特許第6054126号(P6054126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054126
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/067 20060101AFI20161219BHJP
   G01R 27/08 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G01R1/067 D
   G01R27/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-222713(P2012-222713)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-74673(P2014-74673A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 竜太
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−092751(JP,U)
【文献】 特開2005−245179(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0160410(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0137310(US,A1)
【文献】 特開2009−159101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/067
G01R 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に接触させられる接触子、予め規定された第1処理を実行する処理部、および当該処理部を制御する第1制御部を有するプローブと、
前記接触子を介して入出力される電気信号に基づいて前記測定対象の物理量を測定する測定部、および制御信号を送出して前記第1制御部を制御する第2制御部を有する装置本体と、
前記接触子および前記測定部を相互に接続すると共に前記第1制御部に前記装置本体から電力を供給し、かつ当該第1制御部に前記第2制御部から前記制御信号を送出するための接続用ケーブルとを備えた測定装置であって、
前記接続用ケーブルは、前記制御信号を前記第1制御部に送出するための信号送出用配線および前記プローブの基準電位と前記装置本体の基準電位とを接続する基準電位接続配線を備えて構成され、
前記プローブは、前記第1制御部の信号入力部と前記信号送出用配線とを接続する信号入力用配線と、前記信号入力用配線上の電圧を直流電圧に整流平滑すると共に当該信号入力用配線を介しての前記信号入力部への当該直流電圧の流出を規制しつつ前記第1制御部に当該直流電圧を出力する整流平滑回路と、前記信号送出用配線から前記基準電位接続配線に向けての電流の通過を許容または遮断するスイッチ回路とを備え
前記装置本体は、前記基準電位接続配線を導通する電流を検出して前記第2制御部に検出信号を出力する検出部を備え、
前記第2制御部は、前記基準電位接続配線を導通する前記電流が予め規定された電流値を超えたと前記検出信号に基づいて判別したときに前記スイッチ回路のスイッチ操作に関連付けられた第2処理を実行する測定装置。
【請求項2】
前記整流平滑回路は、整流回路としてのダイオード、および平滑回路としてのコンデンサを備えて構成されている請求項1測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続用ケーブルによって装置本体にプローブが接続されている測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、実開平5−92751号公報に副表示機能付き測定機(以下、単に「測定機」ともいう)が開示されている。この測定機は、測定機本体、および測定機本体にコードによって接続されたプローブを備えて構成されている。また、プローブは、副表示部と、測定機本体からの副表示信号に従って副表示部の表示を制御する表示制御部と備えている。さらに、測定機本体は、プローブおよびコードを介して入力される測定信号の信号波形を生成する信号処理部と、信号処理部から出力される信号波形を表示する主表示部と、信号波形の直流レベル、または、信号波形のピークレベルを検出するレベル検出部と、レベル検出部において検出されたレベルの値を副表示信号に変換する副表示信号生成部とを備えている。
