特許第6054136号(P6054136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054136
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】機器制御装置、および自走式電子機器
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20161219BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G05D1/02 L
   A47L9/28 E
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-234136(P2012-234136)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-85829(P2014-85829A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阪本 実雄
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−085273(JP,A)
【文献】 特開昭61−240306(JP,A)
【文献】 特開2011−056123(JP,A)
【文献】 特開2002−085305(JP,A)
【文献】 特開2007−323402(JP,A)
【文献】 特開2007−323652(JP,A)
【文献】 特開2013−230294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間を走行する、自機の周囲の画像を撮像する撮像部を備える自走式電子機器の走行を制御する機器制御装置であって、
上記所定空間における上記自走式電子機器が走行可能な領域を表わす、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域を示す走行領域情報を含む、上記所定空間のレイアウトを示すレイアウト情報を、上記所定空間毎に記憶する走行領域情報記憶部と、
上記自走式電子機器が所定の動作を実行中に走行した経路の履歴を記憶する経路履歴記憶部と、
上記経路履歴記憶部に直近に格納された所定数の経路から、上記走行可能領域における、上記自走式電子機器が直近に走行した回数が少ない上位所定個の、上記走行可能領域を分割した分割領域を特定する走行領域特定手段と、
上記撮像部により撮像された画像を取得するとともに、該取得した画像の特徴量から上記所定空間のレイアウトを推定し、該推定したレイアウトを示すレイアウト情報を生成するレイアウト情報生成手段と、
上記走行領域情報記憶部に格納されているレイアウト情報のうち、上記生成されたレイアウト情報で示されるレイアウトと最も近似するレイアウトを示すレイアウト情報を特定するレイアウト情報特定手段と、
上記特定されたレイアウト情報に含まれる走行領域情報で示される走行可能領域内に配され、上記走行領域特定手段により特定された分割領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する経路探索手段と、
上記探索された走行経路に従って上記自走式電子機器を上記所定空間にて走行させて上記動作を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を上記自走式電子機器に送信する命令送信手段とを備えることを特徴とする機器制御装置。
【請求項2】
上記走行可能領域は、さらに、ユーザの操作に応じて重点的に上記動作を実行することが指定された1または複数の領域である重点領域を含んでおり、
上記経路探索手段は、さらに、上記重点領域内を隈なく走行する上記走行経路を探索することを特徴とする請求項1に記載の機器制御装置。
【請求項3】
上記走行可能領域がユーザの操作に応じて変更されたことによって新たに上記走行可能領域となった領域である出現領域は、重点的に上記動作を実行するか否かがユーザの操作に応じて指定されており、
上記経路探索手段は、さらに、重点的に上記動作を実行することが指定された上記出現領域内を隈なく走行する上記走行経路を探索することを特徴とする請求項1または2に記載の機器制御装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の機器制御装置が生成した制御命令を受信し、該受信した制御命令に従って上記所定空間を走行して上記動作を実行することを特徴とする自走式電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式電子機器の走行を制御する機器制御装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自走式電子機器の開発が進んでおり、特に、自走しながら掃除を行なう自走式掃除機が一般家庭に普及し始めている。このような自走式電子機器を効率的に走行させるための、最適な走行経路を算出するための技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複雑な走行経路の入力作業を伴わずに複数の掃除領域の中から掃除する掃除領域を自在に選択して掃除させるための技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、一時的な障害物と常に存在する障害物とを区別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−85305号公報(2002年3月26日公開)
【特許文献2】特開2007−323402号公報(2007年12月13日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、画像情報を基に現在位置を特定するとともに、選択された掃除領域をこの掃除領域の掃除形態に従って自走して掃除することが記載されているが、過去に走行した経路を考慮して、効率的に掃除する経路を探索することについては言及されていない。
【0007】
また、特許文献2の技術は、効率的な走行を目的とした技術ではあるが、障害物を回避するための技術にすぎない。
【0008】
