特許第6054199号(P6054199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054199
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】コレステロール吸収阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20161219BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20161219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61K36/07ZNA
   A61P3/06
   A61P43/00 111
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-33089(P2013-33089)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-241392(P2013-241392A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2012-97652(P2012-97652)
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】千場 智尋
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】魚津 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】河岸 洋和
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063206(JP,A)
【文献】 特開2007−001961(JP,A)
【文献】 特開2005−239644(JP,A)
【文献】 栄養と食糧,1977年,Vol.30, No.1,p.29-33
【文献】 Phytochemistry,1979年,Vol.18, No.3,p.482-484
【文献】 Microbiology,2012年 3月,Vol.40, No.1,p.76-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を配合したことを特徴とするコレステロール吸収阻害剤。
【請求項2】
ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を配合したことを特徴とするNPC1L1の機能を阻害する剤。
【請求項3】
ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を有効成分とする高コレステロール血症改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロール吸収阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血中コレステロールの上昇は冠状動脈性心疾患の主要な危険因子である。血中コレステロールを低下させるためには、基本的に、低コレステロールの食物、胆汁酸性の金属イオン封鎖剤(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブラート類およびプロブコールなどの摂取に限られていた。しかしこれらの薬剤や療法には治療の限界があった。
近年、ロバスタチン、シンバスタチンおよびプラバスタチン(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)が、冠動脈および頸動脈におけるアテローム性病変の進行を遅延させることが確認された。さらにシンバスタチンおよびプラバスタチンが冠状動脈性心臓病のリスクを低下させることが明らかとなった。
【0003】
動脈硬化疾患において、コレステリルエステルは、アテローム性病変の主要な構成成分であり、動脈壁細胞におけるコレステロールの主要な貯蔵形態である。このコレステリルエステルの形成は、食餌性コレステロールの腸管吸収における重要なステップでもある。
小腸上皮細胞に取り込まれたコレステロールは、小腸上皮細胞内の小胞体にてコレステリルエステルに変換された後、カイロミクロンを形成して体内に吸収されることが知られている。従って、コレステリルエステルの形成阻害が、食事性コレステロールの腸管吸収を阻止することが推測され、これに伴う血中コレステロールの減少が、アテローム性病変形成の進行を抑制し、動脈硬化の予防や改善につながるものと考えられている。
【0004】
またエゼチミブ(Ezetimibe)などの特定のヒドロキシ置換アゼチジノン(特許文献1:米国特許第5,767,115号明細書)は、アテローム性動脈硬化症の治療および予防におけるコレステロール低下剤として有用であることが知られている。エゼチミブのコレステロール低下作用は、ノックアウトマウスやトランスジェニックマウスの研究から、小腸のコレステロール吸収を担う膜蛋白質であるNiemann Pick Type C 1 like 1(以下NPC1L1という)とエゼチミブが結合することによって阻害されることが明らかとなった(特許文献2:特開2010−252798号公報)。
従って、エゼチミブとNPC1L1の結合を阻害する物質は、消化管内のコレステロール吸収を阻害し、アテローム性動脈硬化を改善することが期待されている。
【0005】
