【文献】
“「食品中の放射性物質の試験法について」(平成24年3月15日厚生労働省食品安全部長通知」”,[online],厚生労働省,2012年 3月15日,[平成28年4月21日検索]、インターネット<URL:http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/shokuhin.html>
【文献】
“食品の放射能汚染について”,[online],日本,日本食品分析センター,2011年 8月,JFRLニュース, Vol. 3, No. 31,[平成28年4月21日検索]、インターネット<URL:http://www.jfrl.or.jp/jfrlnews/hygiene/vol3-no31.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象とする食品のサンプルの質量および放射線強度の計測結果に基づき前記サンプルの放射能を算出し規定値との比較判定を行う演算判定部と、質量データベース、容器容積データベース、バックグラウンドデータベースおよび換算定数データベースを含むデータベースとを有するコンピュータと、収納部において前記質量を測定する質量測定部と、前記放射線強度を測定する放射線測定部と、前記サンプルの収納条件を入力する入力部と、を備えた放射能スクリーニング装置を用いた放射能スクリーニング方法において、
前記入力部が、前記サンプルの収納条件として、収納されたサンプル種別、可食率、および充填高さのうち少なくともいずれか一つを受け付ける入力ステップと、
前記収納部が、容器に収納された前記サンプルを受け入れ収納する収納ステップと、
前記質量測定部が、前記サンプルが充填された容器の質量を測定する質量測定ステップと、
前記放射線測定部が、前記サンプルからの放射線強度を測定する放射線強度測定ステップと、
前記演算判定部が、前記放射線強度の測定結果に基づき放射能濃度を算出する放射能濃度算出ステップと、
前記演算判定部が、算出された前記放射能濃度と判定値とを比較して前記サンプルの放射能濃度が判定値より低いか否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする放射能スクリーニング方法。
前記放射能濃度算出ステップの中で、前記演算判定部の中に、前記演算判定部が可食率での補正をする補正ステップを有することを特徴とする請求項14に記載の放射能スクリーニング方法。
前記放射能濃度算出ステップの後であって、前記判定ステップの前に、前記演算判定部が系統誤差評価を行い前記放射能濃度を補正する補正ステップをさらに有することを特徴とする請求項14または請求項15に記載の放射能スクリーニング方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る放射能スクリーニング装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射能スクリーニング装置における放射能モニタの構成を示すブロック図である。
【0018】
放射能スクリーニング装置1は、放射線測定部2、質量測定部3、演算判定部10、入力部6および表示部7を有する。また、放射能スクリーニング装置1は、質量データベース21、容器容積データベース22、バックグラウンドデータベース23、換算定数データベース24を有する。
【0019】
演算判定部10および上記の各データベースによって行われる機能は、これらの機能を実行する命令コードを記述したプログラムコードを汎用のコンピュータに読み込ませ実行させることによって実現する。このプログラムコードはコンピュータによって読み取り可能な、CD−ROM、ハードディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納されてもよい。
【0020】
放射線測定部2は、容器内に収納された対象とする食品のサンプル(以下、「サンプル」と称する。)からの放射線の強度を測定する。放射線測定部2は、放射線を測定するための、一つ以上の放射線検出器2aと、放射線検出器2aからの信号に基づいてエネルギースペクトルを得る放射線検出信号処理回路などからなる測定ユニット2bを有する。
【0021】
放射線検出器2aごとに放射線検出信号処理回路を設けることで、放射線検出器2aごとに、エネルギースペクトルを求める。なお、それぞれの放射線検出器2aの出力結果を合計した後に、エネルギースペクトルを求めてもよい。
【0022】
2つの放射線検出器2aを使用して測定する場合は、サンプルに含まれる放射能汚染の偏在の影響を緩和するために、放射線検出器2aが点対称になるように設置する。なお、点対称に限定されない。容器の形状や容器の収納場所の配置等により、特定の配置が望ましい場合など、適切な配置を設定するとよい。
【0023】
