【実施例】
【0017】
以下に製造例および試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
(製造例)
天然より採集したホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)の未乾燥の子実体それぞれ3.9kg、42kg、40kg、34.7kgを約4倍量のエタノール(Wako)及び1倍量のアセトン(Wako)で室温下、順次浸漬抽出後、エタノール及びアセトンの抽出液を混合し、ロータリーエバポレーターを用いて不溶物が析出しないよう溶媒を減圧濃縮した。一部については、濃縮乾固させ、エタノール抽出部とした。次に、濃縮液500mlにヘキサン1Lを加え、分液漏斗を用いて液々分配した。回収したヘキサン相はロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固させ、ヘキサン抽出部とした。残渣は、同様な方法により、更に1Lのクロロホルム(Nacalai tesque)、1Lの酢酸エチル(Nacalai tesque)、1Lのn-ブタノール(Nacalai tesque)で順次分液し、各抽出部とした。最後の残渣は凍結乾燥し、水可溶部とした。上記操作をエタノール・アセトン抽出液量に合わせ、複数回くり返し、エタノール・アセトン抽出液全量を処理した。
各抽出部を下記に示す試験方法に従ってNPC1L1と[
3H]Ezetimibe-glucuronideの結合阻害活性を評価した。その結果、目的の阻害活性を有する抽出画分としてホコリタケからヘキサン抽出部4.8g(抽出物1)、クロサルノコシカケからへキサン抽出部40.3g(抽出物2)、サンゴハリタケからエタノール抽出部9.1g(抽出物3)、チャナメツムタケからクロロホルム抽出部43g(抽出物4)を得た。
【0018】
(試験例1)
製造例で得られた各種溶媒抽出物について、下記の試験法でNPC1L1とエゼチミブの結合阻害活性を評価する試験を行った。
(1)ラットNPC1L1遺伝子のクローニング
ラット空腸由来1本鎖cDNA(ジェノスタッフ株式会社)を鋳型にiProof High-Fidelity DNA ポリメラーゼ(Biorad)を用いたPCR法により、5’端にHind III、3’端にXba Iを付加したrNPC1L1全長を増幅し、Zero Blunt TOPO PCRクローニング キット(Invitrogen)を用いてpCR4 Blunt TOPOベクターにクローニングした。クローニングしたDNA配列を配列表配列番号1に示す。
なお、rNPC1L1全長増幅に使用したプライマー及びPCR条件は次のとおりである。
Sense: 5’- aagcttaccatggcagctgcctggctgggatggc-3’(配列番号2)
Antisense: 5’- tctagattagaacttttggtcacttttgggc-3’ (配列番号3)
【0019】
PCR条件
1.98℃ 30秒、2.98℃ 10秒、3.68℃ 30秒、4.72℃ 1.5分、5.72℃ 10分、2〜4を35サイクル実施する。
【0020】
(2)ラットNPC1L1安定発現細胞の作製
pCR4 Blunt TOPO rNPC1L1ベクターをHind III及びXba I処理し、アガロース電気泳動後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いてrNPC1L1を抽出し、発現用ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)のHind III、Xba Iサイトにサブクローニングした。作製したpcDNA3.1 rNPC1L1の配列はプレミックスシーケンス解析サービス(タカラバイオ)を利用して確認を行った。
シーケンス用primer
Sense:5’-cactgcttactggcttatcg-3’(配列番号4)
Sense:5’-gccttttatcagcgcagcttt-3’(配列番号5)
Sense:5’-aactctcaccccataccatc-3’(配列番号6)
Sense:5’-cagtacttccagaacaaccg-3’(配列番号7)
Sense:5’-ttctactcctacctgggtgt-3’(配列番号8)
Sense:5’-cttcttccgcaagatatacgc-3’(配列番号9)
Sense:5’-ccacagcggaacagtttcat-3’(配列番号10)
Sense:5’-tccctcatcaaccttgtcac-3’(配列番号11)
Sense:5’-gtccatgcttcttgctgatg-3’(配列番号12)
【0021】
次いで、ヒト腎臓由来HEK293細胞(ATCC)に、Fugene HD(Roche)を用いてpcDNA3.1 rNPC1L1をトランスフェクションし、最終濃度1mg/ml G418-sulfate(Wako)にてセレクションを行った。更に限界希釈法によりセレクションを行い、HEK/rNPC1L1安定発現細胞の単一クローンを得た。
【0022】
(3)膜画分の調製
φ150mmdish(Nunc)にHEK293/rNPC1L1安定発現細胞を播種し、DMEM(Nacalai tesque)+10%FBS(Gibco)にてコンフルエントになるまで培養し、最終濃度4mM Sodium Butyrate(Sigma Aldrich)24時間処理後の細胞をCell Dissociation Buffer(Invitrogen)を用いて回収した。800rpm、3分の遠心後、残査の細胞を8%Sucrose含有20mM HEPES/Tris Buffer(pH7.4)+proteinase inhibitor(Roche)に懸濁し、超音波を用いて破砕した。4000rpm、4℃、10分の遠心後、上清を48000rpm(125000G)、4℃、3時間、超遠心し、残査を膜画分として回収した。膜画分は160mM NaCl、5%Glycerol含有20mM HEPES/Tris Bufferに再懸濁し、BCA assay(Thermo Scientific Pierce)にて蛋白質濃度を定量後、使用するまで-80℃に保存した。
