特許第6054237号(P6054237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三ツ星ベルト株式会社の特許一覧

特許6054237マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法
<>
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000002
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000003
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000004
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000005
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000006
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000007
  • 特許6054237-マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054237
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】マーク付き伝動ベルト、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/00 20060101AFI20161219BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20161219BHJP
   F16G 1/28 20060101ALI20161219BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B29D29/00
   F16G1/08 Z
   F16G1/28 Z
   F16G5/06 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-91345(P2013-91345)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-213498(P2014-213498A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 紳二
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−171108(JP,A)
【文献】 特開2008−168521(JP,A)
【文献】 特開平10−156962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 29/00
F16G 1/00 − 1/28
F16G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形ドラムの外周面に、本体ゴム部材を構成する部材を積層して、その上にベルト背面部材を積層するベルト本体積層工程と、
前記成形ドラムの外周面に積層された積層体の外周側に、ゴム製のジャケットを嵌挿して、前記積層体を前記成形ドラムと前記ジャケットとの間で加熱加圧して加硫成形する加硫成形工程とを有し、
前記ベルトの背面にマークを付与するマーク付き伝動ベルトの製造方法において、
前記ベルト本体積層工程の前または後で、且つ、前記加硫成形工程の前に、
加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムに、出力手段によりインクでマークを裏文字状態で印字する印字工程と、
前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部分に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムを、印字面が前記ベルト背面部材側となるように積層すると共に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを積層して、ベルト背面積層体を形成するベルト背面積層工程と、
前記ベルト背面積層体を予備圧着する予備圧着工程とを設けて、
前記加硫成形工程の後、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを前記印字用熱可塑性樹脂フィルムから剥離せず、表面に前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを有する前記マーク付き伝動ベルトを製造することを特徴とする、マーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載のマーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブタジエンゴムのうちの少なくとも1種で形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のマーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のマーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記予備圧着工程において、前記ベルト背面積層体を、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける前記マークの周囲の少なくとも一部の位置で、熱圧着することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のマーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記予備圧着工程において、熱圧着温度を、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点以上の温度とし、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部を前記ベルト背面部材に融着させることを特徴とする、請求項5に記載のマーク付き伝動ベルトの製造方法。
【請求項7】
本体ゴム部材と、ベルト背面積層体とを備えたマーク付き伝動ベルトであって、
前記ベルト背面積層体は、
前記本体ゴム部材の外周面に積層されたベルト背面部材と、
前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に積層されていると共に、前記ベルト背面部材側の面にインクでマークが裏文字状態で印字されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムと、