また、特許文献1および2の技術は、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域に基づいて走行経路を探索するものではなく、ユーザが自走式電子機器を走行させたい領域として設定した領域内のみを効率的に走行させることはできない。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自走式電子機器に走行させる経路として、ユーザに指定された領域のうち過去に走行した回数が少ない領域を優先的に走行する経路を探索する機器制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る機器制御装置は、所定空間を走行する自走式電子機器の走行を制御する機器制御装置であって、上記所定空間における上記自走式電子機器が走行可能な領域を表わす、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域を示す走行領域情報を記憶する走行領域情報記憶部と、上記自走式電子機器が所定の動作を実行中に走行した経路の履歴を記憶する経路履歴記憶部と、上記経路履歴記憶部に直近に格納された所定数の経路から、上記走行可能領域における、上記自走式電子機器が直近に走行した回数が少ない上位所定個の領域を特定する走行領域特定手段と、上記走行領域情報記憶部に格納されている走行領域情報で示される走行可能領域内に配され、上記特定された領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する経路探索手段と、上記探索された走行経路に従って上記自走式電子機器を上記所定空間にて走行させて上記動作を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を上記自走式電子機器に送信する命令送信手段とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る機器制御装置によれば、直近に走行した回数が少ない上位所定個の領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索し、該探索された走行経路に従って自走式電子機器を所定空間にて走行させて動作を実行させることができるので、所定空間内にて効率的に動作を実行させることができるという効果を奏する。また、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域を用いて走行経路を探索することから、ユーザが走行させたい領域のうち過去に走行した回数が少ない領域を優先的に走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図2に示した機器制御システムに含まれるサーバ装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る機器制御システムの概略構成を示す模式図である。
図3図2に示した機器制御システムに含まれる自走式電子機器の充電台を示す模式図である。
図4図2に示した機器制御システムに含まれる通信端末の表示部に表示されるインタフェース画面の一例を示す模式図である。
図5図2に示した機器制御システムに含まれる自走式電子機器が走行する空間の床面のレイアウト画像における走行可能領域を分割して得られる分割領域の一例を示す模式図である。
図6図2に示した機器制御システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図7図2に示した機器制御システムに含まれる自走式電子機器が走行する空間の床面のレイアウト画像における重点領域を示す模式図である。
図8図2に示した機器制御システムに含まれる通信端末の表示部に表示されるインタフェース画面の一例を示す模式図である。
図9図2に示した機器制御システムに含まれるサーバ装置の本変形例の構成を示すブロック図である。
図10図2に示した機器制御システムに含まれる自走式電子機器が、障害物を回避しつつ、走行経路に沿った走行を続行する様子を示す模試図である。
図11図2に示した機器制御システムに含まれるサーバ装置の本変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図1図11に基づいて説明すると以下のとおりである。
【0014】
〔システム構成〕
図2は、本実施形態に係る機器制御システム100の概略構成を示す模式図である。同図に示すように、機器制御システム100は、通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置(機器制御装置)80を備えており、これら各装置が通信ネットワーク90を介して通信可能に接続されている。また、通信端末10と自走式電子機器20とは通信ネットワーク90を介さずにこれら両装置間で装置間通信を行なう機能を備えている。なお、機器制御システム100に備えられる自走式電子機器20の台数は1台に限るものではなく、複数台の自走式電子機器20が備えられていてもよい。同様に、通信端末10の台数についても1台に限るものではなく、複数台の通信端末10が備えられていてもよい。
【0015】
〔通信端末の構成〕
通信端末10は、図2に示したように、制御部11、通信部12、表示部13、操作部14、および記憶部15を備えている。なお、通信端末10の構成は、上記各部の機能を有する通信端末であれば特に限定されるものではなく、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistance)、パソコン、携帯型ゲーム機などを用いることができる。
【0016】
制御部11は、通信端末10の各部の動作を制御する通信端末10の制御手段である。制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や専用プロセッサなどの演算処理部、および、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶部(いずれも図示せず)などにより構成されるコンピュータ装置からなり、上記記憶部に記憶されている各種情報および各種制御を実施するためのプログラムを読み出して実行することで通信端末10の各部の動作を制御する。
【0017】
次に、通信部12は、通信ネットワーク90を介して遠隔地に存在する他の装置との通信を行なう遠距離通信機能と、通信可能範囲内(例えば同一施設内)に存在する他の装置と装置間通信を行なう近距離通信機能とを備えた通信手段である。
【0018】
上記の遠距離通信機能で用いられる通信ネットワーク90としては、例えば、インターネット、電話回線網、移動体通信網、CATV通信網、衛星通信網などが挙げられる。
【0019】
また、上記の近距離通信機能としては、例えば、無線LAN規格の1つであるIEEE802.11(IEEE802.11aあるいはIEEE802.11b)を利用して無線機器間の相互接続を行なうWiFi(登録商標)機器の通信機能、IEEE802.11以外の無線LAN規格に基づく通信機能、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)等の近距離無線通信規格を用いた通信機能、赤外線通信機能などを用いることができる。なお、本願の通信ネットワークには、上記遠距離通信機能、および上記近距離通信機能の両方が含まれるものとする。
【0020】