【0003】
この測定機の使用に際しては、被測定部(例えば回路部品のリード)にプローブの先端部(接触子)を接触させることにより、被測定部から信号処理部にプローブおよびコードを介して電気的信号(測定信号)を入力させる。この際には、信号処理部が測定信号の信号波形を生成して主表示部に表示させる。また、レベル検出部が信号波形の直流レベル等を検出し、副表示信号生成部がレベル検出部によって検出されたレベルの値を副表示信号に変換してプローブの表示制御部に出力する。さらに、表示制御部が副表示信号に応じて副表示部を制御することにより、レベル検出部によって検出されたレベルを示す数値等を表示させる。これにより、従来の測定機では、測定機本体の主表示部に表示されている波形を見なくても、副表示部に表示された数値等を見て信号レベルを認識することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平−92751号公報(第4−7頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の測定機には、以下の解決すべき問題点がある。すなわち、従来の測定機では、プローブに副表示部および表示制御部を配設すると共に、測定機本体から表示制御部にコードを介して副表示信号を送信することにより、レベル検出部によって検出された直流レベル等の値を副表示部に表示させる構成が採用されている。
【0006】
この場合、図4に示すように、従来の測定機1x(以下、従来の測定機に関する構成要素については、符号の末尾に「x」を付して説明する)では、副表示信号生成部から表示制御部22xの信号線接続部22sxに副表示信号を送信するための制御信号用ラインLbx、副表示部21xのグランド接続部21gxや表示制御部22xのグランド接続部22gxを測定機本体のグランド電位に接続するためのグランドラインLcx、接触子20xを測定機本体に接続するための測定信号用ラインLax、および測定機本体に配設されている電源部から副表示部21xの電源接続部21vxや表示制御部22の電源接続部22vxに電源を供給するための電源ラインLexの計4本のライン(以下、これらを区別しないときには「ラインLx」ともいう)を備えてコード31xが構成されている。したがって、従来の測定機1xでは、ラインLxの本数が多いことでコード31xが太くなっており、この太いコード31xがプローブ2xの自由な移動の妨げとなって、その操作性が悪化しているという問題点がある。
【0007】
また、この種の測定機(測定装置)では、一般的に、コード31xにおけるプローブ2x側の端部がプローブ2xに対して固定的に接続されると共に、コード31xにおける測定機本体側の端部が接続用のコネクタを介して測定機本体に接続される構成が採用されている。この場合、コネクタを介して測定機本体にコード31xを接続する構成を採用する場合には、コード31xを構成するラインLxの本数に応じた数の接続端子が設けられたコネクタを使用する必要がある。したがって、コード31xを構成するラインLxの数が多数の従来の測定機1xでは、コネクタ内の接続端子の数が多数となることに起因して、測定機本体(装置本体)に対するコード(接続用ケーブル)31xの着脱に大きな力が必要となったりコネクタの小型化が困難であるという問題点が存在する。
【0008】
一方、この種の測定機(測定装置)のなかには、図4に破線で示すように、プローブ2xから測定機本体をリモート操作するためのリモートスイッチ26xがプローブ2xに配設されているものが存在する。このリモートスイッチ26xを有するプローブ2xでは、上記の測定信号用ラインLax、制御信号用ラインLbx、グランドラインLcxおよび電源ラインLexとは別個に、リモートスイッチ26xが操作されたか否かを判別するための電気的信号を測定機本体に入出力させるための操作信号用ラインLfx,Lgxを備えてコード31xが構成されている。したがって、プローブ2xにリモートスイッチ26xを設けた場合には、コード31xを構成するラインLxの数がさらに多数となるため、コード31xが一層太くなると共に、接続端子の数もさらに多いコネクタを使用する必要がある。このため、プローブ2xの操作性が一層悪化し、かつ、コネクタの着脱が一層困難となるという問題点がある。
【0009】
