特許第6054220号(P6054220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054220
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】電動オイルポンプの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20161219BHJP
   F16H 59/72 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H59/72
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-57586(P2013-57586)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181780(P2014-181780A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 正悟
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−197843(JP,A)
【文献】 特開2011−000978(JP,A)
【文献】 特開2012−197842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として原動機を有する車両に装備され、前記原動機とは独立して駆動される電動オイルポンプの制御装置であって、油温の検出手段を備えるものにおいて、
前記油温が所定温度以上であることを条件として、前記電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、前記電動オイルポンプを第1の作動準備回転数で回転させる作動準備モードと、
前記作動準備モードの後、前記電動オイルポンプを前記第1の作動準備回転数より高い第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が前記第2の作動準備回転数を満たした場合に、作動準備完了と判定する判定モードと、を有し、
前記判定モードは、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、完遂されることを特徴とする、電動オイルポンプの制御装置。
【請求項2】
前記作動準備モードから前記判定モードへの移行が、前記電動オイルポンプの実回転数が前記第1の作動準備回転数を満たし、且つ、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、なされることを特徴とする、請求項1記載の電動オイルポンプの制御装置。
【請求項3】
前記作動準備モードから前記判定モードへの移行は、前記電動オイルポンプの実回転数が前記第1の作動準備回転数を満たしていることを条件として、なされ、
前記判定モードでの判定が、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、有効になることを特徴とする、請求項1記載の電動オイルポンプの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電動オイルポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機等の動作、冷却等は、通常、車両に搭載されるエンジン等の原動機により駆動されるオイルポンプ(機械式オイルポンプ)を用いて行われている。
ここで、原動機が停止する場合(アイドルストップ、EVの停止時など)、機械式オイルポンプが停止するため、オイルの供給不足に陥る恐れがある。
このため、電動オイルポンプ(電動モータにより駆動されるオイルポンプ)を用いることで、エンジン停止中も各部へのオイル供給を維持する手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−320353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動オイルポンプは、要求時以外は原則停止しているため、ポンプ部周辺のオイルはとどまったままとなり、エンジンや変速機の動作による油温とは異なる状況となっている場合がある。このような場合に、特に極低温時などは、電動オイルポンプのモータが過大な抵抗を受ける、配管等の抵抗過大で空回り状態(ポンプ部へのオイルの流入が少なくなり、ポンプが充分回転しても供給不足の状態)を生じるなど、電動オイルポンプの適正な作動が困難となることがある。
【0005】
特にこの空回りについては、ポンプは回転するため、通常の暖機判定(回転数による判定)では識別困難である。また、空回り等は油温が十分高ければ生じないので、油温による暖機判定を行うことが考えられる。しかし、センサ等のばらつき、種々の使用状況までカバーした温度設定を行うと、ポンプの使用が大幅に制限される恐れがあり、システム効率の面からも、空回り等を避ける手法が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、適切な作動準備と、適切な作動準備完了判定とを行い、電動オイルポンプの適正な作動を保証できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動オイルポンプの制御装置は、油温(オイル温度)の検出手段により検出される油温が所定温度以上であることを条件として、前記電動オイルポンプに対する作動要求に先立って、前記電動オイルポンプを第1の作動準備回転数で回転させる作動準備モードと、前記作動準備モードの後、前記電動オイルポンプを前記第1の作動準備回転数より高い第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が前記第2の作動準備回転数を満たした場合に、作動準備完了と判定する判定モードと、を有する。そして、前記判定モードは、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、完遂される構成とする。
