(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回路基板台では、前記内壁に沿った長さが10mm以上100mm以下に設定され、前記内壁から突出する長さが5mm以上20mm以下に設定され、厚さが1mm以上10mm以下に設定された、請求項2記載の半導体装置。
前記回路基板台における前記絶縁基板と対向する側には、前記回路基板台の突出先端部から前記ケース材に向かって、前記絶縁基板に近づく態様で傾斜する傾斜部が設けられた、請求項2記載の半導体装置。
前記回路基板台における前記絶縁基板と対向する側には、前記ケース材から距離を隔てられた位置から前記ケース材に向かって、前記絶縁基板に近づく態様で傾斜する傾斜部が設けられた、請求項8記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
実施の形態1に係る半導体装置について説明する。この半導体装置は半導体パワーモジュールである。半導体パワーモジュールは、たとえば、家電機器および自動車等をはじめ、電力制御を行う機器に広く用いられている。
【0012】
図1および
図2に示すように、半導体装置1は、主として、半導体素子基板3、半導体素子13、ケース材15および封止樹脂29を備えている。
【0013】
半導体素子基板3では、ベース板5の表面に絶縁基板7を介在させて、導電性の第1回路基板9が配置されている。絶縁基板7として、たとえば、セラミック基板または窒化アルミニウム等が用いられている。第1回路基板9として、たとえば、一枚の銅板に、半導体素子のレイアウト等に基づいた所定のパターニングを施したものが用いられている。
【0014】
半導体素子13は、第1回路基板9に、たとえば、はんだ等の接合剤11によって実装されている。半導体素子13として、たとえば、電力用半導体素子に並列に接続されている還流ダイオードが形成されている。半導体装置1では、電力用半導体素子に並列に接続された半導体素子13が、複数搭載されている。
【0015】
ケース材15は、半導体素子基板3に接着剤23によって固定されている。ケース材15には、内壁から半導体素子13が配置されている側に向かって突出した回路基板台17が設けられている。この回路基板台17は、絶縁基板7よりも高い位置に配置されている。また、回路基板台17は、ケース材15と一体的に形成されている。回路基板台17には、導電性の第2回路基板21が直接実装されている。第2回路基板21として、たとえば、所定のパターニングを施した銅板が用いられている。また、ケース材15には、銅の電極端子19が設けられている。
【0016】
電極端子19と第2回路基板21とが、配線25によって電気的に接続されている。また、第2回路基板21と半導体素子13とが、配線27によって電気的に接続されている。こうして、複数の半導体素子13のそれぞれは、第2回路基板21を経由して電極端子19に電気的に接続されることになる。
【0017】
第2回路基板21が直接実装される回路基板台17には、第2回路基板21を実装するに足りる幅L1、長さL2および厚さT1が設定される。幅L1は、ケース材15の内壁に沿った長さであり、たとえば、10mm〜100mmに設定される。幅L1が10mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、幅L1が100mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。
【0018】
長さL2は、ケース材15の内壁から突出する長さであり、たとえば、5mm〜20mmに設定される。長さL2が5mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、長さL2が20mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。厚さT1は、たとえば、1mm〜10mmに設定される。厚さT1が、1mmよりも薄いと、機械的強度が十分ではない。一方、厚さT1が、10mmを超えると過剰な厚さとなり適切ではなくなる。
【0019】
また、回路基板台17と絶縁基板7との間の高さ方向の距離H1は、たとえば、3mm〜10mmに設定されている。距離H1が3mmよりも短いと、封止樹脂29を充填する際に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。一方、距離H1が10mmを超えると、第2回路基板21等を確実に封止することができないおそれがある。
【0020】
第1回路基板9、第2回路基板21および電極端子19のそれぞれの材料としては、通常使用される銅(銅板)を例に挙げたが、必要な放熱特性を有するものであれば、銅に限られるものではない。たとえば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、または、アルミニウムと鉄とを複合したものを用いてもよい。また、銅/インバー/銅等の複合材料を用いてもよい。さらに、アルミニウム‐炭化ケイ素合金(AlSiC)、または、銅‐モリブデン合金(CuMo)等の合金を用いてもよい。
【0021】
