特許第6054144号(P6054144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054144
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/86 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   E04B1/86 S
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-243721(P2012-243721)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91976(P2014-91976A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】592144766
【氏名又は名称】株式会社セラ−ズ
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 高士
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−121083(JP,A)
【文献】 実開昭52−097807(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74 − 1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の模様や色柄の印刷表現が可能であって全面又は広範囲にピンホールを透設した樹脂製化粧フィルムである第1層と、前記ピンホールに連通する前記ピンホールと同径の又はそれより大径の小径孔を前記ピンホールの透設位置に対応させて穿設した金属製薄板である第2層と、前記第1層及び前記第2層を担持する吸音材層である第3層とから成ることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記小径孔は、前記ピンホールの1つと連通するように形成される、請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記小径孔は、前記ピンホールの複数と連通し得るように形成される、請求項1又は2に記載の吸音パネル。
【請求項4】
前記ピンホールの孔径は1mm以下である、請求項1乃至3のいずれかに記載の吸音パネル。
【請求項5】
前記金属製薄板は、0.3〜1mmの厚さのアルミニウム板である、請求項1乃至4のいずれかに記載の吸音パネル。
【請求項6】
前記樹脂製化粧フィルムは、吸臭、CO吸着、抗菌、防汚のうちの1又は複数の機能を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載の吸音パネル。
【請求項7】
前記吸音材層は、ボード状に成形されたグラスウールである、請求項1乃至6のいずれかに記載の吸音パネル。
【請求項8】
前記吸音材層は、ボード状に成形されたロックウールである、請求項1乃至6のいずれかに記載の吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸音パネルに関するものであり、より詳細には、主に、コンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室、一般住宅等の内装用パネルとして用いられる、見栄えがよくて吸音性能に優れた吸音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特にコンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室等に用いられる内装用パネルは、吸音性能を有していることが望まれる。従来、吸音板としては一般に、表面に多数の吸音孔を穿設した多孔性ボードが用いられている。
【0003】
しかるに、内壁用パネルとして多く用いられている石膏ボードやけい酸カルシウムボード等の無機質系ボード、あるいは、無垢材や化粧合板等の木質系ボード等のボードに、その表面化粧層を通して多数の吸音孔を穿設する場合、これらのボードに形成し得る孔径には限度があるため、目立たないレベルに小径化することは困難である。そのため、折角印刷等により表面化粧層を見栄え良く仕上げても、各孔の内側面だけでなく、各孔を通して石膏ボードやけい酸カルシウムボード等の明色部分が露見して目に付いてしまうため、全体的に見た目が悪いものとなってしまうおそれがある。
【0004】
また、表面にガラスクロス等のクロスを張着する場合もあるが、その場合は、付着した埃を拭き取り等により除去することが困難であるために、不衛生であるだけでなく、経時的に変色して見た目が悪くなるおそれがあるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−132132号公報
【特許文献2】特開2001−65077号公報
