特許第6054192号(P6054192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054192
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】クリップの装着構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 19/00 20060101AFI20161219BHJP
   F16B 21/08 20060101ALI20161219BHJP
   B60R 13/02 20060101ALN20161219BHJP
   B60J 5/00 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   F16B19/00 B
   F16B19/00 N
   F16B21/08
   !B60R13/02 B
   !B60J5/00 501B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-17196(P2013-17196)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149018(P2014-149018A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】荻野 哲也
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−078065(JP,A)
【文献】 特開2011−158059(JP,A)
【文献】 特開2000−009117(JP,A)
【文献】 特開2003−072492(JP,A)
【文献】 実開平05−096524(JP,U)
【文献】 特開2000−055020(JP,A)
【文献】 特開2006−220267(JP,A)
【文献】 特開2002−330531(JP,A)
【文献】 実開平06−018706(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00−19/14
F16B 21/00−21/20
B60J 5/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部材に形成された長孔状のクリップ孔に対して取付部材に形成された挿込穴から案内溝を介して回転可能に装着されているクリップのアンカー部が挿し込まれると、このクリップ孔の向かい合う長辺の両縁に、このアンカー部に形成された一対の弾性爪が係合することで取付部材をパネル部材に取り付け可能となっており、一対の弾性爪をクリップ孔に係合させた取り付け状態からクリップ孔に対してクリップを略90°回転させると、この一対の弾性爪の係合が解消することで、この取り付け状態を解消できるクリップの装着構造であって、
取付部材には、装着したクリップの一対の弾性爪がクリップ孔の向かい合う長辺を待ち受けるように、クリップの装着方向を規制する一対のリブが形成されており、
一対のリブは、取付部材の挿込穴の縁における案内溝側に形成されていることを特徴とするクリップの装着構造。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップの装着構造であって、
アンカー部には、リブに干渉することで、装着したクリップが抜け出ることを防止する脱落防止片が形成されていることを特徴とするクリップの装着構造。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップの装着構造であって、
リブは、クリップの装着部を受け入れる側が緩やかな傾斜壁となっており、その反対側が切り立った立壁となっていることを特徴とするクリップの装着構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のクリップの装着構造であって、
アンカー部には、取付部材に形成の第1の窪みに入り込むことでクリップの空転を防止する弾性突起が形成されていることを特徴とするクリップの装着構造。
【請求項5】
請求項4に記載のクリップの装着構造であって、
取付部材には、装着したクリップを略90°回転させると、第1の窪みから脱した弾性突起がその表面を乗り越えて入り込む第2の窪みが形成されていることを特徴とするクリップの装着構造。
【請求項6】
請求項5に記載のクリップの装着構造であって、
第2の窪みは、回転させたクリップの回転誤差を吸収可能に入り込んだ弾性突起より大きく形成されているクリップの装着構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のクリップの装着構造であって、
クリップのアンカー部には、矩形状のベースプレートが形成されており、
一対のリブの間隔は、回転させたクリップのベースプレートの長手方向の長さより短く設定されていることを特徴とするクリップの装着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップの装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル部材に形成されたクリップ孔に対して取付部材に装着されているクリップのアンカー部が挿し込まれると、このクリップ孔の向かい合う両縁に、このアンカー部に形成された一対の弾性爪が係合することで取付部材をパネル部材に組み付け可能なクリップが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、クリップ孔が長孔状に形成されているパネル部材が開示されている。