(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インビジブル塗料が、加熱されることにより気化するインビジブル塗料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、タイヤの品質や外観に悪影響を与えることなく、成形材料のジョイント部を適確に検出できるタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法と圧着装置、および前記タイヤ成形材料のジョイント部圧着方法を用いて製造されたタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
タイヤ製造におけるローカバー作製工程において、タイヤ成形材料のジョイント部を圧着するタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法であって、
自然光下で無色透明であり特定の光の照射下で発色するインビジブル塗料を前記ジョイント部の近傍に塗布して、ジョイント部の位置を示すマーキングを施すマーキング工程と、
ローカバーに前記特定の光を照射して前記マーキングを検知することにより、前記ジョイント部の位置を検出するジョイント部検出工程と、
検出された前記ジョイント部の位置に基づいて、前記ローカバーの内側に位置する押えローラーと外側に位置する押えローラーとにより、前記ジョイント部を圧着する圧着工程とを備え
、
前記マーキング工程は、前記インビジブル塗料として加硫工程で発光能力を失う有機系蛍光塗料を用いて、前記ジョイント部から所定の距離を隔てて前記マーキングを施す工程であり、
前記ジョイント部検出工程は、前記マーキングと前記所定の距離とに基づいて前記ジョイント部を検出する工程である
ことを特徴とするタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記特定の光が、紫外光であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記インビジブル塗料が、加熱されることにより気化するインビジブル塗料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
前記タイヤ成形材料が、トレッド部成形材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法である。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、
タイヤ製造におけるローカバー作製工程において、タイヤ成形材料のジョイント部を圧着するタイヤ成形材料のジョイント部圧着装置であって、
自然光下で無色透明であり特定の光の照射下で発色するインビジブル塗料を前記ジョイント部の近傍に塗布して、ジョイント部の位置を示すマーキングを施すマーキング手段と、
ローカバーに前記特定の光を照射して前記マーキングを検知することにより、前記ジョイント部の位置を検出するジョイント部検出手段と、
検出された前記ジョイント部の位置に基づいて、前記ローカバーの内側に位置する押えローラーと外側に位置する押えローラーとにより、前記ジョイント部を圧着する圧着手段とを備え
、
前記マーキング手段は、前記インビジブル塗料として加硫工程で発光能力を失う有機系蛍光塗料を用いて、前記ジョイント部から所定の距離を隔てて前記マーキングを施す手段であり、
前記ジョイント部検出手段は、前記マーキングと前記所定の距離とに基づいて前記ジョイント部を検出する手段である
ことを特徴とするタイヤ成形材料のジョイント部圧着装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤの品質や外観に悪影響を与えることなく、成形材料のジョイント部を適確に検出できるタイヤ成形材料のジョイント部圧着方法と圧着装置、および前記タイヤ成形材料のジョイント部圧着方法を用いて製造されたタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、タイヤ製造におけるローカバー作製工程において、タイヤ成形材料のジョイント部を圧着する際に、予め、自然光下で無色透明であり特定の光の照射下で発色するインビジブル塗料を用いてジョイント部にマーキングを施し、このマーキングを検知することにより、自動的にジョイント部の圧着を開始するところに、従来のジョイント部圧着方法と大きく異なる特徴がある。
【0016】
以下に示す本発明を実施するための形態においては、トレッド部成形材料のジョイント部の圧着を例に挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0017】
1.ジョイント部圧着装置の全体構成
最初に、ジョイント部圧着装置の全体構成について説明する。本実施の形態におけるトレッド部成形材料のジョイント部圧着装置は、タイヤ製造におけるローカバー作製工程において、ローカバーに形成されたトレッド成形材料のジョイント部を圧着する装置であり、基本的に、マーキング手段、搬送手段、ローカバー検出手段、回転手段、ジョイント部検出手段、圧着手段の各手段を備えている。以下、これらの手段の概要を順に説明する。
【0018】
(1)マーキング手段
マーキング手段は、インビジブル塗料をトレッド成形材料のジョイント部の近傍に塗布して、ジョイント部の位置を示すマーキングを予めローカバーに施す手段である。