前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に積層されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムと、を有しており、
加硫処理を経て、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムが溶融・固化することにより、前記ベルト背面積層体が一体化して、前記マークが鮮明な状態に維持されていることを特徴とする、マーク付き伝動ベルト。
【請求項8】
前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、
前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることを特徴とする、請求項7に記載のマーク付き伝動ベルト。
【請求項9】
前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が120〜130℃の範囲にある中密度ポリエチレンで形成されており、
前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のマーク付き伝動ベルト。
【請求項10】
前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部が、前記ベルト背面部材に融着されていることを特徴とする、請求項7乃至9のいずれかに記載のマーク付き伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背面にマークが付与されたマーク付き伝動ベルト、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多リブベルト、歯付ベルト、コグ付ベルト、Vベルト、平ベルト等の伝動ベルトを製造する方法として、金属製の成形ドラムの外周面に、未加硫ゴムシート、心線、帆布等のベルト構成部材を巻き付けてベルト成形体を形成した後、ベルト成形体の外周側にジャケットを配置して、成形ドラムとジャケットとの間でベルト成形体を加熱加圧して加硫成形して、無端状の加硫スリーブを作製する方法が知られている。
【0003】
この加硫スリーブの加硫成形方法には、帆布等のベルト背面部材をジャケット側に配置する正成形と呼ばれる方法と、ベルト背面部材を成形ドラム側に配置する逆成形と呼ばれる方法とがある。
【0004】
加硫成形後は、ジャケットを取り外してから、成形ドラムの内部に冷却水を循環させて加硫スリーブを冷却し、その後、加硫スリーブの外周面を把持固定しつつ、成形ドラムを引き抜いて脱型する。
【0005】
また、伝動ベルトには、商品名、ロット番号、製造年月日等のマークが背面に付与されたものがある。このようなマーク付き伝動ベルトの製造方法として、ベルト背面部材の背面に、マークを裏文字状態で印字した熱可塑性樹脂フィルムを、印字面がベルト背面部材側となるように重ね合わせて、このフィルムの融点よりも高い温度でベルト成形体を加硫成形するという方法がある(例えば特許文献1〜3参照)。
【0006】
特許文献1に記載のベルト製造方法では、ベルト背面部材に印字用熱可塑性樹脂フィルムを重ねると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルムに、加硫温度よりも高い融点をもつ離型用樹脂フィルムを重ねた後、加硫温度よりも低い温度で熱プレスして印字用熱可塑性樹脂フィルムをベルト背面部材に融着させる予備圧着工程を行い、その後、正成形で加硫成形を行っている。加硫成形後は、ジャケットを取り外してから、離型用樹脂フィルムを印字用熱可塑性樹脂フィルムから剥離し、その後、加硫スリーブを成形ドラムから脱型している。特許文献1では、離型用樹脂フィルムを用いることで、加硫成形工程で溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルムがジャケットに付着するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−171108号公報
【特許文献2】特開2012−903号公報
【特許文献3】特開2012−25118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のベルト製造方法では、離型用樹脂フィルムを剥離した後で加硫スリーブを成形ドラムから脱型するため、脱型時に加硫スリーブの外周面を把持固定する部材は、印字用熱可塑性樹脂フィルムに接触する。また、加硫スリーブは成形ドラム側(内周面側)から冷却されるため、成形ドラムの脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルムの冷却が不十分な場合がある。そのため、成形ドラムを加硫スリーブから引き抜く際に、成形ドラムがスムーズに抜けず、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブの外周面との間でスリップが生じた場合、印字用熱可塑性樹脂フィルムが損傷する場合があり、その結果、マークに擦過痕、着色、歪みなどの外観不良が生じたり、消失したりする恐れがある。
【0009】
また、特許文献1では、離型用樹脂フィルムが完全に剥離されずに部分的に残ってしまう可能性があり、この場合、残った部分がベルトの物流時や使用時に剥離すると、異物混入により装置が故障する等の問題が生じる。また、剥離したフィルムにより廃棄物が増えるという問題も生じる。
【0010】
さらに、特許文献1では、マークは印字用熱可塑性樹脂フィルムだけで保護されているため、ベルト使用時に、ベルトの背面がプーリと摺動を繰り返すことで、印字用熱可塑性樹脂フィルムが摩耗してマークが露出する恐れがあり、その結果、マークが摩耗して消失してしまう。また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点は比較的低いため、高温環境でベルトを使用した場合には、印字用熱可塑性樹脂フィルムが熱劣化してマークを保護できなくなり、その結果、マークが劣化して不鮮明になり消失してしまう恐れがある。
【0011】
