(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体側部材に固定されるブラケットを有し、前記ブラケットに回動可能に軸支される操作レバーを起倒することで、前記操作レバーの操作力が、イコライザ及び複数のブレーキケーブルを介して、複数の車輪ブレーキに対するブレーキ操作力としてそれぞれ個別に伝達されるパーキングブレーキ装置において、
引張荷重検出手段によって前記ブレーキケーブルに付与される引張荷重を検出する際、前記引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部を有し、
前記被取付部は、前記イコライザと前記ブラケットとの間に配置され、
前記イコライザは、
前記ブレーキケーブルの先端に設けられ、ねじ部と柱状部とを有する前記被取付部と、
前記ねじ部に螺合するケーブル調整用ナットと、
前記ねじ部を挿通する貫通孔を有する嵌合ピンと、
前記嵌合ピンを回転自在に軸支する係止具と、
を備え、
前記被取付部は、前記柱状部の平坦な側面であることを特徴とするパーキングブレーキ装置。
車体側部材に固定されるブラケットと、前記ブラケットに回動可能に軸支される操作レバーと、ブレーキケーブルに連結される連結ロッドと、前記操作レバー側の移動を前記ブレーキケーブル側に中継する中継部材とを有するパーキングブレーキ装置の製造方法において、
前記連結ロッドには、前記ブレーキケーブルに付与される引張荷重を検出する引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部と、前記中継部材と摺接する平面部とが設けられ、
互いに対向する一組の型部材で所定長の円柱部材を挟み込み、前記連結ロッドの前記平面部と前記被取付部とが同時に加圧成形されることを特徴とするパーキングブレーキ装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたパーキングブレーキ引き代検査装置では、パーキングブレーキのハンドルに対して検出器を引っ掛けた状態で操作者が引っ張ることで引張荷重等を検出する必要がある。
【0006】
この場合、パーキングブレーキのハンドルからブレーキケーブルまでの間には、例えば、ボールやノッチといった部材が介在するため、ハンドル自体の引張荷重を検出しても、ブレーキケーブル自体に付与される引張荷重を正確に検出することができない、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ブレーキケーブルに付与される引張荷重の検出精度を向上させ、ブレーキケーブルの引張荷重を正確に調整することが可能なパーキングブレーキ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、車体側部材に固定されるブラケットを有し、前記ブラケットに回動可能に軸支される操作レバーを起倒することで、前記操作レバーの操作力が、イコライザ及び複数のブレーキケーブルを介して、複数の車輪ブレーキに対するブレーキ操作力としてそれぞれ個別に伝達されるパーキングブレーキ装置において、引張荷重検出手段によって前記ブレーキケーブルに付与される引張荷重を検出する際、前記引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部を有し、前記被取付部は、前記イコライザと前記ブラケットとの間に配置され
、前記イコライザは、前記ブレーキケーブルの先端に設けられ、ねじ部と柱状部とを有する前記被取付部と、前記ねじ部に螺合するケーブル調整用ナットと、前記ねじ部を挿通する貫通孔を有する嵌合ピンと、前記嵌合ピンを回転自在に軸支する係止具と、を備え、前記被取付部は、前記柱状部の平坦な側面であることを特徴とする。
さらに、本発明は、車体側部材に固定されるブラケットを有し、前記ブラケットに回動可能に軸支される操作レバーを起倒することで、前記操作レバーの操作力が、イコライザ及び複数のブレーキケーブルを介して、複数の車輪ブレーキに対するブレーキ操作力としてそれぞれ個別に伝達されるパーキングブレーキ装置において、引張荷重検出手段によって前記ブレーキケーブルに付与される引張荷重を検出する際、前記引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部を有し、前記被取付部は、前記イコライザと前記ブラケットとの間に配置され、さらに、前記ブラケットに配置され、一端側が前記操作レバー又は前記操作レバー側の移動を前記ブレーキケーブル側に中継する中継部材に連結され、他端側が前記ブレーキケーブルに連結される連結ロッドを備え、前記被取付部は、前記連結ロッドに設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部を設けることで、ブレーキケーブルに付与される引張荷重の検出精度を向上させ、ブレーキケーブルの引張荷重を正確に調整することができる。