特許第6054114号(P6054114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054114キャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054114
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】キャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20161219BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 303Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-206717(P2012-206717)
(22)【出願日】2012年9月20日
(65)【公開番号】特開2014-61466(P2014-61466A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】松元 和伸
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊広
(72)【発明者】
【氏名】中房 悟
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091148(JP,A)
【文献】 特開昭60−059220(JP,A)
【文献】 特開2007−038174(JP,A)
【文献】 特開2004−322018(JP,A)
【文献】 特開昭62−268415(JP,A)
【文献】 特開昭61−113919(JP,A)
【文献】 特開2006−212568(JP,A)
【文献】 特開2004−322017(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19746600(DE,A1)
【文献】 米国特許第5550315(US,A)
【文献】 米国特許第6152653(US,A)
【文献】 中房悟・小林薫・森井俊広・松本和伸,水産系副産物(貝殻)を用いた砂混入防止型キャピラリーバリア地盤に関する検討,土木学会論文集B3(海洋開発),公益社団法人 土木学会,2012年 9月18日,Vol.68 No.2,pp.I_462-I_467
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00− 5/00
E02D 1/00− 3/115
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力と同様の高さとなるまで側方集排水が促進制御できるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒物層の上部に、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる細粒物層を構築してキャピラリーバリア多層地盤となし、該キャピラリーバリア多層地盤は、傾斜地盤として形成して下り傾斜の側方方向に集排水促進させてなるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造において、
前記粗粒物層の形成は、あらかじめ傾斜面として形成した傾斜基盤上に、所定の均一厚みにして乾燥させた貝殻を直接巻き出して所定厚みの貝殻層を形成し、前記貝殻層を、振動を与えながら転圧して破砕貝殻層となし、
前記破砕貝殻層の貝殻粒径及び粒度分布を、破砕貝殻層の上部に構築される細粒物層の細粒物が当該破砕貝殻層に混入しない貝殻粒径及び粒度分布に形成し、前記貝殻粒径及び粒度分布に形成された破砕貝殻層で前記粗粒物層の代替をしてなり、
前記貝殻の厚さ20cmのときで、振動転圧を24回行ったとき、その厚さは約6cmとなり、礫層の代替層としての破砕貝殻層の形成に適合していることを理解して前記貝殻を直接巻き出して形成した貝殻層の均一厚みを、7.5cm乃至30cmの厚みとし
前記均一厚みの貝殻層を、振動を与えながら破砕し、転圧するのは、
振動転圧ローラ装置を前記貝殻層上で走行させ、該振動転圧ローラ装置により前記貝殻層に振動を与えながら転圧した、
ことを特徴とするキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法。
【請求項2】
前記細粒物層は、少なくとも2層以上の複数層に構築される、