【0023】
(4)結合阻害実験
96well plate(Nunc)に最終濃度25nM [
3H]Ezetimibe-glucuronide(American Radiolabeled Chemicals, Inc.)、1.25mg/ml HEK/rNPC1L1由来膜蛋白質、各濃度の被験物質を緩衝液A(26mM NaHCO
3、0.96mM NaH
2PO
4、5mM HEPES、5.5mM Glucose、117mM NaCl、5.4mM KCl、0.03% Sodium taurocholate、0.05% Digitonin、pH7.4)に加えTotal volume 30μlとなるよう調製し、室温、1時間反応させた。反応液はHarvester(PerkinElmer)を用いてUniFilter-96 GF/C(PerkinElmer)にトラップし、ミリQ水(ミリポア)を用いて遊離[
3H]Ezetimibe-glucuronideを洗浄した。乾燥後、Microscint-20(PerkinElmer)を15μl/well添加し、Topcount(PerkinElmer)によりrNPC1L1と結合した[
3H]Ezetimibe-glucuronideの放射活性を測定した。
【0024】
(5)結果
ホコリタケヘキサン抽出部(抽出物1)、チャナメツムタケクロロホルム抽出部(抽出物4)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、最終濃度0.5mg/mlから8段階の2倍希釈系列を作製しIC
50を算出した。また、クロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)、サンゴハリタケエタノール抽出部(抽出物3)も同様にDMSOに溶解後、最終濃度2mg/mlから8段階の2倍希釈系列を作製しIC
50を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
各抽出物はいずれもエゼチミブがNPC1L1に結合する反応を強く抑制した。従ってエゼチミブと同様に、NPC1L1の機能を阻害し、コレステロールの腸管吸収を阻止することが示唆された。
【0027】
(試験例2)
クロサルノコシカケのヘキサン抽出部(抽出物2)を用いて、高コレステロール含有食餌を摂取した場合に発生する高コレステロール血症に対する治療効果を確認した。
1.試験動物
1週間の馴化後、体重測定を行い、層別連続無作為化法により群分けした8週齢のWistar雄ラット(日本SLC)を実験に供した。
高コレステロール血症は、高コレステロール食(CRF-1を元に1%コレステロール、0.5%コール酸を添加;オリエンタル酵母工業株式会社)を与え、誘導した。高コレステロール血症を確認するため、通常食(CRF-1;オリエンタル酵母工業株式会社)を与えたノーマル群を設定した。
群設定は、通常食を与えたノーマル群に加え、高コレステロール食を与えて、高コレステロール血症を誘導した状態にコーン油を投与したコントロール群、エゼチミブ(コスモバイオ株式会社)0.3mg/kgを投与した陽性対照のエゼチミブ群、上記製造例で製造したクロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)を50mg/kg投与した50mg/kg抽出物2群、150mg/kg投与した150mg/kg抽出物2群、500mg/kg投与した500mg/kg抽出物2群の計6群、各群6匹の設定とした。
【0028】
2.試験方法
通常食、高コレステロール食、及び水は3日間自由摂取させ、被験物質はコーン油に溶解させ、試験開始の2日目から1日1回、2日間(初日は投与なし)、胃ゾンデを用いて強制経口投与した(2ml/kg)。ノーマル群及びコントロール群はコーン油を投与した。飼育は個別飼育(1匹/ケージ)とし、3日間の摂餌量を記録した。また、被験物質投与開始の2日目に床敷(パルソフト;オリエンタル酵母工業株式会社)を交換し、試験終了後に糞を全量回収した。回収した糞はFolch法に従い脂質を抽出し、分析に供した。血液は、被験物質の最終投与から2時間絶食させた後(水は自由摂取)、ジエチルエーテル麻酔下、腹部大動脈からヘパリン処理した真空採血管(テルモ株式会社)を用いて回収した。回収した血液は、直ちに3,000rpm、15分、4℃の条件下で遠心分離し、得られた血漿を分析するまで−80℃に保存した。糞及び血漿中コレステロール量は、コレステロールEテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。
【0029】
3.試験結果
結果は全て平均値±S.Eで表記した。統計解析はエクセル統計2010を使用し、ノーマル群を除いた高コレステロール食摂取の5群で行った。各測定データは一次元配置分散分析及びDunnettの多重検定を行った。有意水準はいずれの場合も両側5%未満とした。
試験の結果、高コレステロール食を摂取させた5群間の摂餌量に差はなく(
図1)、また体重に変動がなかった。このことから、高コレステロール血症の誘導は群間差なく行われたものと評価した。
血中コレステロール低下作用については、陽性対照のエゼチミブ投与群及びクロサルノコシカケ抽出物500mg/kg投与群においてコントロール群の血漿中コレステロールと比較して有意差が認められ、コレステロール低下作用が明らかとなった(
図2)。
また、糞中コレステロールを測定した結果、陽性対照のエゼチミブ投与群及び500mg/kg抽出物2投与群において有意な増加が認められた(
図3)。
以上の結果から、クロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)の血漿中コレステロールの低下は、陽性対照のエゼチミブと同様、コレステロール吸収阻害作用によるものであることが明らかとなった。したがってNPC1L1の阻害作用を有するキノコ抽出物は高コレステロール血症の改善治療剤として有用であることが明らかとなった。