第1キャリアを有している。第1キャリアは、入力軸と一体的に回転するように構成されている。第2遊星歯車機構は、第2サンギヤ、第2プラネタリギヤ、第2リングギヤ、および第2キャリアを有している。第2サンギヤは、第1リングギヤと一体的に回転するように構成されている。第3遊星歯車機構は、第3サンギヤ、第3プラネタリギヤ、第3リングギヤ、および第3キャリアを有している。第3サンギヤは、第1中間軸と一体的に回転するように構成されている。第3キャリアは、第2リングギヤと一体的に回転するように構成されている。第4遊星歯車機構は、第4サンギヤ、第4プラネタリギヤ、第4リングギヤ、および第4キャリアを有している。第4サンギヤは、第1中間軸と一体的に回転するように構成されている。第4キャリアは、第3リングギヤと一体的に回転するとともに動力を出力するように構成されている。第1クラッチは、第1リングギヤおよび第2サンギヤと第1中間軸とを連結するように構成されている。第2クラッチは、第1キャリアと第2キャリアとを連結するように構成されている。第3クラッチは、第2キャリアと第1中間軸とを連結するように構成されている。第1ブレーキは、第1サンギヤの回転を制動するように構成されている。第2ブレーキは、第2リングギヤおよび第3キャリアの回転を制動するように構成されている。第3ブレーキは、第4リングギヤの回転を制動するように構成されている。
【0007】
上記の遊星歯車式変速機は、第4キャリアと一体的に回転するように構成された出力軸をさらに備えている。
【0008】
上記の遊星歯車式変速機において、第1遊星歯車機構、第2遊星歯車機構、第3遊星歯車機構、第4遊星歯車機構は、回転軸方向に沿って、この順に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遊星歯車式変速機によると、速度段の増加、部品数の低減、総段間比の拡大、および段間比のばらつきの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る遊星歯車式変速機の概略図である。
図2】一実施形態に係る遊星歯車式変速機の各速度段においてオン状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示す表である。
図3】一実施形態に係る遊星歯車式変速機の各遊星歯車機構における歯数比を示す表である。
図4】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第1速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図5】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第2速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図6】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第3速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図7】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第4速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図8】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第5速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図9】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第6速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図10】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第7速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図11】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第8速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図12】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が前進の第9速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図13】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が後進の第1速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図14】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が後進の第2速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図15】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が代替の後進の第2速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
図16】一実施形態に係る遊星歯車式変速機が代替の後進の第2速の状態のときの動力の伝達を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る遊星歯車式変速機の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、回転軸方向とは、回転軸が延びる方向を示す。回転軸の径方向とは、回転軸を中心とした円の径方向を示す。具体的には、回転軸方向は図1の左右方向であり、径方向は図1の上下方向である。回転軸とは、入力軸の中心線を示す。入力側とは、遊星歯車式変速機が動力を入力する側を示す。出力側とは、遊星歯車式変速機が動力を出力する側を示す。具体的には、入力側は、図1の左側、出力側は、図1の右側である。
【0012】
図1は、一実施形態に係る遊星歯車式変速機の概略図である。遊星歯車式変速機100は、エンジン(図示省略)などからの動力の回転速度を変速して出力する。エンジンなどからの動力は、トルクコンバータを介して遊星歯車式変速機100に入力されてもよい。
【0013】
遊星歯車式変速機100は、複数の遊星歯車機構1〜4、複数のクラッチ51〜53、複数のブレーキ61〜63、入力軸7、第1中間軸81、およびケーシング9を備えている。ケーシング9は、各遊星歯車機構1〜4、各クラッチ51〜53、各ブレーキ61〜63、入力軸7、および第1中間軸81を収容している。
【0014】
遊星歯車式変速機100は、複数の遊星歯車機構として、第1遊星歯車機構1、第2遊星歯車機構2、第3遊星歯車機構3、および第4遊星歯車機構4を備えている。遊星歯車式変速機100は、複数のクラッチとして、第1クラッチ51、第2クラッチ52、および第3クラッチ53を備えている。遊星歯車式変速機100は、複数のブレーキとして、第1ブレーキ61、第2ブレーキ62、および第3ブレーキ63を備えている。
【0015】
第1遊星歯車機構1、第2遊星歯車機構2、第3遊星歯車機構3、および第4遊星歯車機構4は、回転軸方向に沿って、この順に配置されている。詳細には、入力側から出力側に向かって、第1遊星歯車機構1、第2遊星歯車機構2、第3遊星歯車機構3、および第4遊星歯車機構4の順で配置されている。
【0016】
入力軸7は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。回転軸Oは、入力軸7の中心線である。エンジンなどからの動力が、入力軸7に入力される。
【0017】