ことを特徴とする請求項1記載のキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるキャピラリーバリア技術を利用した多層地盤における集排水制御構造に係り、特に礫層を構成する礫材の代替材として、いわゆる水産系副産物でもある大量の貝殻を再利用したキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤分野において、例えば、浸出水制御のための表面遮水技術の1つとしては、キャピラリーバリア(以下CBと称する)という技術が一般に知られている。
【0003】
ここで、CBとは、上部排水層に砂層、すなわち細粒物層を、その下部に下部遮断層として礫層、すなわち粗粒物層を2層状に配し、これら2層の毛管力の差を利用して、両層の境界面上方で側方排水を促進させ、たとえば雨水の鉛直浸透を制御するとの技術を称するものである。
【0004】
すなわち、例えば、砂層とその下部に礫層を重ねた土層地盤では、両層の土粒子の相対的な保水性の違いにより、砂層と礫層の境界面の上部で降下浸透水が捕捉され、集積するのである。この機能が土の毛管障壁、すなわちCBと称されている。
【0005】
そして当該CBは、前記のごとく全体の地盤の保水性や遮水性を高くすることができ、かつ側方排水に優れていること、ガス抜きや好気性微生物のために通気性がよいこと、砂材や礫材など自然材料を使用しているため経済的であり、かつ地球環境保護に貢献していること、比較的長期の耐久性、安定性に優れていることなどのいくつもの特徴を有しており、従来より当該CB技術を利用した覆土構造などが各種提案実施されている。
【0006】
ここで、いわゆるCB効果については、構成する砂層と礫層の保水性(粒径)の違いが大きいほど得られやすいが、砂径と礫径の差が大きいと、礫材間に砂材が入り込み、層境界部の保水性に違いがなくなるため、集排水性能が低下し、著しい場合にはCB性能が喪失する可能性がある。このことから、砂材と礫材が混じりあわずに、長期的な安定性を保持させるために、一定の大きさに調整された粒度からなる破砕貝殻を礫材の代替材として活用することを本件発明者らは創案し、既に当該発明につき特許出願するに至っている(特開2010−242903号公報参照)。
【0007】
この既に特許出願した技術は、いわゆるCBを構成する礫材の代替材として破砕した貝殻を用いる場合、まず貝殻を粉砕機のある場所まで運搬し、例えば粉砕機により貝殻を破砕した上で、例えば、ふるいを用いて分級・粒度調整した貝殻を、別の目的地(工事現場)まで運搬・巻き出しし、そして転圧施工を行うものであった。
【0008】
しかしながら、大量に貝殻を破砕するには、大型の破砕機を有する工場まで前記貝殻を運搬しなければならず、さらに、その後工事現場へ再度運搬するなどの作業が生じる。また、CBに適した粒径・粒度分布の破砕貝殻を製造するには専用の大型破砕機を保有する工場が必要であると共に、例えば、ふるいなどを用いて破砕した貝殻の分級・粒度調整をしなければならないなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2010-242903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記従来の課題に鑑みて創案されたものであり、前述したいわゆるCB貝殻層(礫層)を構築するまでの手順について、従来技術(特開2010−242903号公報)の構築法を以下に示すと、まず、貝殻を採取した後、これを洗浄し、乾燥させる。
【0011】
ついで、乾燥させた貝殻を粉砕工場等まで運搬する。その後、粉砕機を用いて貝殻を粉砕する。さらに、粉砕した貝殻を分級・粒度調整し、分級・粒度調整した破砕貝殻を施工現場まで運搬する。そして、該粉砕貝殻を所定地盤の上に所定の厚みにして巻き出し、重機で転圧する。最後に破砕貝殻層(礫層)の厚さ等を確認して作業が完了するものであった。
【0012】
これに対し、本発明では、まず、貝殻を洗浄し、乾燥させる。次に、当該洗浄・乾燥させた貝殻を直ちにキャピラリーバリア多層地盤を構築する施工現場まで運搬する。そして、当該施工現場において前記洗浄・乾燥させた貝殻をそのまま巻き出し、その後、例えば重機などを使用し、巻き出した貝殻をその場で直接粉砕すると共に転圧作業を行う。そして、形成した破砕貝殻層(礫層)の厚さ等を確認してすべての作業が完了するものとなる。
【0013】
この様に従来技術に比較して、貝殻による礫層代替層の形成に際しては、従来必要とされた粉砕・分級した貝殻の施工現場への運搬などの作業工程を省略でき、しかも礫層としての品質を充分に確保しつつ、施工作業を合理的、効率的かつ低コストにしうるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