次に、表示部13は、制御部11の指示に応じてユーザに提示するための各種情報を表示する。表示部13の構成は特に限定されるものではなく、例えば、液晶表示パネル、有機EL(electroluminescence)パネル、プラズマディスプレイパネルなどを用いることができる。
【0021】
次に、操作部14は、ユーザからの操作入力を受け付けて制御部11に伝達する。操作部14の構成は特に限定されるものではなく、従来から公知の種々の操作入力手段を用いることができる。なお、本実施形態では、表示部13の機能と操作部14の機能とを備えたタッチパネルを用いている。
【0022】
次に、記憶部15は、通信端末10で用いられる各種情報を記憶する記憶手段である。記憶部15の構成は特に限定されるものはなく、従来から公知の記憶手段を用いることができる。
【0023】
〔自走式電子機器の構成〕
自走式電子機器20は、自走式の電子機器であり、自装置に備えられる操作部(後述する操作部23)に対するユーザの操作に応じた所定動作、並びに、サーバ装置80および通信端末10から受信した制御命令に応じた所定動作を行なう機能を有する。本実施形態では、自走式電子機器20が自走式掃除機であり、所定動作が「掃除」である場合について説明するが、自走式電子機器20は掃除機に限るものではなく、例えば、空気清浄機器、撮影機器、各種ロボット機器(例えば、警備ロボット、家事支援ロボット、動物型ロボット等)などであってもよい。
【0024】
自走式電子機器20は、図2に示したように、制御部21、通信部22、操作部23、記憶部24、および装置機能部25を備えている。
【0025】
制御部21は、自走式電子機器20の各部の動作を制御する自走式電子機器20の制御手段である。制御部21は、例えば、CPUや専用プロセッサなどの演算処理部、および、RAM、ROM、HDDなどの記憶部(いずれも図示せず)などにより構成されるコンピュータ装置からなり、上記記憶部に記憶されている各種情報および各種制御を実施するためのプログラムを読み出して実行することで自走式電子機器20の各部の動作を制御する。
【0026】
通信部22は、通信ネットワーク90を介して遠隔地に存在する他の装置との通信を行なう機能(遠距離通信機能)と、通信可能範囲内(例えば同一施設内)に存在する他の装置と装置間通信を行なう機能(近距離通信機能)とを備えた通信手段である。通信部22としては、例えば、通信端末10に備えられる通信部12と同様のものを用いることができる。
【0027】
操作部23は、ユーザからの指示入力を受け付けて制御部21に伝達する。操作部23の構成は特に限定されるものではなく、例えば、キー操作ボタンによって構成されていてもよく、タッチパネルであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0028】
記憶部24は、自走式電子機器20で用いられる各種情報を記憶する記憶手段である。記憶部24の構成は特に限定されるものはなく、例えば、各種のRAM、ROM、HDD等を用いることができる。
【0029】
装置機能部25は、制御部21の指示に応じて自走式電子機器20が備える機能を実行する。本実施形態では、装置機能部25は、走行機能、掃除機能、撮像機能などを実行する。
【0030】
そのために、装置機能部25は、走行駆動部61、駆動輪32、ファン駆動部63、吸入ファン58、電圧検出部64、バッテリ31、充電端子49、撮像部40、および衝突検知センサ41を備えている。
【0031】
ユーザの操作または制御命令によって掃除の実行が指示されると、バッテリ31から供給される電力により、走行駆動部61およびファン駆動部63が駆動される。走行駆動部61が駆動されることによって駆動輪32が回転制御され、自走式電子機器20は所定空間の床面上を走行する。また、ファン駆動部63が駆動されることによって吸入ファン58が駆動され、走行面の塵埃を含む気流が吸入口(不図示)から自走式電子機器20内に吸い込まれる。
【0032】
バッテリ31は、自走式電子機器20全体の電力供給源である。バッテリ31の構成は特に限定されるものではないが、例えば、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、あるいはキャパシタ等を用いることができる。なお、バッテリ31は、繰り返し充放電が可能な大容量の充電池であることが好ましい。
【0033】
バッテリ31の充電を行なう場合には、自走式電子機器20を充電台70(図3参照)に帰還させ、充電台70に設けられた給電端子71(図3参照)に充電端子49を当接させることによりバッテリ31を充電する。なお、電圧検出部64により、バッテリ31の電圧が検出され、検出された電圧からバッテリ31の充電量を算出する。
【0034】
充電台70は、通常、背面側(給電端子71が設けられている側と反対側)が室内の側壁Sと対向するように設置され、商用電源から供給される電力を、給電端子71を介して自走式電子機器20に供給する。また、充電台70は、床面上の所定の位置(ホームポジション)(基準位置)に配置されて移動しないようになっている。
【0035】
撮像部40は、自走式電子機器20の周囲を撮像した撮像画像(動画像および/または静止画像)を生成する。撮像部40の構成は特に限定されるものではなく、公知の撮像手段を用いることができる。例えば、光学レンズ、カラーフィルタ、受光素子であるCCD(Charge Coupled Device)等を備えた撮像手段を用いてもよい。
【0036】
衝突検知センサ41は、自走式電子機器20が障害物に衝突したことを検知するセンサである。
【0037】
〔サーバ装置の構成〕
サーバ装置80は、図2に示すように、制御部81、通信部82、および記憶部83を備えている。
【0038】
制御部81は、サーバ装置80の各部の動作を制御するサーバ装置80の制御手段である。制御部81は、例えば、CPUや専用プロセッサなどの演算処理部、および、RAM、ROM、HDDなどの記憶部(いずれも図示せず)などにより構成されるコンピュータ装置からなり、上記記憶部に記憶されている各種情報および各種制御を実施するためのプログラムを読み出して実行することでサーバ装置80の各部の動作を制御する。制御部81の詳細な構成については後述する。
【0039】
次に、通信部82は、通信ネットワーク90を介して他の装置と通信を行なう通信手段である。通信ネットワーク90としては、上述した各構成を用いることができる。
【0040】
次に、記憶部83は、(1)制御部81が実行する制御プログラム、(2)制御部81が実行するOSプログラム、(3)制御部81が、サーバ装置80が有する各種機能を実行するためのアプリケーションプログラム、および、(4)該アプリケーションプログラムを実行するときに読み出す各種データなど、サーバ装置80で用いられる各種情報を記憶する記憶手段である。記憶部83の構成は特に限定されるものはなく、例えば、各種のRAM、ROM、HDD等を用いることができる。
【0041】