キノコは主として担子菌類や子嚢菌類の子実体の総称である。近年キノコの子実体からコレステロールの低下効果のある物質や、動脈硬化の予防効果を有するものが得られている。特許文献3にはプレウロツス・エリンギ(Pleurotus eryngi)var. ferulaeやプレウロツス・オストレアツス(Pleurotus osutreatus)などプレウロツス属のキノコが高コレステロール血症の治療剤であるロバスタチンを産生することが開示されている(特許文献3:特表2003−520576号公報)。また特許文献4には担子菌類のシイタケ、キクラゲ、マイタケ、レイシがアディポネクチンを分泌促進しコレステロール低下に効果を示すことが開示されている(特許文献4:特開2008−297256号公報)。このようにキノコ類の特定の種の子実体がコレステロールを低下させ、動脈硬化を軽減する作用を示すことは従前から知られていた。
【0006】
しかし、特定のキノコに含まれる成分とNPC1L1蛋白質が結合し、コレステロールの吸収を抑制することは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,767,115号明細書
【特許文献2】特開2010−252798号公報
【特許文献3】特表2003−520576号公報
【特許文献4】特開2008−297256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、NPC1L1に結合し、コレステロール吸収を阻害する薬剤及び高コレステロール血症の改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するべく検討した結果、多数のキノコ類の中から、特定キノコ子実体のエキスが、コレステロール吸収に係わるNPC1L1に強く結合することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の構成は次の通りである。
(1)ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を配合したことを特徴とするコレステロール吸収阻害剤。
(2)ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を配合したことを特徴とするNPC1L1の機能を阻害する剤。
(3)ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)から選択されるキノコの子実体又は培養菌糸体抽出物を有効成分とする高コレステロール血症改善剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、コレステロール吸収阻害剤及び高コレステロール血症改善剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試験例2の試験動物の摂餌量を示す図である。
図2】試験例2の試験動物の血中コレステロール量を示す図である。
図3】試験例2の試験動物の糞中排泄コレステロール量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に使用するキノコは、ホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)であり、キノコは、子実体若しくは菌糸体又はこれらの乾燥物であってもよく、またキノコの全体でも一部でもよい。エキスは、水、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、低級脂肪族ケトン(アセトンなど)、あるいは、これらを含む溶媒を用いて当業者が通常行う抽出処理により容易に製造することができる。製造したエキスは、加熱処理、凍結乾燥あるいは減圧乾燥等の処理により、濃縮エキスや乾燥エキスにすることができる。
【0014】
各キノコのエキスは、そのままでも使用することができるが、必要ならば発明の効果を損なわない質的および量的範囲で、任意の担体(水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、ビタミン誘導体、ミネラル、生薬、生薬のエキス、有機酸、補酵素等)などと混合することができる。
【0015】
本発明の阻害剤または予防剤もしくは改善剤は、通常使用される任意成分を含有する錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤などの剤形で経口により投与することができる。任意成分としては、例えば、賦形剤、結合剤、被覆剤、滑沢剤、糖衣剤、崩壊剤、増量剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調整剤、等張剤などが挙げられる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の阻害剤等を製造することができる。
【0016】
コレステロール吸収阻害剤又は高コレステロール血症改善剤として使用する場合の抽出エキスの投与量は、年齢、性別、体重などによって異なるが、通常、原抽出物換算で成人1日あたり約50mg〜100g、好ましくは500mg〜100gである。
なお、剤には、医薬品のみならず、医薬部外品、健康食品なども包含される。
【実施例】
【0017】
以下に製造例および試験例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。
(製造例)