そこで、本発明は、正成形によるベルト製造時やベルト使用時に、マークの外観不良や消失が生じるのを防止できるマーク付き伝動ベルト、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るマーク付き伝動ベルトの製造方法は、成形ドラムの外周面に、本体ゴム部材を構成する部材を積層して、その上にベルト背面部材を積層するベルト本体積層工程と、前記成形ドラムの外周面に積層された積層体の外周側に、ゴム製のジャケットを嵌挿して、前記積層体を前記成形ドラムと前記ジャケットとの間で加熱加圧して加硫成形する加硫成形工程とを有し、前記ベルトの背面にマークを付与するマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記ベルト本体積層工程の前または後で、且つ、前記加硫成形工程の前に、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムに、出力手段によりインクでマークを裏文字状態で印字する印字工程と、前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部分に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムを、印字面が前記ベルト背面部材側となるように積層すると共に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを積層して、ベルト背面積層体を形成するベルト背面積層工程と、前記ベルト背面積層体を予備圧着する予備圧着工程とを設けて、前記加硫成形工程の後、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを前記印字用熱可塑性樹脂フィルムから剥離せず、表面に前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを有する前記マーク付き伝動ベルトを製造することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、成形ドラムの外周面に、本体ゴム部材を構成する部材を積層し、その上にベルト背面部材を積層するベルト本体積層工程の前または後に、ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に、マークを裏文字状態で印字した印字用熱可塑性樹脂フィルムを、印字面がベルト背面部材側となるように積層し、さらにこの印字用熱可塑性樹脂フィルムに外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを積層して、ベルト背面積層体を形成した後、ベルト背面積層体を予備圧着する。その後、成形ドラムの外周面に積層されたベルト構成部材の積層体の外周側に、ゴム製のジャケットを嵌挿して、当該積層体を加硫成形する。これにより無端状の加硫スリーブが作製される。
【0014】
加硫成形時、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムとジャケットとの間に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが介在しているため、加硫成形により溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルムがジャケットに付着するのを防止できる。
加硫成形後、加硫スリーブを成形ドラムと共にジャケットの内側から抜き出して加硫スリーブを冷却した後、加硫スリーブの外周面を把持固定した状態で成形ドラムを引き抜いて脱型する場合、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材は、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに接触する場合がある。また、加硫スリーブを内周側から冷却した場合、成形ドラムの脱型時に加硫スリーブの外周部の冷却が不十分で印字用熱可塑性樹脂フィルムが十分に固化していない場合があるが、印字用熱可塑性樹脂フィルムの外周面は、加硫成形時に溶融しない外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで覆われているため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムはほとんど損傷することがなく、印字用熱可塑性樹脂フィルムとマークを保護できる。
また、マークは、印字用熱可塑性樹脂フィルムと外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで二重に覆われて保護されているため、ベルト使用時に、ベルト背面とプーリとの摺動によってマークが摩耗して消失するのを防止できる。
さらに、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは融点が高いため、高温環境でベルトを使用する場合であっても熱劣化しにくく、その結果、マークが劣化により不鮮明になって消失するのを防止できる。
また、本発明では、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを剥離しないため、剥離忘れによる問題や廃棄物が増えるという問題が生じない。
【0015】
本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0016】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルム及び外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが透明であるため、マークを鮮明に視認できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115〜140℃の範囲にあるため、融点が115℃よりも低い場合に比べて、加硫成形終了後、加圧を解除したときの印字用熱可塑性樹脂フィルムの粘度が高くなるため、加圧解除後に印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出るのを防止でき、マークを維持できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115℃よりも低い場合に比べて、成形ドラムの脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルムの固化が進んでいるため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを抑制でき、マークを維持できる。
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点が200〜300℃の範囲にあるため、融点が300℃よりも高い場合に比べて、加熱加圧時の熱応答性(熱成形性、熱変形性)が高まるため、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムへの印字用熱可塑性樹脂フィルムの融着が容易になる。
