特許第6054219号(P6054219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054219
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】超音波接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20161219BHJP
   B06B 1/02 20060101ALI20161219BHJP
   H01L 21/607 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B23K20/10
   B06B1/02 A
   H01L21/607 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-57284(P2013-57284)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180691(P2014-180691A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】栗山 昇
(72)【発明者】
【氏名】森 三樹
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−183622(JP,A)
【文献】 特開昭59−120389(JP,A)
【文献】 米国特許第04389601(US,A)
【文献】 特開2007−237256(JP,A)
【文献】 米国特許第04815001(US,A)
【文献】 特開2009−279657(JP,A)
【文献】 特公昭49−015708(JP,B1)
【文献】 特開2007−034781(JP,A)
【文献】 特開2010−192659(JP,A)
【文献】 特開2003−338057(JP,A)
【文献】 特開2006−284341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B06B 1/02
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を受けて超音波振動を発生する超音波振動子と、
荷重と超音波振動とを接合対象物に印加する先端ツールと、
荷重と、前記超音波振動子が発振した超音波振動とを前記先端ツールに伝達する超音波ホーンと、
発振回路を備えて前記発振回路から発振された電圧を前記超音波振動子に入力する超音波発振器であって、前記超音波振動子に入力される電圧と前記超音波振動子に流れる電流に基づいて電圧反射率を検出するととともに前記電圧反射率が最小になるように前記発振回路が発振する電圧の周波数を制御する制御手段を備える超音波発振器と
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
a)前記発振回路から発振される電圧の周波数を、設定される初期値に対して増加、または、減少させ、
b)検出された電圧反射率が前回検出値よりも小さい場合、前記電圧の発振周波数を増加させている場合は第1の探索目的値を設定して前記第1の探索目的値まで発振周波数を増加させるとともに増加中の前記電圧反射率を検出し、前記電圧の発振周波数を減少させている場合は第2の探索目的値を設定して前記第2の探索目的値まで発振周波数を減少させるとともに減少中の前記電圧反射率を検出し、
c)前記第1の探索目的値までの発振周波数の増加中または前記第2の探索目的値までの発振周波数の減少中に検出された電圧反射率が、当該電圧反射率に対して直前に検出される電圧反射率に対して大きくなると、前記直前の電圧反射率を検出したときの前記第1の探索目的値または第2の探索目的値の更新を中止し、
d)前記発振回路から発振される周波数が前記第1の探索目的値または前記第2の探索目的値になると、周波数を増加している場合は周波数を減少するように前記発振回路の制御をし、周波数を減少している場合は周波数を増加するように前記発振回路の制御をする
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波接合装置。
【請求項3】