放射線計測は、あらかじめ決められた一定時間の間行われる。ユーザによって測定時間を変更するための、ユーザインターフェイスを備え、測定対象ごとに前記一定時間を変更してもよい。
【0024】
放射線測定部2の放射線検出器2aとしては、たとえば、電離箱、NaIシンチレーション検出器、BGOシンチレーション検出器、Ge半導体検出器、CdTeまたはCdZnTe半導体検出器、SiC半導体検出器、プラスチックシンチエーション検出器などを使用する。
【0025】
放射線測定部2は、周辺環境からの影響を低減させるために放射線検出器2aの周囲に遮へい材を備えている。なお、遮へい材は周辺環境を考慮して必要であれば設けることでよい。測定ユニット2bの放射線検出信号処理回路により処理された計数値は、演算判定部10に出力される。
【0026】
質量測定部3は、サンプルが収納された容器の質量を測定する。質量測定方式としては、たとえば、ロードセル式、電磁式、音叉式などがある。
【0027】
質量データベース21は、質量測定部3によって測定された質量を記録する。質量データベース21は、最近測定した質量結果のみを測定質量として保存してもよいし、後に測定した質量を使用あるいは参照することを考慮して、過去に測定した結果を複数個、記録してもよい。過去に測定した結果を記録する場合は、後に使用あるいは参照させやすくするために、たとえば、時刻、回数、ユーザ入力値のうちいずれか一つ以上の情報ととともに記録してもよい。
【0028】
入力部6は、ユーザが、サンプルの収納条件を入力するためのインターフェイスである。収納条件としては、たとえば、容器内のサンプルの充填高さ、サンプルの可食率がある。
【0029】
ここで、可食率とは、骨や内臓部分以外の肉の部分、すなわち、通常食べることのできる部分(以下、「可食部」という。)の質量(以下「可食質量」という。)の全体の質量に対する割合をいう。
【0030】
また、入力部6は、容器の種類が複数存在する場合は、容器種別を入力または選択するインターフェイスをさらに有してもよい。
【0031】
サンプルの充填高さを入力するインターフェイスとして、ダイアログボックスに数値を直接入力する。なお数値を直接入力することに限定されない。たとえば、候補として表示された充填高さから選択する方法、予め定められた充填高さにサンプルを充填する運転上の前提においては、サンプルを入れる容器に記号や色をつけて識別子とし、それらの識別子を候補として表示して選択させる方法でもよい。
【0032】
サンプルの可食率を入力するためのインターフェイスとして、ダイアログに数値を直接入力する。なお、数値を直接入力することに限定されない。たとえば、可食率、サンプルの種類、分類、名称、あるいはサンプルの形状のいずれか一つ以上を候補として表示させ、そこから選択させる方法でもよい。
【0033】
候補を表示させる場合は、たとえば、表示させる候補が予め装置内に記録されていてもよいし、公開されている情報をネットワーク経由で取得し表示してもよい。
【0034】
容器種別を入力するためのインターフェイスとして、ダイアログボックスに、容積の高さと幅と奥行き、サイズあるいは容器につけられた識別子のいずれか一つ以上を直接入力する。なお、この方法に限定されない。たとえば、容積の高さと幅と奥行き、サイズ、容器につけられた識別子、あるいは容器の写真又は絵のいずれか一つ以上を候補として表示させ選択させる方法でもよい。
【0035】
加えて、測定サンプルの種別ごとに異なる換算定数を使用する場合は、測定サンプルの種別を選択するインターフェイスを付加してもよい。測定サンプルの種別は、ダイアログボックスに直接入力する。なお、この方法に限定されない。たとえば、サンプルの種類、分類、名称あるいは形状のいずれか一つ以上を候補として表示させ、そこから選択させる方法でもよい。
【0036】
加えて、ユーザによって入力された判定しきい値を用いて判定をする場合は、判定しきい値を入力するインターフェイスとして、ダイアログに数値を入力する。なお、数値を直接入力することに限定されない。たとえば、複数の判定しきい値を候補として表示させ、そこから選択させる方法でもよい。
【0037】
入力対象ごとに、別々のインターフェイスを設ける。なお、別々に設けることに限定されない。たとえば、同一のインターフェイスを設けてもよい。
【0038】
容器容積データベース22は、少なくとも、サンプルの充填高さとサンプル容積の関係とからの容器質量を記録したデータベースである。式(1)に示すような、サンプル充填高さと容積の関係式とからの容器質量を関連して記録する。なお、サンプル容積と充填高さとからの容器質量が一つの組となるようにして、一つ以上の組を集合体として記録してもよい。
サンプル容積=A×充填高さ ・・・(1)
ここで、Aは、あらかじめ定められた定数である。
【0039】
