(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水槽と、給水口を通じて該水槽内に水を供給する給水手段と、該水槽内の水の全量を外部に排出するための排水手段とを有し、加飾層が表面上に形成された水溶性フィルムが該水槽内の水面上に浮かべられた状態で、被加飾物が該水溶性フィルム上の該加飾層に押し当てられて、水没させられることにより、該加飾層が該被加飾物の表面に転写されて、加飾物が製造されるように構成された装置であって、
前記水槽が、前記給水手段にて供給された水を貯留するための主室と、該主室の底部において開口する連通口を通じて該主室内に連通する副室とを有する一方、前記給水手段が、複数の給水口を有し、更に、該複数の給水口が、該副室の周壁部に対して、各給水口から供給される水の流れの中心線を、該周壁部の中心軸と交差させる位置に設けられて、各給水口から該副室内に向かって流れる水が、該副室内で互いに衝突するように構成されていると共に、かかる水の衝突により、各給水口から該副室内に向かって流れる水の流れが該副室内で小さくなるように、該周壁部の周方向における該複数の給水口の配置間隔が設定されていることを特徴とする加飾物の製造装置。
前記複数の給水口が、前記副室の周壁部に対して、各給水口から供給される水の流れの中心線を、該周壁部の中心軸上の一点で該中心軸と交差させる位置に設けられて、各給水口から該副室内に向かって流れる水が、該周壁部の中心軸上で互いに衝突するように構成されていると共に、かかる水の衝突により、各給水口から該副室内に向かって流れる水の流れが該副室内で無くなるように構成されている請求項1に記載の加飾物の製造装置。
前記排水手段が、前記連通口に連通状態で接続された管状の排水流路と、該排水流路の途中に設けられて、該排水流路内の水の流れを開閉する開閉手段とを含んで構成されていると共に、前記水槽の副室が、該排水流路における該連通口への接続部と該開閉手段の設置部との間に位置する部分にて構成され、更に、前記複数の給水口が、該副室を構成する該排水流路部分の流路壁に形成されている請求項1又は請求項2に記載の加飾物の製造装置。
前記排水流路に、該排水流路を通じて前記水槽内から排出される排水中に含まれる、前記被加飾物への転写に使用されなかった前記加飾層の一部や前記水溶性フィルムの残滓を該排水中から除去するための濾過手段が設けられている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の加飾物の製造装置。
前記水槽から前記排水流路を通じて排出されて、前記濾過手段にて濾過された水を貯える貯水タンクが設けられていると共に、前記給水手段が、該貯水タンク内の水を、前記複数の給水口を通じて、該水槽内に供給するように構成されている請求項4に記載の加飾物の製造装置。
前記水槽が、着脱可能に構成されて、前記主室の容積が互いに異なる複数種類のものの中から任意に選択されたものに交換可能とされている請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載の加飾物の製造装置。
加飾層が表面上に形成された水溶性フィルムを、水槽内の水面上に浮かべる工程と、被加飾物を、該水槽内の水面上に浮かべられた該水溶性フィルム上の該加飾層に押し当てて、水没させることにより、該加飾層を該被加飾物の表面に転写する工程と、該被加飾物の表面への該加飾層の転写後に、該水槽内から全量の水を排出させる工程と、該水槽内から全量の水を排出した後に、再び該水槽内に水を供給する工程とを、1サイクルとして、該サイクルを繰り返し行なうことにより、該加飾層が表面に転写された加飾物を連続的に製造する方法において、
前記水槽として、水を貯留するための主室と、該主室の底部において開口する連通口を通じて該主室内に連通する副室とを有すると共に、該副室の周壁部に、該副室内に水を供給するための複数の給水口が設けられてなるものを用い、該複数の給水口から該副室内に水を供給すると共に、それら各給水口から供給される水を、該副室内で互いに衝突させて、それら各給水口から該副室内に向かって流れる水の流れを小さくしながら、各給水口から供給された水で該副室内を満たし、その後、該副室内の水を前記主室内に前記連通孔を通じて流入させることによって、前記水槽内に水を供給する工程を行うことを特徴とする加飾物の製造方法。
前記複数の給水口のそれぞれから前記副室内に供給される水を、該副室内における前記周壁部の中心軸上で互いに衝突させて、それら各給水口から該副室内に向かって流れる水の流れを無くしながら、各給水口から供給された水で該副室内を満たすようにした請求項7に記載の加飾物の製造方法。
前記被加飾物の表面への前記加飾層の転写後に、前記水槽内から排出される水を濾過して、該排水中に含まれる、前記被加飾物への転写に使用されなかった前記加飾層の一部や前記水溶性フィルムの残滓を該排水中から除去するようにした請求項7又は請求項8に記載の加飾物の製造方法。
前記加飾層の一部や前記水溶性フィルムの残滓が濾過により除去された前記排水を、前記複数の供給口から前記副室内に再び供給するようにした請求項9に記載の加飾物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、所定の図柄や模様等を有する加飾層を被加飾物の表面に形成して、加飾物を製造する装置には、様々な構造を有するものがあり、それら各種の製造装置は、加飾物の製造に際して、例えば、被加飾物の形状や大きさ、或いは加飾層の被加飾物表面への形成条件等に適した構造を有するものが適宜に選択されて、使用されている。そして、そのような加飾物の製造装置の一種として、例えば、特開平4−43100号公報(特許文献1)等に明らかにされるような加飾物の製造装置が知られている。
【0003】
この加飾物の製造装置は、水槽と、水槽内に水を供給する給水装置とを有している。そして、水溶性(水膨潤性を含む)フィルムの表面上に、インキや塗料等を用いた印刷層等からなる、水に不溶の加飾層が形成された、所謂転写フィルムが、給水装置により給水された水槽内の水面上に浮かべられて、転写フィルムの水溶性フィルムが水に溶けたときに、被加飾物が、水面上の加飾層に押し当てられて、水没させられることにより、加飾層が被加飾物の表面に転写されて、目的とする加飾物が製造されるようになっている。
【0004】
このような加飾物の製造装置を用いることによって、三次元形状等の比較的に複雑な形状を有する被加飾面に対して、加飾層を容易に形成することができる。それ故、かかる製造装置は、例えば、複数種類の曲面が組み合さわれてなる表面に、様々な模様が施されてなる自動車用内装部品等を製造するための装置として、好適に利用されている。
【0005】
ところで、上記の如き構造を有する加飾物の製造装置を用いれば、水槽内の水面上に転写フィルムを浮かべる工程と、被加飾物を転写フィルムの加飾層に押し当てて、水没させる工程とを1サイクルとして、かかるサイクルを繰り返し実施することによって、複数の加飾物を連続的に製造することができる。しかしながら、そのようにして、複数の加飾物を連続的に製造する際には、前回の転写工程で使用されなかった加飾層の一部や水溶性フィルムの残滓(以下、転写フィルムの残滓と言う)が、次回の転写工程のために水槽内の水面上に浮かべられた転写フィルムに付着し、それによって、製造される加飾物の品質低下が惹起される恐れがあった。