本発明は、かかる解決すべき問題点に鑑みてなされたものであり、プローブと装置本体とを接続する配線数を低減してプローブの操作性を向上させ得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の測定装置は、測定対象に接触させられる接触子、予め規定された第1処理を実行する処理部、および当該処理部を制御する第1制御部を有するプローブと、前記接触子を介して入出力される電気信号に基づいて前記測定対象の物理量を測定する測定部、および制御信号を送出して前記第1制御部を制御する第2制御部を有する装置本体と、前記接触子および前記測定部を相互に接続すると共に前記第1制御部に前記装置本体から電力を供給し、かつ当該第1制御部に前記第2制御部から前記制御信号を送出するための接続用ケーブルとを備えた測定装置であって、前記接続用ケーブルは、前記制御信号を前記第1制御部に送出するための信号送出用配線および前記プローブの基準電位と前記装置本体の基準電位とを接続する基準電位接続配線を備えて構成され、前記プローブは、前記第1制御部の信号入力部と前記信号送出用配線とを接続する信号入力用配線と、前記信号入力用配線上の電圧を直流電圧に整流平滑すると共に当該信号入力用配線を介しての前記信号入力部への当該直流電圧の流出を規制しつつ前記第1制御部に当該直流電圧を出力する整流平滑回路と、前記信号送出用配線から前記基準電位接続配線に向けての電流の通過を許容または遮断するスイッチ回路とを備え、前記装置本体は、前記基準電位接続配線を導通する電流を検出して前記第2制御部に検出信号を出力する検出部を備え、前記第2制御部は、前記基準電位接続配線を導通する前記電流が予め規定された電流値を超えたと前記検出信号に基づいて判別したときに前記スイッチ回路のスイッチ操作に関連付けられた第2処理を実行する
【0012】
また、請求項記載の測定装置は、請求項1記載の測定装置において、前記整流平滑回路は、整流回路としてのダイオード、および平滑回路としてのコンデンサを備えて構成されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の測定装置では、整流平滑回路が信号入力用配線上の電圧を直流電圧に整流平滑すると共に信号入力用配線を介しての信号入力部への直流電圧の流出を規制しつつ第1制御部に直流電圧を出力することにより、装置本体からプローブに制御信号を送信するための信号送信用配線、および装置本体からプローブに電力を供給するための電力供給用配線を別個に用意することなく、接続用ケーブルの信号送出用配線を信号送信用配線および電力供給用配線として兼用することができるため、接続用ケーブルに配設する配線数を少なくすることができる結果、プローブの操作性を向上させることができる。また、接続用ケーブルに配設する配線数が少ない分だけ、装置本体のコネクタに設ける接続端子の数も少なくすることができるため、小さな力でコネクタを容易に着脱することができると共にコネクタの小型化を図ることができる。
【0014】
た、プローブのスイッチ回路が操作されたときに、装置本体の検出部が基準電位接続配線を導通する電流を検出して第2制御部に検出信号を出力し、第2制御部が、基準電位接続配線を導通する電流が予め規定された電流値を超えたと検出信号に基づいて判別したときに第2処理を実行することにより、従来の測定機1xとは異なり、スイッチ回路の操作状態を第2制御部に報知するための専用配線を接続用ケーブルに設けることなく、信号送出用配線および基準電位接続配線をスイッチ回路の操作状態を検出するための配線として兼用することができるため、接続用ケーブルに配設する配線数やコネクタに設ける接続端子の数を増加させることなく、スイッチ回路の操作状態を第2制御部に報知することができる。したがって、この測定装置によれば、プローブの操作性を悪化させずに、しかも、コネクタの着脱を困難とさせることなく、プローブから装置本体をリモート操作することができる。
【0015】
また、請求項記載の測定装置によれば、ダイオードおよびコンデンサで整流平滑回路を構成したことにより、簡易な構成でありながら、信号入力用配線上の電圧を直流電圧に整流平滑することができると共に信号入力用配線を介しての信号入力部への直流電圧の流出を規制しつつ第1制御部(プローブ)に直流電圧を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】絶縁抵抗測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】絶縁抵抗測定装置1の各部の電位について説明するための説明図である。