また、容器種別を入力するためのインターフェイスを備えている場合は、入力部6でユーザが入力した、あるいは選択した容器種別ごとに容器容積データベースを用意する。なお、この方法に限定されない。サンプル容積と充填高さの関係式とからの容器質量と前記容器種別とを関連付けて記録しても、サンプル容積と充填高さとからの容器質量と容器種別とが一つの組となるようにして、一つ以上の組を集合体として記録してもよい。
【0040】
また、予め定められた充填高さにサンプルを充填する運転上の前提においては、入力部6において、充填高さに代わり、サンプルを入れる容器につけられた記号や色を識別子として入力させた場合は、充填高さに代えてそれら識別子とサンプル容積とからの容器質量を関連付けて記録する。
【0041】
なお、容器質量とサンプル容積と予め定められた充填高さにサンプルを充填する運転上の前提においては、換算定数、サンプル種別、可食率を容器にICタグやバーコードを用いてあらかじめ記録しておき、測定を開始する前にそれを読み込むことで、データベースを必要としない構成で実現してもよい。
【0042】
バックグラウンドデータベース23は、サンプルがない状態で測定したときの、放射線測定部2から出力されたエネルギースペクトルを記録する。
【0043】
換算定数データベース24は、あらかじめ求められた、サンプル質量とサンプル容積と放射能換算定数との関係を記録する。サンプル質量と充填高さとサンプル容積との関係は、式(2)、式(3)、式(4)に示す関係式を記録し、この中から使用する式を選択する。なお、式(2)、式(3)、式(4)に示す関係式は例として示したものであり、これに限定されず、経験的に適切な関係式が得られれば、変更してもよい。また、たとえば、サンプル容積とサンプル質量と放射能換算定数を一つの組として、一つ以上の組を集合体として記録してもよい。なお、各式中のかさ密度は、サンプル質量をサンプル容積で除して求めた値である。
放射能換算定数=かさ密度×fa1(サンプル質量)+fa2(サンプル質量)
・・・ (2)
ここで、fa1、fa2は、あらかじめ定められたサンプル質量により一意に値が定まる定数である。
放射能換算定数=(1−e
Y)×fb2(サンプル質量) (3)
ただし、Y=−fb1(サンプル質量)×かさ密度
ここで、fb1、fb2は、あらかじめ定められたサンプル質量により一意に値が定まる定数である。
放射能換算定数=かさ密度
2×fc1(サンプル質量)
+かさ密度×fc2(サンプル質量)+fc3(サンプル質量) (4)
ここで、fc1、fc2、fc3は、あらかじめ定められたサンプル質量によって一意に値が定まる定数である。
【0044】
サンプル質量とサンプル容積と放射能換算定数の関係は、以下のような方法で求める。
まず、仮想空間上に放射能モニタと同じ測定体系(位置、密度)を模擬したモデルを作成する。サンプル容積とサンプルの放射能とその分布、サンプル質量を設定し、このように設定された条件下において、シミュレーションを実施する。シミュレーションで計算された放射線測定部2で測定される放射線の計数値、すなわちシミュレーション計数値と、設定したサンプルの放射能すなわち設定放射能から、たとえば、換算定数を式(5)によって求める。
放射能換算定数=設定放射能/シミュレーション計数値 (5)
加えて、核種ごとに異なる放射能換算定数を定める場合は、核種とサンプル容積とサンプル質量と放射能換算定数との関係を記録する。
【0045】
容器種別ごとに異なる放射能換算定数を定める場合は、入力部6でユーザに提示する容器種別とサンプル質量とサンプル容積と放射能換算定数との関係を記録する。
サンプル種別ごとに異なる放射能換算定数を定める場合は、入力部6でユーザに提示するサンプル種別とサンプル質量とサンプル容積と放射能換算定数との関係を記録する。
【0046】
なお、サンプル種別ごとの換算定数データを用意した場合、あるいは、容器種別を加えて一つの組として記録した場合は、サンプル容積のかわりに、サンプル充填高さを用いてもよい。
また、予め定められた充填高さにサンプルを充填する運転上の前提においては、換算定数データベース24はサンプル質量と放射能換算定数との関係のみを記録してもよい。
【0047】
演算判定部10は、全放射能算出部11、放射能濃度算出部12および判定部13を有する。
全放射能算出部11は、放射線測定部2により得られたエネルギースペクトル上のあらかじめ定めた領域の一定時間分の積算値から、モニタ対象となる、1種類以上の核種のエネルギー範囲の計数値の積算値をモニタ核種の総計数値として算出する。
【0048】
モニタ核種の総計数値から、バックグラウンドデ-タベース23に記録されたサンプルがない状態での測定結果を参照し、その影響を減算し、モニタ対象の計数値を求める。モニタ対象となる核種のエネルギー範囲の総計数値は、以下の第1の積算方法で算出する。なお、この方法に限定されない。以下に示す第2の積算方法、第3の積算方法によって算出してもよい。
