(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組織残存情報部は、前記第1の動脈推移情報及び/又は前記第2の動脈推移情報と、前記動脈残存情報と、前記組織推移情報とに指定された造影モデルを用いたモデルフィッティングを行って前記造影モデルに係るパラメータを求め、前記動脈残存情報と前記造影モデルと求めた前記パラメータとに基づいて前記組織残存情報を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の医用画像解析装置。
前記組織残存情報部は、前記時系列画像における各画素の画素値の減衰を表す減衰時定数を前記パラメータとして求めることを特徴とする請求項3に記載の医用画像解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
[構成]
図1を参照して、第1の実施形態に係る医用画像解析装置1の構成を説明する。
【0012】
医用画像解析装置1は、被検体の時系列画像を解析して被検体の血流動態を求める。医用画像解析装置1は、読出部10と、第1の動脈推移情報部11と、血管画素選択部12と、血管画素対応部13と、組織推移情報部14と、第2の動脈推移情報部15と、残存情報部16と、解析部17と、画像生成部18と、制御部19と、操作部3と、表示部4とを有する。
【0013】
(読出部10)
読出部10は、被検体の複数の領域について重畳領域を有するようにそれぞれ異なる時間に被検体に造影剤を投与して撮影された複数の時系列画像を記憶部2から読み出す。また、読出部10は、さらに造影剤が投与されていない被検体の複数の領域全体を表す全体領域画像を記憶部2から読み出す。ここで、時系列画像は、被検体の一つの領域について一定の時間間隔で撮影された複数の静止画像(フレーム)を時系列的に対応付けた動画像である。被検体の複数の領域についてこの時系列画像を撮影したとき、自ずと時系列画像は複数となる。全体領域画像は、例えばX線CT装置によるヘリカルスキャンによって撮影された静止画像である。複数の時系列画像と全体領域画像とは医用画像解析装置1の内部又は外部に存在する記憶部2に記憶されている。記憶部2が医用画像解析装置1の外部に存在するとき、読出部10は一般的な通信手段を介して複数の時系列画像と全体画像とを記憶部2から読み出す。
【0014】
(第1の動脈推移情報部11)
第1の動脈推移情報部11は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。換言すると、第1の動脈推移情報部11は、動脈領域が表す被検体での位置における造影剤の濃度の推移情報を求める。この処理の例として、第1の動脈推移情報部11は、各フレームにおける動脈領域に含まれる画素の画素値の平均値を算出し、その平均値が時系列的に変化した情報を推移情報として求める。動脈領域とは、解析対象の組織に対する血液流入経路が時系列画像において表された領域である。例えば、組織が脳であるとき、脳動脈が表された領域が動脈領域であり、組織が肝臓であるとき、肝動脈が表された領域と門脈が表された領域とが動脈領域である。門脈は動脈ではないがここでは便宜上動脈領域とする。また、組織が肺であるとき、肺には血液流入経路が肺動脈と気管支動脈との二つの動脈がある。通常、気管支動脈が表された領域を動脈領域として指定することは困難であるので、気管支動脈の代替として大動脈が表された領域が動脈領域として指定される。さらに、肺動脈が表された領域が動脈領域として指定される。複数の時系列画像は、組織の全体領域を複数の領域に分けて撮影された画像であるので、通常、複数の時系列画像の全てに動脈領域を指定できるわけではない。それにより、動脈領域は複数の時系列画像の一部の時系列画像すなわち組織の一部の領域を撮影した時系列画像に指定される。従って、複数の時系列画像には、動脈領域が指定された時系列画像(動脈領域を含む領域について撮影された時系列画像)と動脈領域が指定されない時系列画像(動脈領域を含まない領域について撮影された時系列画像)とが存在する。動脈領域は、例えばユーザが或るフレームを目視しながら操作部3を操作することによって指定される。また、例えば第1の動脈推移情報部11が臨床的な統計データを参照して自動的に動脈領域を指定してもよい。
図2は、被検体の肺を解析対象の組織として複数の時系列画像を撮影した例を表す模式図である。この例では、肺LUについて第1の領域A1、第2の領域A2及び第3の領域A3の三つの領域に分けて撮影された複数の時系列画像のうち、第1の領域A1について撮影された時系列画像には大動脈が表された領域が大動脈の動脈領域AOとして指定され、第2の領域A2について撮影された時系列画像には肺動脈が表された領域が肺動脈の動脈領域PAとして指定されている。なお、第1の領域A1について撮影された時系列画像を第1の時系列画像、第2の領域A2について撮影された時系列画像を第2の時系列画像、第3の領域A3について撮影された画像を第3の時系列画像とする。
【0015】
(血管画素選択部12)
血管画素選択部12は、読出部10が読み出した複数の時系列画像の動脈領域を除く画素のうち血管を表す画素である血管画素を選択する。例えば血管画素選択部12は、複数の時系列画像の画素のうち血管の分岐点を表す画素を血管画素として選択する。血管画素選択部12が血管画素を選択する方法として、例えば、血管画素選択部12は、組織の血管をグラフ化し、そのグラフの分岐点を得る。血管画素選択部12は、得られた分岐点近傍の一定の領域における距離変換を行い、一定の領域内の枝それぞれが円柱であるとみなして積集合領域を求める。血管画素選択部12は、求めた積集合領域の重心に該当する画素を血管画素として選択する。
【0016】
また、血管画素選択部12は、読出部10が読み出した全体領域画像の画素のうち血管を表す画素である全体領域血管画素を選択する。例えば血管画素選択部12は、前述した方法によって、複数の時系列画像の画素のうち血管の分岐点を表す画素を血管画素として選択するとともに、全体領域画像の画素のうち血管の分岐点を表す画素を全体領域血管画素として選択し、血管画素対応部13へ送る。
【0017】
また、血管画素選択部12は、後述する血管画素対応部13が特定した全体画像における重畳領域に該当する該当領域の画素のうち血管を表す画素である第1の重畳領域血管画素を血管画素対応部13により対応付けられた全体領域血管画素よりも高い密度で新たに選択するとともに、複数の時系列画像の重畳領域に含まれる画素のうち血管を表す画素である第2の重畳領域血管画素を血管画素よりも高い密度で新たに選択する。血管画素選択部12が選択した血管画素と全体領域血管画素とには、血管画素対応部13によって対応付けが行われるが、その対応付けが困難だった場合、あるいは、より高い精度の対応付けを望む場合、いずれも対応付けの精度を上げる必要がある。このとき、血管画素選択部12は、血管画素対応部13が全体画像における重畳領域に該当する該当領域を特定した(全体画像と複数の時系列画像とが位置合わせされた)後、さらに、この該当領域の画素について血管を表す画素を第1の重畳領域血管画素として選択するとともに、複数の時系列画像の重畳領域の画素について血管を表す画素を第2の重畳領域血管画素として選択する。このとき、血管画素選択部12は、該当領域と重畳領域とにおいて、血管対応部が該当領域を特定した後の全体領域血管画素及び血管画素よりも高い密度で画素を選択して、血管画素対応部13へ送ることによって、第1の重畳領域血管画素と第2の重畳領域血管画素とが全体画像と複数の時系列画像との位置合わせのために対応付けられる画素として追加される。
【0018】
(血管画素対応部13)