【0006】
すなわち、転写フィルムは、水溶性フィルムが水に溶解(膨潤し、分解)したときに、加飾層の全体が展伸するといった特徴を有しているが、転写フィルムに異物が付着していると、水溶性フィルムのうちの異物が付着している部分とそれ以外の部分との間で溶け方が違ってくる。そのため、転写フィルムの残滓が、次回の転写工程のために水槽内の水面上に浮かべられた新たな転写フィルムに付着すると、水溶性フィルムが水に溶けたときの加飾層の展伸量に部分的な差異が生じて、加飾層の柄が部分的に変化してしまい、その結果、そのような加飾層が表面に転写された加飾物の外観が低下するといった問題が生ずる可能性があるのである。
【0007】
そこで、上記の如き構造を有する従来の加飾物の製造装置には、複数の加飾物を連続的に製造する際に、水槽内の水面上に浮かべられた転写フィルムへの異物の付着を防止するための工夫が、施されている。即ち、かかる製造装置においては、水槽が仕切壁によって二つに仕切られて、水槽内に、転写槽と浄化槽とが形成されている。また、水が、転写槽内に、給水装置によって連続的に供給される一方、かかる連続給水により転写槽内からオーバーフローした(溢れ出した)水が、仕切壁を超えて、浄化槽内に流出するようになっている。かくして、かかるオーバーフロータイプの加飾物の製造装置においては、転写槽内で、被加飾物の表面への加飾層の転写が行われる一方、転写槽内の水中に残存して、浮遊する転写フィルムの残滓が、転写槽からオーバーフローした水と共に、転写槽内から浄化槽内に流出して、転写槽内に貯留される貯留水中から除去されるように構成されている。そして、それにより、複数の加飾物を連続的に製造する際に、転写フィルムの残滓が、次回の転写工程のために転写槽内の水面上に浮かべられた転写フィルムに対して可及的に付着しないように工夫されているのである。
【0008】
ところが、そのような従来のオーバーフロータイプの製造装置では、あくまでも、転写槽内の貯留水中に含まれる転写フィルムの残滓のうち、転写槽内から溢れ出した貯留水の表層部分に含まれるものだけが除去されるようになっていた。そのため、転写槽内から溢れ出さずに、転写槽内に留まる貯留水の表層以外の部分に含まれる転写フィルムの残滓を除去することができず、それ故に、転写槽内の水面上に浮かべられる転写フィルムへの残滓の付着を皆無とすることが、到底、不可能であった。従って、従来のオーバーフロータイプの加飾物の製造装置では、複数の加飾物を、十分に満足し得る程の高い品質をもって連続的に製造することが、困難であったのである。
【0009】
なお、複数の加飾物を連続的に製造する際に、水槽(転写槽)内の貯留水中から、転写フィルムの残滓を完全に除去するには、被加飾物表面への加飾層の転写工程の終了毎に、水槽内から貯留水の全量を排出した後、再び、水槽内に給水することが考えられる。そして、そのように、1回の加飾物の製造工程が終了する毎に、水槽内の貯留水の全量を交換するようにした、所謂貯留水交換タイプの加飾物の製造装置も、例えば、小型の加飾物を製造する際等において、実際に使用されている。
【0010】
しかしながら、そのような従来の貯留水交換タイプの加飾物製造装置にも、以下の如き問題が内在していた。
【0011】
すなわち、従来の貯留水交換タイプの加飾物製造装置においては、一般に、水槽の上方や周壁部に設置された給水パイプからの放水によって、水槽内に水が供給されるため、水槽内に、給水による水流が生じて、給水の完了時に、水面の揺らぎが発生する。この給水完了時の水面の揺らぎは、水槽内への給水速度(単位時間当たりの吸水量)が大きくなるに従って、より大きくなる。そして、そのような水面の大きな揺らぎは、水面上に浮かべられた転写フィルムの加飾層に皺や変形を生じさせる原因となる。
【0012】
それ故、従来の貯留水交換タイプの加飾物製造装置を用いる際には、給水速度を小さくして、水槽内に水を静かに供給することにより、給水完了時点での水面の揺らぎを小さくするか、或いは水槽内への給水速度を小さくしない場合には、給水完了後に、水面の揺らぎが十分に収まるのを待ってから、水面上に転写フィルムを浮かべるように為す必要があった。従って、そのような加飾物の製造装置を用いて加飾物を製造する場合には、水槽内への給水時間や、水槽内への給水の完了から転写フィルムを水面上に浮かべてセットするまでの時間が長くなり、その結果、加飾物の製造サイクルタイムが長くなってしまうことが避けられなかったのである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0032】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有する加飾物の製造装置を用いて製造された加飾物の一例としての自動車用内装部品が、その断面形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、自動車用内装部品10(以下、単に、内装部品10と言う)は、樹脂製の平板からなる、被加飾物としての基板12を有している。そして、この基板12の厚さ方向一方の面上に、インキや塗料等を用いて形成された、例えば木目模様を呈する印刷層等からなる加飾層14が積層形成されて、構成されている。なお、基板12の材質や形状は、何等これに限定されるものではない。また、加飾層14が、印刷層以外のものでも良く、更には木目模様以外の模様や所定の絵柄であっても何等差し支えない。
【0033】
このような内装部品10は、その複数が、例えば、
図2に示される如き、本発明に従う構造を有する製造装置の一実施形態としての内装部品製造装置16(以下、単に、製造装置16と言う)を用いることによって、連続的に製造される。
【0034】
図2から明らかなように、本実施形態の製造装置16は、水槽18と、給水手段としての給水装置20と、排水管22とを有している。なお、以下からは、便宜上、
図1の上方側を製造装置16の上部側と言い、
図1の下方側を製造装置16の下部側と言うこととする。
【0035】
より具体的には、水槽18は、
図2乃至
図4に示されるように、上下方向に延びる円筒状周壁部24と、かかる円筒状周壁部24の下側開口部を閉塞する底壁部26とを一体的に有し、全体として、上方に開口する片側有底の筒体形状を呈している。この水槽18の円筒状周壁部24は、比較的に高さの低い円筒形状を呈し、また、底壁部26は、その内周面が、下方に向かって次第に小径となるテーパ形状を有している。
【0036】
かかる水槽18の底壁部26の中心部には、円形の貫通孔からなる、排水口としての連通口28が、水槽18の中心軸:Pと同軸的に位置するように、設けられている。即ち、ここでは、底壁部26が、全体として、下方に向かって次第に小径化するテーパ筒形状を呈し、その小径側開口部が、連通口28とされている。また、水槽18の最深部に、連通口28が形成されている。更に、そのような連通口28が、その中心点:Oを通って鉛直方向に延びる鉛直線:Xを、水槽18(円筒状周壁部24)の中心軸:Pと一致させるように配置されているのである。
【0037】
