【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、
芯線とその絶縁被覆体と外皮とからなる太陽電池出力ケーブルを接続ボックスに固定する太陽電池出力ケーブルの固定構造において、
前記芯線がケーブルの中心軸方向に突出し、更に前記絶縁被覆体が露出した状態に二段剥きされた前記太陽電池出力ケーブルの先端部に、弾力性を有する材質にてなる内径が前記絶縁被覆体の外径よりも小さい円筒状のブッシュが、前記露出した絶縁被覆体の外側面をブッシュの内側面が覆うように被せられており、
前記接続ボックスには太陽電池出力ケーブルの挿入方向に前記太陽電池出力ケーブルの先端部を挿通するためのケーブル外皮の径に略等しい径の導入孔が開口した外壁と前記外壁に対向する内壁が設けられており、前記内壁には絶縁被覆体に被せられた後の前記ブッシュの外径よりも小さい径の孔が設けられて狭隘部を成しており、
前記絶縁被覆体に被せられたブッシュの外側面の少なくとも一部が前記狭隘部に挟まれるまで前記太陽電池出力ケーブルが前記接続ボックスの内部に挿通されており、
かつ、前記外壁と前記内壁の間において前記接続ボックスの一部と固定具との間に前記太陽電池出力ケーブルが挟まれて固定されている、
ことを特徴とする太陽電池出力ケーブルの固定構造である。
【0015】
請求項2記載の発明は前記ブッシュの内径は前記絶縁被覆体の外径よりも3〜40%小さいものである請求項1記載の太陽電池出力ケーブルの固定構造である。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明において前記ブッシュの材質がシリコーンゴムであることを特徴とする太陽電池出力ケーブルの固定構造である。
【0017】
請求項4記載の発明は、芯線とその絶縁被覆体とポリオレフィン系外皮とからなる太陽電池出力ケーブルを接続ボックスに固定する方法であって、
前記接続ボックスは、太陽電池出力ケーブルの挿入方向に外壁と内壁の二重の壁面が設けられており前記外壁には、前記太陽電池出力ケーブルの先端を挿入するためのケーブル外皮の径に略等しい径の貫通孔が設けられており、前記内壁にはその絶縁被覆体に被せられたブッシュが通過する円形貫通孔が設けられており、前記内壁の円形貫通孔の内面には、内径が、絶縁被覆体に被せられた前記ブッシュの外径よりも小さくかつ絶縁被覆体の外径よりも大きい、ケーブルの中心軸に垂直な断面を有する環状の狭隘部が設けられる。
太陽電池出力ケーブルの先端部を二段剥きして、芯線と絶縁被覆体とをそれぞれ露出させる工程と、
内径が前記絶縁被覆体よりも小さく弾力性を有する二重円筒状のブッシュを、前記ブッシュの内筒面に前記露出された絶縁被覆体の外側面が覆われるように被せる工程と、
前記絶縁被覆体に被せられたブッシュの外側面の少なくとも一部が前記狭隘部に挟まれるまで前記太陽電池出力ケーブルが前記接続ボックスの内部に挿通する工程と、
前記外壁と前記内壁の間において前記接続ボックスの一部と固定具との間に前記太陽電池出力ケーブルを挟んで固定する工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池出力ケーブルの固定方法である。
【0018】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において用いられる太陽電池出力ケーブルは、前述のように太陽電池モジュールで発生する電力を送電するためのケーブルである。一般的には定格電圧600Vのケーブルが使用されるが、最近になり大型のメガソーラー発電用に定格電圧1000〜1500Vのケーブルが開発され使用されだしている。
太陽電池出力ケーブルには芯線を絶縁被覆層で被覆し更にその外側を外皮で被覆した二層被覆の、中心軸に垂直な断面形状が同心円状の単芯ケーブルが用いられている。
【0019】
太陽電池出力ケーブルには国内規格で屋外使用が認められている定格電圧が600VのCVケーブルか、EM−CEケーブルが使用される。
芯線の断面積が2mm
2、絶縁層の外径3.5mm、外皮の外径6.4mmや、芯線の断面積が3.5mm
2 、被覆層の外径4.0mm、外皮の外径7.0mmが一般的である。メガソーラーでは芯線の断面積が5.5mm
2以上のものも使用される場合がある。
【0020】
