特許第6054122号(P6054122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054122
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】鉄道電力管理装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20161219BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20161219BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20161219BHJP
   B60M 3/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H02J3/32
   H02J3/38 130
   H02J7/35 K
   B60M3/06 B
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-218266(P2012-218266)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-73014(P2014-73014A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花島 由美
(72)【発明者】
【氏名】三吉 京
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜央
(72)【発明者】
【氏名】大辻 浩司
(72)【発明者】
【氏名】田能村 顕一
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−046821(JP,A)
【文献】 特開2005−162076(JP,A)
【文献】 特開2006−062427(JP,A)
【文献】 特開2012−105407(JP,A)
【文献】 特開2008−148531(JP,A)
【文献】 特開2010−011711(JP,A)
【文献】 実開昭57−115536(JP,U)
【文献】 特開2009−067205(JP,A)
【文献】 特開2008−032229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12,7/34−7/36
H02J 3/00−5/00
B60M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の配電系統への放電量を、所定のパラメータに対応させて保存する保存手段と、
蓄電可能な回生電力が発生する場合、前記保存手段に保存されている過去の列車の回生電力量および前記蓄電装置の配電系統への放電量のデータにより、駅設備のための、前記蓄電装置の配電系統への放電量を定める放電計画を作成する放電計画作成手段と、
作成された前記放電計画に従って前記蓄電装置への放電指令を出力する放電指令手段と、
を備えた、鉄道電力管理装置。
【請求項2】
前記放電計画作成手段は、前記所定のパラメータとして時間および気象データを用い、現在の時間および現在の気象データに類似する時間および気象データに対応する、前記保存手段により保存された過去の放電量のデータを用いて、前記放電計画を作成する、請求項1に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項3】
前記放電計画作成手段は、
列車間融通の無い回生電力を前記蓄電可能な回生電力とし、列車間融通の無い列車の回生電力量を予測し、該予測の結果から、前記蓄電装置への充電量を予測して、該充電量に応じた前記蓄電装置の放電量を定める前記放電計画を作成する、請求項2に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項4】
前記放電計画作成手段は、太陽光発電装置の発電量をさらに予測し、該予測の結果と前記列車の回生電力の予測の結果とから、前記蓄電装置への充電量を予測して、該充電量に応じた前記放電計画を作成する、請求項3に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項5】
前記放電計画作成手段は、リアルタイムの列車のブレーキパターンを取得し、該ブレーキパターンを基に該当列車の回生電力量を予測する、請求項3または請求項4に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項6】
前記放電計画作成手段は、運行ダイヤおよび列車の形式称号のデータを取得し、回生電力の列車間融通の有無と列車の形式称号とからわかる該当列車の回生電力量から、前記蓄電装置に蓄電する回生電力量を予測する、請求項3または請求項4に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項7】