そして、底壁部26の外面(下面)の中心部には、円筒状の接続筒部30が、連通口28の開口周縁部から下方に向かって真っ直ぐに延び、且つ水槽18の中心軸:Pと同軸的に位置するように、一体的に立設されている。これにより、水槽18の円筒状周壁部24と底壁部26とにて囲まれた内側空間が、連通口28を通じて接続筒部30の内側空間(内孔)に連通し、更に、それら連通口28と接続筒部30の内側空間を通じて外部に連通している。なお、ここでは、接続筒部30の軸方向中間部に段部32が設けられて、かかる接続筒部30の段部32よりも下側の端部が、それよりも上側の部分に比して、所定寸法だけ小径化されている。そして、そのような水槽18が、製造装置16が有するベース34に立設された矩形枠体からなる支持フレーム36に支持されている。
【0038】
図2及び
図3から明らかなように、排水管22は、接続筒部30と略同一内径を有して、上下方向に延びる円筒状の直管からなっている。そして、かかる排水管22が、水槽18と同軸的に位置するように、換言すれば、中心軸:Qを、水槽18の中心軸Pに一致させた状態で、水槽18に対して、接続筒部30を介して着脱可能に取り付けられている。
【0039】
すなわち、排水管22の上端部には、段部38が設けられて、この段部38よりも上側の部分が、それよりも下側の部分に比して、所定寸法だけ大径化されている。そして、かかる排水管22の大径の上端部が、接続筒部30の小径の下端部に外挿されて、接続筒部30の下端面が排水管22の段部38に係合している一方、排水管22の上端面が接続筒部30の段部32に係合していることにより、それら排水管22の上端部と接続筒部30の下端部とがインロー嵌合している。また、そのような状態下において、互いに嵌合した排水管22の上端部と接続筒部30の下端部とが、連結バンド40により相互に連結されている。なお、連結バンド40は、半割円筒状の二つの部品が、それぞれの周方向一端部においてヒンジ連結されている一方、周方向他端部において、ボルト固定により相互に連結されるようになっている。また、かかる連結バンド40の内周面には、シールゴム41が貼り付けられている。
【0040】
このように、ここでは、連結バンド40が、排水管22の上端部と接続筒部30の下端部との嵌合部に外挿されて、かかる嵌合部を締め付けた状態で、周方向他端部においてボルト固定されていることで、排水管22と接続筒部30が、液密にシールされつつ、相互に連結されるようになっている。そして、それにより、排水管22が、接続筒部30との連結下において、接続筒部30の内側空間内に連通し、また、かかる接続筒部30と連通口28とを通じて、水槽18の円筒状周壁部24と底壁部26とにて囲まれた内側空間内にも連通している。そして、そのような排水管22と接続筒部30との連結状態から、連結バンド40のボルトが緩められることで、排水管22と接続筒部30の連結が解消されるようになっている。かくして、排水管22が(水槽18が)、水槽18に対して(排水管22に対して)、接続筒部30を介して着脱可能に取り付けられているのである。
【0041】
また、
図2に示されるように、排水管22は、その下端部において、前記ベース34上に配置された貯水タンク42に接続している。この貯水タンク42は、水槽18の容積を超える容積を有している。更に、排水管22の軸方向中間部には、開閉手段としての開閉バルブ44が設けられている。ここでは、この開閉バルブ44が、公知の構造を有する電磁弁からなり、その開閉作動によって、排水管22内での水の流通を許容したり、停止したりするようになっている。
【0042】
かくして、製造装置16においては、後に詳述する給水装置20により、水槽18内に給水されて、貯留された水が、開閉バルブ44の開作動時に、連通口28と接続筒部30とを通じて、水槽18内から排出されて、排水管22内に流入し、そして、かかる排水管22を通じて、貯水タンク42内に導かれて、貯水タンク42内に貯留されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、接続筒部30と排水管22とにて排水流路45が構成されている。また、そのような排水流路45と連通口28と開閉バルブ44とにて排水手段が構成されている。
【0043】
一方、排水管22が接続される貯水タンク42には、公知の構造を有するヒータ装置43が並設されている。このヒータ装置43は、後述するように、貯水タンク42内から水槽18内に再び供給されて貯留された貯留水の水面上に、後述する転写フィルム54が浮かべられたときに、かかる転写フィルム54の水溶性フィルム90が、水槽18内の水に迅速に溶解させられる程度の温度にまで、貯水タンク42内の水を加温するものである(
図8参照)。
【0044】
また、排水管22(排水流路45)における貯水タンク42への接続部と開閉バルブ44の設置部との間に位置する部分には、濾過手段としての上側濾過フィルタ装置46と下側濾過フィルタ装置48とが、上下方向に所定間隔を隔てて並んで位置するように設置されている。それら上側及び下側濾過フィルタ装置46,48は、排水管22に固設されたフィルタホルダ50,52内に、図示しない公知の濾過フィルタが、それぞれ収容されて、構成されている。
【0045】
そのように、排水管22の途中に上側濾過フィルタ装置46と下側濾過フィルタ装置48が設けられていることによって、水槽18内から排出された水が、排水管22内を流れる間に、上側及び下側濾過フィルタ装置46,48にて濾過されるようになっている。かくして、排水管22内を流れる水に混入している、後述する転写フィルム54の残滓92(
図9参照)が、上側及び下側濾過フィルタ装置46,48内の濾過フィルタにて捕集されるようになっている。そして、それにより、排水管22内の水が浄化されてから貯水タンク42内に送り込まれて、貯留されるように構成されている。
【0046】
なお、上側及び下側濾過フィルタ装置46,48内の濾過フィルタの構造や種類は、何等限定されるものではなく、公知の各種ものが採用されるものの、ここでは、それら各フィルタが、HEPAフィルタにて構成されている。そして、下側濾過フィルタ装置48内の濾過フィルタが有する細孔の径が、上側濾過フィルタ装置46内の濾過フィルタが有する細孔の径よりも小さくされて、排水管22内を流れる水中に混入する転写フィルム54の残滓92が、二段階で、より確実に捕集されるようになっている。また、必要に応じて、上側及び下側濾過フィルタ装置46,48とは別に、排水管22の開閉バルブ44の設置部よりも上部側にも、濾過フィルタ装置を設けても良い。そうすれば、転写フィルム54の残滓92の開閉バルブ44内への侵入を阻止することができる。更に、排水管22に設けられる濾過フィルタ装置の数は、何等限定されるものではなく、排水管22に対する濾過フィルタ装置の設置個数を1個だけとしても良く、また、上側及び下側濾過フィルタ装置46,48を省略しても良い。
【0047】
図2乃至
図4に示されるように、給水装置20は、ベース34上に設置された、公知の構造を有する給水ポンプ56を有している。この給水ポンプ56は、送水パイプ58を介して、貯水タンク42と接続されている。また、給水ポンプ56には、第一給水パイプ60と第二給水パイプ62と第三給水パイプ64が、それぞれ接続されている。それら第一、第二、及び第三給水パイプ60,62,64は、給水ポンプ58との接続側とは反対側の端部の開口部が、それぞれ、第一、第二、及び第三給水口66,68,70とされている。