第1回路基板9および第2回路基板21等の表面には、通常、ニッケル(Ni)めっきが施されているが、必要な電流と電圧を半導体素子13に供給できる構造であれば、めっきが施されていても、めっきが施されていなくてもよい。めっきが施される場合、ニッケルめっきの他に、たとえば、金めっきまたは錫めっきを施してもよい。
【0022】
また、電極端子19、第1回路基板9および第2回路基板21のそれぞれにおける封止樹脂29と接触する部分では、封止樹脂29との密着性を向上させるために、電極端子19、第1回路基板9および第2回路基板21のそれぞれの表面に、微小な凹凸を設けてもよい。あるいは、電極端子19、第1回路基板9および第2回路基板21のそれぞれの表面に、プライマー処理等の密着性向上剤を塗布するようにしてもよい。密着性向上剤として、たとえば、シランカップリング剤、ポリイミドまたはエポキシ樹脂等が用いられるが、半導体素子基板3の電極部材と封止樹脂29との密着性を向上させるものであれば、これらに限られるものではない。
【0023】
絶縁基板7は、アルミナ(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化シリコン(Si
3N
4)等のセラミック粉を分散させた樹脂を硬化した樹脂硬化物基板とされる。半導体素子基板3は、そのような絶縁基板7の一方の表面に第1回路基板9が貼り付けられ、他方の表面にベース板5が貼り付けられたものである。
【0024】
半導体素子基板3では、放熱性と絶縁性を備えることが必要とされていることから、絶縁基板7として、樹脂にセラミック板を埋め込んだ樹脂硬化物基板、または、単にセラミックで構成された絶縁基板を用い、その絶縁基板の一方の表面に第1回路基板が貼り付けられ、他方の表面にベース板が貼り付けられた半導体素子基板を用いてもよい。
【0025】
また、絶縁基板7に含まれるセラミック粉として、アルミナ(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化シリコン(Si
3N
4)等を例に挙げたが、これらに限られるものではなく、たとえば、ダイヤモンド(C)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ホウ素(B
2O
3)などを用いてもよい。
【0026】
セラミック粉の他に、たとえば、シリコーン樹脂またはアクリル樹脂等の樹脂製の粉体を用いてもよい。粉体の場合、形状が球状の粉体を用いることが多いが、これに限られるものではなく、たとえば、破砕状、粒状、リン片状、凝集体等の粉体を用いてもよい。また、粉体の充填量としては、必要な放熱性と絶縁性が得られる量が、絶縁基板7に充填されていればよい。
【0027】
絶縁基板7に用いる樹脂として、通常、エポキシ樹脂が用いられるが、これに限られるものではない。この他に、たとえば、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂またはアクリル樹脂等を用いてもよく、絶縁性と接着性を兼ね備えた材料の樹脂であればよい。
【0028】
ベース板5に用いる材料として、通常、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)等の金属が用いられるが、これに限られるものではない。これらの他に、たとえば、アルミニウム‐炭化ケイ素合金(AlSiC)、または、銅‐モリブデン合金(CuMo)等の合金を用いてもよい。また、ベース板5の材料として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂またはアクリル樹脂等の有機材料を用いてもよい。
【0029】
配線25、27として、アルミニウムまたは金から形成された、断面形状が円形の線体を用いるが、これに限られるものではない。円形の線体の他に、たとえば、断面形状が方形(矩形)の銅板を帯状にした線体を用いてもよい。なお、
図1では、一つの半導体素子13に対して、1本の配線27が接続された構造が示されているが、これは、配線25、27に関する説明の便宜上、簡略的に示したものに過ぎず、実際の半導体装置1では、半導体素子13の電流密度等により、必要な本数の配線が設けられることになる。
【0030】
配線27と半導体素子13との接合には、銅または錫等の金属片を溶融させて接合する溶融接合、または、超音波を印加する超音波接合等を用いることができ、必要な電流と電圧とを半導体素子に供給できる接合方法であればよい。
【0031】
封止樹脂29の材料として、たとえば、エポキシ樹脂を用いるが、これに限られるものではなく、所望の弾性率と耐熱性を有している樹脂であれば、封止樹脂の材料として用いることができる。エポキシ樹脂の他に、たとえば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはアクリル樹脂等を用いてもよく、絶縁性と接着性を兼ね備えた材料であればよい。
【0032】
上述した半導体装置1では、第1回路基板9に実装された半導体素子13と電極端子19とは、配線27、25により、第2回路基板21を経由して電気的に接続されている。その第2回路基板21は、ケース材15の回路基板台17に直接実装されている。これにより、絶縁性をより安定に確保することができる。これについて、比較例に係る半導体装置と比べて説明する。
【0033】
