【実施例1】
【0013】
前記取付金具は、
図1−Aに示すように、薄平板形状の流れ抵抗材3を防音壁6(
図9、
図11参照)の頂部に取り付けて仮設固定するための取付金具である。ここで、前記流れ抵抗材3と防音壁6とを先に説明する。
【0014】
回折音場の騒音低減効果を増大するエッジ効果抑制材である前記流れ抵抗材3の大きさは、一例として、縦が600mm、横が1000mm、若しくは、横が2000mm程度の横長の矩形体である。横寸法が2000mmと長い場合には、補強用として中央部に横接続金具と同形状の補強金具を取り付けるものである。なお、
図1−Bに示すように、流れ抵抗材3は、1枚の板では無く、防音効果対策として、1層の厚みが約1.6mmの多孔質材であって、3枚の第1部材3a、第2部材3b、第3部材3cを図示するように下位置で重畳させて構成される。また、各第1部材3a、第2部材3b、第3部材3cの頂部は、
図1−Bに示すように、略直交して屈曲され、強度的に強くなるように補強されている。
【0015】
前記防音壁6は、
図7と
図11に示すように、厚さ1.2mmで縦が3000mm、横500mm程度の縦長のフラット鋼板の矩形体である。
図8に示すように、重ね合わせたり左右に連接したりするものである。この防音壁6の、クランク形の密接用接続部6a,6bがある方が内側であり、無い方が外側で外観となる。
【0016】
本発明に係る前記取付金具の構成は、
図1−Aに示すように、前記流れ抵抗材3の左右の端部に取り付けられる横接続金具1a,1b(対称形である)がある。
図3にこの横接続金具1a,1bの形状を示す。
【0017】
前記横接続金具1a,1bは、
図3(A)〜(D)に示すように、断面コ字形で高さが600mm、幅が36mmの鋼製のチャンネルバーであり、その正面には隣接する横接続金具1bとボルトナットで接続させるための長孔(φ10mm、若しくは丸孔)1dが上下方向に等間隔で4箇所設けられている。
【0018】
また、
図3(C)に示すように、横接続金具1a,1bの側面には、横地5とU字ボルトや番線などで接続・固定させるための単管用長孔(φ10mm、若しくは丸孔)1eが2箇所に設けられている。
図3(D)に示すように、他方の側面には、流れ抵抗材3に当接させて、固定するリベット7を挿通させるリベット孔(φ4)が上下に等間隔で4箇所に設けられており、符号1fがそのリベット孔の位置を示している。
【0019】
前記横接続金具1a,1bの接続には、
図4乃至
図5に示すように、隣接する流れ抵抗材3,3の端部における横接続金具1a,1bの正面を突き合わせて、互いの接続用の孔に左右の一方からボルトを挿通させてナットで定着して固定するものである。
【0020】
更に、
図1−A乃至
図2に示すように、前記流れ抵抗材3の下端部でその表面と裏面とを板材で挟持して、ボルト・ナット等の固定手段で固定するとともに、防音壁6を地面に立設した場合のその頂部に嵌合する形状の嵌合部を有する下部接続金具2がある。
【0021】
前記下部接続金具2は、
図1−Bおよび
図2に示すように、前記防音壁6の裏面の左右端部にあるクランク形の密接用接続部6a,6b(
図7参照)の裏面に当接するように屈曲され、前記流れ抵抗材3の裏面に当接する屈曲金具2aと、流れ抵抗材3および防音壁6の表面に当接する平板金具2bとで構成されている。
【0022】
この下部接続金具2は、
図1−Aと
図1−Bとに示すように、流れ抵抗材3の下に約40mmほど突出していて、紙面垂直方向に一様な断面で長さ1000mm程度である。前記屈曲金具2aと平板金具2bとの間で、前記密接用接続部6a,6b(
図10−B(A)参照)の奥行き寸法に、ほぼ等しい寸法で嵌合するようになっている。また、流れ抵抗材3が直角に曲がるコーナー部では、
図6に示すように、流れ抵抗材3を直交させて形成するものである。
【0023】
更に、
図9(A)に示すように、前記防音壁6支持用の縦地であって前記流れ抵抗材3の高さ分だけ延伸された縦地4と、防音壁6に沿って所要間隔を置いて立設されている前記縦地4,4、…の間の上部に横架されるとともに、前記流れ抵抗材3の横接続金具1a,1bと固定手段で固定される補強用の横地5とで構成される。
【0024】
以上のように、本発明に係る流れ抵抗材の取付金具は、横接続金具1a、1bと、下部接続金具2と、縦地4および横地5とで構成されるものである。
【0025】
次に、本発明に係る流れ抵抗材3の設置方法について説明する。まず、
図9(A)に示すように、前記防音壁6の高さに、流れ抵抗材3の高さ分だけ延伸された縦地4を、適宜間隔をおいて複数立設し、防音壁6を横地5a,5bに取付ける。
【0026】