なお、記憶部83は、必ずしもサーバ装置80内に備えられる必要はなく、サーバ装置80に着脱可能な外部記憶装置、または、通信ネットワーク90上の外部記憶装置として、サーバ装置80に接続される構成であってもよい。
【0042】
〔サーバ装置の記憶部の構成〕
図1を参照しながら、記憶部83について詳細に説明する。図1は、サーバ装置80の構成を示すブロック図である。同図に示すように、記憶部83は、レイアウト情報記憶部(走行領域情報記憶部)831、および経路履歴記憶部832を含んでいる。
【0043】
レイアウト情報記憶部831は、自走式電子機器20が走行する部屋、家屋、施設等の所定空間(以下では、空間Pと表記する)のレイアウト(間取り)を示すレイアウト情報を記憶するものである。レイアウト情報には、少なくとも、(1)空間Pの床面の形状およびサイズを示すレイアウト外形情報、並びに、(2)空間Pの床面のうち、自走式電子機器20が走行可能な走行可能領域、および、自走式電子機器20が走行できない(または自走式電子機器20に走行させたくない)走行不能領域を示す走行領域情報が含まれている。さらに、(3)空間Pに配置される家具や家電機器などの配置物の配置状態を示す配置情報が含まれていてもよい。
【0044】
次に、経路履歴記憶部832は、自走式電子機器20が掃除中に走行した経路の履歴を記憶するものである。つまり、経路履歴記憶部832には、自走式電子機器20が過去の掃除中に走行した経路を示す1または複数の経路情報が記憶されている。なお、経路情報のそれぞれは、格納日時と対応付けられており、格納日時を参照することによって、経路履歴記憶部832に直近に格納された経路情報を特定することができる。
【0045】
〔サーバ装置の制御部の構成〕
続いて、図1を参照しながら、制御部81について詳細に説明する。同図に示すように、制御部81は、少なくとも、レイアウト情報編集部811、優先走行領域特定部(走行領域特定手段)812、経路探索部(経路探索手段)813、および命令送信部(命令送信手段)814を備えている。
【0046】
レイアウト情報編集部811は、レイアウト情報を編集するためのインタフェース画面を通信端末10の表示部13に表示させる。また、レイアウト情報編集部811は、レイアウト情報記憶部831に格納されている作成済みのレイアウト情報を編集するためのインタフェース画面を通信端末10の表示部13に表示させる。
【0047】
そして、レイアウト情報編集部811は、通信端末10の操作部14にて受け付けた操作に応じて編集されたレイアウト情報を、レイアウト情報記憶部831に格納する。
【0048】
なお、レイアウト情報編集部811は、インタフェース画面に、走行可能領域および走行不能領域が含まれる、空間Pの床面の外形を示すレイアウト画像を表示させるとともに、レイアウト画像を編集できるインタフェースを設ける構成が好ましい。この場合、ユーザは、通信端末10の表示部13にてレイアウト画像を見ながら、通信端末10の操作部14を介して、走行可能領域および走行不能領域の位置、大きさ、および形状を編集することができる。走行不能領域は、典型的には、配置物を配置した領域である。また、走行可能領域は、典型的には、配置物を配置していない領域である。ただし、配置物の下を通過できる場合、配置物を配置した領域を走行可能領域として設定してもよい。以降では、説明の簡略化のため、配置物が配置された領域が走行不能領域であるものとして、また、配置物が配置されていない領域が走行可能領域であるものとして説明する。
【0049】
図4を参照しながら、インタフェース画面の一例について説明する。図4は、レイアウト情報編集部811によって通信端末10の表示部13に表示されるインタフェース画面の一例を示す模式図である。
【0050】
図4の(a)は、空間Pの床面の外形の形状を、いくつかの候補の中からユーザに選択させる画面である。図4の(a)に示す画面にて空間Pの床面の外形の形状を選択すると、図4の(b)に示す画面に遷移する。図4の(b)は、選択した外形のサイズを入力する画面である。図4の(b)に示す画面にてサイズを入力すると、図4の(c)に示す画面に遷移する。図4の(c)は、空間Pにする配置物を配置するともに、配置物の位置、大きさ、形状を編集する画面である。図4の(d)は、配置物を配置した状態を示す画面である。なお、ハッチングされた領域が配置物を示している。そして、図4の(e)に示すとおり、ホームポジションの位置(同図に示す地点H)を指定する。以上の操作により、レイアウト情報が完成する(図4の(f))。
【0051】
次に、再び図1を参照しながら、優先走行領域特定部812について説明する。優先走行領域特定部812は、経路履歴記憶部832に直近に格納された所定数(例えば、3つ)の走行経路に基づいて、走行可能領域における、自走式電子機器20が直近に走行した回数が少ない上位所定個(例えば、上位10個)の領域を特定する。具体的には、優先走行領域特定部812は、まず、走行可能領域を分割して得られる領域(以下では、分割領域と表記する)のうち、経路履歴記憶部832に直近に格納された所定数の走行経路上にある分割領域のそれぞれについて、自走式電子機器20が走行した回数をカウントする。続いて、優先走行領域特定部812は、カウントされた回数が少ない(0回を含む)分割領域から順に所定個の分割領域を特定する。
【0052】
なお、分割領域のサイズおよび形状は特に限定されるものではないが、分割領域毎の走行回数を適切にカウントするために、自走式電子機器20の外形と同等のサイズであることが好ましい。
【0053】
また、「所定数」および「所定個」は予め定められていてもよいし、ユーザの操作に応じて設定可能であってもよい。
【0054】
また、優先走行領域特定部812による分割領域の特定処理は、経路探索部813による経路探索処理の前処理として実行される。
【0055】
ここで、図5を参照しながら、分割領域の特定について説明する。図5は、空間Pの床面のレイアウト画像における走行可能領域を分割して得られる分割領域の一例を示す模式図である。同図では、分割領域のそれぞれに付した数字(1〜6)は、経路履歴記憶部832に直近に格納された所定数の走行経路から求めた、当該分割領域の走行回数の一例を示している。この場合、優先走行領域特定部812は、直近の走行回数が少ない分割領域として、例えば、破線で枠囲みした8個の分割領域(走行回数が1回および2回である分割領域)を特定する。
【0056】
次に、再び図1を参照しながら、経路探索部813について説明する、経路探索部813は、レイアウト情報記憶部831に格納されているレイアウト情報に含まれる走行可能領域内に配され、優先走行領域特定部812により特定された分割領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する。
【0057】