前記第1の探索目的値は、前記発振周波数に、行き過ぎ回数と周波数刻み幅との積を加えた値であり、かつ、前記第2の探索目的値は、前記発振周波数から前記行き過ぎ回数と前記周波数刻み幅との積を減じた値であり、
前記行き過ぎ回数と前記周波数刻み幅との前記積は、前記電圧反射率が閾値以下になると、前記電圧反射率が前記閾値より大きいときの前記積に比較して、小さくなる
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、荷重と超音波振動とを接合対象物に印加して、接合対象物を接合する超音波接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷重と超音波振動とを印加することにより接合対象物を接合する超音波接合装置では、接合対象物に振動と荷重とを印加する先端ツールと、先端ツールに振動と荷重とを伝達する超音波ホーンと、超音波ホーンを機械的に振動させる超音波振動子と、超音波振動子に駆動電力を供給する超音波発振器とを備えている。
【0003】
この種の超音波接合装置では、超音波発振器は、PLL(Phase Locked Loop)発振回路を用いた周波数追尾制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−191087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合対象物をより一層効率よく接合する超音波接合装置が求められている。
【0006】
本発明の実施形態は、接合対象物をより一層効率よく接合する超音波接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波接合装置は、電圧を受けて超音波を発生する超音波振動子と、荷重と超音波振動とを接合対象物に印加する先端ツールと、荷重と、前記超音波振動子が発振した超音波振動とを前記先端ツールに伝達する超音波ホーンと、超音波発振器とを備える。
【0008】
前記超音波発振器は、発振回路を備えて前記発振回路から発振された電圧を前記超音波振動子に入力する超音波発振器であって、前記超音波振動子に入力される電圧と前記超音波振動子に流れる電流に基づいて電圧反射率を検出するととともに前記電圧反射率が最小になるように前記発振回路が発振する電圧の周波数を制御する制御手段を備える超音波発振器とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る超音波接合装置を示すブロック図。
図2】同超音波接合装置の超音波発振器を示すブロック図。
図3A】同超音波発振器の動作を示すフローチャート。
図3B】同超音波発振器の動作を示すフローチャート。
図4】電圧反射率が最小になるように同超音波発振器が制御されたときの超音波発振器から発振される電圧の周波数と電圧反射率との関係を示すグラフ。
図5】電圧反射率が最小になるように同超音波発振器が制御されたときの超音波発振器から発振される電圧の周波数と電圧反射率との関係を示すグラフ。
図6A】第2の実施形態に係る超音波接合装置の超音波発振器の動作を示すフローチャート。
図6B】第2の実施形態に係る超音波接合装置の超音波発振器の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態に係る超音波接合装置を、図1〜5を用いて説明する。図1は、超音波接合装置10を示す概略図である。図1に示すように、超音波接合装置10は、接合対象物どうしを互いに接合する。本実施形態では、一例として、超音波接合装置10は、第1の接合対象物5と第2の接合対象物6とを接合する。なお、互いに接合する接合対象物の数は、2つに限定されない。超音波接合装置10は、複数の接合対象物を互いに接合することができる。
【0011】
超音波接合装置10は、第1,2の接合対象物5,6が載置される接合ステージ20と、先端ツール30と、加圧装置40と、超音波ホーン50と、超音波振動子60と、超音波発振器70と、本体制御回路部100とを備えている。
【0012】
先端ツール30は、接合ステージ20との間に第1,2の接合対象物5,6を挟持可能である。第1,2の接合対象物5,6は、接合ステージ20と先端ツール30との間で挟持されるときには、互いに重ねられて配置される。
【0013】