【0017】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブタジエンゴムのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムへのマークの印字が容易であると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルムがマークを安定して保持できる。
また、加硫成形工程によって印字用熱可塑性フィルムをベルト背面部材に強固に融着することができる。
【0019】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブタジエンゴムで形成されている場合には、加硫成形工程によって印字用熱可塑性フィルムを外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに強固に融着することができる。
【0021】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法では、前記予備圧着工程において、前記ベルト背面積層体を、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける前記マークの周囲の少なくとも一部の位置で、熱圧着することが好ましい。
【0022】
この構成によると、熱圧着する面積が小さいため、熱圧着温度を高温(加硫成形温度よりも高温)とした場合であっても、ベルト背面部材の変形や熱損傷を抑えつつ熱圧着することができる。
【0023】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法では、前記予備圧着工程において、熱圧着温度を、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点以上の温度とし、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部を前記ベルト背面部材に融着させることが好ましい。
【0024】
この構成によると、予備圧着工程において、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部をベルト背面部材に融着するため、加硫成形後、加圧を解除したときに、溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出にくくなり、マークを維持できる。
また、成形ドラムの脱型時に、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを防止でき、マークを維持できる。
【0025】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトは、本体ゴム部材と、ベルト背面積層体とを備えたマーク付き伝動ベルトであって、前記ベルト背面積層体は、前記本体ゴム部材の外周面に積層されたベルト背面部材と、前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に積層されていると共に、前記ベルト背面部材側の面にインクでマークが裏文字状態で印字されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムと、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に積層されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムと、を有しており、加硫処理を経て、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムが溶融・固化することにより、前記ベルト背面積層体が一体化して、前記マークが鮮明な状態に維持されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によると、ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に、マークが裏文字状態で印字された印字用熱可塑性樹脂フィルムが、印字面をベルト背面部材側として積層されており、この印字用熱可塑性樹脂フィルムの印字面と反対側の面には、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが積層されている。
本発明のベルトを、成形ドラムとゴム製のジャケットとを用いて、正成形の加硫成形で製造する場合、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムとジャケットとの間に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが介在するため、加硫処理により溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルムがジャケットに付着するのを防止できる。
また、正成形で加硫成形後、加硫成形により得られた加硫スリーブを成形ドラムと共にジャケットの内側から抜き出して加硫スリーブを冷却した後、加硫スリーブの外周面を把持固定した状態で成形ドラムを引き抜いて脱型する場合、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材は、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに接触する場合がある。また、加硫スリーブを内周側から冷却した場合、成形ドラムの脱型時に加硫スリーブの外周部の冷却が不十分で印字用熱可塑性樹脂フィルムが十分に固化していない場合があるが、印字用熱可塑性樹脂フィルムの外周面は、加硫成形時に溶融しない外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで覆われているため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムはほとんど損傷することがなく、印字用熱可塑性樹脂フィルムとマークを保護できる。
また、マークは、印字用熱可塑性樹脂フィルムと外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで二重に覆われて保護されているため、ベルト使用時に、ベルト背面とプーリとの摺動によってマークが摩耗して消失するのを防止できる。
さらに、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは融点が高いため、高温環境でベルトを使用する場合であっても熱劣化しにくく、その結果、マークが劣化により不鮮明になって消失するのを防止できる。