前記放電計画作成手段は、各駅設備の使用電力量のデータを取得して、各駅設備の負荷を予測し、予測された各駅設備の負荷を含めて前記放電計画を作成する、請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項8】
前記放電計画作成手段は、気象情報および利用者情報を取得し、該気象情報および利用者情報ならびに前記保存手段により保存された過去の各駅設備の負荷のデータを基に、各駅設備の負荷を予測する、請求項7に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項9】
前記放電計画作成手段は、蓄電装置の残量がSOC(State Of Charge)の範囲に収まるようにした前記放電計画を作成する、請求項1乃至請求項8に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項10】
前記放電計画作成手段は、電力使用制限の際、前記SOCの範囲を無視して前記蓄電装置の配電系統への前記放電計画を作成する、請求項9に記載の鉄道電力管理装置。
【請求項11】
前記放電計画作成手段は、変電所からの受電電力・受電電力量を取得し、該受電電力・受電電力量が契約電力を超えないように前記放電計画を作成する、請求項9または請求項10に記載の鉄道電力管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄道電力管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の有効活用のため、世界各国においてエネルギーマネジメントの取り組みが広まっている。
【0003】
その取り組みの一つとして、BEMS(Building and Energy Management System)がある。BEMSとは、ビルの機器・設備等の電力管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステムのことである。例えば、デマンドレスポンスで電力の需給調整を行う技術等を用いて、ビルの電力や電力量の削減を可能としている。
【0004】
一方、鉄道分野では、例えば、蓄電装置を鉄道車両に設け、この蓄電装置の電圧や電流等の情報により、充放電制御することにより、電力を有効活用するエネルギーマネジメントの手法がある。
【0005】
その他に、鉄道分野では、鉄道における電力の有効活用を目的として、回生電力をリユースする取り組みも進められている。回生電力は、他の力行列車の動力として用いることが普通であるが、力行列車が存在しない場合には回生失効による電力損失が発生する。その対策として、例えば、変電所に蓄電装置を設置し、この蓄電装置に回生電力を蓄電して、列車の力行時や非常時に利用するようにした方法などもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−29560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回生電力を蓄電装置に蓄電する場合、回生電力は一度に発生する電力、電力量が大きく、断片的に発生するため、限られた容量の蓄電装置では、計画的に放電を行わないと、回生電力を蓄電することができなくなる。従って、鉄道における回生電力の効率利用のためには、回生電力を蓄電する蓄電装置の放電計画を作成するシステムが必要となる。また、近年太陽光発電も広く利用されるようになってきている。駅施設にてこの太陽光発電を利用しその電力を蓄電する場合、その蓄電も含めて放電計画を作成できることが必要となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、駅施設において回生電力等の電力を効率的に利用するため、この電力を蓄電し配電系統に放電する蓄電装置に対し、有効的な放電を行わせるための鉄道電力管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の鉄道電力管理装置は、保存手段と、放電計画作成手段と、放電指令手段と、を備える。保存手段は、蓄電装置の配電系統への放電量を、所定のパラメータに対応させて保存する。放電計画作成手段は、蓄電可能な回生電力が発生する場合、保存手段に保存されている過去の列車の回生電力量と蓄電装置の配電系統への放電量のデータにより、駅設備のための、蓄電装置の配電系統への放電量を定める放電計画を作成する。放電指令手段は、作成された放電計画に従って蓄電装置への放電指令を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態の鉄道電力管理装置を利用する駅システムと電気鉄道システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、同実施形態の鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号の流れを示したブロック図である。