また、本発明によれば、引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部をイコライザとブラケットとの間に配置することにより、パーキングブレーキ装置を車両に組み付けた状態で引張荷重を検出する作業を遂行することができる。このため、本発明では、引張荷重の検出作業を容易に行なうことができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、ブラケットや操作レバー側の構造に拘わらず、引張荷重検出手段を取り付けるための被取付部をイコライザの柱状部に設けることができるため、汎用性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明は、前記ブラケットに配置され、一端側が前記操作レバー又は前記操作レバー側の移動を前記ブレーキケーブル側に中継する中継部材に連結され、他端側が前記ブレーキケーブルに連結される連結ロッドを備え、前記被取付部は、前記連結ロッドに設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部を連結ロッドに設けることにより、ブレーキケーブルに直接連結される連結ロッドに付与される引張荷重を好適に検出することができる。この結果、本発明では、ブレーキケーブルに付与される引張荷重の検出精度を向上させ、ブレーキケーブルの引張荷重を正確に調整することができる。
【0014】
さらにまた、本発明は、前記連結ロッドは円柱状に設けられ、前記連結ロッドの一端側には、前記中継部材又は前記操作レバーと摺接する平面部が設けられ、前記連結ロッドの略中央部には、
前記柱状部が設けられ、前記柱状部の軸方向と直交する断面は、前記平面部の平面が延在する方向に対角の頂点を有する多角形で
あることを特徴とする。
【0015】
一般的に、引張荷重を正確に検出するためには、引張荷重検出手段を平坦な面にセットする必要がある。例えば、引張荷重検出手段によって連結ロッドを挟み込んだ状態で引張荷重を検出する場合、連結ロッドの被検出部位に少なくとも対向する2つの平面が必要となる。この2つの平面を連結ロッドに形成する際、円柱状の連結ロッドをプレス加工によって加圧成形するが、中継部材への取り付けのために元々必要であった平面部のプレス加工の加圧方向と異なる方向に加圧方向を設定してしまうと、加工工数が増加し製造工程が煩雑となる。また、プレス加工によって前記平面を形成するためには、プレス金型の合わせ部分でバリが発生して前記平面を形成することが難しいことを考慮する必要がある。
【0016】
そこで、本発明では、柱状部の軸方向と直交する断面を、平面部の平面が延在する方向に対角の頂点を有する多角形とすることで、中継部材と摺接する平面部を設ける際のプレス加工と同時に、被取付部である柱状部の平坦な側面を成形することができる。加えて、本発明では、プレス金型の合わせ部分を断面多角形の頂点とすることができるため、対向する平面を簡便に成形することができると共に、容易な加工によって引張荷重の検出精度を向上させることが可能な被取付部(柱状部の平坦な側面)を設けることができる。
【0017】
また、連結ロッドの引張荷重の検出は、通常、パーキングブレーキ装置が車体に組み付けられた状態で行なわれ、連結ロッドがブラケットと車体側部材(例えば、車体フロア)に囲まれている。ゆえに、引張荷重検出手段は、車幅方向から連結ロッドの被取付部に対して取り付ける必要がある。
【0018】
そこで、本発明では、柱状部の軸方向と直交する断面を、平面部の平面が延在する方向に対角の頂点を有する多角形とすることで、例えば、ひずみゲージが装着された挟持部によって引張荷重検出手段を構成した場合、被取付部を構成する平面を、車幅方向成分を含んだ角度で設定することができて好適である。仮に、被取付部を構成する平面が、車両上下方向に向けて設定された場合、引張荷重検出手段の挟持部を車両上下方向から取り付ける必要があり、挟持部が他の部材と干渉する不具合がある。本発明では、前記した加工工程の増加と、このような他の部材との干渉をそれぞれ回避して両者の利点を調和(両立)させることができる。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記ブラケットが、車両前後方向に延在して前記操作レバーを回動可能に軸支する縦壁と、前記縦壁の車両前後方向にそれぞれ設けられる一組の脚部と、前記脚部の各下端から車幅方向外方に向けて互いに同一方向に延び、前記車体側部材に固定される一組の固定座面とを備え、前記連結ロッドは、前記縦壁を基準として前記一組の固定座面の少なくとも一方と反対側に配置されることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、連結ロッドが縦壁を間にして固定座面の少なくとも一方と反対側に配置されることで、他の部材と干渉することがなく引張荷重検出手段を連結ロッドの被取付部に対して取り付けることが容易となる。