図3】測定用プローブ3Aの構成を示す構成図である。
図4】従来の測定機1xにおけるプローブ2xおよび接続用ケーブル31xの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す絶縁抵抗測定装置1は、「測定装置」の一例であって、装置本体2および測定用プローブ3,4を備えて測定対象の絶縁抵抗(「物理量である電気的パラメータ」の一例)を測定可能に構成されている。また、測定用プローブ3には、測定信号用ラインLa、制御信号用ラインLbおよびグランドラインLcの3本の配線を有する接続用ケーブル31が接続され、この接続用ケーブル31の一端側に設けられたコネクタ32を介して測定用プローブ3が装置本体2のコネクタに接続されている。さらに、測定用プローブ4には、測定信号用ラインLdを有する接続用ケーブル41が接続され、この接続用ケーブル41の一端側に設けられたコネクタ42を介して装置本体2のコネクタに測定用プローブ4が接続されている。この場合、測定用プローブ3は、接触子20を備え、測定用プローブ4は、一例として、測定対象をクリップ可能なクリップ型の接触子30を備えている。
【0019】
装置本体2は、「装置本体」の一例であって、測定部11、電流検出部12、操作部13、表示部14、主制御部15および記憶部16を備えて構成されている。測定部11は、「測定部」の一例であって、主制御部15の制御に従い、測定用プローブ3,4の接触子20,30を介して入出力される電気信号に基づき、測定対象の絶縁抵抗を測定して測定データDsを出力する「測定処理」を実行する。電流検出部12は、「検出部」の一例であって、後述するように、接続用ケーブル31のグランドラインLcを導通する電流を検出して検出信号Sdを主制御部15に出力する。
【0020】
操作部13は、測定モードや測定レンジを切り替える切替えスイッチ、および測定処理の開始/終了を指示する操作スイッチ等(いずれも図示せず)を備え、スイッチ操作に応じた操作信号を主制御部15に出力する。表示部14は、一例として、液晶表示器を備えて構成されて、主制御部15の制御に従って測定部11による測定結果(測定された絶縁抵抗の値等)を表示する。
【0021】
主制御部15は、「第2制御部」の一例であって、絶縁抵抗測定装置1を総括的に制御する。具体的には、主制御部15は、操作部13からの操作信号に応じて測定部11を制御して上記の測定処理を実行させる。また、主制御部15は、測定部11から出力される測定データDsと、記憶部16に記憶されている判定用基準データD0とに基づき、予め規定された絶縁抵抗値以上の抵抗値が測定されたか否かを判定する。さらに、主制御部15は、その判定結果に基づいて一例としてアクティブローの制御信号Scを生成して、生成した制御信号Scを接続用ケーブル31を介して測定用プローブ3に送信する。また、主制御部15は、表示部14を制御することにより、測定データDsに基づいて測定された絶縁抵抗値を表示させる。
【0022】
さらに、主制御部15は、電流検出部12から出力された検出信号Sdに基づいて、グランドラインLcを導通する電流の電流値が予め規定された電流値を超えたと判別したときに、後述する「ホールド操作」が行われたと判別して、その時点において表示部14に表示させている測定値(絶縁抵抗値)を変化させずに、その表示内容を維持する「測定値ホールド処理(「スイッチ操作に関連付けられた第2処理」の一例)」を実行する。記憶部16は、上記の判定用基準データD0、主制御部15の動作プログラム、および主制御部15の演算結果などを記憶する。
【0023】
測定用プローブ3は、「プローブ」の一例であって、接触子20、判定結果表示部21、表示制御部22、整流平滑回路23およびリモートスイッチ26を備えて構成されている。接触子20は、「接触子」の一例であって、ピン状(棒状)に形成されると共に、接続用ケーブル31の測定信号用ラインLaを介して装置本体2の測定部11に接続されている。
【0024】
判定結果表示部21は、「処理部」の一例であって、表示制御部22の制御に従い、装置本体2の主制御部15による判定結果を表示する「判定結果表示処理(「予め規定された第1処理」の一例)」を実行する。具体的には、本例の絶縁抵抗測定装置1では、一例として、主制御部15による絶縁状態についての判定結果が「良好」のときに、緑色に点灯させられて判定結果が良好であった旨を報知すると共に、主制御部15による判定結果が「不良」のときに、赤色に点灯させられて判定結果が不良であった旨を報知する構成が採用されている。この場合、判定結果表示部21の電源接続部21vは後述する表示制御部22の電源接続部22vに接続され、グランド接続部21gは測定用プローブ3の基準電位でもある表示制御部22のグランド接続部22gに接続されている。