第1中間軸81は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。第1中間軸81は、回転軸方向に延びている。第1中間軸81の中心軸と、入力軸7の中心軸とは、実質的に同じである。
【0018】
第1遊星歯車機構1は、第1サンギヤ11、複数の第1プラネタリギヤ12、第1リングギヤ13、および第1キャリア14を有している。
【0019】
第1サンギヤ11は、回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。第1サンギヤ11は、入力軸7の径方向外側に配置されている。詳細には、第1サンギヤ11は管状であって、入力軸7は第1サンギヤ11を貫通している。第1サンギヤ11と入力軸7とは、相対回転可能である。
【0020】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11に噛み合うように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の径方向外側に配置されている。詳細には、各第1プラネタリギヤ12は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0021】
各第1プラネタリギヤ12は、第1サンギヤ11の周りを公転するように構成されている。各第1プラネタリギヤ12は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。また、各第1プラネタリギヤ12は、自転するように構成されている。
【0022】
第1リングギヤ13は、各第1プラネタリギヤ12と噛み合っている。第1リングギヤ13は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0023】
第1キャリア14は、各第1プラネタリギヤ12を支持している。各第1プラネタリギヤ12は、第1キャリア14に支持された状態で、自転可能である。第1キャリア14は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0024】
第1キャリア14は、入力軸7と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第1キャリア14は、入力軸7に固定されている。第1キャリア14と入力軸7とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0025】
第2遊星歯車機構2は、第2サンギヤ21、複数の第2プラネタリギヤ22、第2リングギヤ23、および第2キャリア24を有している。
【0026】
第2サンギヤ21は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。第2サンギヤ21は、第1中間軸81の径方向外側に配置されている。詳細には、第2サンギヤ21は環状であって、第1中間軸81は第2サンギヤ21を貫通している。第2サンギヤ21と第1中間軸81とは相対回転可能である。
【0027】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13に連結されている。第2サンギヤ21と第1リングギヤ13とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0028】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21に噛み合うように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の径方向外側に配置されている。詳細には、各第2プラネタリギヤ22は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0029】
各第2プラネタリギヤ22は、第2サンギヤ21の周りを公転するように構成されている。各第2プラネタリギヤ22は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。また、各第2プラネタリギヤ22は、自転するように構成されている。
【0030】
第2リングギヤ23は、各第2プラネタリギヤ22と噛み合っている。第2リングギヤ23は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0031】
第2キャリア24は、各第2プラネタリギヤ22を支持している。各第2プラネタリギヤ22は、第2キャリア24に支持された状態で、自転可能である。第2キャリア24は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0032】
第3遊星歯車機構3は、第3サンギヤ31、複数の第3プラネタリギヤ32、第3リングギヤ33、および第3キャリア34を有している。
【0033】
第3サンギヤ31は、第1中間軸81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3サンギヤ31は、第1中間軸81に固定されている。第3サンギヤ31と第1中間軸81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0034】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31に噛み合うように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の径方向外側に配置されている。詳細には、各第3プラネタリギヤ32は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0035】
各第3プラネタリギヤ32は、第3サンギヤ31の周りを公転するように構成されている。各第3プラネタリギヤ32は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。また、各第3プラネタリギヤ32は、自転するように構成されている。
【0036】
第3リングギヤ33は、各第3プラネタリギヤ32と噛み合っている。第3リングギヤ33は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0037】
第3キャリア34は、各第3プラネタリギヤ32を支持している。各第3プラネタリギヤ32は、第3キャリア34に支持された状態で、自転可能である。第3キャリア34は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0038】
第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第3キャリア34は、第2リングギヤ23に連結されている。第3キャリア34と第2リングギヤ23とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0039】
第4遊星歯車機構4は、第4サンギヤ41、複数の第4プラネタリギヤ42、第4リングギヤ43、および第4キャリア44を有している。
【0040】
第4サンギヤ41は、第1中間軸81と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第4サンギヤ41は、第1中間軸81に固定されている。第1中間軸81と、第3サンギヤ31および第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転するように構成されている。第4サンギヤ41と第1中間軸81とは、1つの部材によって形成されていてもよい。第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0041】
各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41に噛み合うように構成されている。各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41の径方向外側に配置されている。詳細には、各第4プラネタリギヤ42は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0042】