これにより、一対の弾性爪をクリップ孔の長辺側に係合させたクリップの取り付け状態からクリップ孔に対してクリップを略90°回転させると、この取り付け状態を解消できる。すなわち、クリップ孔に取り付けたクリップをパネル部材から取り外すことができる。このように取り外すことができると、クリップをパネル部材から取り外すとき、この一対の弾性爪の係合力に抗して(この取り付け状態のまま)クリップ孔から弾性爪を引き抜く必要がない。したがって、この一対の弾性爪の係合を強固にしておいても、クリップの取り外しに必要な操作力を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−211211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、一対の弾性爪がクリップ孔の向かい合う短辺側(長孔状の短辺側)を待ち受けるように取付部材に対してクリップを装着してしまうと、クリップ孔に対してアンカー部を挿し込んでも、クリップ孔に対して一対の弾性爪を係合させることができなかった。このようにクリップを装着してしまうと、クリップの誤装着となる。したがって、この誤装着を防止するため、取付部材に対してクリップを装着するとき、装着するクリップの一対の弾性爪がクリップ孔の向かい合う長辺側を待ち受けるように、クリップの装着方向に対して注意を払う必要があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、パネル部材からクリップを取り外すときの操作力を抑えつつ、取付部材に対するクリップの誤装着を防止できるクリップの装着構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、パネル部材に形成された長孔状のクリップ孔に対して取付部材に形成された挿込穴から案内溝を介して回転可能に装着されているクリップのアンカー部が挿し込まれると、このクリップ孔の向かい合う長辺の両縁に、このアンカー部に形成された一対の弾性爪が係合することで取付部材をパネル部材に取り付け可能となっており、一対の弾性爪をクリップ孔に係合させた取り付け状態からクリップ孔に対してクリップを略90°回転させると、この一対の弾性爪の係合が解消することで、この取り付け状態を解消できるクリップの装着構造であって、取付部材には、装着したクリップの一対の弾性爪がクリップ孔の向かい合う長辺を待ち受けるように、クリップの装着方向を規制する一対のリブが形成されており、一対のリブは、取付部材の挿込穴の縁における案内溝側に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、従来技術と同様に、クリップの取り外しに必要な操作力を抑えることができる。また、この構成によれば、取付部材にクリップを装着するとき、誤った方向(クリップの装着方向がベースプレートの短手方向)で挿し込もうとすると、クリップのベースプレートが取付部材のリブに干渉するため、この挿し込み作業を行うことができない。したがって、取付部材に対するクリップの誤装着を防止できる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクリップの装着構造であって、アンカー部には、リブに干渉することで、装着したクリップが抜け出ることを防止する脱落防止片が形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、取付部材に対するクリップの装着が完了した状態から、この装着が外される方向にクリップに対して外力が作用しても、クリップの脱落防止片が取付部材のリブに干渉することとなる。したがって、クリップが取付部材から抜け出ることを防止できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のクリップの装着構造であって、リブは、クリップの装着部を受け入れる側が緩やかな傾斜壁となっており、その反対側が切り立った立壁となっていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、クリップの装着部をカバー部材の取付部に装着するときのみ、クリップのベースプレートの脱落防止片はリブを乗り越えることができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のクリップの装着構造であって、アンカー部には、取付部材に形成の第1の窪みに入り込むことでクリップの空転を防止する弾性突起が形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、取付部材に対して装着したクリップが空転(空回り)することを防止できる。したがって、例えば、客先に納品するときの輸送時の振動により、クリップが取付部材から外れることを防止できる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のクリップの装着構造であって、取付部材には、装着したクリップを略90°回転させると、第1の窪みから脱した弾性突起がその表面を乗り越えて入り込む第2の窪みが形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、組み付けた取付部材をパネル部材から取り外すために、クリップ孔に対してクリップを略90°回転させる作業を行うと、この回転に伴って、クリップの弾性突起は、第1の窪みから第2の窪みへ移動する。すなわち、第1の窪みに入り込んでいるクリップの弾性突起は、この第1の窪みから脱した後に取付部材の表面を乗り越えて、再度、第2の窪みへ入り込む。したがって、この再度の入り込みにより、作業者はクリップを略90°回転させたという節度感を得ることができる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のクリップの装着構造であって、第2の窪みは、回転させたクリップの回転誤差を吸収可能に入り込んだ弾性突起より大きく形成されている構成である。
