(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に、以下に説明する実施例の特徴を列記する。なお、ここに列記する特徴は、何れも独立して有効なものである。
【0010】
(特徴1)セラミックス基板と流動性の樹脂の間の接触角が、溝の底を構成する部材と流動性の樹脂の間の接触角よりも小さい。なお、接触角とは、固体と液体の接する部位から液体の曲面に接線を引いたとき、その接線と固体表面のなす角度をいう。接触角が小さいことは液体が固体表面に対してなじみ易い(濡れ性が高い)ことを意味し、接触角が小さいほど固体表面に液体は速く濡れ広がる。接触角が大きくなると液体が固体表面に濡れ広がる速度が遅くなり、さらに接触角が大きくなると濡れ広がらなくなり、液体は固体表面からはじかれるようになる(濡れ性が低い)。
【0011】
特徴1によれば、流動性の樹脂はセラミックス基板の側面で濡れ性が高く、溝の底面では濡れ性が低いため、樹脂塗布工程において、濡れ性の高いセラミックス基板の側面に樹脂が残り易い。このため、セラミックス基板の側面に厚い樹脂層を形成し易い。
【0012】
(特徴2)セラミックス基板の上面に樹脂層を形成する上面樹脂層形成工程と、樹脂硬化工程後及び上面樹脂層形成工程後に、溝を覆うようにマスクを配置した状態で、セラミックス基板の上面の樹脂層に対してドライエッチングを行う上面エッチング工程をさらに有する。なお、本明細書において、「上」とは、支持板からセラミックス基板に向かう方向を意味する。したがって、上記の「セラミックス基板の上面」とは、支持板とは反対側のセラミックス基板の表面を意味する。また、上記の上面樹脂層形成工程は、いつ実行してもよく、セラミックス基板を支持板に固定する前に行ってもよい。この場合、上面樹脂層形成工程で樹脂層が形成された表面が上面となるように、セラミックス基板が支持板に固定される。
【0013】
特徴2によれば、上面にも樹脂層が形成されているセラミックス素子を製造することができる。また、上面エッチング工程では、電気的接続を得る目的等によって、上面の樹脂層を部分的に除去する。これによって、溝の周辺の樹脂層を保護しながら、上面の樹脂層をエッチングすることができる。
【0014】
(特徴3)固定工程前に、セラミックス基板の下面に樹脂層を形成する下面樹脂層形成工程と、分離工程後に、セラミックス基板の下面の樹脂層の外周部に対して、セラミックス基板が露出しない程度にドライエッチングを行う下面エッチング工程をさらに有する。
【0015】
特徴3によれば、下面にも樹脂層が形成されているセラミックス素子を製造することができる。また、セラミックス基板の下面に樹脂層が形成されていると、溝形成工程において、下面の樹脂層の外周部が下側に引っ張られて、その外周部に凸部(下側に向かって突出するバリ状の部分)が形成される。分離工程後に、その外周部をドライエッチングすることで、凸部を除去することができる。なお、セラミックス基板の下面の樹脂層の外周部に対するドライエッチングは、セラミックス基板の下面の樹脂層全体に対するドライエッチングであってもよい。
【0016】
(特徴4)樹脂塗布工程後に、セラミックス基板の上面に樹脂層を形成する工程をさらに有する。
【0017】
特徴4によれば、溝の上端部近傍においてセラミックス基板の側面の樹脂層と重なるようにセラミックス基板の上面の樹脂層を形成することができる。これによって、溝の上端部近傍の樹脂層の厚みを確保することができる。
【0018】
(特徴5)固定工程において、セラミックス基板及び支持板よりも柔らかい接続層を介してセラミックス基板を支持板に固定する。溝形成工程において、溝の底が支持板により構成されるように溝を形成する。
【0019】
このように支持板に達するように溝を形成することで、溝をよりきれいに形成することができる。
【0020】
但し、特徴5に代えて、溝形成工程において、溝の底が接続層により構成されるように溝を形成する実施例も存在する。
【0021】
(特徴6)分離工程では、エッチングによって接続層を除去する。
【0022】
特徴6によれば、容易にセラミックス基板を支持板から分離することができる。
【0023】
(特徴7)樹脂塗布工程では、光(例えば、特定の波長の光)を受けると変質する樹脂を塗布する。樹脂の乾燥後に、溝の内部のうち、セラミックス基板の側面の樹脂に光を当てずに接続層の側面の樹脂層に光を当てるか、若しくは、セラミックス基板の側面の樹脂に光を当てて接続層の側面の樹脂層に光を当てない光照射工程と、光照射後の樹脂乾燥膜に対して、接続層の側面の樹脂層を除去するエッチング工程を有する。樹脂硬化工程では、エッチングされた樹脂乾燥膜を加熱硬化させる。分離工程では、接続層を溶解するエッチング液を溝の内部に進入させることによって、溝の内部の接続層の側面から接続層を溶解する。なお、光照射工程及び加熱硬化工程は、上面樹脂層形成工程前に実施することが好ましい。
【0024】
特徴7の構成では、光照射工程において、セラミックス基板の側面の樹脂層と接続層の側面の樹脂層との何れか一方に光を照射して、これら樹脂層の特性を異ならせる。この工程は、例えば、所定のマスク越しに樹脂層に光を照射することで実施することができる。なお、接続層の側面の樹脂層は、その後に選択的に除去してもよいし、若しくは、接続層の側面の樹脂層が液体を透過できる場合(例えば、接続層の側面の樹脂層の厚みが薄く、クラックが入っている場合等)には、接続層の側面の樹脂層を残存させておいてもよい。また、ネガ型(光を受けることでエッチング液に対する溶解速度が遅くなる型)の樹脂層を用いる場合には、セラミックス基板の側面の樹脂層に光を照射し、ポジ型(光を受けることでエッチング液に対する溶解速度が速くなる型)の樹脂層を用いる場合には、接続層の側面の樹脂層に光を照射することができる。接続層除去工程では、溶解液を溝の内部に浸入させる。接続層の側面の樹脂層は除去されているか、液体を透過するようになっているので、溝の内側から接続層を溶解させることができる。
