特許第6054135号(P6054135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054135
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】オイルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20161219BHJP
   F16J 15/3244 20160101ALI20161219BHJP
   F16J 15/3252 20160101ALI20161219BHJP
【FI】
   F16J15/3232 201
   F16J15/3244
   F16J15/3252
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-233637(P2012-233637)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-84934(P2014-84934A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】中川 岳洋
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−254213(JP,A)
【文献】 特開平07−208610(JP,A)
【文献】 特開平07−208611(JP,A)
【文献】 実開平04−027262(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16−15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの軸孔内周に固定されるリップシール部材および前記軸孔に挿通する回転軸に固定されるスリンガーの組み合わせよりなり、機内の密封流体が機外へ漏洩するのを抑制するとともに機外のダストが機内へ侵入するのを抑制するオイルシールであって、
前記スリンガーは、前記回転軸に嵌合される筒状部と前記筒状部の機内側端部から径方向外方へ向け立ち上げ形成されたフランジ部とを一体に備え、前記フランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝を備え、
前記リップシール部材は、前記スリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に摺動可能に密接して前記密封流体をシールするメインリップと、前記メインリップの機外側に配置されたゴム状弾性体製のダストリップと、前記メインリップおよび前記ダストリップの中間に配置された同じくゴム状弾性体製の中間リップとを備え、
前記中間リップは、そのリップ端を機内側へ向け、前記リップ端をもって全周に亙って前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接し、さらに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する対向部に環状の第1突起および円周上一部の第2突起を備え、
前記第1突起は、前記スリンガーにおける筒状部の外周面との間に微小間隙を形成して前記ダストが前記リップ端のほうへ通過しにくくする構造を備え、
前記第2突起は、前記第1突起より高さの高い部分を有して前記回転軸に偏心が生じたときに前記微小間隙を適正に保つ構造を備えることを特徴とするオイルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係る密封装置の一種であるオイルシールに関する。本発明のオイルシールは例えば、自動車(エンジン)関連の分野で用いられ、または一般産機の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように従来から、ダストリップとしてファブリック51を用いるオイルシールが知られており、このオイルシールは例えば、自動車エンジン(ディーゼルエンジン)の分野においてクランクシャフトの回りをシールするために用いられる。
【0003】
この従来技術において、ファブリック51はその初期的な内径寸法(スリンガー52挿入前の内径寸法)dをスリンガー52のファブリック摺動部分の外径寸法dより小さく設定され、これによりファブリック51は締め代を有し、スリンガー52が挿入されるとスリンガー52に沿ってファブリック51が拡がり、スリンガー52との接触幅を確保する構造となっている。
【0004】
したがってここでは、ファブリック51が円周上均一に押し拡げられるようにファブリック51の締め代が大きく設定されているため、またファブリック51自身の伸び荷重が高く、緊迫力が高くなるため、ファブリック51の摺動トルクが高く、燃費向上の妨げとなっている。
【0005】
また、ファブリック51は通気性を備えるため、以下の利点および難点を有している。
利点・・・・
ファブリック51およびメインリップ53間の空間54の圧力が低下する状況が発生する場合、ファブリック51が機外Bのエア(大気)を取り込む(通過させる)ことにより圧力の低下が抑制される。したがってファブリック51およびメインリップ53間の空間54の圧力が低下してメインリップ53がスリンガー52にベタ当たりするのを抑制することができる(ファブリックのエア取り込みによる利点)。
難点・・・・
オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なうことがあり、検査は一般に機内側から正圧をかけてファブリック51側でエア漏れ量を測定することにより行なわれる。この場合、上記従来技術ではファブリック51がエアを放出する(通過させる)ため、オイルシールが正常であっても漏れ量がゼロとならない。したがって漏れ許容値を設定したうえで検査を行なう必要があり、漏れしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことができない(ファブリックのエア放出による難点)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−115375号公報
【特許文献2】特開平7−208610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ダストリップとしてファブリックを用いる場合と比較して摺動トルクを低減させることができ、さらにファブリックのエア放出による難点を解消することができるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のオイルシールは、ハウジングの軸孔内周に固定されるリップシール部材および前記軸孔に挿通する回転軸に固定されるスリンガーの組み合わせよりなり、機内の密封流体が機外へ漏洩するのを抑制するとともに機外のダストが機内へ侵入するのを抑制するオイルシールであって、前記スリンガーは、前記回転軸に嵌合される筒状部と前記筒状部の機内側端部から径方向外方へ向け立ち上げ形成されたフランジ部とを一体に備え、前記フランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝を備え、前記リップシール部材は、前記スリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に摺動可能に密接して前記密封流体をシールするメインリップと、前記メインリップの機外側に配置されたゴム状弾性体製のダストリップと、前記メインリップおよび前記ダストリップの中間に配置された同じくゴム状弾性体製の中間リップとを備え、前記中間リップは、そのリップ端を機内側へ向け、前記リップ端をもって全周に亙って前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接し、さらに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する対向部に環状の第1突起および円周上一部の第2突起を備え、前記第1突起は、前記スリンガーにおける筒状部の外周面との間に微小間隙を形成して前記ダストが前記リップ端のほうへ通過しにくくする構造を備え、前記第2突起は、前記第1突起より高さの高い部分を有して前記回転軸に偏心が生じたときに前記微小間隙を適正に保つ構造を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成を備える本発明のオイルシールにおいては、ダストリップがファブリックではなくゴム状弾性体よりなるものとされ、ゴム状弾性体よりなるダストリップは薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいため、ファブリックと同等の締め代でありながら緊迫力が低減される。したがってダストリップの摺動トルクを低減させることが可能とされる。
【0010】
また、本発明において、ファブリックのエア放出による難点は、以下のように解消される。
【0011】
すなわち本発明においては、上記したようにスリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝が設けられているため、機内の密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝が設けられるとこのネジ溝を伝ってのエア流路が形成されるため、オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なう場合、このエア流路を流れるエアが漏れとして検知されてしまう。
【0012】
これに対しては、メインリップおよびダストリップの間に中間リップが配置され、この中間リップはそのリップ端を機内側へ向け、リップ端をもって全周に亙ってスリンガーに密接するため、この中間リップがネジ溝を伝ってオイルシール内部へ入ってくるエアをダストリップに届かせることなく途中で堰き止めてシールする。したがってオイルシールが正常である場合、ダストリップ側でエア漏れは検知されないことになり、よってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことが可能とされる。
【0013】
また、本発明においては、ダストを以下のようにシールする。
【0014】
すなわち本発明においては、上記したようにメインリップの機外側にゴム状弾性体製のダストリップが設けられているため、このダストリップがダストの侵入を抑制すべくシール作用を発揮する。またメインリップおよびダストリップ間に中間リップが配置され、中間リップに環状の第1突起が設けられ、この第1突起は、スリンガーにおける筒状部の外周面との間に微小間隙を形成してダストがリップ端のほうへ通過しにくくする構造を備えている。したがってこの第1突起の微小間隙によるラビリンス構造によってもダストをシールすることが可能とされる。
【0015】