この構成によれば、クリップの回転誤差が生じても、作業者はクリップを略90°回転させたという節度感を確実に得ることができる。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のクリップの装着構造であって、クリップのアンカー部には、矩形状のベースプレートが形成されており、一対のリブの間隔は、回転させたクリップのベースプレートの長手方向の長さより短く設定されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、組み付けた取付部材をパネル部材から取り外すために、クリップ孔に対してクリップを略90°回転させる作業を行った状態から、このクリップの装着が外される方向にクリップに対して外力が作用しても、クリップのアンカー部が取付部材のリブに干渉することとなる。したがって、クリップが取付部材から抜け出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係るインナーパネルにカバー部材を組み付ける前の状態を示す分解斜視図である。
図2図1のクリップの拡大図である。
図3図2のクリップを下側から見た図である。
図4図1のカバー部材の主要部の拡大図である。
図5】実施例に係るクリップをカバー部材に装着する手順を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図6図5において、装着の誤り例を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図7図5の次の手順を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図8図7の次の手順を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図9図8において、装着したクリップの装着部の抜け防止の作用を説明する図であり、(A)は斜視図、(B)は縦断面図である。
図10図1において、インナーパネルにカバー部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図11図10において、クリップとインナーパネルのクリップ孔との関係を示す模式図である。
図12図10において、クリップとカバー部材の取付孔との関係を示す模式図である。
図13図10において、インナーパネルに組み付けたカバー部材を取り外す手順を説明する図である。
図14図13において、クリップとインナーパネルのクリップ孔との関係を示す模式図である。
図15図13において、クリップとカバー部材の取付孔との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜15を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、「取付部材」が「車両ドアの内装部材であるカバー部材2」であり、「パネル部材」が「車両ドアのインナーパネル3」である形態を説明することとする。図1に示すように、インナーパネル3に対してクリップ1を介してカバー部材2が組み付けられる。以下に、これらクリップ1、カバー部材2およびインナーパネル3を個別に説明していく。
【0012】
まず、図2〜3を参照して、クリップ1から説明していく。クリップ1は、主として、インナーパネル3に取り付けられるアンカー部10と、カバー部材2に装着される装着部20とから構成されている。
【0013】
アンカー部10は、矩形状に形成されたベースプレート12と、ベースプレート12から支柱14を介して形成された一対の弾性爪14a、14aとから構成されている。ベースプレート12の長手側の両縁には、このベースプレート12から延出する格好を成す脱落防止片12a、12aが対向するように形成されている。また、ベースプレート12における支柱14側の面に対する反対面には、このベースプレート12の短手側に向けて下り傾斜を成す弾性片12b、12bが対向するように形成されている。この弾性片12bにおけるベースプレート12側の面に対する反対面には、突起12cが形成されている。このように突起12cは弾性片12bに形成されているため、この突起12cは弾性作用を備えることとなる。この記載が、特許請求の範囲に記載の「弾性突起」に相当する。
【0014】
一方、装着部20は、ベースプレート12における支柱14側の面に対する反対面から延出するように円柱状に形成された支柱22と、支柱22の外周面から突出する格好を成すように形成されたフランジ24と、支柱22の先端に形成されたスタビライザー26とから構成されている。
【0015】
フランジ24は、このフランジ24自身と弾性片12b、12bとの間で取付部30を挟み込み可能に形成されている。なお、このフランジ24と弾性片12b、12bとの間で取付部30を挟み込むと、挟み込んだ取付部30の表面30aに対して弾性片12bの撓みの反力が作用する。これにより、カバー部材2に装着した装着部20が取付部30から抜けることを抑制できる。
【0016】
スタビライザー26は、カバー部材2の取付部30に装着部20を装着したとき、このスタビライザー26の撓みの反力が取付部30の底面30bに作用するように形成されている。これにより、カバー部材2に装着した装着部20にガタツキが生じることを抑制できる。また、スタビライザー26の下面には、工具(図示しない)を挿し込んでクリップ1を回転させることができる工具挿込孔26aが形成されている。
【0017】