【0008】
ここで、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇しているという条件は、具体的には、前記作動準備モードから前記判定モードへの移行条件、又は、前記判定モードでの作動準備完了判定の有効化条件とするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油温が所定温度以上であることを条件として、電動オイルポンプを比較的低速である第1の作動準備回転数で回転させることにより、電動オイルポンプにより支配されるオイル配管内のオイルを入れ替えて、温度上昇を促すことができる。
【0010】
また、電動オイルポンプを作動準備完了判定のための第2の作動準備回転数で回転させ、所望の回転が得られた場合に作動準備完了と判定することで、この判定結果を利用して、電動オイルポンプの作動許可を行うことが可能となり、過大な抵抗下での駆動困難を避けた制御とすることができる。
【0011】
また、油温の上昇、すなわち暖機の進行を監視して、これを作動準備モードから判定モードへの移行条件としたり、判定モードでの作動準備完了判定の有効化条件としたりすることで、電動オイルポンプの作動準備完了判定、ひいては作動許可の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す車両用変速装置におけるオイル供給システムの概略図
図2】電動オイルポンプ及びそのオイル配管の配置例を示す概略図
図3】電動オイルポンプを構成するモータ及びインバータの回路構成図
図4】第1実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート
図5】第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例1を示す図
図6】第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例2を示す図
図7】第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例3を示す図
図8】第2実施形態での電動オイルポンプの作動準備ルーチンのフローチャート
図9】第2実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例を示す図
図10】第3実施形態として示す作動準備時のポンプ回転数等の挙動例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す車両用変速装置におけるオイル供給システムの概略図である。
【0014】
本車両の動力源であるエンジン(内燃機関)1は、アイドルストップ機能付きであり、所定のアイドルストップ条件にてエンジン1への燃料供給を停止することによりエンジン1を自動停止し、その後、アイドルストップ解除条件の成立によりエンジン1への燃料供給を再開してエンジン1を再始動させる。
【0015】
このエンジン1の出力軸は、トルクコンバータ2を介して、変速装置3に接続されている。
変速装置3は、クラッチ4と無段変速機5とを含んで構成される。
【0016】
クラッチ4は、湿式多板クラッチにより構成され、作動油の油圧制御によって締結・解放が制御される。
尚、ここでいうクラッチ4は、詳しくは、前後進切換機構における摩擦係合要素である。前後進切換機構は、例えば、エンジン出力軸と連結したリングギア、ピニオン及びピニオンキャリア、変速機入力軸と連結したサンギアからなる遊星歯車機構と、変速機ケースをピニオンキャリアに固定する後退ブレーキと、変速機入力軸とピニオンキャリアを連結する前進クラッチと、を含んで構成され、車両の前進と後退とを切換える。この場合、前後進切換機構における摩擦係合要素である前進クラッチ及び後退ブレーキが、クラッチ4に相当する。
【0017】
無段変速機5は、プライマリプーリ5a及びセカンダリプーリ5bと、これらプーリ間に巻き掛けたベルト5cとを含み、プライマリプーリ5aの回転は、ベルト5cを介して、セカンダリプーリ5bへ伝達され、セカンダリプーリ5bの回転は、駆動車輪(図示せず)へ伝達される。
【0018】
この無段変速機5においては、プライマリプーリ5aの可動円錐板、及び、セカンダリプーリ5bの可動円錐板を、それぞれの作動油の油圧制御によって軸方向に移動させて、各プーリ5a、5bとベルト5cとの接触位置半径を変えることにより、プライマリプーリ5aとセカンダリプーリ5bのプーリ比(回転比)を変化させて、変速比を無段階に変化させることができる。
【0019】
変速装置3のケース底部のオイルパン6にはオイルが貯留されており、このオイルが機械式オイルポンプ7により吸入加圧され、調圧機構8を介して、クラッチ4及びプーリ5a、5bの各油圧アクチュエータに作動油として供給される。
