(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の変圧器遮断検出手段は、前記第1の遮断器から受信する開放を示す信号及び前記第1の変圧器電圧計測手段により計測される三相交流電圧に基づいて、前記変圧器が前記第1の遮断器により遮断されたことを検出し、
前記第2の変圧器遮断検出手段は、前記第2の遮断器から受信する開放を示す信号及び前記第2の変圧器電圧計測手段により計測される三相交流電圧に基づいて、前記変圧器が前記第2の遮断器により遮断されたことを検出すること
を特徴とする請求項3に記載の励磁突入電流抑制システム。
前記第1の投入手段は、前記着目相を絶対値が最大の相とした場合は、前記第1の電源の三相交流電圧の前記着目相が前記残留磁束の前記着目相と同極性から逆極性に変化する零点となる位相を前記第1の投入位相とし、前記着目相を絶対値が最小の相とした場合は、前記第1の電源の三相交流電圧の前記着目相が波高値となる位相を前記第1の投入位相とし、
前記第3の投入手段は、前記着目相を絶対値が最大の相とした場合は、前記第2の電源の三相交流電圧の前記着目相が前記残留磁束の前記着目相と同極性から逆極性に変化する零点となる位相を前記第3の投入位相とし、前記着目相を絶対値が最小の相とした場合は、前記第2の電源の三相交流電圧の前記着目相が波高値となる位相を前記第3の投入位相とすること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の励磁突入電流抑制システム。
第1の遮断器を介して第1の電源に接続され、第2の遮断器を介して第2の電源に接続される変圧器の励磁突入電流を第1の励磁突入電流抑制装置及び第2の励磁突入電流抑制装置により抑制する励磁突入電流抑制方法であって、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器の三相交流電圧を計測し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器が前記第1の遮断器により遮断されたことを検出し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器が前記第1の遮断器により遮断されたことを検出した場合、計測した前記変圧器の三相交流電圧に基づいて、前記変圧器の三相の残留磁束を演算し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、演算した前記変圧器の三相の残留磁束を前記第2の励磁突入電流抑制装置に送信し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記第2の励磁突入電流抑制装置から前記変圧器の三相の残留磁束を受信し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記第1の電源の三相交流電圧を計測し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、計測した前記第1の電源の三相交流電圧及び演算した前記変圧器の三相の残留磁束又は受信した前記変圧器の三相の残留磁束に基づいて、前記三相の残留磁束のうち絶対値が最大の相又は絶対値が最小の相のいずれか1つの相を着目相として、前記第1の遮断器の前記着目相を励磁突入電流を抑制するための第1の投入位相で投入し、
前記第1の励磁突入電流抑制装置が、前記第1の遮断器の前記着目相を投入後、前記第1の遮断器の前記着目相以外の2相を、励磁突入電流を抑制するための第2の投入位相で投入し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器の三相交流電圧を計測し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器が前記第2の遮断器により遮断されたことを検出し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記変圧器が前記第2の遮断器により遮断されたことを検出した場合、計測した前記変圧器の三相交流電圧に基づいて、前記変圧器の三相の残留磁束を演算し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、演算した前記変圧器の三相の残留磁束を前記第1の励磁突入電流抑制装置に送信し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記第1の励磁突入電流抑制装置から前記変圧器の三相の残留磁束を受信し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記第2の電源の三相交流電圧を計測し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、計測した前記第2の電源の三相交流電圧及び演算した前記変圧器の三相の残留磁束又は受信した前記変圧器の三相の残留磁束に基づいて、前記三相の残留磁束のうち絶対値が最大の相又は絶対値が最小の相のいずれか1つの相を着目相として、前記第2の遮断器の前記着目相を励磁突入電流を抑制するための第3の投入位相で投入し、