粗粒物層の上部に細粒物層を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層の上層にある細粒物層の保水力と同様の高さとなるまで側方集排水が促進制御できるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造であって、
前記粗粒物層の上部に、前記粗粒物の粒径より小径の粒径をなす細粒物からなる細粒物層を構築してキャピラリーバリア多層地盤となし、該キャピラリーバリア多層地盤は、傾斜地盤として形成して下り傾斜の側方方向に集排水促進させてなるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造において、
前記粗粒物層の形成は、あらかじめ傾斜面として形成した傾斜基盤上に、所定の均一厚みにして乾燥させた貝殻を直接巻き出して所定厚みの貝殻層を形成し、前記貝殻層を、振動を与えながら転圧して破砕貝殻層となし、
前記破砕貝殻層の貝殻粒径及び粒度分布を、破砕貝殻層の上部に構築される細粒物層の細粒物が当該破砕貝殻層に混入しない貝殻粒径及び粒度分布に形成し、前記貝殻粒径及び粒度分布に形成された破砕貝殻層で前記粗粒物層の代替をしてなり、
前記貝殻の厚さ20cmのときで、振動転圧を24回行ったとき、その厚さは約6cmとなり、礫層の代替層としての破砕貝殻層の形成に適合していることを理解して前記貝殻を直接巻き出して形成した貝殻層の均一厚みを、7.5cm乃至30cmの厚みとし
前記均一厚みの貝殻層を、振動を与えながら破砕し、転圧するのは、
振動転圧ローラ装置を前記貝殻層上で走行させ、該振動転圧ローラ装置により前記貝殻層に振動を与えながら転圧した、
ことを特徴とし、
または、
前記細粒物層は、少なくとも2層以上の複数層に構築される、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
かくして、本発明によるキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造によれば、貝殻による礫層(粗粒物層)の形成に際し、粉砕・分級・運搬などの作業工程を省略でき、しかも品質を確保しつつ、合理的、効率的かつ低コストのキャピラリーバリア多層地盤における集排水制御構造の構築方法を提供できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の該略構成を説明する概略構成説明図である。
図2】収集した貝殻を巻き出す状態を説明する説明図である。
図3】貝殻を「礫材」などの代用とする手順を表した説明図(その1)である。
図4】貝殻を「礫材」などの代用とする手順を表した説明図(その2)である。
図5】貝殻の粒度分布を示した表である。
図6】貝殻の粒度分布を示したグラフである。
図7】CB構築に好ましい砂及び破砕貝殻の粒度分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
本発明は、粗粒物層である礫層1の上部に細粒物層である砂層4を構築し、前記両層の保水性の差異から前記粗粒物層である礫層1の上層にある細粒物層である砂層4の保水力が一定の高さとなるまでは側方集排水が促進制御できる、いわゆるCB効果を発揮させた多層地盤における集排水制御構造の構築方法に関する。
【0019】
図1から理解されるように、粗粒物層、すなわち例えば、礫層1の上部には、例えば礫材間に混入しない粒径の細粒物で前記礫材2の粒径より小径の粒径からなる細粒物、すなわち、例えば砂材からなる砂層4が構築される。
【0020】
尚、図には示してはいないが、前記の様な2層構造ではなく、細粒層を多層構造にし、3層構造、4層構造、5層構造に形成してもかまわないものである。しかし、これらの場合も、上層にある層の細粒層となる砂材の粒径は、その下の層に形成された層の砂粒径より小径で、かつ当該砂材の間に混入しない粒径に構成することが重要である。
【0021】
また、図1に示す様に、本発明による多層地盤は、傾斜をもたせて形成されたもので、例えばCBによる側方集排水となる集積流11は下り傾斜側に向って流れ、集排水促進されるものとなる。
【0022】
いわゆるCB構造の構築については、下部に位置する礫層1、そして上層の砂層4と順次締め固めながら施工していく。
【0023】
尚、前記の如く、CB構造に傾斜をつけることにより、前述した図1に示すように砂層4と礫層1の境界面上方で降下浸透水が捕捉されやすくなり、集積したものを、下り傾斜方向に流下させることが可能となるのである。
【0024】
ここで、図2乃至図6に本発明の実施例を示す。
【0025】
本実施例は前記粗粒物、すなわち少なくとも礫材について、貝殻7を使用するものであり、該貝殻7を施工現場、すなわち多層地盤構造建設箇所に直接巻き出し、その巻き出した貝殻7を例えば建設重機を用いて、粉砕、転圧して礫層1の代替層である破砕貝殻層を形成した実施例を示したものである(図4参照)。
