【実施例1】
【0014】
図1ないし
図8は、本発明の実施例1による車両のオープントレイ取付け構造を説明するための図である。なお、本実施例で、左,右とは車室内側から車両前方を見た状態での左,右を意味する。
【0015】
図において、1は車室内の前部に配設された樹脂製のインパネである。該インパネ1には各種計器等を取り付けるための開口が形成されている。前記インパネ1の左側下部には、樹脂製のグローブボックス2を取り付けるためのボックス開口部1aが形成され、その上側には樹脂製のオープントレイ3を取り付けるためのトレイ開口部1bが形成され、さらにその上側にはエアバッグ4を取り付けるためのエアバッグ開口部1cが形成されている。なお、1dはメータパネルを取り付けるためのメータ開口部、1eは空調機の空気吹き出し口等を取り付ける空調開口部、1fはオーディオ機器等を取り付けるオーディオ開口部である。
【0016】
前記グローブボックス2は、底壁2cと、該底壁2cの周囲に立設された周壁2bと、上端開口2aとを有する箱状のものである。前記底壁2cと周壁2bとの奥コーナ部2dが図示しないヒンジ部材を介して前記インパネ1の支持部1a′に前後方向に回動可能に支持されている。前記グローブボックス2は、前記周壁2bの車室内側に配設された把手1nを手前に引くと、図示しないロック機構が解除されて手前側に回動し、この状態で物品を出し入れすることができる。
【0017】
前記エアバッグ4は、インフレータと袋体からなるエアバッグモジュール4aと、前記エアバッグ開口部1cを閉塞する蓋部材4bとから構成されている。前記エアバッグモジュール4aの底部に取付けられたブラケット4cは、支持ブラケット5aにボルト5bにより締め付け固定されており、該支持ブラケット5aは、前記オープントレイ3の車両前方にて車幅方向に延び、図示しない左,右のピラー部材間に架け渡されたPPメンバ5に固定されている。
【0018】
前記オープントレイ3は、車室内側に開口する横長のトレイ開口6aを有する箱状のトレイ本体6と、該トレイ本体6のトレイ開口6a側端面を覆うように装着された意匠パネル7とで構成されている。
【0019】
前記意匠パネル7は、前記インパネ1のトレイ開口部1bを塞ぐ外形状を有する大略平板状のものであり、また前記トレイ本体6のトレイ開口6aと略同じ形状に設定されたパネル開口7aを有する。
【0020】
また前記トレイ本体6は、上トレイ半体6bと下トレイ半体6cからなる上下2分割構造となっている。そして前記上,下トレイ半体6b,6cは、該両トレイ半体の合面6f,6g同士を当接させるとともに、上トレイ半体6bに形成された複数の係合爪6dを下トレイ半体6cに形成された複数の係合孔6eに係合させることにより結合され、一体化されている。また前記上トレイ半体6bには照明用ランプ9が配設されている。
【0021】
前記トレイ本体6と意匠パネル7は、トレイ本体6のトレイ開口6a周縁部に形成されたフランジ6hから意匠パネル7のパネル開口7a周縁部に形成されたボス部7bにビス8aをねじ込むことにより結合されている。
【0022】
前記オープントレイ3の前記トレイ開口6a,パネル開口7aの下辺部には、缶飲料やティッシュペーパー等の収容物Wが車室内側に飛び出すのを規制する凸条部3aが形成されている。この凸条部3aは前記下トレイ半体6cの下縁部6iを上方に屈曲延長するとともに、前記意匠パネル7のパネル開口7aの下縁部7cを上方に延長し、両下縁部6i,7cを前述のようにビス8aで結合させることにより構成されている。
【0023】
そして前記オープントレイ3は、前記意匠パネル7の裏面に車両前方に向けて突出するように形成されたパネル係合爪7dを前記インパネ1に形成されたインパネ係合孔1gに係合させるとともに、前記トレイ本体6の開口縁部に車両前方に向けて突出するように形成されたトレイ係合爪6jを前記インパネ1に形成されたインパネ係合孔1hに係合させることにより、前記インパネ1のトレイ開口部1bの周縁に取り付けられている。
【0024】
ここで、前記パネル係合爪7dとインパネ係合孔1g、及びトレイ係合爪6jとインパネ係合孔1hは、前記オープントレイ3をインパネ1のトレイ開口部1b内に挿入し、前方に押し付けることにより係合し、また逆に後方に引っ張ることにより前記係合が解除され、前記オープントレイ3を車室内側に取り外すことができるようにその係合強さが設定されている。
【0025】
前記トレイ本体6の下トレイ半体6cの下側には、引抜き不能型の係合部が形成されている。この係合部は前記下トレイ半体6cの下面6c′に一体形成された下面係合爪6kと、これに係合する被係合片1jとで構成されている。