【0025】
表示制御部22は、「第1制御部」に相当し、主制御部15からの制御信号Scに従って判定結果表示部21の点灯状態を制御する。この場合、本例の測定用プローブ3では、表示制御部22の信号線接続部(信号入力部)22sが接続用ケーブル31の制御信号用ラインLbに信号入力用配線L1を介して接続されると共に、電源接続部22vが整流平滑回路23におけるダイオード24とコンデンサ25との接続部位に接続されると共に上記したように判定結果表示部21の電源接続部21vに接続され、かつグランド接続部22gが基準電位接続配線L2を介して接続用ケーブル31のグランドラインLcに接続されると共に上記したように判定結果表示部21のグランド接続部21gに接続されている。この場合、信号入力用配線L1は制御信号用ラインLbと信号線接続部22sとを接続し、基準電位接続配線L2はグランドラインLcとグランド接続部22gとを接続する。
【0026】
整流平滑回路23は、整流回路としてのダイオード24と平滑回路としてのコンデンサ25とを備えて構成されて、信号入力用配線L1と基準電位接続配線L2(グランド接続部22gでもある)との間に接続され、信号入力用配線L1上の電圧を直流電圧に整流平滑すると共に信号入力用配線L1を介しての信号線接続部22sへの生成した直流電圧の流出を規制しつつ判定結果表示部21の電源接続部21vおよび表示制御部22の電源接続部22vにその直流電圧を出力する。
【0027】
リモートスイッチ26は、「スイッチ回路」に相当し、上記した「測定値ホールド処理」を実行させる機能を有し、電流制限用の抵抗27とスイッチ28とで構成されている。このリモートスイッチ26は、上記した信号入力用配線L1と基準電位接続配線L2との間に配設されて、スイッチ28がオン状態のときには、信号入力用配線L1および抵抗27を介して制御信号用ラインLbから基準電位接続配線L2を介してグランドラインLcに向けての電流の通過を許容し、スイッチ28がオフ状態のときには、信号入力用配線L1から基準電位接続配線L2に向けての電流の通過(つまり制御信号用ラインLbからグランドラインLcに向けての電流の通過)を遮断する。
【0028】
なお、本例の絶縁抵抗測定装置1では、表示制御部22の信号線接続部22sおよび主制御部15を相互に接続するための制御信号用ラインLbが「信号送出用配線」に相当し、判定結果表示部21のグランド接続部21gおよび表示制御部22のグランド接続部22gを装置本体2のグランド電位に接続するためのグランドラインLcが「基準電位接続配線」に相当する。
【0029】
この絶縁抵抗測定装置1による絶縁抵抗の測定に際しては、まず、接続用ケーブル31,41を装置本体2に接続する。この際に、この絶縁抵抗測定装置1では、制御信号用ラインLbが、表示制御部22に制御信号Scを送出する配線としての機能と、測定用プローブ3に電力を供給する配線としての機能とを兼用している。したがって、接続用ケーブル31を構成する配線が、測定信号用ラインLa、制御信号用ラインLbおよびグランドラインLcの3本だけとなるため、この3本を装置本体2に接続するためのコネクタ3bに配設された接続端子も3つだけとなっている。また、接続用ケーブル41を構成する配線が測定信号用ラインLdだけのため、この測定信号用ラインLdを装置本体2に接続するためのコネクタ4bに配設された接続端子も1つだけとなっている。したがって、この絶縁抵抗測定装置1では、装置本体2に対して接続用ケーブル31(コネクタ3b)や接続用ケーブル41(コネクタ4b)を小さな力で装着する(接続する)ことが可能となると共にコネクタ3b,コネクタ4bが小型化されている。
【0030】
次いで、装置本体2の操作部13を操作して電源を投入した後に、所望の測定モードおよび所望の測定レンジを選択する。続いて、測定用プローブ4の接触子30を測定対象に接触させる(測定対象の任意の部位をクリップする)と共に、測定用プローブ3の接触子20を測定対象に接触させる。この際には、主制御部15が測定部11を制御して測定処理を開始させ、測定部11が測定信号用ラインLa,Ldおよび接触子20,30を介して入出力させた電気信号に基づき、測定対象の絶縁抵抗を測定して測定データDsを出力する。また、主制御部15は、測定部11から出力された測定データDsに基づき、表示部14を制御して測定部11の測定結果(絶縁抵抗値)を表示させる。
