(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054162
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】取鍋予熱装置
(51)【国際特許分類】
B22D 41/015 20060101AFI20161219BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20161219BHJP
B22D 41/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
B22D41/015
B22D45/00 C
B22D41/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-272706(P2012-272706)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-117714(P2014-117714A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219750
【氏名又は名称】東海高熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】加藤裕之
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4903903(JP,B1)
【文献】
特開2012−183582(JP,A)
【文献】
米国特許第04394566(US,A)
【文献】
特開平10−323750(JP,A)
【文献】
特開2005−149973(JP,A)
【文献】
特開平07−232264(JP,A)
【文献】
特開2002−162172(JP,A)
【文献】
実開昭58−189072(JP,U)
【文献】
特開平04−176810(JP,A)
【文献】
実開昭56−080865(JP,U)
【文献】
特開2010−264486(JP,A)
【文献】
特開2010−264485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に溶湯の注ぎ口と開口部を有する取鍋本体と、
取鍋本体の開口部を塞いで断熱する蓋と、
取鍋本体内部を加熱する電気抵抗加熱式ヒーターを設け、該ヒーターに通電させて取鍋本体内部を加熱する電気抵抗加熱式ヒーターを加熱手段として備え、前記取鍋の注ぎ口の内部にも、電気抵抗加熱式ヒーターが装着されている
ことを特徴とする取鍋予熱装置。
【請求項2】
前記蓋が、取鍋本体と接する側に600℃における熱伝導率が0.3W/m・K以下かつかさ比重0.5以下の素材から成る断熱層を有するものであることを特徴とする請求項1に記載された取鍋予熱装置。
【請求項3】
前記電気抵抗加熱式ヒーターが、セラミックヒーターであることを特徴とする請求項1又は2に記載された取鍋予熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造作業場で使用される取鍋の予熱ないし保温のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋は、鋳造品を製造するための溶湯を、鋳造鋳型まで搬送する容器として使用される。
【0003】
取鍋の予熱は、高温の溶湯を炉から取鍋内に移した時に、取鍋内で溶湯が急激に冷やされないために行われる。取鍋の予熱は、できるだけ高温であるのが望ましいが、経済性の観点から取鍋外壁の温度が300℃以上になるように行われる。
【0004】
従来から、取鍋の予熱は取鍋を横にしたり、裏返したりして、その内部を、ガスや重油等のバーナーを使用して加熱する方法が知られている。
【0005】
しかし、このバーナーによる予熱方法では温められた気体が取鍋の内部に留まらず、つねに外部へ逃げていくため熱効率が悪い。また、つねに燃焼ガスが取鍋内に供給されるため、蓋で取鍋を密閉して断熱することができず、加熱されたままの燃焼ガスが作業環境を汚染する。
【0006】
これらの問題点を解決するため、特許文献1では、取鍋本体と密閉蓋からなり、密閉蓋を貫通する双極の電極を挿入して、取鍋本体内部をアーク放電により加熱する取鍋予熱装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−55908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された発明によれば、バーナーを使用せず、取鍋の開口部を蓋で密閉するので、燃焼ガスによる作業環境の汚染はない。しかしながら、熱源としてアークを利用するため、アークの安定性や電極表面の酸化を防ぐために不活性ガスの投入が望ましく、大気中での使用は困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギーを有効に活用し、作業環境を汚染することのない取鍋予熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の取鍋予熱装置は、上部に溶湯の注ぎ口と開口部を有する取鍋本体と、取鍋本体の開口部を塞いで断熱する蓋と、取鍋本体内部を加熱する電気抵抗加熱式ヒーターを設け、該ヒーターに通電させて取鍋本体内部を加熱する電気抵抗加熱式ヒーターを加熱手段として備え
、前記取鍋の注ぎ口の内部にも、電気抵抗加熱式ヒーターが装着されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の取鍋予熱装置を使用して取鍋を予熱するには、電気抵抗予熱式ヒーターを設けた蓋もしくは取鍋本体を昇降させて、電気抵抗加熱式ヒーターをセットした後、電気抵抗加熱式ヒーターに通電させて、取鍋本体を内部から加熱する。
【0012】