【0025】
(特徴8)支持板が透光性材料により構成されている。光照射工程では、支持板の下面に向けて光を照射することで、溝の内部のうち、支持板の表面の樹脂と接続層の側面の樹脂を変質させる。
【0026】
このような構成によれば、セラミックス素子(溝により分離されたセラミックス基板)自身がマスクとなってセラミックス素子の側面の樹脂層に光が当たることが防止される。したがって、高い位置精度で、セラミックス素子の側面の樹脂層に光を当てずに、支持板の表面の樹脂と接続層の側面の樹脂に光を照射することが可能となる。
【0027】
上記の特徴7、8の代わりに、以下の特徴9を有する実施例も存在する。
【0028】
(特徴9)支持板が多孔質材料により構成されている。分離工程では、接続層を溶解するエッチング液を、支持板の下面から支持板内部の空孔を通して接続層に到達させることで、接続層を溶解する。
【0029】
特徴9によれば、犠牲層を容易に溶解除去して、セラミックス基板を支持板から分離することができる。
【0030】
(特徴10)固定工程前に、支持板の上面に熱可塑性あるいは熱硬化性の接着シートを接着させる工程と、固定工程前に、セラミックス基板の下面に接続層を形成する工程をさらに有する。固定工程では、接続層と接着シートとが接触するようにセラミックス基板を固定する。
【0031】
特徴10によれば、セラミックス基板を支持板に好適に固定することができる。
【0032】
以下に説明する実施例の製造方法では、薄いシート状に成形されたセラミックス基板を細かく切断し、少なくとも切断面を樹脂で覆うことで、圧電素子等に用いられるセラミックス素子を製造する。実施例の製造方法は、厚さが5〜150μmである薄いセラミックス基板を切断することによって、小型(例えば、2.0mm×2.0mmの正方形や、0.2mm×0.8mmの長方形)のセラミックス素子を製造するのに適している。
【実施例1】
【0033】
実施例1の製造方法では、
図1に示すセラミックス基板10からセラミックス素子を製造する。
図1に示すように、セラミックス基板10は、セラミックス層10aと、セラミックス層10aの上面全体に形成されている電極10bと、セラミックス層10aの下面全体に形成されている電極10cを有する。
【0034】
図2は、実施例1の製造方法を示すフローチャートである。ステップS2では、セラミックス基板10の下面にポリイミド樹脂を塗布する。そして、セラミックス基板を加熱することで、塗布したポリイミド樹脂を硬化させる。これによって、
図3に示すように、セラミックス基板10の下面に樹脂層14を形成する。ここでは、5μm以下の厚さを有する樹脂層14を形成する。
【0035】
図4の参照番号20は、セラミックス基板10とは別に準備されている補強板を示している。補強板20は、セラミックス基板10に対して加工を行う際に、セラミックス基板10を支持するための支持板である。補強板20は、適切に切削加工ができる程度の硬さを有する。
【0036】
ステップS4では、補強板20の上面に樹脂を塗布することで、
図4に示すように、犠牲層30を形成する。ここでは、0.5〜10μmの厚さを有する犠牲層30を形成する。なお、この段階では、犠牲層30は粘性を有している。また、犠牲層30は、熱硬化性の樹脂である。
【0037】
ステップS6では、
図5に示すように、樹脂層14が犠牲層30と接するようにして、セラミックス基板10を補強板20に貼り付ける。これによって、補強板20とセラミックス基板10を備える積層基板60を形成する。なお、補強板20はセラミックス基板10よりもサイズが大きい。ここでは、
図6に示すように、補強板20の略中央にセラミックス基板10を貼り付ける。次に、積層基板60を加熱することで、犠牲層30を硬化させる。これによって、セラミックス基板10を補強板20に固着させる。このように、犠牲層30は、セラミックス基板10と補強板20とを接続する接続層として機能する。犠牲層30は、セラミックス基板10及び補強板20よりも柔らかい。なお、犠牲層30を硬化させる際に、犠牲層30からガスが生じる場合がある。このガスの圧力によりセラミックス基板10に変形等が生じる場合には、後述する実施例3〜5に示す方法を用いてもよい。
【0038】
ステップS8では、積層基板60をダイシングすることによって、
図7、8に示すように、積層基板60の上面に格子状の溝40を形成する。ここでは、セラミックス基板10の上面から、セラミックス基板10と犠牲層30を貫通して補強板20に達するように溝40を形成する。また、溝40は、
図7に示すように、補強板20の端面20aに達するように(すなわち、溝40の端部40aが端面20aに現れるように)形成する。溝40を形成することによって、
図8に示すように、セラミックス基板10が複数のセラミックス素子62に分割される。
図9は、ダイシング時における積層基板60のダイシングラインに沿った縦断面を示している。図示するように、ダイシング時には、ダイシングブレード80が回転しながら矢印93に示す方向に移動することで、積層基板60が切削される。本実施例では、補強板20に達する溝40を形成するので、ダイシングブレード80の下端は補強板20内に位置している。このように積層基板60を切削すると、犠牲層30を切削している部分において、ダイシングブレード80の外周端の刃の移動方向94(周方向への移動方向)が、ダイシングブレード80自体の移動方向93に対して平行とならない。したがって、犠牲層30を好適に切削することができる。また、補強板20を切削している部分においては、ダイシングブレード80の外周端の刃の移動方向96が、ダイシングブレード80自体の移動方向93に対して平行となる。しかしながら、補強板20は、犠牲層30よりも硬く、切削に適した硬さを有しているので、補強板20の切削面が荒れた状態となることが抑制される。また、補強板20を切削する際には、ダイシングブレード80の刃がドレスされる。これによって、ダイシングブレード80の刃に樹脂(犠牲層30の切削屑等)が目詰まりすることが抑制される。このため、ダイシングブレード80の切削力の低下が抑制される。さらに、硬い補強板20に達するように溝40を形成すると、ダイシングブレード80の振れが低減されるため、セラミックス基板10の表面におけるチッピングの発生を抑えることも出来る。したがって、ステップS8では、従来よりも滑らかな内面を有する溝40を形成することができる。なお、樹脂層14及び犠牲層30は、何れも、ダイシング時に用いられる研削液で劣化しない樹脂により構成されている。また、このように溝40を形成すると、ダイシングソーの振れの影響で、溝40の側面が若干傾斜する。すなわち、溝40は、上側ほど幅が広がるテーパ形状となる。ここでは、側面のテーパ角度(