図3-1】図3−1は、データベースのデータ構造を例示した図である。
図3-2】図3−2は、上記データベース上の気象データの一例を示す図である。
図3-3】図3−3は、上記データベース上の充電データの一例を示す図である。
図3-4】図3−4は、上記データベース上の放電データの一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態における鉄道電力管理装置の構成を示すブロック図である。
図5図5は、同実施形態における蓄電装置の放電に関する時間と放電する電力の関係の一例を示すグラフである。
図6図6は、同実施形態における放電計画作成部の動作フローチャートである。
図7図7は、第3の実施形態における鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号を示したブロック図である。
図8-1】図8−1は、同実施形態におけるデータベースの構造を例示した図である。
図8-2】図8−2は、上記データベース上の負荷データの一例を示す図である。
図9図9は、第3の実施形態における鉄道電力管理装置のブロック図である。
図10図10は、同実施形態の鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号を示したブロック図である。
図11図11は、第5の実施形態における鉄道電力管理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(概要)
以下に説明する実施形態の鉄道電力管理装置は、駅に設置することを想定した蓄電装置に、列車間で融通されなかった回生電力や、駅設備で使用されなかった太陽光発電装置からの太陽光エネルギー等の電力を蓄電し、そのエネルギーを有効活用するものである。以下の実施形態ではその構成として、蓄電装置から配電系統への放電計画を作成する手段(放電計画作成部)、放電量を決定し、放電を指令する手段(放電決定・指令部)、および放電結果を保存する手段(放電実施結果保存部)を備えた鉄道電力管理装置を提案する。本明細書において、放電とは、蓄電装置から配電系統へ電力供給することを言う。
【0012】
以下、図面を参照して、諸実施形態にかかる鉄道電力管理装置について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
はじめに、第1の実施形態の鉄道電力管理装置を利用する駅システムと電気鉄道システムについて、詳細に説明する。図1は、第1の実施形態の鉄道電力管理装置を利用する駅システムと電気鉄道システムの概略構成を示す図である。
【0014】
電気鉄道システム内の列車102は、き電線114から得る電気を動力源として動く。き電線114へは変電所から電気を供給している。
【0015】
駅にはエレベーター、エスカレータ、照明等の複数の駅設備109が設置されている。またその他に太陽光発電装置106が設置されており、太陽光発電装置106から得られた太陽光エネルギーは、PCS(Power Conditioning System)107で直流から交流に変換し、電圧、周波数、相数、線数を合わせ、配電系統108に送られる。配電系統108には太陽光発電装置106からの太陽光エネルギーの他、変電所からの電力が、変圧器を通して送られる。
【0016】
蓄電装置104は、駅に設置されることを想定している。このようにするのは、例えば、変電所に蓄電装置104を設置すると、変電所は駅間など一般的に駅から離れた位置にあるため、蓄電および放電する際に、送電ロスが発生するからである。蓄電装置104には、電気鉄道システム内の列車102の列車間融通が無かった回生電力と、太陽光発電装置106から得られた太陽光エネルギーの内駅設備109で利用されなかった電力とを蓄電する。列車102の回生電力は、き電線114を通し、チョッパ105で電圧を調整して、蓄電装置104に蓄電される。また太陽光発電装置106から得られた太陽光エネルギーの内駅設備109で利用されなかった電力は、再度PCS103を介して、蓄電装置104に蓄電される。なお、本実施形態において、蓄電装置104は、蓄電と放電とが同時に行えるように構成されているものとする。
【0017】
鉄道電力管理装置101は、上記蓄電装置104に対する放電計画を作成し、放電量を決定して放電を指令し、電力放電結果を保存する。また、鉄道電力管理装置101は、電気鉄道システム内の列車102の回生電力と、太陽光発電装置106から得られた太陽光エネルギーの内駅設備109で利用されなかった電力とを蓄電装置104に蓄電し、配電系統108へ放電するため、PCS103を制御する。
【0018】
図2は、第1の実施形態の鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号の流れを示したブロック図である。
【0019】