尚、中間リップは、環状の第1突起とともに円周上一部の第2突起を備え、この第2突起は、第1突起より高さの高い部分を有して回転軸に偏心が生じたときに第1突起の微小間隙を適正に保つ構造を備えている。したがって第1突起の微小間隙によるラビリンス構造は、軸偏心が生じたときにも失われにくいものとされている。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明においては以上説明したようにダストリップがファブリックではなく、薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいゴム状弾性体よりなるものとされるため、ダストリップの摺動トルクを低減させることが可能とされる。
【0018】
また、オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なう場合、中間リップがネジ溝を伝ってオイルシール内部へ入ってくるエアをダストリップに届かせることなく途中でシールするため、オイルシールが正常であればダストリップ側でエア漏れは検知されないことになる。したがってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことが可能とされる。
【0019】
また、メインリップおよびダストリップ間に中間リップが配置され、中間リップに環状の第1突起が設けられ、第1突起がスリンガーとの間に微小間隙を形成してダストがリップ端のほうへ通過しにくくする構造を備えているため、この第1突起の微小間隙によるラビリンス構造によりダストをシールすることが可能とされる。
【0020】
また、中間リップに第1突起とともに円周上一部の第2突起が設けられ、第2突起が第1突起より高さの高い部分を有して回転軸に偏心が生じたときに第1突起の微小間隙を適正に保つ構造を備えているため、第1突起の微小間隙によるラビリンス構造は、軸偏心が生じたときにも失われにくい。したがって軸偏心が生じてもダストをシールすることが可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例に係るオイルシールの要部断面図
図2】同オイルシールにおけるリップシール部材をスリンガーと組み合わせる前の状態を示す要部断面図
図3図1におけるC方向矢視図であって同オイルシールにおけるネジ溝の説明図
図4】従来例に係るオイルシールの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係るオイルシール1の要部断面を示しており、図2は同オイルシール1におけるリップシール部材11をスリンガー31と組み合わせる前の状態を示している。
【0024】
図1に示すオイルシール1は、ハウジング(図示せず)の軸孔内周に固定されるリップシール部材11と、前記軸孔に挿通する回転軸(図示せず)に固定されるスリンガー31との組み合わせよりなり、機内Aの密封流体が機外Bへ漏洩するのを抑制するとともに機外Bのダストが機内Aへ侵入するのを抑制する。
【0025】
スリンガー31は、金属材よりなり、回転軸の外周面に嵌合される筒状部31aの機内側端部に径方向外方へ向けてフランジ部31bを一体成形したものであって、フランジ部31bの機外側端面31cに、軸回転時に径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32(図3参照)が設けられている。図3に示すようにネジ溝32は右4条ネジよりなり、すなわち内側(内径側)から外側(外径側)へかけて右回転で進む4等配の溝とされ、このようなネジ溝32がフランジ部31bにおける屈曲部31dから先端部31eへかけての範囲に設けられている。
【0026】
リップシール部材11は、取付環12と、この取付環12に被着されたゴム状弾性体13とを備えている。取付環12は、金属材よりなり、ハウジングの軸孔内周面に嵌合される筒状部12aの機外側端部に径方向内方へ向けてフランジ部12bを一体成形したものである。ゴム状弾性体13は、取付環12に被着された被着ゴム部14と、この被着ゴム部14に支持されてスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに摺動可能に密接して密封流体をシールするメインリップ(サイドリップ)15と、同じく被着ゴム部14に支持されてメインリップ15の機外側に配置されるとともにスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接してダストの侵入を抑制するダストリップ16と、同じく被着ゴム部14に支持されてメインリップ15およびダストリップ16の中間に配置されるとともにスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する中間リップ17とを一体に備えている。
【0027】
このうちメインリップ15は、そのリップ端15aを機内側であって且つ径方向外方へ向けて斜めに設けられており、このリップ端15aをもって全周に亙ってスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに摺動可能に密接する。
【0028】
ダストリップ16は、そのリップ端16aを機外側であって且つ径方向内方へ向けて斜めに設けられており、このリップ端16aをもって全周に亙ってスリンガー31における筒状部31aの内周面に摺動可能に密接する。
【0029】
ダストリップ16の内周面には図2に示すように、スリンガー31における筒状部31aの内周面に摺動可能に接触する円周上一部の突起部(第3突起)20が複数(例えば2個ずつ3等配)設けられている。
【0030】