図8の角度θ)が1.5°以上であり、上端部の幅が0.01〜0.15mmである溝を形成する。
【0039】
図10は、ダイシング後の樹脂層14の切断面(すなわち、溝40の側面)近傍の拡大断面図である。ダイシング時には、樹脂層14がダイシングブレード80に引っ張られる。このため、切断面近傍の樹脂層14に、下側にわずかに突出する突出部14a(いわゆる、バリ)が形成される。
【0040】
ステップS10では、最初に、溝40の内部に流動性のポリイミド樹脂を充填する。次に、所定の回転装置を使用して、積層基板60を回転させる。ここでは、
図11に示すように、積層基板60の上面と略平行に伸びており、積層基板60の上面よりも上側(積層基板60の上面に対向する位置)に配置されている回転軸70の回りに積層基板60を回転させる。このように積層基板60を回転させると、遠心力が溝40内のポリイミド樹脂に対して溝40の底方向に向かって作用する。このため、
図12の矢印に示すように、溝40の側面のポリイミド樹脂16が溝40の底に向かって流れる。また、溝40の底においては、ポリイミド樹脂16は溝の底面に沿って積層基板60と平行な方向に流れる。そして、ポリイミド樹脂16は、
図7の矢印に示すように、溝40の端部40aから外部に排出される。
【0041】
このように積層基板60を回転させると、セラミックス基板10の側面全体においてポリイミド樹脂16が略均一に溝40の底部に向かって流れる。このため、回転処理の完了後に、
図13に示すように、セラミックス素子62の側面全体に略均一な厚みの樹脂層16が形成される。なお、条件によっては溝40の底部にポリイミド樹脂が溜まり易い場合があるが、セラミックス基板10は溝40の底から離れているため、底に溜まったポリイミド樹脂の影響を受けることがない。溝40の内部のうち、少なくともセラミックス素子62の側面には、均一な厚みの樹脂層16が形成される。
【0042】
また、ポリイミド樹脂に対する接触角は、セラミックス基板10と犠牲層30において小さく、補強板20において大きい。まず、接触角について詳しく説明する。接触角とは、固体と液体の接する部位から液体の曲面に接線を引いたとき、その接線と固体表面のなす角度をいう。接触角は、固体材料と液体材料によって決まる特性値であり、液体が固体に対してはじかれ易いか、なじみ易いかを示す指標である。各材料の接触角は、以下のように測定することができる。最初に、各材料(すなわち、セラミックス基板10、犠牲層30、及び、補強板20の材料)を板状に成形した試料を用意する。試料は、積層基板60と略同じ温度プロファイルを経たものである。次に、
図14に示すように、試料91の平坦な表面上に、ポリイミド樹脂90を滴下する。そして、ポリイミド樹脂90と試料91との接触部位におけるポリイミド樹脂90の曲面の接線92と、試料91の表面との間の角度θ1を測定する。得られた角度θ1が接触角である。
【0043】
本実施例では、セラミックス基板10のポリイミド樹脂に対する接触角は15度以下であり、犠牲層30のポリイミド樹脂に対する接触角も15度以下である。他方、補強板20のポリイミド樹脂に対する接触角は30度以上である。すなわち、セラミックス基板10と犠牲層30はポリイミド樹脂が濡れ広がり易く、補強板20はセラミックス基板10と犠牲層30よりもポリイミド樹脂が濡れ広がり難い。このように構成されていると、回転処理においてセラミックス素子62の側面から溝の底に向かって流れるポリイミド樹脂の量がある程度抑えられて、セラミックス素子62の側面に厚く樹脂層16を形成することができる。また、犠牲層30と補強板20の間で接触角が異なるため、犠牲層30の側面の補強板20近傍の領域で、ポリイミド樹脂の厚みが薄くなる。この領域の一部には、後述するポリイミド樹脂の乾燥、硬化によって犠牲層30の露出部が出来る。
【0044】
回転処理によって
図13に示すように溝40の内面に樹脂層16を形成したら、積層基板60を加熱する。これによって、樹脂層16を乾燥させて、硬化させる。なお、
図15は、ステップS10完了後の溝40の上端近傍の拡大図を示している。
図15に示すように、溝40の上端近傍では、樹脂層16が僅かに薄くなる。
【0045】
ステップS12では、スプレーによって積層基板60の上面にポリイミド樹脂を吹き付けることで、
図16に示すように、積層基板60の上面に樹脂層12を形成する。その後、積層基板60を加熱することで、樹脂層12を乾燥、硬化させる。なお、
図17は、ステップS12完了後の溝40の上端近傍の拡大図を示している。
図17に示すように、ステップS12を実施すると、溝40の上端近傍において樹脂層16上を覆うように樹脂層12が形成される。これによって、溝40の上端近傍(セラミックス素子62の角部62a)において、樹脂層の厚みを確保することができる。なお、スプレー塗布時の気流の影響で、スプレーされた樹脂が溝側面全体に塗布されることはない。
【0046】
ステップS14では、積層基板60の上面に形成した樹脂層12を部分的にエッチングすることで、電極10bに対するコンタクトホールを形成する。ステップS14では、最初に、