超音波ホーン50は、先端ツール30に連結されており、後述される超音波振動子60から伝達された振動を、先端ツール30に伝達する。加圧装置40は、超音波ホーン50に連結されており、超音波ホーン50を接合ステージ20側に向って加圧可能である。加圧装置40によって超音波ホーン50が加圧されることによって、超音波ホーン50に連結された先端ツール30が接合ステージ20側に加圧される。このことによって、先端ツール30と接合ステージ20との間に挟持される第1,2の接合対象物5,6に荷重と振動とが印加される。超音波振動子60は、圧電素子を備えている。超音波振動子60は、後述される超音波発振器70から入力される電圧によって、振動する。
【0014】
超音波発振器70は、超音波振動子60に電圧を入力する。図2は、超音波発振器70の構成を示すブロック図である。図2に示すように、超音波発振器70は、発振回路71と、電力増幅器72と、出力トランス73と、電流検出器74と、信号変換器75と、増幅器76と、演算装置77とを備えている。
【0015】
発振回路71は、後述される本体制御回路部100からの信号を受けて、電圧を発振する。発振回路71で発振された電圧は、電力増幅器72と出力トランス73とを通って、超音波振動子60に入力される。出力トランス73と超音波振動子60との間に設けられる電力伝達経路には、電流検出器74が設けられている。電流検出器74は、超音波振動子60に流れる電流値を検出する。
【0016】
電流検出器74が検出した検出値は、信号変換器75に伝達される。また、出力トランス73と超音波振動子60との間に設けられる電力伝達経路と信号変換器75とが接続されており、超音波振動子60に入力される電圧が信号変換器75に入力される。
【0017】
信号変換器75は、電流検出器74が検出した電流値と、上述のように入力される電圧値とに基づいて、超音波振動子60に供給される電力を算出する。さらに、算出された電力値に基づいて、発振回路71から発振すべき電圧を算出する。発振回路71から発振すべき電圧の情報である出力制御信号は、増幅器76を介して発振回路71に伝達される。また、信号変換器75は、超音波振動子60に入力される電圧と、電流検出器74が検出した電流値の情報を、演算装置77に伝達する。
【0018】
演算装置77は、信号変換器75から伝達された上述の電圧値および電流値の情報に基づいて、電圧反射率Γを算出する。電圧反射率Γについて説明する。超音波振動子60は、入力された電圧に応じた振動を発生する。発生された振動は、第1,2の接合対象物5,6に伝達されて、これら第1,2の接合対象物5,6を互いに接合するために消費される。しかしながら、この振動のうち、接合に用いられなかったものは、反射されて超音波振動子60に戻る。超音波振動子60に戻った振動は、電圧に変換されるとともに、出力トランス73から出力される電圧と合成されて、信号変換器75に入力される。電圧反射率Γとは、超音波発振器70から超音波振動子60に入力される電圧値に対する、反射されて超音波振動子60に戻った電圧値の割合である。
【0019】
演算装置77は、電圧反射率Γが最小値になるように、発振回路71から発振される電圧の周波数を制御するための制御信号を生成し、発振回路71に伝達する。発振回路71は、演算装置77から発信された制御信号に基づいて、当該制御信号が示す周波数で発振する。
【0020】
発振回路71は、上述のように、増幅器76から入力される出力制御信号と、演算装置77から入力される発振周波数とに基づいて、電圧を発振する。
【0021】
本体制御回路部100は、加圧装置40の動作を制御するとともに、発振回路71の駆動開始と、駆動停止とを制御する。
【0022】
次に、超音波接合装置10の動作を説明する。接合ステージ20上に第1,2の接合対象物5,6が載置されていない状態では、加圧装置40は駆動されておらず、先端ツール30は、接合ステージ20から離れている。
【0023】
図示しない供給手段によって、第1,2の接合対象物5,6が接合ステージ20上に供給される。このとき、第1,2の接合対象物5,6は、接合されるときの姿勢で、接合ステージ20上に供給される。
【0024】
接合ステージ20上に第1,2の接合対象物5,6が供給されると、本体制御回路部100は、加圧装置40を駆動する。加圧装置40によって、超音波ホーン50が接合ステージ20に向って加圧されると、超音波ホーン50に連結される先端ツール30が接合ステージ20に向って移動する。このことによって、第1,2の接合対象物5,6は、接合ステージ20と先端ツール30との間に挟持されるとともに、荷重が入力される。