【0019】
(2)搬送手段
搬送手段は、マーキングが施されたローカバーを横置き状態で、製造ラインの搬送コンベアにより圧着エリアまで搬送する手段である。
【0020】
(3)ローカバー検出手段
ローカバー検出手段は、圧着エリアまで搬送されたローカバーを光電管により検出して、ローカバーの搬送を停止する手段である。
【0021】
(4)回転手段
回転手段は、ジョイント部を所定の位置に固定するために、検出されたローカバーを回転させる手段である。
【0022】
(5)ジョイント部検出手段
ジョイント部検出手段は、回転するローカバーに特定の光を照射して、前記マーキング手段により予め施されたマークを検知することにより、ジョイント部の位置を検出する手段である。
【0023】
(6)圧着手段
圧着手段は、検出されたジョイント部の位置に基づいて、ローカバーの内側に位置する押えローラーとローカバーの外側に位置する押えローラーの一組の押えローラーにより、ジョイント部を圧着する手段である。
【0024】
2.ジョイント部圧着方法
次に、上記したジョイント部圧着装置を用いたジョイント部圧着方法について、
図1に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態におけるジョイント部圧着装置の動作を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0025】
本実施の形態におけるジョイント部圧着方法は、タイヤ製造におけるローカバー作製工程において、ローカバーに形成されたトレッド成形材料のジョイント部を圧着する方法であり、
図1に示すように、基本的に、上記の各手段に対応して、マーキング工程、搬送工程、ローカバー検出工程、回転工程、ジョイント部検出工程、圧着工程の各工程を備えている。以下、これらの工程を順に説明する。
【0026】
(1)マーキング工程
最初に、マーキング工程において、ローカバー2にインビジブル塗料を用いて、ジョイント部の位置を示すマーキングを施す。
【0027】
本実施の形態において用いられるインビジブル塗料は、自然光(可視光下)では発光せず、紫外光により反応して発光する有機系蛍光塗料である。そして、ローカバー成形後の加硫工程において高温に加熱されることにより気化や熱分解して発光能力を失う有機系蛍光塗料が、製品タイヤの品質や外観に影響を与えないため、好ましく使用される。
【0028】
本実施の形態において、上記のマーキングは、具体的には、例えば、
図2に示すように、ジョイント部Jから所定の距離を隔てて、インビジブル塗料によるマークMを付すことにより行われる。これは、インビジブル塗料がジョイント部Jに浸入して悪影響を及ぼす恐れを避けるためである。なお、
図2では、ジョイント部Jの先端から65mmの距離を隔ててマークMが付されているが、マークMを検知ですることができる範囲であれば、この距離は適宜設定することができる。
【0029】
(2)搬送工程
次に、搬送工程において、マーキングが施されたローカバー2を横置き状態で、搬送コンベア1上を白抜き太矢印方向に、左右一対の押え部搬送ローラー3、4上まで搬送する。
【0030】
(3)ローカバー検出工程
次に、ローカバー検出工程において、図外の光電管によりローカバー2を検知すると、搬送コンベア1が停止して、ローカバー2の搬送が停止する。
【0031】
(4)回転工程
次に、回転工程において、搬送が停止したローカバー2を所定の位置に固定(センタリング)し、一定方向に回転させる。
【0032】
具体的には、停止したローカバー2の内側に、待機ローラー5およびテンションローラー7が下方から上昇させ、その後、テンションローラー7を外方に移動させて、対向する待機ローラー5とテンションローラー7とをローカバー2の内側に当接するようにさせる。このように、待機ローラー5とテンションローラー7とにより、ローカバー2にテンションがかかることにより、ローカバー2が所定の位置に固定される。その後、前記した押え部搬送ローラー3、4が互いに逆方向に回転することにより、ローカバー2が回転する。
【0033】
(5)ジョイント部検出工程
次に、ジョイント部検出工程において、回転するローカバーに紫外光などの特定の光を照射して、前記したように、予めローカバーに施されたマークMを検知することにより、ジョイント部Jの位置を検出し、ローカバーの回転が停止する。
【0034】
ここで、マークMを検知する具体的な方法としては、ローカバー2に紫外LEDを照射することにより前記したインビジブル塗料を発光させ、この発光を画像処理カメラで検出する方法が好ましい。
【0035】
このように、本実施の形態においては、自然光では無色透明のインビジブル塗料を用いてマークを設け、このマークを紫外線により発光させて検出しているため、黒色のタイヤ成形材料のジョイント部であっても容易に検出することができ、また、カラーラインを設ける場合と異なり、製品タイヤの外観に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0036】
(6)圧着工程
次に、圧着工程において、検出されたジョイント部Jの位置に基づいて、ローカバー2を挟んで位置する一組の押えローラー6により、ジョイント部を圧着する。
【0037】