【0021】
さらにまた、本発明は、前記柱状部に、相互に対向する一対の前記平坦な側面が設けられ、前記引張荷重検出手段は、前記一対の前記平坦な側面を挟持する一対の挟み部と、前記一対の挟み部の相互に対向する内面にそれぞれ設けられるひずみゲージと、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、引張荷重検出手段を、一対の挟み部と、前記挟み部の内面にそれぞれ設けられるひずみゲージとによって構成することで、簡素な構造によって安価に製造することができる。また、連結ロッドの柱状部の一対の平坦な側面を一対の挟み部によって挟み込むことで、引張荷重検出手段を簡便に取り付けることができ、荷重検出の作業性を向上させることができる。
【0023】
さらにまた、本発明は、車体側部材に固定されるブラケットと、前記ブラケットに回動可能に軸支される操作レバーと、ブレーキケーブルに連結される連結ロッドと、前記操作レバー側の移動を前記ブレーキケーブル側に中継する中継部材とを有するパーキングブレーキ装置の製造方法において、前記連結ロッドには、前記ブレーキケーブルに付与される引張荷重を検出する引張荷重検出手段が取り付けられる被取付部と、前記中継部材と摺接する平面部とが設けられ、互いに対向する一組の型部材で所定長の円柱部材を挟み込み、前記連結ロッドの前記平面部と前記被取付部とが同時に加圧成形されることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、連結ロッドにさらに柱状部を設けた場合であっても、連結ロッドの平面部と柱状部との同時加工によって、連結ロッドに対する加工工程が増加することを回避することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、ブレーキケーブルに付与される引張荷重の検出精度を向上させ、ブレーキケーブルの引張荷重を正確に調整することが可能なパーキングブレーキ装置及びその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパーキングブレーキ装置の構成斜視図、
図2(a)は、
図1のパーキングブレーキ装置を構成する連結ロッドの斜視図、
図2(b)は、
図2(a)のY−Y線に沿った縦断面図である。なお、各図中における「前後」、「左右」、「上下」は、車両前後方向、車幅方向(左右方向)、車両上下方向をそれぞれ示している。
【0028】
本発明の実施形態に係るパーキングブレーキ装置10は、例えば、駐停車時に車両の車輪を手動操作によってロックする機能を有する。このパーキングブレーキ装置10は、例えば、車両前後方向に沿って延在するセンタコンソールの上面で運転席に近接する側に配置される操作部12と、操作部12によって発生した引っ張り力(操作力)を2本のブレーキケーブル14によって伝達する操作力伝達部16と、ブレーキケーブル14を介して引っ張り力がリヤブレーキ(ブレーキユニット)18に伝達され、リヤブレーキ18の制動力によって図示しない後輪をロックする制動部20とから構成される。
【0029】
操作部12は、例えば、ボルト等の固定部材によってフロアパネル(車体側部材)22の上面に固定され車両前後方向に沿って延在する縦壁24を有するブラケット26と、ブラケット26の上方に配置され縦壁24に図示しない軸部材を介して回動可能に軸支されるパーキングブレーキレバー(操作レバー)28と、パーキングブレーキレバー28に一端が連結される連結ワイヤ30とを備えて構成されている。
【0030】
パーキングブレーキレバー28は、運転者が操作時に把持するためのグリップ部32と、前記グリップ部32の下部側に一体的に形成されたスカート部34とを有する。グリップ部32の先端部には、出没可能に設けられ運転者が押圧することでリヤブレーキ18のロック状態を解除するロック解除ボタン36が突出して設けられる。
【0031】
また、ブラケット26の縦壁24の上部には、図示しないラチェットプレートが装着されている。ラチェットプレートの円弧状の外周面には、図示しない複数のラチェット歯が形成されている。パーキングブレーキレバー28は、図示しない軸部材を介して回動可能に軸支されている。図示しないラチェット爪の先端は、ラチェットプレートの外周に形成されたラチェット歯の1つに選択的に噛合する。
【0032】