【0026】
いわゆるCB構造を構築する際には、上層の砂層4を構成する砂材についても、下層の礫層1を構成する礫材についても、それらが、所定の粒径範囲のもので、その粒径範囲のものによる粒度分布が前記CB構造を構築するのに適切な粒度分布からなっていることが必要である。
【0027】
すなわち、上層にある砂層4における砂材の粒径は、その下の層に形成された礫層1を構成する礫材の粒径より小径で、かつ当該礫材の間に混入しない粒径及び粒度分布のものに構成すること、また、礫材についても、前記砂材が礫材間に混入しない粒径及び粒度分布のものに構成することが重要なのである。
【0028】
このように、砂材についても礫材についても所定の粒径のもの、及び所定の粒度分布のものが要求されることになる。
【0029】
ところで、この「砂材」や「礫材」が多層地盤構造建設箇所の近傍で容易に調達できないことがある。そこで、例えば沿岸域などの近傍位置における多層地盤構造建設箇所での「砂材」、特に「礫材」の調達に際しては、沿岸域に大量に存在する貝殻7を破砕し、これを「砂材」や特に「礫材」の代用とすることが考えられるのである。しかもそのことがいわゆる水産系副産物の再利用にもなり環境保全にも貢献しうる結果となる。なお、CB構造の構築箇所が沿岸域ではなく、貝殻が容易に入手できない場合であっても、本発明を実施し、礫層1の代替層として破砕貝殻層を構築することは可能である。
【0030】
ここで、例えば、沿岸域に大量にある貝殻7を重機8などで収集する。すなわち、まず、これら貝殻7につき重機8を用いて一箇所に収集し、その後、収集した貝殻7を洗浄して、乾燥させる。
【0031】
次いで、前記洗浄し、乾燥させた貝殻7を直ちに施工現場、すなわち前述した多層地盤構造建設箇所まで運搬する。
【0032】
そして、当該施工現場、すなわち多層地盤構造建設箇所において前記洗浄・乾燥させた貝殻7をそのまま所定の厚みに巻き出すのである。
【0033】
すなわち、図1に示す様に傾斜を持たせた礫層1を形成すべく前記洗浄・乾燥させた貝殻7を傾斜してある施工箇所にそのまま所定の均一厚みにして巻き出すのである。
【0034】
なお、直接巻き出した貝殻の均一厚みの具体的数値であるが、例えば、振動転圧ローラ装置9を使用して振動を与えながら転圧し均質な破砕貝殻層を構築できる直接巻き出しの貝殻均一厚みの範囲を各種の実験により確認すると、当該貝殻の均一厚みの具体的数値は7.5cm乃至30cmの厚みの範囲が好ましいとの結果がもたらされたものである。
【0035】
その後、例えば振動転圧ローラ装置9などを使用し、前記巻き出した貝殻7をその箇所において直接粉砕すると共に転圧作業を行う(図3図4参照)。そして、形成した破砕貝殻層(礫層1)の厚さ等を確認して作業は終了となる。なお、必要に応じてならし作業を行うこともある。
【0036】
このように、本発明では、直接巻き出した貝殻7につき振動転圧ローラ装置9などを使用して振動を与えながら転圧して破砕し、もって破砕貝殻層となし、該破砕貝殻層を所定の均一厚みを有する粗粒物層、すなわち礫層1の代替層として破砕貝殻層を形成したものである。
【0037】
図3乃至図4に示す様に、貝殻7を粉砕、転圧するための装置としては、前述したように、いわゆる振動転圧ローラ装置9などが使用される。
【0038】
該振動転圧ローラ装置9であれば、その場で直接貝殻7を効果的に破砕することが出来ると共に転圧することが出来、また礫層1の代替層として所望する粒径及び粒度分布のものにつきコストを安価にして生成することができるからである。
【0039】
なお、図5は、貝殻7として実際にホタテ貝あるいは赤貝を使用して、それらを破砕し、礫材の代替材として使用できるかの実験を行ったものである。そして、前記ホタテ貝あるいは赤貝を粉砕、転圧あるいは粉砕機を使用して粉砕した場合における破砕貝殻の粒径分布を示した表とした。
【0040】
この図5において、向かって左の縦方向の項目には篩の目の大きさを示してあり、この篩の目の大きさに対し、粉砕貝殻7が、例えば100g中何gがその篩の目を通過したかをそれぞれ数値にして表したものである。
【0041】
すなわち、例えば、海岸などに散乱しているホタテ貝の貝殻7につき、そのまま収集して取得した状態(図5において「ホタテ貝0Ec」「Hの箇所」)では、53mmの篩の目を通過するのは、ホタテ貝100g中100gであり、37.5mmの篩の目を通過するのは100g中85.2g、26.5mmの篩の目を通過するのは100g中32.7g、19mmの篩の目を通過するのは8.9gであり、9.5mmの篩の目を通過するのは100g中0.5gであり、4.75mmの篩の目を通過するのは100g中0.2gであり、2mmの篩の目を通過するのは100g中0.1gであった。そして、0.85mm以下の篩の目を通過するものは図5の「H」に示す様に皆無である。