【0020】
機械式オイルポンプ7は、変速装置3のケース内に設けられて変速装置3の入力軸により駆動される。従って、機械式オイルポンプ7は実質的には動力源であるエンジン1により駆動される。
【0021】
調圧機構8は、供給各部(クラッチ4及びプーリ5a、5b)ごとに、リリーフ機能を有する電磁弁を備え、マイクロコンピュータを含んで構成される制御ユニット(C/U)20の制御下で、機械式オイルポンプ7の吐出圧を供給各部の目標圧に調圧して、供給各部に供給する。これにより、車両の前後進の切換えと変速比の制御とがなされる。
【0022】
機械式オイルポンプ7は、調圧機構8を介してクラッチ4及びプーリ5a、5bに作動油としてオイルを供給する他、変速装置3の各部に潤滑及び冷却用のオイルを供給する。供給されたオイルはオイルパン6に戻されて循環される。
【0023】
一方、動力源であるエンジン1により駆動される機械式オイルポンプ7とは並列に、電動オイルポンプ10が設けられる。
電動オイルポンプ10は、エンジン1の停止中、従って機械式オイルポンプ7の停止中に、クラッチ4での摩擦熱の発生を軽減すべく、クラッチ4に冷却用のオイルを供給するために設けられる。
【0024】
図2には電動オイルポンプ及びそのオイル配管の配置例を示してあり、以下、図1及び図2を参照して説明する。
電動オイルポンプ10は、ポンプ部(10)と、これを駆動するモータMと、制御ユニット20の制御下でモータMをPWM制御するインバータINVとを含んで構成される。
【0025】
そして、この電動オイルポンプ10は、変速装置3のケース外に設けられ、ケース底部のオイルパン6から吸入配管11を介してオイルを吸入し、吐出配管12を介してケース内のクラッチ4に冷却用のオイルを供給する。このため、吐出配管12は、変速装置3のケース回り、すなわちクラッチ4のハウジング4H回りを引き回されて、ハウジング4Hに形成されたオイル入口13に接続される。
ハウジング4H内にはオイル入口13からハウジング中央部へオイルを導くオイル通路(図示せず)が設けられ、ハウジング中央部に供給されたオイルは遠心力で各部へ供給される。
【0026】
図3には電動オイルポンプ10を構成するモータM及びインバータINVの回路構成を示している。
【0027】
モータMとしては、3相ブラシレスモータを用いる。これは、回転軸に取付けられ複数の永久磁石が埋め込まれた内側のロータと、3相(U相、V相、W相)コイルを巻回してなる外側のステータとから構成され、ステータ側のコイルに供給する電流による磁界でロータを回転させる。図3ではモータMを簡略化してU相、V相、W相のコイルで示している。
【0028】
インバータINVは、PWM制御(擬似的に正弦波を得るために一定周期でパルス幅を変調した電圧を発生させる制御)により、電源電圧(直流電圧)を交流電圧に変換してモータMに供給するもので、電源VB側と接地GND側との間に、並列に、U相アームと、V相アームと、W相アームとを備える。
【0029】
U相アームは、直列に、2つのスイッチング素子Q1、Q2を備える。V相アームも、直列に、2つのスイッチング素子Q3、Q4を備える。W相アームもまた、直列に、2つのスイッチング素子Q5、Q6を備える。
【0030】
U、V、W各相アームの中間点は、モータMの各一端においてスター結線されたU、V、W各相コイルの他端に接続される。すなわち、U相アームのスイッチング素子Q1、Q2の中間点がU相コイルに接続され、V相アームのスイッチング素子Q3、Q4の中間点がV相コイルに接続され、W相アームのスイッチング素子Q5、Q6の中間点がW相コイルに接続される。
【0031】
従って、制御ユニット20により、U、V、W各相への正弦波電圧に合わせて、各相アームの電源VB側のスイッチング素子のON期間と接地GND側のスイッチング素子のON期間との比率を制御することにより、擬似的な交流電圧を得て、モータMを駆動することができる。
【0032】
尚、制御ユニット20には、モータMの駆動制御のため、U、V、W各相アームの接地GND側の共通ライン上に設けた電流検出用抵抗(抵抗値R)21の両端の電位差ΔVが検出器22を介して入力され、これに基づいてポンプ電流Ip=ΔV/Rが検出されるようになっている。また、U、V、W各相アームの中間点の電位Vu、Vv、Vwも検出・入力されるようになっている。
【0033】
上記のような車両用変速装置のオイル供給システムでは、エンジン1の運転中は機械式オイルポンプ7により変速装置3の各部にオイルを供給しているが、必要により、電動オイルポンプ10に対して作動要求が発せられ、電動オイルポンプ10によりクラッチ4に冷却用のオイルを供給して、クラッチ4の発熱を抑制している。
【0034】
前記電動オイルポンプ10に対する作動要求は、
(1)アイドルストップ条件にてエンジン1が停止し、これに伴って機械式オイルポンプ7が停止した場合、
(2)機械式オイルポンプ7の運転・停止にかかわらず、車両の発進時などにクラッチ4を操作する場合(特にクラッチ4を滑らせながら締結する場合)、すなわち、クラッチ4の冷却要求が高い場合
などに発せられる。
【0035】
この電動オイルポンプ10には、性能保証油温(例えば−25℃)があり、これ以上の油温で性能が保証されている。従って、性能保証油温未満では、電動オイルポンプ10に対し作動要求が発せられないように、アイドルストップ又は車両の発進を禁止するのが望ましい。