本発明によれば、電気による加熱で、取鍋開口部に蓋をして断熱もできるため、作業環境の汚染もなく、省エネ効果も高い。更に、電気抵抗加熱式ヒーターによる加熱のため、アーク加熱のように取鍋内に不活性ガスを投入する必要もなく、大気中で取鍋を加熱することが可能である。
【0013】
蓋は電気抵抗加熱式ヒーターで予熱した熱を逃さないためのものであるので、取鍋本体を密閉する構造である必要はない。予熱で投入した熱エネルギーを有効に活用するために、蓋は断熱性に優れた断熱層を有する二層構造とすることが好ましい。断熱性に優れる素材としては、熱伝導率が低く、かつかさ比重が小さいものが好ましい。断熱層としては、600℃における熱伝導率が0.3W/m・K以下かつかさ比重0.5以下の素材からなるものを挙げることができる。600℃における熱伝導率が0.3W/m・K以下の素材としては、例えば、アルミナ系セラミックファイバーボード、珪酸カルシウム系セラミックファイバーボード、JIS規格A類耐火断熱煉瓦などを挙げることができる。
【0014】
更に、取鍋の溶湯注ぎ口にも、その直径に合わせた電気抵抗加熱式ヒーターを投げ入れて加熱することで温まりにくい注ぎ口の加熱も容易になる。
【0015】
本発明の電気抵抗加熱式ヒーターとは、電気抵抗体に通電することによりジュール熱により発熱する加熱手段であり、金属ヒーターまたはセラミックヒーターを挙げることができる。金属ヒーターよりセラミックヒーターを使用することで、単位面積当りの発熱量が高くすることができるため、取鍋のように開口部面積が限られる用途には更に好ましい。
【0016】
本発明におけるセラミックヒーターとは、例えば、炭化けい素発熱体や二けい化モリブデン発熱体などのように、セラミックスに直接通電してジュール熱によって1,000℃以上に発熱するものである。
【0017】
電気抵抗加熱式ヒーターを設置するには、
図1及び
図2に示したように、蓋に貫通して設ければよい。
【0018】
取鍋を予熱する手順は、最初に電気抵抗加熱式ヒーターを設けた蓋もしくは取鍋本体を昇降させて、電気抵抗加熱式ヒーターをセットする。取鍋本体の予熱は電気抵抗加熱式ヒーターに通電すればよく、取鍋の予熱温度の制御は、取鍋外側に設けた熱電対等で取鍋本体の温度を測定して行えばよい。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明に係る取鍋予熱装置によれば、電気抵抗加熱式ヒーターによる加熱することおよび取鍋の開口部を塞いで断熱することにより、熱エネルギーを有効に活用でき、作業環境への汚染もない。アーク加熱で懸念される電極の消耗もないため、大気中で使用でき、不活性ガスを注入する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の取鍋予熱装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の取鍋予熱装置の蓋の構造の一実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る取鍋予熱装置について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明の取鍋予熱装置の構成を模式的に示した図である。
【0023】
本発明の取鍋予熱装置は、取鍋本体1と取鍋の開口部を塞いで断熱するための蓋2、それに電気抵抗加熱式ヒーター3で構成される。取鍋内の雰囲気は、大気中でよいため、アーク放電のように蓋2と取鍋本体1を押圧して密閉する必要はない。
【0024】
取鍋は取り扱い等で取鍋本体の上端のレンガが欠けたり、スラグが付着したりするため、蓋2と取鍋1との間には、セラミックウールやセラミックブランケットを設けてもよい。
【0025】
取鍋1の溶湯の注ぎ口6を温めるため、注ぎ口6の内径部分に注ぎ口用電気抵抗加熱式ヒーター4を投入して加熱す
る。
【0026】
電気抵抗加熱式ヒーターの制御は、取鍋外側に設けた熱電対等で温度を測定し、ヒーターに投入する電力を調整すればよい。
【0027】
以上、説明したように、本実施の形態に係る取鍋予熱装置によれば、取鍋1の上部開口部を蓋2で覆って断熱するため、熱エネルギーを外部へ逃がすこともなく、省エネ効果が高く、また電気抵抗加熱式ヒーター3を熱源とするため作業環境を汚染することもない。
【0028】
電気抵抗加熱式ヒーター3、4は大気中で消耗しないため、取鍋内を不活性ガスで置換する必要も無く、押圧も必要としない。
【0029】
図2は、取鍋予熱装置の蓋の構造の一実施形態を模式的に示す図である。
【0030】
蓋2は電気抵抗加熱式ヒーター3で予熱した熱を逃がさないためのものであり、取鍋本体を密閉する必要はない。蓋2の好ましい実施形態として、
図2に示したように取鍋本体と接する側に断熱層2−1を有するものを挙げることができる。断熱層2−1としては、600℃における熱伝導率が0.3W/m・K以下かつかさ比重0.5以下の素材からなり、20〜60mm程度の厚みがあればよい。なお、電気抵抗加熱式ヒーターとして具体的にはセラミックヒーターを挙げることができるが、セラミックヒーターは電気を供給する端部3−2と供給された電気で発熱する発熱部3−1からなるものであり、端部3−2を蓋2に貫通させればよい。
【0031】
以上、本発明に係る取鍋予熱装置について、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に内包されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、鋳造工場で用いられる取鍋の予熱保温装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:取鍋
2:蓋
2−1:断熱層
3:電気抵抗加熱式ヒーター
3−1:発熱部
3−2:端部
4:注入口用電気抵抗加熱式ヒーター
5:ヒーター用電源ケーブル
6:注ぎ口