前記第2の励磁突入電流抑制装置が、前記第2の遮断器の前記着目相を投入後、前記第2の遮断器の前記着目相以外の2相を、励磁突入電流を抑制するための第4の投入位相で投入すること
を含むことを特徴とする励磁突入電流抑制方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。
【0012】
励磁突入電流抑制システム1は、1−1/2(one and half)母線構成の電力系統に適用されている。
【0013】
励磁突入電流抑制システム1は、2つの電源母線2a,2bと、3つの遮断器3a,3b,3cと、2組の三相分の電源電圧検出器5Ua,5Va,5Wa,5Ub,5Vb,5Wbと、変圧器7と、三相分の変圧器端子電圧検出器8U,8V,8Wと、2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bとを備えている。
【0014】
第1の電源母線2a及び第2の電源母線2bは、U相、V相及びW相からなる三相交流の電源を備えた電力系統の母線である。
【0015】
変圧器7の1次側は、第1の遮断器3a及び第3の遮断器3cを介して第1の電源母線2aと接続され、第2の遮断器3bを介して第2の電源母線2bと接続されている。第1の遮断器3aと第3の遮断器3cとの間には、負荷が接続されている。変圧器7は、電源に投入されるときは、無負荷である。なお、以降では、特に言及しない限り、第3の遮断器3cは、常に投入されているものとする。
【0016】
変圧器7は、三相交流電圧を変圧する3巻線の三相変圧器である。変圧器7は、1次巻線701、2次巻線702及び3次巻線703を備えている。1次巻線701及び2次巻線702は、Y結線されている。3次巻線703は、Δ結線されている。1次巻線701及び2次巻線702は、中性点が接地されている。
【0017】
第1の遮断器3aは、U相、V相、及びW相の各相の主接点31Ua,31Va,31Waを個別に操作する各相操作型の遮断器である。また、第1の遮断器3aには、主接点31Ua,31Va,31Waの開閉状態に連動して動作する補助接点32Ua,32Va,32Waが設けられている。補助接点32Ua〜32Waは、それぞれの主接点31Ua〜31Waの開放状態又は投入状態を示す補助接点信号を2つの励磁突入電流抑制装9a,9bにそれぞれ出力する。第2の遮断器3bが開放された状態で、第1の遮断器3aが投入されることにより、変圧器7は、第1の電源母線2aによる電源投入がされる。第2の遮断器3bが開放された状態で、第1の遮断器3aが開放されることにより、変圧器7は、電源から遮断される。
【0018】
第2の遮断器3bは、U相、V相、及びW相の各相の主接点31Ub,31Vb,31Wbを個別に操作する各相操作型の遮断器である。また、第2の遮断器3bには、主接点31Ub,31Vb,31Wbの開閉状態に連動して動作する補助接点32Ub,32Vb,32Wbが設けられている。補助接点32Ub〜32Wbは、それぞれの主接点31Ub〜31Wbの開放状態又は投入状態を示す補助接点信号を2つの励磁突入電流抑制装9a,9bにそれぞれ出力する。第1の遮断器3aが開放された状態で、第2の遮断器3bが投入されることにより、変圧器7は、第2の電源母線2bによる電源投入がされる。第1の遮断器3aが開放された状態で、第2の遮断器3bが開放されることにより、変圧器7は、電源から遮断される。
【0019】
第1の電源電圧検出器5Ua,5Va,5Waは、第1の電源母線2aの各相(U相、V相、W相)に設けられている。第1の電源電圧検出器5Ua〜5Waは、第1の電源母線2aの各相の相電圧(対地電圧)を計測するための計器用機器である。第1の電源電圧検出器5Ua〜5Waは、例えば、計器用変圧器(VT, Voltage Transformer)又はコンデンサ形計器用変圧器(PD, Potential Device)などの電圧分圧装置である。第1の電源電圧検出器5Ua〜5Waは、電源母線2aの各相と大地間に接続される。第1の電源電圧検出器5Ua〜5Waは、検出値を検出信号として、第1の励磁突入電流抑制装9aに出力する。