そして、経路探索部813は、探索した走行経路を示す経路情報を、経路履歴記憶部832に格納する。なお、経路探索方法は、この種の経路探索方法として一般に知られているものを用いればよく、特に限定されるものではない。
【0058】
また、走行経路の出発点は、特に限定されるものではないが、自走式電子機器20を走行経路に沿って正確に走行させるために、ホームポジションを出発点とすることが好ましい。出発点をホームポジションとする場合、ホームポジションの位置情報をレイアウト情報に含めることが好ましい。この場合、上述したとおり、インタフェース画面に表示させるレイアウト画像における所定位置をユーザの操作に応じて指定することによって、ホームポジションの位置を定める構成が好ましい。
【0059】
また、走行経路の出発点として、自走式電子機器20の現在位置を採用してもよい。自走式電子機器20が、ホームポジションからの相対位置として現在位置を特定可能である場合、経路探索部813は、レイアウト情報に含まれるホームポジションの位置情報と、自走式電子機器20から取得した相対位置とから、レイアウト上の自走式電子機器20の現在位置を特定し、該特定した現在位置を出発点として走行経路を探索する。
【0060】
なお、経路探索部813が経路探索を開始するトリガの典型例は、(1)自走式電子機器20に掃除を開始させる指示を通信端末10から受信したとき、(2)タイマー起動などにより自走式電子機器20が掃除を開始する旨を自走式電子機器20から受信したとき、(3)タイマー起動などによりサーバ装置80が自走式電子機器20に掃除を開始させるとき、などであるが、特に限定されるものではない。
【0061】
次に、命令送信部814は、経路探索部813により探索された走行経路に従って自走式電子機器20を空間P内にて走行させて掃除を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を自走式電子機器20に送信する。制御命令を受信した自走式電子機器20は、制御命令に従って空間P内を走行して掃除を実行する。
【0062】
〔処理の流れ〕
次に、図6を参照しながら、機器制御システム100における処理の流れについて説明する。図6は、機器制御システム100における処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
まず、通信端末10の操作部14にてレイアウト情報の編集を開始する操作を受け付けると(S1)、サーバ装置80のレイアウト情報編集部811は、レイアウト情報を編集するためのインタフェース画面を通信端末10に提供し(S2)、通信端末10は、当該インタフェース画面を表示部13に表示する。そして、通信端末10の操作部14にて、レイアウト情報の編集操作を受け付けると(S3)、サーバ装置80のレイアウト情報編集部811は、レイアウト情報をレイアウト情報記憶部831に格納する(S4)。
【0064】
その後、自走式電子機器20が掃除を開始するとき(S5にてYES)、サーバ装置80の優先走行領域特定部812により、経路履歴記憶部832に直近に格納された所定数の走行経路に基づいて、走行可能領域における、自走式電子機器20が直近に走行した回数が少ない上位所定個の分割領域を特定する(S6)。
【0065】
続いて、サーバ装置80の経路探索部813により、レイアウト情報記憶部831に格納されているレイアウト情報に含まれる走行可能領域内に配され、優先走行領域特定部812により特定された分割領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する(S7)。
【0066】
そして、サーバ装置80の命令送信部814により、経路探索部813により探索された走行経路に従って自走式電子機器20を空間P内にて走行させて掃除を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を自走式電子機器20に送信する(S8)。
【0067】
最後に、当該制御命令を受信した自走式電子機器20は、制御命令に従って空間P内を走行して掃除を実行する(S9)。
【0068】
〔変形例1〕
走行可能領域のうち、汚れが生じやすい領域、または、既に汚れている領域は、重点的に掃除することが望ましい。そのため、自走式電子機器20に念入りに掃除させる領域をユーザが指定可能であることが望ましい。
【0069】
そこで、走行可能領域は、さらに、ユーザの操作に応じて指定される、1または複数の、重点的に掃除する領域(以下では、重点領域Fと表記する)を含んでいてもよい。この場合、レイアウト情報編集部811は、レイアウト情報を編集するためのインタフェース画面において、さらに、重点領域Fを指定可能な構成であることが好ましい。図7の(a)は、走行可能領域内の任意の範囲を指定することによって重点領域Fを指定する画面例を示す模式図である。
【0070】
そして、経路探索部813は、上述した構成に加えて、さらに、重点領域F内を隈なく走行する走行経路を探索する。これにより、自走式電子機器20に重点領域Fを重点的に掃除させることができる。図7の(b)は、重点領域F内を隈なく走行する走行経路の一例を示す模式図である。矢印線が走行経路である。
【0071】
なお、「重点領域F内を隈なく走行する」にあたり、同じ位置を複数回走行してもよいし、通常より低速で走行してもよい。
【0072】
〔変形例2〕
上述したとおり、レイアウト情報はインタフェース画面にて編集可能であり、走行可能領域の位置、大きさ、および形状は編集可能である。走行可能領域が編集された場合、編集前は走行可能領域に含まれず、かつ、編集後に新たに走行可能領域に含まれる領域(以下では、出現領域Nと表記する)が出現することがある。例えば、ユーザが空間Pの模様替えを行なって配置物の位置を移動させた場合、移動前に配置物が配置されていた領域が、出現領域Nとなる。
【0073】
出現領域Nは、移動前まで配置物が配置されていたので汚れていない場合があり、逆に、しばらく掃除されていなかったことから汚れている場合もある。そのため、出現領域Nについては、重点的に掃除するか否かをユーザが指定可能であることが望ましい。つまり、走行可能領域は、ユーザの操作に応じて指定される、1または複数の、重点的に掃除する領域である出現領域Nを含んでいてもよい。
【0074】
図8を参照しながら、出現領域Nについて説明する。図8は、レイアウト情報編集部811によって通信端末10の表示部13に表示されるインタフェース画面の一例を示す模式図である。図8(a)に示したレイアウト画像に配置されている配置物を、ユーザの操作に応じて、図8(b)に示すように下方向に移動させた場合、斜線を付した領域が、出現領域Nとなる。この場合、レイアウト情報編集部811は、出現領域Nを重点的に掃除するか否かを指定するためのダイアログMを表示させる(図8の(c)参照)。なお、出現領域Nを重点的に掃除することが指定されたとき、レイアウト情報編集部811は、出現領域Nを重点的に掃除する領域として、レイアウト情報に含めてレイアウト情報記憶部831に格納する。