太陽電池出力ケーブルの外皮材料にはCVケーブルでは軟質塩化ビニル樹脂、EM―CEケーブルでは軟質ポリエチレン樹脂が用いられている。どちらも可撓性を有するがゴム、エラストマーのような弾性を有さず堅いため、後述するような狭隘部を設けたとしても狭隘部に簡単に挿通することができない。その上弾性反発力が弱いため無理矢理挿通させたとしても狭隘部の内側面に密着することができず、かつ外力がケーブルにかかった場合においても、応答速度が遅いため、変位に対して充分に追随できないので、充分な水密性は得られない。又ポリエチレン樹脂は接着性が悪く、シリコーン系封止剤とは接着しないので充分な水密性が得られない。
【0021】
太陽電池出力ケーブルは、価格の安い軟質塩化ビニルのCVケーブルが普通であるが、燃焼時のダイオキシン発生に対する懸念等からエコケーブルと呼称される軟質ポリエチレン樹脂を使用するEM−CEケーブルの使用が増えている。
近時はメガソーラーの普及にあわせて太陽電池専用の定格電圧1000〜1500Vの高電圧太陽電池専用のケーブル(PV−CC、CQ、QQ)が規格化され、そのケーブル外皮には架橋ポリエチレン樹脂・架橋ポリオレフィン樹脂が使用される。高電圧用の太陽電池専用ケーブルは可撓性やシリコーン系封止剤との接着性が定格電圧600Vの従来型のCVケーブルやEM−CEケーブルよりも悪く、封止剤による水密性確保はより難しい。
本発明はCVケーブルやEM−CEケーブルに対しても用いうるが、外皮が架橋ポリオレフィン系の高電圧用太陽電池専用ケーブルに対しても有用である。
【0022】
太陽電池出力ケーブルを接続ボックスに接続するためにはケーブルの先端を、芯線が電気接続できる長さに露出させ、次に絶縁被覆層を所用の長さ露出させた、いわゆる二段剥きした状態で用いられる。
【0023】
二段剥きされた太陽電池出力ケーブルの先端部の絶縁被覆体の外側面が露出した部分に、内径が前記絶縁被覆体よりも小さい円筒状の弾性を有するブッシュが被される。
【0024】
本発明で用いるブッシュの内径は絶縁被覆体の外径よりも3〜40%小さいものが好ましく、5〜30%小さいものがより好ましい。ブッシュの内径が絶縁被覆体の外径に比し小さすぎればブッシュを絶縁被覆体に被せるのが困難になり、内径が大きすぎれば、即ちブッシュの内径が絶縁被覆体の外径に近くなりすぎれば、ブッシュの内側面が絶縁被覆体の外側面をその弾性にて締め付ける力が弱くなり水密が保たれにくくなるからである。
【0025】
本発明で用いるブッシュの外径は特に限定されないが、ブッシュを絶縁被覆体に被せた後にケーブル外皮の外径に略近いか、それよりも小さいことが好ましい。
【0026】
本発明で用いるブッシュは円筒状であるが、ここにいう円筒状とは円柱の内部に共通の軸を有する貫通する円柱状の空洞が設けられた形状をいう。この形状が最もシンプルで製造コストが安価であるからである。ただし、水密性を損なわない範囲で外側面、内側面、の少なくとも一の側面に凹凸のひだが付されていても、また内側面が軸に対しテーパを有し傾斜(空洞部が円錐台状)していてもよい。
【0027】
ブッシュの軸方向の長さは限られないが、安定した水密構造を維持するためには、前記絶縁被覆体の外径に対し、0.5倍以上5倍以下の長さであることが好ましく、全体の接続構造をコンパクトにするためには、0.5倍以上2倍以下の長さであることが好ましい。
【0028】
本発明で用いるブッシュは、ゴム弾性を有し、電気絶縁性、耐熱性、耐クリープ性等を満たす材質のものであることが好ましい。
内径よりも大きい絶縁被覆層に被せることができ、かつ、後述の狭隘部で圧して水密構造を保つことができるためである。本発明で用いるブッシュの硬さは消しゴムよりも硬く自動車用タイヤよりも柔らかいものが好ましく、JIS K 6253に定めるデュロメーター硬さが40〜60のものが好ましい。ブッシュの材料はウレタン、ニトリル、クロロプレン、エチレン、ブチル、フッ素、シリコーン(有機ポリシロキサン)等のゴム(エラストマを含む)を用いることができる。
【0029】
常温における伸びは100〜600%、引張強度は5〜16MPaのものが好ましい。弾性体として機能しうる温度域は−40℃〜90℃あることが好ましく、また芯線を半田付けする場合には短時間でも、200℃に耐えるものであれば尚好ましい。このような要求を満たすためには、シリコーンゴムとフッ素ゴムが性能上好ましいが、フッ素ゴムは価格が高く、シリコーンゴムは比較的安価なため、シリコーンゴムが特に好ましい。
【0030】