【特許文献3】実開昭54−98014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、内壁用パネルとして多く用いられている無機質系ボードや木質系ボード等を、吸音性を持たせるために表面化粧層から多孔化しようとすると、これらのボードに形成し得る孔径に限度があって、目立たないレベルに小径化することは困難であるため、各孔が目障りとなって外観を損ねるおそれがあるが、従来は、吸音の点に重きが置かれていて、デザイン性は二の次とされていた。また、表面にガラスクロス等のクロスを用いる場合には、埃の除去が困難で不衛生であると共に、変色して見た目が悪くなるおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するためになされたもので、吸音性を持たせるための孔を目立たないレベルのものにすることで、見栄えがよく、埃の除去が容易なために衛生的で、吸音性能に優れ、更には、多品種小ロット施工にも適し、コンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室、あるいは、一般住宅の内装用パネルとしてとして用いるのに好適な吸音パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、任意の模様や色柄の印刷表現が可能であって全面又は広範囲にピンホールを透設した樹脂製化粧フィルムである第1層と、前記ピンホールに連通する前記ピンホールと同径の又はそれより大径の小径孔を前記ピンホールの透設位置に対応させて穿設した金属製薄板である第2層と、前記第1層及び前記第2層を担持する吸音材層である第3層とから成ることを特徴とする吸音パネルである。
【0009】
一実施形態においては、前記小径孔は、前記ピンホールの1つと連通するように形成され、他の実施形態においては、前記小径孔は、前記ピンホールの複数と連通し得るように形成される。
【0010】
前記ピンホールの孔径は1mm以下とされ、前記金属製薄板は、通例、0.3〜1mmの厚さのアルミニウム板とされる。また、前記樹脂製化粧フィルムは、吸臭、CO吸着、抗菌、防汚のうちの1又は複数の機能を有するものとされることがある。
【0011】
一実施形態においては、前記吸音材層は、ボード状に成形されたグラスウールとされ、他の実施形態においては、前記吸音材層は、ボード状に成形されたロックウールとされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述したように、任意の模様や色柄の印刷表現が可能であって全面又は広範囲にピンホールを透設した樹脂製化粧フィルムである第1層と、前記ピンホールに連通する前記ピンホールよりも大径の小径孔を前記ピンホールの透設位置に対応させて形成した金属製薄板である第2層とを含み、通例、吸音性を具有させるための前記ピンホールは孔径が1mm以下とされて目立たないため、見栄えがよくて埃が溜まりにくい衛生的な表面状態が確保され、また、第2層の金属製薄板によって表面の剛性が確保される効果がある。
【0013】
更に、第3層として吸音材層を含むことにより吸音性能に優れ、また、第2層の金属製薄板と、通例、不燃性のグラスウール又はロックウールで形成される吸音材層を含むことにより不燃性を具備する吸音ボードとなるため、特にコンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室その他、消音が必要な室内の内装用パネルとして、あるいは、トイレブースやパーティッション用材として用いるのに好適なものとなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る吸音パネルの第1の実施形態の部分破断斜視図である。
図2】本発明に係る吸音パネルの第2の実施形態の部分破断斜視図である。
図3】本発明に係る吸音パネルに形成される各孔の配置関係の種々の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための種々の形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る吸音パネルは、任意の模様や色柄の印刷表現が可能であって全面又は広範囲にピンホール2を透設した樹脂製化粧フィルム1である第1層と、ピンホール2に連通するピンホール2と同径の又はそれより大径の小径孔4をピンホール2の透設位置に対応させて穿設した金属製薄板3である第2層と、樹脂製化粧フィルム1及び金属製薄板3を担持する吸音材層5である第3層とから成ることを特徴とする。
【0016】
樹脂製化粧フィルム1は表層となるため、難燃性であると共に、ある程度の美観を有することが要求される。そのため樹脂製化粧フィルム1は、木目模様その他種々多様の任意の模様や色柄表現等の印刷が可能なものであることが要求される。この樹脂製化粧フィルム1としては、例えば、グラビア印刷可能な塩化ビニールシートであって、必要に応じてその上に、表面保護及び耐久性向上のためにフッ素フィルム等のフィルムをラミネートしたものを用いることができる。また、樹脂製化粧フィルム1として、吸臭、CO吸着、抗菌、防汚のうちの、1又は複数の機能を有するものを用いることもできる。
【0017】
樹脂製化粧フィルム1に透設されるピンホール2は、目立たないサイズ、即ち、1mm以下の小孔径であって、定間隔置きに又はランダムに、また、樹脂製化粧フィルム1の全面又は広範囲に亘り透設される。孔径がこのレベルであると、壁面や天井面に張設された場合、通気は可能であるが、少し離れると、その表面に施される模様や色柄表現等に関係なく、ほとんど視認することができないものとなる(図面上はその存在を明確にするために目立つように表現されている。)。従って、施工後表出して目障りとなって、樹脂製化粧フィルム1の見た目が損なわれることはない。