【0025】
本体制御回路部100は、第1,2の接合対象物5,6を接合する際に必要な所定の荷重の情報を有しており、この情報に基づいて、加圧装置40の動作を制御する。第1,2の接合対象物5,6に所定の荷重が入力されると、本体制御回路部100は、発振回路71の駆動を開始するべく、動作する。
【0026】
図3A,3Bは、超音波発振器70の動作を示すフローチャートである。また、図3Aでは、超音波発振器70の動作が開始される前に行われる本体制御回路部100の動作を示している。図3Aに示すように、ステップST0では、本体制御回路部100は、超音波発振器70を駆動する前に、発振開始周波数f0と、周波数刻み幅dfと、行き過ぎ回数Nと、周波数探索範囲の最大値fmaxと、周波数探索範囲の最小値fminと、電圧反射率Γの取り得る最大値Γmaxとを設定する。これらの情報は、例えば作業者によって本体制御回路部100に入力される。
【0027】
発振開始周波数f0は、予め決定されている。発振開始周波数f0は、周波数探索範囲の最小値fminと最大値fmaxとの間の値である。周波数探索範囲の最大値fmaxは、発振回路71が発振する電圧の周波数の最大値である。この最大値fmaxは、発振回路71の固有の値であり、予め決まっている。周波数探索範囲の最小値fminは、発振回路71が発振する電圧の周波数の最小値である。この最小値fminは、発振回路71の固有の値であり、予め決まっている。
【0028】
電圧反射率の最大値Γmaxは、理論上は、1である。これは、反射されて超音波振動子60に戻った電圧の最大値は、超音波発振器70から超音波振動子60に入力される電圧と同じ値であるためである。しかしながら、超音波接合装置10の構成に起因する摩擦などの要因によって、最大値Γmaxは、1より小さくなる場合がある。最大値Γmaxは、予め実験などによって得ることができる。
【0029】
本体制御回路部100から駆動開始の信号が発信されると、ステップST1に進む。ステップST1では、演算装置77は、発振周波数fとして、発振開始周波数f0を設定する。次に、ステップST2に進む。ステップST2では、演算装置77は、電圧反射率Γの比較用変数Γ0として、Γmaxを格納する。次に、ステップST3に進む。
【0030】
ステップST3では、発振回路71は、発振開始周波数f0で電圧を発振する。次にステップST4に進む。ステップST4では、演算装置77は、電圧反射率Γを検出する。
【0031】
次に、ステップST5に進む。ステップST5では、演算装置77は、ステップST4で検出された電圧反射率Γと、比較用変数Γ0とを比較する。電圧反射率Γが比較用変数Γ0以下であると、ステップST6に進む。
【0032】
ステップST6では、比較用変数Γ0として、ステップST4で検出された電圧反射率Γを格納する。また、ステップST6では、探索目的値flimitとして、ステップST1で設定された発振周波数fに、周波数刻み幅dfと行き過ぎ回数Nとの積を加えた値に設定する。つまり、flimit=f+(N×df)となる。なお、N>1である。探索目的値flimitは、発振回路71から発振される周波数の増加を減少に転換する際の目的値、または、周波数が減少されている場合では増加に転換する際の目的値である。つまり、発振回路71から発振される周波数が探索目的値flimitに達すると、発振回路71から発振される周波数を、増加から減少に転換する。または、周波数が減少されている場合は、増加に転換する。
【0033】
ここで、周波数刻み幅dfと、行き過ぎ回数Nについて説明する。周波数刻み幅dfは、発振周波数を前回発振周波数に対して変更する際の、差である。つまり、周波数を増加する場合は、前回発振値に対して周波数刻み幅dfを増加する。周波数を減少する場合は、前回発振値に対して周波数刻み幅dfを減少する。行き過ぎ回数Nは、周波数刻み幅dfを増加する回数、または、減少する回数である。
【0034】
探索目的値flimitは、ステップST5において電圧反射率Γが比較用変数Γ0以下である場合は、更新される。次に、ステップST7に進む。
【0035】