天然より採集したホコリタケ(Lycoperdon perlatum)、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)の未乾燥の子実体それぞれ3.9kg、42kg、40kg、34.7kgを約4倍量のエタノール(Wako)及び1倍量のアセトン(Wako)で室温下、順次浸漬抽出後、エタノール及びアセトンの抽出液を混合し、ロータリーエバポレーターを用いて不溶物が析出しないよう溶媒を減圧濃縮した。一部については、濃縮乾固させ、エタノール抽出部とした。次に、濃縮液500mlにヘキサン1Lを加え、分液漏斗を用いて液々分配した。回収したヘキサン相はロータリーエバポレーターを用いて濃縮乾固させ、ヘキサン抽出部とした。残渣は、同様な方法により、更に1Lのクロロホルム(Nacalai tesque)、1Lの酢酸エチル(Nacalai tesque)、1Lのn-ブタノール(Nacalai tesque)で順次分液し、各抽出部とした。最後の残渣は凍結乾燥し、水可溶部とした。上記操作をエタノール・アセトン抽出液量に合わせ、複数回くり返し、エタノール・アセトン抽出液全量を処理した。
各抽出部を下記に示す試験方法に従ってNPC1L1と[3H]Ezetimibe-glucuronideの結合阻害活性を評価した。その結果、目的の阻害活性を有する抽出画分としてホコリタケからヘキサン抽出部4.8g(抽出物1)、クロサルノコシカケからへキサン抽出部40.3g(抽出物2)、サンゴハリタケからエタノール抽出部9.1g(抽出物3)、チャナメツムタケからクロロホルム抽出部43g(抽出物4)を得た。
【0018】
(試験例1)
製造例で得られた各種溶媒抽出物について、下記の試験法でNPC1L1とエゼチミブの結合阻害活性を評価する試験を行った。
(1)ラットNPC1L1遺伝子のクローニング
ラット空腸由来1本鎖cDNA(ジェノスタッフ株式会社)を鋳型にiProof High-Fidelity DNA ポリメラーゼ(Biorad)を用いたPCR法により、5’端にHind III、3’端にXba Iを付加したrNPC1L1全長を増幅し、Zero Blunt TOPO PCRクローニング キット(Invitrogen)を用いてpCR4 Blunt TOPOベクターにクローニングした。クローニングしたDNA配列を配列表配列番号1に示す。
なお、rNPC1L1全長増幅に使用したプライマー及びPCR条件は次のとおりである。
Sense: 5’- aagcttaccatggcagctgcctggctgggatggc-3’(配列番号2)
Antisense: 5’- tctagattagaacttttggtcacttttgggc-3’ (配列番号3)
【0019】
PCR条件
1.98℃ 30秒、2.98℃ 10秒、3.68℃ 30秒、4.72℃ 1.5分、5.72℃ 10分、2〜4を35サイクル実施する。
【0020】
(2)ラットNPC1L1安定発現細胞の作製
pCR4 Blunt TOPO rNPC1L1ベクターをHind III及びXba I処理し、アガロース電気泳動後、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いてrNPC1L1を抽出し、発現用ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)のHind III、Xba Iサイトにサブクローニングした。作製したpcDNA3.1 rNPC1L1の配列はプレミックスシーケンス解析サービス(タカラバイオ)を利用して確認を行った。
シーケンス用primer
Sense:5’-cactgcttactggcttatcg-3’(配列番号4)
Sense:5’-gccttttatcagcgcagcttt-3’(配列番号5)
Sense:5’-aactctcaccccataccatc-3’(配列番号6)
Sense:5’-cagtacttccagaacaaccg-3’(配列番号7)
Sense:5’-ttctactcctacctgggtgt-3’(配列番号8)
Sense:5’-cttcttccgcaagatatacgc-3’(配列番号9)
Sense:5’-ccacagcggaacagtttcat-3’(配列番号10)
Sense:5’-tccctcatcaaccttgtcac-3’(配列番号11)
Sense:5’-gtccatgcttcttgctgatg-3’(配列番号12)
【0021】
次いで、ヒト腎臓由来HEK293細胞(ATCC)に、Fugene HD(Roche)を用いてpcDNA3.1 rNPC1L1をトランスフェクションし、最終濃度1mg/ml G418-sulfate(Wako)にてセレクションを行った。更に限界希釈法によりセレクションを行い、HEK/rNPC1L1安定発現細胞の単一クローンを得た。
【0022】
(3)膜画分の調製
φ150mmdish(Nunc)にHEK293/rNPC1L1安定発現細胞を播種し、DMEM(Nacalai tesque)+10%FBS(Gibco)にてコンフルエントになるまで培養し、最終濃度4mM Sodium Butyrate(Sigma Aldrich)24時間処理後の細胞をCell Dissociation Buffer(Invitrogen)を用いて回収した。800rpm、3分の遠心後、残査の細胞を8%Sucrose含有20mM HEPES/Tris Buffer(pH7.4)+proteinase inhibitor(Roche)に懸濁し、超音波を用いて破砕した。4000rpm、4℃、10分の遠心後、上清を48000rpm(125000G)、4℃、3時間、超遠心し、残査を膜画分として回収した。膜画分は160mM NaCl、5%Glycerol含有20mM HEPES/Tris Bufferに再懸濁し、BCA assay(Thermo Scientific Pierce)にて蛋白質濃度を定量後、使用するまで-80℃に保存した。
【0023】
(4)結合阻害実験