【0020】
第2の電源電圧検出器5Ub,5Vb,5Wbは、第2の電源母線2bの各相(U相、V相、W相)に設けられている。第2の電源電圧検出器5Ub〜5Wbは、第2の電源母線2bの各相の相電圧を計測するための計器用機器である。電源電圧検出器5Ub〜5Wbは、例えば、計器用変圧器又はコンデンサ形計器用変圧器などの電圧分圧装置である。第2の電源電圧検出器5Ub〜5Wbは、第2の電源母線2bの各相と大地間に接続される。第2の電源電圧検出器5Ub〜5Wbは、検出値を検出信号として、第2の励磁突入電流抑制装9bに出力する。
【0021】
変圧器端子電圧検出器8U,8V,8Wは、変圧器7の1次側の各端子(U相、V相、W相)の相電圧Vu,Vv,Vwを計測するための計器用変圧器である。変圧器端子電圧検出器8U〜8Wは、例えば、計器用変圧器又はコンデンサ形計器用変圧器などの電圧分圧装置である。変圧器端子電圧検出器8U〜8Wは、変圧器7の一次端子の各相に設けられている。変圧器端子電圧検出器8U〜8Wは、検出値を検出信号として、第1の励磁突入電流抑制装9a及び第2の励磁突入電流抑制装9bに出力する。
【0022】
第1の励磁突入電流抑制装9aは、第1の電源電圧検出器5Ua〜5Wa及び変圧器端子電圧検出器8U〜8Wのそれぞれから受信した検出信号に基づいて、第1の遮断器3aの各相の主接点31Ua〜31Waに対して投入指令を出力する。これにより、第1の遮断器3aは投入される。
【0023】
第2の励磁突入電流抑制装9bは、第2の電源電圧検出器5Ub〜5Wb及び変圧器端子電圧検出器8U〜8Wのそれぞれから受信した検出信号に基づいて、第2の遮断器3bの各相の主接点31Ub〜31Wbに対して投入指令を出力する。これにより、第2の遮断器3bは投入される。
【0024】
図1〜
図4を参照して、励磁突入電流抑制装置9a,9bの構成について説明する。
【0025】
図2〜
図4は、第1の遮断器3aによる変圧器7の遮断から電源投入までの状態を示している。
図2は、変圧器7の相電圧Vu,Vv,Vwを示す波形図である。
図3は、変圧器7の鉄心の残留磁束φZu,φZv,φZwを示す波形図である。
図4は、第1の遮断器3aを流れる遮断器電流Iu,Iv,Iwを示す波形図である。時刻t0は、変圧器7の遮断時点(遮断器3の開放時点)を示している。
【0026】
まず、第1の励磁突入電流抑制装置9aの構成について説明する。
【0027】
第1の励磁突入電流抑制装置9aは、電源電圧計測部901aと、変圧器電圧計測部902aと、残留磁束算出部903aと、変圧器遮断検出部904aと、位相検出部905aと、投入指令出力部906aとを備えている。
【0028】
電源電圧計測部901aは、第1の電源電圧検出器5Ua,5Va,5Waにより検出された検出信号に基づいて、第1の電源母線2aの各相電圧V1u,V1v,V1wを計測する。電源電圧計測部901aは、計測した各相電圧V1u〜V1wを位相検出部905aに出力する。
【0029】
変圧器電圧計測部902aは、変圧器端子電圧検出器8U〜8Wにより検出された検出信号に基づいて、変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを計測する。変圧器電圧計測部902aは、計測した変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを残留磁束算出部903aに出力する。
【0030】
変圧器遮断検出部904aは、第1の遮断器3aの補助接点32Ua〜32Wa及び第2の遮断器3bの補助接点32Ub〜32Wbからそれぞれ出力された補助接点信号を受信する。変圧器遮断検出部904aは、入力された第1の遮断器3a及び第2の遮断器3bのそれぞれの補助接点信号に基づいて、変圧器7が電源(第1の電源母線2a及び第2の電源母線2b)から遮断されたことを検出する。具体的には、変圧器遮断検出部904aは、第1の遮断器3a及び第2の遮断器3bの補助接点信号が共に、開放状態を示した場合に、変圧器7が遮断されたと判断する。変圧器遮断検出部904aは、変圧器7の遮断を検出すると、残留磁束算出部903aに検出信号を出力する。
【0031】
なお、変圧器遮断検出部904aは、第1の遮断器3a又は第2の遮断器3bの補助接点信号と変圧器7の相電圧Vu〜Vwに基づいて、変圧器7の遮断を検出してもよい。例えば、第1の遮断器3a(又は、第2の遮断器3b)の補助接点信号が投入状態から開放状態を示すように変わり、かつ変圧器7の相電圧Vu〜Vwが略零になった場合に、変圧器7が遮断されたと判断してもよい。