ステップST5において、電圧反射率Γが比較用変数Γ0より大きいと判定すると、ステップST7に進む。つまり、電圧反射率Γが比較用変数Γ0より大きい場合は、探索目的値flimitは、前回値が維持される。ステップST7では、発振周波数fとして、ステップST1で設定された値に周波数刻み幅dfを加えた値に設定する。つまり、f=f+dfとする。次に、ステップST8に進む。
【0036】
ステップST8では、ステップST7で設定された次の発振周波数fが、探索目的値flimit以上でない場合すなわち探索目的値flimit未満の場合、または最大値fmax以上でない場合すなわち最大値fmax未満の場合は、ステップST3に戻る。
【0037】
ステップST7で設定された次の発振周波数fが探索目的値flimit以上でない場合すなわち探索目的値flimit未満の場合とは、発振周波数の増加をそのまま続ける範囲内にあるということである。
【0038】
また、ステップST7で設定された次の発振周波数fが最大値fmax以上でない場合すなわち最大値fmax未満の場合は、発振回路71が発振可能と判断される値である。つまり、次に発振する周波数は増加を続けるが、まだ発振回路71の発振可能な周波数より小さいので、ステップST3からステップST8の動作を繰り返すことになる。
【0039】
ステップST8からステップST3に戻ると、演算装置77は、発振周波数として、ステップST7で設定された周波数で発振するよう、発振回路71に周波数制御信号を発信する。発振回路71は、演算装置77から発信される周波数制御信号の周波数で電圧を発振する。
【0040】
ステップST8において、ステップST7で設定された発振周波数fが探索目的値flimit以上である、または、ステップST7で設定された発振周波数fが最大値fmax以上であると判断されると、次にステップST9に進む。ステップST9以降のステップは、図3Bに記載されている。図3Bに示すように、ステップST9では、比較用変数Γ0に、最大値Γmaxを格納する。次に、ステップST10に進む。
【0041】
ステップST10では、ステップST7で設定された発振周波数fが最大値fmax以上であると判定されると、発振周波数fを最大値fmaxに設定する。つまり、f=fmaxとする。これは、ステップST7で設定された発振周波数fが最大値fmaxより大きい場合は、発振回路71が発振することができないためである。なお、ステップST7で設定された発振周波数fが最大値fmaxより小さい場合は、発振周波数としてはステップST7で設定された値が維持される。次にステップST11に進む。
【0042】
ステップST11では、演算装置77は、ステップST7またはステップST10で設定された周波数で電圧を発振するように、周波数制御信号を発振回路71に発信する。発振回路71は、演算装置77から発信された周波数制御信号の周波数で電圧を発振する。次に、ステップST12に進む。
【0043】
ステップST12では、演算装置77は、ステップST11で発振回路71から発振された電圧に対する電圧反射率Γを検出し、この値を格納する。次に、ステップST13に進む。ステップST13では、演算装置77は、ステップST12で検出した電圧反射率Γを比較用変数Γ0と比較する。電圧反射率Γが比較用変数Γ0以下である場合は、ステップST14に進む。
【0044】
ステップST14では、演算装置77は、比較用変数Γ0として、ステップST12で検出された電圧反射率Γを格納する、つまりΓ0=Γとする。また、ステップST14では、探索目的値flimitを、発振周波数fから、行き過ぎ回数Nと周波数刻み幅dfとの積を減じた値に更新する。つまり、flimit=f−(N×df)とする。次に、ステップST15に進む。ステップST13において、電圧反射率Γが比較用変数Γ0より大きいと判断された場合も、ステップST15に進む。
【0045】
ステップST15では、発振周波数fを、周波数刻み幅df減じた値に更新する。つまり、f=f−dfとする。次に、ステップST16に進む。ステップST16では、演算装置77は、ステップST15で更新された発振周波数fが、探索目的値flimit以下であるか、または、発振周波数fが、最小値fmin以下であるか否かを判定する。つまり、f≦flimit、または、f≦fminであるかを判定する。f≦flimit、または、f≦fminを満たさない場合は、ステップST11に戻り、f≦flimit、または、f≦fminを満たす場合は、ステップST17に進む。なお、ステップST11に戻ったときは、発振回路71は、ステップST15で設定された周波数で発振する。