図18に示すように、積層基板60上に溝40を覆うようにしてマスクプレート72を設置する。なお、マスクプレート72は、溝40と同様に格子状に形成されている。したがって、マスクプレート72によってセラミックス基板10に形成されている全ての溝40を覆うことができる。各セラミックス素子62の中央部には、マスクプレート72の開口部が配置される。なお、マスクプレート72は、積層基板60上に載置されているだけであってもよいし、治具等によって積層基板60に対して固定されてもよい。次に、積層基板60の上面に対して、プラズマエッチング(ドライエッチングの一種)を行う。プラズマエッチングによってマスクプレート72の開口部内の樹脂層12をエッチングし、
図19に示すように、セラミックス素子62の中央部の樹脂層12を除去する。これによって、コンタクトホール74を形成し、電極10bをセラミックス素子62の上面に露出させる。この方法によれば、溝40内の樹脂層16及び溝40の上端近傍の樹脂層12がエッチングされることを防止しながら、コンタクトホール74を形成することができる。
【0047】
なお、ステップS14において、発明者らが以前に行っていたコンタクトホール74の形成方法を以下に説明する。以前のステップS14では、樹脂層12として感光性のポリイミド樹脂を用いる。そして、コンタクトホール74を形成すべき範囲の樹脂層12に対して所定の波長の光を照射することで、
図20に示すように、その範囲の樹脂層12を変質させる。なお、
図20では、変質した樹脂層12が、参照番号12aにより示されている。次に、変質した樹脂層12aを溶かし易く、他の樹脂層を溶かし難いエッチング液によって、変質した樹脂層12aをエッチングする。これによって、コンタクトホール74を形成する。但し、このとき、変質した樹脂層12a以外の樹脂層も、エッチング液によって僅かに溶けてしまう。このため、
図21に示すように、樹脂層12、16が薄くなり、セラミックス素子62の角部62aが露出する場合があった。これに対し、上述したマスクプレート72を用いる方法では、マスクプレート72の下部の樹脂層がエッチングを受けないので、角部62aが露出する問題は生じない。
【0048】
ステップS16では、各セラミックス素子62の特性、外観について検査を行う。
【0049】
ステップS18では、まず、
図22に示すように、表面に粘着層52を有するキャリアフィルム50を積層基板60の上面に貼り付ける。なお、粘着層52は、UV照射、加熱、冷却等によって粘着力が低下する粘着層である。次に、犠牲層30を選択的に溶かすエッチング液中に積層基板60を浸漬させる。すると、エッチング液が溝40内に浸入する。本実施例では、上述したように犠牲層30の側面の一部が露出している。このため、エッチング液が、犠牲層30を側面から溶解する。ステップS18では、
図23に示すように、エッチングによって犠牲層30を完全に除去する。なお、
図23では、樹脂層16のうちの犠牲層30の側面を部分的に覆っていた部分54によって、セラミックス素子62と補強板20が接続されている。しかしながら、実際には、犠牲層30の溶解中に、補強板20の重さによって接続部分54は切断される。したがって、
図24に示すように、各セラミックス素子62が、補強板20から分離される。なお、補強板20の重さだけでは接続部分54が切断され難い場合には、超音波等の機械的振動や、加温による熱膨張差によって接続部分54を切断してもよい。
【0050】
ステップS20では、各セラミックス素子62の下面をアッシング(ドライエッチングの一種)する。これによって、各セラミックス素子62の下面に付着している未溶解の犠牲層30の残渣を除去する。また、下面に形成されている樹脂層14を僅かに除去する。これによって、セラミックス素子62の外周部に形成されている樹脂層14のバリ(
図10に示す突出部14a)を除去する。これによって、セラミックス素子62の下面が平坦化される。
【0051】
ステップS22では、ドライエッチングによって各セラミックス素子62の中央部の樹脂層14を除去して、電極10cに対するコンタクトホールを形成する。以上の工程によって、コンタクトホールを除く部分が樹脂層に覆われているセラミックス素子62が完成する。なお、S22はセラミックス基板10を補強板20に接着する前(すなわち、ステップS2の直後)に行っても良い。
【0052】
以上に説明したように、この製造方法によれば、ステップS10において、溝40内の樹脂に対して溝40の底方向に遠心力が作用するように積層基板60を回転させて、溝40内に樹脂層16を形成する。したがって、側面の樹脂層16の厚みが均一なセラミックス素子62を製造することができる。また、上記の製造方法では、セラミックス基板10と流動性のポリイミド樹脂の間の接触角が、溝の底を構成する補強板20と流動性のポリイミド樹脂の間の接触角よりも小さい。したがって、セラミックス素子62の側面の樹脂層16の厚みをより厚くすることができる。なお、セラミックス基板10とポリイミド樹脂の間の接触角が15度以下であり、補強板20とポリイミド樹脂の間の接触角が30度以上であれば、好適に樹脂層16の厚みを均一に増すことができる。また、上記の製造方法では、ステップS14において、溝40をマスクプレート72で覆った状態で樹脂層12をドライエッチングすることで、コンタクトホール74を形成する。したがって、コンタクトホール74以外の部分で、電極やセラミックス基板が露出することが防止される。また、上記の製造方法では、補強板20をセラミックス素子62から分離した後に、樹脂層14に対してセラミックス基板10が露出しない程度にドライエッチングを行う。これによって、樹脂層14の外周部に形成されている突出部14aを除去することができる。また、上記の製造方法では、溝40の内面に樹脂層16を形成した後に、セラミックス基板10の上面に樹脂層14を形成する。したがって、セラミックス素子62の角部62aを覆う樹脂層を比較的厚くすることができる。また、上記の製造方法では、溝40が堅い補強板20に達するように形成される。したがって、溝40を好適に形成することができる。
【0053】