図3に示すように、比較例に係る半導体装置101は、主として、半導体素子基板103、半導体素子113、ケース材115および封止樹脂129を備えている。半導体素子基板103では、ベース板105の表面に絶縁基板107を介在させて第1回路基板109が配置されている。絶縁基板107の表面には、第2回路基板121が配置されている。半導体素子113は、第1回路基板9に、はんだ等の接合剤111によって実装されている。
【0034】
ケース材115は、半導体素子基板103に接着剤123によって固定されている。ケース材115には、電極端子119が取付けられている。電極端子119と第2回路基板121とが、配線125によって電気的に接続され、第2回路基板121と半導体素子113とが、配線127によって電気的に接続されている。半導体素子113および配線125、127等を封止するように、ケース材115の内側の領域に封止樹脂129が充填されている。
【0035】
比較例に係る半導体装置101では、半導体素子113は、配線127、125により、第2回路基板121を経由して電極端子119に電気的に接続されている。その電気的な中継地点となる第2回路基板121は、第1回路基板109が配置されている絶縁基板107における所定の領域に配置されている。
【0036】
中継地点としての第2回路基板121の面積は、半導体素子113が実装される第1回路基板109の面積に比べて小さい。このため、封止樹脂129と第1回路基板109との接触面積は、比較的大きいのに対して、封止樹脂129と第2回路基板121との接触面積は、比較的小さくなる。
【0037】
接触面積が小さいと、封止樹脂129との接着強度も低くなる。ここで、
図4に示すように、接着強度が低い封止樹脂129と第2回路基板121との界面において剥離が生じると、ヒートサイクルまたは高温保存に伴う熱履歴によって、封止樹脂129が膨張と収縮を繰り返すことで、剥離131が絶縁基板107まで達することがある。
【0038】
さらに、封止樹脂129の膨張と収縮が繰り返されると、剥離が到達した絶縁基板107の部分から絶縁基板107にクラック133が生じ、最終的には、半導体装置101に絶縁不良が発生することになる。
【0039】
比較例に対して上述した半導体装置1では、
図1または
図2に示すように、第2回路基板21は、ケース材15の内壁から突出する回路基板台17に直接実装されている。このため、
図5に示すように、封止樹脂29と第2回路基板21との界面に剥離31が生じたとしても、その剥離31は、封止樹脂29が膨張と収縮を繰り返すことで、回路基板台17に達することになる。これにより、第2回路基板21と封止樹脂29との界面に生じた剥離31が、絶縁基板7にクラックを生じさせることはない。その結果、半導体装置1に絶縁不良が発生するのを確実に抑制することができる。
【0040】
特に、ワイドギャップ半導体を適用した、150℃以上の温度のもとで動作をする半導体装置においては、動作時において封止樹脂に発生する応力が比較的大きく、剥離が生じやすくなるため、第2回路基板21を回路基板台17に直接実装させた構造とすることで、半導体装置の絶縁性を安定に確保することができる。
【0041】
なお、第2回路基板21を回路基板台17に直接実装させた構造ではなく、第2回路基板と回路基板台17との間に、他の絶縁基板を介在させて実装した構造(図示せず)では、比較例に係る半導体装置について説明したのと同様に、剥離が到達した他の絶縁基板の部分から、他の絶縁基板にクラックが生じ、最終的には、絶縁不良が発生することが想定される。
【0042】
また、第2回路基板21は、ケース材15の内壁から半導体素子13が搭載されている側へ突出した回路基板台17に実装されている。これにより、半導体素子13と第2回路基板21とを電気的に接続する配線27の長さが比較的短くて済み、配線の長寿命化に寄与することができる。
【0043】
こうして、実施の形態に係る半導体装置1では、絶縁不良を抑制するとともに、配線の長寿命化を図ることができ、半導体装置としての信頼性をさらに高めることができる。
【0044】
実施の形態2
ここでは、互いに対向するケース材の内壁間を渡すように回路基板台が配置された半導体装置について説明する。
【0045】
図6および
図7に示すように、半導体装置1は、主として、半導体素子基板3、半導体素子13、ケース材15および封止樹脂29を備えている。特に、ケース材15には、互いに対向する一方の内壁と他方の内壁とを渡すように、架橋構造の回路基板台17が設けられている。この回路基板台17は、絶縁基板7よりも高い位置に配置されている。また、回路基板台17は、ケース材15と一体的に形成されている。その回路基板台17に第2回路基板21が直接実装されている。なお、これ以外の構成については、
図1および
図2に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0046】
第2回路基板21が直接実装される架橋構造の回路基板台17には、第2回路基板21を実装するに足りる幅L3と厚さT2が設定される。幅L3は、たとえば、5mm〜30mmに設定される。幅L3が5mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、幅L3が30mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。
【0047】