血管画素対応部13は、血管画素選択部12により選択された血管画素のうち、互いに同じ重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付ける。血管対応部が血管画素を対応付ける方法として、例えば、血管画素対応部13は、ランドマークとしての血管画素のうち何れか二つの距離や、何れか三つ以上が形成する多角形の角度に基づいて幾つかの血管画素を除外し、残った血管画素について対応付ける。すなわち、互いに同じ重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とについて、前述の距離や角度を比較して対応付ける。
【0019】
また、血管画素対応部13は、血管画素選択部12により選択された血管画素と全体領域血管画素とを対応付けることによって、重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付け、全体領域画像における重畳領域に該当する該当領域にある血管画素を特定する。別の例では、血管画素対応部13は、まず複数の時系列画像のそれぞれと全体領域画像とを位置合わせする。全体領域画像は複数の時系列画像の領域すべてを含んでいるので、この位置合わせによって複数の時系列画像どうしが位置合わせされる。全体領域画像と位置合わせされた複数の時系列画像どうしが位置合わせされたことにより、血管画素対応部13は、全体領域画像における血管画素と時系列画像における血管画素とを対応付け、全体領域画像における重畳領域に該当する該当領域にある血管画素を特定することができる。
【0020】
また、血管画素対応部13は、より精度の高い対応付けを行う場合、血管画素選択部12が第1の重畳領域画素と第2の重畳領域画素とを新たに選択した後、血管画素対応部13は、第1の重畳領域血管画素の一部と第2の重畳領域血管画素の一部とを所定数より多い数に亘って対応付けることによって、重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付ける。血管画素対応部13は、血管画素選択部12が全体画像と複数の時系列画像との位置合わせのために対応付けられる画素を追加した後、さらに位置合わせを行う。それにより、血管画素対応部13は、追加される前よりも精度のよい位置合わせを行うことができる。
【0021】
血管画素対応部13は、血管画素選択部12により新たに選択された第1の重畳領域血管画素の一部と第2の重畳領域血管画素の一部とを対応付けたとき、第1の重畳領域血管画素のうち第2の重畳領域血管画素に対応付けられていない第1の未対応画素を含む領域の画像である第1の周辺画像と、複数の時系列画像のうち周辺画像に相当する画素である第2の未対応画素を含む領域の画像である第2の周辺画像とを比較し、第1の周辺画像と第2の周辺画像との一致度が指定された一致度を超えたとき、第1の未対応画素と第2の未対応画素とをさらに対応付けることによって、重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付ける。換言すると、血管画素対応部13は、対応付けのランドマークとして採用されなかった画素(第1の未対応画素及び第2の未対応画素)それぞれの周辺画像を例えば一般的な画像相関法を用いて第1の周辺画像と第2の周辺画像との一致度が指定された一致度を超えたとき、そのときの第1の周辺画像と第2の周辺画像との第1の未対応画素及び第2の未対応画素とを対応付ける。なお、第1の未対応画素と第2の未対応画素との第1の周辺画像と第2の周辺画像とについての画像の範囲は、ユーザが操作部3を操作して指定されてもよく、血管画素対応部13にプリセットされてもよい。
【0022】
(組織推移情報部14)
組織推移情報部14は、読出部10が読み出した複数の時系列画像を受け、被検体の組織における画素値の時系列変化を示す組織推移情報を取得する。組織推移情報部14は、時系列画像の複数フレーム間の画素を対応付けし、各画素の画素値が時系列的に変化した推移情報を取得する。つまり、被検体の組織における造影剤の濃度の推移情報を取得する。組織推移情報部14は血管推移情報部140を有する。
【0023】
(血管推移情報部140)
血管推移情報部140は、血管画素対応部13により対応付けられた血管画素の画素値の推移を表す血管推移情報を求める。換言すると、血管推移情報部140は、複数フレーム間の血管画素を対応付けし、各血管画素の画素値が時系列的に変化した情報を血管推移情報として求める。それにより、血管推移情報部140は、血管画素が表す血管における造影剤の濃度の推移情報を求める。
【0024】
(第2の動脈推移情報部15)
第2の動脈推移情報部15は、複数の時系画像のそれぞれが撮影された時間を表す時間情報と、第1の動脈推移情報部11による動脈推移情報と、血管推移情報部140による血管推移情報とに基づいて、複数の時系列画像のうち動脈領域が設定された一部の時系列画像以外の時系列画像が撮影された時間における動脈領域に相当する第2の動脈推移情報を求める。第2の動脈推移情報とは、動脈領域が指定されていない領域について時系列画像が撮影された時間に、他の領域において指定された動脈領域が表す被検体での位置における造影剤の濃度の推移を表す情報である。例えば、
図2に示した例の第1の領域A1について撮影した時系列画像では、第2の領域A2に指定された肺動脈の動脈領域PAが表す被検体での位置における造影剤の濃度の該時系列画像を撮影している時間における推移を表す情報が第2の動脈推移情報である。また、第2の領域A2について撮影した時系列画像では、第1の領域A1に指定された大動脈の動脈領域AOが表す被検体での位置における造影剤の濃度の該時系列画像を撮影している時間における推移を表す情報が第2の動脈推移情報である。また、第3の領域A3について撮影した時系列画像では、第1の領域A1に指定された大動脈の動脈領域AOと第2の領域A2に指定された肺動脈の動脈領域PAとのそれぞれが表す被検体での位置における造影剤の濃度の該時系列画像を撮影している時間における推移を表す情報が第2の動脈推移情報である。
【0025】
また、第2の動脈推移情報部15は、血管の種別である血管種別の特性を表す血管種別情報を予め記憶し、血管推移情報部140による血管推移情報と血管種別情報とに基づいて、血管画素対応部13が対応付けた血管画素が表す血管の血管種別を判断し、判断した血管種別を血管推移情報に含めて第2の動脈推移情報を求める。血管種別情報とは、例えば肺動脈や気管支動脈などの血管種別ごとの時間濃度曲線の特徴を表す情報である。
図3は、時間濃度曲線TDCの特徴の例を表す模式図である。時間濃度曲線TDCの特徴としては、例えば、ピーク高さ(Peak Height)PH、カーブ幅(Full Width at Half Maximum)FW、ピーク時間(Time to Peak)TPなどがある。これら特徴は血管種別ごとに異なることが知られている。第2の動脈推移情報部15は、予め記憶した血管種別情報と血管推移情報の時間濃度曲線とを比較し、該血管推移情報の血管画素が表す血管の血管種別を判断する。例えば肺を解析対象としたとき、第2の動脈推移情報部15は、血管画素対応部13が対応付けた血管画素が表す血管それぞれの血管種別を、肺動脈、気管支動脈、又はその他(肺動脈でも気管支動脈でもない)と判断する。
【0026】
第2の動脈推移情報部15が、血管画素対応部13が対応付けた血管画素が表す血管の血管種別を判断したことにより、重畳領域における血管画素の対応関係が求められる。例えば