【0049】
第1の積算方法: 予め定められたエネルギー範囲において計数の積算値をもとめ、ピークサーチによって存在が確認された核種について、そのピークカウント又はピーク検出効率から求められた存在比率又は予め定められた存在比率を用いて、計数の積算値に前記存在比率を乗ずることで求める。
【0050】
第2の積算方法: 予め定められたエネルギー範囲において、ピークサーチによって存在が確認された核種について、ピークと判定された部分を抜き出し各ピークごとにピーク面積を算出する。
【0051】
第3の積算方法: 予め定められた着目対象核種のエネルギーに相当するピーク中心から、両側に予め定められた式を用いてピーク領域を設定しその領域の面積を算出する。前記エネルギー領域の総カウント数に対して、その両外側に設定された散乱領域の影響を考慮してもよい。
【0052】
放射線測定部2に複数の検出器が存在する場合は、以下に示す、第1の総計数値の積算方法で算出する。なお、この方法に限定されない。以下に示す第2の総計数値の積算方法によって算出してもよい。
【0053】
第1の総計数値の積算方法: 複数の検出器で求めたスペクトルデータの中から、基準となるスペクトルデータを基準スペクトルデータとして選択し、そのほかのスペクトルデータに対して予め定められた着目対象核種のピークに合わせて、ゲインとゼロ点について、基準スペクトルとの違いを求め、それら違いを補正した後に、スペクトルを合算し、合算したスペクトルからモニタ対象となる核種の総係数値を求める。このとき、エネルギー分解能が最も悪い検出器のスペクトルデータを基準スペクトルデータとし、モニタ対象となる核種の総計数値を算出するために必要なパラメータが検出器ごとに異なる場合は、基準スペクトルデータのものを使用する。
【0054】
第2の総計数値の積算方法: 複数の検出器ごとに、モニタ対象となる核種、それぞれについて総係数値を求め、最大値を選択する、合算する、または平均値を算出することで、総係数値とする。
【0055】
全放射能算出部11は、質量データベース21に記録された測定質量から容器容積データベース22から抽出したから容器質量から、式(6)を用いて、サンプル質量を求める。
サンプル質量=測定質量−から容器質量 (6)
入力部6によって入力された充填高さまたは選択された充填高さ又は充填高さを表す記号又は色を識別子として、容器容積データベース22から抽出したサンプル容積と前記サンプル質量とから、換算定数データベース24から換算定数を抽出する。抽出した換算定数とモニタ対象の計数値を用いて、たとえば式(7)を用いて全放射能を求める。
全放射能=換算定数×モニタ対象の計数値 (7)
【0056】
サンプル質量とサンプル容積に加え、容器種別ごとに異なる換算定数を用意している場合は容器種別、核種ごとに異なる換算定数を用意している場合には核種、サンプル種別ごとに異なる換算定数を用意している場合にはサンプル種別、を用いてそれぞれ換算定数を抽出する。
【0057】
また、たとえば、離散的に容器容積データベース22のデータが記録されており、容器容積データベース22に記録された充填高さの中から、入力部6によって入力された充填高さと等しい充填高さが発見できなかった場合は、容器容積データベース22に記録された充填高さに最も近い充填高さと合わせて記録されているサンプル容積を、サンプル容積として抽出する。なお、この方法に限定されない。
【0058】
たとえば、次のような条件1と条件2を満たす充填高さとサンプル容積とからの容器質量が一つの組をそれぞれ抽出し、たとえば、式(8)を用いて、サンプル容積を線形補間によって算出してもよい。
【0059】
(条件1): 入力充填高さ<容器容積データベース22中の充填高さ値(条件1充填高さ値)、かつ、(入力充填高さ−容器容積データベース22中の充填高さ値)
2が最小。
【0060】
(条件2): 入力充填高さ>容器容積データベース22中の充填高さ値(条件2充填高さ値)、かつ、(ユーザ入力充填高さ−容器容積データベース22中の充填高さ値)
2が最小。
【0061】
サンプル容積=条件2を満たす容積+(条件1充填高さ値−条件2充填高さ値)×(ユーザ入力充填高さ−条件2充填高さ値)×(条件1を満たすサンプル容積−条件2を満たすサンプル容積) (8)
離散的に換算定数データベース24のデータが記録されており、サンプル容積とサンプル質量と等しいデータが記録されていなかった場合は、サンプル容積と同様に最も近いサンプル質量とサンプル容積の組を検索してその換算定数を使用する。なお、この方法に限定されない。たとえば、複数の近しいサンプル質量とサンプル容積の組を抜き出し、容器容積データベースからサンプル容積を求めるのと同様の手法を用いて、線形補間をすることで換算定数を求めてもよい。
【0062】