ブラケット26の縦壁24の下端には、車両前後方向にそれぞれ二股状に分岐する脚部40a、40bが設けられている。脚部40a、40bには、この脚部40a、40bの各下端から車幅方向側方で互いに同一方向(
図1中では右方向)に延び、フロアパネル(車体側部材)22に固定される一組の固定座面42a、42bが設けられている。
【0033】
脚部40a、40b及び固定座面42a、42bの車両前後方向の側縁部には、運転席側に向かって屈曲したフランジ部44が形成され、このフランジ部44によって脚部40a、40b及び固定座面42a、42bの剛性・強度を高めている。
【0034】
一組の固定座面42a、42bは、所定間隔離間し車両前後方向に沿って略直線状に配置される。各固定座面42a(42b)には、ボルト等の固定部材が挿通される円形状の挿通孔51が形成される。なお、
図1中では、固定座面42a、42bの挿通孔51に挿通される固定部材の図示を省略している。
【0035】
車両前後方向に沿った一組の脚部40a、40bの間で縦壁22の下部側には、枢軸ピン52を回動中心として一対の三角形状のリンクプレート(中継部材)54が所定角度だけ回動可能に軸支される。このリンクプレート54は、パーキングブレーキレバー28の移動(変位)をブレーキケーブル14側に中継して伝達するものである。
【0036】
枢軸ピン52の下方側でリンクプレート54の一つの頂点部には、連結ピン56を介して連結ワイヤ30の他端が連結される。また、前記一つの頂点部と対向するリンクプレート54の他の頂点部には、連結ピン58を介して連結ロッド60の一端部が連結される。
【0037】
操作力伝達部16は、一端側がリンクプレート54に連結され他端側がブレーキケーブル14に連結される連結ロッド60と、連結ロッド60の他端部に連結されるイコライザ機構62と、イコライザ機構62から分岐された2本のブレーキケーブル14と、ブレーキケーブル14の端部をフロアパネル22の所定位置に固定する固定金具64と、ブレーキケーブル14の延在方向をガイドする複数のガイド部材66とを有する。
【0038】
連結ロッド60は、全体として円柱状に設けられ車両前後方向に沿って延在する。また、連結ロッド60には、一端部が後記する柱状部84に係止され他端部が後記する係止具68に係止されるコイルスプリング70が外装される。このコイルスプリング70は、係止具68をばね力によってリンクプレート54から離間する方向に押圧するものである。
【0039】
さらに、連結ロッド60は、縦壁24を基準として一組の固定座面42a、42bの少なくとも一方と反対側に配置されている。換言すると、連結ロッド60は、脚部40bを基準として、脚部40bの下端から車幅右方向に延在する固定座面42bに対し反対側の車幅左方向に位置する(
図1の部分拡大図参照)。
【0040】
図2(a)に示されるように、連結ロッド60の軸方向に沿った一端部には、一対のリンクプレート54間で挟持されると共に、連結ピン58を挿通させる貫通孔72を有するリング部74が設けられる。リング部74に連続する部位には、側面視して略長円状からなる平面76を有し、一対のリンクプレート54の内壁とそれぞれ摺接する平面部78が設けられる。連結ロッド60の他端部は、ねじ部82に螺合される調整ナット80を介して係止具68に連結される。
【0041】
連結ロッド60の略中央部には、柱状部(角型柱状部)84が設けられる。この柱状部84は、
図2(b)に示されるように、連結ロッド60の軸方向と直交する縦断面が、平面部78の平面76が延在する方向に対角の頂点86を有する菱形に形成されている。柱状部84には、平坦な側面で形成されて相互に対向する一対の平坦面88a、88bが設けられる。柱状部84に設けられたこの一対の平坦面88a、88bは、ブレーキケーブル14に付与される引張荷重を検出する引張荷重検出器(引張荷重検出手段)90を取り付けるための被取付部として機能するものである。引張荷重検出器90は、後記で詳細に説明する。
【0042】
なお、柱状部84の軸方向と直交する縦断面の形状は、菱形に限定されるものではなく、平面部78の平面76が延在する方向に対角の頂点86を有する多角形(例えば、四角形、六角形、八角形等)であればよい。
【0043】
イコライザ機構62は、分岐した2本のブレーキケーブル14の張力バランスを調整するものであり、断面略U字状に屈曲して形成された係止具68と、連結ロッド60のねじ部82に螺合されねじ部82に対するねじ込み量を増減させることで連結ロッド60の引張力を調整する調整ナット80とを有する。係止具68には、ブレーキケーブル14の円柱状の嵌合部が嵌挿される貫通孔が形成される。
【0044】
各ブレーキケーブル14は、鉄製の細いワイヤで形成されたインナケーブルと、薄い帯状体を巻回して筒状体とすることで撓曲可能に設けられ、内部のインナケーブルを被覆するアウタケーブルと、例えば、ポリエチレンコーティングで形成されアウタケーブルを被覆する被覆部材とから構成される。