また、上述した実施例では、ステップS12において、スプレーで塗布することによって樹脂層12を形成した。しかしながら、転写シートを用いて樹脂層12を形成してもよい。転写シートを用いる場合には、
図25に示すように転写シート86を積層基板60の上面に貼り付ける。転写シート86は、支持シート82と、支持シート82の表面に形成されている樹脂層84を有している。樹脂層84は、ポリイミド樹脂により構成されている。また、樹脂層84は、完全に硬化しておらず、粘着性を有している。
図25に示すように樹脂層84を積層基板60の上面に貼り付けたら、次に、転写シート86を積層基板60から剥がす。すると、
図26に示すように、積層基板60の上面と接触していた部分の樹脂層84のみが積層基板60上に残る。転写が完了したら、積層基板60を加熱して、樹脂層84を乾燥、硬化させる。積層基板60上に残った樹脂層84が、樹脂層12となる。
【0054】
また、上述した実施例では、ステップS12において樹脂層12を形成したが、他の工程において樹脂層12を形成してもよい。例えば、ステップS10で積層基板60を回転させる際に、スプレーによって積層基板60の上面にポリイミド樹脂を塗布してもよい。このような構成によれば、樹脂層12と樹脂層16とを同時に形成することができる。また、ステップS10よりも前(すなわち、溝40の内面に樹脂層16を形成する前)に、樹脂層12を形成してもよい。
【実施例2】
【0055】
実施例1のステップS18では、犠牲層30の側面が部分的に樹脂層16に覆われていないため、犠牲層30の側面から犠牲層30をエッチングした。しかしながら、犠牲層30の側面全体がの樹脂層16に覆われている場合や、犠牲層30のエッチング速度が遅い場合には、実施例2の方法を実施してもよい。
【0056】
図27は、実施例2の製造方法を示すフローチャートである。実施例2では、透光性を有する補強板20を使用する。また、実施例2では、溝40の内面をコートする樹脂として、感光性のポリイミド樹脂を用いる。これらの点を除いて、実施例2のステップS2〜S10は、実施例1のステップS2〜S10と同様にして実施される。
【0057】
実施例2のステップS202では、
図28の矢印に示すように、補強板20の下面に向けて、樹脂層16を変質させる波長の光を照射する。補強板20は透光性を有するので、補強板20を透過した光が、溝40の底面を覆っている樹脂層16aに当たる。また、照射された光は、犠牲層30の側面を覆っている樹脂層16bまで届く。これによって、樹脂層16a、16bが変質する。一方、セラミックス基板10の側面を覆っている部分の樹脂層16cには、光は当たらない。これは、溝40がテーパ状に形成されているので、犠牲層30がマスクとなるためである。したがって、樹脂層16cは変質しない。なお、光が当たる範囲は、照射される光の強度や溝40の形状(溝の深さや溝の側面の角度等)によって変化する。本実施例では、樹脂層16a、16bに光が当たり、それ以外の樹脂層16に光が当たらないように、光の強度や溝40の形状が調節されている。
【0058】
ステップS204では、樹脂層16のうちの変質した樹脂層16a、16bだけを選択的に溶かすことができる溶剤によって、
図29に示すように、樹脂層16a、16bを除去する。これによって、犠牲層30が溝40内に露出する。樹脂層16a、16bを除去したら、積層基板60を加熱して、残った樹脂層16cを硬化(安定化)させる。
【0059】
ステップS12〜S22は、実施例1のステップS12〜S22と同様にして実施される。犠牲層30の側面の樹脂層16bが除去されているので、ステップS18では、エッチング液が直接、犠牲層30に接触する。したがって、実施例1よりも速く犠牲層30をエッチングすることができる。
【0060】
なお、上述した実施例2では、ステップS204で変質した樹脂層16bを除去した。しかしながら、ステップS202において樹脂層16bがエッチング液を容易に透過する程度にまで劣化している場合には、ステップS204を行わなくてもよい。この場合には、劣化した樹脂層16bが存在している状態で積層基板60を加熱して、樹脂層16cを硬化(安定化)させてから、ステップS18を行う。ステップS18では、エッチング液が樹脂層16bを容易に透過するので、犠牲層30を速く溶解させることができる。
【実施例3】
【0061】
また、犠牲層30をエッチングするために、実施例3の方法を用いてもよい。実施例3の製造方法では、多孔質の補強板20を使用する。すなわち、実施例3で用いる補強板20の内部には、Φ0.08mm以下の多数の空孔が形成されている。補強板20の気孔率は、20〜50%である。空孔は互いに繋がっており、これらの空孔を通って補強板20の上面から下面に流体が流れることができる。多孔質の補強板20を用いる点以外については、実施例3の製造方法は、実施例1の製造方法と略等しい。すなわち、実施例3の製造方法は、実施例1の製造方法と同様に、
図2のフローチャートに従って実施される。
【0062】
実施例3の製造方法では、ステップS18において、実施例1と同様にして、
図22に示すように積層基板60の上面にキャリアフィルム50を貼り付ける。次に、犠牲層30を選択的に溶かすエッチング液中に積層基板60を浸漬させる。すると、エッチング液が補強板20の空孔に浸透する。エッチング液は、補強板20の空孔を通して犠牲層30に到達し、犠牲層30を溶解する。これによって、犠牲層30を完全に除去し、
図24に示すようにセラミックス素子62を補強板20から分離する。実施例3の方法でも、犠牲層30を容易にエッチングすることができる。
【0063】
なお、上述したように、ステップS6において犠牲層30を硬化させる際には、犠牲層30中に含まれている溶剤が気化してガスが発生する場合がある。ステップS6の熱処理においては、犠牲層30から発生したガスは、補強板20の内部の空孔を通って外部に放出される。これによって、犠牲層30で発生したガスの圧力によって、セラミックス基板10が変形したり、セラミックス基板10にクラックが生じたりすることが防止される。