【0036】
油温の検出手段としては、通常、オイルパン6内に油温センサ30(図1参照)を設けている。
しかし、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管(吸入配管11及び吐出配管12)内の油温は、オイルパン6内の油温とは大きく異なる場合がある。
これは、電動オイルポンプ10は、その停止中、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内のオイルはとどまったままとなり、機械式オイルポンプ7により頻繁に流動するオイルパン6内の油温とは異なる状況となるからである。
【0037】
しかも、本実施形態での電動オイルポンプ10は変速装置3のケース外に配置され、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管11、12も変速装置3のケース外を引き回されているため、エンジン1及び変速装置3の暖機の進行により、変速装置3のケース内が暖まったとしても、電動オイルポンプ10及びそのオイル配管11、12は外気に曝されたままであり、冬期の寒冷地では極低温の環境下に置かれたままとなる。
【0038】
従って、冬期の寒冷地での始動後の暖機中に、最初のポンプ作動要求が発せられたときには、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内のオイルの粘度が高いため、モータMが過大な負荷を受け、作動要求に応えることができない場合がある。
【0039】
そこで、電動オイルポンプ10に対し作動要求が発せられたときに、通常回転数での確実な作動を保証するために、作動要求に先立って、電動オイルポンプ10の作動準備を行うようにする。
【0040】
先ず、作動準備モード(低速モード)として、電動オイルポンプ10を極低速の第1の作動準備回転数で回転させる。すなわち、電動オイルポンプ10を過大な負荷とならないように極低速で時間をかけて回転させ、オイルパン6内の比較的温かいオイルをオイル配管11、12内に流して、オイル配管11、12内のオイルを入れ替え、オイル配管11、12内の油温を上昇させる。尚、作動準備モードは、油温が所定温度(例えば−25℃)以上であることを条件として実施される。
【0041】
かかる作動準備モードは、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たすことを条件として終了し、次の判定モードへの移行を許可する。
【0042】
次の判定モードでは、オイルの入れ替えによる作動準備が完了したことを判定するため、電動オイルポンプ10を比較的高速の第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に作動準備完了と判定する。そして、作動準備完了判定後に電動オイルポンプ10の作動を許可するようにする。
【0043】
かかる判定モードは、油温が作動準備モード開始時の油温より上昇していることを条件として、完遂される。具体的には、油温が作動準備モード開始時の油温より上昇しているという条件が、作動準備モードから判定モードへの移行条件、又は、判定モードでの作動準備完了判定の有効化条件となる。
【0044】
次に制御ユニット20により実行される電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンについてフローチャート(及びタイムチャート)により説明する。
図4は第1実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。また、図5図7は第1実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例1〜3を示している。
【0045】
S101では、所定の作動準備開始条件が成立しているか否かを判定する。ここでいう作動準備開始条件とは、基本的には、電源投入直後で電動オイルポンプ10の作動準備が完了していない場合(作動準備完了フラグ=0の場合)である。他には、作動準備完了フラグ=1ではあるが、前回の作動準備完了後、電動オイルポンプ10に対する作動要求がないまま所定時間以上経過、又は、前回の電動オイルポンプ10に対する作動要求後、所定時間以上経過し、かつ、外気温センサにより検出される外気温が所定温度以下の場合なども該当する。
【0046】
また、ここでいう作動準備開始条件には、油温センサ30により検出される油温が所定温度(例えば−25℃)以上であるという条件を含む。
すなわち、温度センサ30により検出される油温を読込み、これをTemp1とする。そして、Temp1≧所定温度か否かを判定し、YESの場合に作動準備モードの開始を許可する。尚、このときのTemp1は作動準備モード開始時の油温として記憶保持する。
【0047】
このような作動準備開始条件が成立した場合は、必要により作動準備完了フラグをリセットしてから、作動準備のため、S102へ進む。作動準備開始条件が成立しない場合は、処理を終了する。
【0048】
S102では、作動準備モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第1の作動準備回転数(作動準備回転数1)に設定して、回転指令1を与える。第1の作動準備回転数は、後述する第2の作動準備回転数(性能保証流量を満足する回転数以上に設定される)より十分に低い回転数で、例えば500rpmである。また、第1の作動準備回転数は、所定の目標電流に基づいて設定するとよく、更に電流フィードバック制御を行いつつ可変設定してもよい。