【0046】
ステップST17では、ステップST15で設定された発振周波数fが最小値fmin以下であると判定されると、発振周波数fを最小値fminに設定する。つまり、f=fminとする。これは、ステップST15で設定された発振周波数fが最小値fminより小さい場合は、発振回路71が発振することができないためである。なお、ステップST15で設定された発振周波数fが最小値fminより大きい場合は、発振周波数としてはステップST15で設定された値が維持される。次に、ステップST2に戻る。
【0047】
図4,5は、上述の手順による、電圧反射率Γが最小になるように発振回路71が制御されたときの電圧の周波数と電圧反射率Γとの関係を示すグラフである。図4は、図3Aに示すステップST1〜ST8までの動作による電圧の発振の状態を示しており、発振周波数fを周波数刻み幅df増加しながら電圧反射率Γを検出している状態を示している。図5は、図3Bに示すステップST9〜ST17の動作による電圧の発振の状態を示しており、発振周波数fを周波数刻み幅df減少しながら電圧反射率Γを検出している状態を示している。図4,5では、共に、横軸は、周波数を示しており、横軸の矢印(図中符号200を付す)に沿って進むにつれて値が大きくなる、言い換えると、図中右側に進むにつれて値が大きくなる。縦軸は、電圧反射率Γを示しており、縦軸の矢印(図中符号201を付す)に沿って進むにつれて値が大きくなる、言い換えると、図中上側に進むにつれて値が大きくなる。
【0048】
演算装置77が図3Aに示す動作を行うことによって、図4に示すように、超音波発振器70は、電圧反射率Γが最小になるまで発振周波数fを周波数刻み幅df増加し続ける。そして、電圧反射率Γが最小になると、探索目的値flimitまで周波数を増加する。電圧反射率Γが最小になる値を通過した後は、電圧反射率Γが増加する間は、電圧反射率Γが最小値のときに設定された探索目的値flimitが更新されないため、発振周波数fがこの探索目的値flimitになると、発振周波数fは、図5に示すように、周波数刻み幅df減少される。そして、再び、電圧反射率Γが最小を通過するとともに電圧反射率Γがその後前回検出値に対して減少しない場合は、探索目的値flimitは電圧反射率Γが最小のときに設定された値に対して更新されない。このため、発振周波数が、電圧反射率Γが最小のときに設定された探索目的値になると、発振周波数は再び周波数刻み幅df増加されるようになる。
【0049】
このように、超音波発振器70から発振される周波数は、図4,5に示される変化を繰り返し、電圧反射率Γのピーク(極小値)を検出した後も、発振周波数fを、行き過ぎ回数N回分周波数刻み幅df増加または減少するため、上述のピークが最小値であるか否かを判定することができる。
【0050】
本実施形態では、上述のように、発振回路71から発振される電圧の周波数は、電圧反射率Γが最小になるように制御される。電圧反射率Γは、値が小さくなるほど、発振回路71が発振した電圧が、第1,2の接合対象物5,6どうしの接合に効率よく用いられていることを示す。
【0051】
このため、PLL発振回路を用いた周波数追尾制御のように位相差だけで制御するのではなく、より実際の接合状態の状況を反映した制御とできるので、超音波発振器70の発振効率を向上することができる。なお、ここでいう発振効率とは、超音波発振器70が発振する電圧のうち、第1,2の接合対象物5,6の接合に用いられる電圧の割合である。
【0052】
また、前回検出された電圧反射率Γと比較し、前回検出された電圧反射率Γよりも小さい場合は探索目的値を更新することによって、何らかの影響により電圧反射率Γのピークを検出した場合であっても、発振周波数を変更して電圧反射率Γの検出を続けるので、確実に極小値を検出でき、電圧反射率Γの最小値の近傍の値で電圧を発振することができる。
【0053】
また、電圧反射率Γが、前回検出された電圧反射率Γ以上の場合は探索目的値を更新しないことによって、発振周波数を変更する際、増加し続けること、または、減少し続けることがないので、電圧反射率Γの最小値の近傍の値を検出することができる。
【0054】