図2の撮影領域の場合、第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域において、第1の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C1l_pa_i(t)(i=1〜N12_pa)と第2の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C2u_pa_i(t)(i=1〜N12_pa)とが対応付けられる。ここで、N12_paは、第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域において対応付けられ且つ肺動脈と判断された血管画素の数を表す。また、第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域において、第1の時系列画像のうち気管支動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C1l_ba_i(t)(i=1〜N12_ba)と第2の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C2u_ba_i(t)(i=1〜N12_ba)とが対応付けられる。ここで、N12_baは、第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域において対応付けられ且つ気管支動脈と判断された血管画素の数を表す。さらに、第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域において、第2の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C2l_pa_i(t)(i=1〜N23_pa)と第3の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C3u_pa_i(t)(i=1〜N23_pa)とが対応付けられる。ここで、N23_paは、第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域において対応付けられ且つ肺動脈と判断された血管画素の数を表す。また、第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域において、第2の時系列画像のうち気管支動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C2l_ba_i(t)(i=1〜N23_ba)と第3の時系列画像のうち肺動脈と判断された血管を表す血管画素の画素値の推移情報C3u_ba_i(t)(i=1〜N23_ba)とが対応付けられる。ここで、N23_baは、第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域において対応付けられ且つ気管支動脈と判断された血管画素の数を表す。
【0027】
図4は、
図2に示した撮影によって得られた時間濃度曲線を表す模式図である。横軸が時間、縦軸が画素値を表す。この図において、第1の時系列画像の撮影開始時刻t1sから撮影終了時刻t1eまでの時間に大動脈の動脈領域AOの時間濃度曲線C1ao(t)が得られ、第2の時系列画像の撮影開始時刻t2sから撮影終了時刻t2eまでの時間に肺動脈の動脈領域PAの時間濃度曲線C2pa(t)が得られ、第3の時系列画像の撮影開始時刻t3sから撮影終了時刻t3eまでの時間ではどちらの動脈の時間濃度曲線も得られていない。以下
図4の例において、第2の動脈推移情報部15が各々の時系列画像における第2の動脈推移情報を求める例を説明する。
【0028】
第2の動脈推移情報部15は、例えば次式によって、各々の時系列画像について造影剤投与時刻と撮影開始時刻とのずれ時間を考慮する。
【0030】
[数1]において、「s1」、「s2」及び「s3」は未知である。また、第2の動脈推移情報部15は、肺動脈の減衰曲線と気管支動脈の減衰曲線とを例えば次式によって表す。
【0032】
[数2]において、「rpa1(x)」、「rba1(x)」、「rpa2(x)」、及び「rba2(x)」の関数値は、上記xの範囲の外においてゼロであるとする。「T」は、各領域についての撮影時間である。すなわち、「T=t1e−t1s=t2e−t2s=t3e−t3s」である。「T1」及び「T2」は未知である。また、「Dpa(t)」及び「Dba(t)」は、2次循環以降の循環の影響を含まない肺動脈及び気管支動脈についての時間濃度曲線であり、未知である。即ち、一つの時系列画像の撮影について投与された造影剤のみの濃度に係る時間濃度曲線を表す。また、第2の動脈推移情報部15は、第1の時系列画像、第2の時系列画像、及び第3の時系列画像すべての撮影時間についての、肺動脈の時間濃度曲線「Cpa(t)」と気管支動脈の時間濃度曲線「Cba(t)」とを第2の動脈推移情報として例えば次式によって表す。
【0034】
[数3]は、「Dpa(t)」及び「Dba(t)」に[数2]の減衰曲線を加えたことを表す。また、[数3]において、「a1」、「a2」及び「a3」は未知である。これらは、減衰曲線に乗じられる係数である。パーシャルボリューム効果に対する補正を行うための係数であり、パーシャルボリューム効果を考慮する必要がない場合は「a1=a2=a3=1」としてよい。また、第2の動脈推移情報部15は、重畳領域における肺動脈と気管支動脈の時間濃度曲線を例えば次式によって表す。
【0036】
[数4]において、「C1l
pa(t)」は、第1の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「C1l
ba(t)」は、第1の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における気管支動脈の時間濃度曲線を表す。「C2u
pa(t)」は、第2の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「C2u
ba(t)」は、第2の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における気管支動脈の時間濃度曲線を表す。「C2l
pa(t)」は、第2の時系列画像のうち第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「C2l
ba(t)」は、第2の時系列画像のうち第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域における気管支動脈の時間濃度曲線を表す。「C3u
pa(t)」は、第3の時系列画像のうち第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「C3u
ba(t)」は、第3の時系列画像のうち第2の領域A2と第3の領域A3との重畳領域における気管支動脈の時間濃度曲線を表す。また、第2の動脈推移情報部15は、動脈領域の時間濃度曲線を例えば次式によって表す。
【0038】
[数5]において、「C1pa(t)」は、第1の領域A1に肺動脈の動脈領域PAが指定されたとき、該動脈領域PAの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。「C1ao(t)」は、第1の領域A1に大動脈の動脈領域AOが指定されたとき、該動脈領域AOの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。「C2pa(t)」は、第2の領域A2に肺動脈の動脈領域PAが指定されたとき、該動脈領域PAの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。「C2ao(t)」は、第2の領域A2に大動脈の動脈領域AOが指定されたとき、該動脈領域AOの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。「C3pa(t)」は、第3の領域A3に肺動脈の動脈領域PAが指定されたとき、該動脈領域PAの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。「C3ao(t)」は、第3の領域A3に大動脈の動脈領域AOが指定されたとき、該動脈領域AOの画素の画素値の推移情報を表す時間濃度曲線である。第2の動脈推移情報部15は、動脈領域が指定された領域に基づいて[数5]のうち用いる式を選択する。第1の領域A1に大動脈の動脈領域AOが指定され、第2の領域A2に肺動脈の動脈領域PAが指定された
図2の例では、「C1ao(t)」を表す式と「C2pa(t)」を表す式とが測定された既知の時間濃度曲線を表す式として選択される。