【0031】
さらに、主制御部15は、測定部11から出力された測定データDsと、記憶部16に記憶されている判定用基準データD0とに基づき、予め規定された絶縁抵抗値以上の抵抗値が測定されたか否かを判定する。この際に、規定された絶縁抵抗値以上の抵抗値が測定されたと判別したときには、主制御部15は、測定用プローブ3(表示制御部22)に制御信号Scを送信することで判定結果表示部21を緑色に点灯させる。また、規定された絶縁抵抗値を下回る抵抗値が測定されたと判別したときには、主制御部15は、測定用プローブ3(表示制御部22)に制御信号Scを送信することで判定結果表示部21を赤色に点灯させる。これにより、測定用プローブ3を手にしている利用者に対して、装置本体2の表示部14を視認させることなく、測定対象が規定の絶縁抵抗値を有しているか否かを、手元の測定用プローブ3における判定結果表示部21の点灯色によって認識させることが可能となる。
【0032】
この場合、この絶縁抵抗測定装置1では、上記の一連の処理に際して、装置本体2の主制御部15から測定用プローブ3の表示制御部22に制御信号Scを送信するための制御信号用ラインLbを導通する電流の一部を判定結果表示部21や表示制御部22に電力として供給することで、接続用ケーブル31に電力供給用の専用ラインを設けることなく、装置本体2から表示制御部22への制御信号Scの送信、および装置本体2から判定結果表示部21や表示制御部22への電力の供給を行う構成が採用されている。
【0033】
具体的には、この絶縁抵抗測定装置1では、電源が投入され、かつ上記したように主制御部15から測定用プローブ3に制御信号Sc(判定結果表示部21の点灯状態を制御するための信号)が送信されていない状態(例えば、測定部11による測定処理が実行されていない状態:ノーマル状態)においては、図2に矢印Aで示すように、制御信号用ラインLbの電位が、ノーマリーハイレベル(予め規定された一定の電力供給時電位Vh)の状態に維持される。この状態では、制御信号用ラインLbに接続されている信号線接続部22sの電位が制御信号用ラインLbと同電位に維持される結果(デジタル信号におけるハイレベルとして判定される電位で一定に維持されて電位が変化しない状態)、表示制御部22は、「制御信号なし」と判別して、一例として、判定結果表示部21を非点灯状態に制御する。
【0034】
また、この状態では、平滑回路23のダイオード24が制御信号用ラインLbからの電流の一部の通過を許容してコンデンサ25を蓄電すると共に、電源接続部21vを介して判定結果表示部21に電流(電力)を供給し、かつ電源接続部22vを介して表示制御部22に電流(電力)を供給する。
【0035】
一方、前述したように、測定データDsおよび判定用基準データD0に基づく判定結果に応じて、主制御部15が表示制御部22に制御信号Scを送信したときには、図2に矢印Bで示すように、制御信号用ラインLbの電位は、制御信号Scの内容に応じて、上記の電力供給時電位Vhおよび0Vの間で変化(上下)する。したがって、信号線接続部22sの電位も制御信号用ラインLbの電位の変化に応じて電力供給時電位Vhおよび0Vの間で変化する結果(デジタル信号におけるハイレベルとして判定される電位とローレベルとして判定される電位との間で変化する状態)、表示制御部22は、「制御信号あり」と判別して、その制御信号Scの内容に応じて判定結果表示部21を緑色または赤色に点灯させる。
【0036】
また、制御信号Scの送信によって制御信号用ラインLbの電位が変化している状態においては、整流平滑回路23のダイオード24が制御信号Scを整流すると共にコンデンサ25がダイオード24によって整流された電圧を平滑する。その結果、コンデンサ25の電位(つまり電源接続部21v,22vの電位)は、図2に示すように、電力供給時電位Vh(ハイレベル電位)よりも若干低下するものの、判定結果表示部21や表示制御部22を動作させるのに必要な電位まで蓄電される。したがって、制御信号Scが出力されている状態(制御信号用ラインLbの電位が0Vの状態)では、判定結果表示部21および表示制御部22はコンデンサ25から供給される電流(電力)によって正常に作動する。
【0037】