【0026】
前記下面係合爪6kは、前記オープントレイ3の着脱時の挿入方向aに対して略直交する係合面6mを有し、前記下面6c′の、車幅方向略中央で、かつ前記グローブボックス2を手前側に回動させて開いたとき、前記ボックス開口部1aから視認可能の部位で、さらに前記トレイ開口部1b寄りの部位に位置している。
【0027】
前記被係合片1jは、前記インパネ1の、前記グローブボックス2を収容するボックス開口部1aと前記オープントレイ3を収容するトレイ開口部1bと間の部分1iに形成されている。この被係合片1jは前記挿入方向aに沿って車両前方に延び、その先端面1kに前記下面係合爪6kの係合面6mが係合する。
【0028】
そして
図2に示すように、前記被係合片1jに連続するようにボス部1mが形成されており、該ボス部1mはインパネブラケット1pにビス8bで固定されている。このインパネブラケット1bは、前記PPメンバ5に固定された支持ブラケット5dにボルト5cで固定されている。このようにして、前記ボス部1mひいては前記被係合片1jは、特に車両前後方向への移動を阻止できるように強固に支持されている。
【0029】
本実施例に係るオープントレイ3をインパネ1に取り付けるには、まず、トレイ本体6と意匠パネル7をビス8aで結合する。続いて、前記トレイ本体6を前記インパネ1のトレイ開口部1b内に挿入するとともに、前方に押し込むことにより、意匠パネル7のパネル係合爪7d,トレイ本体6のトレイ係合爪6jをそれぞれインパネ1のインパネ係合孔1g,1hに係合させる。これと同時に下トレイ半体6cの下面6c′に形成された下面係合爪6kが被係合片1jの先端部を乗り越えて前方に移動し、該下面係合爪6kの係合面6mが前記被係合片1jの先端面1kに係合する。
【0030】
また前記エアバッグ4の着脱作業をスムーズに行うには、オープントレイ3を取り外すのが望ましく、これにより前記固定ボルト5bを工具Tにより容易に締込み又は抜き取ることができる。この場合、前記グローブボックス2を開位置に回動させ、または取り外した状態で、前記下面係合爪6kを手で上方に押し上げることにより係合面6mと被係合部1jの先端面1kとの係合を外す。これにより前記オープントレイ3をインパネ1のトレイ開口部1bから車室内側に取り外すことができる。
【0031】
このように本実施例に係るオープントレイ3の取付け構造によれば、下トレイ半体6cの下面係合爪6kの係合面6mとインパネ1側の被係合片1jの先端面1kがオープントレイ3の着脱方向aの力を受け止めるように係合しているので、乗員が前記凸条部3aを車室内側に引っ張ってもオープントレイ3が容易に外れることはない。
【0032】
しかも下トレイ半体6cの下面6c′の、トレイ開口部1b寄りの部位、つまりトレイ本体6の車室内側のトレイ開口6aの下辺部に形成された凸条部3aに近い部位に下面係合爪6k及び被係合片1jを形成したので、乗員が凸条部3aを握って引っ張った場合、その握り部に近く、最も大きな引っ張り力が作用する位置で下面係合爪6k及び被係合片1jが引っ張り力に対抗することとなり、オープントレイ3がインパネ1から外れるのを確実に防止できる。
【0033】
また、前記下面係合爪6kと係合する被係合片1jをボス部1m,ブラケット1p,5dを介してPPメンバ5に接続したので、前記被係合片1jの支持剛性を高めることができ、この点からもオープントレイ3がインパネ1から外れるのを防止できる。
【0034】
またオープントレイ3の下面6c′に一体形成された下面係合爪6k及び被係合片1jによりオープントレイ3の外れを防止しているので、ビス等の別部品を設ける必要がなく、部品点数の増加や見栄えの悪化を招くこともない。
【0035】
さらにまた、オープントレイ3の下面6c′の、グローブボックス2を開いたときボックス開口部1aから視認可能の部位に下面係合爪6k及び被係合片1jを形成したので、オープントレイ3を取り外す場合は、前記下面係合爪6kを手で上方に押し上げることで、該下面係合爪6kの被係合片1jへの係合を容易に解除でき、オープントレイ3の取り外し作業を容易に行うことができる。
【0036】
また前記実施例では、オープントレイ3をトレイ本体6と意匠パネル7とで構成したので、樹脂成形時の型構造上の制約を抑制でき、デザイン上の自由度を拡大できる。さらにまた、トレイ本体6を上トレイ半体6bと下トレイ半体6cとの二分割構造としたので、さらにデザイン上の自由度を拡大できる。