各第4プラネタリギヤ42は、第4サンギヤ41の周りを公転するように構成されている。各第4プラネタリギヤ42は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。また、各第4プラネタリギヤ42は、自転するように構成されている。
【0043】
第4リングギヤ43は、各第4プラネタリギヤ42と噛み合っている。第4リングギヤ43は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0044】
第4キャリア44は、各第4プラネタリギヤ42を支持している。各第4プラネタリギヤ42は、第4キャリア44に支持された状態で、自転可能である。第4キャリア44は、回転軸Oを中心に回転するように構成されている。
【0045】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転するように構成されている。詳細には、第4キャリア44は、第3リングギヤ33に連結されている。第4キャリア44と第3リングギヤ33とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0046】
第4キャリア44は、動力を出力する。詳細には、第4キャリア44は、遊星歯車式変速機100によって変速された回転速度を有する動力を、出力する。第4キャリア44は、出力軸10と一体的に回転する。このため、出力軸10は、変速された動力を出力する。なお、第4キャリア44と出力軸10とは、1つの部材によって形成されていてもよい。
【0047】
第1クラッチ51は、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21と、第1中間軸81とを連結するように構成されている。詳細には、第1クラッチ51は、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21と第1中間軸81とを遮断可能に連結している。第1クラッチ51は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0048】
第1クラッチ51がオン状態のとき、第1クラッチ51は、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21と第1中間軸81とを連結する。したがって、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第1中間軸81とが一体的に回転する。
【0049】
第1クラッチ51がオフ状態のとき、第1クラッチ51は、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21と第1中間軸81との連結を遮断する。したがって、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21は、第1中間軸81に対して相対的に回転可能である。
【0050】
第2クラッチ52は、第1キャリア14と第2キャリア24とを連結するように構成されている。詳細には、第2クラッチ52は、第1キャリア14と第2キャリア24とを遮断可能に連結している。第2クラッチ52は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0051】
第2クラッチ52がオン状態のとき、第2クラッチ52は、第1キャリア14と第2キャリア24とを連結する。したがって、第1キャリア14と第2キャリア24とが一体的に回転する。
【0052】
第2クラッチ52がオフ状態のとき、第2クラッチ52は、第1キャリア14と第2キャリア24との連結を遮断する。したがって、第2キャリア24は、第1キャリア14に対して相対的に回転可能である。
【0053】
第3クラッチ53は、第2キャリア24と第1中間軸81とを連結するように構成されている。詳細には、第3クラッチ53は、第2キャリア24と第1中間軸81とを遮断可能に連結している。第3クラッチ53は、たとえば、油圧式のクラッチ機構であって、複数のディスクから構成することができる。
【0054】
第3クラッチ53がオン状態のとき、第3クラッチ53は、第2キャリア24と第1中間軸81とを連結する。したがって、第2キャリア24と第1中間軸81とが一体的に回転する。
【0055】
第3クラッチ53がオフ状態のとき、第3クラッチ53は、第2キャリア24と第1中間軸81との連結を遮断する。したがって、第2キャリア24は、第1中間軸81に対して相対的に回転可能である。
【0056】
第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11の回転を制動するように構成されている。詳細には、第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11とケーシング9とを連結するように構成されている。
【0057】
第1ブレーキ61がオン状態のとき、第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11の回転を制動する。詳細には、第1ブレーキ61がオン状態のとき、第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11とケーシング9とを連結する。したがって第1サンギヤ11は、回転不能である。
【0058】
第1ブレーキ61がオフ状態のとき、第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11の回転を制動しない。詳細には、第1ブレーキ61がオフ状態のとき、第1ブレーキ61は、第1サンギヤ11とケーシング9とを連結しない。したがって第1サンギヤ11は、回転可能である。
【0059】
第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34の回転を制動するように構成されている。詳細には、第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34と、ケーシング9とを連結するように構成されている。
【0060】
第2ブレーキ62がオン状態のとき、第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34の回転を制動する。詳細には、第2ブレーキ62がオン状態のとき、第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34とケーシング9とを連結する。したがって第2リングギヤ23および第3キャリア34は、回転不能である。
【0061】
第2ブレーキ62がオフ状態のとき、第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34の回転を制動しない。詳細には、第2ブレーキ62がオフ状態のとき、第2ブレーキ62は、第2リングギヤ23および第3キャリア34とケーシング9とを連結しない。したがって第2リングギヤ23および第3キャリア34は、回転可能である。
【0062】
第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43の回転を制動するように構成されている。詳細には、第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43とケーシング9とを連結するように構成されている。
【0063】
第3ブレーキ63がオン状態のとき、第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43の回転を制動する。詳細には、第3ブレーキ63がオン状態のとき、第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43とケーシング9とを連結する。したがって第4リングギヤ43は、回転不能である。