次に、図4を参照して、カバー部材2を説明する。カバー部材2には、上述したようにクリップ1の装着部20を装着可能な取付部30が適宜の位置に形成されている。取付部30には、案内溝32を介して円状の取付孔34が形成されている。取付孔34は、クリップ1の支柱22より僅かに大きく形成されている。また、取付部30には、取付孔34を境にして案内溝32と対向する位置に第1の窪み34aが形成されている。また、取付部30には、案内溝32と第1の窪み34aとを結ぶ線と直交する位置に第2の窪み34b、第3の窪み34cが形成されている。
【0018】
また、取付部30には、案内溝32の入口側の近傍に一対のリブ36、36が形成されている。一対のリブ36、36は、その間隔がクリップ1のベースプレート12の短手側の長さより僅かに長くなるように形成されている。これにより、クリップ1の装着部20をカバー部材2の取付部30に装着するとき、この装着方向が所定の方向(ベースプレート12の長手方向)のみ受け入れることができる。このように装着方向が所定の方向となるように取付部30に装着部20を装着すると、一対の弾性爪14a、14aがインナーパネル3のクリップ孔40の向かい合う長辺を待ち受けることとなる。
【0019】
なお、この装着方向が所定の方向に対して直交する方向(ベースプレート12の短手方向)となるように取付部30に装着部20を装着しようとしても、クリップ1のベースプレート12が一対のリブ36、36に干渉するため、この装着を行うことができない。これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「クリップの装着方向を規制する一対のリブが形成されている」に相当する。
【0020】
また、リブ36は、クリップ1の装着部20を受け入れる側が緩やかな傾斜壁36aとなっており、その反対側が切り立った立壁36bとなっている。これにより、クリップ1の装着部20をカバー部材2の取付部30に装着するときのみ、クリップ1のベースプレート12の脱落防止片12aはリブ36を乗り越えることができる。
【0021】
最後に、図1に戻って、インナーパネル3を説明する。インナーパネル3には、このインナーパネル3に対してカバー部材2を組み付けるために、カバー部材2に装着されたクリップ1のアンカー部10を挿し込み可能な長孔状のクリップ孔40が形成されている。クリップ孔40の短手側の長さは、カバー部材2に装着したクリップ1のアンカー部10を挿し込んだとき、挿し込んだアンカー部10の一対の弾性爪14a、14aが長手側の両縁にそれぞれ係合するように設定されている。
【0022】
一方、このクリップ孔40の長手側の長さは、係合させたクリップ1を略90°回転させると(クリップ孔40の長手側の両縁に一対の弾性爪14a、14aをそれぞれ係合させたアンカー部10を略90°回転させると)、この係合が解消する(クリップ孔40の長手側の両縁に対する一対の弾性爪14a、14aの係合が脱落する)するように設定されている。
【0023】
続いて、図1、5〜12を参照して、インナーパネル3に対してクリップ1を介してカバー部材2を組み付ける手順を説明する。まず、作業者は、図1に示す状態から、図5図5(A)、図5(B))に示すように、クリップ1のフランジ24と弾性片12b、12bとの間に取付部30を挟み込むように、カバー部材2の案内溝32にクリップ1の支柱22を挿し込んでいく作業を行う。なお、この図5には、図面から明らかなように、(A)と(B)とが存在している。そのため、以下において、単に、図5と記すと、図5(A)、図5(B)の両方を意味することとする。このことは、図6〜9においても同様である。
【0024】
この挿し込み作業は、図5に示すように、クリップ1のベースプレート12の長手方向が挿し込み方向となるように行う。このとき、図6に示すように、誤って、クリップ1のベースプレート12の短手方向が挿し込み方向となるように行ってしまうと、クリップ1のベースプレート12がカバー部材2のリブ36、36に干渉してしまう。そのため、この挿し込み作業を行うことができない。すなわち、クリップ1の誤装着を防止できる。
【0025】
図5に戻って、この挿し込み作業を行うと、図7に示すように、クリップ1の脱落防止片12aは傾斜壁36aを介してリブ36を乗り越える。さらに、この挿し込み作業を行うと、図8に示すように、クリップ1の支柱22は取付孔34に到達する。これにより、カバー部材2の取付部30にクリップ1の装着部20の装着が完了する。
【0026】
このとき、既に説明したように、クリップ1の弾性片12b、12bはカバー部材2の取付部30の表面30aによって撓ませられた状態となる(図7参照)。これにより、装着した装着部20が取付部30から抜けることを抑制できる。また、このとき、既に説明したように、クリップ1のスタビライザー26の撓みの反力がカバー部材2の底面30bに作用している(図8参照)。これにより、装着した装着部20にガタツキが生じることを抑制できる。
【0027】
なお、この図8に示す状態(装着部20の装着が完了した状態)から、この装着が外される方向に装着部20に対して外力が作用しても、図9に示すように、クリップ1の脱落防止片12a、12aがカバー部材2のリブ36、36の立壁36b、36bに干渉することとなる。したがって、装着部20がカバー部材2の取付部30から抜け出ることを防止できる。
【0028】
次に、この図8に示す状態から、インナーパネル3のクリップ孔40に対してクリップ1のアンカー部10を挿し込んでいく作業を行う。すると、図10〜12に示すように、挿し込んだアンカー部10の一対の弾性爪14a、14aがクリップ孔40の長手側の両縁にそれぞれ係合する。これにより、インナーパネル3に対してクリップ1を介したカバー部材2の組み付けが完了する。このように組み付けが完了したとき、クリップ1の突起12c、12cは、案内溝32、第1の窪み34aに入り込んだ状態となっている(図12参照)。