【0075】
そして、経路探索部813は、上述した構成に加えて、さらに、重点的に掃除することが指定された出現領域N内を隈なく走行する走行経路を探索する。これにより、重点的に掃除することが指定された出現領域Nについては、自走式電子機器20に重点的に掃除させることができる。
【0076】
なお、「出現領域N内を隈なく走行する」にあたり、同じ位置を複数回走行してもよいし、通常より低速で走行してもよい。
【0077】
〔変形例3〕
走行経路上に障害物があり、自走式電子機器20が走行経路に沿って走行することができない場合、障害物を回避させて走行させることが好ましい。障害物を回避させる方法の一つとして、障害物を経路上に含まない走行経路を新たに探索し直す方法が挙げられる。
【0078】
この場合、自走式電子機器20の衝突検知センサ41によって障害物に衝突したことを検知したとき、自走式電子機器20の制御部21は、衝突時点の自走式電子機器20の位置(相対位置)を示す位置情報を、サーバ装置80に送信する。
【0079】
そして、サーバ装置80の経路探索部813は、上記位置情報が受信されたとき、障害物の位置を経路上に含まない走行経路を新たに探索し直す。
【0080】
そして、サーバ装置80の命令送信部814は、経路探索部813により新たに探索され直した走行経路に従って自走式電子機器20を空間Pにて走行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を自走式電子機器20に送信する。これにより、サーバ装置80は、自走式電子機器20に、障害物に衝突しないように空間Pを走行させることができる。
【0081】
〔変形例4〕
走行経路上に障害物があることが分かった場合、次回以降は、障害物を含まない走行経路を探索することが好ましい。
【0082】
図9を参照しながら、本変形例に係るサーバ装置80の構成について説明する。図9は、本変形例に係るサーバ装置80の構成を示すブロック図である。
【0083】
同図に示すように、本変形例に係るサーバ装置80の記憶部83は、さらに、障害物の位置情報を記憶する衝突位置記憶部833を含んでいる。そして、本変形例に係るサーバ装置80の制御部81は、さらに、位置情報取得部(位置情報取得手段)815を備えている。位置情報取得部815は、衝突時点の自走式電子機器20の位置(相対位置)を示す位置情報を自走式電子機器20から受信し、該受信した位置情報を衝突位置記憶部833に格納する。
【0084】
そして、サーバ装置80の経路探索部813は、レイアウト情報記憶部831に格納されているレイアウト情報に含まれる走行可能領域内に配され、優先走行領域特定部812により特定された分割領域の全てを少なくとも1回通過するとともに、衝突位置記憶部33に格納されている位置情報で示される位置を経路上に含まない走行経路を探索する。
【0085】
そして、サーバ装置80の命令送信部814は、経路探索部813により探索された走行経路に従って自走式電子機器20を空間Pにて走行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を自走式電子機器20に送信する。これにより、サーバ装置80は、自走式電子機器20に、障害物に衝突しないように空間Pを走行させることができる。
【0086】
なお、衝突位置記憶部833に記憶された位置情報は、ユーザ操作に応じて削除可能であることが好ましい。具体的には、インタフェース画面において、衝突位置記憶部833に記憶された位置情報で示される位置を表示させるとともに、削除操作を受け付ける。
【0087】
〔変形例5〕
上述では、障害物を回避するための走行経路をサーバ装置80が探索することについて説明したが、自走式電子機器20が障害物を回避するように走行してもよい。
【0088】
この場合、自走式電子機器20の制御部21は、障害物に衝突したことが衝突検知センサ41にて検知されたとき、走行経路上の、当該障害物より進行方向に位置する地点に、自機を移動させるように走行駆動部61を制御する。そして、移動後は、引き続き走行経路に従って走行するように走行駆動部61を制御する。これにより、自走式電子機器20は、障害物を回避しつつ、走行経路に沿った走行を続行する。
【0089】
なお、障害物を回避することによって走行しないことになった経路長は短い方が好ましい。そのため、移動元の地点から移動先の地点までの走行経路上の距離は、短いほど好ましい。
【0090】
図10を参照しながら、自走式電子機器20が、障害物を回避しつつ、走行経路に沿った走行を続行する様子について説明する。同図に示す矢印線が走行経路であり、矢印の方向が進行方向である。そして、自走式電子機器20が、地点Aに到達したとき、障害物Bに衝突したものとする。このとき、地点Aから、例えば、走行経路上の障害物Bより進行方向に位置する地点Cに移動する。これにより、自走式電子機器20は、障害物Bを回避しつつ、引き続き走行経路に沿った走行を続行することができる。
【0091】
〔変形例6〕
障害物に衝突したとき、自走式電子機器20は、走行を中止して、ホームポジションに戻ってもよい。
【0092】
この場合、自走式電子機器20の制御部21は、障害物に衝突したことが衝突検知センサ41によって検知されたとき、ホームポジションに自機を移動させるように、走行駆動部61を制御する。
【0093】
なお、ホームポジションに戻ったとき、自走式電子機器20の制御部21は、サーバ装置80および通信端末10の少なくともいずれかに、障害物に衝突したことによって走行を中止してホームポジションに戻った旨を通知する構成が好ましい。これにより、ユーザに、障害物の存在、および、掃除の中断を通知することができる。
【0094】
〔変形例7〕
リビング、寝室、子供部屋等の複数の空間Pが存在する場合、1台の自走式電子機器20が共用される場合がある。この場合、機器制御システム100は、サーバ装置80にて走行経路を適切に探索するために、自走式電子機器20が走行しようとしている空間Pを特定する構成を備えていることが好ましい。
【0095】
空間Pを特定する方法の一つとして、自走式電子機器20の撮像部40にて撮像して得られた撮像画像を用いる方法について、図11を参照しながら説明する。図11は、本変形例に係るサーバ装置80の構成を示すブロック図である。
【0096】
同図に示すとおり、サーバ装置80の制御部81は、さらに、撮像画像変換部(レイアウト情報生成手段)816、およびレイアウト情報特定部(レイアウト情報特定手段)817を備えている。なお、サーバ装置80のレイアウト情報記憶部831には、自走式電子機器20が走行し得る空間P毎のレイアウト情報が格納されているものとする。これらのレイアウト情報は、いずれも、レイアウト情報編集部811が提供するインタフェース画面にて編集されたものである。
【0097】