【0045】
アウタケーブルのリヤブレーキ18側の一方のエンドは、後記するケーブル接続部96(
図1参照)に固定される固定部材97(
図1参照)に設けられる。インナケーブルのリヤブレーキ18側の一方のエンドは、インナケーブルの端部を挟持する挟持部材99(
図1参照)の端面に設けられる。また、操作部12に近接するアウタケーブルの他方のエンドは、固定金具64の領域に設けられ、インナケーブルの他方のエンドは、係止具68(
図1参照)の貫通孔に嵌挿される円柱状の嵌合部に設けられる。
【0046】
図1に示されるように、リヤブレーキ18は、ブレーキケーブル14の他端部が接続されるケーブル接続部96と、図示しない車輪に固定されて車輪と共に回転するディスク98と、ディスク98を押圧する図示しないパッドを有するパッド部100とから構成される。
【0047】
図3は、引張荷重検出器及び荷重調整装置の概略斜視図、
図4は、ひずみゲージの一部破断概略構成図、
図5は、
図3に示す引張荷重検出器の拡大斜視図、
図6は、
図5のVI−VI線に沿った縦断面図、
図7は、
図5のVII−VII線に沿った縦断面図である。
【0048】
図3に示されるように、引張荷重検出器90は、例えば、洗濯バサミ形状からなり、後記する板ばね部材101のばね力によって柱状部84の対向する一対の平坦面88a、88bを挟み込む一対の挟み部102を有する。一対の挟み部102の相互に対向する内面には、ひずみゲージ104がそれぞれ設けられる。
【0049】
本実施形態では、引張荷重検出器90を、一対の挟み部102と、前記挟み部102の内面にそれぞれ設けられるひずみゲージ104とによって構成することで、簡素な構造によって安価に製造することができる。また、連結ロッド60の柱状部84の一対の平坦面88a、88bを一対の挟み部102によって挟み込むことで、引張荷重検出器90を簡便に取り付けることができ、荷重検出の作業性を向上させることができる。
【0050】
図3に示されるように、引張荷重検出器90は、リード線106を介して荷重調整装置108と電気的に接続される。荷重調整装置108は、後記するブレーキケーブル14の引張荷重の調整作業において、孔部内に調整ナット80が装着される軸部110を有するナット取付部112と、図示しない回転駆動源を駆動させ軸部110を正転又は逆転させることで連結ロッド60のねじ部82に対する調整ナット80のねじ込み量を調整する図示しない回転機構と、引張荷重検出器90で検出された引張荷重に対応する検出信号を、例えば、デジタル信号に変換してデジタル表示する図示しない表示部とを備える。
【0051】
図4に示されるように、ひずみゲージ104は、底面に測定面120を有するプレート状の検出体122と、検出体122の上面に積層される軟質ゴム層124と、軟質ゴム層124の上面に積層される金属プレート126とから構成される。なお、検出体122の測定面120には、図示しない金剛砂が塗布されることが好ましい。
【0052】
ここで、ひずみゲージ104によりひずみを検出する動作原理を概略説明する。金属プレート126に対して図示しない押圧力付与手段により矢印方向に沿って押圧力が付与されると、押圧荷重が軟質ゴム層124を介して検出体122の全体に伝達される。押圧荷重が検出体122に伝達されることで、検出体122の底面である測定面120と、軟質ゴム層124を介して押圧荷重が伝達される検出体122の上面である測定対象面128との間に摩擦が発生する。この摩擦によって検出体122の上面である測定対象面128にひずみが発生した場合、弾性係数が低い軟質ゴム層124は、ひずみが発生した測定対象面128(上面)に検出体122が追従することを妨げないため、検出体122によってひずみを検出することができる。
【0053】
図5〜
図7に示されるように、一対の挟み部102は、断面山形状凸部130aと断面山形状凹部130bとの係合部(
図7参照)を中心として所定角度だけ開閉可能に設けられた上部側ケース132a及び下部側ケース132bと、上部側ケース132aの天井面側及び下部側ケース132bの内部底面側に保持される一対のひずみゲージ104と、上部側ケース132aの両側面に相互に対向して固定される一対の上部側アームプレート134と、下部側ケース132bの両側面に相互に対向して固定される一対の下部側アームプレート136とを含む。
【0054】
さらに、一対の挟み部102は、断面略コ字状(