【0032】
残留磁束算出部903aは、変圧器電圧計測部902aにより計測された相電圧Vu〜Vwに基づいて、第1の遮断器3aによる変圧器7の遮断後のU相、V相、及びW相の各相電圧Vu〜Vwをそれぞれ積分する。残留磁束算出部903aは、変圧器遮断検出部904aにより変圧器7の遮断(第1の遮断器3aの開放又は第2の遮断器3bの開放)を検出した時点の各相電圧Vu〜Vwの積分値を確定する。残留磁束算出部903aは、この確定された積分値を変圧器7の鉄心の残留磁束(1次側相磁束)φZu,φZv,φZwとする。残留磁束算出部903aは、演算した残留磁束φZu〜φZwを位相検出部905aに出力する。
【0033】
位相検出部905aには、残留磁束算出部903aにより演算された各相の残留磁束φZu〜φZw及び電源電圧計測部901aにより計測された第1の電源母線2aの各相電圧V1u〜V1wが入力される。位相検出部905aは、各相の残留磁束φZu〜φZwのうち絶対値が最大の相又は絶対値が最小の相を着目相として検出する。なお、位相検出部905aは、絶対値が最大の相又は絶対値が最小の相のいずれか一方を常に着目相としてよい。
【0034】
絶対値が最大の相を着目相とした場合、位相検出部905aは、検出された第1の電源母線2aの相電圧V1u〜V1wのうち着目相の電圧が、着目相の残留磁束の極性と同極性から逆極性に変化する零点の位相を投入目標位相θc1として検出する。一方、絶対値が最小の相を着目相とした場合、位相検出部905aは、検出された第1の電源母線2aの相電圧V1u〜V1wのうち着目相の電圧が波高値となる位相を投入目標位相θc1として検出する。位相検出部905aは、検出した着目相及び投入目標位相θc1を投入指令出力部906aに出力する。
【0035】
ここで、投入目標位相θc1を上述のように決定する理由について説明する。
【0036】
着目相を絶対値が最大の残留磁束の相とした場合、着目相の残留磁束は、波高値に近い値になる。また、電圧を積分した定常磁束は、電圧よりも90度遅れる。従って、着目相の電圧が、着目相の残留磁束の極性と同極性から逆極性に変化する零点となる位相で、第1の遮断器3aを投入することで、着目相の残留磁束と定常磁束がともに波高値近傍に近い値になる。即ち、着目相の残留磁束と定常磁束の差が少なくなる。このため、着目相の励磁突入電流が抑制される。
【0037】
着目相を絶対値が最小の残留磁束の相とした場合、着目相の残留磁束は、零点に近い値になる。従って、着目相の電圧が、波高値となる位相で、第1の遮断器3aを投入することで、着目相の残留磁束と定常磁束がともに零点近傍に近い値になる。即ち、着目相の残留磁束と定常磁束の差が少なくなる。このため、着目相の励磁突入電流が抑制される。
【0038】
第1の遮断器3aを投入すると、変圧器7が電源投入される場合(例えば、第2の遮断器3bの補助接点信号が開放状態を示しているときに、第1の遮断器3aを投入する場合)、投入指令出力部906aは、位相検出部905aで検出された投入目標位相θc1で第1の遮断器3aの着目相のみを投入する。第1の遮断器3aの着目相を投入後、投入指令出力部906aは、着目相以外の残りの2相を投入目標位相θc2で投入する。投入目標位相θc2は、着目相の投入目標位相θc1から予め設定された時間経過後の着目相の相電圧零点の位相である。着目相以外の残りの2相が投入目標位相θc2で投入されることで、これら2相の投入時により生じる励磁突入電流も抑制される。
【0039】
変圧器7が既に電源投入されている場合(例えば、第2の遮断器3bの補助接点信号が投入状態を示しているときに、第2の遮断器3bを投入する場合)、投入指令出力部906aは、第1の電源母線2aと第2の電源母線2bが同期した状態で、第1の遮断器3aを投入する。この場合、投入指令出力部906aは、どのように第1の遮断器3aの各相を投入してもよい。
【0040】
投入指令出力部906aは、投入目標位相θc1,θc2に基づいて、第1の遮断器3aの投入する相の主接点を駆動する操作機構に対して投入指令を出力する。これにより、第1の遮断器3aの投入する相の主接点が投入される。
【0041】
着目相を絶対値が最大の残留磁束の相とした場合、
図3では、U相の残留磁束φZuの絶対値が最も大きいため、着目相は、U相となる。第1の遮断器3aの着目相を投入目標位相θc1で投入し、第1の遮断器3aの残りの2相を投入目標位相θc2で投入することで、
図4に示すように、各相の遮断器電流(励磁突入電流)Iu,Iv,Iwが定格電流よりも小さい数十アンペア程度に抑制される。