【0064】
第3ブレーキ63がオフ状態のとき、第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43の回転を制動しない。詳細には、第3ブレーキ63がオフ状態のとき、第3ブレーキ63は、第4リングギヤ43とケーシング9とを連結しない。したがって第4リングギヤ43は、回転可能である。
【0065】
以上のように構成された遊星歯車式変速機100の動作について説明する。遊星歯車式変速機100は、前進において9つの速度段、後進において2つの速度段を有している。遊星歯車式変速機100は、後進の第2速に代替する2つの速度段を有している。図2は、各速度段においてオン状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示す表である。図2中の×印は、オン状態となる各クラッチまたは各ブレーキを示している。
【0066】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第1速(F1)とする際は、第3クラッチ53をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63をオン状態にする。第1クラッチ51、第2クラッチ52および第2ブレーキ62は、オフ状態である。
【0067】
第3クラッチ53がオン状態になるため、第2キャリア24は第1中間軸81と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能となる。第3ブレーキ63がオン状態になるため、第4リングギヤ43が回転不能となる。
【0068】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図4において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第1サンギヤ11は回転不能である。第1キャリア14の回転によって、各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。そして、第1リングギヤ13が回転する。
【0069】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2サンギヤ21の回転によって、各第2プラネタリギヤ22が自転するとともに公転する。第2リングギヤ23が回転する。第2キャリア24が回転する。第1中間軸81は、第2キャリア24と一体的に回転する。
【0070】
第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。第3サンギヤ31は、第1中間軸81と一体的に回転する。各第3プラネタリギヤ32は、自転するとともに公転する。第3リングギヤ33が回転する。
【0071】
第4サンギヤ41は、第1中間軸81と一体的に回転する。第4リングギヤ43は回転不能である。第4サンギヤ41の回転によって、各第4プラネタリギヤ42が自転しながら公転する。この結果、第4キャリア44が第3リングギヤ33と一体的に回転し、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0072】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第2速(F2)とする際は、第2クラッチ52および第3クラッチ53をオン状態にするとともに、第3ブレーキ63をオン状態にする。第1速(F1)と第2速(F2)との間の切り換えにおいて、第3クラッチ53および第3ブレーキ63は、オン状態を維持している。第1クラッチ51、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62は、オフ状態である。
【0073】
第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。第3ブレーキ63がオン状態になるため、第4リングギヤ43が回転不能となる。
【0074】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図5において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。第1中間軸81は、第2キャリア24と一体的に回転する。
【0075】
第4サンギヤ41は、第1中間軸81と一体的に回転する。第4リングギヤ43は回転不能である。第4サンギヤ41の回転によって、各第4プラネタリギヤ42が自転しながら公転する。この結果、第4キャリア44が回転し、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0076】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第3速(F3)とする際は、第1クラッチ51をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63をオン状態にする。第2速(F2)と第3速(F3)との間の切り換えにおいて、第3ブレーキ63は、オン状態を維持している。第2クラッチ52、第3クラッチ53および第2ブレーキ62は、オフ状態である。
【0077】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13および第2サンギヤ21は、第1中間軸81と一体的に回転する。このため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能となる。第3ブレーキ63がオン状態になるため、第4リングギヤ43が回転不能となる。
【0078】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図6において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第1キャリア14の回転によって、各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。第1中間軸81は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。
【0079】
第4サンギヤ41は、第1中間軸81と一体的に回転する。第4リングギヤ43は回転不能である。第4サンギヤ41の回転によって、各第4プラネタリギヤ42が自転しながら公転する。この結果、第4キャリア44が回転し、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0080】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第4速(F4)とする際は、第1クラッチ51および第2クラッチ52をオン状態にするとともに、第3ブレーキ63をオン状態にする。第3速(F3)と第4速(F4)との間の切り換えにおいて、第1クラッチ51および第3ブレーキ63は、オン状態を維持している。第3クラッチ53、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62は、オフ状態である。
【0081】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第3ブレーキ63がオン状態になるため、第4リングギヤ43が回転不能となる。
【0082】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図7において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。各第2プラネタリギヤ22は、自転するとともに公転する。第2サンギヤ21が回転する。第2リングギヤ23が回転する。
【0083】