このようなブッシュはシリコーンゴムを射出成型、押出成形等により成形したものを用いることができる。物性を満たせば架橋はいずれの時点で行われたものでもよい。
【0031】
絶縁被覆体の外側面が露出した部分に、内径が前記絶縁被覆体よりも小さく弾力性を有する材質にてなる円筒状のブッシュを被せるのは、太陽電池出力ケーブルの芯線の露出した側から、ブッシュの空洞部に芯線を通し、次いでブッシュの内側面が太陽電池出力ケーブルの軸線と略等距離になるよう保持しブッシュの端面を、芯線が露出した側の絶縁被覆体の端面に当て、太陽電池出力ケーブルの軸に平行方向に押すことにより、ブッシュはゴム弾性を有し伸びるため、ブッシュを絶縁被覆体上に被せることができる。ブッシュの端面が、二段剥きした太陽電池出力ケーブルの外皮の端面に接するまで被せることが好ましい。尚この工程は手で行ってもよく機械で行ってもよい。
【0032】
上述のように本発明において接続ボックスとはジャンクションボックス、並列接続ボックス、逆流防止ボックス等の屋外使用のための防水性が要求される各種接続ボックスをいう。
本発明の固定構造をなすための接続ボックスには、前記太陽電池出力ケーブルの先端を挿入するためのケーブル外皮の径に略等しい径の導入孔が開口した外壁と、前記外壁に対向する内壁に貫通孔が設けられている。
導入孔は前記太陽電池出力ケーブルのケーブル外皮が通過できかつケーブルの軸心がぶれないよう、できるだけ隙間をあけないような径を有している必要がある。開口の形状は、多角形や楕円でもよいが、前記太陽電池出力ケーブルの断面は円形であるので、円形が好ましい。太陽電池出力ケーブルの径は、太陽電池出力ケーブル外皮と略等しいかそれよりも僅かに大きい径であることが好ましい。この導入口は出力ケーブルの外力による振れを抑制するため、力学的強度と製造の簡易さから、接続ボックスと一体となる外壁に貫通した導入孔を設けることが好ましい。
【0033】
接続ボックスには、前記固定部よりも内側で、前記導入孔に対し前記太陽電池出力ケーブルの中心軸の延長上で、対向する位置に内壁が設けられ、内壁には絶縁被覆体に被せられた弾力性を有するブッシュが通過する貫通孔が設けられている。外壁と、内壁は互いに平行していることが好ましく、更に導入孔の中心及び内壁に設けられた貫通孔の中心とを結ぶ直線と直交していることが好ましい。ケーブルの固定力を大きくするため外壁の導入孔と内壁の貫通孔の間を大きくしてケーブルの曲がりあるいは蛇行部を設けてもよいが、接続ボックスが大きくなり、コストも上がるため、外壁と内壁の間の太陽電池出力ケーブルの軸は短い直線状になっていて、外壁、内壁と直交していることが好ましい。内壁は芯線を通る電気を接続する活電部とそれ以外の外部とを隔てる機能を有する。
【0034】
前記内壁には、絶縁被覆体に被せられた後のブッシュの外径よりも小さい内径部分を有する貫通孔が設けられていて、絶縁被覆体に被せられたブッシュに対する狭隘部を形成している。内壁の貫通孔の入り口は外壁の貫通孔と同じ径でもよい。内壁の貫通孔に他の部材を入れて狭隘部を形成してもよいが、前記内壁の貫通孔の内側面のケーブル軸方向の一部区間の全周に連続したケーブルの中心軸に向かう突起が設けられ、突起の先端が連らなってなる外周により円形の孔が形成され、絶縁被覆体に被せられた後のブッシュが挿通されるのに対する狭隘部となっていることが好ましい。すなわち貫通孔の途中部分の内側面の径が小さくなっていて狭隘部をなしていることが好ましい。また、絶縁被覆体に被せられたブッシュを狭隘部に通しやすくするために、内壁の貫通孔の入り口から狭隘部に至るまでテーパがつけられていることが好ましい。絶縁被覆体に被せられた後のブッシュは上記狭隘部にて太陽電池出力ケーブルの中心軸に向けて押圧される。狭隘部による押圧効果を十分に発揮するためには突起の先端はブッシュを傷つけない程度に狭くなっていることが好ましい。
【0035】
芯材が露出され、絶縁被覆体にブッシュが被せられた、太陽電池出力ケーブルは前記導入口から挿通され、第2の開口に絶縁被覆体に被せられた後のブッシュが前記狭隘部で中心軸方向に押圧されブッシュの外側面くびれさせられ(破断されることなく、変形して)た状態になる位置まで押しこまれた後、固定部において固定具により太陽電池出力ケーブルが接続ボックスに固定される。
【0036】