【0042】
次に、第2の励磁突入電流抑制装置9bの構成について説明する。第2の励磁突入電流抑制装置9bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aと同様に構成されているため、異なる部分について主に説明する。
【0043】
第2の励磁突入電流抑制装置9bは、電源電圧計測部901bと、変圧器電圧計測部902bと、残留磁束算出部903bと、変圧器遮断検出部904bと、位相検出部905bと、投入指令出力部906bとを備えている。
【0044】
電源電圧計測部901bは、第2の電源電圧検出器5Ub,5Vb,5Wbにより検出された検出信号に基づいて、第2の電源母線2bの各相電圧V2u,V2v,V2wを計測する。電源電圧計測部901bは、計測した各相電圧V2u〜V2wを位相検出部905bに出力する。
【0045】
変圧器電圧計測部902bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの変圧器電圧計測部902aと同様に、変圧器端子電圧検出器8U〜8Wにより検出された検出信号に基づいて、変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを計測する。変圧器電圧計測部902bは、計測した変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを残留磁束算出部903bに出力する。
【0046】
変圧器遮断検出部904bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの変圧器遮断検出部904aと同様に、第1の遮断器3aの補助接点32Ua〜32Wa及び第2の遮断器3bの補助接点32Ub〜32Wbからそれぞれ出力された補助接点信号に基づいて、変圧器7の遮断を検出する。変圧器遮断検出部904bは、変圧器7の遮断を検出すると、残留磁束算出部903bに検出信号を出力する。
【0047】
残留磁束算出部903bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの残留磁束算出部903aと同様に、変圧器電圧計測部902bにより計測された相電圧Vu〜Vwに基づいて、変圧器7の鉄心の残留磁束φZu〜φZwを演算する。残留磁束算出部903bは、演算した残留磁束φZu〜φZwを位相検出部905bに出力する。
【0048】
位相検出部905bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの位相検出部905aと同様に、残留磁束φZu〜φZwに基づいて、着目相及び投入目標位相θc1を検出する。位相検出部905bは、検出した着目相及び投入目標位相θc1を投入指令出力部906bに出力する。
【0049】
第2の遮断器3bを投入すると、変圧器7が電源投入される場合(例えば、第1の遮断器3aの補助接点信号が開放状態を示しているときに、第2の遮断器3bを投入する場合)、投入指令出力部906bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの投入指令出力部906aと同様に、位相検出部905bで検出された投入目標位相θc1で第2の遮断器3bの着目相を投入し、予め設定された時間経過後の投入目標位相θc2で第2の遮断器3bの着目相以外の残りの2相を投入する。
【0050】
これにより、第2の励磁突入電流抑制装置9bで第2の遮断器3bを投入する場合も、第1の励磁突入電流抑制装置9aと同様に、変圧器7の励磁突入電流が抑制される。
【0051】
変圧器7が既に電源投入されている場合(例えば、第1の遮断器3aの補助接点信号が投入状態を示しているときに、第2の遮断器3bを投入する場合)、投入指令出力部906bは、第1の励磁突入電流抑制装置9aの投入指令出力部906aと同様に、第2の遮断器3bを投入する。
【0052】
本実施形態によれば、2つの遮断器3a,3bにより変圧器7を電源投入する系統構成でも、遮断器3a,3bが開放された順序に関係なく、2つの遮断器3a,3b毎に設けられた励磁突入電流抑制装置9a,9bで残留磁束φZu〜φZwを演算することができる。これにより、励磁突入電流抑制装置9a,9bは、どちらの遮断器3a,3bで変圧器7が遮断された場合でも、電源投入する際に生じる変圧器7の励磁突入電流を抑制することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1Aの構成を示す構成図である。
【0054】
励磁突入電流抑制システム1Aは、