第1中間軸81は、第2サンギヤ21と一体的に回転する。このため、第3サンギヤ31は、第2サンギヤ21と一体的に回転する。第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。第3サンギヤ31および第3キャリア34の回転によって、各第3プラネタリギヤ32は、自転するとともに公転する。第3リングギヤ33が回転する。
【0084】
第4サンギヤ41は、第2サンギヤ21と一体的に回転する。第4リングギヤ43は回転不能である。第4サンギヤ41の回転によって、各第4プラネタリギヤ42が自転しながら公転する。この結果、第4キャリア44が第3リングギヤ33と一体的に回転し、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0085】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第5速(F5)とする際は、第2クラッチ52をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63をオン状態にする。第4速(F4)と第5速(F5)との間の切り換えにおいて、第2クラッチ52および第3ブレーキ63は、オン状態を維持している。第1クラッチ51、第3クラッチ53および第2ブレーキ62は、オフ状態である。
【0086】
第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。第3ブレーキ63がオン状態になるため、第4リングギヤ43が回転不能となる。
【0087】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図8において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。
【0088】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。各第2プラネタリギヤ22は、自転するとともに公転する。第2リングギヤ23が回転する。
【0089】
第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。各第3プラネタリギヤ32は、自転するとともに公転する。第3サンギヤ31が回転する。
【0090】
第4サンギヤ41は、第3サンギヤ31と一体的に回転する。第4リングギヤ43は回転不能である。第4サンギヤ41の回転によって、各第4プラネタリギヤ42が自転しながら公転する。この結果、第4キャリア44が第3リングギヤ33と一体的に回転し、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0091】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第6速(F6)とする際は、第1クラッチ51および第2クラッチ52をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61をオン状態にする。第5速(F5)と第6速(F6)との切り替えにおいて、第2クラッチ52および第1ブレーキ61は、オン状態を維持している。第3クラッチ53、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0092】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。
【0093】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図9において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。
【0094】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。各第2プラネタリギヤ22は、自転するとともに公転する。第2リングギヤ23が回転する。
【0095】
第3サンギヤ31は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。各第3プラネタリギヤ32は、自転するとともに公転する。第3リングギヤ33が回転する。
【0096】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0097】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第7速(F7)とする際は、第2クラッチ52および第3クラッチ53をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61をオン状態にする。第6速(F6)と第7速(F7)との切り換えにおいて、第2クラッチ52および第1ブレーキ61は、オン状態を維持している。第1クラッチ51、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0098】
第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。
【0099】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図10において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。
【0100】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。各第2プラネタリギヤ22は、自転するとともに公転する。第2リングギヤ23が回転する。
【0101】
第3サンギヤ31は、第2キャリア24と一体的に回転する。第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。各第3プラネタリギヤ32は、自転するとともに公転する。第3リングギヤ33が回転する。
【0102】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0103】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第8速(F8)とする際は、第1クラッチ51、第2クラッチ52および第3クラッチ53をオン状態にする。第7速(F7)と第8速(F8)との切り換えにおいて、第2クラッチ52および第3クラッチ53は、オン状態を維持している。第1ブレーキ61、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0104】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。
【0105】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図11において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。第1中間軸81は、第2キャリア24と一体的に回転する。第2サンギヤ21は、第1中間軸81と一体的に回転する。このため、各第2プラネタリギヤ22は自転せずに公転する。第2リングギヤ23は、第2サンギヤ21および第2キャリア24と一体的に回転する。
【0106】
第3サンギヤ31は、第1中間軸81と一体的に回転する。第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。このため、各第3プラネタリギヤ32は自転せずに公転する。第3リングギヤ33は、第3サンギヤ31および第3キャリア34と一体的に回転する。
【0107】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速されない回転速度を有する動力を出力する。第8速の状態の遊星歯車式変速機100は、エンジンなどからの動力の回転速度を変速しない。