【0027】
本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0028】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルム及び外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが透明であるため、マークを鮮明に視認できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115〜140℃の範囲にあるため、融点が115℃よりも低い場合に比べて、加硫成形終了後、加圧を解除したときの印字用熱可塑性樹脂フィルムの粘度が高くなるため、加圧解除後に印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出るのを防止でき、マークを維持できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115℃よりも低い場合に比べて、成形ドラムの脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルムの固化が進んでいるため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを抑制でき、マークを維持できる。
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点が200〜300℃の範囲にあるため、融点が300℃よりも高い場合に比べて、加熱加圧時の熱応答性(熱成形性、熱変形性)が高まるため、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムへの印字用熱可塑性樹脂フィルムの融着が容易になる。
【0029】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が120〜130℃の範囲にある中密度ポリエチレンで形成されており、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0030】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムへのマークの印字が容易であると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルムがマークを安定して保持できる。
また、加硫処理によって印字用熱可塑性フィルムをベルト背面部材に強固に融着することができる。
また、加硫処理によって印字用熱可塑性フィルムを外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに強固に融着することができる。
【0031】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部が、前記ベルト背面部材に融着されていることが好ましい。
【0032】
この構成によると、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部がベルト背面部材に融着しているため、ベルトを製造する際、加硫成形後、加圧を解除したときに、溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出にくくなり、マークを維持できる。
また、成形ドラムの脱型時に、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを防止でき、マークを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態におけるマーク付き伝動ベルトの断面斜視図である。
図2図1のマーク付き伝動ベルトの製造工程を示すフローチャート
図3】印刷工程を説明する図である。
図4】(a)は印刷工程時の断面図であって、(b)及び(c)はベルト背面積層工程時の断面図であって、(d)は予備圧着工程時の断面図であって、(e)は加硫成形工程時の断面図である。
図5】ベルト背面積層工程を説明する図である。
図6】加硫成形工程を説明する図である。
図7】(a)は脱型装置の平面図であって、(b)は脱型工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係るマーク付き伝動ベルトをローエッジコグベルトに適用した一例である。
【0035】
(マーク付き伝動ベルトの全体構成)
図1に示すように、本実施形態のマーク付き伝動ベルト1は、本体ゴム部材2と、本体ゴム部材2の外周面に積層されたベルト背面積層体3とから構成されており、ベルト1の背面(外周面)には、商品名、ロット番号、製造年月日を表示するマーク33が付与されている。
【0036】
(本体ゴム部材)
本体ゴム部材2は、背面側から順に、伸張ゴム層21、心線23が埋設された接着ゴム層22、複数のコグ部24aが設けられた圧縮ゴム層24、ベルト表面部材25を積層した構成となっている。圧縮ゴム層24のコグ部24aは、ベルト1の幅方向に沿って延びるように形成されており、ベルト表面部材25は、コグ部24aに沿うように圧縮ゴム層24に固着されている。
【0037】
心線23は、例えば、パラアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル繊維等を撚り合わせた有機繊維の撚りコードや、高強度ガラス繊維を撚り合わせたガラスコード等の無機繊維の撚りコード等で形成されている。
【0038】
伸張ゴム層21、接着ゴム層22、及び圧縮ゴム層24は、例えば、クロロプレンゴム(CR)、二トリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、水素化二トリルゴム(HNBR)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレン(ACSM)等で形成されている。
【0039】
ベルト表面部材25は、例えば、綿、6−ナイロン繊維、6,6−ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等を織成した平織物、綾織物、朱子織物等で形成されており、圧縮ゴム層24と同種のゴム組成物を含浸処理させた後、後述する加硫成形工程で圧縮ゴム層24に接着されている。
【0040】
(ベルト背面積層体)