鉄道電力管理装置101は、データベース121にある過去の放電実施結果のうち、同一時間、同一ダイヤで、同一天気のとき(あるいは、所定範囲で類似する雲量および気温のとき)のデータがある場合にはそれを引用して、放電計画を作成する。そして、この放電計画を基に放電量を決定しPCS103に放電を指令する。過去の放電実施結果に該当するデータが無い場合には、鉄道電力管理装置101は、後述の手法で放電計画を作成し、そのときの放電実施結果をデータベース121に保存する。
【0020】
鉄道電力管理装置101からの放電の指令によって、回生電力および太陽光エネルギーによって蓄電された蓄電装置104は、配電系統108へ電力を放電する。その放電実施結果はデータベース121に新たに保存される。
【0021】
図3−1〜図3−4は、データベースの構造を例示した図である。また、図3−2は、データベース上の気象データの一例を、図3−3は、データベース上の充電データの一例を、また、図3−4は、データベース上の放電データの一例を示した図である。
【0022】
データベース121は、階層型であり、図3−1に示すように日付171を親とし、気象172、充電173、放電174の各データを子として、関連するデータを保存する。日付171には、日付が記載されている。
【0023】
気象データは、図3−2に示すように、時間、天気、雲量(全天に占める雲の割合)、気温、湿度等からなるデータである。なお、雲量と天気との間には降水がない場合、例えば、雲量を0,1,2,…,9,10の11段階として、雲量:0→1→2→3→4→5→6→7→8→9→10に対し、天気:快晴→快晴→晴れ→晴れ→晴れ→晴れ→晴れ→晴れ→晴れ→曇り→曇りの関係がある。
【0024】
充電データは、図3−3に示すように、時間、蓄電装置104に蓄電された回生電力量、係数α、配電系統108からの蓄電電力量(太陽光発電)等からなるデータである。係数αは理想回生電力量と実際に蓄電装置に貯蓄された回生電力量の比で、後に詳しく記すこととする。また、放電データは、図3−4に示すように、時間、放電指令値、放電量等からなるデータである。なお、このデータベース121は、単一もしくは複数の項目から、類似のものを検索する機能を有する。なお、図3−1〜図3−4に示したデータ構造は一例であって、これに限るものではない。例えば、気象172、充電173、放電174の各データを個別のテーブルで構成するものとして例示しているが、これらを1つのテーブルで構成するようにしてもよい。
【0025】
また、鉄道電力管理装置101は、運行ダイヤ等の列車情報と天気、雲量、気温、湿度等の気象情報を外部から取得することが可能である。列車情報を取得することで、蓄電装置104に蓄電される回生電力の予測ができ、気象情報を取得することで、そのデータから太陽光発電装置106の発電量の予測ができる。
【0026】
次に、本実施形態の鉄道電力管理装置の構成について説明する。図4は、本実施形態の鉄道電力管理装置の構成を示すブロック図である。
【0027】
鉄道電力管理装置101は、その主要部として、放電計画作成部131と、放電量決定・指令部132と、放電実施結果保存部133を備える。
【0028】
鉄道電力管理装置101の放電計画作成部131は、その機能(または、実行する処理)として回生電力量の予測(134)の処理と太陽光発電装置106の発電量の予測(135)の処理を行い、放電計画を作成する(136)。そのため放電計画作成部131は、外部から列車情報と気象情報を取得する。
【0029】
放電計画作成部131による回生電力量の予測(134)の処理は、取得した列車情報を用いて行う。列車情報として、例えば、ダイヤ作成装置内の運行ダイヤと車両運用計画作成装置内の形式称号データを取得する。その他、回生電力量の予測のために、形式称号毎の、駅で停車する際に発生する1編成あたりの回生電力量の値を、予め放電計画作成部131に備えておく(データベース121に備えるようにしてもよい)。
【0030】
ダイヤ作成装置内の運行ダイヤを鉄道電力管理装置に取り入れることによって、回生電力の列車間融通の有無がわかる。また回生電力の列車間融通が無く回生電力が蓄電装置104に蓄電されることになる列車102について、運行ダイヤと車両運用計画作成装置内の形式称号データを連携させることにより、ブレーキをかける列車102の形式称号がわかる。そして、このブレーキをかける列車102の形式称号と形式称号毎の1編成あたりの回生電力量の値とを照らし合わせることによって、その列車102から発生する回生電力量が予測可能となる。
【0031】
その他の回生電力の予測方法としては、鉄道電力管理装置101がATC(Automatic Train Control)やその他の地上装置から得られる列車通過情報からブレーキパターンを取得し(車上装置から直接ブレーキパターンを得るようにしてもよい)、予め鉄道電力管理装置101に備えておいた列車特性の内の回生ブレーキ力を用いて、回生電力量を算出する方法も考えられる。具体的には、速度[m/s]×回生ブレーキ力[kN/MM]でモータ一つあたりの回生電力[kW/MM]を求め、全モータについてそれらを積算して、該当列車102の回生電力量[kWh/MM]を算出する。