【0048】
かくして、本実施形態の製造装置16では、貯水タンク42内に貯留された水が、給水ポンプ56の作動により、送水パイプ58を通じて給水ポンプ56内に吸入され、更に、第一乃至第三給水パイプ60,62,64内を流通して、第一乃至第三給水口66,68,70から噴出させられるようになっている。なお、
図2中、72は、送水パイプ58内の水の流れを開閉する、例えば、電磁弁等からなる開閉バルブである。また、送水パイプ58の途中に、上側濾過フィルタ装置46や下側濾過フィルタ装置48と同様な構造の濾過フィルタ装置を設けることも可能である。
【0049】
給水ポンプ56に接続された第一乃至第三給水パイプ60,62,64のうち、第一給水パイプ60は、全長に亘って容易に曲げ変形可能な材質からなっている。そして、給水ポンプ56への接続側とは反対側の端部が、水槽18の円筒状周壁部24の上部部位における周上の一箇所に設けられた第一挿通孔74内に抜脱可能に挿通されている。
【0050】
すなわち、第一給水パイプ60においては、第一給水口66側の端部が第一挿通孔74内に挿通されて、かかる第一挿通孔74内への挿通部位よりも第一給水口66側の部分が、円筒状周壁部24の内側空間内に突入配置されており、また、第一給水口66が、円筒状周壁部24の内側空間内に向かって開口している。これにより、給水ポンプ56から送り出されて、第一給水パイプ60内を流通する水が、第一給水口66を通じて、水槽18内に供給されるようになっている。
【0051】
なお、ここでは、第一給水パイプ60における第一給水口66側の端部側部位のうち、第一挿通孔74から水槽18の外側に延びる部分が、支持フレーム36の上端から側方に延びる延長フレーム部73の先端に設けられた筒状のパイプホルダ76に抜脱可能に挿通されて、保持されている。これにより、第一給水パイプ60の第一挿通孔74内への挿通状態が、安定的に維持されるようになっている。また、そのような第一給水パイプ60の第一挿通孔74内への挿通部位とパイプホルダ76への挿通部位との間の部分には、第一給水パイプ60内の水の流れを開閉する、例えば、電磁弁等からなる開閉バルブ77が設けられている。
【0052】
そして、
図4に示されるように、本実施形態の製造装置16においては、水槽18の円筒状周壁部24の内側空間内に突入した第一給水パイプ60の第一給水口66側端部が、第一給水パイプ60の中心軸:Rを、第一給水口66の中心点:αと水槽18の中心軸:P上の一点:βとを結んで水平に延びる直線:Sに対して交角:θ
1 をもって交差させる方向に延びるように配置されている。
【0053】
つまり、
図10に示されるように、第一給水口66が、第一給水口66から水槽18内に向かって供給される水の流れの中心線:R’を、連通口28の中心点:O(
図3参照)を通って鉛直方向に延びる鉛直線:X上の一点:βと第一給水口66の中心点:αとを結んで水平に延びる直線:Sに対して、円筒状周壁部24の周方向において交差させる位置に設けられている。換言すれば、円筒状周壁部24の内側空間内への第一給水口66の開口方向が、第一給水口66から供給される水の流れの中心線:R’を、第一給水口66の中心点:αと水槽18の中心軸:P上の一点:βとを結んで水平に延びる直線:Sに対して、円筒状周壁部24の周方向において交角:θ
1 をもって交差させる方向とされている。
【0054】
かくして、第一給水パイプ60内を流通する水が、開閉バルブ77の開作動状態下で、水槽18の中心軸:Pに向かう方向(直線:Sに沿った方向)に対して所定の角度:θ
1 だけ円筒状周壁部24の周方向にずれた方向に向かって、第一給水口66から水槽18内に供給されるようになっている。つまり、第一給水パイプ60内を流通する水が、円筒状周壁部24の内周面のうち、第一給水口66に対して、水槽18の中心軸:Pを間に挟んだ径方向反対側の箇所とは、円筒状周壁部24の周方向において異なる箇所に位置する内周面部分に向かって、第一給水口66から水槽18内に供給されるようになっているのである。
【0055】
一方、
図3及び
図5に示されるように、第二給水パイプ62と第三給水パイプ64は、互いに同一の内径を有し、給水ポンプ56への接続側とは反対側の端部が、排水管22の上部側部分に対して、それぞれ挿通固定されている。
【0056】
より詳細には、排水管22の上部側部分たる、開閉バルブ44の設置部と接続筒部30に対する接続部との間に位置する部分には、第二挿通孔78と第三挿通孔80が、かかる排水管22の管壁部を貫通して、形成されている。それら第二挿通孔78と第三挿通孔80は、排水管22の中心軸:Qを間に挟んだ排水管22の径方向の両側において同軸的に位置している。そして、第二給水パイプ62の第二給水口68側の端部が、第二挿通孔78内に、抜脱不能に挿通されている一方、第三給水パイプ64の第三給水口70側の端部が、第三挿通孔80内に、抜脱不能に挿通されている。また、それら第二給水パイプ62と第三給水パイプ64の第二挿通孔78と第三挿通孔80内への挿通部位よりも手前の部分(第二及び第三給水口68,70側とは反対側部分)には、第二及び第三給水パイプ62,64内での水の流れを開閉する、例えば、電磁弁等からなる開閉バルブ69,71が、それぞれ設けられている。
【0057】
かくして、互いに同一径とされた第二給水パイプ62の第二給水口68と第三給水パイプ64の第三給水口70とが、排水管22の内側空間内に向かって開口するように配置されている。また、それにより、給水ポンプ56から送り出されて、第二給水パイプ62内と第三給水パイプ64内とをそれぞれ流通する水が、開閉バルブ69,71の開作動状態下で、第二給水口68と第三給水口70とを通じて、排水管22内に供給されるようになっている。
【0058】
そして、そのような第二及び第三給水口68,70を通じての排水管22内への給水が、排水管22上の開閉バルブ44の閉作動状態下で実施されることにより、排水管22の開閉バルブ44よりも上部側部分内と接続筒部30の内側空間内、つまり排水流路45の上部側部分内が、排水管22内に供給された水で満たされた後、そのような排水流路45の上部側部分内に満たされた水が、連通口28を通じて、水槽18の円筒状周壁部24と底壁部26とにて囲まれて内側空間内に供給されて、貯留されるようになっている(
図6参照)。このことから明らかなように、ここでは、水槽18の円筒状周壁部24と底壁部26とにて囲まれて内側空間にて、主室82が構成されている一方、排水管22の開閉バルブ44よりも上側部分の内側空間と接続筒部30の内側空間(排水流路45の上部側部分の内側空間)にて、副室84が構成されている。そして、そのような副室84の周壁部が、排水管22の管壁部にて構成されているのである。
【0059】
このように、本実施形態の製造装置16では、貯水タンク42内の水を、給水ポンプ56と第二及び第三給水パイプ62,64とにて、水槽18内に給水し、また、水槽18内の水を排水流路45を通じて、水槽18内から排出させて、貯水タンク42内に貯留することにより、所定量の水を水槽18と貯水タンク42との間で循環させるように構成されているのである。
