【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るマーク付き伝動ベルトの製造方法は、成形ドラムの外周面に、本体ゴム部材を構成する部材を積層して、その上にベルト背面部材を積層するベルト本体積層工程と、前記成形ドラムの外周面に積層された積層体の外周側に、ゴム製のジャケットを嵌挿して、前記積層体を前記成形ドラムと前記ジャケットとの間で加熱加圧して加硫成形する加硫成形工程とを有し、前記ベルトの背面にマークを付与するマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記ベルト本体積層工程の前または後で、且つ、前記加硫成形工程の前に、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムに、出力手段によりインクでマークを裏文字状態で印字する印字工程と、前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部分に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムを、印字面が前記ベルト背面部材側となるように積層すると共に、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを積層して、ベルト背面積層体を形成するベルト背面積層工程と、前記ベルト背面積層体を予備圧着する予備圧着工程とを設け
て、前記加硫成形工程の後、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを前記印字用熱可塑性樹脂フィルムから剥離せず、表面に前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを有する前記マーク付き伝動ベルトを製造することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、成形ドラムの外周面に、本体ゴム部材を構成する部材を積層し、その上にベルト背面部材を積層するベルト本体積層工程の前または後に、ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に、マークを裏文字状態で印字した印字用熱可塑性樹脂フィルムを、印字面がベルト背面部材側となるように積層し、さらにこの印字用熱可塑性樹脂フィルムに外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを積層して、ベルト背面積層体を形成した後、ベルト背面積層体を予備圧着する。その後、成形ドラムの外周面に積層されたベルト構成部材の積層体の外周側に、ゴム製のジャケットを嵌挿して、当該積層体を加硫成形する。これにより無端状の加硫スリーブが作製される。
【0014】
加硫成形時、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムとジャケットとの間に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが介在しているため、加硫成形により溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルムがジャケットに付着するのを防止できる。
加硫成形後、加硫スリーブを成形ドラムと共にジャケットの内側から抜き出して加硫スリーブを冷却した後、加硫スリーブの外周面を把持固定した状態で成形ドラムを引き抜いて脱型する場合、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材は、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに接触する場合がある。また、加硫スリーブを内周側から冷却した場合、成形ドラムの脱型時に加硫スリーブの外周部の冷却が不十分で印字用熱可塑性樹脂フィルムが十分に固化していない場合があるが、印字用熱可塑性樹脂フィルムの外周面は、加硫成形時に溶融しない外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで覆われているため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムはほとんど損傷することがなく、印字用熱可塑性樹脂フィルムとマークを保護できる。
また、マークは、印字用熱可塑性樹脂フィルムと外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで二重に覆われて保護されているため、ベルト使用時に、ベルト背面とプーリとの摺動によってマークが摩耗して消失するのを防止できる。
さらに、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは融点が高いため、高温環境でベルトを使用する場合であっても熱劣化しにくく、その結果、マークが劣化により不鮮明になって消失するのを防止できる。
また、本発明では、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムを剥離しないため、剥離忘れによる問題や廃棄物が増えるという問題が生じない。
【0015】
本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0016】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルム及び外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが透明であるため、マークを鮮明に視認できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115〜140℃の範囲にあるため、融点が115℃よりも低い場合に比べて、加硫成形終了後、加圧を解除したときの印字用熱可塑性樹脂フィルムの粘度が高くなるため、加圧解除後に印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出るのを防止でき、マークを維持できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115℃よりも低い場合に比べて、成形ドラムの脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルムの固化が進んでいるため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを抑制でき、マークを維持できる。
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点が200〜300℃の範囲にあるため、融点が300℃よりも高い場合に比べて、加熱加圧時の熱応答性(熱成形性、熱変形性)が高まるため、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムへの印字用熱可塑性樹脂フィルムの融着が容易になる。
【0017】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブタジエンゴムのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムへのマークの印字が容易であると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルムがマークを安定して保持できる。
また、加硫成形工程によって印字用熱可塑性フィルムをベルト背面部材に強固に融着することができる。
【0019】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法において、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブタジエンゴムで形成されている場合には、加硫成形工程によって印字用熱可塑性フィルムを外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに強固に融着することができる。
【0021】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法では、前記予備圧着工程において、前記ベルト背面積層体を、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける前記マークの周囲の少なくとも一部の位置で、熱圧着することが好ましい。
【0022】
この構成によると、熱圧着する面積が小さいため、熱圧着温度を高温(加硫成形温度よりも高温)とした場合であっても、ベルト背面部材の変形や熱損傷を抑えつつ熱圧着することができる。