【実施例4】
【0064】
次に、実施例4の製造方法について説明する。
図30は、実施例4の製造方法を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS2では、実施例1のステップS2と同様にして、セラミックス基板10の下面に樹脂層14を形成する。
【0066】
ステップS2aでは、セラミックス基板10の下面に樹脂を塗布することで、
図31に示すように、犠牲層30aを形成する。ここでは、0.5〜10μmの厚さを有する犠牲層30aを形成する。次に、セラミックス基板10を加熱して、犠牲層30aを乾燥させる。
【0067】
ステップS4aでは、補強板20の上面に樹脂を塗布することで、
図32に示すように、犠牲層30bを形成する。ここでは、0.5〜10μmの厚さを有する犠牲層30bを形成する。ステップS4aでは、実施例1のステップS4とは異なり、補強板20を加熱して、犠牲層30bを乾燥させる。
【0068】
ステップS6aでは、減圧雰囲気中において、
図33に示すように、犠牲層30aと犠牲層30bが接触するようにしてセラミックス基板10と補強板20を積層させる。このように減圧雰囲気中でセラミックス基板10と補強板20を積層することで、犠牲層30aと犠牲層30bの間に空気層が形成されることを防止することができる。あるいは、ステップS6aでは、犠牲層30aと犠牲層30bが接触するようにしてセラミックス基板10と補強板20を重ね合わせ、これらをホットプレートで加熱しながら、スキージやゴムローラを一方向に動かすことで空気を押し出すようにしてセラミックス基板10を補強板20に向けて加圧してもよい。このような方法でも、犠牲層30aと犠牲層30bの間に空気層が形成されることを防止することができる。次に、積層基板60を厚さ方向に加圧するとともに、積層基板60を加熱する。これによって、犠牲層30aと犠牲層30bを熱圧着させると同時に、加熱硬化させる。このように、既に乾燥済みの犠牲層30a、30bを熱圧着させることで、犠牲層からガスが発生することが抑制され、ガスの圧力によって、セラミックス基板10が変形したり、セラミックス基板10にクラックが入ったりすることが防止される。その後のステップS8〜ステップS22は、実施例1の製造方法と同様にして実施される。
【実施例5】
【0069】
次に、実施例5の製造方法について説明する。
図34は、実施例5の製造方法を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS2、S2a、S4aは、実施例4の製造方法と同様にして実施される。
【0071】
ステップS4bでは、補強板20上の犠牲層30bの表面にレジスト層32を形成し、その後、
図35に示すようにレジスト層32を格子状にパターニングする。
【0072】
ステップS4cでは、ステップS4bで形成したレジスト層32をマスクとして、犠牲層30bをエッチングする。その後、レジスト層32を除去する。これによって、
図36に示すように、犠牲層30bの表面に格子状に伸びる溝34が形成される。
【0073】
ステップS6bでは、犠牲層30aと犠牲層30bが接触するようにしてセラミックス基板10と補強板20を積層させる。そして、積層基板60を厚さ方向に加圧するとともに、積層基板60を加熱する。これによって、犠牲層30aと犠牲層30bを熱圧着させると同時に、加熱硬化させる。なお、セラミックス基板10と補強板20を積層する際には、ステップS4cで形成した溝34が空気の逃げ道となるので、積層時に犠牲層30aと犠牲層30bの間に空気層が形成されることが防止される。このように、実施例5の製造方法では、減圧雰囲気とすることなく圧着工程を実施することができるので、製造設備を簡略化することができる。また、この製造方法では、実施例4の製造方法と同様に、犠牲層からガスが発生することを抑制できる。したがって、ガスの圧力によって、セラミックス基板10が変形したり、セラミックス基板10にクラックが入ったりすることが防止される。その後のステップS8〜ステップS22は、実施例1の製造方法と同様にして実施される。
【実施例6】
【0074】
実施例6の製造方法は、実施例4、5において補強板20の上面に形成される犠牲層30bに代えて、犠牲層とは別の樹脂により構成された熱可塑性樹脂シートを用いる。実施例6では、70℃〜100℃の比較的低い温度において、犠牲層30aを熱可塑性シートの上面に貼り付けるとともに、補強板20を熱可塑性シートの下面に貼り付ける。これにより、熱可塑性シートと犠牲層30aは互いに仮固定され、熱可塑性シートと補強板20も互いに仮固定される。次に、これらの積層体を加圧した状態で180℃〜230℃の高温で熱処理することで、熱可塑性シートが軟化し、犠牲層30aと熱可塑性シートの間の隙間、及び、熱可塑性シートと補強板20の間の隙間が完全に無くなる。その後、加圧した状態で降温することで、それぞれが投錨効果で接着される。これにより、熱可塑性シートと犠牲層30aは互いに固定され、熱可塑性シートと補強板20も互いに固定される。すなわち、セラミックス基板10が補強板20に固定される。なお、熱可塑性シートは、硬化時に、犠牲層と同程度のヤング率(例えば、3GPa以上)を有しており、溝の側面をコートする樹脂と接触しても安定であり、溝の側面をコートする樹脂を硬化させるときの熱処理において軟化しない特性を有することが好ましい。また、熱可塑性シートの厚さは5〜100μmとすることができる。実施例6では、ステップS18においてセラミックス基板10を補強板20から切り離す際に、犠牲層30aのみを溶解させることになる(すなわち、犠牲層30bの代わりの熱可塑性樹脂シートは、補強板20の表面に残る。)。セラミックス基板10や補強板20の表面にうねりや局所的な反りが存在する場合や、セラミックス基板10に凹凸がある場合には、熱可塑性樹脂シートを介して犠牲層30aと補強板20を接続すると、熱可塑性シートが緩衝材となって、接続部分に空気層が巻き込まれることが抑制される。なお、熱可塑性シートは熱によって固相と液相の間で相変化するのみで、樹脂を構成する分子の結合状態が変化しない。つまり、セラミックス基板10を切り離した後で、新しいセラミックス基板10を補強板20へ再度固定することが可能である。