【0060】
そして、
図3及び
図5に示されるように、本実施形態の製造装置16においては、排水管22の第二挿通孔78内に挿通固定された、第二給水パイプ62における第二給水口68側の端部と、排水管22の第三挿通孔80内に挿通固定された、第三給水パイプ64における第三給水口70側の端部とが、排水管22の管壁部に設けられた第二挿通孔78と第三挿通孔80にそれぞれ挿通されていることで、それら第二及び第三給水パイプ62,64の端部が、排水管22の中心軸:Qを間に挟んだ排水管22の径方向の両側において同軸的に配置されている。即ち、第二給水パイプ62の第二給水口68側の端部と、第三給水パイプ64の第三給水口70側の端部とが、第二給水パイプ62の中心軸:Tと第三給水パイプ64の中心軸:Uとを、排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qに対して、それぞれ直交させるように位置している。
【0061】
これにより、
図6及び
図7に示されるように、第二給水口68と第三給水口70とが、第二給水口68から供給される水の流れの中心線:T’と第三給水口70から供給される水の流れの中心線:U’とを、排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qと直交させるように、排水管22の管壁部の中心軸:Qを間に挟んだ径方向の両側の位置、つまり、かかる管壁部の軸方向の同一位置で、且つ管壁部の周方向において180°の位相差を有する位置(管壁部の周方向において等間隔となる位置)に、それぞれ配置されている。
【0062】
そして、かくの如き構造とされた製造装置16を用いて、複数の内装部品10を連続的に製造する際には、例えば、以下に示す手順に従って、その作業が進められる。
【0063】
すなわち、先ず、貯水タンク42内に、所定量の水を投入し、貯留させる。なお、この作業は、複数の内装部品10の製造作業の開始当初に、予備作業として、一回だけ行われる。また、必要に応じて、貯水タンク42内の水を、ヒータ装置43により、所定の温度にまで加温する。
【0064】
次に、排水管22上の開閉バルブ44を閉作動させる一方、送水パイプ58上の開閉バルブ72と第二及び第三給水パイプ62,64上の開閉バルブ69,71とを開作動させる。また、それと共に、給水ポンプ56を作動させる。これにより、貯水タンク42内の水を、送水パイプ58を通じて、給水ポンプ56に導いて、第二給水パイプ62内と第三給水パイプ64内とに送り出すと共に、それら第二給水パイプ62内と第三給水パイプ64内を流動させて、第二給水口68と第三給水口70とを通じて、排水管22(排水流路45)の上部側部分内に、同一の流速及び流量で供給する。
【0065】
このとき、第二給水口68と第三給水口70の排水管22への形成位置が、上記の如き特別な位置とされているため、
図6及び
図7に示されるように、第二及び第三給水口68,70から排水管22内に向かって流れる水が、排水管22の中心軸:Q上で互いに衝突する。そして、それにより、第二及び第三給水口68,70から排水管22内に水が供給された直後に、排水管22内で、第二及び第三給水口68,70から排水管22内に向かって流れる水の流れが無くされる。
【0066】
従って、第二及び第三給水口68,70を通じて給水が行われたときには、排水管22の開閉バルブ44よりも上部側の部位の内側空間と接続筒部30の内側空間とからなる副室84内に、排水管22の径方向や周方向等の流れの無い状態で、水が供給され、また、第二及び第三給水口68,70を通じての給水量の増加に伴って、副室84内の水かさが、静かに且つ徐々に増やされていく。そして、副室84に水が満たされた後に、かかる副室84内の水が、連通口28を通じて、水槽18の主室82内に供給されるようになる。
【0067】
その後、水槽18の主室82内の水量が予め設定された量となったら、第二及び第三給水パイプ62,64上の開閉バルブ69,71を閉作動させる。かくして、水槽18の主室82内に、所定量の水を貯留する。
【0068】
なお、上記したように、副室84内から主室82内に供給される水は、排水管22の径方向や周方向等の流れが既に副室84内で無くされている。そのため、連通孔28を通じての主室82内への給水時には、主室82内の水に、排水管22と同軸的に位置する水槽18の円筒状周壁部24の径方向や周方向の流れ等が生じることが無い。これにより、主室82内への給水の完了時において、水面に揺らぎが生ずることが効果的に解消される。また、そのような水面の揺らぎの発生を抑制するために、給水装置20による副室84と主室82内への給水速度を低下させる必要も、有利に解消され得る。
【0069】
そして、水槽18の主室82内に所定量の水を貯留したら、
図8に示されるように、転写フィルム54を、主室82内の貯留水88の水面上に浮かべる。ここで用いられる転写フィルム54は、例えばポリビニルアルコール等からなる水溶性フィルム90の一方の面上に、目的とする内装部品10の表面に形成されるべき木模様等を有する、水に不溶の加飾層14が積層形成されてなる構造を有している。このような転写フィルム54は、水溶性フィルム90を水中に浸漬させるように、水溶性フィルム90の側を下側とした向きで、水面上に浮かべられる。
【0070】
なお、上記したように、主室82内への給水の完了時には、水面の揺らぎが実質的に発生していない。それ故、主室82内の水面上に転写フィルム54を浮かばせる操作は、主室82内への給水の完了後に、水面の揺らぎが収まるのを待つことなしに、直ちに実施されることとなる。そして、転写フィルム54を水面上に浮かばせてから、所定の時間放置する。これにより、転写フィルム54の水溶性フィルム90を水に溶かして(膨潤、分解させて)、加飾層14のみを水面上に浮かばせる。また、水溶性フィルム90を水に溶解させている間に、必要に応じて、加飾層14の上面に定着剤等を噴霧する。
【0071】
そして、水溶性フィルム90が水に溶けて、加飾層14だけが水面上に浮かんだ状態となったら、
図9に二点鎖線と実線で示されるように、目的とする内装部品10の基板12の加飾層14が形成されるべき表面部分を、水面上の加飾層14に押し当てつつ、基板12の全体を貯留水88中に沈没させる。これにより、基板12の表面上に、加飾層14を水圧により転写する。
【0072】
このような転写作業の完了後には、基板12の表面上に転写されなかった加飾層14の一部や、貯留水88に完全に溶解されなかった水溶性フィルム90の一部からなる転写フィルム54の残滓92が、貯留水88の水面上や水中に浮遊する状態で、主室82内に残留する。なお、貯留水88中を浮遊する転写フィルム54の残滓92のうちの一部は、水槽18の円筒状周壁部24の内周面上に付着し、或いは沈降して、水槽18の底壁部26の内面上に付着する。
【0073】
その後、表面に加飾層14が形成された基板12を水槽18内の貯留水88中から引き上げて、乾燥させる。かくして、目的とする内装部品10を得る。
【0074】
そして、加飾層14が形成された基板12を水槽18内の貯留水88中から引き上げたら、第一給水パイプ60上の開閉バルブ77を開作動させる。これにより、