【0039】
第2の動脈推移情報部15は、[数4]と[数5]のうち選択された式とから成る連立方程式に基づいて、「a1」、「a2」、「a3」、「s1」、「s2」、「s3」、「T1」、及び「T2」の変数と、「Dpa(t)」、及び「Dba(t)」とを求める。この連立方程式は、「a1」、「a2」、及び「a3」については線形方程式となり、他の変数については非線形方程式となる。例えば第2の動脈推移情報部15は、まず「a1」、「a2」、及び「a3」を線型方程式として求め、それにより、「a1」、「a2」、及び「a3」を既知とした残差から成る目的関数について一般的な非線形最適化法を用いて他の変数を求める。このとき、第2の動脈推移情報部15は、一般的な正則化手法を適宜用いてもよい。また、第2の動脈推移情報部15は、一般的なヒューリスティックス手法を用いてもよい。なお、[数4]と[数5]のうち選択された式とのすべてを連立方程式に含める必要がないとき、第2の動脈推移情報部15は、これらのうち必要な式を選択して連立方程式としてもよい。また、第2の動脈推移情報部15は、「s1」、「s2」、及び「s3」のうち一つを既知としてもよい。例えば第2の動脈推移情報部15は、「s1=0」としてよい。
【0040】
第2の動脈推移情報部15は、求めた「s1」、「s2」、「s3」、「T1」、及び「T2」の変数と、「Dpa(t)」、及び「Dba(t)」とを[数3]に代入し、また、「a1」、「a2」、及び「a3」を「1」として第1の時系列画像、第2の時系列画像、及び第3の時系列画像すべての撮影時間についての、肺動脈の時間濃度曲線「Cpa(t)」と気管支動脈の時間濃度曲線「Cba(t)」とを次式のように求める。
【0042】
[数6]は、第1の時系列画像、第2の時系列画像、及び第3の時系列画像すべての撮影時間亘る動脈領域の推移情報を表したものである。
【0043】
また、「Dpa(t)」及び「Dba(t)」が求められたので、[数5]のうち選択されなかった未知の時間濃度曲線が求められる。
図2の例では、「C1pa(t)」、「C2ao(t)」、「C3pa(t)」、及び「C3ao(t)」が求められる。これらは、この実施形態における第2の動脈推移情報に相当する。
【0044】
(残存情報部16)
残存情報部16は、複数の時系列画像における各画素の画素値の推移情報について、残存造影剤の影響を低減する。残存情報部16は、動脈残存情報部160と、組織残存情報部161と、演算部162とを有する。
【0045】
(動脈残存情報部160)
動脈残存情報部160は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報を基に、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間よりも過去に時系列画像を撮影したときに投与された造影剤に起因した画素値の推移を表す動脈残存情報を求める。ここで、動脈残存情報部160は、[数1]〜[数6]により既知となった情報に基づいて、造影剤の投与を或る回数までで止めた場合の動脈推移情報を例えば次式として求める。
【0047】
[数7]において、「E1pa(t)」は、造影剤を1回投与(第1の時系列画像のための造影剤の投与)し、2回目以降の投与を行わなかったときの肺動脈の動脈推移情報である。「E1ao(t)」は、造影剤を1回投与し、2回目以降の投与を行わなかったときの大動脈の動脈推移情報である。「E2pa(t)」は、造影剤を2回投与(第1の時系列画像及び第2の時系列画像のための造影剤の投与)し、3回目の投与を行わなかったときの肺動脈の動脈推移情報である。「E2ao(t)」は、造影剤を2回投与(第1の時系列画像及び第2の時系列画像のための造影剤の投与)し、3回目の投与を行わなかったときの大動脈の動脈推移情報である。動脈残存情報部160は、例えば次式によって、第2及び第3の時系列画像のそれぞれより過去に投与された造影剤についての動脈推移情報を第2及び第3の時系列画像それぞれの時間について[数7]から求める。
【0049】
[数8]において、「E1pa(x)」は、[数7]の「E1pa(t)」のうち第2の時系列画像の撮影時間における推移情報である。換言すると、「E1pa(x)」は、第2の時系列画像の撮影時間について肺動脈における1回目に投与された造影剤の濃度の推移を推定したものである。「E1ao(x)」は、[数7]の「E1ao(t)」のうち第2の時系列画像の撮影時間における推移情報である。換言すると、「E1ao(x)」は、第2の時系列画像の撮影時間について大動脈における1回目に投与された造影剤の濃度の推移を推定したものである。「E2pa(x)」は、[数7]の「E2pa(t)」のうち第3の時系列画像の撮影時間における推移情報である。換言すると、「E2pa(x)」は、第3の時系列画像の撮影時間について肺動脈における2回目までに投与された造影剤の濃度の推移を推定したものである。「E2ao(x)」は、[数7]の「E2ao(t)」のうち第3の時系列画像の撮影時間における推移情報である。換言すると、「E2ao(x)」は、第3の時系列画像の撮影時間について大動脈における2回目までに投与された造影剤の濃度の推移を推定したものである。「E1pa(x)」、「E1ao(x)」、「E2pa(x)」、及び「E2ao(x)」は、この実施形態における動脈残存情報に相当する。
【0050】
(組織残存情報部161)
組織残存情報部161は、複数の時系列画像の各画素について、動脈残存情報部160による動脈残存情報に基づく画素値の推移を表す組織残存情報を求める。組織残存情報部161は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、動脈残存情報と、組織推移情報部14による組織推移情報とに指定された造影モデルを用いたモデルフィッティングを行って造影モデルに係るパラメータを求め、動脈残存情報と造影モデルと求めたパラメータとに基づいて組織残存情報を求める。このとき、組織残存情報部161は、時系列画像における各画素の画素値の減衰を表す減衰時定数をパラメータとして求める。例えば、組織残存情報部161は、次式の造影モデルを用いてモデルフィッティングを行う。
【0052】
[数9]において、「Ca(t)」には、[数6]で求められた「Cpa(t)」、「Cba(t)」、又はこれらが重み付け加算された推移情報が用いられる。ここで、「Cpa(t)」及び「Cba(t)」には、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報が含まれる。「C(t)」には、組織推移情報部14による組織推移情報が用いられる。また、「*」は、畳み込み積分を表す。「α」及び「β」はこの造影モデルに係るパラメータである。また、「β」は時系列画像における各画素の画素値の減衰を表す減衰時定数である。なお、組織残存情報部161は、次式の造影モデルを用いてもよい。
【0054】
[数10]において、「R(t,β)」及び「R(t,a,b,c)」は残余関数を表す。「α」、「β」、「a」、「b」、及び「c」は、それぞれの造影モデルに係るパラメータである。また、「β」は時系列画像における各画素の画素値の減衰を表す減衰時定数である。造影モデルは、ユーザが操作部3を操作することによって指定されてもよく、組織残存情報部161にプリセットされていてもよい。この実施形態では、組織残存情報部161が[数9]の造影モデルを用いる場合について説明する。
【0055】
組織残存情報部161は、[数9]の造影モデルを時系列画像の各画素の組織推移情報にモデルフィッティングする。このとき、例えば組織残存情報部161は、最適化手法を用いて造影モデルに係るパラメータ「α」及び「β」を求める。そして、組織残存情報部161は、[数8]の動脈残存情報と、[数9]の造影モデルと、求められた「α」及び「β」とに基づいて組織残存情報を例えば次式によって求める。
【0057】
