特許第6054267号(P6054267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054267
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】3次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20161219BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20161219BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y30/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-166842(P2013-166842)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33827(P2015-33827A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文博
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101446(JP,A)
【文献】 特開平08−318574(JP,A)
【文献】 特開2008−128751(JP,A)
【文献】 特開2005−219400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の波長帯域の光と、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光とを同時に照射可能な光源と、
前記光源から照射された光を、前記第1の波長帯域の光を含みかつ前記第2の波長帯域の光を含まない第1の投射光と、前記第2の波長帯域の光を含みかつ前記第1の波長帯域の光を含まない第2の投射光とに分ける光学素子と、
前記光学素子により分けられた前記第1の投射光を受けて3次元造形を行う造形部と、
前記光学素子により分けられた前記第2の投射光を利用して対象物の3次元計測を行う計測部と、
を備えた3次元造形装置。
【請求項2】
前記光源はプロジェクタにより構成されている、請求項1に記載の3次元造形装置。
【請求項3】
前記計測部は、空間コード化法により対象物の3次元計測を行うように構成されている、請求項2に記載の3次元造形装置。
【請求項4】
前記光学素子はダイクロイックミラーにより構成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の3次元造形装置。
【請求項5】
前記光源および前記光学素子よりも上方に配置され、前記光学素子により分けられた前記第1の投射光を通過させる開口が形成された台を備え、
前記造形部は、
前記台の上に載置され、少なくとも一部が前記第1の投射光を透過させるように構成された底板を有し、前記第1の波長帯域の光を受けて硬化する光硬化性の液体の樹脂が溜められる槽と、
前記槽の上方に配置された昇降自在なホルダと、を備え、
前記計測部は、
前記台よりも下方に配置され、3次元計測の対象物が設置される設置台を備えている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の3次元造形装置。
【請求項6】
前記台の下方に配置され、前記光源と前記光学素子と前記設置台とを支持する底板を備え、
前記光源は、横向きに光を照射するように構成され、
前記光学素子は、前記底板に対して傾斜するように設置され、横向きの前記第1の投射光を上向きに反射し、横向きの前記第2の投射光を横向きに透過させるように構成されたダイクロイックミラーからなっている、請求項5に記載の3次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元計測が可能な3次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光硬化性樹脂に光を照射することにより3次元造形物を造形する3次元造形装置が知られている。また、光を照射することにより対象物の3次元計測が可能な3次元造形装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、3次元計測および3次元造形の処理用空間としてのチャンバーを備えた装置が開示されている。この装置では、チャンバー内で対象物を3次元計測し、その後、対象物をチャンバーから取り出し、そのチャンバー内で対象物と同形状の物を3次元造形する。特許文献2には、3次元計測用のチャンバーと3次元造形用のチャンバーとを別々に備えた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−101446号公報