中間リップ17は、そのリップ端17aを機内側であって且つ径方向内方へ向けて斜めに設けられており、このリップ端17aをもって全周に亙ってスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する。
【0031】
中間リップ17の内周面には図2に示すように、環状の第1突起18および円周上一部の第2突起19が設けられている。
【0032】
このうち第1突起18は、スリンガー31における筒状部31aの外周面に接触することなく、スリンガー31における筒状部31aの外周面との間に微小間隙(図示せず)を形成してダストがリップ端17aのほうへ通過しにくくする構造を備えている。第1突起18は複数(例えば2本)が同心円状に設けられている。第1突起18の断面形状は断面三角形とされている。
【0033】
第2突起19は、第1突起18より高さの高い部分を有してスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に接触し、回転軸に偏心が生じたときに第1突起18およびスリンガー31間の微小間隙を適正に保つ構造を備えている。すなわち第2突起19が設けられていないと回転軸に偏心が生じたときに第1突起18およびスリンガー31間の微小間隙が円周上一部で拡大し、この拡大した部分でラビリンスシール効果を果たさなくなる虞があるところ、本案では第2突起19が設けられているため、中間リップ17の軸偏心に対する追随性が向上する。したがって第1突起18およびスリンガー31間の微小間隙が円周上一部で拡大することがなく、ラビリンスシール効果が維持される。第2突起19は複数が等配状に設けられている。第2突起19の断面形状は断面三角形とされ、第2突起19は全体として軸方向に延びる舟底状(長手方向中央部の高さおよび幅が最も大きい形状)に形成されている。また第1突起18および第2突起19は互いに交差するように設けられている。
【0034】
上記構成のオイルシール1は例えば、自動車エンジンにおけるクランクシャフトの軸回りをシールするために用いられ、上記したように機内Aの密封流体(オイル)が機外Bへ漏洩するのを抑制するとともに機外Bのダストが機内Aへ侵入するのを抑制する。オイルシール1は上記構成を備えるため、以下の作用効果が発揮される。
【0035】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、ダストリップ16がファブリックではなくゴム状弾性体よりなるものとされ、ゴム状弾性体よりなるダストリップ16は薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいため、ファブリックと同等の締め代でありながら緊迫力が低減される。したがってダストリップ16の摺動トルクを低減させることができる。
【0036】
また、上記構成のオイルシール1において、ファブリックのエア放出による難点は、以下のように解消されている。
【0037】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、上記したようにスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32が設けられているため、機内Aの密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝32が設けられるとこのネジ溝32を伝ってのエア流路が形成されるため、オイルシール1の出荷時にエアリーク検査を行なう場合、このエア流路を流れるエアが漏れとして検知されてしまう。
【0038】
これに対して上記構成のオイルシール1においては、メインリップ15およびダストリップ16間に中間リップ17が配置され、この中間リップ17はリップ17a端を機内側へ向け、リップ端17aをもって全周に亙ってスリンガー31に密接するため、この中間リップ17が、ネジ溝32を伝ってオイルシール1の内部へ入ってくるエアをダストリップ16に届かせることなく途中で堰き止めてシールする。したがってオイルシール1が正常である場合、ダストリップ16側でエア漏れは検知されないことになり、よってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことができる。
【0039】
また、上記構成のオイルシール1においては、ダストを以下のようにシールする。
【0040】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、上記したようにメインリップ15の機外側にゴム状弾性体製のダストリップ16が設けられているため、このダストリップ16がダストの侵入を抑制すべくシール作用を発揮する。またメインリップ15およびダストリップ16間に中間リップ17が配置され、中間リップ17に環状の第1突起18が設けられ、第1突起18は、スリンガー31における筒状部31aの外周面との間に微小間隙を形成してダストがリップ端17aのほうへ通過しにくくする構造を備えている。したがってこの第1突起18の微小間隙によるラビリンス構造によってもダストをシールすることができる。
【0041】
また、中間リップ17は、環状の第1突起18とともに円周上一部の第2突起19を備え、第2突起19は、第1突起18より高さの高い部分を有して回転軸に偏心が生じたときに第1突起18の微小間隙を適正に保つ構造を備えている。したがって第1突起18の微小間隙によるラビリンス構造は軸偏心が生じたときにも失われにくいものであって、よって軸偏心が生じたときにもダストを有効にシールすることができる。
【0042】
また、ダストリップ16の内周面に設けられた突起部20も同様に、ダストリップ16の軸偏心に対する追随性を向上させるものである。