[数11]において、「E1(t)」には、[数8]で動脈残存情報として求められた「E1pa(x)」、「E1ao(x)」、又はこれらが重み付け加算された推移情報が用いられる。「E2(t)」には、[数8]で動脈残存情報として求められた「E2pa(x)」、「E2ao(x)」、又はこれらが重み付け加算された推移情報が用いられる。「G2(t)」は、第2の時系列画像の撮影時間において、1回目に投与された造影剤の動脈推移情報に応答した組織推移情報を表す。「G3(t)」は、第3の時系列画像の撮影時間において、2回目まで投与された造影剤の動脈推移情報に応答した組織推移情報を表す。組織残存情報部161は、「G2(t)」を第2の時系列画像における組織残存情報として求め、「G3(t)」を第3の時系列画像における組織残存情報として求める。
【0058】
(演算部162)
演算部162は、組織推移情報部14による組織推移情報が表す画素値C(t)から組織残存情報部161による組織残存情報が表す画素値G2(t),G3(t)を例えば次式のように減ずる。
【0060】
[数12]において、「C´2(t)」は、第2の時系列画像の組織推移情報について1回目に投与された造影剤の影響を補正した組織推移情報を表す。また、「C´3(t)」は、第3の時系列画像の組織推移情報について2回目までに投与された造影剤の影響を補正した組織推移情報を表す。演算部162は、「C´2(t)」及び「C´3(t)」を補正した組織推移情報として解析部17に送る。
【0061】
(解析部17)
解析部17は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報と、第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、組織推移情報部14による組織推移情報と、演算部162による補正された組織推移情報と、指定された解析手法とに基づいて複数の時系列画像それぞれについてパフュージョン解析を行う。解析手法には、デコンボリューション法やMaximum Slope法などがあるが、解析手法はユーザが操作部3を操作することによって指定されてもよく、解析部17にプリセットされていてもよい。例えば解析部17は、指定された解析手法に基づいて、第1の時系列画像において、「C1pa(t)」と「C1ao(t)」とを入力関数とし、組織推移情報部14による組織推移情報についてパフュージョン解析を行う。また、解析部17は、第2の時系列画像において、「C2pa(t)」と「C2ao(t)」とを入力関数とし、演算部162により補正された組織推移情報「C´2(t)」についてパフュージョン解析を行う。また、解析部17は、第3の時系列画像については、「C3pa(t)」と「C3ao(t)」とを入力関数とし、演算部162により補正された組織推移情報「C´3(t)」についてパフュージョン解析を行う。換言すると、解析部17は、複数の時系列画像のうち2回目以降の撮影である第2の時系列画像と第3の時系列画像において、演算部162により補正された組織推移情報についてパフュージョン解析を行う。それにより、解析部17は、第2の時系列画像と第3の時系列画像において、組織残存情報をベースラインとしてパフュージョン解析を行うことになる。解析部17は、各画素が表す被検体の組織の血流量や血液量などの血流動態を解析結果として画像生成部18に出力する。
【0062】
(画像生成部18)
画像生成部18は、血管画素対応部13によって位置合わせされた複数の時系列画像と解析部17による解析結果を受け、被検体の組織の血流動態を表すマップを生成する。マップとしては、例えば肺の組織の血液量を表す血流量マップや血液量を表す血液量マップなどが生成される。画像生成部18は生成したマップを表示部4に表示させる。
【0063】
(制御部19)
制御部19は、医用画像解析装置1の各部を制御する。制御部19は、例えば、処理装置と記憶装置とを含んで構成される。処理装置としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)が用いられる。記憶装置は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disc Drive)を含んで構成される。記憶装置には、医用画像解析装置1の各部の機能を実行するためのコンピュータプログラムが記憶されている。処理装置は、これらコンピュータプログラムを実行することで、上記機能を実現する。
【0064】
(操作部3)
操作部3は、ユーザによる操作を受けて、この操作の内容に応じた信号や情報を装置各部に入力する。操作部3は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどによって構成される。また、操作部3は、必ずしも医用画像解析装置1の一体として備えられる必要はなく、一般的なインターフェイスを介して信号や情報を装置各部に入力する構成でもよい。
【0065】
(表示部4)
表示部4は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスで構成される表示デバイスである。表示部4は、必ずしも医用画像解析装置1の一体として備えられる必要はなく、一般的なインターフェイスを介して画像を表示する構成でもよい。
【0066】
[動作]
この実施形態の医用画像解析装置1の動作について説明する。
図5は、この実施形態の動作を表すフローチャートである。
【0067】
(S01)
読出部10は、被検体の複数の領域について重畳領域を有するようにそれぞれ異なる時間に被検体に造影剤を投与して撮影された複数の時系列画像を記憶部2から読み出す。また、読出部10は、さらに造影剤が投与されていない被検体の複数の領域全体を表す全体領域画像を記憶部2から読み出す。
【0068】
(S02)
第1の動脈推移情報部11は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。
【0069】
(S03)
血管画素選択部12は、読出部10が読み出した複数の時系列画像の画素のうち血管を表す画素である血管画素を選択する。また、血管画素選択部12は、読出部10が読み出した全体領域画像の画素のうち血管を表す画素である全体領域血管画素を選択する。
【0070】
(S04)
血管画素対応部13は、血管画素選択部12により選択された血管画素と全体領域血管画素とを対応付けることによって、重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付け、全体領域画像における重畳領域に該当する該当領域を特定する。
【0071】
(S05)
血管画素選択部12は、血管画素対応部13が特定した全体画像における重畳領域に該当する該当領域の画素のうち血管を表す画素である第1の重畳領域血管画素を血管画素対応部13に対応付けられた全体領域血管画素よりも高い密度で新たに選択するとともに、複数の時系列画像の重畳領域に含まれる画素のうち血管を表す画素である第2の重畳領域血管画素を血管画素よりも高い密度で新たに選択する。
【0072】
(S06)
血管画素対応部13は、第1の重畳領域血管画素の一部と第2の重畳領域血管画素の一部とを対応付けることによって、重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付ける。
【0073】
(S07)
血管画素対応部13は、第1の重畳領域血管画素のうち第2の重畳領域血管画素に対応付けられていない第1の未対応画素を含む領域の画像である第1の周辺画像と、複数の時系列画像のうち周辺画像に相当する画素である第2の未対応画素を含む領域の画像である第2の周辺画像とを比較し、第1の周辺画像と第2の周辺画像との一致度が指定された一致度を超えたとき、第1の未対応画素と第2の未対応画素とをさらに対応付ける。
【0074】
(S08)
血管推移情報部140は、血管画素対応部13により対応付けられた血管画素の画素値の推移を表す血管推移情報を求める。また、組織推移情報部14は、読出部10が読み出した複数の時系列画像を受け、被検体の組織における画素値の時系列変化を示す組織推移情報を求める。