【特許文献2】特開2012−213970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、3次元計測と3次元造形とを同時に開始することができない。例えば、3次元計測中は3次元造形をすることができないため、3次元計測が終了するまで待機して、3次元造形を開始しなければならなかった。特許文献2の装置では、3次元計測用の光源と3次元造形用の光源とがそれぞれ必要であった。そのため、部品点数が多くなるとともに装置が大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、3次元計測および3次元造形を迅速に行うことができ、かつ、部品点数が削減され、コンパクト化された3次元造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る3次元造形装置は、少なくとも第1の波長帯域の光と、前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光とを同時に照射可能な光源と、前記光源から照射された光を、前記第1の波長帯域の光を含みかつ前記第2の波長帯域の光を含まない第1の投射光と、前記第2の波長帯域の光を含みかつ前記第1の波長帯域の光を含まない第2の投射光とに分ける光学素子と、前記光学素子により分けられた前記第1の投射光を受けて3次元造形を行う造形部と、前記光学素子により分けられた前記第2の投射光を利用して対象物の3次元計測を行う計測部と、を備えている。
【0008】
前記3次元造形装置によれば、光学素子によって分けられた第1の投射光は、造形部による3次元造形に利用される。また、光学素子によって分けられた第2の投射光は、計測部によって対象物の3次元計測に利用される。よって、1つの光源を利用して、3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが可能である。したがって、3次元造形用の光源と3次元計測用の光源とがそれぞれ必要な従来の装置に比べて、部品点数を削減することができるとともに、装置をコンパクト化することができる。また、第1の投射光と第2の投射光とは互いに干渉しないので、3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが可能である。よって、3次元造形の終了を待たずに3次元計測を開始することができ、かつ、3次元計測の終了を待たずに3次元造形を開始することができる。したがって、3次元造形および3次元計測を迅速に行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記光源はプロジェクタにより構成されている。
【0010】
上記態様によれば、プロジェクタという安価かつ制御容易な光源を利用することにより、異なる波長帯域の光を容易に照射することができる。よって、1つの光源を利用して3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが安価かつ簡単に実現できる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記計測部は、空間コード化法により対象物の3次元計測を行うように構成されている。
【0012】
上記態様によれば、空間コード化法を利用することにより、対象物の3次元計測を行うことができる。
【0013】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記光学素子はダイクロイックミラーにより構成されている。
【0014】
上記態様によれば、ダイクロイックミラーを利用することにより、光源から照射された光を第1の投射光と第2の投射光とに容易に分けることができる。
【0015】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記光源および前記光学素子よりも上方に配置され、前記光学素子により分けられた前記第1の投射光を通過させる開口が形成された台を備えている。前記造形部は、前記台の上に載置され、少なくとも一部が前記第1の投射光を透過させるように構成された底板を有し、前記第1の波長帯域の光を受けて硬化する光硬化性の液体の樹脂が溜められる槽と、前記槽の上方に配置された昇降自在なホルダと、を備えている。前記計測部は、前記台よりも下方に配置され、3次元計測の対象物が設置される設置台を備えている。
【0016】
上記態様によれば、光源、光学素子、および計測部は台の下方に配置され、造形部は台の上方に配置されている。そのため、3次元造形装置の平面視面積を小さく抑えることができる。3次元造形装置を設置するために必要な面積が小さくて足りるため、3次元造形装置をコンパクトに設置することができる。
【0017】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記台の下方に配置され、前記光源と前記光学素子と前記設置台とを支持する底板を備えている。前記光源は、横向きに光を照射するように構成されている。前記光学素子は、前記底板に対して傾斜するように設置され、横向きの前記第1の投射光を上向きに反射し、横向きの前記第2の投射光を横向きに透過させるように構成されたダイクロイックミラーからなっている。
【0018】
上記態様によれば、よりコンパクトな3次元造形装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、3次元計測および3次元造形を迅速に行うことができ、かつ、部品点数が削減され、コンパクト化された3次元造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】3次元造形装置の縦断面図である。
図2】光源から照射される光の波長と光強度との関係を示した分光分布曲線図である。
図3】光源から照射される光を第1の投射光と第2の投射光とに分けた状態を示した図である。