厚さT2は、たとえば、1mm〜10mmに設定される。厚さT2が、1mmよりも薄いと、機械的強度が十分ではない。一方、厚さT2が、10mmを超えると過剰な厚さとなり適切ではなくなる。
【0048】
また、回路基板台17と絶縁基板7との間の高さ方向の距離H2は、たとえば、3mm〜10mmに設定されている。距離H2が3mmよりも短いと、封止樹脂29を充填する際に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。一方、距離H2が10mmを超えると、第2回路基板21等を確実に封止することができないおそれがある。
【0049】
上述した半導体装置1では、第2回路基板21は、ケース材15の互いに対向する一方の内壁と他方の内壁とを渡すように設けられた、架橋構造の回路基板台17に直接実装されている。このため、封止樹脂29と第2回路基板21との界面において剥離(図示せず)が生じたとしても、その剥離は、封止樹脂29が膨張と収縮を繰り返すことで、回路基板台17に達することになる。これにより、第2回路基板21と封止樹脂29との界面に生じた剥離が、絶縁基板7にクラックを生じさせることはない。その結果、半導体装置1に絶縁不良が発生するのを確実に抑制することができ、半導体装置の絶縁性を安定に確保することができる。
【0050】
また、回路基板台17が架橋構造であることで、回路基板台17における第2回路基板21の位置を、半導体素子13に接近させやすくなる。これにより、半導体素子13と第2回路基板21とを電気的に接続する配線27の長さが比較的短くて済み、配線の長寿命化に寄与することができる。
【0051】
さらに、架橋構造の回路基板台17を、ケース材15の中央付近に配置させることで、第2回路基板21は、半導体装置1の外周部分から距離を隔てられた位置に配置されることになり、第2回路基板21に生じる応力を低減させることができる。これにより、封止樹脂29と第2回路基板21との界面に剥離が生じるのを抑制することができる。
【0052】
実施の形態3
ここでは、回路基板台に傾斜部が設けられた半導体装置の第1例について説明する。
【0053】
図8および
図9に示すように、半導体装置1は、主として、半導体素子基板3、半導体素子13、ケース材15および封止樹脂29を備えている。特に、ケース材15に設けられた回路基板台17は、傾斜部18を備えている。傾斜部18は、回路基板台17において、絶縁基板7と対向する下面側に形成されている。
【0054】
その回路基板台17に第2回路基板21が直接実装されている。なお、これ以外の構成については、
図1および
図2に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0055】
次に、傾斜部18が形成された回路基板台17について、具体的に説明する。まず、
図1および
図2に示す半導体装置について説明したのと同様に、回路基板台17には、第2回路基板21を実装するに足りる幅L1および長さL2が設定される。幅L1は、ケース材15の内壁に沿った長さであり、たとえば、10mm〜100mmに設定される。幅L1が10mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、幅L1が100mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。
【0056】
長さL2は、ケース材15の内壁から突出する長さであり、たとえば、5mm〜20mmに設定される。長さL2が5mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、長さL2が20mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。
【0057】
また、回路基板台17の内側端部と絶縁基板7との間の高さ方向の距離H1は、たとえば、3mm〜10mmに設定されている。距離H1が3mmよりも短いと、封止樹脂29を充填する際に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。一方、距離H1が10mmを超えると、第2回路基板21等を確実に封止することができないおそれがある。
【0058】
次に、傾斜部18について説明する。傾斜部18は、回路基板台17の突出先端部からケース材15に向かって、絶縁基板7に近づく態様で傾斜している。傾斜部18は、絶縁基板7に対して5°以上の傾斜角度θをもって傾いている。
【0059】
ここで、回路基板台17の長さL2を20mm(許容最大値)、距離H1を3mm(許容最小値)とすると、最小の傾斜角度θは約8.5°となる。この傾斜角度θがさらに小さくなり、5°よりも小さい傾斜角度θになると、回路基板台17と絶縁基板7との間に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。したがって、傾斜部18の傾斜角度θは5°以上が望ましい。
【0060】
上述した半導体装置では、絶縁基板7にクラックを生じさせない効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0061】
回路基板台17には、回路基板台17の突出端部からケース材15に向かって、絶縁基板7に近づく態様で傾斜する傾斜部18が設けられている。
