特許第6054182号(P6054182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054182
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20161219BHJP
   F21V 7/07 20060101ALI20161219BHJP
   F21V 5/00 20150101ALI20161219BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20161219BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20161219BHJP
【FI】
   F21S2/00 340
   F21S2/00 310
   F21V7/07 100
   F21V5/00 510
   F21V5/04 100
   F21V5/04 650
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-1866(P2013-1866)
(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-135172(P2014-135172A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】別井 圭一
(72)【発明者】
【氏名】村田 誠治
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−067380(JP,A)
【文献】 特開2005−352356(JP,A)
【文献】 特開2012−018846(JP,A)
【文献】 特開2007−287521(JP,A)
【文献】 米国特許第06123440(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 7/07
F21V 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を所定の角度内に集光して照射する照明装置において、
前記光源を囲み該光源から出射された光を照射方向に反射する曲面形状の反射ミラーと、
該反射ミラーで反射された光(以下、反射光)と、前記光源から出射され前記反射ミラーで反射されなかった光(以下、直射光)の両方を収束して出射する出射レンズとを備え、
前記反射ミラーは前記光源に対する虚像光源を形成し、前記反射光は該虚像光源から出射された光と等価であり、
前記出射レンズは、前記直射光が所定の角度内に収斂されて出射し第1の光束を成し、前記反射光が前記出射レンズを透過した後に前記出射レンズの光軸上で収斂しその後出射し第2の光束を成し、前記第1の光束の外縁部の光と前記第2の光束の外縁部の光とが前記光軸に対して略同一角度となる範囲内に出射されるように構成されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記反射ミラーは双曲面形状又はその近似曲面形状であり、
前記出射レンズは前記反射ミラーの開口部に配置され、該開口部の大きさに略等しい径を有する凸面形状としたことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置において、
前記光源を前記反射ミラーの双曲面形状又はその近似曲面形状の略焦点位置に配置したことを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項2に記載の照明装置において、
前記出射レンズによる前記虚像光源の実像、及び前記出射レンズによる前記光源の虚像は、前記出射レンズを挟んで略等しい距離Lに存在することを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4に記載の照明装置において、
前記距離Lは、前記出射レンズの半径をh、前記出射レンズからの出射角度をθとするとき、L=h/tanθなる関係としたことを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記反射ミラーと前記出射レンズを透明誘電体材料により一体化して構成し、前記反射ミラーの反射面では全反射を利用したことを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の照明装置において、