【0075】
(S09)
第2の動脈推移情報部15は、血管の種別である血管種別の特性を表す血管種別情報を予め記憶し、血管推移情報部140による血管推移情報と血管種別情報とに基づいて、血管画素対応部13が対応付けた血管画素が表す血管の血管種別を判断する。
【0076】
(S10)
第2の動脈推移情報部15は、複数の時系画像のそれぞれが撮影された時間を表す時間情報と、第1の動脈推移情報部11による動脈推移情報と、血管推移情報部140による血管推移情報とに基づいて、複数の時系列画像のうち動脈領域が設定された一部の時系列画像以外の時系列画像が撮影された時間における動脈領域に相当する第2の動脈推移情報を求める。
【0077】
(S11)
動脈残存情報部160は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報を基に、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間よりも過去に時系列画像を撮影したときに投与された造影剤に起因した画素値の推移を表す動脈残存情報を求める。
【0078】
(S12)
組織残存情報部161は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、動脈残存情報と、組織推移情報部14による組織推移情報とに指定された造影モデルを用いたモデルフィッティングを行って造影モデルに係るパラメータを求める。
【0079】
(S13)
組織残存情報部161は、動脈残存情報と造影モデルと求めたパラメータとに基づいて組織残存情報を求める。
【0080】
(S14)
演算部162は、組織推移情報部14による組織推移情報が表す画素値から組織残存情報部161による組織残存情報が表す画素値を減ずる。
【0081】
(S15)
解析部17は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報と、第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、組織推移情報部14による組織推移情報と、演算部162による補正された組織推移情報と、指定された解析手法とに基づいて複数の時系列画像それぞれについてパフュージョン解析を行う。
【0082】
(S16)
画像生成部18は、血管画素対応部13によって位置合わせされた複数の時系列画像と解析部17による解析結果を受け、被検体の組織の血流動態を表すマップを生成し、表示部4に表示させる。
【0083】
[効果]
この実施形態の医用画像解析装置1の効果を説明する。
【0084】
実施形態に係る医用画像解析装置1は、被検体の時系列画像を解析して被検体の血流動態を求める。医用画像解析装置1は、読出部10と、第1の動脈推移情報部11と、血管画素選択部12と、血管画素対応部13と、血管推移情報部140と、第2の動脈推移情報部15と、動脈残存情報部160と、組織推移情報部14と、組織残存情報部161と、演算部162とを有する。読出部10は、被検体の複数の領域について重畳領域を有するようにそれぞれ異なる時間に被検体に造影剤を投与して撮影された複数の時系列画像を読み出す。第1の動脈推移情報部11は、複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。血管画素選択部12は、複数の時系列画像の動脈領域を除く画素のうち血管を表す画素である血管画素を選択する。血管画素対応部13は、血管画素選択部12により選択された血管画素のうち、互いに同じ重畳領域に係る一方の時系列画像の血管画素と他方の時系列画像の血管画素とを対応付ける。血管推移情報部140は、血管画素対応部13により対応付けられた血管画素の画素値の推移を表す血管推移情報を求める。第2の動脈推移情報部15は、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間を表す時間情報と、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報と、血管推移情報部140による血管推移情報とに基づいて、複数の時系列画像のうち動脈領域が指定されていない時系列画像に係る動脈領域の画素値の推移に相当する第2の動脈推移情報を求める。動脈残存情報部160は、第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報を基に、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間よりも過去に時系列画像を撮影したときに投与された造影剤に起因した画素値の推移を表す動脈残存情報を求める。組織推移情報部14は、時系列画像における各画素の画素値の推移を表す組織推移情報を求める。組織残存情報部161は、時系列画像の各画素について、動脈残存情報に基づく画素値の推移を表す組織残存情報を求める。演算部162は、組織推移情報が表す画素値から組織残存情報が表す画素値を減ずる。それにより、医用画像解析装置1は、過去に投与された造影剤による影響を組織残存情報として求め、組織推移情報から組織残存情報を減じた推移情報、つまり、補正された組織推移情報についてパフュージョン解析を行う。従って、造影剤を複数回投与し、それぞれ撮影領域を移動させて撮影された画像について、残存造影剤による影響を低減してパフュージョン解析を行う医用画像解析装置1を提供することができる。
【0085】
〈第2の実施形態〉
[構成]
図6を参照して、第2の実施形態に係る医用画像解析装置1の構成を説明する。この実施形態の医用画像解析装置1は、時相対応部20、第1の動脈推移情報部11、組織領域抽出部21、動脈画素情報部22、及び第2の動脈推移情報部15の構成が第1の実施形態の医用画像解析装置1と異なる。その他の構成要素は第1の実施形態の医用画像解析装置1と同様である。以下、第1の実施形態の医用画像解析装置1と異なる構成について特に説明する。また、
図7の模式図のように、肺動脈の起始部を表す肺動脈の動脈領域PAが第1の領域A1内、かつ、第2の領域A2外に指定される場合の例を説明する。
【0086】
(時相対応部20)
時相対応部20は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のそれぞれについて、フレーム同士の画素の位置合わせを行う。例えば時相対応部20は、画像相関処理によって一方のフレームと他方のフレームとの位置合わせを行う。時相対応部20は、時系列画像の最初のフレームから最後のフレームまでこの位置合わせを行う。それにより、時系列画像の撮影中に呼吸などによって組織が動いた場合において、その組織をフレーム間で対応付けることができる。時相対応部20は、時系列画像のそれぞれについてこの対応付けを行い、時相対応情報として動脈画素情報部22へ出力する。
【0087】
(第1の動脈推移情報部11)
第1の動脈推移情報部11は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。例えば第1の動脈推移情報部11は、第1の領域A1に指定された肺動脈の動脈領域PAに含まれる画素の平均値を算出し、その平均値の時間変化を示す情報を第1の動脈推移情報として求める。この第1の動脈推移情報を「C1pa(t):t1s≦t≦t1e」とする。ここで時刻t1sは、第1の時系列画像の撮影開始時刻を示し、時刻t1eは、第1の時系列画像の撮影終了時刻を示す。
【0088】
図8は、
図7に示した撮影によって得られた時間濃度曲線を表す模式図である。横軸が時間、縦軸が画素値をそれぞれ表す。この図において、第1の時系列画像の撮影開始時刻t1sから撮影終了時刻t1eまでの時間に肺動脈の動脈領域PAの時間濃度曲線C1pa(t)が得られ、第2の時系列画像の撮影開始時刻t2sから撮影終了時刻t2eまでの時間においては肺動脈の動脈領域PAの時間濃度曲線C2pa(t)が得られていない。以下、