【0032】
以上に述べた方法により、回生電力量の予測134を行なうが、現実的には回生電力がわずかに隣の駅へ流れてしまう場合がある。そのため回生電力が100%その駅の蓄電装置104に貯蓄される場合の電力量に係数αをかけた値を、蓄電装置104に貯蓄される電力量とする。係数αは0から1の範囲である。また係数αは、例えば単位時間の間に回生電力を蓄電装置に貯蓄する列車の理想回生電力量を和算したものと、データベース121に保存された蓄電装置に貯蓄された電力量とを比較し求めるものとする。形式称号毎の駅で停車する際に発生する1編成あたりの損失がない場合の回生電力量を、理想回生電力量として予め備えておく。
【0033】
また別法として、データベース121を用いて過去の同ダイヤでの同形式称号の列車102を検索し、その列車102が発生させた回生電力量を引用して回生電力量を予測する方法もある。
【0034】
太陽光発電装置106の発電量の予測(135)の処理は、公知のシステムを利用することで可能である。利用可能な技術として、例えば、特開2011−200040号公報に示されているような技術が挙げられる。
【0035】
以上に述べた、回生電力量の予測(134)の処理と太陽光発電装置106の発電量の予測(135)の処理から、蓄電装置104への充電量が予測可能となる。
【0036】
まず放電計画作成部131では、単位時間(例えば60分)毎の蓄電装置104への充電量の予測を上記の方法で行う。
【0037】
そして、蓄電装置104の充電量の予測を行った上で、放電計画作成部131は単位時間毎に、次の単位時間の放電量を算出する。次の単位時間の放電量の算出には充電量の予測値と蓄電装置104からの電池残量データを用いる。この場合、次の単位時間の放電量は、次式で表すことができる。
【0038】
次の単位時間の放電量=次の単位時間の予測充電量―現在の蓄電装置の空き容量
ただし、右辺が負となるとき、次の単位時間の放電量=0
【0039】
本実施形態では、上式で得られた、次の単位時間での放電量を、次の単位時間内にて一定に出力することとする。例えば、8時から9時の蓄電池への充電量の予測値が90kWhで、これに対し蓄電装置104に8時現在10kWhの空き容量があるとすると、8時から9時の放電量は80kWhとなる。8時から9時の間の放電量が80kWhの場合、本実施形態では一定に出力するので、図5のように、80kWで放電する。
【0040】
次に、放電計画作成部131の動作(予測を行う場合)を、図6の動作フローチャートを用いて説明する。
【0041】
まず、ダイヤ作成装置からの当日の運行ダイヤ、車両運用計画作成装置からの形式称号データ、および太陽光発電装置106の発電量予測に必要な気象情報など、蓄電装置104の充電量予測に必要な情報を取得する(ステップS1)。
【0042】
ステップS1で取得した情報を基に、回生電力は前述の方法で予測し、太陽光発電装置106の発電量は上記の公知の方法を用いて予測し、これらの予測結果から、蓄電装置104に蓄電される充電量を予測する(ステップS2)。
【0043】
そして前述の放電量の算出式の結果を、該当時間における放電計画とする(ステップS3)。
【0044】
最後に、作成した放電計画を、放電量決定・指令部132へ出力する(ステップS4)。
【0045】
以上は、予測を行う場合の動作であるが、データベース121にある過去データを用いて放電計画を作成する場合は、ステップS1で必要な情報を取得した後、ステップS2の予測を省略して、ステップS3における放電計画の作成の際、前述した過去データを用いた放電計画の作成を行う。
【0046】
放電量決定・指令部132は、以上のようにして放電計画作成部131から出力された放電計画を取得すると、この放電量計画通りに放電制御(137)を行い、蓄電装置104に放電させるためPCS103へ放電の指令を出す。
【0047】
以上は、通常動作であるが、列車102の大幅な遅延や天気の急変等により放電量計画通りに放電できない場合には、蓄電装置104の電池残量データを取得し、電池残量がなくなるまで、その直前まで行っていた放電値で放電を続けることとする。また、後に蓄電装置104への蓄電が開始されたら、再度放電の指令を出す。なお、列車102の大幅な遅延は、例えば、列車情報として列車102の運行状態の情報を得て、30分以上の遅延がある場合や、段階的評価で、所定の段階に含まれる遅延となった場合に、大幅な遅延が発生したとする。また、天気の急変は、取得した気象情報から、晴れから曇りになった場合や晴れから雨になった場合など、所定の気象の変化があった場合に天気の急変があったとする(以下、同様)。これらを放電計画作成部131が判断し、放電量決定・指令部132がその結果を受けて上記指令を出す。
【0048】