図7参照)からなり上部側ケース132aと下部側ケース132bと(一対の挟み部102)を閉じる方向に荷重(ばね力)を付与する板ばね部材101と、一方のひずみゲージ104と上部側ケース132aとの間、及び、他方のひずみゲージ104と下部側ケース132bとの間に介装され、ひずみゲージ104を測定面120側に向かって押圧する一対の板ばね138と、一対の上部側アームプレート134の間、及び、一対の下部側アームプレート136との間に設けられる把持部140を備える。なお、一対の下部側アームプレート136には、上部側アームプレート134側に向かって突出し、把持部140を把持して一対の挟み部102を所定角度だけ開いたときに支点となる突起片136aが設けられる。
【0055】
板ばね部材101は、
図7に示されるように、上部側ケース132a及び下部側ケース132bに形成された長溝142にそれぞれ係合する断面湾曲状の係合突起144を有し、この係合突起144によって上部側ケース132aと下部側ケース132bと(一対の挟み部102)を閉じる方向に荷重(ばね力)を付与することができる。
【0056】
図8は、引張荷重検出器の一対の挟み部で連結ロッドの柱状部を挟み込んだ状態の縦断面図である。
【0057】
作業者が把持部140を把持して一対の挟み部102を所定角度だけ開いて連結ロッド60の柱状部84(平坦面88a、88b)を挟持したとき、
図8に示されるように、板ばね部材101のばね力によって、一対の挟み部102を閉じる方向の力F1が付与されると共に、板ばね138によって、ひずみゲージ104を測定面120側に向かって押圧する力F2が作用する。この力F1及び力F2により、一対のひずみゲージ104で連結ロッド60の柱状部84のひずみ(引張荷重)を好適に検出することができる。
【0058】
本実施形態に係るパーキングブレーキ装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作及び作用効果について説明する。
【0059】
車両が駐停車した後、運転者がパーキングブレーキレバー28のグリップ部32を把持して引き上げることで、パーキングブレーキレバー28が図示しない支軸を回動中心として上方へと回動する。この回動動作に伴って、リンクプレート54を介してパーキングブレーキレバー28に連結された連結ロッド60、イコライザ機構62及びインナケーブルが引っ張られることで、リヤブレーキ18が作動して後輪がロックされる。
【0060】
パーキングブレーキレバー28が図示しない支軸を回動中心として所定角度だけ回動し運転者がグリップ部32から手を離すと、図示しないラチェット爪の先端がラチェットプレートのラチェット歯の1つと噛合し、パーキングブレーキレバー28がその噛合位置で保持される。
【0061】
続いて、ブレーキケーブル14の引張荷重を検出し、その引張荷重を所定値に調整する方法について、以下説明する。
図9(a)〜(c)は、ブレーキケーブルの引張荷重の調整工程を順に示した側面図である。
【0062】
図9(a)に示されるように、作業者によってパーキングブレーキレバー28が引かれていない状態において、引張荷重検出器90の一対の挟み部102によって連結ロッド60の略中央部の柱状部84を挟み込み、連結ロッド60に付与されるブレーキケーブル14の引張荷重を計測する。この場合、一対の挟み部102の対向する内壁(柱状部84との接触面)にそれぞれ設けられたひずみゲージ104(
図3参照)が、柱状部84の相互に対向する一対の平坦面88a、88b(
図2(a)参照)に対して当接する(
図8参照)。
【0063】
引張荷重検出器90によって検出された引張荷重は、リード線106を介して電気的に接続される荷重調整装置108の図示しない表示部に表示される。操作者は、荷重調整装置108の表示部を視認してブレーキケーブル14の引張荷重が所定値から低下しているか否かを判断し、引張荷重が所定値から低下しているときは、以下の調整作業を行う。
【0064】
続いて、パーキングブレーキレバー28のグリップ部32を把持して引き上げた後(
図9(a)の二点鎖線参照)、荷重調整装置108の図示しない回転機構を駆動させてナット取付部112の軸部110を所定方向に回転させる。軸部110の回転により軸部110の孔部内に装着された調整ナット80を締め込んで、所定値以上の引張荷重に設定する。なお、調整ナット80の締め込みは、荷重調整装置108を用いることがなく、作業者が図示しない工具を用いて手動によって行ってもよい。
【0065】
このように調整ナット80のねじ込み量を増減させることで、引張荷重を所定値に設定することができる。最後に、ロック解除ボタン36を押圧してパーキングブレーキレバー28のロックを解除し、パーキングブレーキレバー28を初期位置に復帰させることで調整作業が完了する。
【0066】