次に、第2の実施形態に係る超音波接合装置を、図6A,6Bを用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、本体制御回路部100の動作と演算装置77の動作が第1の実施形態に対して異なる。超音波接合装置10の構造は、第1の実施形態と同じである。上記異なる点について、具体的に説明する。
【0055】
図6A,6Bは、本実施形態の超音波発振器70の動作を示すフローチャートである。図6Aは、ステップST8までのステップを示し、図6Bは、ステップST9以降のステップを示している。は、図6Aに示すように、ステップST0に代えて、ステップST20が用いられる。ステップST5とステップST6との間に、ステップST21,ST22,ST23の動作を有する。ステップST13とステップST14との間に、ステップST24,ST25,26の動作を有する。
【0056】
電圧反射率Γは、第1,2の接合対象物5,6の接合の状態によって変化する。つまり、超音波発振器70からある特定の周波数が発振された場合、この特定の周波数に対する電圧反射率Γは、第1,2の接合対象物5,6の接合状態に応じて変化する。第1,2の接合対象物5,6の接合が進行すると、電圧反射率Γが低下して収束する。本実施形態では、電圧反射率Γの閾値を設定し、この閾値によって第1,2の接合対象物5,6どうしの接合の進行状態を判断し、行き過ぎ回数と周波数刻み幅とを変更する。
【0057】
図6Aに示すように、ステップST20は、本体制御回路部100の動作である。これら情報は、第1の実施形態と同様に、例えば作業者によって入力される。ステップST20では、本体制御回路部100は、周波数刻み幅df1,df2を設定する。周波数刻み幅df1は、電圧反射率Γが上述の閾値Γthより大きい場合用いられる値である。周波数刻み幅df2は、電圧反射率Γが閾値Γth以下の場合に用いられる値である。
【0058】
また、ステップST20では、本体制御回路部100は、行き過ぎ回数N1,N2を設定する。行き過ぎ回数N1は、電圧反射率Γが閾値Γthより大きい場合に用いられる。行き過ぎ回数N2は、電圧反射率Γが閾値Γth以下の場合に用いられる。
【0059】
周波数刻み幅df1,df2と、行き過ぎ回数N1,N2は、(N1×df1)>(N2×df2)となるように設定される。なお、N1>1であり、N2>1である。本実施形態では、一例として、周波数刻み幅df1は、第1の実施形態で用いた周波数刻み幅dfと同じ値である。本実施形態では、一例として、行き過ぎ回数N1は、第1の実施形態で用いた行き過ぎ回数Nと同じ値である。
【0060】
また、ステップST20では、電圧反射率Γの取りうる最大値Γmax、上述した閾値Γthと、周波数探索範囲の最大値fmaxと、周波数探索範囲の最小値fminとを設定する。Γmaxと、fmaxと、fminとは、第1の実施形態と同じである。
【0061】
ステップST21〜ST23は、演算装置77の動作である。演算装置77の動作は、ステップST5の次に、ステップST21に進む。ステップST21では、演算装置77は、電圧反射率Γが、閾値Γthより大きいか否かを判定する。電圧反射率Γが、閾値Γthより大きい場合は、第1,2の接合対象物5,6の接合が所定の状態まで進行してないことを示している。電圧反射率Γが閾値Γth以下の場合は、第1,2の接合対象物5,6の接合が、所定状態を超えて進行していることを示している。
【0062】
電圧反射率Γが閾値Γthより大きいと判定されると、ステップST22に進む。電圧反射率Γが閾値Γth以下であると判定されると、ステップST23に進む。ステップST22では、行き過ぎ回数としてN1が選択され、周波数刻み幅としてdf1が選択される。ステップST23では、行き過ぎ回数としてN2が選択され、周波数刻み幅としてdf2が選択される。ステップST22,ST23の処理の次に、ステップST6に進む。
【0063】
ステップST24〜ST26の動作は、演算装置77の動作である。ステップST13の次に、ステップST24に進む。ステップST24では、演算装置77は、電圧反射率Γが、閾値Γthより大きいか否かを判定する。電圧反射率Γが、閾値Γthより大きい場合は、第1,2の接合対象物5,6の接合が所定の状態まで進行してないことを示している。電圧反射率Γが閾値Γth以下の場合は、第1,2の接合対象物5,6の接合が、所定状態を超えて進行していることを示している。