図1に示す第1の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1において、2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bをそれぞれ2つの励磁突入電流抑制装置9aA,9bAに代えたものである。2つの励磁突入電流抑制装置9aA,9bAは、データを伝送するための伝送路で接続されている。その他の点は、第1の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1と同様の構成である。
【0055】
第1の励磁突入電流抑制装置9aAは、
図1に示す第1の励磁突入電流抑制装置9aにおいて、残留磁束算出部903a、変圧器遮断検出部904a及び位相検出部905aをそれぞれ残留磁束算出部903aA、変圧器遮断検出部904aA及び位相検出部905aAに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9aと同様の構成である。
【0056】
第2の励磁突入電流抑制装置9bAは、
図1に示す第2の励磁突入電流抑制装置9bにおいて、残留磁束算出部903b、変圧器遮断検出部904b及び位相検出部905bをそれぞれ残留磁束算出部903bA、変圧器遮断検出部904bA及び位相検出部905bAに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係る第2の励磁突入電流抑制装置9bと同様の構成である。
【0057】
第1の励磁突入電流抑制装置9aAの変圧器遮断検出部904aAは、第1の遮断器3aの補助接点32Ua〜32Waから出力された補助接点信号を受信する。変圧器遮断検出部904aAは、入力された第1の遮断器3aの補助接点信号に基づいて、変圧器7が電源から遮断されたことを検出する。具体的には、変圧器遮断検出部904aAは、第1の遮断器3aの補助接点信号が投入状態から開放状態を示すように変わった場合に、変圧器7の遮断を検出する。このとき、第2の遮断器3bが投入されていて、実際には、変圧器7が電源から遮断されていない場合でも、変圧器7の遮断として検出してよい。なお、変圧器7が実際に電源から遮断された場合のみ、変圧器7の遮断として検出するようにしてもよい。変圧器遮断検出部904aAは、変圧器7の遮断を検出すると、残留磁束算出部903aAに検出信号を出力する。
【0058】
第2の励磁突入電流抑制装置9bAの変圧器遮断検出部904bAは、第2の遮断器3bの補助接点32Ub〜32Wbから出力された補助接点信号を受信する。変圧器遮断検出部904bAは、第1の励磁突入電流抑制装置9aAの変圧器遮断検出部904aAと同様に、変圧器7の遮断を検出する。具体的には、変圧器遮断検出部904bAは、第2の遮断器3bの補助接点信号が投入状態から開放状態を示すように変わった場合に、変圧器7の遮断を検出する。変圧器遮断検出部904bAは、変圧器7の遮断を検出すると、残留磁束算出部903bAに検出信号を出力する。
【0059】
第1の励磁突入電流抑制装置9aAの残留磁束算出部903aAは、変圧器電圧計測部902aにより計測された相電圧Vu〜Vwに基づいて、第1の遮断器3aによる変圧器7の遮断後の各相電圧Vu〜Vwをそれぞれ積分する。変圧器遮断検出部904aAにより変圧器7の遮断を検出した時点で、相電圧Vu〜Vwが略零になった場合(即ち、変圧器7が実際に遮断された場合)、残留磁束算出部903aAは、変圧器7の各相電圧Vu〜Vwの積分値を確定する。残留磁束算出部903aAは、変圧器遮断検出部904aAにより変圧器7の遮断を検出した時点で、相電圧Vu〜Vwが略零にならなかった場合(即ち、変圧器7が実際に遮断されていない場合)、各相電圧Vu〜Vwの積分値を確定しない。残留磁束算出部903aAは、この確定された積分値を変圧器7の鉄心の残留磁束φZu〜φZwとして、位相検出部905aA及び第2の励磁突入電流抑制装置9bAの位相検出部905bAに出力する。第2の励磁突入電流抑制装置9bAの位相検出部905bAへの出力は、伝送路を介して行われる。その他の点は、第1の実施形態に係る残留磁束算出部903aと同様の構成である。
【0060】
第2の励磁突入電流抑制装置9bAの残留磁束算出部903bAは、第1の励磁突入電流抑制装置9aAの残留磁束算出部903aAと同様に、変圧器7の鉄心の残留磁束φZu〜φZwを確定する。残留磁束算出部903bAは、確定した残留磁束φZu〜φZwを位相検出部905bA及び第1の励磁突入電流抑制装置9aAの位相検出部905aAに出力する。第1の励磁突入電流抑制装置9aAの位相検出部905aAへの出力は、伝送路を介して行われる。