本実施形態では、引張荷重検出器90が取り付けられる被取付部(柱状部84の平坦面88a、88b))を連結ロッド60に設けることにより、ブレーキケーブル14に直接連結される連結ロッド60に付与される引張荷重を好適に検出することができる。このため、本実施形態では、ブレーキケーブル14に付与される引張荷重の検出精度を向上させ、ブレーキケーブル14の引張荷重を正確に調整することができる。
【0067】
ところで、一般的に、引張荷重を正確に検出するためには、引張荷重検出器90を平坦な面にセットすることが好ましい。例えば、引張荷重検出器90によって連結ロッド60を間に挟み込んだ状態で引張荷重を検出する場合、連結ロッド60の被検出部位に少なくとも対向する2つの平坦面88a、88bを有することが好ましい。この2つの平坦面88a、88bを連結ロッド60に形成する際、円柱状の連結ロッド60をプレス加工によって加圧成形するが、リンクプレート54への取り付けのために元々必要であった平面部78のプレス加工の加圧方向と異なる方向に加圧方向を設定してしまうと、後記する比較例のように加工工数が増加し製造工程が煩雑となる。また、プレス加工によって平坦面88a、88bを形成するためには、プレス金型の合わせ部分でバリが発生して平坦面88a、88bを形成することが難しいことを考慮する必要がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、柱状部84の軸方向と直交する断面を、平面部78の平面76が延在する方向に対角の頂点86を有する断面菱形とすることで(
図2(b)参照)、リンクプレート54と摺接する平面部78を設ける際のプレス加工と同時に、被取付部である柱状部84の平坦面88a、88bを成形することができる。加えて、本実施形態では、後記する一組の型部材120a、120b(
図10(b)参照)の合わせ部分を断面菱形(断面四角形)の頂点86とすることができるため、対向する平坦面88a、88bを簡便に成形することができると共に、容易な加工によって引張荷重の検出精度を向上させることが可能な被取付部(柱状部84の平坦面88a、88b)を設けることができる。
【0069】
さらに、連結ロッド60の引張荷重の検出は、通常、パーキングブレーキ装置10が車体に組み付けられた状態に行なわれ、連結ロッド60がブラケット26とフロアパネル22に囲まれている。ゆえに、引張荷重検出器90は、車幅方向から連結ロッド60の被取付部に対して取り付けることが好ましい。
【0070】
そこで、本実施形態では、柱状部84の軸方向と直交する断面を、平面部78の平面76が延在する方向に対角の頂点86を有する断面菱形とすることで(
図2(b)参照)、例えば、ひずみゲージ104が装着された一組の挟み部102によって引張荷重検出器90を構成した場合であっても、被取付部を構成する平坦面88a、88bを、車幅方向成分を含んだ角度で設定することができる。仮に、被取付部を構成する平坦面88a、88bが、車両上下方向に向けて設定された場合、引張荷重検出器90の挟み部102を車両上下方向から取り付ける必要があり、挟み部102が他の部材と干渉する不具合がある。本実施形態では、前記した加工工程の増加と、このような他の部材との干渉をそれぞれ回避して両者の利点を調和(両立)させることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、連結ロッド60が縦壁24を間にして固定座面42bと反対側に配置されることで、他の部材と干渉することがなく引張荷重検出器90を連結ロッド60の被取付部(柱状部84の平坦面88a、88b)に対して取り付けることが容易となる(
図1の部分拡大斜視図参照)。
【0072】
次に、連結ロッド60の製造方法について、以下説明する。
図10(a)は、本実施形態に係る連結ロッドに対する加圧方向を示す斜視図、
図10(b)は、本実施形態に係る連結ロッドの製造方法を示す模式図、
図10(c)は、比較例に係る連結ロッドに対する加圧方向を示す斜視図である。なお、
図10(c)に示す比較例に係る連結ロッド200では、
図10(a)に示す本実施形態に係る連結ロッド60と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。
【0073】
図10(b)に示されるように、互いに対向する一組の型部材120a、120bによって所定長の円柱部材(ビレット)122を挟み、この円柱部材122に対して
図10(a)の矢印方向に沿って加圧力A及び加圧力Bを同時に付与することで、連結ロッド60の平面部78の平面76と柱状部84の平坦面88a、88bとが同時又は略同時に加圧成形される。
【0074】
本実施形態では、連結ロッド60の平面部78の平面76に対する加圧方向と、柱状部84の平坦面88a、88bに対する加圧方向とを同一方向に設定しているため、平面部78と柱状部84とを1回の加圧工程(1プレス)で同時に成形することができる。この結果、本実施形態では、平面部78と柱状部84との同時加工によって、連結ロッド60にさらに柱状部84を設けた場合であっても、連結ロッド60に対する加工工程が増加することを回避することができる。
