(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
高齢化社会が進むにつれて、高齢者の外来患者がさらに増えることが予想されている。ガントリを有するMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、X線CT(Computed Tomography)装置などの画像診断装置においては、寝台に患者を横臥させ、ガントリ内に患者を移動させて撮影が行われる。しかし従来の画像診断装置では、寝台に手すりなどの手が掴める部分が無いため、高齢者にとっては寝台乗降時に転倒する恐れがある。
【0003】
患者は寝台を下降させた状態で寝台天板に横臥するが、手が掴める部分が無いと高齢者では自力で体勢を変えられないため、看護師、放射線技師または医師などの補助が必要となる。これらの問題を解決するために、患者の体を動かす能力に応じて手すり(以下手すりや転落防止のセーフティーガードなどを総称して補助バーと呼ぶことにする)などを追加し必要な構造に変更可能な寝台がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし撮影時には、寝台を上昇させ、寝台天板をスライドさせてガントリ内に患者を移動する。この時安全上の観点から、患者が補助バーを掴むことや患者に付帯するカテーテル、穿刺針、および点滴チューブなどが補助バーに引っかかることを防止する必要がある。このように補助バーは身体の不自由な患者が乗降する場合には必要であるが、撮影時には安全な場所に退避する必要がある。しかし補助バーの脱着を人間の手で何度も繰り返すことは診断の迅速性の観点から好ましいものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について
図1から
図10を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
(装置構成)
図1に示す本実施形態の画像診断装置はX線CT装置であるが、本実施形態はガントリを有する画像診断装置で適用が可能である。
図1に示すように、本実施形態の画像診断装置はX線CT装置を構成するための架台部10、寝台部20、およびコンソール部30に大きく分かれる。
【0012】
架台部10は、被検体Pを撮影するためのガントリ11を有し、ガントリ11内には寝台1に載置する被検体Pに対してX線を発生するX線発生部12、被検体Pを透過したX線を検出するX線検出部13、X線検出部13で取得したデータを収集し、ガントリ11外に伝送するDAS(Data Acquisition System)部14などを備える。さらには、X線発生部12に印加する高電圧を発生する高電圧発生部15を有する。
【0013】
寝台部20は、被検体をガントリ11に移動する寝台21を有し、寝台21には、寝台天板22をガントリ内方向に移動する長手方向制御部23、寝台21の高さを制御する上下方向制御部24、および寝台天板22を長手方向にスライド可能に支持する天板フレーム25側面に配置される補助バー26を制御する補助バー制御部27を有している。
【0014】
コンソール部30は、架台部10および寝台部20を統合的に制御するシステム制御部31と架台部10で収集されたボリュームデータを各種医用画像に処理する画像処理部32を備える。システム制御部31は、寝台部20を制御する寝台制御部33、架台部10を制御する架台制御部34、および画像処理部32を制御する画像処理制御部35を有する。
【0015】
画像処理部32は、架台部10で収集されたボリュームデータを再構成する画像再構成部36、再構成された画像を表示に適するようにフォーマット変換、色調整、ノイズ低減処理などを行う画像表示処理部37、および各種医用画像を表示するモニタ部38を有する。
【0016】
コンソール部30は高性能なコンピュータで構成されており、図示しないCPU、メモリ、ストレージなど一般的な構成を備える。またX線CT装置を操作するためマウス、トラックボール、各種レバー、ボタンなどを有する操作部39が接続されている。
【0017】
図2は、被検体Pが寝台21に乗降する時の補助バー26の位置を説明する図であり、
図3は、被検体Pを撮影する時の補助バー26の位置を説明する図である。
【0018】
図2に示すように、被検体Pが寝台21に乗る場合は、寝台21を下降させた状態で寝台天板22に横臥することになる。この寝台21には、患者が手で掴んで体勢を変えやすいように、補助バー26a、25bが設置されている。また、撮影が終了し寝台21から降りる場合においても、補助バー26(26a、26b)があることで立ち上がり動作が楽に行える。
【0019】
補助バー26aは、乗降側とは反対側の天板フレーム25側面に設置される比較的長い補助バーである。これは、どの位置においても掴み易く横臥時の転落防止(セーフティガード)にも効果がある。また補助バー26bは、乗降側の天板フレームに設置され、補助バー26aに比べて短い補助バーである。これは、乗降の際に邪魔にならず、体勢を変える場合や、立ち上がり動作において効果がある。
【0020】
通常、病院設備レイアウトに応じて被検体Pの乗降方向は決まっており、これらの補助バー26は、使用者(病院)のニーズに合わせて左右どちらにも取り付け可能である。