【0061】
第1の励磁突入電流抑制装置9aAの位相検出部905aAには、残留磁束算出部903aA又は第2の励磁突入電流抑制装置9bAの残留磁束算出部903bAのいずれか一方から確定された残留磁束φZu〜φZwが入力される。位相検出部905aAは、入力された残留磁束φZu〜φZw及び電源電圧計測部901aにより計測された第1の電源母線2aの各相電圧V1u〜V1wに基づいて、第1の実施形態に係る位相検出部905aと同様に、着目相及び投入目標位相θc1を検出する。位相検出部905aAは、検出した着目相及び投入目標位相θc1を投入指令出力部906aに出力する。その他の点は、第1の実施形態に係る位相検出部905aと同様の構成である。
【0062】
第2の励磁突入電流抑制装置9bAの位相検出部905bAは、第1の励磁突入電流抑制装置9aAの位相検出部905aAと同様に、着目相及び投入目標位相θc1を検出する。位相検出部905bAは、検出した着目相及び投入目標位相θc1を投入指令出力部906bに出力する。
【0063】
本実施形態によれば、2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bがそれぞれ操作対象となる遮断器3a,3bのみから補助接点信号を受信する構成で、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1Bの構成を示す構成図である。
【0065】
励磁突入電流抑制システム1Bは、
図1に示す第1の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1において、2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bを1つの励磁突入電流抑制装置9Bに代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係る励磁突入電流抑制システム1と同様の構成である。
【0066】
励磁突入電流抑制装置9Bは、2つの電源電圧計測部901a,901bと、変圧器電圧計測部902Bと、残留磁束算出部903Bと、変圧器遮断検出部904Bと、2つの位相検出部905a,905bと、2つの投入指令出力部906a,906bとを備えている。
【0067】
電源電圧計測部901aは、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9aの電源電圧計測部901aと同じである。電源電圧計測部901aは、計測した各相電圧V1u〜V1wを位相検出部905aに出力する。
【0068】
電源電圧計測部901bは、第1の実施形態に係る第2の励磁突入電流抑制装置9bの電源電圧計測部901bと同じである。電源電圧計測部901bは、計測した各相電圧V2u〜V2wを位相検出部905bに出力する。
【0069】
変圧器電圧計測部902Bは、第1の実施形態に係る2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bのそれぞれの変圧器電圧計測部902a,902bを1つにした構成である。変圧器電圧計測部902Bは、第1の実施形態に係る変圧器電圧計測部902a,902bと同様に、計測した変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを残留磁束算出部903Bに出力する。
【0070】
変圧器遮断検出部904Bは、第1の実施形態に係る2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bのそれぞれの変圧器遮断検出部904a,904bを1つにした構成である。変圧器遮断検出部904Bは、第1の実施形態に係る変圧器遮断検出部904a,904bと同様に、第1の遮断器3a及び第2の遮断器3bのそれぞれの補助接点信号に基づいて、変圧器7の遮断を検出すると、残留磁束算出部903Bに検出信号を出力する。
【0071】
残留磁束算出部903Bは、第1の実施形態に係る2つの励磁突入電流抑制装置9a,9bのそれぞれの残留磁束算出部903a,903bを1つにした構成である。残留磁束算出部903Bは、第1の実施形態に係る残留磁束算出部903a,903bと同様に、第1の遮断器3a又は第2の遮断器3bによる変圧器7の遮断後の各相の残留磁束φZu〜φZwを演算する。残留磁束算出部903Bは、演算した残留磁束φZu〜φZwを2つの位相検出部905a,905bに出力する。
【0072】