【0075】
また、本実施形態では、断面菱形からなる柱状部84の全側面を一組の型部材120a、120bのプレス成形面で形成することができるため、量産化した場合であっても柱状部84の断面積を均一にして製造誤差を抑制することができる。
【0076】
さらにまた、本実施形態では、柱状部84の断面形状を断面菱形とすることにより、例えば、ひずみゲージ104で検知されたひずみ量を引張荷重に変換するときの誤差(バラツキ)を低減することができ、引張荷重の検出精度をより一層向上させることができる。
【0077】
これに対して、
図10(c)に示される比較例に係る連結ロッド200では、連結ロッド60の平面部78の平面を加圧成形する加圧力Aと、被検出部の平坦面を加圧成形する加圧力Bとが異なる方向(図中では、加圧力Aと加圧力Bとが直交する方向)に設定されている。このため、比較例では、連結ロッド200の平面部78の平面76と被検出部の平坦面とを同時又は略同時に加圧成形することが困難となり、それぞれ別々に加圧力を付与するために加工工程が増加する不具合がある。
【0078】
次に、本発明の他の実施形態に係るパーキングブレーキ装置200について説明する。なお、
図1に示すパーキングブレーキ装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図11は、本発明の他の実施形態に係るパーキングブレーキ装置の概略斜視図である。
図11に示されるパーキングブレーキ装置200では、リンクプレート54及び連結ロッド60を備えていない点で前記実施形態と相違している。
【0079】
このパーキングブレーキ装置200は、パーキングブレーキレバー28の操作力を、一対のブレーキケーブル14に対して均一に分配するイコライザ機構(イコライザ)202を備える。パーキングブレーキ装置200とイコライザ機構202との間には、ガイド部材203が配置され、このガイド部材203を経由してパーキングブレーキレバー28の操作力がイコライザ機構202に伝達される。
【0080】
イコライザ機構202は、ブレーキケーブル14の先端に設けられ、ねじ部204と柱状部206とを有するケーブルエンド208と、ねじ部204に螺合するケーブル調整用ナット210と、ねじ部204を挿通する貫通孔212を有する嵌合ピン214と、嵌合ピン214を回転自在に軸支する係止具216と、柱状部206と面接触し、嵌合ピン216に固定されるカラー218とを備える。なお、
図11中では、カラー218が嵌合ピン214によって係止具216に固定される構成を採用しているが、例えば、溶接等によってカラー218が係止具216に直接固定(接合)されるようにしてもよい。
【0081】
ねじ部204を嵌合ピン214の貫通孔212に挿通した状態において、ねじ部204に対するケーブル調整用ナット210の螺合位置を調整することで一対のブレーキケーブル14の長さ(張力)を調整することができる。
【0082】
係止具216は、平板状の板体を略U字状に折曲して形成される。一対のブレーキケーブル14の先端部には、円柱状の嵌合部222が連結される。
【0083】
カラー218は、パーキングブレーキレバー28側に接続されるフロントケーブル224の軸回りの回転を阻止する機能を有し、柱状部206と面接触する部分には、切欠部226が設けられる。カラー218に切欠部226を設けることで、柱状部206の相互に対向する平坦面(平坦な側面)88a、88bが外部に露呈する。柱状部206に設けられた一対の平坦面88a、88bは、ブレーキケーブル14に付与される引張荷重を検出する引張荷重検出器90を取り付けるための被取付部として機能するものである。
【0084】
すなわち、イコライザ機構202のケーブルエンド208に設けられた柱状部206の一対の平坦面88a、88bを一対の挟み部102によって挟み込むことで(
図11の2点鎖線参照)、引張荷重検出器90を簡便に取り付けることができ、荷重検出の作業を向上させることができる。なお、
図11中では、簡略化して引張荷重検出器90の一部のみを図示している。
【0085】
このように他の実施形態に係るパーキングブレーキ装置200では、リンクプレート54や連結ロッド60を備えない場合であっても、イコライザ機構202を前記のように構成することでパーキングブレーキレバー28やブラケット26側の構成に拘わらず、引張荷重を検出ための一対の平坦面(被取付部)88a、88bを設けることができる。
【0086】
その他の作用効果は、
図1に示す前記実施形態に係るパーキングブレーキ装置10と同一であるため、その詳細な説明を省略する。