【0021】
図3に示すように、被検体Pの撮影時には、寝台天板22に載置された被検体Pをガントリ11の開口部に移動する。寝台天板22の移動に伴って被検体Pに付帯するカテーテル、穿刺針および点滴チューブなどが補助バー26に引っかからないように、補助バー26を天板フレーム25上側から下側方向へと退避する。退避の方法は、補助バー26aに示すように天板フレーム25内に隠れるよう下方向にスライドする方法、または補助バー26bに示すように、回転して下方向を向くように退避する方法などがある。
【0022】
(第1の実施形態)
図4は、補助バー制御部27のブロック構成図である。また、
図5は、補助バー制御部27を組み込んだ寝台21を先頭方向から見た図である。説明のため補助バー26は1つのみを図示している。
【0023】
補助バー制御部27は上下方向制御部24で制御された寝台21の上下動および寝台高さを検出する寝台高さ検出部41、前記寝台高さに応じて補助バーをコントロールするコントローラ部42、およびコントローラ部42から出力される制御信号により補助バー26を駆動する補助バー駆動部43を有する。
【0024】
寝台高さ検出部41における寝台21の高さ検出は、ワイアエンコーダ、距離センサなどの各種センサを用いることができる。
図5では、ワイアエンコーダ52(符号53はエンコーダワイヤを示す)にて寝台高さを検出している。
【0025】
コントローラ部42は、寝台高さ検出部41の高さ検出の値が、所定のしきい値または所定の高さ範囲に入っているかを判断する。具体的な一例では、寝台21が乗降のため、ある範囲以内に下降した場合の第1の高さ範囲と、寝台21が撮影のため、ガントリ11の開口部付近のある範囲に上昇した場合の第2の高さ範囲の2つの高さ範囲が設定される。また、この所定のしきい値または高さ範囲は、システム制御部31から設定・変更が可能である。また、2つより多くの高さ範囲を設定してもよい。
【0026】
補助バー駆動部43は駆動ギア54、モータ55などから構成され、コントローラ部42の制御信号に基づき補助バー26を動作させる。モータ55は、回転して補助バー26を退避させても良いし、リニアモータなどを利用して垂直(上下)方向に動作させてもよい。また駆動ギア54は必要に応じて補助バー26が安全に動作するための加速、減速に使用する。
【0027】
すなわち、乗降のため寝台21がある高さ範囲内に下降した場合(第1の高さ範囲)では、補助バー26を天板フレーム25上側に出現させ、また撮影のためガントリ11の開口部付近のある範囲に上昇した場合(第2の高さ範囲)では、補助バー26を天板フレーム25上側から下側へと退避させることができる。
【0028】
以上のように構成された画像診断装置の動作について
図6のフローチャートを用いて説明する。ステップST601では、被検体P(患者)の受け入れ準備を行ため、寝台21を下降させる。この時、寝台高さが第1の高さ範囲に入ると、コントローラ部42は、補助バー駆動部43を制御して補助バー26を出現させる。この時、
図3の補助バー26aのみを出現させるなど、患者の身体能力に応じて複数の補助バー26中から任意のものを選択できるようにしてもよい。また、健常者の場合は補助バー26が全く出現しないように設定してもよい。これについては後述の動作モードで説明する。
【0029】
ステップST602では、被検体Pは、
図2に示すように出現した補助バー26(26a、26b)に掴まりながら、横臥できるように体勢を変化させる。
【0030】
被検体Pが寝台21に横臥した後、ステップST603では、寝台21をガントリ11の開口部まで上昇させる。この時、寝台高さが第2の高さ範囲に入ると、コントローラ部42は、補助バー駆動部43を制御して補助バー26を天板フレーム25上側から退避させる。この時、被検体Pが補助バー26を掴んでいないかどうかなど、安全を確認して動作させる。また注意喚起を促すメッセージなどを画像または音声で出力してもよい。
【0031】
ステップST604では、被検体Pを載置した寝台天板22がガントリ11開口部内に挿入され被検体PのCT撮影が行われる。
【0032】
ステップST605では、CT撮影が終了し被検体Pを載置した寝台天板22がガントリ11外へと移動した後、寝台21の高さを乗降時の高さ範囲(第1の高さ範囲)まで移動する。この時、ステップST601と同様に補助バー26を天板フレーム25上側に出現させる。
【0033】
ステップST606では、被検体Pは補助バー26に掴まりながら立ち上がり寝台21を降りる。
【0034】
以上述べたように、第1の実施形態によれば、被検体の寝台乗降時には、補助バーを出現させることで安全に寝台に横臥することが可能である。しかも撮影時には補助バーを退避することができるので、被検体に付帯するカテーテル、穿刺針、および点滴チューブなどガントリ移動の際に、引っかけてしまうことを防止できる。また、病院設備レイアウト、被検体の身体能力などに応じて、補助バーの取り付け場所や動作する補助バーを選択可能である。これにより、被検体が寝台に横臥してから撮影終了までの一連の流れの中で、補助バーの出現・退避を意識せずに自動で行うことが可能である。
【0035】