位相検出部905aは、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9aの位相検出部905aと同じである。位相検出部905aは、残留磁束算出部903Bにより演算された各相の残留磁束φZu〜φZw及び電源電圧計測部901aにより計測された第1の電源母線2aの各相電圧V1u〜V1wに基づいて、第1の遮断器3aを投入するための着目相及び投入目標位相θc1を検出する。
【0073】
位相検出部905bは、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9bの位相検出部905bと同じである。位相検出部905bは、残留磁束算出部903Bにより演算された各相の残留磁束φZu〜φZw及び電源電圧計測部901bにより計測された第2の電源母線2bの各相電圧V2u〜V2wに基づいて、第2の遮断器3bを投入するための着目相及び投入目標位相θc1を検出する。
【0074】
投入指令出力部906aは、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9aの投入指令出力部906aと同じである。投入指令出力部906aは、第1の実施形態で説明したように、変圧器7を電源投入する場合は、位相検出部905aにより検出された着目相及び投入目標位相θc1に基づいて、第1の遮断器3aを2段階で投入する。
【0075】
投入指令出力部906bは、第1の実施形態に係る第1の励磁突入電流抑制装置9bの投入指令出力部906bと同じである。投入指令出力部906bは、第1の実施形態で説明したように、変圧器7を電源投入する場合は、位相検出部905bにより検出された着目相及び投入目標位相θc1に基づいて、第2の遮断器3bを2段階で投入する。
【0076】
本実施形態によれば、第1の実施形態に係る2つの励磁突入電流抑制装9a,9bの代わりに、1つの励磁突入電流抑制装置9Bを設けることで、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0077】
なお、各実施形態において、励磁突入電流抑制装置9a,9b,9aA,9bA,9Bでの位相制御における各種パラメータは、より精度を高めるため等により補正をしてもよい。例えば、遮断器3a,3bの投入では、主接点間に発生するプレアークと呼ばれる先行放電や、操作機構の動作ばらつきなどに起因する投入時間のばらつきが存在する。このプレアークによる投入ばらつきや、遮断器投入時のばらつきは、予めその特性を取得しておくことにより、位相制御を行う際にこの特性による補正をすることができる。このような補正をすることで、これらのばらつきがあっても、励磁突入電流をより確実に抑制することができる。
【0078】
各実施形態では、一般的な1−1/2母線構成の電力系統で説明したが、これに限らない。変圧器7を、2つ以上の遮断器により、2つ以上の電源(電源母線2a,2b)に投入されるような電力系統であれば、どのような電力系統でもよい。例えば、各実施形態では、第3の遮断器3cは無くてもよい。
【0079】
各実施形態では、電源電圧検出器5Ua〜5Wa,5Ub〜5Wbで、電源母線2a,2bの各相電圧V1u〜V1w,V2u〜V2wを計測したが、電源母線2a,2bの各線間電圧を計測して、線間電圧から相電圧Vu〜Vwに変換してもよい。同様に、変圧器端子電圧検出器8U〜8Wで、変圧器7の1次側の相電圧Vu〜Vwを計測したが、これに限らない。変圧器7の相電圧Vu〜Vwは、二次巻線702の相電圧でもよいし、Δ結線の三次巻線703の線間電圧から相電圧に変換したものでもよい。
【0080】
各実施形態において、変圧器7は、三相交流電圧を三相交流電圧に変換する三相変圧器であれば、どのようなものでもよい。従って、変圧器7は、3巻線に限らず、2巻線でもよいし、4以上の巻線を有していてもよい。また、各巻線の結線は、Y結線又はΔ結線のどちらでもよいし、それらをどのように組合せてもよい。
【0081】
各実施形態において、結果が同じになるのであれば、演算の順序や演算をさせる場所は適宜変更してもよい。演算をさせる場所は、励磁突入電流抑制装置9a,9b,9aA,9bA,9Bの内部や外部を問わず、各種検出器等で演算をさせてもよい。
【0082】
各実施形態において、各励磁突入電流抑制システム1〜1Bは、1つ又は2つの励磁突入電流抑制装置9a,9b,9aA,9bA,9Bで構成したが、いくつの励磁突入電流抑制装置で構成してもよい。
【0083】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。