前記出射レンズとしてフレネルレンズを用いたことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を所望のビーム角度に集光して出射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプからの光をミラーやレンズなどを用いて集光し、対象物の一部を集中的に照射するスポットライト、ダウンライトなどの照明装置が知られている。これらのスポット照明では、ランプからの光を効率良く所望のエリア内に照射できることが要求される。これに関し次の提案がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、灯具の薄型化を図り周辺光量の低下を抑えるために、「灯具発光面を短冊状に分割し長辺方向に沿う焦点線を有する複数の放物面柱反射鏡と、この放物面柱反射鏡の夫々の前記焦点線近傍に配設される光源と、前記発光面を覆うフレネルレンズは、前記放物面柱反射鏡に反射される前記光源の虚像に焦点を持つリニアフレネルカットと、前記光源に焦点を持つ同芯円フレネルカットで成る」車両用信号灯具が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、LEDランプの前方以外の方向から出た光を有効に利用するために、「LEDランプの側面光を前方に反射させるためのレンズであって反射面が放物面又はその近似曲線にされた反射器本体を有しており、前記反射器本体の反射面中心部には、前記LEDランプが入れられる凹部が形成されている」LEDランプ用反射器が開示されている。さらにこのLEDランプ用反射器では、「前記凹部内であり且つ前記LEDランプの前方位置には、前記LEDランプから前方に向けて出た光の進行方向を補正するためのレンズが設けられている」構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−144801号公報
【特許文献2】特開2003−281909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9は、従来のスポット照明装置の一般的な構造を示す図である。光源11より発生した光は、放物面形状の反射ミラー19で反射し、所望の配光特性を有する照明光に集光されて対象物に照射される。所望の配光特性とは、スポットライトの場合は出射光(出射ビーム)の光強度が半分になる角度幅(以下、ビーム角度と呼ぶ)で定義され、照明用途により10deg、20deg、30deg(すべて全角2θの値)などと指定されている。このような反射ミラー19を有する照明装置では、反射ミラー19で反射した光線21(破線で示す、以下、反射光と呼ぶ)についてはビーム角度内に出射される。
【0007】
一方、光源11より発生し反射ミラー19に当たらず、ミラー19の開口部から直接出射する光線20(実線で示す、以下、直射光と呼ぶ)が存在する。直射光20についてはミラー19の開口部の大きさで決まる範囲一杯に光が出射するため、所定のビーム角度より外に漏れる光が存在する。その結果、光源で発生する全光束のうちビーム角度内に出射する光束の割合(ビーム光利用効率、又は単にビーム効率と呼ぶ)が低下し、また所望の配光特性を実現するのが困難となる。この場合、ミラー19の鏡筒を長くすれば漏れ光は減少するが、装置が大型化し実用的な解決法とは言えない。
【0008】
前記特許文献1では、フレネルレンズの焦点位置をレンズ中央部と周辺部とで切り替えることで、中央部では主に光源からの直射光を、周辺部では主に反射鏡からの反射光(すなわち光源の虚像からの放射光)を利用するものである。これにより、直射光がレンズ周辺部で減衰するのを反射光で補い、光束の利用効率を向上させようとしている。しかし特許文献1では、フレネルレンズ周辺部を通過する光源からの直射光の影響、すなわち周辺部を通過する直接光がビーム角度より外に漏れることついては考慮されておらず、ビーム効率の向上は必ずしも期待できない。
【0009】
前記特許文献2では、LEDランプの周辺に反射面を設けてランプ側面から出射した光を前方に集光させ、ランプ側面光を有効に利用するものである。またLEDランプの前方に設けたレンズによりランプ前方に出射した光の進行方向を補正することで、ランプの前方の輝度を大きくしようとしている。しかし特許文献2では、前方レンズは凹部内に設けられそのサイズ(径)はランプと同程度であるため、ランプ側面から出射した光の中には前方レンズを通過せず、且つ反射面にも当たらない直射光が存在する。そのためビーム角度より外に漏れる直射光が存在し、ビーム効率を低下させる。
【0010】
図9において、光源から反射ミラーに当たらずに出射する直射光をビーム角度内に入れるためには、ミラー開口部全体に渡る収束用のレンズを設けることが考えられる。特許文献2においても、そのようなレンズで置き換えることが考えられる。しかしながらその場合には、反射ミラーからの反射光もこのレンズを通過する訳であるから、そのとき余分な屈折を受けてしまい、レンズ周辺部を通過する反射光がビーム角度の外に漏れる恐れがある。つまり従来の構造では、反射ミラーからの反射光と光源からの直射光の両方を、所定のビーム角度内に集光して出射させることは極めて困難であった。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み、反射光と直射光の両方をビーム角度内に集光して出射する光利用効率の高い照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光源から出射された光を所定の角度内に集光して照射する照明装置であって、前記光源を囲み該光源から出射された光を照射方向に反射する曲面形状の反射ミラーと、該反射ミラーで反射された光(以下、反射光)と、前記光源から出射され前記反射ミラーで反射されなかった光(以下、直射光)の両方を収束して出射する出射レンズとを備え、前記反射ミラーは前記光源に対する虚像光源を形成し、前記反射光は該虚像光源から出射された光と等価であり、前記出射レンズは、前記反射光と前記直射光を略同一角度内に収束して出射する構成とした。