図10に示されるように、水槽18の主室82内の貯留水88の水面に向かって水を供給する。
【0075】
このとき、水槽18内への第一給水口66の開口方向が、第一給水口66から供給される水の流れの中心線:R’が、連通口28の中心点:Oを通る鉛直線:X(水槽18の中心軸:P)上の一点:βと第一給水口66の中心点:αとを結んで水平に延びる直線:Sに対して、円筒状周壁部24の周方向においてθ
1 の交角をもって交差させる方向とされているところから、第一給水口66から供給される水が、水槽18内の貯留水88を円筒状周壁部24の内周面に沿って押し流すように、水槽18内に噴出される。これによって、水槽18内の貯留水88に周方向への水流が生じる。
【0076】
そして、第一給水口66からの給水の開始から、予め設定された時間、例えば1〜10秒が経過した後、排水管22上の開閉バルブ44を開作動させる。これにより、水槽18の主室82内の貯留水88の全量を、連通口28を通じて、主室82内から排出流路45内に排出し、そして、排出流路45の上部側部位に設けられる副室84内に貯留される水と共に、排水流路45を通じて、貯水タンク42内に流入させて、貯留する。なお、第一給水口66からの給水開始から開閉バルブ44の開作動までの時間は、第一給水口66からの給水により、水槽18内の貯留水88に周方向への水流を確実に生じさせるのに十分な時間が設定される。
【0077】
そして、そのような貯留水88の排出時には、貯留水88に既に生じている周方向の流れによって、貯留水88の全量が、
図10に矢印:アで示されるように、水槽18内で旋回流乃至は渦流を形成し、旋回しながら、或いは渦を巻きながら、連通口28から排出流路45内に排出される。かくして、貯留水88の水面上や水中に浮遊する加飾層14や水溶性フィルム90の残滓92が、貯留水88と共に、水槽18内から排出され、また、水槽18の円筒状周壁部24の内周面上や底壁部26の内面上に付着していた残滓92も、貯留水88の水流により押し流される。それにより、貯留水88の全量が排出された後に、残滓92が、水槽18の円筒状周壁部24や底壁部26の内面上に付着したままで、残存することが解消される。
【0078】
なお、第一給水口66から水槽18内への給水は、第一給水パイプ60上の開閉バルブ77の閉作動によって停止されるが、この給水停止は、貯留水88の周方向の流れの発生した後であれば、何時行われても良い。しかしながら、貯留水88の全量の排出後に、水槽18の円筒状周壁部24や底壁部26の内面を洗い流して、それらの内面に付着する残滓92を確実に除去するために、水槽18内からの貯留水88の排出が完了した時点から所定時間の間、第一給水口66から水槽18内への給水を継続して行っても良い。
【0079】
そして、水槽18内の貯留水88の全量の排出と第一給水口66から水槽18内への給水とが完了した後に、排水管22上の開閉バルブ44を閉作動させる。その後、副室84内と主室82内への給水作業と、貯留水88の水面上に転写フィルム54を浮かばせる作業と、転写フィルム54の加飾層14の基板12表面上への転写作業と、貯留水88の水槽18内からの排出作業とを、前記した如き手順に従って繰り返し実施して、目的とする内装部品10の複数を連続して製造するのである。
【0080】
以上の説明から明らかなように、本実施形態の製造装置16を用いれば、複数の内装部品10を連続的に製造するに際して、基板12の表面への加飾層14の転写作業を1回行う毎に、水槽18内の貯留水88の全量を交換することで、加飾層14の転写作業後に貯留水88中に残留する転写フィルム54の残滓92の全てを水槽18内から除去することができる。これによって、次回の加飾層14の転写作業を実施する際に、貯留水88の水面上に新たに浮かべられる転写フィルム54に対する残滓92の付着が効果的に防止される。そして、その結果、連続的に製造される複数の内装部品10において、転写フィルム54の残滓92の付着に起因した加飾層14の皺や変形等の外観不良が生ずることが、極めて有利に防止され得る。
【0081】
しかも、本実施形態に係る製造装置16によれば、給水装置20により、第二及び第三給水口68,70から排水管22内に供給された水を、排水管22の中心軸:Q上で互いに衝突させながら、水槽18内への給水を行うことで、水槽18内への給水の完了後に、水槽18内の貯留水88の水面に揺らぎが生ずることが防止され得る。それによって、水槽18内への給水完了後に、貯留水88の水面上に転写フィルム54を浮かべる作業を直ちに実施することができる。また、かかる水面の揺らぎの発生を無くすために、水槽18内への給水速度を低下させることも、有利に解消され得る。そして、その結果として、水槽18内への給水時間と、水槽18内への給水の完了から転写フィルム54を水面上に浮かべてセットするまでの時間を、極めて効果的に短縮することができる。
【0082】
従って、かくの如き本実施形態の製造装置16を用いれば、良好な外観を有する高品質の複数の加飾物を、十分に短い製造サイクルタイムで、連続的に製造することができるのである。
【0083】
また、本実施形態においては、貯留水88が、旋回しながら、或いは渦を巻きながら、連通口28を通じて排出されることで、貯留水88の排水後に、転写フィルム54の残滓92が、水槽18(円筒状周壁部24と底壁部26)の内面に付着して残存することが、効果的に防止され得る。これにより、次回の加飾層14の転写作業を実施する際に、貯留水88の水面上に新たに浮かべられる転写フィルム54に対する残滓92の付着が、更に一層効果的に防止され得る。従って、かかる本実施形態の製造装置16によれば、良好な外観を有する高品質の複数の内装部品10の連続生産を、より一層確実に実施することが可能となるのである。
【0084】
さらに、本実施形態の製造装置16では、水槽18の円筒状周壁部24が円筒形状とされているため、第一給水パイプ60からの給水により、水槽18の主室82内の貯留水88に、旋回流乃至は渦流が、より確実に且つスムーズに生ずる。また、水槽18の底壁部26の内周面が、連通口28側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされていることによっても、水槽18の主室82内の貯留水88に、旋回流が、より確実に生ずる。従って、それらの結果として、水槽18の円筒状周壁部24や底壁部26への残滓92の付着が、更に一層確実に防止され得る。
【0085】
また、かかる製造装置16にあっては、第二給水パイプ62における第二給水口68に近位の端部部位と、第三給水パイプ64における第三給水口70の近位の端部部位とに対して、開閉バルブ69,71がそれぞれ設けられている。このため、水槽18内の貯留水88の排出時に、それらの開閉バルブ69,71を閉作動させることによって、転写フィルム54の残滓92の第二給水パイプ62や第三給水パイプ64内への侵入と、それら第二及び第三給水パイプ62,64の内面への残滓92の付着が有利に防止され得る。これによっても、次回の加飾層14の転写作業に用いられる転写フィルム54への残滓92の付着が、効果的に防止され得る。
【0086】