【0108】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を前進の第9速(F9)とする際は、第1クラッチ51、第3クラッチ53および第1ブレーキ61をオン状態にする。第8速(F8)と第9速(F9)との切り換えにおいて、第1クラッチ51および第3クラッチ53は、オン状態を維持している。第2クラッチ52、第2ブレーキ62および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0109】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。
【0110】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図12において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。第1中間軸81は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。
【0111】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1中間軸81と一体的に回転する。第2サンギヤ21と第2キャリア24とは、一体的に回転する。このため、各第2プラネタリギヤ22は自転せずに公転する。第2リングギヤ23は、第2サンギヤ21および第2キャリア24と一体的に回転する。
【0112】
第3サンギヤ31は、第2キャリア24と一体的に回転する。第3キャリア34は、第2リングギヤ23と一体的に回転する。このため、各第3プラネタリギヤ32は自転せずに公転する。第3リングギヤ33は、第3サンギヤ31および第3キャリア34と一体的に回転する。
【0113】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0114】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を後進の第1速(R1)とする際は、第3クラッチ53をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62をオン状態にする。第1クラッチ51、第2クラッチ52および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0115】
第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。第2ブレーキ62がオン状態になるため、第2リングギヤ23と第3キャリア34とが回転不能になる。
【0116】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図13において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。
【0117】
第2サンギヤ21は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第2サンギヤ21の回転によって、各第2プラネタリギヤ22が自転するとともに公転する。このため、第2キャリア24が回転する。
【0118】
第3サンギヤ31は、第2キャリア24と一体的に回転する。第3サンギヤ31の回転によって、各第3プラネタリギヤ32は自転する。そして、第3リングギヤ33が回転する。なお、第3キャリア34が回転不能であるため、各第3プラネタリギヤ32は公転しない。
【0119】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0120】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を後進の第2速(R2)とする際は、第1クラッチ51をオン状態にするとともに、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62をオン状態にする。第1速(R1)と第2速(R2)との間の切り換えにおいて、第1ブレーキ61および第2ブレーキ62は、オン状態を維持している。第2クラッチ52、第3クラッチ53および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0121】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第1ブレーキ61がオン状態になるため、第1サンギヤ11が回転不能になる。第2ブレーキ62がオン状態になるため、第2リングギヤ23と第3キャリア34とが回転不能になる。
【0122】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図14において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。各第1プラネタリギヤ12が自転するとともに公転する。第1リングギヤ13が回転する。第1中間軸81は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。
【0123】
第3サンギヤ31は、第1リングギヤ13と一体的に回転する。第3サンギヤ31の回転によって、各第3プラネタリギヤ32は自転する。そして、第3リングギヤ33が回転する。なお、第3キャリア34が回転不能であるため、各第3プラネタリギヤ32は公転しない。
【0124】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0125】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を代替の後進の第2速(R2’)とする際は、第2クラッチ52および第3クラッチ53をオン状態にするとともに、第2ブレーキ62をオン状態にする。第1クラッチ51、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0126】
第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第3クラッチ53がオン状態になるため、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転する。第2ブレーキ62がオン状態になるため、第2リングギヤ23と第3キャリア34とが回転不能になる。
【0127】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図15において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。第1中間軸81は、第2キャリア24と一体的に回転する。
【0128】
第3サンギヤ31は、第2キャリア24と一体的に回転する。第3サンギヤ31の回転によって、各第3プラネタリギヤ32は自転する。そして、第3リングギヤ33が回転する。なお、第3キャリア34が回転不能であるため、各第3プラネタリギヤ32は公転しない。
【0129】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0130】
図2に示すように、遊星歯車式変速機100の速度段を代替の後進の第2段(R2’’)とする際は、第1クラッチ51および第2クラッチ52をオン状態にするとともに、第2ブレーキ62をオン状態にする。第3クラッチ53、第1ブレーキ61および第3ブレーキ63は、オフ状態である。
【0131】
第1クラッチ51がオン状態になるため、第1リングギヤ13と第2サンギヤ21と第3サンギヤ31と第4サンギヤ41とは、互いに一体的に回転する。第2クラッチ52がオン状態になるため、第1キャリア14は第2キャリア24と一体的に回転する。第2ブレーキ62がオン状態になるため、第2リングギヤ23と第3キャリア34とが回転不能になる。
【0132】
この状態において、遊星歯車式変速機100は、図16において太線で示すような経路で、動力を伝達する。まず、第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転する。第2キャリア24は、第1キャリア14と一体的に回転する。第2キャリア24の回転によって、各第2プラネタリギヤ22が自転するとともに公転する。第2サンギヤ21が回転する。第1中間軸81は、第2サンギヤ21と一体的に回転する。
