特許第6054037号(P6054037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054037
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20161219BHJP
   B65D 51/18 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B65D47/08 F
   B65D51/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-18150(P2012-18150)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154924(P2013-154924A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年7月31日
【審判番号】不服2015-21006(P2015-21006/J1)
【審判請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 高橋 祐介
【審判官】 井上 茂夫
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08 F, B65D 51/18 A
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体口頸部(100)外周に嵌合する装着筒(10)の上端より延設した頂板(11)中央部に注出筒(13)を立設し、注出筒(13)内の頂板(11)を除去可能に構成し、注出筒(13)外周に環状の係止突部(16)を立設してなるキャップ本体(A1)と、
キャップ本体(A1)の後部と周壁(20)の後部とをヒンジ(50)を介して連結して開閉可能に設けるとともに、周壁(20)の上端縁より頂壁(21)を延設し、係止突部(16)の外周面を嵌合シールする係合部(23)を周壁(20)の内周下端部に環状に凹設してなる蓋体(A2)とを備え、
全体を合成樹脂により形成したキャップであって、
係止突部(16)の外周上部に係止突条(17)を、また上記係合部(23)の内周下部に係合突条(24)をそれぞれ環状に突設させて、係合突条(24)が係止突条(17)を乗り越え係合するとともに、
この係合状態で、係合部(23)の頂面を係止突部(16)の上面に当接させ、かつ、蓋体(A2)の周壁(20)下面の外側周縁部に凹設された嵌合凹部(26)に、キャップ本体(A1)の上面周縁部から突設された嵌合凸部(18)を嵌合させ、
嵌合凸部(18)が、キャップ本体(A1)の上面周縁部左右にそれぞれ突設し、キャップ本体(A1)の外周面に沿った円弧状の外面を備えた円弧板状の突条形態をなし、
嵌合凹部(26)が、蓋体周壁(20)下面の外側周縁部左右にそれぞれ凹設され、蓋体周壁(20)の外周面に沿った円弧状の外面を持つことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
キャップ本体(A1)外周と、蓋体(A2)外周との間にシュリンクフィルム(f)を掛け渡し装着した請求項1に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャップに関し、詳しくは、容器体に嵌着固定されるキャップ本体と、キャップ本体に対して開閉可能にヒンジ連結された蓋体とを備えたキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
上記キャップ本体及び蓋体を備えたキャップであって、殺菌のため加熱された収容液を充填する容器体に対して、収容液充填後キャップを打栓して容器体内部を殺菌し、次いで容器体外部より温水シャワーで洗浄、冷却することは従来より行われている。
【0003】
また、この様なキャップにおいて、キャップの打栓時に、上方から押圧することにより蓋体をキャップ本体に対して下降させるとともに、蓋体を変形させ、キャップ内から外部への空気の通気路を形成させて空気をキャップ外に排出し、キャップの打栓終了時に、蓋体の復元力で、蓋体をキャップ本体に対して上昇させることによりキャップ内から外部への空気の通気路が閉塞され、キャップ内が僅かに負圧になるようにしたキャップも提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
また、この種のキャップ本体と蓋体とからなるキャップでは、周囲にシュリンクフィルムを装着して未使用を強調することも行われている。シュリンクフィルムを収縮させる際に高温のスチームを使用するが、スチームにより蓋体に変形が生じ、温水シャワーを内部に吸い込んでしまうという不都合を生じる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−099317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、内外からの加熱に対して変形を極力防止することができ、例えば、シュリンクフィルムの装着等のためにスチームを使用した場合でも変形を防止でき、温水シャワーによる洗浄、冷却の際に内部にシャワー水を吸い込む等の不都合のないキャップを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、