【0042】
また、本実施例の振動転圧ローラ装置9などの重機で破砕した場合(図5において「重機破砕した貝殻」「Fの箇所」)では、37.5mmの篩の目を通過するのは100g中100g、26.5mmの篩の目を通過するのは100g中97.0g、19mmの篩の目を通過するのは87.9gであり、9.5mmの篩の目を通過するのは100g中54.8gであり、4.75mmの篩の目を通過するのは100g中32.9gであり、2mmの篩の目を通過するのは100g中15.7gであり、0.85mmの篩の目を通過するのは100g中8.1g、0.425mmの篩の目を通過するのは4.5gであり、0.25mmの篩の目を通過するのは100g中2.9gであり、0.106mmの篩の目を通過するのは100g中1.5gであり、0.075mmの篩の目を通過するのは100g中1.3gであったことを示している。
【0043】
そして、貝殻を振動転圧ローラ装置9などの重機で破砕した場合(Fの場合)やホタテ貝を4Ecの締め固めエネルギーで締め固めて破砕した場合(Gの場合)などの粒径分布を図5のA、B、C、D、E、F、Gに各々示した。
【0044】
ここで、Ecとは締め固めエネルギーの単位を示し、通常、1Ec=550kJ/mとされる。
【0045】
図6図5に示すそれぞれの場合において、いずれの破砕貝殻の場合が礫層1の代替材形成に適合しているかを図示したものであり、向かって一番左側に位置する曲線は、ホタテ貝を粉砕したものを購入した場合の粒度分布を示す曲線であり、また一番右側に位置する曲線は、例えば、海岸などに散乱しているホタテ貝の貝殻7につき、そのまま収集して取得した状態の粒度分布を示す曲線である。
【0046】
そして、中央に位置する6つの曲線は、まず、左から1番目の曲線は、赤貝を2回粉砕機を使用して粉砕したものの粒度分布を示す曲線であり、左から2番目の曲線は、ホタテ貝を16Ecの締め固めエネルギーで締め固めたときの粒度分布を示す曲線、左から3番目の曲線は、粉砕機を使用して粉砕したときの粒度分布を示す曲線であり、左から4番目の曲線は、ホタテ貝を8Ecの締め固めエネルギーで締め固めたときの粒度分布を示す曲線であり、左から5番目の曲線は、ホタテ貝を例えば振動転圧ローラ装置9などの重機によって、貝殻厚さ20cmのものを24回、振動、転圧して約6cmの貝殻厚さにしたときの粒度分布を示す曲線であり、左から6番目の曲線は、ホタテ貝を4Ecの締め固めエネルギーで締め固めたときの粒度分布を示す曲線である。そして、この図6から理解されるように、左側の曲線は、貝殻7の粒径が小さいもので粒度分布が構成され、右側に行くほど貝殻7の粒径が大きいもので粒度分布が構成されていることが分かる。
【0047】
そして、この中央の6つの場合が、礫層1の代替層である破砕貝殻層の形成に適合しているとの実験結果がもたらされた。
【0048】
すなわち、この中央の6つの曲線の場合における破砕貝殻で礫層1の代替層である破砕貝殻層を形成したとき、上層の砂層4の砂材が礫層1の代替層である破砕貝殻層内に入り込むことなく、砂層4と礫層1の代替層である破砕貝殻層との境界面の上部で各々降下浸透水が捕捉され、集積され、集積流11が生じ、側方集排水が促進されるのが確認できたのである。
【0049】
その理由を図6に示す粒度分布を表す曲線から判断してみると、礫層1の上層となる砂層4を構成する砂材は、すなわち、図7から理解されるように、一例として硅砂6号が使用される。
【0050】
そして、この硅砂6号の砂材の粒度分布は、図7に示す様に、0.85mmの篩の目を通過するのは100g中100g、0.425mmの篩の目を通過するのもほぼ100g中100g、0.25mmの篩の目を通過するのは60gであり、0.106mmの篩の目を通過するのは100g中約1gであり、0.075mmの篩の目を通過するのは100g中約0gであったことを示している。
【0051】
しかして、このような粒度分布を示す硅砂6号につき砂層4を形成する砂材として使用するものとなる。
【0052】
次に、その下層になる礫層1の代替層である破砕貝殻層を構成する破砕貝殻には、図6から理解されるように、実施工を考慮して準備した砂混入のない6つタイプの貝殻を使用したものであり、これらの貝殻については、0.85mmの篩の目を通過する破砕貝殻の通過質量百分率が約5%から約25%程度存する粒度分布からなる破砕貝殻なのである。
【0053】