【0023】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトの製造方法では、前記予備圧着工程において、熱圧着温度を、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点以上の温度とし、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部を前記ベルト背面部材に融着させることが好ましい。
【0024】
この構成によると、予備圧着工程において、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部をベルト背面部材に融着するため、加硫成形後、加圧を解除したときに、溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出にくくなり、マークを維持できる。
また、成形ドラムの脱型時に、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを防止でき、マークを維持できる。
【0025】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトは、本体ゴム部材と、ベルト背面積層体とを備えたマーク付き伝動ベルトであって、前記ベルト背面積層体は、前記本体ゴム部材の外周面に積層されたベルト背面部材と、前記ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に積層されていると共に、前記ベルト背面部材側の面にインクでマークが裏文字状態で印字されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムと、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムにおける印字面とは反対側の面に積層されており、前記本体ゴム部材の加硫温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムと、を有しており、加硫処理を経て、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムが溶融・固化することにより、前記ベルト背面積層体が一体化して、前記マークが鮮明な状態に維持されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によると、ベルト背面部材の背面の少なくとも一部に、マークが裏文字状態で印字された印字用熱可塑性樹脂フィルムが、印字面をベルト背面部材側として積層されており、この印字用熱可塑性樹脂フィルムの印字面と反対側の面には、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが積層されている。
本発明のベルトを、成形ドラムとゴム製のジャケットとを用いて、正成形の加硫成形で製造する場合、加硫成形温度よりも低い融点をもつ印字用熱可塑性樹脂フィルムとジャケットとの間に、加硫成形温度よりも高い融点をもつ外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが介在するため、加硫処理により溶融した印字用熱可塑性樹脂フィルムがジャケットに付着するのを防止できる。
また、正成形で加硫成形後、加硫成形により得られた加硫スリーブを成形ドラムと共にジャケットの内側から抜き出して加硫スリーブを冷却した後、加硫スリーブの外周面を把持固定した状態で成形ドラムを引き抜いて脱型する場合、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材は、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに接触する場合がある。また、加硫スリーブを内周側から冷却した場合、成形ドラムの脱型時に加硫スリーブの外周部の冷却が不十分で印字用熱可塑性樹脂フィルムが十分に固化していない場合があるが、印字用熱可塑性樹脂フィルムの外周面は、加硫成形時に溶融しない外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで覆われているため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムはほとんど損傷することがなく、印字用熱可塑性樹脂フィルムとマークを保護できる。
また、マークは、印字用熱可塑性樹脂フィルムと外カバー用熱可塑性樹脂フィルムで二重に覆われて保護されているため、ベルト使用時に、ベルト背面とプーリとの摺動によってマークが摩耗して消失するのを防止できる。
さらに、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは融点が高いため、高温環境でベルトを使用する場合であっても熱劣化しにくく、その結果、マークが劣化により不鮮明になって消失するのを防止できる。
【0027】
本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が115〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであり、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、透明で、融点が200〜300℃の範囲にある熱可塑性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0028】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルム及び外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが透明であるため、マークを鮮明に視認できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115〜140℃の範囲にあるため、融点が115℃よりも低い場合に比べて、加硫成形終了後、加圧を解除したときの印字用熱可塑性樹脂フィルムの粘度が高くなるため、加圧解除後に印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出るのを防止でき、マークを維持できる。
また、印字用熱可塑性樹脂フィルムの融点が115℃よりも低い場合に比べて、成形ドラムの脱型時に、印字用熱可塑性樹脂フィルムの固化が進んでいるため、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを抑制でき、マークを維持できる。
また、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの融点が200〜300℃の範囲にあるため、融点が300℃よりも高い場合に比べて、加熱加圧時の熱応答性(熱成形性、熱変形性)が高まるため、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムへの印字用熱可塑性樹脂フィルムの融着が容易になる。
【0029】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記印字用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が120〜130℃の範囲にある中密度ポリエチレンで形成されており、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムは、融点が215〜225℃の範囲にある6−ナイロン、融点が255〜265℃の範囲にある6,6−ナイロン、及び融点が290〜300℃の範囲にある4,6−ナイロンのうちの少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0030】
この構成によると、印字用熱可塑性樹脂フィルムへのマークの印字が容易であると共に、印字用熱可塑性樹脂フィルムがマークを安定して保持できる。
また、加硫処理によって印字用熱可塑性フィルムをベルト背面部材に強固に融着することができる。
また、加硫処理によって印字用熱可塑性フィルムを外カバー用熱可塑性樹脂フィルムに強固に融着することができる。
【0031】
また、本発明のマーク付き伝動ベルトにおいて、前記外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部が、前記ベルト背面部材に融着されていることが好ましい。
【0032】
この構成によると、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムの一部がベルト背面部材に融着しているため、ベルトを製造する際、加硫成形後、加圧を解除したときに、溶融状態の印字用熱可塑性樹脂フィルムが流れ出にくくなり、マークを維持できる。
また、成形ドラムの脱型時に、加硫スリーブの外周面を把持固定する部材と加硫スリーブとの間でスリップが生じても、外カバー用熱可塑性樹脂フィルムが印字用熱可塑性樹脂フィルムに対してずれるのを防止でき、マークを維持できる。