【0133】
第3サンギヤ31は、第1中間軸81と一体的に回転する。第3サンギヤ31の回転によって、各第3プラネタリギヤ32は自転する。そして、第3リングギヤ33が回転する。なお、第3キャリア34が回転不能であるため、各第3プラネタリギヤ32は公転しない。
【0134】
第4キャリア44は、第3リングギヤ33と一体的に回転する。この結果、第4キャリア44は、変速された回転速度を有する動力を出力する。
【0135】
次に、上述した各速度段における減速比の求め方について説明する。各速度段における減速比は、以下の第1〜第4関係式の少なくとも1つを用いて求める。
【0136】
第1関係式は、第1遊星歯車機構1に関する式であり、以下の式で表される。
【0137】
・Na1+b・Nb1=(a+b)・Nc1
【0138】
ここで、aは第1サンギヤ11の歯数、bは第1リングギヤ13の歯数、Na1は第1サンギヤ11の回転数比、Nb1は第1リングギヤ13の回転数比、Nc1は第1キャリア14の回転数比である。なお、各ギヤの回転数比とは、入力軸7の回転数に対する各ギヤの回転数の比をいう。
【0139】
第2関係式は、第2遊星歯車機構2に関する式であり、以下の式で表される。
【0140】
・Na2+b・Nb2=(a+b)・Nc2
【0141】
ここで、aは第2サンギヤ21の歯数、bは第2リングギヤ23の歯数、Na2は第2サンギヤ21の回転数比、Nb2は第2リングギヤ23の回転数比、Nc2は第2キャリア24の回転数比である。
【0142】
第3関係式は、第3遊星歯車機構3に関する式であり、以下の式で表される。
【0143】
・Na3+b・Nb3=(a+b)・Nc3
【0144】
ここで、aは第3サンギヤ31の歯数、bは第3リングギヤ33の歯数、Na3は第3サンギヤ31の回転数比、Nb3は第3リングギヤ33の回転数比、Nc3は第3キャリア34の回転数比である。
【0145】
第4関係式は、第4遊星歯車機構4に関する式であり、以下の式で表される。
【0146】
・Na4+b・Nb4=(a+b)・Nc4
【0147】
ここで、aは第4サンギヤ41の歯数、bは第4リングギヤ43の歯数、Na4は第4サンギヤ41の回転数比、Nb4は第4リングギヤ43の回転数比、Nc4は第4キャリア44の回転数比である。
【0148】
前進の第1速における減速比の求め方を説明する。第1遊星歯車機構1における第1リングギヤ13の回転数比Nb1を、第1関係式から求める。なお、第1サンギヤ11は回転しないため、第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14は入力軸7と一体的に回転するため、第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0149】
第2サンギヤ21は第1リングギヤ13と一体的に回転するため、第2サンギヤ21の回転数比Na2は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2キャリア24、第3サンギヤ31および第4サンギヤ41は、第1中間軸81と一体的に回転するため、第2キャリア24の回転数比Nc2、第3サンギヤ31の回転数比Na3、および第4サンギヤ41の回転数比Na4は相等しい。第2リングギヤ23は第3キャリア34と一体的に回転するため、第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。第3リングギヤ33は第4キャリア44と一体的に回転するため、第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。第4リングギヤ43は回転しないため、第4リングギヤ43の回転数比Nb4は0である。
【0150】
これらの回転数比の関係を第2〜第4関係式に代入して、第2〜第4関係式の連立3元1次方程式を解くことにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。第4キャリア44の回転数比Nc4の逆数が、遊星歯車式変速機100の減速比となる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における、サンギヤの歯数に対するリングギヤの歯数の比(歯数比)が、図3に示す通りであるとき、前進の第1速の減速比は約6.98である。
【0151】
同様に、各速度段において求められた減速比を図2に示す。前進の第2速では、第4関係式によって、第4キャリア44の回転数比Nc4を求める。第1キャリア14が入力軸7と一体的に回転し、第2キャリア24が第1キャリア14と一体的に回転し、第1中間軸81が第2キャリア24と一体的に回転し、第4サンギヤ41が第1中間軸81と一体的に回転するので、第4サンギヤ41の回転数比Na4は1である。第4リングギヤ43は回転しないため、第4リングギヤ43の回転数比Nb4は0である。この結果、前進の第2速における減速比が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第2速の減速比は約4.43である。
【0152】
前進の第3速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0153】
次に、第4関係式によって、第4キャリア44の回転数比Nc4を求める。第1中間軸81が第1リングギヤ13と一体的に回転し、第4リングギヤ43が第1中間軸81と一体的に回転するので、第4サンギヤ41の回転数比Na4は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第4リングギヤ43の回転数比Nb4は0である。この結果、前進の第3速における減速比が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第3速の減速比は約3.29である。
【0154】
前進の第4速では、第2キャリア24の回転数比Nc2は1である。第2サンギヤ21の回転数比Na2、第3サンギヤ31の回転数比Na3、および第4サンギヤ41の回転数比Na4は相等しい。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。第4リングギヤ43の回転数比Nb4は0である。
【0155】
これらの回転数比の関係を第2〜第4関係式に代入して、第2〜第4関係式の連立3元1次方程式を解くことにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第4速の減速比は約2.75である。
【0156】
前進の第5速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0157】
次に、第2関係式によって、第2リングギヤ23の回転数比Nb2を求める。第2サンギヤ21の回転数比Na2は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2キャリア24の回転数比Nc2は1である。
【0158】
次に、第3関係式と第4関係式とによって、第4キャリア44の回転数比Nc4を求める。第4サンギヤ41の回転数比Na4は、第3サンギヤ31の回転数比Na3と同じである。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。第4リングギヤ43の回転数比Nb4は0である。この結果、前進の第5速における減速比が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第5速の減速比は約2.29である。
【0159】
前進の第6速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0160】
次に、第2関係式によって、第2リングギヤ23の回転数比Nb2を求める。第2サンギヤ21の回転数比Na2は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2キャリア24の回転数比Nc2は1である。