この場合、この絶縁抵抗測定装置1では、整流平滑回路23のダイオード24がコンデンサ25から信号入力用配線L1を介しての表示制御部22の信号線接続部22sへの直流電圧の流出を規制する。したがって、この測定用プローブ3では、制御信号用ラインLbの電位が0Vとなっている状態において、コンデンサ25に蓄電されている直流電圧が信号入力用配線L1を介して表示制御部22の信号線接続部22sに流入して表示制御部22が「制御信号なし」と誤判別する事態が回避される。
【0038】
一方、この絶縁抵抗測定装置1では、前述したように装置本体2の表示部14に測定結果(絶縁抵抗値)を表示させている状態において測定用プローブ3のリモートスイッチ26を押圧操作することにより、表示部14に表示されている測定結果を変化させずに維持する(測定値のホールド)ことができる。
【0039】
具体的には、リモートスイッチ26が操作されていない状態においては、制御信号Scとして信号線接続部22sに流入した電流、表示制御部22の負荷状態に応じて電源接続部22vに流入した電流、および判定結果表示部21の負荷状態に応じて電源接続部21vに流入した電流がグランドラインLcを介して装置本体2に流入する。一方、リモートスイッチ26を操作したときには、上記の各電流に加えて、抵抗27の抵抗値に応じた電流値の電流が、制御信号用ラインLb、抵抗27、スイッチ28およびグランドラインLcを介して装置本体2に流入する結果、リモートスイッチ26が操作されていないときよりもグランドラインLcを導通する電流量が増加する。
【0040】
したがって、電流検出部12は、リモートスイッチ26の操作に伴ってグランドラインLcを流れる電流を検出して検出信号Sdを主制御部15に出力する。これに応じて、主制御部15は、検出信号Sdに基づいて、グランドラインLcを導通する電流の電流値が予め規定された電流値を超えたと判別したときに、「ホールド操作」が行われたと判別して、表示部14を制御することにより、その時点において表示させている測定結果を変化させずに維持させる(測定値のホールド)。これにより、例えば、測定用プローブ3の接触子20を測定対象から離間させたとしても、表示部14に測定結果(絶縁抵抗値)が表示された状態が維持されるため、接触子20を測定対象に接触させたままの状態で表示部14を視認するのと比較して測定結果を安全に視認することが可能となる。
【0041】
このように、この絶縁抵抗測定装置1によれば、整流平滑回路23が信号入力用配線L1上の電圧を直流電圧に整流平滑すると共に信号入力用配線L1を介しての信号線接続部22sへの直流電圧の流出を規制しつつ判定結果表示部21および表示制御部22に直流電圧を出力することにより、装置本体2(主制御部15)から測定用プローブ3(表示制御部22)に制御信号Scを送信するための信号送信用ライン、および装置本体2から測定用プローブ3(判定結果表示部21および表示制御部22)に電力を供給するための電力供給用ラインを別個に用意することなく、接続用ケーブル31の制御信号用ラインLbを信号送信用ラインおよび電力供給用ラインとして兼用することができるため、接続用ケーブル31に配設するラインの数を少なくすることができる結果、測定用プローブ3の操作性を向上させることができる。また、接続用ケーブル31に配設するラインの数が少ない分だけ、コネクタ3bに設ける接続端子の数も少なくすることができるため、小さな力でコネクタ3bを容易に着脱することができると共にコネクタ3bの小型化を図ることができる。
【0042】
また、この絶縁抵抗測定装置1によれば、測定用プローブ3のリモートスイッチ26が操作されたときに、装置本体2の電流検出部12がグランドラインLcを導通する電流を検出して主制御部15に検出信号Sdを出力し、主制御部15が、グランドラインLcを導通する電流が予め規定された電流値を超えたと検出信号Sdに基づいて判別したときに「測定値ホールド処理」を実行することにより、従来の測定機1xとは異なり、リモートスイッチ26の操作状態を主制御部15に報知するための専用ラインを接続用ケーブル31に設けることなく、制御信号用ラインLbおよびグランドラインLcをリモートスイッチ26の操作状態を検出するための信号ラインとして兼用することができるため、接続用ケーブル31に配設するラインの数やコネクタ3bに設ける接続端子の数を増加させることなく、リモートスイッチ26の操作状態を主制御部15に報知することができる。したがって、この絶縁抵抗測定装置1によれば、測定用プローブ3の操作性を悪化させずに、しかも、コネクタ3bの着脱を困難とさせることなく、測定用プローブ3から装置本体2をリモート操作することができる。