【0013】
好ましくは、前記反射ミラーは双曲面形状又はその近似曲面形状であり、前記出射レンズは前記反射ミラーの開口部に配置され、該開口部の大きさに略等しい径を有する凸面形状とする。また、前記光源を前記反射ミラーの双曲面形状又はその近似曲面形状の略焦点位置に配置する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光源から出射する光の大部分を所定のビーム角度内に集光することができるので、ビーム光利用効率が高い照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る照明装置の実施例を示す全体構成図。
図2】実施例1にかかる照明部の基本構成を示す図。
図3図2の光学系の解析を説明する図。
図4】実施例2にかかる照明部の基本構成を示す図。
図5】実施例3にかかる照明部の基本構成を示す図。
図6】実施例1における光線図。
図7】実施例1における配光分布を示す図。
図8】実施例1の変形例における配光分布を示す図。
図9】従来の照明装置の一般的な構造を示す図。
図10】従来の光学系による配光分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る照明装置の実施例を示す全体構成図である。ここでは、一例としてLED光源を用いたスポットライト装置を示す。
【0017】
照明部1は、光源(LED光源)11から出射した光を光学系(ミラー、レンズ)で集光して対象物に照射する。定電圧DC電源2はAC電源を光源駆動用の所定のDC電圧に変換し、スイッチング回路3はDC電圧を所定のデューティー比の矩形波(駆動信号)に変換して光源11に供給する。点灯制御回路4は、定電圧DC電源2のDC電圧とスイッチング回路3のデューティー比を制御して、光源11の発光強度、すなわち照明部1の照度を制御する。ここでは、LED光源11に好適な駆動回路を説明したが、光源の種類が変わればそれに適した駆動回路を用いることは言うまでもない。以下、照明部1の構成を実施例1〜3に分けて説明する。
【実施例1】
【0018】
図2は、実施例1にかかる照明部の基本構成を示す図である。照明部1は、光源11、反射ミラー12、出射レンズ13を備えている。光源11の発光素子にはLEDを用いているが、その他に白熱電球、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、放電管なども適用可能である。反射ミラー12は光源11を囲むように配置し、光源から出射された光を照射方向に反射する。反射面は、銀、アルミなどの金属表面、金属薄膜や誘電体薄膜を形成した反射面、ダイクロイックミラーなど特定の波長のみ反射する反射面などを用いる。出射レンズ13は、入射光を収束して出射するよう所定の凸面形状に加工され、ガラス、プラスチックなどの透明材料を用いる。出射レンズ13は反射ミラー12の開口部に配置し、その径はほぼ開口部の大きさに等しくしている。
【0019】
光源11からは様々な方向に光が出射されるが、反射ミラー12で反射する光線21(破線で示す、反射光)と、反射ミラー12で反射せず直接出射レンズ13に向かう光線20(実線で示す、直射光)のいずれかに分類される。そして、反射光21は反射ミラー12で反射した後、出射レンズ13を通過する。つまり、反射ミラー12で反射せず、且つ出射レンズ13を通過しない光線は存在しない。
【0020】
本実施例の特徴は、反射ミラー12の反射面を双曲面形状(又はその近似曲面形状)とし、その焦点位置Fに光源11を配置したことである。双曲面ミラー12では、一方の焦点位置Fから出射した光が反射することで他方の焦点位置F’に虚像を形成し、あたかもその位置F’に光源11’が存在するような鏡像を形成する性質がある。従って、双曲面ミラー12を用いて光学系を構成すると、実際の光源11と虚像光源11’の2つの光源が存在するのと等価になる。以下、実際の光源11を実光源とも呼ぶことにする。なお、反射ミラー12の形状が双曲面以外の形状、例えば放物面形状や楕円面形状の場合には、虚像光源11’が所望位置に形成されないので、本実施例の動作を実現できない。
【0021】
さらに出射レンズ13では、この2つの光源11,11’からの出射光20,21が通過するが、いずれも同一出射角度内に収束させるようにレンズ形状を設定した。後述するように、出射レンズ13の焦点距離fは、レンズ13から実光源11までの距離s2よりも大きく、且つレンズ13から虚像光源11’までの距離s1よりも小さく設定する。これにより、実光源11からの直射光20を光軸方向に近付け、また虚像光源11’からの反射光21を光軸中心方向に進行させることができる。