図8の例において、この実施形態の医用画像解析装置1が第2の時系列画像における第2の動脈推移情報を求める例を説明する。
【0089】
(組織推移情報部14)
組織推移情報部14は、読出部10が読み出した複数の時系列画像と時相対応部20からの時相対応情報とを受け、被検体の組織における画素値の時系列変化を示す組織推移情報を取得する。
【0090】
(組織領域抽出部21)
組織領域抽出部21は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のそれぞれについて、解析対象の組織を表す画像領域を抽出する。例えば組織領域抽出部21は、解析対象の組織形状を表す形状データを予め記憶し、時系列画像に描出された画像形状と形状データとを比較し、解析対象を表す画像領域を抽出する。解析対象が肺LUであるとき、組織領域抽出部21は、時系列画像のうち、肺LUを表す画像領域を抽出する。組織領域抽出部21は、抽出した画像領域を動脈画素情報部22へ出力する。
【0091】
(動脈画素情報部22)
動脈画素情報部22は、読出部10が読み出した複数の時系列画像と、時相対応部20による時相対応情報と、組織領域抽出部21による画像領域とを受け、画像領域の各画素の画素値の推移を表す動脈画素推移情報を求める。このとき、動脈画素情報部22は、複数の時系列画像のそれぞれに、グレースケールモーフォロジー処理、または一般的なその他のフィルタ処理を施して画像領域に表された組織形状をさらに明確に抽出し、各画素の動脈画素推移情報を求めてもよい。なお、動脈画素情報部22は、グレースケールモーフォロジー処理を複数の時系列画像に施す場合、グレースケールダイレーション処理を施してもよい。
【0092】
動脈画素情報部22は、求めた動脈画素推移情報から、動脈画素に相当する画素に対応する情報を抽出する。動脈画素は、解析対象の組織に含まれる動脈を表す画素であり、指定された肺動脈の動脈領域POとは異なる画素である。例えば、動脈画素情報部22は、血管の種別である血管種別の特性を表す血管種別情報を予め記憶する。血管種別情報とは、例えば肺動脈や気管支動脈などの血管種別ごとの時間濃度曲線の特徴を表す情報であり、一般的に、
図3に示した例と同様である。また、肺動脈は、ピーク高さPHが大きく、カーブ幅FWが小さいことが知られている。動脈画素情報部22は、ピーク高さPH及びカーブ幅FWのそれぞれの閾値を血管種別情報として記憶し、ピーク高さPHが閾値より大きく、カーブ幅FWが閾値より小さな画素を、肺動脈を表す画素として抽出する。それにより、肺LUが描出された画像領域に含まれる画素のうち、肺動脈を表す画素が抽出される。
【0093】
動脈画素情報部22は、抽出した動脈画素のうち、重畳領域に含まれる動脈画素の動脈画素推移情報に表される画素値の推移情報を求める。例えば動脈画素情報部22は、第1の領域A1のうち第2の領域A2との重畳領域に含まれる肺動脈の動脈画素の動脈画素推移情報C1l_pa_i(t)(i=1〜N:Nは、第1の領域A1のうち第2の領域A2との重畳領域に含まれる肺動脈の動脈画素の画素数)を求める。時相対応部20によって時系列画像のフレーム同士の位置合わせが既に行われているので、該動脈画素推移情報は、同一の組織における造影剤の濃度の推移を表す情報であるとみなすことができる。動脈画素情報部22は、求めた肺動脈の動脈画素の動脈画素推移情報の平均値を算出し、この平均値の推移を表す推移情報C1l_pa(t)を求める。また、これと同様に、動脈画素情報部22は、第2の領域A2のうち第1の領域A1との重畳領域に含まれる肺動脈の動脈画素を抽出し、該動脈画素の平均値の推移を表す推移情報C2u_pa(t)を求める。動脈画素情報部22は、求めた推移情報を第2の動脈推移情報部15へ出力する。なお、ここでは、動脈画素情報部22が、重畳領域に含まれる動脈画素の推移情報を求める例について説明したが、該推移情報に替えて、組織領域抽出部21が抽出した画像領域全体に含まれる動脈画素について、推移情報を求めてもよい。この代替により、推移情報の算出過程を簡略化することができる。
【0094】
(第2の動脈推移情報部15)
第2の動脈推移情報部15は、複数の時系列画像のすべての撮影時間に亘る動脈の推移情報を第2の動脈推移情報として求める。第2の動脈推移情報部15は、例えば次式によって、各々の時系列画像について造影剤投与時刻と撮影開始時刻とのずれ時間を補正する。
【0096】
また、例えば第2の推移情報部は、重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を次式によって表す。
【0098】
[数14]において、「C1l
pa(t)」は、第1の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「C2u
pa(t)」は、第2の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を表す。「rpa1(x)」の関数値は、上記xの範囲の外においてゼロであるとする。「T1」は未知である。また、「Dpa(t)」は、2次循環以降の循環の影響を含まない肺動脈についての時間濃度曲線であり、未知である。このとき、第2の推移情報部は、「s1=0」としてもよい。また、「a1」、「a2」及び「a3」は未知である。これらは、減衰曲線に乗じられる係数である。パーシャルボリューム効果に対する補正を行うための係数であり、パーシャルボリューム効果を補正する必要がない場合は「a1=a2=a3=1」としてよい。
【0099】
第2の動脈推移情報部15は、[数13]及び[数14]に基づいて、第2の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線を次式によって表す。
【0101】
また、第2の動脈推移情報部15は、第1の動脈推移情報「C1pa(t)」を受け、次式によって表す。
【0103】
第2の動脈推移情報部15は、[数14]及び[数16]に基づいて、第1の時系列画像のうち第1の領域A1と第2の領域A2との重畳領域における肺動脈の時間濃度曲線「C1l
pa(t)」を次式によって表す。
【0105】
第2の動脈推移情報部15は、[数14]、[数15][数16]及び[数17]のうち選択された式とから成る連立方程式に基づいて、「a1」、「a2」、「s2」、及び「T1」を求める。このとき、第2の動脈推移情報部15は、一般的な正則化手法を適宜用いてもよい。また、第2の動脈推移情報部15は、一般的なヒューリスティックス手法を用いてもよい。なお、[数14]、[数15][数16]及び[数17]のうち選択された式のすべてを連立方程式に含める必要がないとき、第2の動脈推移情報部15は、これらのうち必要な式を選択して連立方程式としてもよい。
【0106】
第2の動脈推移情報部15は、第1の動脈推移情報部11から受けた肺動脈の起始部の推移情報「C1pa(t)」と[数16]とを用いて次式によって2次循環以降の循環の影響を含まない肺動脈についての時間濃度曲線「Dpa(t)」を求める。
【0108】
第2の動脈推移情報部15は、第1の時系列画像及び第2の時系列画像双方の撮影時間に亘る肺動脈の起始部の動脈領域PAに係る推移情報を次式によって表す。
【0110】
さらに、第2の動脈推移情報部15は、[数19]に基づいて、第1の時系列画像の撮影終了時刻である時刻t1eの前後それぞれの時間について、肺動脈の起始部の動脈領域PAに係る推移情報を次の二つの式によって表す。
【0113】
第2の動脈推移情報部15は、[数20]に求めた「s2」及び「T1」を代入する。それにより、第1の時系列画像及び第2の時系列画像双方の撮影時間に亘る肺動脈の動脈領域PAに係る推移情報Cpa(t)を求めることができる。なお、[数21]の時間範囲のうち、時刻t2sから時刻t2eまでの時間範囲に表される推移情報は、第2の時系列画像についての肺動脈の動脈推移情報に相当し、その推移は時間濃度曲線C2pa(t)に表されるとみなすことができる。第2の動脈推移情報部15は、求めた推移情報Cpa(t)を解析部17へ出力する。