ベルト背面積層体3は、ベルト背面部材31と、印字用熱可塑性樹脂フィルム32と、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34とで構成されている。ベルト背面部材31は、本体ゴム部材2の背面(伸張ゴム層21の背面)全体を覆っている。印字用熱可塑性樹脂フィルム32は、ベルト背面部材31の背面の周方向一部分を覆っている。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は、印字用熱可塑性樹脂フィルム32とほぼ同じ大きさであって、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の背面全体を覆っている。
【0041】
ベルト背面部材31は、例えば、綿、6−ナイロン繊維、6,6−ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等を織成した平織物、綾織物、朱子織物等で形成されており、伸張ゴム層21と同種のゴム組成物を含浸処理させた後、後述する加硫成形工程で伸張ゴム層21に接着されている。
【0042】
印字用熱可塑性樹脂フィルム32及び外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は透明であって、印字用熱可塑性樹脂フィルム32のベルト背面部材31側の面には、インクでマーク33が裏文字状態で印字されている。マーク33の印字は、本実施形態ではサーマルプリンタ12を用いて行っている。マーク33の色は、ベルト背面部材31の色とのコントラストが大きい色を用いることが好ましく、例えば、ベルト背面部材31が黒色の場合にはマーク33は白色系が好ましい。
【0043】
印字用熱可塑性樹脂フィルム32は、加硫成形温度(140〜180℃)よりも低い融点をもつ熱可塑性樹脂で形成されている。印字用熱可塑性樹脂フィルム32の融点は、例えば115〜140℃の範囲にあることが好ましい。印字用熱可塑性樹脂フィルム32は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブタジエンゴムのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましく、特に、融点が120〜130℃の範囲にある中密度ポリエチレン(MDPE)で形成されていることが好ましい。このような熱可塑性樹脂で形成した印字用熱可塑性樹脂フィルム32は、マーク33を構成するサーマルインクを安定して保持できると共に、ベルト背面部材31及びベルト背面部材31に含浸されるゴム組成物に対して強固に融着することができる。
【0044】
また、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。厚さが10μm未満であると、マーク33を印字する際に、フィルムの破損や歪みが発生する等、加工性が悪くなり、また、加硫成形時において融着不良が生じる可能性があるからである。印字用熱可塑性樹脂フィルム32の厚さの上限は、特に限定されないが、ベルト使用時に印字用熱可塑性樹脂フィルム32がベルト背面部材31から剥離される可能性を低減させるためには、厚さは薄い程好ましいため、30μm以下であることが好ましい。
【0045】
外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は、加硫成形温度よりも高い融点をもつ熱可塑性樹脂で形成されている。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の融点は、例えば、200〜300℃の範囲にあることが好ましい。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は、例えば、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。このような熱可塑性樹脂で形成した外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は、後述するゴム製のジャケット42に対する離型性が良く、且つ、上述の材料で形成された印字用熱可塑性樹脂フィルム32を強固に融着させることができる。
【0046】
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の厚さは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。厚さが10μm未満であると、後述する予備圧着工程において融着不良が生じる可能性があるからである。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の厚さの上限は、特に限定されないが、50μmを超えると、ベルト使用時に、柔軟性が不足し、フィルムの端面際にクラックが生じることがあり、ベルト1の耐久性には影響しないが外観を損ねるおそれがあるため、50μm以下であることが好ましい。また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34がベルト背面部材31から剥離される可能性を低減させるためには、厚さは薄い程好ましいため、30μm以下であることがより好ましい。
【0047】
(マーク付き伝動ベルトの製造方法)
次に、マーク付き伝動ベルト1の製造方法について、図2図7を参照しつつ説明する。図2は、マーク付き伝動ベルト1の製造工程を表したフローチャートである。
【0048】
[マーク作成工程]
まず、生産管理用コンピュータ11によって、ベルト1に付与するマーク33の形状、色彩、配置位置等のレイアウトを行なうことでマークデータを作成する。なお、スキャン等によりマークデータを取得して、生産管理用コンピュータ11にて管理してもよい。
【0049】
[印字工程]
次に、生産管理用コンピュータ11で作成または管理されたマークデータを、サーマルプリンタ12(出力手段)に出力し、このサーマルプリンタ12によって、図4(a)に示すように印字用熱可塑性樹脂フィルム32にマーク33を裏文字状態で印字する。具体的には、図3に示すように、リール13に巻回された印字用熱可塑性樹脂フィルム32を一対の送りローラ15によって送り出して、印字台14上の印字用熱可塑性樹脂フィルム32に対してサーマルプリンタ12によってマーク33を印字する。印字用熱可塑性樹脂フィルム32の幅Wは、後述するベルト本体積層工程で用いられるベルト背面部材31の幅とほぼ同じである。また、リール13に巻回された印字用熱可塑性樹脂フィルム32のマーク33が印字される面には、予めコロナ処理による表面処理が施されている。
【0050】
マーク33が印字された印字用熱可塑性樹脂フィルム32は、一対の送りローラ15によって印字台14よりも前方に送り出されて、その先端がチャック16で把持されて長手方向に伸張された状態で、カッター17によって所定の長さ寸法Lに切断される。本実施形態では、長さ寸法Lは、後述するベルト本体積層工程で用いられるベルト背面部材31の外周長よりも短い。