図4】3次元造形装置の台の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る3次元造形装置について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る3次元造形装置1の断面図である。なお、以下の説明においては、図1の右、左をそれぞれ前、後とする。図1等において、符号F、Rr、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、3次元造形装置1の設置態様を何ら限定するものではない。3次元造形装置1は、3次元造形と3次元計測とが可能な装置である。図1に示すように、3次元造形装置1は、ケース11と、光源12と、ダイクロイックミラー13と、造形部14と、計測部15とを備えている。
【0023】
ケース11は、略直方体形状の容器である。ただし、ケース11の形状は何ら限定されない。本実施形態では、ケース11は、底板11aと前後左右の側板11bとを備えている。底板11aは略四角形状である。前、後、左、右の側板11bは、それぞれ底板11aの前端部、後端部、左端部、右端部から上方へ立ち上っている。
【0024】
光源12は、第1の波長帯域の光と、第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光とを照射可能なものである。本実施形態では、光源12はプロジェクタである。図2は、光源12から照射される光の波長と光強度との関係を示した分光分布曲線の一例である。図2において、横軸は波長であり、縦軸は光強度である。
【0025】
図2に示すように、光源12から照射される光は、第1の中心波長A’を有する第1の波長帯域Aの光と、第2の中心波長B’を有する第2の波長帯域Bの光とを含んでいる。第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとは、互いに異なっていればよく、それらの中心波長および波長帯域の大小は特に限定されない。第1の中心波長A’は第2の中心波長B’よりも短くてもよいし、第2の中心波長B’よりも長くてもよい。ここでは、第2の波長帯域Bは第1の波長帯域Aよりも狭いが、第2の波長帯域Bが第1の波長帯域Aよりも広くてもよい。また、ここでは第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとの間に、別の波長帯域Cが存在している。言い換えると、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとは、連続していない離れた帯域である。しかし、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとは、隣り合った帯域であってもよい。すなわち、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとは連続していてもよい。
【0026】
本実施形態では、図1に示すように、光源12はケース11に収容されている。具体的には、ケース11の底板11aの後部には、光源支持部材21が設けられている。光源12は光源支持部材21に取り付けられている。光源12は、底板11aの上方にて光源支持部材21によって支持されている。ただし、光源支持部材21の設置態様は何ら限定されない。光源支持部材21は、上方から(例えば、台11の下面から)吊り下げられていてもよい。光源12は、横向きに光Rを照射するように構成されている。ここでは光源12は、後方から前方へ向かって光Rを発する。ただし、光源12の照射方向は水平方向に限られず、前方に限られない。ダイクロイックミラー13等の位置が異なる他の実施形態では、光源12は光Rを鉛直上向きに照射するように構成されていてもよい。
【0027】
ダイクロイックミラー13は、光源12から照射される光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分ける光学素子の一例である。ただし、光源12から照射される光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分ける光学素子は、ダイクロイックミラー13に限定されない。図2に示すように、第1の投射光R1は、第1の波長帯域Aの光を含みかつ第2の波長帯域Bの光を含まない光である。第2の投射光R2は、第2の波長帯域Bの光を含みかつ第1の波長帯域Aの光を含まない光である。ダイクロイックミラー13は、第1の投射光R1を反射し、第2の投射光R2を透過するように構成されている。ただし、光源12の配置等が異なる他の実施形態では、ダイクロイックミラー13は、第1の投射光R1を透過し、第2の投射光R2を反射するように構成されていてもよい。
【0028】
図3は、ダイクロイックミラー13によって分けられた光の一例を示す図であり、光源12から照射された光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分けた状態を示した図である。この例では、光源12から照射される光Rには、第1の波長帯域Aのリング状の光と、第2の波長帯域Bの複数のスリット光とが含まれる。上述の通り、ダイクロイックミラー13は、第1の投射光R1を反射し、第2の投射光R2を透過するように構成されている。そのため、光源12からの光Rがダイクロイックミラー13に当てられると、第1の波長帯域Aのリング状の光はダイクロイックミラー13に反射され、第2の波長帯域Bのスリット光はダイクロイックミラー13を透過する。その結果、第1の波長帯域Aの光と第2の波長帯域Bの光とは分離される。
【0029】