容器体口頸部100外周に嵌合する装着筒10の上端より延設した頂板11中央部に注出筒13を立設し、注出筒13内の頂板11を除去可能に構成し、注出筒13外周に環状の係止突部16を立設してなるキャップ本体A1と、
キャップ本体A1の後部と周壁20の後部とをヒンジ50を介して連結して開閉可能に設けるとともに、周壁20の上端縁より頂壁21を延設し、係止突部16の外周面を嵌合シールする係合部23を周壁20の内周下端部に環状に凹設してなる蓋体A2とを備え、
全体を合成樹脂により形成したキャップであって、
係止突部16の外周上部に係止突条17を、また上記係合部23の内周下部に係合突条24をそれぞれ環状に突設させて、係合突条24が係止突条17を乗り越え係合するとともに、
この係合状態で、係合部23の頂面を係止突部16の上面に当接させ、かつ、蓋体A2の周壁20下面の外側周縁部に凹設された嵌合凹部26に、キャップ本体A1の上面周縁部から突設された嵌合凸部18を嵌合させ、
嵌合凸部18が、キャップ本体A1の上面周縁部左右にそれぞれ突設し、キャップ本体A1の外周面に沿った円弧状の外面を備えた円弧板状の突条形態をなし、
嵌合凹部26が、蓋体周壁20下面の外側周縁部左右にそれぞれ凹設され、蓋体周壁20の外周面に沿った円弧状の外面を持つ。
【0009】
の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段於いて、キャップ本体A1外周と、蓋体A2外周との間にシュリンクフィルムfを掛け渡し装着した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器体口頸部100外周に嵌合する装着筒10の上端より延設した頂板11中央部に注出筒13を立設し、注出筒13内の頂板11を除去可能に構成し、注出筒13外周に環状の係止突部16を立設してなるキャップ本体A1と、キャップ本体A1にヒンジ50を介して開閉可能に設けるとともに、周壁20の上端縁より頂壁21を延設し、係止突部16の外周面を嵌合シールする係合部23を周壁20の内周下端部に環状に凹設してなる蓋体A2とを備え、全体を合成樹脂により形成したキャップであって、
係止突部16の外周上部に係止突条17を、また上記係合部23の内周下部に係合突条24をそれぞれ環状に突設させて、係合突条24が係止突条17を乗り越え係合するとともに、この係合状態で、係合部23の頂面を係止突部16の上面に当接させ、かつ、蓋体A2の周壁20下面の外側周縁部に凹設された嵌合凹部26に、キャップ本体A1の上面周縁部から突設された嵌合凸部18を嵌合させたので、嵌合凸部18と嵌合凹部26との存在に加えて、係止突部16と係合部23との嵌合シールが加わるため、内外からの加熱に対して変形を極力防止する対応ができ、例えば、シュリンクフィルムの装着等のためにスチームを使用した場合でも変形を防止でき、温水シャワーによる洗浄、冷却の際に内部にシャワー水を吸い込む等の虞がない。
【0011】
嵌合凸部18が、キャップ本体A1の上面周縁部左右にそれぞれ突設し、キャップ本体A1の外周面に沿った円弧状の外面を備えた円弧板状の突条形態をなし、嵌合凹部26が、蓋体周壁20下面周縁部左右にそれぞれ凹設し、蓋体周壁20の外周面に沿った円弧状の外面を持つ円弧板状をなす場合には、嵌合凸部18と嵌合凹部26とをピッタリ嵌合させることができ、これらの存在があっても特別邪魔となる突出部を形成することはなく外観良好に形成することができる。しかも、キャップの両側に嵌合凸部18及び嵌合凹部26が位置しているため、ヒンジによる蓋体A2の開閉と直交方向位置に両者が存在し着脱時に無理のない着脱が行える利点がある。
【0012】
キャップ本体A1外周と、蓋体A2外周との間にシュリンクフィルムfを掛け渡し装着した場合には、キャップ本体A1と蓋体A2とを開封前に確実に固定しておくことができ、未使用であることを容易に認知させることができ、しかもシュリンク包装の際のスチームで変形等を生じる虞がなく、温水シャワー等の洗浄、冷却を行っても内部にシャワー水が浸入する虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】キャップの開蓋状態の平面図である。(第1実施例)
図2】嵌合凸部と嵌合凹部の嵌合部分の要部拡大断面図である。(第1実施例)
図3】キャップの周囲にシュリンクフィルムを装着した縦断面図である。(第1実施例)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1はキャップの第1実施例を示すもので、キャップAは、キャップ本体A1と、蓋体A2とを、ヒンジ50により連結して、全体を合成樹脂により一体に形成している。尚、説明の便宜上、図1に於ける下方をキャップ本体A1の前部(蓋体A2の後部)、上方をキャップ本体A1の後部(蓋体A2の前部)、左方をキャップ本体A1及び蓋体A2の左側部、右方をキャップ本体A1及び蓋体A2の右側部として説明する。
【0016】