全放射能算出部11は、モニタ対象の核種の計数値と換算定数を用いて、式(9)によって全放射能を算出する。
全放射能=モニタ対象の核種の計数値×換算定数 (9)
算出した全放射能は、放射能濃度算出部12に入力される。
【0063】
放射能濃度算出部12は、質量データベース21に記録された測定質量と、容器容積データベース22から抽出したから容器質量と、入力部6から入力または選択された可食率とを用いて、式(10)によって可食質量を算出する。
可食質量=(測定質量−から容器質量)×可食率 (10)
【0064】
放射能濃度算出部12は、全放射能算出部11から出力された全放射能と可食質量を用いて、式(11)によって放射能濃度を算出する。
放射能濃度=全放射能/可食質量 (11)
【0065】
判定部13では、放射能濃度算出部12から出力された放射能濃度、または予め記録された判定しきい値、または入力部6によって入力された判定しきい値と放射能濃度算出部12で算出した放射能濃度の大小の比較と、バックグラウンドデータベース23に記録されたスペクトルデータと放射線測定部2から入力されたスペクトルを用いて算出された測定下限値を前記可食質量で除した値、すなわち測定下限濃度と測定された放射能濃度の大小の比較を実施し、判定結果を出力する。
【0066】
表示部7は、演算判定部10の判定部13における判定結果を表示する。測定された放射能濃度が、判定しきい値に比べて小さいと判定された場合は、汚染がないことを意味する内容を表示する。
汚染がないことを意味する内容としては、たとえば、汚染なしの文字あるいはそれを意味する記号あるいは色、のいずれか一つ以上を表示する。
【0067】
測定された放射能濃度が、測定下限濃度に比べて小さいと判定された場合は、測定下限であることを意味する内容を表示する。
測定下限であることを意味する内容としては、たとえば、測定下限の文字あるいはそれを意味する記号あるいは色、あるいは測定下限濃度のいずれか一つ以上を表示する。
予め定められた測定下限値を可食質量で除した値のいずれか一つ以上を表示する。
【0068】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る放射能スクリーニング装置の外形を示す
図3の第II−II線矢視正面図である。また、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る放射能スクリーニング装置の外形を示す側面図である。
【0069】
放射能スクリーニング装置1は、各構成要素が筐体8内に収納されて、装置全体が一体となっている。筐体8内には、サンプル収納用の容器5を収納するためのスペースとしての収納部9が設けられている。サンプル収納用の容器5は、サンプルを収納した状態で、収納部9に収納され、質量測定部3上に搭載される。容器5の両側面には、2台の放射線検出器2aが配されている。筐体8は、キャスター8aを有しており、移動可能である。なお、キャスター付に限らない。たとえば、固定式でもよい。
【0070】
なお、放射線検出器2aは、2台に限らない。容器が収納できるサンプルの量によっては1台でもよい。また、大型の場合で、測定精度をさらに向上させようとする場合は、3台以上でもよい。
【0071】
容器5、質量測定部3および放射線検出器2aは、遮へい体4内に収納されており、外部からの放射線の影響を抑制している。遮へい体4の外側には、測定ユニット2b、計算機30が収納されている。
【0072】
計算機30は、演算判定部10、質量データベース21、容器容積データベース22、バックグラウンドデータベース23および換算定数データベース24の機能を有する。
【0073】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る放射能スクリーニング装置を用いた放射能モニタ方法の手順を示すフロー図である。
【0074】
まず、入力されたサンプルの収納条件が入力部6に受け付けられる(ステップS1)。
ステップS1の後に、容器5に収納されたサンプルを放射能スクリーニング装置1が受け入れ収納する(ステップS2)。
【0075】
ステップS2によって容器5が質量測定部3上に搭載されたので、質量測定部3による質量測定が行われる(ステップS3)。
ステップS3の後に、放射線測定部2により放射線強度が測定される(ステップS4)。
【0076】
ステップS3による出力計測結果およびステップS4による放射線強度計測結果にもとづき、演算判定部10の全放射能算出部11においてサンプルが有する全放射能濃度が算出される(ステップS5)
ステップ5の後に、演算判定部10の放射能濃度算出部12において、全放射能濃度と可食質量とに基づき、放射能濃度が算出される(ステップS6)。
【0077】
ステップS6の後に、演算判定部10の判定部13において、ステップS6で求められた放射能濃度が規定値より小さいか否かが判定される(ステップS7)。