さらに、本実施形態の製造装置16においては、副室84が、排水流路45の上部部位の内側空間にて構成されている。これによって、例えば、副室84を、排水流路45とは別個に設ける場合に比して、製造装置16全体の小型、コンパクト化が有利に図れ得る。
【0087】
また、かかる製造装置16では、給水ポンプ56の作動により、貯水タンク42と水槽18との間で水が循環されるようになっている。それ故、水槽18内から排出された水を再利用して、水の使用量を節約しながら、複数の内装部品10の連続生産が可能となり、その結果として、目的とする内装部品10の製造コストの削減が有利に図られ得る。
【0088】
しかも、かかる製造装置16においては、上側及び下側濾過フィルム装置46,48が、排水流路45上に設けられて、水槽18内から排出される水が、それら上側及び下側濾過フィルム装置46,48にて浄化された上で再利用されるようになっている。これによって、所定量の水を再利用しながらも、常に、清浄な水を用いて、基板12に対する加飾層14の転写作業を行うことが可能となる。その結果として、製造される内装部品10の良好な外観と製造コストの節約の両立が、有利に図られ得る。
【0089】
そして、本実施形態の製造装置16にあっては、水槽18が、接続筒部30において、排水管22に対して着脱可能とされている。それ故、例えば、
図3及び
図11に示されるように、水槽18を、主室82の容積が小さなもの(
図3に示される製造装置16)と主室82の容積が大きなもの(
図11に示される製造装置16)とに任意に交換することができる。この水槽18の交換は、連結バンド40のボルトを緩めて、水槽18と排水管22との連結状態を解消して、主室82の容積の小さな水槽18を排水管22から取り外した後、主室82の容積の大きな水槽18を排水管22に組み付け、その後、連結バンド40のボルトを再び締め付けることで、容易に実施できる。なお、接続筒部30と排水管22の連結構造は、それらを着脱可能とするものであれば、特に限定されるものではない。また、水槽18を交換する際には、必要に応じて、第一給水パイプ60のパイプホルダ76や第一挿通孔74内の挿通位置が、適宜に変更される。
【0090】
これによって、例えば、大型の内装部品10と小型の内装部品10とを製造する際、つまり複数種類の内装部品10を製造する際に、製造されるべき内装部品10に対応した大きさの水槽18を使い分けることで、かかる複数種類の内装部品10を一つの製造装置16だけで有利に製造することができる。そして、例えば、大型の内装部品10の製造にも使用可能な大型の水槽18を用いて小型の内装部品10を製造する場合とは異なって、小型の内装部品10専用の水槽18を用いて小型の内装部品10を製造することにより、水槽18内の貯留水88の供給時間と排出時間とが有利に短くされ得る。その結果として、大きさの異なる複数種類の内装部品10を製造するに際して、それらの内装部品10の製造サイクルタイムの短縮化が、より効果的に実現され得るのである。
【0091】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0092】
例えば、第二給水口68と第三給水口70とから副室84(排水流路45)内に供給される水が、副室84内で互いに衝突して、それら第二及び第三給水口68,70から副室84内への水の流れが無くされるようになっていることが望ましいが、それらの水の流れは、必ずしもゼロとされなくとも良い。連通口28を通じての主室85(水槽18)内への給水の完了時における種室82内の水面の揺らぎの発生が可及的に防止されるように、第二及び第三給水口68,70から副室84内への水の流れが、小さくされておれば良いのである。
【0093】
従って、第二給水口68と第三給水口70が、排水管22の管壁部に対して、第二及び第三給水口68,70から供給される水の流れの中心線:T’、U’を、排水管22の中心軸:Q上の一点:γでなく、二点で交差させる位置(給水口が三個以上ある場合には、中心軸の互いに異なる二点以上で交差させる位置)に設けられていても良く、また、排水管22の中心軸:Q方向の互いに異なる箇所に位置するように設けられていても良い。つまり、第二給水口38と第三給水口70は、それら各給水口68,70から供給される水を副室84内で衝突させて、それらの水の流れが副室84内で小さくなるように、排水管22の管壁部に対して、各給水口68,70からの水の流れの中心線:T’、U’を、排水管22の中心軸:Qと交差させる位置に設けられていれば良いのである。
【0094】
そして、給水パイプの数や、排水管22に対する給水口の設置位置、或いは給水口の内径等は、適宜に変更可能であるものの、それらは、副室84(排水流路45)内に供給される水を、排水管22内の中心軸:Q上で互いに衝突させて、それらの水の流れが小さくされるように設定されている必要がある。なお、以下には、給水パイプの数や、排水管22に対する給水口の設置位置、或いは給水口の内径等が、記第一の実施形態とは異なる別の実施形態を、
図12及び
図13を用いて説明するが、それらの実施形態に関しては、
図2乃至
図5に示された前記第一の実施形態と同一の構造とされた部材及び部位について、
図2乃至
図5と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。また、後述する
図14に示される実施形態についても同様である。
【0095】
例えば、
図12に示される実施形態は、第二給水パイプ62と第三給水パイプ64に加えて、それら第二及び第三給水パイプ62,64と同一内径の第四給水パイプ94を有している。かかる実施形態においては、第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94の第二、第三、及び第四給水口68,70,98側の端部が、排水管22に対して、その周方向に等間隔を隔てて位置するように設けられた第二、第三、及び第四挿通孔78,80,96に、それぞれ挿通固定されている。これにより、第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94の各端部が、それら第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94のそれぞれの中心軸:T,U,Vを、排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qに対して、それぞれ直交させ、且つそれらの中心軸:T,U,Vの互いの交角:θ
2 ,θ
3 ,θ
4 を一定の大きさ(ここでは120°)とするように配置されている。また、第四給水パイプ94の第四給水口98側の端部には、開閉バルブ100が設けられている。
【0096】
かくして、第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94の第二、第三、及び第四給水口68,70,98が、それら各給水口68,70,98から供給される水の流れの中心線:T’,U’,V’を排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qと直交させるように、排水管22の周方向に一定の間隔をおいて配置されるている。このような本実施形態においては、第二、第三、及び第四給水口68,70,98から、排水管22内に、互いに同一の流速で供給される水が、排水管22内の中心軸:Q上で互いに衝突させられて、それらの水の流れが無くされるようになっている。