【0022】
このように、虚像光源11’の得られる双曲面形状の反射ミラー12と所定の収束機能を持つ出射レンズ13を組み合わせることで、直射光20、反射光21ともに所望の出射角度(ビーム角度)で出射する照明装置を実現できる。
【0023】
図3は、図2の光学系の解析を説明する図である。反射ミラー12の双曲面の方程式は、図面横軸をx、縦軸をyとすると、
(x/a)−(y/b)=1 (1)
で表わされ、a,bは双曲面形状の定数である。双曲面の焦点F,F’間の距離2cは、
2c=2(a+b(1/2) (2)
で与えられる。
【0024】
出射レンズ13の焦点距離をfとし、焦点位置をEで表わす。出射レンズ13から実光源11までの距離をs2、虚像光源11’までの距離をs1とする。出射レンズ13による虚像光源11’の実像位置をGとし、出射レンズ13による実光源11の虚像位置をG’とする。実像位置Gと虚像位置G’は、出射レンズ13を挟んで互いに反対側に生じる。
【0025】
反射ミラー12の開口部の高さ(すなわち出射レンズ13の半径)をhとし、出射レンズ13からの直射光20及び反射光21の出射角度(ビーム角度)を、上下方向に同一角度±θとする。よって、出射レンズ13から反射光21の実像位置Gまでの距離Lと、出射レンズ13から直射光20の虚像位置G’までの距離Lは等しく、
L=h/tanθ (3)
で表わされる。
【0026】
出射レンズ13(焦点距離f)を挟んで、距離Lの位置Gに反射光21の実像ができ、距離s1にその虚像光源11’が形成されることから、
(1/L)+(1/s1)=1/f (4)
の関係を満足する。また、出射レンズ13(焦点距離f)の入射側において、距離Lの位置G’に直射光20の虚像ができ、距離s2に実光源11が配置されることから、
−(1/L)+(1/s2)=1/f (5)
の関係を満足する。
【0027】
実光源11と虚像光源11’の位置(距離s2,s1)は、反射ミラー12の2つの焦点F,F’(焦点間距離2c)に一致させる条件より、
s1−s2=2c (6)
となるような双曲面形状2cを選べば良い。
【0028】
つまり、出射角度θと開口部半径hの条件を与えたとき、(3)式で決まるLを用いて、(4),(5),(6)式を満足するように寸法パラメータs1,s2,c,fを決定することで、所望の配光特性(ビーム角度)を有する照明装置を実現することができる。
【0029】
ここで、上記解析に基づく具体的な数値例を示す。スポットライト装置の条件として、ビーム角度(全角)2θ=20deg、レンズ通過高さh=6mmと与える。出射レンズ12の焦点距離f=10mmとしたときの各パラメータは、
L=34.03mm、
s1=14.16mm、
s2=7.73mm、
c=3.22mm、
a=2.80mm、
b=1.59mm、
とすることで、所望の特性が得られる。以下、本実施例の効果を具体例で示す。
【0030】
図6は、本実施例における光線図を示す。直射光20は光源11から反射ミラー12に当たらずに出射レンズ13から出射するもの、反射光21は反射ミラー12で反射した後出射レンズ13から出射するものである。出射光のうち、出射レンズ13の外周部を通過する光線(マージナル光線)は、直射光20と反射光21が光軸方向に対し上下方向に同じ角度±θで出射していることが分かる。なお、反射光21は、この後図3の実像位置Gで交差した後、角度±θで拡散し直射光20と同一の方向に進む。
【0031】
図7は、本実施例における配光分布を示す図である。出射角に対する出射光強度の分布を計算で求めたものである。光学系のパラメータは、反射ミラー12の定数a=2.8、b=1.59、出射レンズ13の焦点距離f=10とした。光源11のサイズは1.8φの円形で、光源11から出射する全光束を400ルーメン(lm)として計算した。その結果、出射光の最大強度は2404カンデラ(cd)、出射強度が半減する半値ビーム角度2θ(全角)は25.7degとなった。また、ビーム角度内の光束は313ルーメンで、全光束に対する割合(ビーム効率)は78%と非常に高い値が得られた。
【0032】
図8は、実施例1の変形例における配光分布を示す図である。光学系のパラメータのうち、反射ミラー12の双曲線定数bを1.59から1.5に変えた場合の配光分布である。虚像光源11’の位置を焦点位置F’からずらすことにより、直射光20と反射光21の分布が変わり、合成後の配光分布はビーム角度内でほぼフラットになっている。この場合の最大強度は2213カンデラ、半値ビーム角度は26.4degで、ビーム効率は83%まで向上した。このように、光学系のパラメータ設定にはマージンがあり、実光源と虚像光源の関係が概略満たされていれば、光源を厳密に焦点位置に配置しなくても、所望の配光分布を得ることができる。
【0033】