そして、
図1−Aに示すように、前記取付金具における横接続金具1a,1bと下部接続金具2とが、予め形成されて所定の箇所に固着されてなる流れ抵抗材3を、
図9(A)、
図10−Aおよび
図10−Bに示すように、前記防音壁6の頂部6dに、下部接続金具2を介して、嵌合させる。
【0027】
前記下部接続金具2に嵌合された防音壁6の頂部6dにおいて、防音壁6の左右端部の密接用接続部6a,6bでは、
図10−B(A)に示すように、下部接続金具2が嵌合されており、当該防音壁6の左右端部の密接用接続部6a,6bを除く部分では、
図1−Aおよび
図10−B(B)に示すように、前記下部接続金具2の屈曲金具2aに設けたねじ孔2cからボルトネジ8を螺装させて、当該ボルトネジ8と平板金具2bとで前記防音壁6の本体部6cを挟持するようになっている。
【0028】
更に、
図4および
図5に示すように、隣接する流れ抵抗材3,3を互いの横接続金具1a,1bを当接させて、接続用の孔1dを利用して取付手段のボルトを挿通させ、ナットで固定する。隣接する横接続金具1a,1bは、互いの正面を当接させて音が漏れないように密接させて取付手段で固定する。
【0029】
そして、
図10−A(A),(B)に示すように、横地5(φ48mm、単管)を流れ抵抗材3の裏面側で縦地4に固定するとともに、当該横地5と、流れ抵抗材3の横接続金具1a,1b、若しくは補強金具1cとを、取付手段であるU字ボルトとナット、若しくは、番線等で固定する。
【0030】
前記横地5は、縦地4に横架させて取り付ける上下方向の取付位置が、流れ抵抗材3の上下方向における頂部から下位置にある。この一例では、
図11に示すように、流れ抵抗材3の上下方向の中央付近である。
【0031】
前記横地5の取付位置に関しては、当該横地5が構造耐力上の考慮から、金属製の単管パイプであるので、固定用の支持部材として騒音低減効果に及ぼす影響を確認した。
図10−C(A)に示すように、屋外において平坦なアスファルト面上に、音源と、図示する形状・大きさの仮囲いを設置した。また、測定点の位置もそれぞれ図示する。
【0032】
図10−C(B)に示すように、仮囲いの先端部に流れ抵抗材(1層の厚み0.8mm、高さ60mm、多孔質材、7層で層数を変化させるグラデーション付き)を取り付けて、仮囲いの内側と床面には多孔質吸音材(厚さ50mm)を敷設して行った。音源は仮囲いの中央で、地盤面から2mとして、12面体のスピーカを用意した。試験音は、ピンクノイズで測定状況によらず入力電圧を一定としている。
【0033】
測定条件における支持鋼管の上下方向の取付位置と径とは、
図10−C(B)に示すように、以下のようにした、
条件 支持鋼管(横地に相当) 設置高さ 径
1 なし − −
2 有り 頂部 48.6mm
3 有り 頂部−200mm 48.6mm
4 有り 頂部+200mm 48.6mm
5 有り 頂部 20.0mm
である。
【0034】
なお、
図10−C(C)に示すように、実験に用いた仮囲いの音響透過損失がエッジ効果抑制材(流れ抵抗材)を上回る一方、回折音場に対する騒音低減効果はエッジ効果抑制材を設置した場合の方が大きいことは、予め確認されている。そして、固定用の支持部材が騒音低減効果に及ぼす影響を確認した実験結果において、
図10−C(D)に示すように、125Hz〜1kHzでは、支持鋼管の設置位置による騒音低減効果の低下は見られない。しかし、2kHz以上の帯域では、条件3と条件5の相対音圧レベルがほぼ0(ゼロ)dBである一方、条件2と条件4との相対音圧レベルに明らかな上昇、すなわち騒音低減効果の低下が見られる。
【0035】
更に、条件2と条件5との相対音圧レベルを比較すると、径の小さい単管パイプ(条件5)の方が相対音圧レベルが低いので、騒音低減効果が高く好ましいものとなっている。 また、支持鋼管の取付位置は、頂部若しくは頂部より高い位置に設置すると、2kHz〜4kHzの騒音低減効果に明らかな低下が見られるので、実施の際は流れ抵抗材3の頂部よりも下位置に設置することにして、更に、構造耐力上で可能な限り径の細い横地5を使用することが望ましい。
【0036】
以上のように、流れ抵抗材の取付金具により、仮囲いや仮設の防音壁に流れ抵抗材3が強固に取り付けられて、仮設防音壁が構成されるものである。なお、本発明に係る取付金具は、仮設の仮囲いや防音壁に関するものであるが、これだけに限定されることなく、例えば、強度的に問題の無い常設の防音壁であれば、横接続金具1a,1bと下接続金具2とで流れ抵抗材3を保持して、常設の防音壁の頂部に下部接続金具2を差し込んで嵌合させるだけで、エッジ効果抑制材として使用することもできる。