図10に示すように、傾斜部18が設けられることで、回路基板台17と絶縁基板7との間の比較的狭い空間に、封止樹脂29が流れ込みやすくなる(矢印参照)。
【0062】
これにより、封止樹脂が十分に充填されず、半導体装置の内部に気泡が残留することに起因して、半導体装置の動作中に放電が発生することが抑制される。その結果、半導体装置1の絶縁性をさらに安定に確保することができる。
【0063】
実施の形態4
ここでは、回路基板台に傾斜部が設けられた半導体装置の第2例について説明する。
【0064】
図11および
図12に示すように、半導体装置1は、主として、半導体素子基板3、半導体素子13、ケース材15および封止樹脂29を備えている。特に、ケース材15に設けられた架橋構造の回路基板台17は、傾斜部18を備えている。傾斜部18は、回路基板台17において、絶縁基板7と対向する下面側に形成されている。
【0065】
その回路基板台17に第2回路基板21が直接実装されている。なお、これ以外の構成については、
図6および
図7に示す半導体装置と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0066】
次に、傾斜部18が形成された架橋構造の回路基板台17について、具体的に説明する。まず、
図6および
図7に示す半導体装置について説明したのと同様に、回路基板台17には、第2回路基板21を実装するに足りる幅L3が設定される。幅L3は、たとえば、5mm〜30mmに設定される。幅L3が5mmよりも狭いと、第2回路基板21を実装するのに十分ではなくなる。一方、幅L3が30mmを超えると、封止樹脂29を充填する際の妨げになってしまうおそれがある。
【0067】
また、回路基板台17と絶縁基板7との間の高さ方向の距離H2は、たとえば、3mm〜10mmに設定されている。距離H2が3mmよりも短いと、封止樹脂29を充填する際に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。一方、距離H2が10mmを超えると、第2回路基板21等を確実に封止することができないおそれがある。
【0068】
次に、傾斜部18について説明する。傾斜部18は、架橋構造の回路基板台17におけるケース材15から距離を隔てられた所定の位置からケース材15に向かって、絶縁基板7に近づく態様で傾斜している。傾斜部18は、絶縁基板7に対して5°以上の傾斜角度θをもって傾けられている。前述したのと同様に、この傾斜角度θが5°よりも小さいと、回路基板台17と絶縁基板7との間に、封止樹脂29が十分に充填されないおそれがある。したがって、傾斜部18の傾斜角度θは5°以上が望ましい。
【0069】
上述した半導体装置では、絶縁基板7にクラックを生じさせない効果に加えて、次のような効果が得られる。
【0070】
回路基板台17には、架橋構造の回路基板台17の所定の位置からケース材15に向かって、絶縁基板7と回路基板台17との間の距離(高さ)が徐々に短くなる態様で傾斜部18が設けられている。傾斜部18が設けられることで、回路基板台17と絶縁基板7との間の比較的狭い空間に、封止樹脂29が流れ込みやすくなる。
【0071】
これにより、封止樹脂が十分に充填されず、半導体装置の内部に気泡が残留することに起因して、半導体装置の動作中に放電が発生することが抑制される。その結果、半導体装置1の絶縁性をさらに安定に確保することができる。
【0072】
なお、
図9または
図12では、傾斜部18の傾斜面がフラットである場合が示されているが、傾斜角度θが5°以上であれば、傾斜面は曲面であってもよく、たとえば、
図13に示すように、凹面(上に向かって凸)であってもよい。また、
図14に示すように、凸面(下に向かって凸)であってもよい。さらに、架橋構造の回路基板台17の傾斜部18の傾斜面についても、同様に、凹面または凸面にしてもよい(図示せず)。
【0073】
なお、上述した各実施の形態では、回路基板台17とケース材15とが一体的に形成された場合を例に挙げて説明した。回路基板台としては、これに限られるものではなく、たとえば、ケース材15と同じ材料によって別途形成された回路基板台を、ケース材に固定するようにしてもよい。
【0074】
各実施の形態において説明した半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能であり、たとえば、ケース材15の内壁に沿って位置する回路基板台と、架橋構造の回路基板とを組み合わせてもよい。
【0075】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
半導体装置(1)は、主として、半導体素子基板(3)、半導体素子(13)、ケース材(15)および封止樹脂(29)を備えている。半導体素子基板(3)では、ベース板(5)の表面に絶縁基板(7)を介在させて、導電性の第1回路基板(9)が配置されている。ケース材(15)には、内壁から半導体素子(13)が配置されている側に向かって突出した回路基板台(17)と、電極端子(19)とが設けられている。回路基板台(17)には、導電性の第2回路基板(21)が直接実装されている。電極端子(19)と第2回路基板(21)とが、配線(25)によって電気的に接続され、第2回路基板(21)と半導体素子(13)とが、配線(27)によって電気的に接続されている。