【0049】
このような作動準備モードの実施により、極低速の第1の作動準備回転数にて電動オイルポンプ10が回転し、電動オイルポンプ10に支配されるオイル配管11、12内に、オイルパン6内の比較的暖かなオイルが供給され、オイル配管11、12内にとどまっていたオイルが押し出されることで、オイルが入れ替えられる。
【0050】
このとき、電動オイルポンプ10は極低速で時間をかけて回転させるため、モータMの負荷が過大となることはない。また、極低温の始動直後に作動準備を行うとしても、極低速回転で電力消費は少なくて済む。
そして、オイルの入れ替えによりオイル配管11、12内の油温が上昇し、粘性が低下することで、高速回転が可能となり、モータの脱調も低減できる。従って、引き続く高速回転での判定モードの実施が容易となり、作動準備完了判定を早期にクリアできるようになる。
【0051】
S103では、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たしたか否かを判定する。具体的には、所定時間内に実回転数≧所定回転数1が成立したか否かを判定する。又は、所定時間内に実回転数≧所定回転数1が成立し、且つ実回転数≧所定回転数1の状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。ここでの所定回転数1は、第1の作動準備回転数と同じ又はこれに近い回転数である。この判定で、YESとなった場合は、次のS104へ進む。NOの場合、例えば所定時間待っても実回転数≧所定回転数1とならない場合は、S110へ進み、作動準備作業の終了のため、目標回転数を0にして、停止指令を与える。
【0052】
S104では、判定モードへの移行に先立って、油温を検出し、油温が作動準備モード開始時の油温Temp1より上昇しているか否かを判定する。
すなわち、温度センサ30により検出される油温を読込み、これをTemp2とする。そして、Temp2−Temp1≧所定値(例えば1℃)か否かを判定し、YESの場合に判定モードへの移行を許可する。尚、このときのTemp2は1回目の判定モード開始時の油温として記憶保持する。
【0053】
従って、この判定でYESの場合は判定モードへの移行のためS105へ進む。NOの場合は、S110へ進み、作動準備作業の終了のため、目標回転数を0にして、停止指令を与える。
【0054】
S105では、判定モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第2の作動準備回転数(作動準備回転数2)に設定して、回転指令2を与える。第2の作動準備回転数は、性能保証流量を満足する回転数以上に設定され、第1の作動準備回転数より十分に高い回転数で、例えば1200rpmである。
【0055】
S106では、電動オイルポンプ10の実回転数が第2の作動準備回転数を満たしたか否かを判定する。具体的には、所定時間内に実回転数≧所定回転数2が成立したか否かを判定する。又は、所定時間内に実回転数≧所定回転数2が成立し、且つ実回転数≧所定回転数2の状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。ここでの所定回転数2は、第2の作動準備回転数と同じ又はこれに近い回転数である。
この判定で、YESとなった場合は、作動準備完了とみなし、S108、S109へ進む。
【0056】
S108では、作動準備作業の終了のため、目標回転数を0にして、停止指令を与える。S109では、作動準備完了と判定し、作動準備完了フラグを1にセットする。この作動準備完了フラグのセットにより、電動オイルポンプ10の通常作動が許可される。これにより、アイドルストップ又は車両の発進も許可される。
【0057】
一方、S106の判定で、NOの場合(電動オイルポンプ10の実回転数が第2の作動準備回転数を満たさない場合)、例えば所定時間待っても実回転数≧所定回転数2とならない場合、又は、実回転数≧所定回転数2の状態を所定時間継続できなかった場合は、S102へ戻る。すなわち、低速側の第1の作動準備回転数での作動準備モード(S102、S103)を再トライする。そして、しかる後に、高速側の第2の作動準備回転数での判定モード(S105、S106)を再トライする。
【0058】
尚、再トライの際は、S104では、2回目の判定モードへの移行に先立って、油温を検出し、油温が1回目の判定モード開始時の油温Temp2より上昇しているか否かを判定する。すなわち、温度センサ30により検出される油温を読込み、これをTemp3とする。そして、Temp3−Temp2≧所定値(例えば1℃)か否かを判定し、YESの場合に2回目の判定モードへの移行を許可する。
【0059】
図5図7の挙動例1〜3について説明する。
図5の挙動例1では、作動準備モードにて、第1の作動準備回転数を満足した後、判定モードへの移行時の油温判定で、Temp2−Temp1≧所定値が成立して、判定モードへ移行している。そして、判定モードにて、第2の作動準備回転数を満足した結果、作動準備完了と判定して、作動準備作業を終了している。
【0060】