96well plate(Nunc)に最終濃度25nM [3H]Ezetimibe-glucuronide(American Radiolabeled Chemicals, Inc.)、1.25mg/ml HEK/rNPC1L1由来膜蛋白質、各濃度の被験物質を緩衝液A(26mM NaHCO3、0.96mM NaH2PO4、5mM HEPES、5.5mM Glucose、117mM NaCl、5.4mM KCl、0.03% Sodium taurocholate、0.05% Digitonin、pH7.4)に加えTotal volume 30μlとなるよう調製し、室温、1時間反応させた。反応液はHarvester(PerkinElmer)を用いてUniFilter-96 GF/C(PerkinElmer)にトラップし、ミリQ水(ミリポア)を用いて遊離[3H]Ezetimibe-glucuronideを洗浄した。乾燥後、Microscint-20(PerkinElmer)を15μl/well添加し、Topcount(PerkinElmer)によりrNPC1L1と結合した[3H]Ezetimibe-glucuronideの放射活性を測定した。
【0024】
(5)結果
ホコリタケヘキサン抽出部(抽出物1)、チャナメツムタケクロロホルム抽出部(抽出物4)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、最終濃度0.5mg/mlから8段階の2倍希釈系列を作製しIC50を算出した。また、クロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)、サンゴハリタケエタノール抽出部(抽出物3)も同様にDMSOに溶解後、最終濃度2mg/mlから8段階の2倍希釈系列を作製しIC50を算出した。その結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
各抽出物はいずれもエゼチミブがNPC1L1に結合する反応を強く抑制した。従ってエゼチミブと同様に、NPC1L1の機能を阻害し、コレステロールの腸管吸収を阻止することが示唆された。
【0027】
(試験例2)
クロサルノコシカケのヘキサン抽出部(抽出物2)を用いて、高コレステロール含有食餌を摂取した場合に発生する高コレステロール血症に対する治療効果を確認した。
1.試験動物
1週間の馴化後、体重測定を行い、層別連続無作為化法により群分けした8週齢のWistar雄ラット(日本SLC)を実験に供した。
高コレステロール血症は、高コレステロール食(CRF-1を元に1%コレステロール、0.5%コール酸を添加;オリエンタル酵母工業株式会社)を与え、誘導した。高コレステロール血症を確認するため、通常食(CRF-1;オリエンタル酵母工業株式会社)を与えたノーマル群を設定した。
群設定は、通常食を与えたノーマル群に加え、高コレステロール食を与えて、高コレステロール血症を誘導した状態にコーン油を投与したコントロール群、エゼチミブ(コスモバイオ株式会社)0.3mg/kgを投与した陽性対照のエゼチミブ群、上記製造例で製造したクロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)を50mg/kg投与した50mg/kg抽出物2群、150mg/kg投与した150mg/kg抽出物2群、500mg/kg投与した500mg/kg抽出物2群の計6群、各群6匹の設定とした。
【0028】
2.試験方法
通常食、高コレステロール食、及び水は3日間自由摂取させ、被験物質はコーン油に溶解させ、試験開始の2日目から1日1回、2日間(初日は投与なし)、胃ゾンデを用いて強制経口投与した(2ml/kg)。ノーマル群及びコントロール群はコーン油を投与した。飼育は個別飼育(1匹/ケージ)とし、3日間の摂餌量を記録した。また、被験物質投与開始の2日目に床敷(パルソフト;オリエンタル酵母工業株式会社)を交換し、試験終了後に糞を全量回収した。回収した糞はFolch法に従い脂質を抽出し、分析に供した。血液は、被験物質の最終投与から2時間絶食させた後(水は自由摂取)、ジエチルエーテル麻酔下、腹部大動脈からヘパリン処理した真空採血管(テルモ株式会社)を用いて回収した。回収した血液は、直ちに3,000rpm、15分、4℃の条件下で遠心分離し、得られた血漿を分析するまで−80℃に保存した。糞及び血漿中コレステロール量は、コレステロールEテストワコー(和光純薬工業株式会社)を用いて測定した。
【0029】
3.試験結果
結果は全て平均値±S.Eで表記した。統計解析はエクセル統計2010を使用し、ノーマル群を除いた高コレステロール食摂取の5群で行った。各測定データは一次元配置分散分析及びDunnettの多重検定を行った。有意水準はいずれの場合も両側5%未満とした。
試験の結果、高コレステロール食を摂取させた5群間の摂餌量に差はなく(図1)、また体重に変動がなかった。このことから、高コレステロール血症の誘導は群間差なく行われたものと評価した。
血中コレステロール低下作用については、陽性対照のエゼチミブ投与群及びクロサルノコシカケ抽出物500mg/kg投与群においてコントロール群の血漿中コレステロールと比較して有意差が認められ、コレステロール低下作用が明らかとなった(図2)。
また、糞中コレステロールを測定した結果、陽性対照のエゼチミブ投与群及び500mg/kg抽出物2投与群において有意な増加が認められた(図3)。
以上の結果から、クロサルノコシカケヘキサン抽出部(抽出物2)の血漿中コレステロールの低下は、陽性対照のエゼチミブと同様、コレステロール吸収阻害作用によるものであることが明らかとなった。したがってNPC1L1の阻害作用を有するキノコ抽出物は高コレステロール血症の改善治療剤として有用であることが明らかとなった。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]