一方、鉄道電力管理装置101の放電実施結果保存部133は、放電量決定・指令部132からの放電指令値、実際の放電量、蓄電装置104に蓄電された回生電力量、配電系統108からの蓄電電力を収集する、放電実施結果収集(138)の処理を行う。収集したデータはデータベース121に保存する。保存したデータは、過去のデータを用いて放電計画を作成する際等に、利用される。
【0049】
以上のように構成される鉄道電力管理装置101によれば、蓄電装置104への回生電力等の充電量を予測し、蓄電装置104の放電計画を作成し、配電系統108への放電制御を行うことにより、列車間で融通されなかった回生電力や太陽光発電の余剰電力等を全て蓄電装置104に蓄電することができ、鉄道施設におけるエネルギーの効率的利用が可能となる。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の鉄道電力管理装置について詳細に説明する。本実施形態は、蓄電装置104の電池容量に対しての充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を考慮する点が第1の実施形態と異なり、その他の点は共通するものとなっている。以下、異なる点について詳細に説明する。
【0051】
一般的に、蓄電装置104の満充電時における電池容量に対しての充電残量の比率を、SOC(State Of Charge)と言う。蓄電装置104の種類によって、SOCの適切な範囲があり、SOCを適切な範囲に保つことによって蓄電装置104の性能劣化を防ぐことができると言われている。本明細書では、蓄電装置104の適切なSOCの範囲のことをSOC幅と呼ぶこととする。本実施形態では、蓄電装置104の一日の平均SOCが、蓄電装置104のSOC幅の中間値と一致するよう、蓄電装置104から配電系統108への放電計画を作成する。
【0052】
SOCを考慮した次の単位時間の放電量の算出は、蓄電装置104から得る現在の電池残量と、蓄電装置104の種類によって異なるSOC幅の中間値の容量と、第1の実施形態で述べた蓄電装置104への充電量の予測値を用いて行う。この場合、次の単位時間での放電量は、次式で表すことができる。
【0053】
次の単位時間の放電量=現在の電池残量―SOC幅の中間値の容量+次の単位時間での予測充電量
【0054】
本実施形態では、上式で得られた、次の単位時間の放電量を、次の単位時間内にて一定に出力することとする。その他は、第1の実施形態において説明したとおりである。
【0055】
なお、列車102の大幅な遅延や天気の急変により放電計画通りに放電できない場合は、蓄電装置104の電池残量データを取得し、例えばSOC幅の下限値など、予め利用者が定めたSOCまで放電する。定めたSOCまで放電すると、放電は一時中止し、また後に蓄電装置104への蓄電が開始され、SOC幅の中間値まで蓄電されたら、定めたSOCまで再度放電する指令を出すようにする。
【0056】
本実施形態の鉄道電力管理装置101によれば、蓄電装置104への回生電力等の充電量を予測し、SOCを考慮した蓄電装置104の放電計画の作成、および配電系統108への放電制御を行うことにより、列車間で融通されなかった回生電力や太陽光発電の余剰電力等を全て蓄電装置104に蓄電することができ、蓄電装置104の性能も考慮した(すなわち、蓄電装置104の性能劣化を防ぐことができる)鉄道施設におけるエネルギーの効率利用が可能となる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について詳細に説明する。なお、前述の図1図6に示したものと同一のものについては、同符号を付して説明を省略する。本実施形態は、鉄道電力管理装置101が駅設備109の使用電力・電力量を取得する点と駅の利用者情報を取得し、これらの情報から駅設備負荷予測を行った上で放電計画を作成する点が前述の第1の実施形態と異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0058】
図7は、第3の実施形態における鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号を示したブロック図である。
【0059】
駅設備109は個々にその使用電力・電力量の測定ができ、鉄道電力管理装置101は、各駅設備109の使用電力・電力量のデータを取得することにより、各駅設備109の負荷の予測を可能とする。また鉄道電力管理装置101は、列車情報や気象情報に加え、利用者情報も取得する。
【0060】
図8−1は、本実施形態におけるデータベースの構造を例示した図である。データベース121は、階層型であり、日付171を親とし、気象172、充電173、放電174、負荷175の各データを子として、データを保存する。気象172、充電173、放電174の各データは、図3−1のものと同じである。負荷175のデータは、時間、各駅設備109の負荷値(駅設備1、駅設備2、…)からなる(図8−2参照)。なお、ここで駅設備109の負荷値とは、該当駅設備109で使用される電力・電力量であり、例えば、スマートメータなどから得られる。また、本実施形態では、放電実施結果をデータベース121に保存する際、負荷175のデータに、上記駅設備109の負荷値に対応させて駅利用者人数を含めて記録する。