図6の挙動例2では、作動準備モードにて、第1の作動準備回転数を満足した後、判定モードへの移行時の油温判定で、Temp2−Temp1≧所定値が成立して、判定モードへ移行している。しかし、判定モードにて、第2の作動準備回転数を満足せず、2回目の作動準備を再トライしている。そして、2回目の作動準備モードにて、第1の作動準備回転数を満足した後、2回目の判定モードへの移行時の油圧判定で、Temp3−Temp2≧所定値が成立して、2回目の判定モードへ移行している。そして、2回目の判定モードにて、第2の作動準備回転数を満足した結果、作動準備完了と判定して、作動準備作業を終了している。
【0061】
図7の挙動例3では、作動準備モードにて、第1の作動準備回転数を満足したものの、判定モードへの移行時の油温判定で、Temp2−Temp1≧所定値が成立せず(Temp2≒Temp1)、判定モードへ移行が許可されていない。この場合は、油温が上昇した時点(図示のTemp2’となった時点)で、作動準備モードから実施される。
【0062】
本実施形態によれば、油圧が所定温度(例えば−25℃)以上であることを条件として、電動オイルポンプ10に対する作動要求に先立って、電動オイルポンプ10を第1の作動準備回転数で回転させる作動準備モード(作動準備手段)と、作動準備モードの後、電動オイルポンプ10を前記第1の作動準備回転数より高い第2の作動準備回転数で回転させ、実回転数が第2の作動準備回転数を満たした場合に、作動準備完了と判定する判定モード(判定手段)と、を有し、前記判定モードは、前記油温が前記作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、完遂される構成とすることにより、次のような効果が得られる。
【0063】
油温が所定温度以上であることを条件として、電動オイルポンプ10を比較的低速である第1の作動準備回転数で回転させることにより、電動オイルポンプ10により支配されるオイル配管11、12内のオイルを入れ替えて、温度上昇を促すことができる。
【0064】
また、電動オイルポンプ10を作動準備完了判定のための第2の作動準備回転数で回転させ、所望の回転が得られた場合に作動準備完了と判定することで、この判定結果を利用して、電動オイルポンプ10の作動許可を行うことが可能となり、過大な抵抗下での駆動困難を避けた制御とすることができる。
【0065】
また、油温の上昇、すなわち暖機の進行を監視して、これを作動準備モードから判定モードへの移行条件としたり、判定モードでの作動準備完了判定の有効化条件としたりすることで、電動オイルポンプ10の空回り時の誤判定を抑制でき、電動オイルポンプ10の作動準備完了判定、ひいては作動許可の信頼性を向上させることができる。
すなわち、作動準備モードにて電動オイルポンプ10が空回りして十分に機能していないにもかかわらず、判定モードに移行して誤判定を生じたりするのを抑制でき、作動準備完了判定の信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、特に本実施形態によれば、作動準備モードから判定モードへの移行が、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たし、且つ、油温が作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、なされる。言い換えれば、前記油温が作動準備モードの開始時の油温より上昇しているという条件は、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たしているという条件と共に、作動準備モードから判定モードへの移行条件となっている。これにより、空回りの必然性の高い条件では高回転での判定モードを実施せず、誤判定を抑制することができる。
【0067】
尚、本明細書でいう「空回り」とは、所定温度・所定回転数において、所定流量を満足していない状態をいう。例えば、−25℃、900rpm時に1.8L/min吐出したときの吐出圧が300kPaであるとすると、−40℃、900rpm時の吐出圧が50kPaで、わずかしか吐出していない状態(0.2L/min程度)である。
【0068】
空回りが発生しやすい条件は、油温が極低温(例えば−35℃以下)で、且つ、ポンプ部がオイルに対し温度が高い状態である。例えば、−35℃で、作動準備を1〜3分程度継続したような場合に発生する。原理は、オイル粘度が高く、オイルの流れが非常に遅いことで、ポンプ吸入口までオイルが充分到達しない時に、モータコイル発熱、ポンプシャフト等のポンプ回転による摩擦熱により、ポンプ部の温度が上昇することで、フリクションが低下し、同一電流でもモータ回転数が高くまで上昇可能となる。
【0069】
空回りが発生しにくい条件は、オイルの種類(粘度特性)、吸入抵抗(配管径、配管形状、フィルタなど)、電動オイルポンプ仕様(通電電流、回転数など)によるが、所定油温以上の場合である。例えば、車両(変速機)が極低温のときは、エンジンも冷機状態であり、エンジン回転数が暖機後と比べて高回転数となっていることが多い。変速機入力軸回転数=エンジン回転数が一般的であり、変速機も回転することで内部発熱し、変速機の油温は上昇する。空回りが発生する条件は、低温によるオイル粘性が高いことが必須のため、油温上昇することで発生頻度は少なくなる。従って、作動準備モードの許可油温を変速機における最低油温上昇率(Δ℃/sec)を加味して設定することで、発生しにくい条件とすることができる。
【0070】