撮像画像変換部816は、自走式電子機器20の撮像部40にて撮像された、自走式電子機器20が配置されている空間Pの1または複数の撮像画像を取得し、該取得した撮像画像の特徴量から、自走式電子機器20が配置されている空間Pの床面の外形およびサイズ、並びに、走行可能領域および走行不能領域を推定し、これらの推定に基づいてレイアウト情報を生成する。
【0098】
撮像画像の特徴量から空間のレイアウトを推定する方法は、一般に知られている方法を用いればよく、特に限定されるものではない。走行可能領域および走行不能領域は、撮像画像に写された配置物の位置やサイズから推定すればよい。
【0099】
なお、推定の精度を向上させるために、自走式電子機器20の周囲の異なる複数の撮像画像を撮像し、これら複数の撮像画像の特徴量を用いることが好ましい。さらには、自走式電子機器20は、空間内の異なる複数の箇所にて撮像画像を撮像することが好ましい。
【0100】
次に、レイアウト情報特定部817は、撮像画像変換部816により生成されたレイアウト情報と最も近似するレイアウト情報を、レイアウト情報記憶部831から抽出する。つまり、レイアウト情報記憶部831に格納されているレイアウト情報のうち、撮像画像変換部816により生成されたレイアウト情報で示されるレイアウトと最も近似するレイアウトを示すレイアウト情報を特定する。
【0101】
このとき、レイアウト情報によって特定される空間Pの床面のレイアウト画像に対して画像マッチング処理を施すことによって、最も近似するレイアウト情報を抽出してもよい。この場合、画像マッチング処理は一般に知られているものを用いればよく、特に限定されるものではない。
【0102】
その後、経路探索部813は、レイアウト情報特定部817にて特定されたレイアウト情報に含まれる走行可能領域内に配され、優先走行領域特定部812により特定された分割領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する。以降の処理は、前述のとおりである。
【0103】
〔ソフトウェアによる実施例〕
本実施形態において、通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置80の各ブロック、特に制御部11、制御部21、および制御部81は、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0104】
後者の場合、通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置80は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置80の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置80に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0105】
上記記録媒体としては、一時的でない有形の媒体(non-transitory tangible medium)、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM(登録商標)/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0106】
また、通信端末10、自走式電子機器20、およびサーバ装置80を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の一態様に係る機器制御装置は、所定空間を走行する自走式電子機器の走行を制御する機器制御装置であって、上記所定空間における上記自走式電子機器が走行可能な領域を表わす、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域を示す走行領域情報を記憶する走行領域情報記憶部と、上記自走式電子機器が所定の動作を実行中に走行した経路の履歴を記憶する経路履歴記憶部と、上記経路履歴記憶部に直近に格納された所定数の経路から、上記走行可能領域における、上記自走式電子機器が直近に走行した回数が少ない上位所定個の領域を特定する走行領域特定手段と、上記走行領域情報記憶部に格納されている走行領域情報で示される走行可能領域内に配され、上記特定された領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する経路探索手段と、上記探索された走行経路に従って上記自走式電子機器を上記所定空間にて走行させて上記動作を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を上記自走式電子機器に送信する命令送信手段とを備えている。
【0108】
上記の構成によれば、直近に走行した回数が少ない上位所定個の領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索し、該探索された走行経路に従って自走式電子機器を所定空間にて走行させて動作を実行させることができるので、所定空間内にて効率的に動作を実行させることができるという効果を奏する。また、ユーザの操作に応じて設定された走行可能領域を用いて走行経路を探索することから、ユーザが走行させたい領域のうち過去に走行した回数が少ない領域を優先的に走行させることができる。
【0109】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記走行可能領域は、さらに、ユーザの操作に応じて重点的に上記動作を実行することが指定された1または複数の領域である重点領域を含んでおり、上記経路探索手段は、さらに、上記重点領域内を隈なく走行する上記走行経路を探索する構成であってもよい。
【0110】
上記の構成によれば、さらに、自走式電子機器に、ユーザに指定された重点領域を隈なく走行させて動作を実行させることができる。
【0111】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記走行可能領域がユーザの操作に応じて変更されたことによって新たに上記走行可能領域となった領域である出現領域は、重点的に上記動作を実行するか否かがユーザの操作に応じて指定されており、上記経路探索手段は、さらに、重点的に上記動作を実行することが指定された上記出現領域内を隈なく走行する上記走行経路を探索する構成であってもよい。
【0112】
上記の構成によれば、さらに、自走式電子機器に、重点的に動作を実行することが指定された出現領域を隈なく走行させて動作を実行させることができる。