具体的には、回転するローカバー2に付されたマークMを、マーク検出手段(センサー)8が検知すると、待機ローラー5およびテンションローラー7と共に上昇してきた一組の押えローラー6のうちローカバー2の外側に位置する押えローラーが前進してローカバー2のジョイント部Jに当接して押えローラー6がジョイント部Jを挟み込む。その後、押えローラー6が回転しながら、下降することにより、ジョイント部J全体が圧着される。
【0038】
ジョイント部Jの圧着が完了した後は、待機ローラー5、押えローラー6、テンションローラー7は既に下降しており、ローカバー2はフリー状態となっている。そして、搬送コンベア1を再び回転させることにより、ローカバー2を前方に搬送してラインから取り出す。
【0039】
このとき、マーク検出手段とマークの位置は、
図1に示す位置に限定されず、例えば、
図3に示すように、検出手段8が待機ローラー5の近接した位置でマークMを検知するように設けられていてもよい。なお、
図3は、上記とは異なる実施の形態に係るトレッドのジョイント部の圧着装置の概要を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。そして、
図3において、9はローカバーに設けられた識別マーク、10はカラーライン、13はトレッド表面である。
【0040】
3.本実施の形態の効果
本実施の形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0041】
(a)本実施の形態においては自然光下では無色透明であり特定の光の照射下で発色するインビジブル塗料を用いてタイヤ成形材料のジョイント部を示すマークをマーキングしている。このため、外観不良が生じることなくタイヤ成形材料のジョイント部を示すマークをマーキングすることができる。そして、特定の光を照射させてマークを発色させることによりタイヤ成形材料のジョイント部の位置を知ることができ、これにより、タイヤ成形材料のジョイント部の圧着の自動化を図ることができる。
【0042】
(b)この結果、以降の工程において、製品タイヤの品質の向上および安定化に大きく寄与することができる。
【0043】
(c)インビジブル塗料として加熱時に気化する塗料を用いることにより、タイヤ成形材料の加硫時にインビジブル塗料が気化するため、完成品のタイヤの品質をさらに良好に保つことができる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例においては、インビジブル塗料を用いた場合の製品タイヤへの影響を評価した。
【0045】
まず、前記した実施の形態に基づいて、サイズ「130/70−18M 63H D404F DEI」のタイヤを製造した。
【0046】
このとき、マークの形成(マーキング工程)に際して、インビジブル塗料としては、シンロイヒ社製、商品名「ロイヒマーカー R−50エキ」を使用した。具体的には、トレッドステッチ工程後に、ペン状のマーカーを用いて、ローカバー2の下型サイドジョイント部より周方向に65mm離れた位置に幅1.5mm×長さ約30mmのマークMを、ジョイント部Jと平行に形成した。なお、マークMの形成において使用されたインビジブル塗料は、1本当たり約0.01mlであった。
【0047】
そして、マークMの検出は、ブラックライトの照射により行った。
【0048】
次に、製造されたタイヤおよび加硫に用いられたモールドに対してブラックライトを照射して、タイヤの外観を観察すると共に、モールドへのインビジブル塗料の転写の有無を観察した。
【0049】
その結果、タイヤの外観に変色がなく、モールドへのインビジブル塗料の転写もないことが確認でき、インビジブル塗料の使用がタイヤに対して悪影響を及ぼさないことが確認できた。
【0050】
次に、上記タイヤを用いてドライバーテストを実施し、ドライバーテストにおいても、インビジブル塗料の使用がタイヤに対して悪影響を及ぼさないことが確認できた。
【0051】
最後に、インビジブル塗料の使用量が製品タイヤの物性に対して及ぼす影響について評価した。具体的には、インビジブル塗料の使用量が上記の標準量(約0.01ml/本)として製造されたタイヤ(STD品)と、標準量よりも多く(約1ml/本)して製造されたタイヤ(TEST品)とについて、JIS−K6251の方法により、100%伸張時応力(M100)、200%伸張時応力(M200)、300%伸張時応力(M300)、破断時伸びEB(%)、破断強度(TB)を測定した。
【0052】
そして、ジョイント押え部の表面を顕微鏡観察すると共に、トルエン膨潤テスト(トルエン24時間浸漬後)における破断状況の観察を行った。
【0053】
引張りの測定結果を表1、表2に示す(N=3)。なお、表1、表2には(TB*EB/2)を求めた結果も示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1、表2に示す結果より、STD品とTEST品の間には大きな差異が見られないことが分かる。
【0057】
また、ジョイント部ジョイント押え部の表面にも大きな差異が見られず、トルエン膨潤テストによっても大きな差異が見られなかった。
【0058】
以上の結果より、インビジブル塗料の使用量(塗布量)が多少多くなっても、タイヤの物性には大きな影響を与えることがなないことが確認できた。
【0059】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。