【実施例7】
【0075】
実施例7の製造方法は、実施例4、5において補強板20の上面に形成される犠牲層30bに代えて、犠牲層とは別の樹脂により構成された熱硬化性樹脂シートを用いる。実施例7では、70℃〜100℃の比較的低い温度において、犠牲層30aを熱硬化性シートの上面に貼り付けるとともに、補強板20を熱硬化性シートの下面に貼り付ける。これにより、熱硬化性シートと犠牲層30aが互いに仮固定され、熱硬化性シートと補強板20も互いに仮固定される。次に、これらの積層体を180℃〜230℃の高温で熱処理することで、熱硬化性シートを硬化させる。これにより、熱硬化性シートと犠牲層30aは互いに接着され、熱硬化性シートと補強板20も互いに接着される。すなわち、セラミックス基板10が補強板20に接着される。なお、熱硬化性シートは、硬化後に、犠牲層と同程度のヤング率(例えば、3GPa以上)を有しており、溝の側面をコートする樹脂と接触しても安定であり、溝の側面をコートする樹脂を硬化させるときの熱処理において軟化しない特性を有することが好ましい。また、熱硬化性シートの厚さは5〜100μmとすることができる。実施例7では、ステップS18においてセラミックス基板10を補強板20から切り離す際に、犠牲層30aのみを溶解させることになる(すなわち、犠牲層30bの代わりの熱硬化性樹脂シートは、補強板20の表面に残る。)。セラミックス基板10や補強板20の表面にうねりや局所的な反りが存在する場合や、セラミックス基板10に凹凸がある場合には、熱硬化性樹脂シートを介して犠牲層30aと補強板20を接続すると、熱硬化性シートが緩衝材となって、接続部分に空気層が巻き込まれることが抑制される。
【0076】
なお、上述した実施例6、7の熱可塑性シート及び熱硬化性シートは、セラミックス素子62の側面に形成される樹脂との接触角が、セラミックス素子と樹脂の接触角よりも大きい方が良い。本実施例6,7では、接触角が30度以上の熱可塑性シート及び熱硬化性シートを使用した。このように、補強板20と同等の接触角を有するシートを使用することで、均一な樹脂層16を形成することが可能になる。
【0077】
なお、上述した実施例1〜7においては、ステップS8のダイシング工程にかえて、ブラスト加工によって溝を形成する工程を実施してもよい。
図37は、ブラスト加工によって溝40を形成する工程を示している。ブラスト加工を用いる場合には、まず、セラミックス基板10の最表面にレジストマスク36を形成する。なお、レジストマスク36には、ダイシングラインに沿って開口を設けておく。そして、その開口に向かって、
図37に示すようにメディアを噴射することで、セラミックス基板10と犠牲層30を貫通して補強板20に達する溝40を形成する。このようにブラスト加工により溝40を形成する場合にも、溝40は上側ほど幅が広がるテーパ形状となる。また、このように犠牲層30を貫通する溝40を形成すると、犠牲層30にメディアが巻き込まれ難い。また、溝40の底面を構成している補強板20は硬いので、補強板20にもメディアは巻き込まれ難い。したがって、溝40を形成した後の工程において、溝40の内面からメディアが脱落して不具合が生じることが抑制される。
【0078】
上述した実施例1〜7では、ステップS8において、補強板20に達する溝40を形成した。しかしながら、溝40が、セラミックス基板10は貫通するが補強板20に達しないように形成してもよい。例えば、
図38に示すように、溝40の底面が犠牲層30内に存在するように形成してもよい。溝40の底面が犠牲層30内に存在する場合には、実施例8、9、10の方法が好ましい。
【実施例8】
【0079】
実施例8の製造方法では、上述した何れかの実施例の方法、または、その他の方法を用いて、犠牲層30によりセラミックス基板10と補強板20を接続する。ここでは、硬化後において、ガラス転移点温度が170℃以上であり、かつ、ヤング率が3GPa以上である樹脂材料を犠牲層に用いる。また、犠牲層は、例えば、ポリイミド、エポキシ、あるいはポリイミドとエポキシの混合樹脂等のように硬化後に表面タック性を有さない樹脂であることが好ましい。次に、ダイシングによって、
図38に示すように、セラミックス基板10を貫通して犠牲層30に達する溝40を積層基板60の上面に形成する。溝40は、補強板20に達しないように形成する。犠牲層30が、ガラス転移点温度が170℃以上で、かつ、ヤング率が3GPa以上となる特性を有していると、ダイシングによる発熱があっても犠牲層30が変質し難くなる。このため、切削屑がセラミックス基板10の表面や溝40の内面に付着せずに溝40から排出され、溝40の内面が荒れた状態となることが抑制される。すなわち、実施例8の方法によれば、底面が犠牲層30内に存在する溝40を形成する場合でも、内面が滑らかな溝40を形成することができる。また、ブラスト加工によって同様の溝40を形成する場合でも、犠牲層30に表面タック性が無いため、メディアが犠牲層30に付着することが抑制される。これによって、溝40の内面を滑らかに形成することができ、メディアの脱粒の問題が抑制される。溝40を形成した後は、上述した何れかの実施例のように各工程を実施することで、セラミックス素子を製造することができる。
【実施例9】
【0080】
実施例9の製造方法では、実施例6のように犠牲層30aと熱可塑性シートを介してセラミックス基板10を補強板20に固定する。犠牲層30aと熱可塑性シートを介してセラミックス基板10を補強板20に固定する方法は、上述した実施例6において説明した方法であってもよいし、他の方法であってもよい。ここでは、犠牲層30aだけでなく熱可塑性シートについても、硬化後において、ガラス転移点温度が170℃以上であり、かつ、ヤング率が3GPa以上である樹脂材料を用いる。また、犠牲層30aと熱可塑性シートの両方は、例えば、ポリイミド、エポキシ、あるいはポリイミドとエポキシの混合樹脂等のように硬化後に表面タック性を有さない樹脂であることが好ましい。次に、ダイシングによって、