図10は、比較のために従来の光学系による配光分布を示す図である。光学系は、図9に示すような放物面ミラー19のみとし、光源11は図7図8と同じ条件で計算した。その結果、最大強度は1732カンデラ、半値ビーム角度22.7degで、ビーム角度が狭いにも関わらず、最大強度が低下している。これはビーム角度の外側の範囲への直射光の漏れが多く、配光分布を悪化させているからである。その結果、ビーム角度内の光束は154ルーメン、ビーム効率は38%で、実施例(図7図8)の場合と比較して効率が半分程度に低下している。
【0034】
これに対し図7図8の本実施例によれば、従来構造ではビーム角度の外側に漏れていた直射光20についてもビーム角度内側に出射させることができ、スポット照明時の光の利用効率が向上する。その結果、照明装置の省エネルギー化に寄与するものとなる。
【0035】
なお、上記説明では、解析式を用いて光学系の理想的な形状寸法を求めた。本実施例の光学系は寸法や形状のマージンが広く、理想値からのずれ量が約20%以内であれば、ほぼ同等の特性を有している。例えば、反射ミラーの形状は厳密な双曲面形状でなく、その近似曲面形状でも良い。また、実像位置Gと虚像位置G’は出射レンズ13に対して等距離Lの位置から上記許容値だけずれていても、スポットライトとして所望の配光特性を得ることができる。
【実施例2】
【0036】
前記実施例1では、反射ミラー12と出射レンズ13を独立した構成とした。この場合には、ハロゲンランプや放電管のように大型の光源を用いることができる。これに対し実施例2では、反射ミラー12と出射レンズ13を一体化して構成している。この構成は、特にLEDのような小型の光源を用いる場合に適している。
【0037】
図4は、実施例2にかかる照明部の基本構成を示す図である。一体化レンズ14は、前記図3における反射ミラー12と出射レンズ13をプラスチックやガラスなどの透明誘電体材料で一体化して構成したものである。一体化レンズ14のレンズ背面14aは図3の反射ミラー12に、レンズ前面14bは図3の出射レンズ13に対応している。そして、レンズ背面14aの中心部には凹部を形成して、光源11を挿入している。
【0038】
レンズ背面14aでは、透明誘電体材料の屈折率と空気の屈折率の差によって生じる全反射を利用することで、金属などの反射膜を設けることなく反射ミラー12として機能する。また、レンズ前面14bを所定の曲面形状にすることで、出射レンズ13として機能する。
【0039】
この場合の光学系の解析式も、基本的には実施例1の(1)〜(5)式と同様である。ただし、一体化レンズ14を構成する誘電体の屈折率nを導入し、光源11,11’の距離s1,s2に関する(4),(5)式は、
(1/L)+(n/s1)=n/f’ (4’)
−(1/L)+(n/s2)=n/f’ (5’)
と修正して用いる。ここでf’は、レンズ前面14bの誘電体中での焦点距離である。なお、パラメータhは一体化レンズ14の外周部の高さとする。
【0040】
実施例2においても、一体化レンズ14の外周部を通過する直射光20と反射光21は、上下方向に同一角度±θで出射する。すなわち、光源11から発した光はいずれも所望のビーム角度内で出射されるので、スポット照明時の光の利用効率が向上する。さらに実施例2では、反射ミラーと出射レンズを一体化して構成したので、光学部品数が減少し組み立て作業が容易になる効果がある。
【実施例3】
【0041】
前記実施例1では、出射レンズ13として凸面形状レンズを用いた。これに対し実施例3の照明部1では、出射レンズ13としてフレネルレンズを用いて構成した。この構成は、特に放電管のような大型の光源を用いる場合に適している。
【0042】
図5は、実施例3にかかる照明部の基本構成を示す図である。反射ミラー12の開口部には、出射側レンズとしてフレネルレンズ15を配置している。フレネルレンズ15は、実施例1の出射レンズ(凸レンズ)13を同心円状の複数の領域に分割し、厚みを減らして同じ曲率を有する鋸状の断面としたものである。よってその出射光線20,21は実施例1と同様であり、所望のビーム角度内に出射される。
【0043】
実施例3ではフレネルレンズ15を用いることで、出射側レンズの厚みを薄くすることができる。特に光源11として大口径の放電管などを用いる場合には、これに対応する通常の凸面形状レンズは厚くかつ重くなる欠点があった。これに対しフレネルレンズを用いることで、レンズを薄型化し、照明装置の軽量化に寄与するものとなる。
【符号の説明】
【0044】
1:照明部、
2:定電圧DC電源、
3:スイッチング回路、
4:点灯制御回路、
11:光源、
11’:反射ミラー12による光源11の虚像(虚像光源)、
12:反射ミラー(双曲面形状)、
13:出射レンズ(凸レンズ)、
14:一体化レンズ、
15:フレネルレンズ、
19:反射ミラー(放物面形状)、
20:直射光、
21:反射光、
F,F’:反射ミラー12の焦点位置、
E:出射レンズ13の焦点位置、
G:出射レンズ13による虚像光源11’の実像位置、
G’:出射レンズ13による光源11の虚像位置、
θ:ビーム角度、
h:ミラー12の開口部高さ(出射レンズ13の半径)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10