キャップ本体A1は、装着筒10の上端縁より頂板11を延設した下端開口の有頂筒状をなし、装着筒10を容器体Bの口頸部100外周に嵌合させ、また、頂板11の裏面周縁部から垂設したシール筒12を口頸部100内周上端部に密嵌して、容器体Bに装着する。
【0017】
また、頂板11の上面中央部に注出筒13を起立している。注出筒13内の頂板11は下方へドーム状に陥没しており、陥没部分の周縁部下面に薄肉の易切断部14を環状に凹設している。また、易切断部14内の頂板11上面には支柱を介してプルリング15を起立しており、使用に当たって、このプルリング15を掴んで引き上げる等することで、易切断部14を切断して注出筒13内の頂板11を開口し、容器体B内の液の注出を可能とする。
【0018】
また、注出筒13の外方の頂板11上面周縁部に環状の係止突部16を起立している。本例に於ける係止突部16はキャップ本体A1の外周縁から内方へ間隔をあけた位置に起立した円筒状をなし、外周上部に係止突条17を環状に突設している。この係止突部16は、蓋体A2を係止する役割を果たすとともに、蓋体A2の周壁とで蓋体A2内外をシールする。また、蓋体A2の後述する係合部とで、キャップAの打栓時に連通する通気路を形成する。
【0019】
キャップ本体A1の上面周縁部には嵌合凸部18を突設している。本例に於ける嵌合凸部18は、キャップ本体A1の上面周縁部左右にそれぞれ突設し、キャップ本体A1の外周面に沿った円弧状の外面を備えた円弧板状の突条形態をなしている。
【0020】
蓋体A2は、周壁20の上端縁より頂壁21を延設した下端開口の有頂筒状をなし、周壁20の後部下端部と、キャップ本体A1の装着筒10後部上端部とをヒンジ50を介して回動可能に連結している。
【0021】
蓋体A2の頂壁21裏面中央部からは、注出筒13に嵌合させるシール筒部22を垂設している。シール筒部22は、閉蓋時に、下端部を注出筒13の内周上端部に気密に嵌合させている。
【0022】
また、周壁20の内周下端部に係合部23を設けている。係合部23は、キャップ本体A1の係止突部16の上面及び外周面を嵌合シールするもので、環状の凹部形態をなし、内周下部に係合突条24を環状に突設している。図示例に於いて係合部23は、頂面を係止突部16の上面に気密に当接しており、また、係合突条24を係止突条17に乗り越え係合させて、この部分でも気密にシールしている。また、周壁20の前面下部より前方へ指掛け用の突起25を突設している。
【0023】
尚、キャップAは、例えば、殺菌用に加熱した収容液を充填した容器体Bに上方より打栓する。その際口頸部100外周に装着筒10を嵌着し、シール筒12を口頸部100内周上端部に嵌着して固定されたキャップ本体A1に対して、蓋体A2が常態より下方へ移行した状態となり、係止突部16に対して係合部23が外方下方へずれた状態となり、ここに隙間が生じて連通し、キャップ内外を連通する通気路が連通し、その結果、加熱による内圧上昇されたキャップA内の空気が通気路を介して外部に排出される。
【0024】
また、蓋体A2の周壁下面周縁部には嵌合凹部26を凹設している。嵌合凹部26は、嵌合凸部18と対向する蓋体A2の周壁20下面周縁部に凹設したもので、閉蓋時に嵌合凸部18が嵌合する。
【0025】
本例では、蓋体周壁20下面周縁部左右にそれぞれ嵌合凹部26を凹設しており、各嵌合凹部26は、蓋体周壁20の外周面に沿った円弧状の外面を備える。
【0026】
上記の如く構成したキャップAは、係止突部16に係合部23が嵌合してこの部分で内外がシールされており、各嵌合凹部26に各嵌合凸部18が嵌合してキャップ本体A1に対して蓋体A2をしっかりと固定している。特に、嵌合凸部18の存在で蓋体周壁20が外方へ広がる如く変形するのを確実に防止できる。
【0027】
尚、上記嵌合凸部18及び嵌合凹部26は上記例に限らず、本発明に於いては,キャップ本体A1の上面周縁部と蓋体A2の周壁20下面周縁部とのいずれか一方に嵌合凸部18を突設するとともに、いずれか他方に嵌合凸部18が嵌合する嵌合凹部26を凹設することが可能である。また、その形状も蓋体A2をキャップ本体A1に閉じた際に互いに嵌合可能であれば種々選択できる。
【0028】
そして、例えば、図3に示す如く、殺菌用に加熱した収容液を充填した容器体Bに上方より打栓した後、温水シャワーによる洗浄、冷却を行い、しかる後外周にシュリンクフィルムfを加熱収縮して装着する。その際、シュリンクフィルムを加熱収縮するスチームで蓋体A2が変形することはなく、温水シャワー後にキャップ本体A1と蓋体A2との間(キャップ本体A1上端の周縁部)に残ったシャワー水が、シュリンクフィルム装着時のスチームの熱によりキャップ内に引き込まれることを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0029】
A:キャップ
A1:キャップ本体
10…装着筒、11…頂板、12…シール筒、13…注出筒、14…易切断部
15…プルリング、16…係止突部、17…係止突条、18…嵌合凸部
A2:蓋体
20…周壁、21…頂壁、22…シール筒部、23…係合部、24…係合突条、
25…指掛け用の突起、26…嵌合凹部
50…ヒンジ
B:容器体
100…口頸部
f:シュリンクフィルム
図1
図2
図3