【0061】
図9は、本実施形態における鉄道電力管理装置のブロック図である。
鉄道電力管理装置101の放電計画作成部131は、第2の実施形態で述べた回生電力量の予測(134)の処理と太陽光発電装置106の発電量の予測(135)の処理の他に、駅設備負荷予測(139)の処理を行う。
【0062】
駅設備負荷予測(139)の処理は、データベース121に保存されていた各駅設備109の負荷値の過去データを用いて、次の単位時間分(例えば60分)の駅設備109の負荷値を予測する。この予測は、例えば、前年度あるいは本年度の同じ月の同じ天気の日の同様の時間帯の駅設備109の負荷値から、その平均をとるなどして行う。なお、ここで“同様の”とは、比較の元となる値等に対し、所定の範囲内にあることを意味する(以下、同様)。
【0063】
また放電計画作成部131では、気象情報の内の天気・気温・湿度のデータ、および利用者情報の内の駅利用者人数を取得する。これらの情報を用いることにより、空調やエレベーター等の駅設備109の負荷値が、さらに正確に予測可能となる。なお、この予測は、例えば、前年度あるいは本年度の同じ月の同様の駅利用者人数の日の同様の気象条件の下での同様の時間帯の駅設備109の負荷値から、その平均をとるなどして行う。
【0064】
本実施形態において、放電計画作成部131では、第1の実施形態と同様に情報の取得(ステップS1)と蓄電装置104の充電量の予測(ステップS2)を行う。その後各駅設備109の電力・電力量データを用いて駅負荷の予測を行う。本実施形態において、放電量(放電計画)は、第1の実施形態と同様の手法で決定するが、それでも駅負荷分を賄えない場合には、電池残量がある限り、駅負荷分全てを放電する方法も選べることとする。
【0065】
第1の実施形態では予測した充電量に合わせ、蓄電装置104に蓄電された電力を放電していたが、本実施形態では駅設備109の使用電力・電力量データを取得し、駅設備109の負荷を予測することによって、駅設備109の負荷に合わせた放電計画を作成することが可能となる。
【0066】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態について詳細に説明する。なお、前述の図1図9に示したものと同一のものについては、同符号を付して説明を省略する。本実施形態は、上述した第3の実施形態と比べ、蓄電装置104のSOCを考慮している点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0067】
本実施形態において、放電計画作成部131では、放電量(放電計画)は第2の実施形態と同様の手法で決定するが、それでも駅負荷分を賄えない場合には、下式の放電量を限度に、駅負荷分を放電する。またSOC幅を保たず、駅負荷分全てを放電する方法も選べることとする。
【0068】
次の単位時間の放電量=現在の電池残量―SOC幅の下限値の容量+次の単位時間での予測充電量
【0069】
また、別法として、外部から各駅設備109の電力・電力量のデータ(負荷値)を、放電量決定・指令部132で取得し、この負荷値が所定の閾値を超えた場合、放電計画を無視してリアルタイムで放電指令値を作成し、SOC幅内で電力を放電する方法もある。
【0070】
本実施形態の鉄道電力管理装置101によれば、SOCを考慮して、駅設備109の負荷に合わせた放電計画を作成することによって、蓄電装置104に蓄電された電力を蓄電装置104の性能を保ちつつ、負荷に合わせて電力を放電することが可能となる。
【0071】
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態の鉄道電力管理装置について詳細に説明する。なお、前述の図1図9に示したものと同一のものについては、同符号を付して説明を省略する。本実施形態は、鉄道電力管理装置101が電力の使用制限情報と変電所からの配電系統108の受電電力・電力量データと蓄電装置104の電池性能データ(性能情報)を取得する点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0072】
図10は、本実施形態の鉄道電力管理装置と、関連機器と、やりとりされるデータおよび信号を示したブロック図である。
【0073】
鉄道電力管理装置101は、電力の使用制限情報と、配電系統108の変電所からの受電電力・電力量データと、蓄電装置104の電池性能データのうち、充放電可能回数を取得し、それらを考慮して放電計画を作成し、放電量の決定・指令を行う。
【0074】
図11は、本実施形態における鉄道電力管理装置の構成を示すブロック図である。