図1に示すように、ダイクロイックミラー13は、ケース11内に収容されている。具体的には、ケース11の底板11aの中央部分であって、光源12の前方には、ミラー支持部材22が設けられている。ダイクロイックミラー13は、ミラー支持部材22に取り付けられている。ダイクロイックミラー13は、底板11aの上方にてミラー支持部材22によって支持されている。ただし、ミラー支持部材22の設置態様は何ら限定されない。ミラー支持部材22は、上方から(例えば、台11の下面から)吊り下げられていてもよい。ダイクロイックミラー13は、底板11aに対して傾斜するように配置されている。ここでは、ダイクロイックミラー13は、鏡面が後方斜め上に向かって傾斜するように配置されている。ダイクロイックミラー13によって反射された第1の投射光R1は、上方に向かって照射される。ダイクロイックミラー13を透過した第2の投射光R2は、前方に向かって照射される。なお、ダイクロイックミラー13の角度は自由に制御することができる。ダイクロイックミラー13の角度を制御することによって、反射する第1の投射光R1の向きを適宜変更することができる。
【0030】
造形部14は、ダイクロイックミラー13により分けられた第1の投射光R1を受けて3次元造形を行うものである。造形部14は、台31と、槽32と、ホルダ33とを備えている。
【0031】
図4は、3次元造形装置1の台31の平面図である。台31は、ケース11の底板11aの上方に配置されている。すなわち、台31は、光源12およびダイクロイックミラー13よりも上方に配置されている。ここでは、台31は、ケース11の前後左右の側板11bの上端に載置されている。台31は、ケース11の底板11aと同様に、略四角形状である。台31には、開口41が形成されている。図1に示すように、開口41は、ダイクロイックミラー13により分けられた第1の投射光R1を通過させる。開口41は、ダイクロイックミラー13の上方に位置する。開口41の形状は特に限定されない。本実施形態では、図4に示すように、開口41は、略四角形状に形成されている。
【0032】
槽32は、台31の上に載置されている。本実施形態では、槽32は、台31の開口41を覆うようにして台31の上に載置されている。槽32には、液体の光硬化性樹脂42が溜められている。光硬化性樹脂42とは、光を照射することによって硬化することが可能な樹脂のことである。
【0033】
槽32は、光硬化性樹脂42を硬化させる光を透過させることのできる材料、例えば透明な樹脂またはガラス等で形成されたものである。ここでは、槽32は透明なアクリル樹脂で形成されている。ただし、槽32は、少なくとも底板の一部が光を透過させるように構成されたものであってもよい。例えば、槽32の底板は光を透過させることのできる透明な材料で構成され、側板は不透明な材料で構成されていてもよい。本実施形態では、光硬化性樹脂42を硬化させる光として、第1の波長帯域Aの光が照射される。槽32は、少なくとも第1の波長帯域Aの光を透過させるものであればよい。なお、槽32の底板の表面には、光硬化性樹脂42が固着してしまうことを抑制する層が設けられているとよい。例えば、槽32の底板の表面には、シリコン層が設けられているとよい。
【0034】
ホルダ33は、第1の投射光R1が照射されて硬化した光硬化性樹脂42を引き上げる昇降自在な部材である。本実施形態では、台31の後部には、上下方向に延びた支柱43が設けられている。支柱43には、スライダ44が取り付けられている。スライダ44は、支柱43に沿って昇降自在であり、モータ(図示せず)によって上方または下方に駆動される。ここでは、ホルダ33は、昇降自在なスライダ44に取り付けられている。換言すると、ホルダ33は、上記モータによって上方または下方に駆動される。ホルダ33は、槽32の上方に配置されている。ホルダ33は、台31の開口41の上方に配置されている。
【0035】
計測部15は、ダイクロイックミラー13により分けられた第2の投射光R2を利用して、対象物Fの3次元計測を行うものである。計測部15は、台31よりも下方に配置されている。本実施形態では、計測部15は、ケース11に収容されている。計測部15は、設置台51と、背景板52と、カメラ53と、制御装置55とを備えている。
【0036】
設置台51は、ケース11の底板11aの上方に支持されている。詳しくは、設置台51は、底板11aの上方であって、ダイクロイックミラー13よりも前方に配置されている。設置台51には、3次元計測を行う対象物Fが設置されている。対象物Fには、ダイクロイックミラー13により分けられた第2の投射光R2が照射される。本実施形態では、設置台51は、回転可能なターンテーブルである。設置台51をターンテーブルとすることで、計測中に対象物Fを回転させることができ、対象物Fの全体を第2の投射光R2を利用して計測することができる。
【0037】
背景板52は、第2の投射光R2を利用して対象物Fを3次元計測する際、対象物Fの背景となるものである。背景板52は必ずしも必要ではないが、背景板52を設置することにより、3次元計測の精度を高めることができる。本実施形態では、背景板52は、ケース11内に収容されている。背景板52は、底板11aの上方であって、設置台51よりも前方に配置されている。背景板52は、底板11aから上方へ立ち上っている。ただし、背景板52の設置態様は何ら限定されない。背景板52は、上方から吊り下げられていてもよい。背景板52は、対象物Fを3次元計測し易い色が好ましい。ここでは、背景板52は白色である。ただし、背景板52の色は何ら限定されない。
【0038】