【0043】
尚、上記実施例においては、ダストリップ16のリップ端16aが全周に亙ってスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接するものとされているが、突起部20をスペーサーとしてリップ端16aをスリンガー31から浮き上がらせてリップ端16aおよびスリンガー31間に微小間隙を設定することにより、上記したファブリックのエア取り込みによる利点と同等の効果を得ることができる。
【0044】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、スリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32が設けられているため、機内Aの密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝32が設けられると軸の回転時、ネジ溝32のポンピング作用に伴ってメインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が低下しやすく負圧が発生しやすく、メインリップ15がスリンガー31にベタ当たりしやすい。
【0045】
これに対して上記構成のオイルシール1においては、上記したようにダストリップ16のリップ端16aおよびスリンガー31間に微小間隙が設定され、スペーサーとして機能する突起部20は円周上一部の突起よりなるため、メインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が低下する状況が発生すると、機外Bのエア(大気)が微小間隙および突起部20間の間隙を経由してダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ流入する。また中間リップ17はそのリップ端17aをもって全周に亙ってスリンガー31に密接するが、リップ端17aを機内側へ向けているため、ダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ機外Bのエア(大気)が流入するとその圧力によってリップ端17aが押し拡げられ、機外Bのエア(大気)がメインリップ15および中間リップ17間の空間41へ流入する。したがってこのような経路で機外Bのエア(大気)がメインリップ15および中間リップ17間の空間41へ流入するため、メインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が極端に低下したり負圧が発生したりするのを抑制することができ、これによりメインリップ15がスリンガー31にベタ当たりするのを抑制することができることになる。
【0046】
更にまた、ダストリップ16のリップ端16aおよびスリンガー31間に常時開形の微小間隙を設定しなくても、メインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が低下する状況となったときにダストリップ16が梃子の原理にもとづいて作動することにより、機外Bのエア(大気)をダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ、延いてはメインリップ15および中間リップ17間の空間41へ流入させることができる。これは、以下の作動による。
【0047】
すなわち、メインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が低下する状況となると、相対に高圧となるダストリップ16および中間リップ17間の空間42の圧力が中間リップ17を押し開いてメインリップ15および中間リップ17間の空間41へ流入し、これにより相対に高圧となる大気圧によってダストリップ16がスリンガー21における筒状部21aの外周面に押し付けられ、このとき、ダストリップ16の内周面に設けられた円周上一部(例えば2個ずつ3等配)の突起部20が梃子の支点として作用するとともにリップ端16aが梃子の作用点として作用し、よってリップ端16aがスリンガー21における筒状部21aの外周面から離れることになる。したがって機外Bのエア(大気)がダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ、延いてはメインリップ15および中間リップ17間の空間41へ流入するため、メインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が極端に低下したり負圧が発生したりするのを抑制することができ、これによりメインリップ15がスリンガー31にベタ当たりするのを抑制することができる。突起部20にはこれが円周上2個ずつ設けられているため、円周上左右にぐらつきにくく、よって梃子の原理にもとづいてリップ端16aを持ち上げやすい効果がある。リップ端16aは円周上一部(突起部20が設けられている部位)で持ち上げられ、または全周に亙って持ち上げられる。
【符号の説明】
【0048】
1 オイルシール
11 リップシール部材
12 取付環
12a,31a 筒状部
12b,31b フランジ部
13 ゴム状弾性体
14 被着ゴム部
15 メインリップ
15a,16a,17a リップ端
16 ダストリップ
17 中間リップ
18 第1突起
19 第2突起
20 突起部
31 スリンガー
31c 機外側端面
31d 屈曲部
31e 先端部
32 ネジ溝
41,42 空間
A 機内
B 機外
図1
図2
図3
図4