【0051】
[ベルト本体積層工程]
次に、図5に示すように、外周面に複数の凸部41aが周方向に並んで形成された金属製の成形ドラム41を用意して、この成形ドラム41の外周面に、ベルト表面部材25、圧縮ゴム層24、接着ゴム層22を順に積層し、その上に心線23をスパイラル状に巻回してから、伸張ゴム層21、ベルト背面部材31を順に積層する。
【0052】
[ベルト背面積層工程]
次に、図4(b)に示すように、成形ドラム41上のベルト背面部材31の外周面の周方向一部分に、マーク33が印字された印字用熱可塑性樹脂フィルム32を、印字面が内周側(ベルト背面部材31側)となるように積層する。続いて、図4(c)及び図5に示すように、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の上に、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34を積層する。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の長さ及び幅は、印字用熱可塑性樹脂フィルム32とほぼ同じである。なお、図5及び後述する図6ではマーク33を省略して表示している。
【0053】
[予備圧着工程]
次に、図4(d)に示すように、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の融点以上の温度に加熱したプレス工具43を用いて、印字用熱可塑性樹脂フィルム32におけるマーク33の周囲の位置で、ベルト背面積層体3を熱圧着する。外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34が、厚さ10〜50μmの6,6−ナイロン製のフィルムで、印字用熱可塑性樹脂フィルム32が厚さ20〜30μmの中密度ポリエチレンの場合、例えば、プレス温度260℃、面圧0.2〜0.4MPaで、3〜20秒プレスする。プレス工具43は、幅1〜数mm程度の連続した線状またはミシン目状にプレスできるように構成されている。また、熱圧着する面積はできるだけ小さいことが好ましい。これは、ベルト背面部材31に含浸されるゴム組成物の熱損傷やベルト背面部材31の変形等の外観品質の低下を抑えると共に、熱圧着時の昇温・放熱・冷却の応答性を高めるためである。
【0054】
この予備圧着工程では、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の融点以上の温度で局所的にプレスするため、溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルム32が押し出されて、溶融した外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の一部が、ベルト背面部材31に直接接触して、ベルト背面部材31の表面の凹凸に嵌まり込むように融着する。なお、プレスは、複数のマーク33のそれぞれの周囲に行っても、複数のマーク33をまとめて取り囲むように行ってもよいが、完全に繋がった環状にはプレスしない。完全に繋がった環状にプレスすると、印字用熱可塑性樹脂フィルム32とベルト背面部材31との間のエアーを、後の加硫成形工程で外部に排出できないからである。
【0055】
[加硫成形工程]
次に、図6に示すように、成形ドラム41の外周面に積層された積層体の外周側に、ゴム製のジャケット42を嵌挿する。ジャケット42は、例えば、ブチルゴム、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム等を用いた単体もしくはブレンドのゴム組成物で形成されており、特に、高温下での使用頻度が多くても硬度上昇が抑えられ耐久性に優れたブチルゴム、シリコンゴムが好適である。そして、成形ドラム41の内部及びジャケット42の外周側から高温高圧蒸気を作用させることで、積層体を成形ドラム41とジャケット42との間で加熱加圧して加硫成形し、加硫スリーブ10を作製する。加硫成形工程は、例えば、加熱温度140〜180℃、面圧0.1〜3MPaで、20〜40分行う。
【0056】
この加硫成形工程により、心線23が接着ゴム層22に埋設され、成形ドラム41の凸部41aによって圧縮ゴム層24にコグ部24aが形成され、ベルト背面部材31とベルト表面部材25がそれぞれ伸張ゴム層21と圧縮ゴム層24に接着される。また、加硫成形工程により、図4(e)に示すように、印字用熱可塑性樹脂フィルム32が溶融して、印字用熱可塑性樹脂フィルム32が、ベルト背面部材31と外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34に融着されると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルム32とベルト背面部材31との間からエアーが排除される。なお、図4(e)はジャケット42を省略して表示している。
【0057】
[脱型工程]
所定の加硫時間経過後、ジャケット42による加圧を解除して、ジャケット42の内側から、加硫スリーブ10を成形ドラム41と共に取り出す。そして、成形ドラム41の内部に冷却水を循環させて、成形ドラム41を介して加硫スリーブ10を冷却する。その後、図7に示す脱型装置50を用いて、加硫スリーブ10を成形ドラム41から取り外す。以下、加硫スリーブ10を成形ドラム41から脱型する工程について具体的に説明する。
【0058】
脱型装置50は、周方向に配置された3〜8つ(図7では3つ)の把持部材51を備えており、少なくとも1つの把持部材51は、シリンダ52によって径方向に移動可能となっており、その他の把持部材51は、支持フレーム53に固定されている。また、把持部材51の径方向内側部分は、ゴム等の弾性部材(図示省略)で形成されており、加硫スリーブ10に当接する面は、加硫スリーブ10に対するグリップ力を高めるために摩擦係数が高く形成されている。この複数の把持部材51の内側に、加硫スリーブ10と成形ドラム41を配置して、複数の把持部材51によって加硫スリーブ10を把持固定した状態で、成形ドラム41をクレーンフック54で吊り下げつつ、昇降機構55によって押し上げることで、成形ドラム41を加硫スリーブ10からから引き抜く。
【0059】
脱型後は、加硫スリーブ10を2つのローラ(図示省略)に懸架して、加硫スリーブ10を走行させつつ、断面V形状となるように所定の幅に切断することで、複数のマーク付き伝動ベルト1に仕上げられる。
【0060】