【0075】
放電計画作成部131は、配電系統108の変電所からの受電電力・電力量データを取得する。放電計画作成部131は、節電要請などの電力の使用制限情報を取得すると、駅設備109の負荷の予測結果を基に、変電所からの受電電力・電力量が使用制限値を超えないよう、なるべくSOC幅の中で、SOC幅内とすることが不可能であればSOC幅を無視して、放電計画を作成する。また、常に変電所からの受電電力の把握ができ、電力会社との契約電力を超えないよう、放電計画を作成することも可能となる。
【0076】
また放電量決定・指令部132においても、変電所からの配電系統108の受電電力・電力量データを取得する。そして、放電計画作成部131で作成された放電計画通りの放電では、変電所からの受電電力・電力量が使用制限値を超えてしまうと判断した場合には、蓄電装置104の放電量を増やすなど使用制限値を超えないよう放電量を微調整する。
【0077】
また、放電計画作成部131では、配電系統108の変電所からの受電電力・電力量データを取得することにより、常に変電所からの受電電力の把握ができ、電力会社との契約電力を超えないよう、放電計画を立案することも可能となる。また放電量決定・指令部132においても、配電系統108の変電所からの受電電力・電力量データを取得することにより、放電計画通りの放電では契約電力を超えてしまうと判断される場合には、電力会社との契約電力を超えないよう放電量を微調整することも可能となる。
【0078】
また、放電計画作成部131は、蓄電装置104の電池性能のうち、充放電可能回数を取得し、この充放電可能回数と、蓄電装置104への回生電力の充電回数とから、容量と蓄電装置104の交換時期の推定を行う。このように、蓄電装置104の交換時期を推定することによって、システムの安全性を保つことが可能となる。
【0079】
前述の第1および第2の実施形態、ならびに第3および第4の実施形態では通常の、蓄電装置104の充放電を扱ったが、本実施形態では、電力の使用制限や、契約電力、蓄電装置104の寿命などの要因を考慮した放電計画を作成することが可能となる。
【0080】
(第6の実施形態)
第6の実施形態について詳細に説明する。本実施形態における鉄道電力管理装置101および関連する装置の構成は、前述の第1〜第5の実施形態において説明したものと基本的に同様のものとすることができる。本実施形態は、前述の諸実施形態とは、太陽光発電装置106から得られる太陽光エネルギーの利用方法が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。
【0081】
太陽光発電装置106から得られる太陽光エネルギーは、配電系統108につながり基本的には駅設備109で用いるが、本実施形態では、前述の第1〜第5の実施形態のように蓄電装置104に蓄電するか、または電力会社に売るか、を利用者によって任意に選択可能とする。そのための指示を鉄道電力管理装置101に指示できるように構成される。例えば、鉄道電力管理装置101に設けられるGUIなどによる選択用のボタン等により選択可能とする。その選択に応じて、鉄道電力管理装置101は放電計画を作成し、放電量の決定と指令を行う。放電計画作成部131で作成される放電計画は、太陽光発電装置106から得られる電力を電力会社に売却する選択がなされた場合には、その電力の蓄電装置104への蓄電を除外するようにして作成される。
【0082】
本実施形態では、太陽光エネルギーの利用方法を利用者が選択できることにより、利用者のニーズに合った鉄道電力管理装置の実現が可能となる。
【0083】
以上説明したとおり、第1から第6の実施形態によれば、駅施設において回生電力や太陽光発電から得られる電力を蓄電し配電系統108に放電する蓄電装置104に対し有効的な放電を行わせることができ、その結果、回生電力や太陽光発電から得られる電力を効率的に利用することができる。
【0084】
なお、以上に説明した諸実施形態の鉄道電力管理装置101は、一般的な情報処理装置を用いて、その中央演算装置およびその制御プログラムにより構成される制御手段を、放電計画作成部131と、放電量決定・指令部132と、放電実施結果保存部133として機能させることで実現することが可能である。また、データベース121は、この情報処理装置に備わる記憶装置を用いて実現できる。その他、諸実施形態の鉄道電力管理装置101を、専用の装置(ハードウェア)として実現することも可能である。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
101 鉄道電力管理装置
102 列車
103,107 PCS
104 蓄電装置
105 チョッパ
106 太陽光発電装置
108 配電系統
121 データベース
131 放電計画作成部
132 放電量決定・指令部
133 放電実施結果保存部
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11