カメラ53は、第2の投射光R2が照射された対象物Fを撮影するものである。本実施形態では、カメラ53によって撮影された画像を利用して対象物Fの3次元計測を行う。カメラ53の設置位置は、対象物Fが撮影できれば特に限定されない。例えば、カメラ53は、ダイクロイックミラー13と設置台51との間に配置されていてもよい。
【0039】
制御装置55は、カメラ53で撮影された対象物Fの画像に基づいて、対象物Fの3次元計測を行う。また、制御装置55は、3次元計測に際して、対象物Fが設置された設置台51を動かすことで対象物Fの回転移動を制御する。本実施形態では、制御装置55は、光源12から発せられる光Rを制御する。制御装置55の構成は特に限定されない。例えば、制御装置55は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えていてもよい。
【0040】
計測部15が対象物Fの3次元計測を行う方法は特に限定されない。従来から公知の各種の計測方法を利用することができる。本実施形態では、計測部15は、空間コード化法により対象物Fの3次元計測を行うように構成されている。空間コード化法は従来公知の方法であるので、その詳しい説明は省略する。例えば、特開2011−133327号公報に開示された空間コード化法を利用して、対象物Fの3次元計測を行うことができる。制御装置55は、光源12から照射される第2の波長帯域Bの光の照射タイミング、および、照射される光の形状などを適宜制御する。また、制御装置55は、カメラ53によって撮影される、第2の投射光R2が照射された対象物Fの画像に基づいて、空間コード化法によって対象物Fの3次元計測を行う。
【0041】
本実施形態の3次元造形装置1では、光源12から照射された光Rがダイクロイックミラー13により第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分離されるので、3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが可能である。すなわち、光源12から照射された光Rのうち、第1の波長帯域Aの光を含む第1の投射光R1は、ダイクロイックミラー13に反射される。反射後の第1の投射光R1は、台31の開口41を通過する。開口41を通過した第1の投射光R1は、槽32の底板を透過し、槽32内に溜められた光硬化性樹脂42に照射される。本実施形態の光硬化性樹脂42は第1の波長帯域Aの光を受けると硬化するので、第1の投射光R1を受けた光硬化性樹脂42は硬化する。ダイクロイックミラー13の角度が適宜変更されることにより、光の照射位置が適宜変更され、光硬化性樹脂42によって、所望の断面形状を有する固体の樹脂の層が形成される。
【0042】
上記層が形成されると、ホルダ33を昇降自在に動かすモータ(図示せず)が駆動され、ホルダ33は上方に移動する。このとき、ホルダ33に保持された固体の樹脂層は引き上げられ、その樹脂層と槽32との間に隙間が形成される。この隙間に液体の光硬化性樹脂42が流れ込む。そして、第1の投射光R1が上記隙間内の光硬化性樹脂42に照射され、所望の断面形状を有する次の固体樹脂層が形成される。以後、同様の動作が繰り返され、所望の3次元形状を有する物体が生成される。
【0043】
また、光源12から照射された光Rのうち、第2の波長帯域Bの光を含む第2の投射光R2は、ダイクロイックミラー13を透過する。ダイクロイックミラー13を透過した第2の投射光R2は、対象物Fに照射される。そして、第2の投射光R2が照射された対象物Fは、カメラ53により撮影される。制御装置55は、カメラ53によって撮影された画像を利用して、空間コード化法により対象物Fの3次元計測を行う。そして、計測後、制御装置55は、光源12から発せられる光Rを適宜制御するとともに、設置台51を制御して対象物Fを適宜回転させる。以後、同様の動作が繰り返され、対象物Fの3次元計測が完了する。
【0044】
以上のように、本実施形態では、図3に示すように、ダイクロイックミラー13によって、光源12から照射された光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分けている。そして、図1に示すように、造形部14は、ダイクロイックミラー13により分けられた第1の投射光R1を受けて3次元造形を行う。計測部15は、ダイクロイックミラー13により分けられた第2の投射光R2を利用して対象物Fの3次元計測を行う。
【0045】
本実施形態によれば、1つの光源12を利用して、3次元造形と3次元計測とを行うことが可能である。3次元造形用の光源と3次元計測用の光源とを別々に備える必要はない。そのため、3次元造形用の光源と3次元計測用の光源とがそれぞれ必要な従来の装置に比べて、部品点数を削減することができるとともに、装置をコンパクト化することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、造形部14はケース11の外部に配置され、計測部15はケース11の内部に配置されている。造形部14と計測部15とは、別々の場所に設けられている。更に、第1の投射光R1と第2の投射光R2とは、光源12から同時に照射可能である。また、第1の投射光R1と第2の投射光R2とは、波長帯域が異なるため互いに干渉することはない。したがって、本実施形態に係る3次元造形装置1によれば、3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが可能である。よって、3次元造形の終了を待たずに3次元計測を開始することができ、かつ、3次元計測の終了を待たずに3次元造形を開始することができる。したがって、本実施形態によれば、3次元造形および3次元計測を迅速に行うことができる。