【0043】
また、この絶縁抵抗測定装置1によれば、ダイオード24およびコンデンサ25で整流平滑回路23を構成したことにより、簡易な構成でありながら、信号入力用配線L1上の電圧を直流電圧に整流平滑することができると共に信号入力用配線L1を介しての信号線接続部22sへの直流電圧の流出を規制しつつ判定結果表示部21および表示制御部22に直流電圧を出力することができる。
【0044】
なお、「測定装置」の構成については、上記の絶縁抵抗測定装置1の構成の例に限定されない。例えば、図3に示すように、「整流平滑回路」として、信号入力用配線L1とグランド接続部21gとの間に、ダイオード24Aおよびコンデンサ25Aで構成される整流平滑回路23Aを設けて測定用プローブ3Aを構成することもできるし、整流平滑回路23の配設を省略して、整流平滑回路23Aのみを設けて、整流平滑回路23Aから電源接続部22vに直流電圧を供給する構成を採用することもできる。これらの構成においても、測定用プローブ3と同様にして、簡易な構成でありながら、信号入力用配線L1上の電圧を直流電圧に整流平滑することができると共に信号入力用配線L1を介しての信号線接続部22sへの直流電圧の流出を規制しつつ判定結果表示部21および表示制御部22に直流電圧を出力することができる。なお、測定用プローブ3Aにおいて、測定用プローブ3と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0045】
また、「物理量」の一例として「絶縁抵抗値」を測定する構成の絶縁抵抗測定装置1を「測定装置」の一例として説明したが、「絶縁抵抗値」以外の各種物理量(例えば、絶縁抵抗値以外の抵抗値、電流値、電圧値、電力値および位相等の各種電気的パラメータや、温度、湿度、輝度(光度)および照度等の各種の物理量)を測定する「測定装置」(図示せず)においても、上記の絶縁抵抗測定装置1と同様の構成を採用することで、絶縁抵抗測定装置1と同様の効果を奏することができる。
【0046】
また、「処理部」の一例として判定結果表示部21を備え、かつ「第1制御部」の一例として表示制御部22を備えると共に、「第1処理」の一例として判定結果に応じて装置本体2の点灯状態を異ならせる処理を実行する構成を例に挙げて説明したが、「第1処理」の内容、および「第1処理」を実行するための「処理部」や、それを制御する「第1制御部」の構成は、上記の例に限定されない。例えば、上記の絶縁抵抗測定装置1における判定結果表示部21の点灯状態の変更に代えて(または、加えて)、判定結果に応じて予め規定された音を出力する処理(「第1処理」の他の一例)を実行する構成を採用することができる。このような構成では、「処理部」としてスピーカを配設し、かつ「第1制御部」として「放音制御部」を配設すればよい。
【0047】
さらに、「第2処理」の一例として「測定値ホールド処理」を実行する構成を例に挙げて説明したが、リモートスイッチ26の操作に応じて測定部11による測定処理を開始/停止させる処理(「測定開始/停止処理」:「第2処理」の他の一例)や、リモートスイッチ26の操作に応じて測定データDsを記憶部16に記憶させる処理(「測定値記憶処理」:「第2処理」のさらに他の一例)などを実行可能に構成することもできる。
【0048】
また、主制御部15から制御信号Scが送信されていないとき(表示制御部22が「制御信号なし」と判別したとき)に判定結果表示部21が非点灯状態に制御する構成に代えて、例えば、主制御部15から制御信号Scが送信されていないときに判定結果表示部21を緑色および赤色以外の色(例えば黄色や青色)に点灯制御する構成(制御信号Scが送信されていないときにも判定結果表示部21を点灯させる構成)を採用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 絶縁抵抗測定装置
2 装置本体
3,4 測定用プローブ
11 測定部
12 電流検出部
13 操作部
14 表示部
15 主制御部
20,30 接触子
21 判定結果表示部
22 表示制御部
23 整流平滑回路
24 ダイオード
25 コンデンサ
26 リモートスイッチ
31,41 接続用ケーブル
32,42 コネクタ
L1 信号入力用配線
L2 基準電位接続配線
La,Ld 測定信号用ライン
Lb 制御信号用ライン
Lc グランドライン
Sc 制御信号
Sd 検出信号
図1
図2
図3
図4