【0064】
電圧反射率Γが閾値Γthより大きいと判定されると、ステップST25に進む。電圧反射率Γが閾値Γth以下であると判定されると、ステップST26に進む。ステップST25では、行き過ぎ回数としてN1が選択され、周波数刻み幅としてdf1が選択される。ステップST26では、行き過ぎ回数としてN2が選択され、周波数刻み幅としてdf2が選択される。ステップST25,ST26の処理の次に、ステップST14に進む。
【0065】
このため、電圧反射率Γが閾値Γth以下である場合、つまり、第1,2の接合対象物5,6の接合状態が所定の状態を超えて進行している場合では、電圧反射率Γのピーク(極小値)が検出された場合、このピークが検出されたときの電圧の発振周波数に対して、行き過ぎる周波数域を小さくすることができる。
【0066】
第1,2の接合対象物5,6の接合状態が、所定の状態を超えて進行すると、電圧反射率Γの変化は、小さくなる傾向にある。このため、電圧反射率Γのピークが検出されると、このときの電圧反射率Γが略最小値となるため、上述のように、周波数域を小さくすることによって、超音波発振器70は、電圧反射率Γの最小値の近傍で効率よく電圧を発振することができる。
【0067】
第1,2の実施形態のステップST6で設定される探索目的値は、第1の探索目的値の一例である。第1,2の実施形態のステップST14で設定される探索目的値は、第2の探索目的値の一例である。第1,2の実施形態の演算装置77は、制御手段の一例である。
【0068】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
電圧を受けて超音波振動を発生する超音波振動子と、
荷重と超音波振動とを接合対象物に印加する先端ツールと、
荷重と、前記超音波振動子が発振した超音波振動とを前記先端ツールに伝達する超音波
ホーンと、
発振回路を備えて前記発振回路から発振された電圧を前記超音波振動子に供給する超音波発振器であって、前記発振回路が供給する電圧と電流とに基づいて電圧反射率を検出するととともに前記電圧反射率が最小になるように前記発振回路が発振する電圧の周波数を制御する制御手段を備える超音波発振器と
を具備することを特徴とする超音波接合装置。
[2]
前記制御手段は、
a)前記発振回路から発振される電圧の周波数を、設定される初期値に対して増加、または、減少させ、
b)検出された電圧反射率が前回検出値よりも小さい場合、前記電圧の発振周波数を増加させている場合は第1の探索目的値を設定して前記第1の探索目的値まで発振周波数を増加させるとともに増加中の前記電圧反射率を検出し、前記電圧の発振周波数を減少させている場合は第2の探索目的値を設定して前記第2の探索目的値まで発振周波数を減少させるとともに減少中の前記電圧反射率を検出し、
c)前記第1の探索目的値までの発振周波数の増加中または前記第2の探索目的値までの発振周波数の減少中に検出された電圧反射率が、当該電圧反射率に対して直前に検出される電圧反射率に対して大きくなると、前記直前の電圧反射率を検出したときの前記第1の探索目的値または第2の探索目的値の更新を中止し、
d)前記発振回路から発振される周波数が前記第1の探索目的値または前記第2の探索目的値になると、周波数を増加している場合は周波数を減少するように前記発振回路の制御をし、周波数を減少している場合は周波数を増加するように前記発振回路の制御をする
ことを特徴とする[1]に記載の超音波接合装置。
[3]
前記第1の探索目的値は、前記発振周波数に、行き過ぎ回数と周波数刻み幅との積を加えた値であり、かつ、前記第2の探索目的値は、前記発振周波数から前記行き過ぎ回数と前記周波数刻み幅との積を減じた値であり、
前記行き過ぎ回数と前記周波数刻み幅との前記積は、前記電圧反射率が閾値以下になると、前記電圧反射率が前記閾値より大きいときの前記積に比較して、小さくなる
ことを特徴とする[2]に記載の超音波接合装置。
【符号の説明】
【0069】
10…超音波接合装置、30…先端ツール、50…超音波ホーン、60…超音波振動子、70…超音波発振器、71…発振回路、77…演算装置(制御手段)、flimit…探索目的値(第1の探索目的値、第2の探索目的値)、Γth…閾値。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B