【0029】
最後に、組み付けたカバー部材2をインナーパネル3から取り外す手順を説明する。まず、図13に示すように、カバー部材2の貫通孔30cを介して工具(図示しない)をクリップ1の工具挿込孔26aに挿し込んでクリップ孔40に対してクリップ1を略90°回転させる作業を行う。すると、図14に示すように、アンカー部10の一対の弾性爪14a、14aの係合が解消するため、クリップ孔40からアンカー部10から引き抜くことができる。すなわち、組み付けたカバー部材2をインナーパネル3から取り外すことができる。
【0030】
なお、図15に示すように、クリップ1の回転に伴って、クリップ1の突起12c、12cは、案内溝32、第1の窪み34aから第2の窪み34b、第3の窪み34cへ移動する。すなわち、案内溝32、第1の窪み34aに入り込んでいるクリップ1の突起12c、12cは、これら案内溝32、第1の窪み34aから脱した後に取付部30の表面30aを乗り越えて、再度、第2の窪み34b、第3の窪み34cへ入り込む。
【0031】
このようにクリップ1の回転には、突起12c、12cが取付部30の表面を乗り越えることが必要となる。したがって、クリップ1の空回りを防止できる。また、この再度の入り込みにより、作業者はクリップ1を略90°回転させたという節度感を得ることができる。
【0032】
本発明の実施例に係るクリップ1の装着構造は、上述したように構成されている。この構成によれば、インナーパネル3のクリップ孔40は長孔状に形成されている。そのため、従来技術と同様に、クリップ1の取り外しに必要な操作力を抑えることができる。また、この構成によれば、取付部30には、案内溝32の入口の近傍に一対のリブ36、36が形成されている。一対のリブ36、36は、その間隔がクリップ1のベースプレート12の短手側の長さより僅かに長くなるように形成されている。そのため、カバー部材2の案内溝32にクリップ1の支柱22を挿し込んでいく作業を行うとき、誤った方向(クリップ1の装着方向が所定の方向に対して直交する方向)で挿し込もうとすると、クリップ1のベースプレート12がカバー部材2のリブ36、36に干渉するため、この挿し込み作業を行うことができない。したがって、カバー部材2に対するクリップ1の誤装着を防止できる。
【0033】
また、この構成によれば、ベースプレート12の長手側の両縁には、このベースプレート12から延出する格好を成す脱落防止片12a、12aが対向するように形成されている。そのため、装着部20の装着が完了した状態から、この装着が外される方向に装着部20に対して外力が作用しても、クリップ1の脱落防止片12a、12aがカバー部材2のリブ36、36の立壁36b、36bに干渉することとなる。したがって、装着部20がカバー部材2の取付部30から抜け出ることを防止できる。
【0034】
また、この構成によれば、弾性片12b、12bにおけるベースプレート12側の面に対する反対面には、突起12c、12cが形成されている。この両突起12cは、インナーパネル3に対してクリップ1を介したカバー部材2の組み付けが完了したとき、案内溝32、第1の窪み34aに入り込んだ状態となっている。そのため、カバー部材2に対して装着したクリップ1が空転(空回り)することを防止できる。したがって、例えば、客先に納品するときの輸送時の振動により、クリップ1がカバー部材2から外れることを防止できる。
【0035】
また、この構成によれば、取付部30には、案内溝32と第1の窪み34aとを結ぶ線と直交する位置に第2の窪み34b、第3の窪み34cが形成されている。そのため、組み付けたカバー部材2をインナーパネル3から取り外すために、クリップ孔40に対してクリップ1を略90°回転させる作業を行うと、この回転に伴って、クリップ1の突起12c、12cは、案内溝32、第1の窪み34aから第2の窪み34b、第3の窪み34cへ移動する。すなわち、案内溝32、第1の窪み34aに入り込んでいるクリップ1の突起12c、12cは、これら案内溝32、第1の窪み34aから脱した後に取付部30の表面30aを乗り越えて、再度、第2の窪み34b、第3の窪み34cへ入り込む。したがって、この再度の入り込みにより、作業者はクリップ1を略90°回転させたという節度感を得ることができる。
【0036】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、「取付部材」が「車両ドアの内装部材であるカバー部材2」であり、「パネル部材」が「車両ドアのインナーパネル3」である形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「取付部材」が「各種の取付部材」であり、「パネル部材」が「各種のパネル部材」であっても構わない。
【0037】
また、実施例では、カバー部材2には、クリップ1を取り付け可能な取付部30が1箇所形成されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、カバー部材2には、クリップ1を取り付け可能な取付部30が複数(例えば、2箇所、4箇所等)形成されていても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 クリップ
2 カバー部材(取付部材)
3 インナーパネル(パネル部材)
10 アンカー部
12a 脱落防止片
12c 突起(弾性突起)
14a 弾性爪
34a 第1の窪み
34b 第2の窪み
36 リブ
40 クリップ孔

図1
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