【0161】
次に、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第3サンギヤ31の回転数比Na3は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。
【0162】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。この結果、前進の第6速における減速比が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第6速の減速比は約1.56である。
【0163】
前進の第7速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0164】
次に、第2関係式によって、第2リングギヤ23の回転数比Nb2を求める。第2サンギヤ21の回転数比Na2は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2キャリア24の回転数比Nc2は1である。
【0165】
次に、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第3サンギヤ31の回転数比Na3は1である。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。
【0166】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。この結果、前進の第7速における減速比が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第7速の減速比は約1.32である。
【0167】
前進の第8速では、上述したように変速は行われない。前進の第8速における減速比は1である。
【0168】
前進の第9速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0169】
第1リングギヤ13の回転数比Nb1、第2サンギヤ21の回転数比Na2、第2キャリア24の回転数比Nc2、および第3サンギヤ31の回転数比Na3は相等しい。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は、第3キャリア34の回転数比Nc3と同じである。このため、第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。
【0170】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、前進の第9速の減速比は約0.74である。
【0171】
後進の第1速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0172】
次に、第2関係式によって、第2キャリア24の回転数比Nc2を求める。第2サンギヤ21の回転数比Na2は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は0である。
【0173】
次に、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第3サンギヤ31の回転数比Na3は、第2キャリア24の回転数比Nc2と同じである。第3キャリア34の回転数比Nc3は0である。
【0174】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、後進の第1速の減速比は約−6.30である。
【0175】
後進の第2速では、第1関係式によって、第1リングギヤ13の回転数比Nb1を求める。第1サンギヤ11の回転数比Na1は0である。第1キャリア14の回転数比Nc1は1である。
【0176】
次に、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第3サンギヤ31の回転数比Na3は、第1リングギヤ13の回転数比Nb1と同じである。第3キャリア34の回転数比Nc3は0である。
【0177】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、後進の第2速の減速比は約−2.13である。
【0178】
代替の後進の第2速(R2’)では、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第1キャリア14は入力軸7と一体的に回転し、第2キャリア24は第1キャリア14と一体的に回転し、第1中間軸81は第2キャリア24と一体的に回転し、第3サンギヤ31は第1中間軸81と一体的に回転するため、第3サンギヤ31の回転数比Na3は1である。第3キャリア34の回転数比Nc3は0である。
【0179】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、代替の後進の第2速(R2’)の減速比は約−2.87である。
【0180】
代替の後進の第2速(R2’’)では、第2関係式によって、第2サンギヤ21の回転数比Na2を求める。第1キャリア14は入力軸7と一体的に回転し、第2キャリア24は第1キャリア14と一体的に回転するため、第2キャリア24の回転数比Nc2は1である。第2リングギヤ23の回転数比Nb2は0である。
【0181】
次に、第3関係式によって、第3リングギヤ33の回転数比Nb3を求める。第1中間軸81は第2サンギヤ21と一体的に回転し、第3サンギヤ31は第1中間軸81と一体的に回転するため、第3サンギヤ31の回転数比Na3は第2サンギヤ21の回転数比Nc2と同じである。第3キャリア34の回転数比Nc3は0である。
【0182】
第3リングギヤ33の回転数比Nb3は、第4キャリア44の回転数比Nc4と同じである。これにより、第4キャリア44の回転数比Nc4が求められる。たとえば、第1〜第4遊星歯車機構1〜4における歯数比が図3に示す通りであるとき、代替の後進の第2速(R2’’)の減速比は約−0.97である。
【0183】
なお、図2中に示す段間比とは、各変速段の減速比間の比を表す。詳細には、隣同士の変速段の減速比について、低速段の減速比を高速段の減速比で除した値を段間比という。総段間比とは、最低速段の減速比を最高速段の減速比で除した値をいう。本実施形態の遊星歯車式変速機100は、前進9段の速度段を有している。本実施形態の遊星歯車式変速機100の総段間比は、前進の第1速の減速比を、前進の第9速の減速比で除した値である。
【0184】
本実施形態の遊星歯車式変速機100は、前進の速度段を9段有するとともに後進の速度段を2段有しており、遊星歯車式変速機100の速度段が増加している。前進9段、後進2段の速度段を実現するために、遊星歯車式変速機100は4つの遊星歯車機構と合計6つのクラッチおよびブレーキとを有しており、部品数が低減している。図2に示す総段間比は9.40であり、総段間比が拡大している。前進9段の速度段の段間比は、1.19〜1.58の範囲にあり、段間比のばらつきが低減されている。
【0185】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0186】
1 第1遊星歯車機構、2 第2遊星歯車機構、3 第3遊星歯車機構、4 第4遊星歯車機構、7 入力軸、9 ケーシング、10 出力軸、11 第1サンギヤ、12 第1プラネタリギヤ、13 第1リングギヤ、14 第1キャリア、21 第2サンギヤ、22 第2プラネタリギヤ、23 第2リングギヤ、24 第2キャリア、31 第3サンギヤ、32 第3プラネタリギヤ、33 第3リングギヤ、34 第3キャリア、41 第4サンギヤ、42 第4プラネタリギヤ、43 第4リングギヤ、44 第4キャリア、51 第1クラッチ、52 第2クラッチ、53 第3クラッチ、61 第1ブレーキ、62 第2ブレーキ、63 第3ブレーキ、81 第1中間軸、100 遊星歯車式変速機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16