図8は第2実施形態での電動オイルポンプ10の作動準備ルーチンのフローチャートである。本ルーチンも、電源投入直後に実行され、その後も所定時間ごとに実行される。また、図9は第2実施形態での作動準備時のポンプ回転数等の挙動例を示している。
【0071】
図8のフローチャートについては、図4のフローチャートと同内容のステップには同一符号を付してある。異なる点は、判定モード(S105、S106)の直前のS104の油温判定に代え、判定モード(S105、S106)の直後に、S107の油温判定が設けられている。
【0072】
S101では、所定の作動準備開始条件が成立しているか否かを判定する。ここでいう作動準備開始条件には、油温センサ30により検出される油温(Temp1)が所定温度(例えば−25℃)以上であるという条件を含む。このような作動準備開始条件が成立した場合は、作動準備のため、S102へ進む。
【0073】
S102では、作動準備モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第1の作動準備回転数(作動準備回転数1)に設定して、回転指令1を与える。
S103では、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たしたか否かを判定する。この判定で、YESとなった場合は、作動準備完了判定のため、S105へ進む。
【0074】
S105では、判定モードを開始すべく、電動オイルポンプ10の目標回転数を第2の作動準備回転数(作動準備回転数2)に設定して、回転指令2を与える。
S106では、電動オイルポンプ10の実回転数が第2の作動準備回転数を満たしたか否かを判定する。この判定でYESとなった場合は、一応、作動準備完了とみなし、S107へ進む。
【0075】
S107では、油温を検出し、油温が作動準備モード開始時の油温Temp1より上昇しているか否かを判定する。
すなわち、温度センサ30により検出される油温を読込み、これをTemp2とする。そして、Temp2−Temp1≧所定値(例えば1℃)か否かを判定し、YESの場合に判定モードでの作動準備完了判定を有効化する。
従って、この判定でYESの場合は、作動準備完了とみなし、S108、S109へ進む。
【0076】
S108では、作動準備作業の終了のため、目標回転数を0にして、停止指令を与える。S109では、作動準備完了と判定し、作動準備完了フラグを1にセットする。この作動準備完了フラグのセットにより、電動オイルポンプ10の通常作動が許可される。これにより、アイドルストップ又は車両の発進も許可される。
【0077】
一方、S106の判定でNOの場合、又は、S107の判定でNOの場合は、S102へ戻る。すなわち、低速側の第1の作動準備回転数での作動準備モード(S102、S103)を再トライする。そして、しかる後に、高速側の第2の作動準備回転数での判定モード(S105、S106)を再トライする。
【0078】
尚、再トライの際は、S107では、2回目の判定モード終了時に、油温を検出し、油温が1回目の判定モード終了時の油温Temp2より上昇しているか否かを判定する。すなわち、温度センサ30により検出される油温を読込み、これをTemp3とする。そして、Temp3−Temp2≧所定値(例えば1℃)か否かを判定し、YESの場合に2回目の判定モードでの作動準備完了判定を有効化する。
【0079】
図9の挙動例について説明する。この挙動例では、作動準備モードにて、第1の作動準備回転数を満足した後、判定モードへ移行する。そして、判定モードにて、第2の作動準備回転数を満足すると、油温を判定する。そして、この油温判定で、Temp2−Temp1≧所定値が成立すると、判定モードでの作動準備完了判定を有効にする。
【0080】
また、特に本実施形態によれば、作動準備モードから判定モードへの移行は、電動オイルポンプ10の実回転数が第1の作動準備回転数を満たしていることを条件として、なされ、判定モードでの判定が、油温が作動準備モードの開始時の油温より上昇していることを条件として、有効になる。言い換えれば、前記油温が作動準備モードの開始時の油温より上昇しているという条件は、判定モードでの作動準備完了判定を有効にする条件となっている。これにより、低回転と高回転との交互実施で、暖機の促進を図ることができる。
【0081】
次に第3実施形態について、図10の挙動例により説明する。フローチャートは第2実施形態と同様であるが、判定モードについては、これを複数回実施する構成としている。
【0082】
本構成では、1回目の判定モードで実回転数が予め設定した判定回転数を超えたものの、第2の作動準備回転数を満たさなかった場合は、2回目の判定モードで次のような判定を行う。
すなわち、1回目の判定モードでの到達回転数に基づき、これを中心とする所定範囲を設定する。そして、2回目の判定モードでの到達回転数が前記所定範囲を超えたものの、第2の作動準備回転数を満たさなかった場合は、空回りであると判定する。このような判定を行うことで、空回りが生じたことを検知できる。
【0083】
次に本作動準備制御の実施条件などに関し更に言及する。
電動オイルポンプの作動準備のための駆動要求時ないし駆動中に電源電圧が所定値未満となった場合は、駆動を停止又は抑制する。この際、バッテリの特性上、外気温等が低温な場合は、電源電圧に対する閾値を高めてもよい。
【0084】