【0018】
第2層を形成する金属製薄板3としては、通例、0.3〜1mmのアルミニウム板が用いられる。この板材の厚さが0.3mm以下であると、十分な表面強度が得られないことになり、1mm以上であると、重量が嵩むと共に、後述する小径孔4の穿設(特にピンホール2と同径に穿設する場合)が容易ではなくなる。金属製薄板3には、ピンホール2に連通するピンホール2と同径の、あるいは、それより大径の小径孔4が、各ピンホール2の透設位置に対応させて穿設される。
【0019】
図1に示される第1の実施形態においては、ピンホール2と小径孔4はそれぞれ同径にされ、且つ、1つづつ対応するように形成されている。ピンホール2と小径孔4を同径とする場合は、予め樹脂製化粧フィルム1と金属製薄板3とを貼り合わせ、その上から穿孔するようにすれば、ピンホール2と小径孔4を一度に形成することができる。もちろん、別途穿孔したもの同士を位置決めして貼り合わせることとしてもよい。小径孔4がピンホール2よりも大径の場合は、後者の方法によることになる。
【0020】
図2に示される第2の実施形態においては、各小径孔4は、複数のピンホール2を包含し得るサイズに開口され、複数のピンホール2と連通するようにされる。例えば、孔径が1mmのピンホール2を縦横4mm間隔置きに透設した樹脂製化粧フィルム1を用い、小径孔4の孔径を6mmとした場合は、各小径孔4内にピンホール2が4個づつ収まることになる。
【0021】
第3層を形成する吸音材層5としては、好ましくは、ボード状に成形されたグラスウール又はロックウールが用いられ、接着等により金属製薄板3の裏面に固定される。グラスウールとしては、厚さが25〜50mmの高密度(例えば、96kg/m)のものを1枚、あるいは、施工場所によっては複数枚積層して用いることが好ましい。また、ロックウールとしては、厚さが25〜50mmで密度が80kg/m程度のものを1枚、あるいは、施工場所によっては複数枚積層して用いることが好ましい。
【0022】
以上いずれの実施形態においても、第1層の樹脂製化粧フィルム1の下に第2層として金属製薄板3が配置されるため、インテリアパネルとして適度な表面強度が得られ、殊に、天井面に用いる吸音パネルとしては十分な強度のものとなる。また、室内の騒音、雑音を無数のピンホール2から吸収し、小径孔4を介して吸音材層5内に放出することにより消音させることができるので、十分な吸音・消音効果が得られる。
【0023】
以上のようにして形成された本発明に係る吸音パネルは、一般の内壁用パネルとして、殊に天井用パネルとして、一般のパネルと同様に施工されるが、本吸音パネルの場合の表層は、孔径が1mm以下であって目立つことのないピンホール2を多数配設した樹脂製化粧フィルム1であるため、ピンホール2によってその見た目が損なわれることがない。
【0024】
しかも、この樹脂製化粧フィルム1は、任意の模様や色柄等を表現することが可能であるため、予め種々のものを用意しておき、用途に合わせて選択することができるだけでなく、その都度所望の模様や色柄に印刷して用いることも可能であるため、多品種小ロット施工に適するものとなる。
【0025】
更に、本発明に係る吸音ボードの場合は、表層となる樹脂製化粧フィルム1に形成されるピンホール5は、孔径が1mm以下であって埃が溜まりにくく、平面が平滑であるために埃の拭き取り除去が容易で衛生的である。また、樹脂製化粧フィルム1はそれ自体が難燃性であるだけでなく、更に金属製薄板3、並びに、通例、不燃性のグラスウール又はロックウールで形成される吸音材層と一体となるために、一層耐火性能に優れたものとなる。また、ピンホール2を通しての吸音性能にも優れ、特にコンサートホール、公共施設、学校、病院、図書館、会社の会議室その他、消音が必要な室内の内装用パネル、殊に天井用パネルとして用いるのに好適なものとなる。
【0026】
本発明に係る吸音パネルの有効性(吸音率)を確認するために、東京都立産業技術研究センターに、残響室法吸音率測定(1/3オクターブバンド 18周波数)試験を依頼した。試験に用いた試料は、孔径1mmのピンホールを穿設した塩ビシート(樹脂製化粧フィルム1)と、孔径1mmの小径孔を穿設した厚さ0.5mmのアルミニウム板(金属製薄板3)と、密度が96kg/mで厚さが25mmのグラスウール(吸音材層5)とから成るものである。
【0027】
測定結果は下記表、並びに、図3のグラフに示すとおりである。
【0028】
上記試験結果により、本発明に係る吸音ボードの場合は、特に500Hz以上の中高音域において優れた吸音効果を発揮することが確認された。
【0029】
なお、本発明に係る吸音パネルは、施工壁面の全体に配置される場合と、中間部のみ、あるいは、中間部と上部といった具合に、部分的に配置される場合とがある。
【0030】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに更に異なる実施形態を構成することができることは言うまでもない。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 樹脂製化粧フィルム
2 ピンホール
3 金属製薄板
4 小径孔
5 吸音材層
図1
図2
図3