【0047】
本実施形態では、光源12はプロジェクタにより構成されている。プロジェクタを利用することにより、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとを含む光を照射する光源を安価に実現することができる。また、第1の波長帯域Aの光の照射と第2の波長帯域Bの光の照射とを簡単に制御することができる。よって、1つの光源12を利用して3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが安価かつ簡単に実現できる。
【0048】
本実施形態では、計測部15は、空間コード化法により対象物Fの3次元計測を行うように構成されている。よって、ダイクロイックミラー13により分離された第2の投射光R2を用いて、対象物Fの3次元形状を正確に計測することができる。
【0049】
前述のように、光源12から照射された光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分ける光学素子は、ダイクロイックミラー13に限定されない。しかし、本実施形態では、上記光学素子はダイクロイックミラー13により構成されている。このように、ダイクロイックミラーを利用することにより、安価かつ簡単な構成に基づいて、光源12から照射された光Rを第1の投射光R1と第2の投射光R2とに分けることができる。よって、1つの光源12を利用して3次元造形と3次元計測とを同時に行うことが簡単に実現できる。
【0050】
本実施形態では、光源12、ダイクロイックミラー13、および計測部15は、台31の下方に配置され、造形部14は台31の上方に配置されている。このように、光源12、ダイクロイックミラー13、および計測部15と、造形部14とを上下に配置することにより、3次元造形装置1の平面視面積を小さく抑えることができる。そのため、3次元造形装置1の設置に要する面積が小さくなり、3次元造形装置1をコンパクトに設置することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ケース11の底板11aの上方にて光源12を支持する光源支持部材21と、底板11aの上方に支持され、対象物Fが設置される設置台51と、底板11aの上方かつ光源12と設置台51との間にダイクロイックミラー13を支持するミラー支持部材22とを備えている。底板11aは台31の下方に配置され、光源12とダイクロイックミラー13と設置台51とを支持している。なお、ここでいう支持とは、他の部材を介さずに直接支持する場合と、上記光源支持部材21等の他の部材を介して間接的に支持する場合との両方を含む意味で用いている。光源12は、横向きに光Rを照射するように構成されている。ダイクロイックミラー13は、底板11aに対して傾斜するように設置され、横向きの第1の投射光R1を上向きに反射し、横向きの第2の投射光R2を横向きに透過させるように構成されている。このような構成により、3次元計測と3次元造形とを同時に行うことが可能な3次元造形装置1をよりコンパクトにすることができる。
【0052】
以上述べたように、3次元造形装置1は、3次元計測および3次元造形の両方を行うことができるが、3次元計測のみを行ってもよく、3次元造形のみを行ってもよいことは勿論である。3次元造形装置1は、設置台51の上に載置された対象物Fを3次元計測し、造形部14において、その対象物Fと同じ形状の造形物を造形してもよい。すなわち、いわゆる3Dコピーを行ってもよい。3次元造形装置1は、3Dコピー機として好適に利用することができる。3次元造形装置1によれば、光源12は1つであるが、計測部15と造形部14とは別々の箇所に配置されているので、対象物Fを取り出すことなく3次元造形を行うことができる。言い換えると、設置台51の上に対象物Fを置いたまま、3次元造形を行うことができる。ただし、計測部15で計測する対象物Fと異なる形状の物を造形部14で造形することも可能である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することが可能である。
【0054】
上記実施形態では、光源12はダイクロイックミラー13の側方(後方)に配置されている。光源12は光Rを横向きに照射し、ダイクロイックミラー13は、第1の投射光R1を上向きに反射し、第2の投射光R2を横向きに透過させるように構成されている。しかし、光源12をダイクロイックミラー13の下方に配置することも可能である。光源12は光Rを上向きに照射し、ダイクロイックミラー13は、下方からの第1の投射光R1を上向きに透過させ、下方からの第2の投射光R2を横向きに反射するように構成されていてもよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。その他、光源12、ダイクロイックミラー13等の光学素子、造形部14、および計測部15の配置について、種々の変更が可能である。
【0055】
光学素子はダイクロイックミラー13に限定されず、例えば、ダイクロイックプリズム等の他の光学素子であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 3次元造形装置
11 ケース
12 光源
13 ダイクロイックミラー(光学素子)
14 造形部
15 計測部
31 台
32 槽
33 ホルダ
41 開口
F 対象物
R1 第1の投射光
R2 第2の投射光
図1
図2
図3
図4