また本実施形態は、寝台21をシステム制御部31で制御していることから、補助バー26の動作を乗降時、撮影時以外にも動作させることが可能である。例えば、寝台を上昇させた状態でストレッチャーから被検体を寝台に載せる場合など、補助バーをセイフティーバーとして機能させたい場合と機能させたくない場合がある。
【0036】
このような場合に対しては、システム制御部31内に、ストレッチャーモード、高齢者モード、車いすモード、健常者モードなどの被検体の身体能力に応じた動作モードを用意し、その動作モードごとに補助バー26の動作する高さ範囲を設定すると同時に、動作させる補助バーを選択してもよい。さらには、操作部39から任意のタイミングで、補助バー26の出現・退避を手動で行えるようにしてもよい。
【0037】
また本実施形態は、従来の寝台装置に補助バー制御部をオプションで取り付けできるため、システム制御部のソフトウエアを改修するだけで実施が可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では電気的な制御を基本とした寝台装置について説明したが、本実施形態は、機構的な制御方法にて実現する寝台装置について説明する。
【0039】
図7は、本実施形態の寝台装置の構成図である。また、
図8は補助バー制御部27を構成する機構部品の説明図である。本実施形態は、天板フレーム25側面に設置される補助バー26を寝台21の高さに応じて出現・退避させる。
【0040】
図7および
図8に示すように、寝台21を支持する支持台71に固定される支柱部材72と、支柱部材72の上部に固定され、所定の範囲内で長さが可変する伸縮部材73と、伸縮部材73の上部に形成される補助バー受け部材74と、補助バー受け部材74と接触して伸縮部材73を上下方向に伸縮させる押し下げ部材75を有している。
【0041】
本実施形態において伸縮部材73はバネを例にとり説明するが、エアダンパなど他のものでも構わない。伸縮部材73は、その長さをLmin〜Lmaxまで可変できる。伸縮部材73がバネの場合、力を加えて最大限縮んだ長さがLminであり、力を加えない時の長さがLmaxとなる。また、押し下げ部材75は天板フレーム25下側に固定されており、補助バー26を天板フレーム25に対して上下移動させるためのガイド穴81が形成されている。そして押し下げ部材75の底面を基準にし、乗降時などの寝台高さでは補助バー26が天板フレーム25の上部へ高さHだけ出現するように、補助バー26の上下方向の長さが決定される。なお、補助バー26の上下動をガイドするためのガイド穴81は押し下げ部材75に形成したが、ガイド部材を別に設けてもよい。
【0042】
以上のように構成された寝台装置の動作について
図9および
図10を用いて説明する。
図9は、寝台下降時の補助バー制御部27の動作説明図である。また、
図10は、寝台上昇時の補助バー制御部27の説明図である。
【0043】
図9は、寝台21が一番下降した状態を示している。寝台21を下降させることによって、押し下げ部材75が補助バー受け部材74に接し、補助バー受け部材74に固定された伸縮部材73の長さをLmaxからLminまで収縮させることができる。この時、補助バー26は押し下げ部材75に形成されたガイド穴81に沿って天板フレーム25上側に上昇する。逆に、伸縮部材73の長さがLmin〜Lmaxとなるまでは寝台21の高さを上昇させても、補助バー26を一定の高さHで天板フレーム25上側に出現させておくことができる。
【0044】
また
図10に示すように、伸縮部材73の長さがLmaxとなる寝台高さ以上では、押し下げ部材75が補助バー受け部材74と接しなくなるため、補助バー26は、自分の自重によって降下する。この結果、図示しない天板フレーム25内に形成された溝に退避することができる。
【0045】
すなわち、伸縮部材73の長さの収縮範囲(Lmin〜Lmax)、およびその他の支柱部材72、押し下げ部材75などの寸法を調整することにより、下降した所定の寝台高さ範囲では補助バー26を出現させ、所定の高さ以上に寝台21を上昇させた時には、補助バー26を天板フレーム25上側から退避させることが可能となる。
【0046】
このように、第2の実施形態によれば、寝台装置を機構部品で構成できるため非常に安価であり、画像診断装置からの制御を原則必要としないで実施できる。従ってソフトウエア改修などの作業も必要としないため、どのような画像診断装置にも即時適用可能であるという効果を奏する。
【0047】
以上述べたように本実施形態においては、必要時には補助バーを天板フレーム上側に出現させ、不必要時には補助バーを天板フレーム上側から自動的に退避できる。これにより、高齢者などの身体能力に不安がある患者にとって安全に寝台に横臥することが可能となる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0049】
実施形態では、高齢者のCT撮影を例として説明したが、これに限定しない。また同様に上述したフローチャートに限定するものではない。また、画像診断装置としてX線CT装置を例にとり説明したが、ガントリを有するMRI(Magnetic Resonance Imaging)、PET(Positron Emission Tomography)装置などにも適用可能である。
【0050】
これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。