以上説明した本実施形態のマーク付き伝動ベルト1の製造方法によると、加硫成形工程において、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルム32とジャケット42との間に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34が介在しているため、溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルム32がジャケット42に付着するのを防止できる。また、加圧を解除した直後に、たとえ溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルム32が流れ出ても、ジャケット42等の副資材にマーク33が写ることがない。
また、加硫スリーブ10は内周側から冷却されるため、成形ドラム41の脱型時に加硫スリーブ10の外周部の冷却が不十分で印字用熱可塑性樹脂フィルム32が十分に固化していない場合があるが、印字用熱可塑性樹脂フィルムの外周面は、加硫成形時に溶融しない外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで覆われているため、加硫スリーブ10の外周面を把持固定する把持部材51と加硫スリーブ10との間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34はほとんど損傷することがなく、印字用熱可塑性樹脂フィルム32とマーク33を保護できる。
【0061】
また、本実施形態では、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の融点が115〜140℃の範囲にあるため、融点が115℃よりも低い場合に比べて、加硫成形終了後、加圧を解除したときの印字用熱可塑性樹脂フィルム32の粘度が高くなるため、加圧解除後に印字用熱可塑性樹脂フィルム32が流れ出るのを防止でき、マーク33を維持できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の融点が115℃よりも低い場合に比べて、成形ドラム41の脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルム32の固化が進んでいるため、加硫スリーブ10の外周面を把持固定する把持部材51と加硫スリーブ10との間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34が印字用熱可塑性樹脂フィルム32に対してずれるのを抑制でき、マーク33を維持できる。
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の融点が200〜300℃の範囲にあるため、融点が300℃よりも高い場合に比べて、加熱加圧時の熱応答性(熱成形性、熱変形性)が高まるため、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34への印字用熱可塑性樹脂フィルム32の融着が容易になる。
【0062】
また、本実施形態では、予備圧着工程において、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34の一部がベルト背面部材31に融着されている。そのため、加硫成形後、加圧を解除したときに、溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルム32が流れ出にくくなり、マーク33を維持できる。また、成形ドラム41の脱型時に、加硫スリーブ10の外周面を把持固定する把持部材51と加硫スリーブ10との間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34が印字用熱可塑性樹脂フィルム32に対してずれるのを防止でき、マーク33を維持できる。
【0063】
また、本実施形態のベルト1は、マーク33が印字用熱可塑性樹脂フィルム32と外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34で二重に覆われて保護されているため、ベルト使用時に、ベルト背面とプーリとの摺動によってマーク33が摩耗して消失するのを防止できる。さらに、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34は融点が高いため、高温環境でベルト1を使用する場合であっても熱劣化しにくく、その結果、マーク33が劣化により不鮮明になって消失するのを防止できる。
【0064】
また、本実施形態のベルト1製造方法では、外カバー用熱可塑性樹脂フィルム34を剥離しないため、剥離忘れによる問題や廃棄物が増えるという問題が生じない。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、ベルト本体積層工程の後で、ベルト背面積層工程と予備圧着工程を行っているが、ベルト本体積層工程の前に、ベルト背面積層工程と予備圧着工程を行ってもよい。但し、この場合、ベルト背面積層体3を予備圧着した後、ベルト背面積層体3がカールして取扱いにくくなるため、取扱い性の観点からは、ベルト本体積層工程の後でベルト背面積層工程と予備圧着工程を行うことが好ましい。
【0067】
また、上記実施形態では、ベルト背面部材31の背面の周方向一部分に、印字用熱可塑性樹脂フィルム32を積層しているが、ベルト背面部材31の背面の上記部分以外の一部分(例えば幅方向一部分)に、印字用熱可塑性樹脂フィルム32を積層してもよく、ベルト背面部材31の背面全体に、印字用熱可塑性樹脂フィルム32を積層してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、本体ゴム部材2は、伸張ゴム層21と、心線23が埋設された接着ゴム層22と、圧縮ゴム層24と、ベルト表面部材25とで構成されているが、本体ゴム部材2の構成はこれに限定されるものではない。例えば、本体ゴム部材は、ベルト表面部材25を有していなくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態は、ローエッジコグベルトに本発明のマーク付き伝動ベルトを適用した例であるが、本発明の適用対象となるベルトの種類は、ローエッジコグベルトに限定されるものではなく、正成形で加硫成形されて、加硫成形後にベルト背面を研磨せずに製造されるベルトであれば、多リブベルト、歯付ベルト、平ベルト等にも本発明を適用できる。特に高温環境で使用されるベルトに適用した場合、本発明の特長を有効に発揮できる。
【符号の説明】
【0070】
1 マーク付き伝動ベルト
2 本体ゴム部材
3 ベルト背面積層体
31 ベルト背面部材
32 印字用熱可塑性樹脂フィルム
33 マーク
34 外カバー用熱可塑性樹脂フィルム
41 成形ドラム
42 ジャケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7