【0114】
(解析部17)
解析部17は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報と、第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、組織推移情報部14による組織推移情報と、指定された解析手法とに基づいて複数の時系列画像それぞれについてパフュージョン解析を行う。このとき解析部17は、第2の動脈推移情報部15から受けた推移情報Cpa(t)のうち、時刻t1sから時刻t1eまでの時間範囲に表される推移情報を、第1の時系列画像の入力関数としてパフュージョン解析を行う。また、解析部17は、第2の動脈推移情報部15から受けた推移情報Cpa(t)のうち、時刻t2sから時刻t2eまでの時間範囲に表される推移情報を、第2の時系列画像の入力関数としてパフュージョン解析を行う。解析部17はパフュージョン解析を時系列画像の画素毎に行い、各画素が表す被検体の組織の血流量や血液量などの血流動態を解析結果として画像生成部18へ出力する。
【0115】
なお、この実施形態では、肺動脈の起始部を表す肺動脈の動脈領域PAが第1の領域A1内、かつ、第2の領域A2外に指定される場合に、第2の時系列画像における肺動脈の第2の動脈推移情報を求める例について説明したが、大動脈の動脈領域が第1の領域A1内、かつ、第2の領域A2外に指定される場合においても同様に第2の時系列画像における大動脈の第2の動脈推移情報を求めてもよい。
【0116】
また、肺動脈の動脈領域PA又は大動脈の動脈領域は、複数の領域のうち何れか一つの領域に指定されればよい。上述の構成を援用することによって、医用画像解析装置1は、肺動脈の動脈領域PA又は大動脈の動脈領域が指定された領域に重畳する他の領域について第2の動脈推移情報を求めてもよい。また、医用画像が肺LU2つの領域に分けて撮影された例について説明したが、医用画像が3つ以上の領域に分けて撮影された場合、医用画像解析装置1は、動脈領域が指定された領域に重畳する他の領域について順次第2の動脈推移情報を求めればよい。
【0117】
[動作]
この実施形態の医用画像解析装置1の動作について説明する。
図9は、この実施形態の動作を表すフローチャートである。
【0118】
(S21)
読出部10は、被検体の複数の領域について重畳領域を有するようにそれぞれ異なる時間に被検体に造影剤を投与して撮影された複数の時系列画像を記憶部2から読み出す。
【0119】
(S22)
時相対応部20は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のそれぞれについて、フレーム同士の画素の位置合わせを行う。
【0120】
(S23)
第1の動脈推移情報部11は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。また、組織推移情報部14は、読出部10が読み出した複数の時系列画像を受け、被検体の組織における画素値の時系列変化を示す組織推移情報を求める。
【0121】
(S24)
組織領域抽出部21は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のそれぞれについて、解析対象の組織を表す画像領域を抽出する。組織領域抽出部21は、抽出した画像領域を動脈画素情報部22へ出力する。
【0122】
(S25)
動脈画素情報部22は、読出部10が読み出した複数の時系列画像と、時相対応部20による時相対応情報と、組織領域抽出部21による画像領域とを受け、画像領域の各画素の画素値の推移を表す動脈画素推移情報を求める。動脈画素情報部22は、求めた推移情報を第2の動脈推移情報部15へ出力する。
【0123】
(S26)
第2の動脈推移情報部15は、複数の時系列画像のすべての撮影時間に亘る動脈領域の推移情報を第2の動脈推移情報として求める。第2の動脈推移情報部15は、求めた推移情報を解析部17へ出力する。
【0124】
(S27)
動脈残存情報部160は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報を基に、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間よりも過去に時系列画像を撮影したときに投与された造影剤に起因した画素値の推移を表す動脈残存情報を求める。
【0125】
(S28)
組織残存情報部161は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、動脈残存情報と、組織推移情報部14による組織推移情報とに指定された造影モデルを用いたモデルフィッティングを行って造影モデルに係るパラメータを求める。
【0126】
(S29)
組織残存情報部161は、動脈残存情報と造影モデルと求めたパラメータとに基づいて組織残存情報を求める。
【0127】
(S30)
演算部162は、組織推移情報部14による組織推移情報が表す画素値から組織残存情報部161による組織残存情報が表す画素値を減ずる。
【0128】
(S31)
解析部17は、第1の動脈推移情報部11による第1の動脈推移情報と、第2の動脈推移情報部15による第2の動脈推移情報と、組織推移情報部14による組織推移情報と、演算部162による補正された組織推移情報と、指定された解析手法とに基づいて複数の時系列画像それぞれについてパフュージョン解析を行う。
【0129】
(S32)
画像生成部18は、血管画素対応部13によって位置合わせされた複数の時系列画像と解析部17による解析結果を受け、被検体の組織の血流動態を表すマップを生成し、表示部4に表示させる。
【0130】
[効果]
第2の実施形態の医用画像解析装置1の効果について説明する。医用画像解析装置1は、時相対応部20と、第1の動脈推移情報部11と、組織領域抽出部21と、動脈画素情報部22と、第2の動脈推移情報部15とを有する。時相対応部20は、複数の時系列画像のそれぞれについて、フレーム同士の画素の位置合わせを行う。第1の動脈推移情報部11は、読出部10が読み出した複数の時系列画像のうち一部の時系列画像中に指定された動脈領域に基づいて動脈領域の画素値の推移を表す第1の動脈推移情報を求める。組織領域抽出部21は、複数の時系列画像のそれぞれから、解析対象の組織を表す画像領域を抽出する。動脈画素情報部22は、複数の時系列画像と、時相対応情報と、画像領域とを受け、画像領域の各画素の画素値の推移を表す動脈画素推移情報を求める。第2の動脈推移情報部15は複数の時系列画像のすべての撮影時間に亘る動脈領域の推移情報を第2の動脈推移情報として求める。動脈残存情報部160は、第1の動脈推移情報及び/又は第2の動脈推移情報を基に、複数の時系列画像のそれぞれが撮影された時間よりも過去に時系列画像を撮影したときに投与された造影剤に起因した画素値の推移を表す動脈残存情報を求める。組織推移情報部14は、時系列画像における各画素の画素値の推移を表す組織推移情報を求める。組織残存情報部161は、時系列画像の各画素について、動脈残存情報に基づく画素値の推移を表す組織残存情報を求める。演算部162は、組織推移情報が表す画素値から組織残存情報が表す画素値を減ずる。それにより、医用画像解析装置1は、過去に投与された造影剤による影響を組織残存情報として求め、組織推移情報から組織残存情報を減じた推移情報、つまり、補正された組織推移情報についてパフュージョン解析を行う。従って、造影剤を複数回投与し、それぞれ撮影領域を移動させて撮影された画像について、残存造影剤による影響を低減してパフュージョン解析を行う医用画像解析装置1を提供することができる。
【0131】
本明細書では、パフュージョン解析を肺に適用した例について説明したが、実施形態はこれに限ることなく、脳、心臓、腎臓、肝臓、その他の組織に適用してもよい。
【0132】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。