すなわち、本システムの電源は、通常エンジン始動用と共用であり、次回始動が困難となることが予想される場合は、駆動を停止する。特にアイドルストップ中であれば、通常はその後に再始動されるが、この再始動が困難となるからである。ここで、エンジン回転中はオルタネータより電力供給され、バッテリの状態(低温始動で放電がかなり深い場合など)はわかりにくいことが多く、アイドルストップ後の電圧状態で判断すると適切に行いやすい。
【0085】
電動オイルポンプの供給先の要求が高い、例えば緊急を要する場合は、ポンプの動作許可条件にかかわらず、又は緩和して駆動する。この際は、仕事量関係(電流対供給量等)の異常判断は緩和するか、停止する。
【0086】
すなわち、極低温下で牽引状態で登坂発進するといったような高負荷発進の場合、外気温、油温等が低くとも、発進クラッチが危険な温度状態となる場合があり、この際は条件にかかわらず、又は緩和して駆動を行う。この際、高粘度オイルや各部フリクション等で通常の仕事量関係の診断は異常値となる可能性が高いため、診断を緩和(判定用の閾値を変えるなど)、又は診断を停止する。
【0087】
暖機運転(作動準備)終了後、車両を停止し(IGN−OFF)、再度冷却される場合については、IGN−ON時の初期油温に基づいて、暖機運転(作動準備)の必要性を判断すればよい。また、外気温検出、IGN−OFF時の油温、停止時間を考慮することにより、冷却度合を推定し、これに応じて暖機運転(作動準備)を実施することも可能である。
【0088】
電動オイルポンプの作動準備が完了しない場合の処理については、発進クラッチ冷却用の電動オイルポンプの場合は、シフトレンジの発進(後退を含む)を受け付けない、シフト操作を許可しない、車両走行制限(トルクダウン、半クラッチの禁止)を実施するなどにより、クラッチの保護を図ることが考えられる。
【0089】
極低温時に電動オイルポンプを駆動する手法として、一時的に電源電圧を上昇させることで、供給電力を増加し、高負荷に打ち勝つ出力を得るようにしてもよい。この場合、車両で消費する電力の優先順位を考慮して、デフォッガーやシートヒータなどを一時的に停止若しくは弱めるとよい。
【0090】
想定外の油温、種類の異なるオイルの使用によるオイル高粘度、供給電力(電圧)不足によっては、モータの脱調の可能性がある。その場合は、作動準備モードを繰り返し実施して、油温上昇(オイル粘性改善)を待つ。また、所定時間経過するのを待って作動準備モードを再度実施する。
【0091】
作動準備中(暖機運転中)は、油温などにより電動オイルポンプ以外の要因でオイル供給不足となる可能性を含むため、モータが動かない、所定回転数に到達しない、到達時間が長い、回転数が変動するといった理由での、電動オイルポンプの故障診断については、無効するか、診断を禁止するとよい。
【0092】
機械式オイルポンプと併用する場合は、機械式オイルポンプの吐出圧力の方が優勢となることにより、電動オイルポンプの負荷が高い状態となるのを回避するため、電動オイルポンプの電流(回転数)を低下させる方向で調整するとよい。このとき、アイドルストップのようにエンジン停止により機械式オイルポンプが停止して油圧が低下する事態に備え、アイドルストップ時に必要となる油圧を満足できる電流(回転数)を目標値として、電動オイルポンプを制御することが望ましい。
【0093】
尚、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【0094】
例えば、図示の実施形態では、電動オイルポンプ10は、変速装置3のうちクラッチ4に冷却用のオイルを供給する構成としたが、これに限るものではなく、適宜の作動要求を受けて、変速装置3の少なくとも一部に、作動油圧としてあるいは潤滑・冷却用として、オイルを供給する構成としてもよい。
【0095】
また、図示の実施形態では、機械式オイルポンプ7と電動オイルポンプ10の吐出側の配管は、完全に別経路としたが、チェック弁などにより逆流を防止しつつ、合流させるようにしてもよい。但し、この場合は、電動オイルポンプ10の吐出圧がチェック弁などの開弁圧を上回るように回転数を設定するなどする必要がある。
【0096】
また、図示の実施形態では、機械式オイルポンプ7と並列に設けられる電動オイルポンプ10について説明したが、機械式オイルポンプを併用しない、いわゆるフル電動オイルポンプの場合にも、本発明を適用できる。フル電動オイルポンプは、変速機及び/又はクラッチへの作動油圧供給用であってもよいし、変速機及び/又はクラッチの潤滑・冷却用であってもよい。
【0097】
また、以上の説明では、作動準備モードの後に判定モードを実施するようにしたが、作動準備モード、判定モードの順とするのは、冷機時に限ってもよい。ある程度暖機が進んでいる場合は、最初に判定モードを実施することで、作動準備時間の短縮が可能となる。もちろん、最初の判定モードで、作動準備完了判定が得られなかった場合は、作動準備モード、判定モードの順で再トライする。
【符号の説明】
【0098】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 変速装置
4 クラッチ
4H ハウジング
5 無段変速機
5a プライマリプーリ
5b セカンダリプーリ
5c ベルト
6 オイルパン
7 機械式オイルポンプ
8 調圧機構
10 電動オイルポンプ(M:モータ、INV:インバータ)
11 吸入配管
12 吐出配管
13 オイル入口
20 制御ユニット
21 電流検出用抵抗
22 検出器
30 油温センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10