前記外壁と前記内壁の間には、前記太陽電池出力ケーブルを上下左右から太陽電池ケーブルの中心軸方向に向かって抑える、固定部が設けられている。上記のようにブッシュが狭隘部に挟まれているだけでは、ケーブルが接続ボックスに対し位置が変化するように外力が加わった場合に水密性が壊れるおそれがあるからである。
よって、本発明では水密性を十分に保つために前記太陽電池出力ケーブルが、前記外壁の導入口でケーブルの軸に垂直な方向の動きが制限され、次に前記内壁の貫通孔内でブッシュが前記狭隘部で押さえられているのみならず、更に太陽電池出力ケーブルを接続ボックスに対し固定するための固定部で固定されるようになっている。
【0037】
固定部は施工時やその後の使用時における太陽電池出力ケーブルの振れを接続ボックスの内部に伝達せずに固定するためのものであり、太陽電池出力ケーブルの中心軸が上下左右に振れることがなく、かつ、軸方向にも一定の位置に留めるためのものであって、前記導入口から挿入された太陽電池出力ケーブルの外皮をその軸中心に向かって偏心しないように均等に押圧を掛けた状態で挟み込み固定できるようになっていることが好ましい。また、固定具による固定は簡易迅速に行えることが好ましい。固定具による固定は、限定されず、固定具は接続ボックスと係止され、固定具と固定具が対になってケーブルを挟みこみ固定してもよいが、接続ボックスが太陽電池出力ケーブルを押さえる受け部を有し、固定具と受け部との間にケーブルを挟み固定することが好ましい。
【0038】
固定を簡易迅速に行うためには接続ボックスに係止できる固定具で固定することが好ましい。太陽電池出力ケーブルを接続ボックスの前記導入孔から挿入後、固定具を太陽電池出力ケーブルの外皮に食い込ませる(変形してくびれた状態にさせる)ように押圧した状態で係止することができる構造になっていることが好ましい。係止片を有する固定具としては太陽電池出力ケーブルに接する面と面内に太陽電池出力ケーブルを中心軸に向けて圧迫するような突起部を有している樹脂製等のクランプ等がケーブル固定の作業性にも優れ好ましい。
【0039】
固定部の軸方向の長さは、ケーブルの振れを内部に伝達させないためには長い方が良いが、コンパクトな構造に収めることも必要なため、ケーブル径以上ケーブル径の3倍以下であることが好ましい。
【0040】
本発明においては、接続ボックスの太陽電池出力ケーブル挿入用の導入孔から内壁の貫通孔までの間に固定部を設けることで、太陽電池出力ケーブルへの外力による前記ブッシュの変形を三次元のX、Y、Zの各方向に対して抑え水密性を維持することができる。
ケーブルにかかる外力によるブッシュへの影響を完全に失くすことは難しいが、圧入されたブッシュの弾力で充分吸収できる範囲に押さえ込むことができれば、水密性は充分確保できる。
【0041】
本発明に用いられる接続ボックス並びに固定具の材質は、可撓性と強度、耐候性、耐熱性、耐熱水性、電気絶縁性、難燃性、シリコーン系ポッティング剤との接着性、成形性等を有する樹脂が好ましく、GF強化ポリアミド(GF−PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、GF強化ポリブチレンテレフタレート(GF−PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)などのエンジニアリングプラスチックが好ましく、更に非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF) 、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI) 中でもPES、PPS、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、が好ましいが、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)が、性能、生産性、価格のバランス上特に好ましい。
【0042】
尚、本発明はケーブルの機械的な水密固定を図るものであり、本来の目的である電力を流すための電気接続は、接続ボックス内部にて芯線を金属接続具等に圧着かしめ、ネジ止め、ハンダ付け等の通常の方法により接続される。
【0043】
必要な全てのケーブルの芯線が接続された後は、接続ボックス内には通常シリコーン系ポッティング剤等が流し込まれ固化され封止される。必要に応じて、蓋がされ保護される。尚、上記固定部の固定具はケーブルを接続ボックスに固定する適宜なタイミングにて取り付けることもできる。