図39に示すように、セラミックス基板10と犠牲層30aを貫通して熱可塑性シート30cに達する溝40を積層基板60の上面に形成する。但し、溝40は、補強板20に達しないように形成する。犠牲層30aと熱可塑性シート30cが、ガラス転移点温度が170℃以上で、かつ、ヤング率が3GPa以上となる特性を有しているので、実施例8と同様に、実施例9の方法でも、溝40内面が荒れた状態となることが抑制される。また、ブラスト加工により溝40を形成する場合でも、溝40の内面を滑らかに形成することができる。溝40を形成した後は、上述した何れかの実施例のように各工程を実施することで、セラミックス素子を製造することができる。
【実施例10】
【0081】
実施例10の製造方法では、実施例7のように犠牲層30aと熱硬化性シートを介してセラミックス基板10を補強板20に固定する。犠牲層30aと熱硬化性シートを介してセラミックス基板10を補強板20に固定する方法は、上述した実施例7において説明した方法であってもよいし、他の方法であってもよい。ここでは、犠牲層30aだけでなく熱硬化性シートについても、硬化後において、ガラス転移点温度が170℃以上であり、かつ、ヤング率が3GPa以上である樹脂材料を用いる。また、犠牲層30aと熱硬化性シートの両方は、例えば、ポリイミド、エポキシ、あるいはポリイミドとエポキシの混合樹脂等のように硬化後に表面タック性を有さない樹脂であることが好ましい。次に、ダイシングによって、セラミックス基板10と犠牲層30aを貫通して熱硬化性シートに達する溝40を積層基板60の上面に形成する。但し、溝40は、補強板20に達しないように形成する。犠牲層30aと熱硬化性シートが、ガラス転移点温度が170℃以上で、かつ、ヤング率が3GPa以上となる特性を有しているので、実施例8と同様に、実施例10の方法でも、溝40内面が荒れた状態となることが抑制される。また、ブラスト加工により溝40を形成する場合でも、溝40の内面を滑らかに形成することができる。溝40を形成した後は、上述した何れかの実施例のように各工程を実施することで、セラミックス素子を製造することができる。
【0082】
なお、上述した実施例9、10の熱可塑性シート及び熱硬化性シートは、セラミックス素子62の側面に形成される樹脂との接触角が、セラミックス素子と樹脂の接触角よりも大きい方が良い。本実施例では、接触角が30度以上の熱可塑性シート及び熱硬化性シートを使用した。そうすることで、溝40の底が熱可塑性シート及び熱硬化性シートにある場合でも、セラミックス素子62の側面に厚く樹脂層16を形成することができる。
【0083】
また、上述した実施例1〜10において、犠牲層を除去する前に、溝40の底面の樹脂層16をレーザを照射することで除去してもよい。
【0084】
また、上述した実施例1〜10では、セラミックス基板10の上面及び下面に樹脂層12、14を形成したが、これらの樹脂層が不要である場合には、これらの樹脂層を形成しなくてもよい。
【0085】
また、上述した実施例1〜10において、ダイシング工程(すなわち、ステップS8)と樹脂コート工程(すなわち、ステップS10)の間に、積層基板60の表面からダイシング時に生じた切削屑を除去する洗浄工程を実施してもよい。洗浄工程では、犠牲層の切削屑を溶解可能な溶解液を用いて洗浄を行ってもよい。洗浄工程を実施することで、樹脂コート工程において、樹脂層16に異物が巻き込まれることを防止することができる。これによって、セラミックス素子62の信頼性をより向上させることができる。
【0086】
また、上述した実施例1〜10では、犠牲層(後にエッチングで除去される層)によってセラミックス基板10と補強板20を接続したが、犠牲層以外の層(後にエッチングで除去されない層)によってこれらを接続してもよい。例えば、接着層によってセラミックス基板10と補強板20を接続し、その後、接着層をセラミックス基板10から剥離することでセラミックス基板10から補強板20を分離させてもよい。
【0087】
また、上述した実施例1〜10では、溝40内に樹脂を塗布するときに、
図11に示す態様で積層基板60を回転させた。しかしながら、溝40内の流動性の樹脂に対して溝40の底方向に遠心力が加われば、どのような回転方法を用いてもよい。また、スイング等、回転以外の移動であってもよい。
【0088】
また、上述した実施例1〜10において、溝40内に樹脂を塗布するときは、事前に塗布する樹脂に含まれる溶媒で溝40内を濡らしておいてもよい。すなわち、ダイシング工程(すなわち、ステップS8)と樹脂コート工程(すなわち、ステップS10)の間に、溝40内に溶媒を塗布する工程を実施してもよい。例えば、ダイシング工程後に、まず、溝40内に溶媒を充填し、次いで、所定の回転装置によって積層基板を回転させる。これによって、溝40内から余分な溶媒を排出する。なお、溶媒は樹脂と比較して粘性が低く流動性がよいため、積層基板を回転させるときの回転軸は、積層基板の上面と略平行としてもよいし(すなわち、
図11に示す縦回転)、積層基板の上面と略直交させてもよい(すなわち、
図40に示す横回転)。溝40内から余分な溶媒を排出すると、積層基板を乾燥させる。この時、室温で所定時間放置することで積層基板を乾燥させてもよいし、溶媒の沸点以下の温度で加熱して積層基板を乾燥させてもよい。その後、溝40内に樹脂を塗布する。このような方法によると、溝40内を溶媒で濡らしてから溝40内に樹脂を塗布するため、溝40内の樹脂の濡れ広がりがより均一となり、塗布される樹脂厚みも厚くすることができる。
【0089】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。