【0097】
また、
図13に示される実施形態は、第二、第三、及び第四給水口68,70,98(第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94)を互いに異なる大きさ(内径)とされて、それら第二、第三、及び第四給水口68,70,98からの単位時間当たりの給水量が、互い異なる量(給水速度は一定)とされている。かかる実施形態では、第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94の各端部が、それら第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94のそれぞれの中心軸:T,U,Vを、排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qに対して、それぞれ直交し、且つ第二給水パイプ62の中心軸:Tに対する第三給水パイプ64の中心軸:Uの交角:θ
5 と、第二給水パイプ62の中心軸:Tに対する第四給水パイプ94の中心軸:Vの交角:θ
6 とが、第二、第三、及び第四給水口68,70,98からの単位時間当たりの給水量に応じた大きさとなるように配置されている。具体的には、下記の数式(1)と数式(2)を満たすように交角:θ
5,θ
6が、それぞれ設定されているのである。
【0098】
M=Ncosθ
5 +Lcosθ
6 ・・・・・(1)
Nsinθ
5 =Lsinθ
6 ・・・・・(2)
但し、M:第二給水口からの給水量
N:第三給水口からの給水量
L:第四給水口からの給水量
【0099】
これにより、第二、第三、及び第四給水パイプ62,64,94の第二、第三、及び第四給水口68,70,98が、それら各給水口68,70,98から供給される水の流れの中心線:T’,U’,V’を排水管22の中心軸:Q上の一点:γで、中心軸:Qと直交させ、且つ排水管22の周方向に互いに異なる所定の間隔をおいて配置されている。このような本実施形態では、第二、第三、及び第四給水口68,70,98から、排水管22内に、互いに同一の流速で供給される水が、排水管22内の中心軸:Q上で互いに衝突させられて、それらの水の流れが無くされるようになっている。
【0100】
なお、第二、第三、及び第四給水口68,70,98からの給水速度が互いに異なる大きさとしても良い。この場合にあっても、それら各給水口68,70,98から供給される水が、排水管22内における中心軸:Q上とは別の部位において互いに衝突させられて、それらの水の流れが小さくされるように、或いは無くされるように、第二、第三、及び第四給水口68,70,98の排水管22の周方向位置が、適宜に設定されることとなる。
【0101】
また、前記幾つかの実施形態では、副室84が、排水流路45の上部側部分の内側空間にて構成されていたが、副室84を排水流路45とは別個に設けることも可能である。これは、例えば、
図14に示されるように、水槽18の底壁部26に、第一連通口102と第二連通口104とを設けて、第一連通口102に、排水管22を連通状態で接続する一方、第二連通口104に、有底円筒状の副室形成用筒部106を連通状態で接続する。そして、かかる副室形成用筒部106の下端部に、第二給水パイプ62と第三給水パイプ64とを、前記第一の実施形態に係る製造装置16における第二及び第三給水パイプ62,64の排水管22への接続構造と同様な構造において、それぞれ接続する。これにより、副室形成用筒部106の内側空間にて、副室84を構成するのである。なお、第二連通口104には、副室形成用筒部106の内側空間と水槽18の主室82の内側空間とを、連通状態と非連通状態とに切り替える、例えば電磁弁等からなる開閉バルブ108が設けられる。
【0102】
このような構造によれば、主室82内に所定量の水を供給した後、開閉バルブ108を閉作動することにより、その後の転写操作で生ずる転写フィルム54の残滓92が、副室84内に侵入することが防止される。そして、その結果として、次回の転写操作の実施のために、副室84内から主室82内に供給されて、貯留される貯留水88中に残滓92が混入することが、より効果的に阻止され得る。
【0103】
また、副室84を排水流路45とは別個に設ける場合には、副室84が、周壁部に囲まれた、連通口28と連通する空間にて構成されておれば良い。従って、例えば、連通口28と連通する筐体等の内側空間にて、副室84を構成することも可能である。
【0104】
なお、
図14にからも明らかなように、排水口を構成する第一連通孔102(連通孔28)は、必ずしも、水槽18と同軸的に配置されている必要はない。また、副室84も、水槽18と同軸的に配置されていなくても良い。
【0105】
さらに、水槽18の円筒状周壁部24は、必ずしも円筒形状とされている必要はないが、貯留水88の排出時に、旋回流や渦流が確実に形成されるように、内周面形状が、角部のない筒形状とされていることが望ましい。従って、円筒状周壁部24は、好ましくは、円筒形状の他、横断面形状が楕円形状や長円形状を呈する筒形状とされる。
【0106】
更にまた、水槽18の底壁部26の形状も、特に限定されるものではなく、例示したテーパ形状に代えて、平面形状とされていても良い。
【0107】
また、主室82内に水を直接に供給する第一給水パイプ60を複数設けても良い。その場合には、それら複数の第一給水パイプ60が、それぞれの第一給水口66を、円筒状周壁部24の周方向に間隔を隔てて位置させるように設けられていることが望ましい。これによって、貯留水88の排出時に、貯留水88の旋回流乃至は渦流が、より確実に形成されることとなる。
【0108】
さらに、副室内の給水口の配設部分と連通口との間に位置する部分や、連通口内に、給水口から供給される水の副室から主室に向かう流れを遮る遮蔽部材を設置して、かかる水の流れを無くすことも可能である。この遮蔽部材としては、副室内の給水口の配設部分と連通口との間に位置する部分や連通孔の大部分を塞ぐように設置される板材や、副室内の給水口の配設部分と連通口との間に位置する部分や連通孔の全部を塞ぐように設置されるメッシュ部材等が用いられる。これによっても、主室内での水の流れを無くして、給水完了直後の水面の揺らぎの発生を有利に防止できる。
【0109】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用内装部品の製造に用いられる製造装置と製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、被加飾物を、水面上に浮かべられた水溶性フィルムの表面に設けられる加飾層に押し当てて、水没させることにより、加飾層を被加飾物の表面に転写して、加飾物を製造するようにした加飾物の製造装置や製造方法の何れに対しても、有利に適用可能であることは、勿論である。
【0110】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。