【0113】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記走行領域情報記憶部は、上記走行領域情報を含む、上記所定空間のレイアウトを示すレイアウト情報を、上記所定空間毎に記憶するものであり、上記自走式電子機器は、自機の周囲の画像を撮像する撮像部を備えており、上記撮像部により撮像された画像を取得するとともに、該取得した画像の特徴量から上記所定空間のレイアウトを推定し、該推定したレイアウトを示すレイアウト情報を生成するレイアウト情報生成手段と、上記走行領域情報記憶部に格納されているレイアウト情報のうち、上記生成されたレイアウト情報で示されるレイアウトと最も近似するレイアウトを示すレイアウト情報を特定するレイアウト情報特定手段とをさらに備え、上記経路探索手段は、上記特定されたレイアウト情報に含まれる上記走行領域情報で示される走行可能領域内に配され、上記走行領域特定手段により特定された領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路を探索する構成であってもよい。
【0114】
上記の構成によれば、自走式電子機器を走行させる所定空間が複数存在する場合であっても、自走式電子機器が走行しようとしている所定空間を自動的に特定することができ、該特定した所定空間内にて自走式電子機器に効率的な動作を実行させることができる。
【0115】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記自走式電子機器は、上記所定空間における基準位置からの自機の相対位置を算出可能であり、上記経路探索手段は、上記自走式電子機器が上記動作を開始する時点での上記相対位置を上記自走式電子機器から取得し、上記基準位置に対応する上記走行可能領域における位置と、上記取得した相対位置とから、上記自走式電子機器の現在位置に対応する上記走行可能領域における位置を特定し、該特定した位置を出発点として上記走行経路を探索する構成であってもよい。
【0116】
上記の構成によれば、自走式電子機器に、現時位置から、走行経路に沿って走行を開始させることができる。
【0117】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記経路探索手段は、上記制御命令に従って走行している上記自走式電子機器から、障害物に衝突した位置を示す位置情報を受信したとき、上記障害物の位置を経路上に含まない上記走行経路を新たに探索し、上記命令送信手段は、上記新たに探索された走行経路に従って上記自走式電子機器を上記所定空間にて走行させて上記動作を実行させるための制御命令を生成し、該生成した制御命令を上記自走式電子機器に送信する構成であってもよい。
【0118】
上記の構成によれば、走行中に衝突した障害物の位置を経路上に含まない新たな走行経路に沿って自走式電子機器を走行させることができる。
【0119】
さらに、本発明の一態様に係る機器制御装置は、上記制御命令に従って走行している上記自走式電子機器から、障害物に衝突した位置を示す位置情報を受信するとともに、該受信した位置情報を衝突位置記憶部に格納する位置情報取得手段をさらに備え、上記経路探索手段は、上記走行領域特定手段により上記特定された領域の全てを少なくとも通過するとともに、上記衝突位置記憶部に格納されている位置情報で示される位置を経路上に含まない上記走行経路を探索する構成であってもよい。
【0120】
上記の構成によれば、過去に障害物があった位置を経路上に含まない走行経路に沿って自走式電子機器を走行させることができる。
【0121】
また、本発明の一態様に係る自走式電子機器は、上記機器制御装置が生成した制御命令を受信し、該受信した制御命令に従って上記所定空間を走行して上記動作を実行する。
【0122】
上記の構成によれば、直近に走行した回数が少ない上位所定個の領域の全てを少なくとも1回通過する走行経路に従って所定空間を走行し、動作を実行することができるという効果を奏する。
【0123】
さらに、本発明の一態様に係る自走式電子機器は、障害物に衝突したことを検知する衝突検知センサと、上記制御命令に従って走行中に障害物に衝突したことが検知されたとき、上記走行経路上の、上記障害物より進行方向に位置する地点に自機を移動させる制御手段とを備える構成であってもよい。
【0124】
上記の構成によれば、障害物に衝突したことが検知されたとき、走行経路上の、障害物より進行方向に位置する地点に自機を移動させるので、走行経路に沿った走行を続行することができる。
【0125】
さらに、本発明の一態様に係る自走式電子機器は、障害物に衝突したことを検知する衝突検知センサと、上記制御命令に従って走行中に障害物に衝突したことが検知されたとき、上記所定空間における基準位置に自機を移動させる制御手段とを備える構成であってもよい。
【0126】
上記の構成によれば、障害物に衝突したことが検知されたとき、走行を中止し、基準位置に帰還することができる。
【0127】
さらに、本発明の一態様に係る自走式電子機器は、上記制御手段は、上記基準位置への移動が完了したとき、障害物に衝突したことによって走行を中止した旨を外部に通知する構成であってもよい。
【0128】
上記の構成によれば、走行を中止して基準位置に帰還したことを外部装置に通知することができる。
【0129】
なお、上記機器制御装置および上記自走式電子機器は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータに上記各機能を実現させるための上記機器制御装置および上記自走式電子機器の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0130】
また、上記機器制御装置および上記自走式電子機器を含む機器制御システムも、本発明の範疇に入る。
【0131】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、実施形態に開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、自走式電子機器の走行を制御する機器制御装置等に適用することができる。特に、所定空間を掃除する自走式掃除機の走行を制御する機器制御装置に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
10 通信端末
13 表示部
20 自走式電子機器
21 制御部(制御手段)
40 撮像部
41 衝突検知センサ
80 サーバ装置(機器制御装置)
100 機器制御システム
811 レイアウト情報編集部
812 優先走行領域特定部(走行領域特定手段)
813 経路探索部(経路探索手段)
814 命令送信部(命令送信手段)
815 位置情報取得部(位置情報取得手段)
816 撮像画像変換部(レイアウト情報生成手段)
817 レイアウト情報特定部(レイアウト情報特定手段)
831 レイアウト情報記憶部(走行領域情報記憶部)
832 経路履歴記憶部
833 衝突位置記憶部
F 重点領域
N 出現領域
P 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11