ステップS7の判定部13における判定結果は、表示部7に表示される(ステップS8)。
【0078】
以上のように構成された本実施形態によって、サンプルの前処理に時間をかけずに、かつ安全側に放射能レベルのスクリーニングを行うことができる。
【0079】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る放射能スクリーニング装置における放射能モニタの構成を示すブロック図である。
【0080】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。放射能スクリーニング装置1は、系統誤差データベース25をさらに有する。また、演算判定部10は、系統誤差補正部14をさらに有する。
【0081】
系統誤差データベース25は、予め算出された系統誤差を記録したデータベースである。系統誤差は、特定の要因によって系統的に生ずる誤差であり、たとえば、シミュレーションによる誤差、サンプルの充填の仕方による誤差、容器の置く位置の誤差による放射線強度測定上の誤差、シミュレーションによって求められた個々の個体の汚染差が測定結果に与える誤差などが考えられる。
また、複数の誤差が存在する場合は、たとえば式(12)を用いて、系統誤差を求めてもよい。
【0082】
系統誤差=((X1
2)+(X2
2)+(X3
2)+・・・・)
1/2 (12)
(X1、X2、X3、・・・は、それぞれの要因による誤差である。)
放射能濃度算出部12は、全放射能算出部11より入力された全放射能と、質量データベース21および容器容積データベース22を参照して求めた可食質量とから可食部の放射能濃度を算出する。
【0083】
さらに、系統誤差補正部14は、系統誤差データベース25を参照して求めた系統誤差を用いて、たとえば式(13)によって、補正された放射能濃度を算出する。
放射能濃度=全放射能/可食質量/(1−系統誤差) (13)
算出された補正後の放射能濃度は、表示部7に出力される。
【0084】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る放射能スクリーニング装置を用いた放射能モニタ方法の手順を示すフロー図である。第1の実施形態に、系統誤差補正部14が、系統誤差を評価し、放射能濃度を補正するステップ(S9)がさらに追加されている。
このように、算出された放射能の値を、系統誤差を考慮して補正することにより、さらに安全側の評価、判定を行うことができる。
【0085】
以上のように構成された本実施形態によって、サンプルの前処理に時間をかけずに、かつ安全側に放射能レベルのスクリーニングを行うことができる。
【0086】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係る放射能スクリーニング装置における放射能モニタの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第2の実施形態の変形であり、食品データベース26をさらに有している。
【0087】
食品データベース26は、サンプルの種別に応じたサンプル種別データを記録する。サンプル種別データとしては、可食率がある。
【0088】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る放射能スクリーニング装置における放射能モニタに使用する魚種ごとの可食率データの例を示す一覧表である。
図8は、対象とする食品が魚類の場合を示しているが、同図に示すように、可食率は魚の種別によって大きく異なっている。ここで種別とは、食品が魚類の場合は、サバ、カツオ、アジなど、魚の種類をいう。
【0089】
サンプル種別データが食品データベース26に記録されていることにより、入力部6では、収納条件について、サンプルの可食率などを入力する必要がなく、種別のみを指定すればよい。入力部6で種別が指定されると、放射能濃度算出部12は、種別に応じた可食率を食品データベース26から読み込んで演算を行う。
以上のように構成された本実施形態により、ユーザの入力の手間が軽減される。
【0090】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。たとえば、各実施形態では対象とする食品が魚類の場合を示したがこれに限定されない。たとえば、ウニや貝類などでもよい。また、果物、野菜類でもよい。
【0091】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第3の実施形態における特徴を第1の実施形態と組み合わせてもよい。
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。