すなわち、0.85mmの篩の目を通過する破砕貝殻の通過質量百分率が約5%から約25%程度存する破砕貝殻により礫層1の代替層である破砕貝殻層を構成すると、上層の砂層4の砂材が礫層1の代替層である破砕貝殻層内に入り込むことなく、砂層4と礫層1の代替層である破砕貝殻層との境界面の上部で各々降下浸透水が捕捉され、集積され、集積流11が生じ、側方集排水が促進されるCB構造が構築できるのである。
【0054】
ここで、図6に示す中央の6つの曲線のうち、左から5番目の曲線は、前述の如く、ホタテ貝を振動転圧ローラ装置9によって、貝殻厚さ20cmの貝殻層を24回転圧して約6cmの破砕貝殻層の厚さにしたときの粒度分布を示す曲線であり、この振動転圧ローラ装置9を使用することにより、本発明の礫層1の代替層である破砕貝殻層を施工現場で確実に構築することが出来る。従って、実際の多層地盤構造建設箇所において、好適な礫層1の代替層である破砕貝殻層を構築するガイドラインとして前記した図5及び図6を使用することが出来る。
【0055】
前述したように、CB構造を構築する際には、上層の砂層4を構成する砂材についても、下層の礫層1を代替する破砕貝殻層の破砕貝殻についても、それらが、所定の粒径範囲のもので、その粒径範囲のものによる粒度分布が前記CB構造を構築するのに適切な粒度分布からなっていることが必要なのである。
【0056】
すなわち、上層にある砂層4における砂材の粒径は、その下の層に形成された礫層1を構成する礫材の粒径より小径で、かつ当該礫材の間に混入しない粒径及び粒度分布のものに構成すること、また、破砕貝殻についても、前記所定の粒径及び所定の粒度分布からなる前記砂材(硅砂6号)が、礫材間に混入しない様、貝殻7を破砕して所定の粒径及び粒度分布の破砕貝殻に構成することが重要なのである。
【0057】
このように、砂材についても破砕貝殻についても所定の粒径のもの、及び所定の粒度分布のものが要求されることになる。
【0058】
なお、図3図4は、具体的に振動転圧ローラ装置9を使用して貝殻層を粉砕及び転圧を行っている具体例であり、貝殻の厚さ20cmのときで、振動転圧を24回行ったとき、その厚さは約6cmとなり、これが礫層1の代替層としての破砕貝殻層の形成に適合していることが理解できるのである。
【0059】
なお、前述の様に直接巻き出した貝殻の均一厚みは、例えば、振動転圧ローラ装置9を使用して振動を与えながら転圧して均質な破砕貝殻層を構築できることを各種の実験により確認した、いわゆる7.5cm乃至30cmの厚みの範囲であることが好ましい。
【0060】
ここで、本実施例では振動転圧ローラ装置9を使用して貝殻層を粉砕及び転圧を行ったが、当該振動転圧ローラ装置9に限定されるものではなく、本発明における代替層である破砕貝殻層を施工現場で確実に構築することが出来る重機であればよく、前記の振動転圧ローラ装置9に限定されるものではない。
【0061】
なお、礫層1の代替層である破砕貝殻層の構築に際しては、その全てを破砕貝殻で形成することが困難な場合も考えられ、このような場合には、実際の礫材で礫層1の例えば下半分を構成し、その上に破砕貝殻を重ね合わせて所定の厚みに調整し、それを礫層1の代替層としての破砕貝殻層としても構わないものである。
【0062】
しかして、このように形成された礫層1の代替層としての破砕貝殻層上方に、例えば2層の多層地盤の構築であれば、砂層4を所定の厚さにほぼ均等になるように構築し、いわゆるCB構造を完成させるのである。
【0063】
尚、前記砂層4の構築に際しては、大量の砂材がある場合、破砕した貝殻7をあえて代用しなくともよいが、さらに細かく破砕した貝殻7などを砂材に代えて使用してもかまわないものである。
【0064】
さらに、破砕貝殻層の透水性を活かして、細粒分の混入がない長期的に安定した貝殻排水層としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明による多層地盤における集排水制御構造は、例えば埋め立て廃棄物の浸透水制御に、あるいは廃棄物処分場における覆土構造などに利用できる。すなわち、覆土等の上部に、本発明によるCB構造の多層地盤を構築した際には、雨水等の上部からの浸透を大幅に減少させることが可能になる(廃棄物処分場の閉鎖時に活用可能)。
さらに、廃棄処分場の下部集排水構造にも活用が可能である。
【0066】
また、斜面近傍に本発明によるCB構造の多層地盤を構築した際には、雨水の浸透制御と共に、浸透した雨水等をすみやかに盛土等の外部へ排水させることが可能になる(斜面防災などへの活用可能)。
【0067】
そして、上記のCB構造の多層地盤を3層以上に重ね合わせることで、その効果を増大させることができるのである。
【符号の説明】
【0068】
1 礫層
4 砂層
7 貝殻
8 重機
9 振動転圧ローラ装置
11 集積流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7