(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054269
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置及びこれを用いた冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 41/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
F25B41/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-177471(P2013-177471)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45467(P2015-45467A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 研
(72)【発明者】
【氏名】八田 博史
(72)【発明者】
【氏名】佐野 信浩
(72)【発明者】
【氏名】西尻 直樹
【審査官】
横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−286488(JP,A)
【文献】
特開2010−270938(JP,A)
【文献】
特開2003−042598(JP,A)
【文献】
特開2006−349238(JP,A)
【文献】
特開2001−050611(JP,A)
【文献】
特開平08−068575(JP,A)
【文献】
特開2010−190523(JP,A)
【文献】
特開2001−235257(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0300134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁で減圧された気液冷媒を混合する気液混合器と、前記気液混合器で混合された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、
前記気液混合器は、混合器外径部と、前記混合器外径部内の流路断面全体に形成され流れ方向に沿った複数の冷媒流路とを有し、
前記複数の冷媒流路は、流れ方向に沿った複数の穴が点対称に配置されて構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁で減圧された気液冷媒を混合する気液混合器と、前記気液混合器で混合された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、
前記気液混合器は、混合器外径部と、前記混合器外径部内の流路断面全体に形成され流れ方向に沿った複数の冷媒流路とを有し、
前記複数の冷媒流路は、前記混合器外径部内に配置された十字状の障害物により形成された点対称の4つの冷媒流路により構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、前記複数の冷媒流路は、異なる大きさの穴が点対称に配置されて構成されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の冷凍サイクル装置において、前記膨張弁の上流側で並列に形成された複数の冷媒流路を有し、前記複数の冷媒流路のそれぞれに前記膨張弁が配置され、前記膨張弁の下流側で前記複数の冷媒流路が合流し、合流した前記冷媒流路に前記気液混合器が配置される冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1乃至4何れか一項に記載の冷凍サイクル装置を備えた冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置及びこれを用いた冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、性能向上の一環として、蒸発器の蒸発性能を高めるために、複数の伝熱面への冷媒分配を均一化する手段を講じてきた。また、膨張弁の形状による膨張弁出口の方向性により、蒸発器に至るまでに配管ルートに曲がり部が必要となる場合があり、この曲がり部によって密度差から気液が分離されるため、曲がり部から蒸発器までの直管部の長さについて配慮が必要な場合があった。
【0003】
これに対して、
図4に示すように、各伝熱面に冷媒が分配されるように各伝熱面の入口(膨張弁と蒸発器の間)に分配を促進するための部品(例えばオリフィス)を配置して、気液の混合を促進するものがある。
【0004】
このような従来技術では、圧損により冷媒を減圧気化させて、複数の各伝熱面への冷媒分配を均一化する。従って、圧損を増大させる部品により冷媒の流れにおいて1次側にある膨張弁は、本来必要とする減圧膨張量よりも抑える必要があり、そのため弁のサイズを大きくする必要がある。
【0005】
近年では、より実質に則した省エネ性の評価として、使用頻度の高い状況となる部分負荷に重きを置いた期間効率の考え方があり、仕様点から部分負荷にかけて効率を上げるために蒸発温度を上げる手段が必要となる。このために従来では、部分負荷で仕様点と比べて伝熱面積が余剰となることにより、冷媒の分配が悪化していた点を改善する必要がある。
【0006】
また、性能向上のための手段として、蒸発温度を上げるために、蒸発器の伝熱面を増やす傾向にあるが、この場合も同様に、増やした伝熱面を充分に活用するために冷媒の分配に関する配慮が必要となる。
【0007】
効率向上のために蒸発温度を上げる手段として伝熱面を増やす一方で、冷媒の分配が悪化することで伝熱面を増やした効果が充分には得られず、従来の分配では伝熱面積を有効に活用できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3879032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、蒸発器に入る前の冷媒について気液混合を促進することにより、蒸発器伝熱面に均質な冷媒を供給して蒸発器伝熱面を有効に活用し、冷凍サイクル装置の効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧された気液冷媒を混合する気液混合器と、
前記気液混合器で混合された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え
、前記気液混合器は、混合器外径部と、前記混合器外径部内の流路断面全体に形成され流れ方向に沿った複数の冷媒流路とを有し、前記複数の冷媒流路は、流れ方向に沿った複数の穴が点対称に配置されて構成されていることを特徴とする。
本発明の冷凍サイクル装置の他の特徴は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁で減圧された気液冷媒を混合する気液混合器と、前記気液混合器で混合された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、前記気液混合器は、混合器外径部と、前記混合器外径部内の流路断面全体に形成され流れ方向に沿った複数の冷媒流路とを有し、前記複数の冷媒流路は、前記混合器外径部内に配置された十字状の障害物により形成された点対称の4つの冷媒流路により構成されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷凍サイクル装置においては、膨張弁と蒸発器との間に膨張弁で減圧された気相及び液相の冷媒を混合する気液混合器を備えるので、蒸発器に入る前の冷媒について気液混合を促進することにより、蒸発器伝熱面に均質な冷媒を供給して蒸発器伝熱面を有効に活用し、冷凍サイクル装置の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施例の冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、膨張弁で減圧された気相及び液相の冷媒を混合する気液混合器と、気液混合器で混合された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備える。本実施例の冷凍サイクル装置においては、膨張弁と蒸発器との間に膨張弁で減圧された気液冷媒を混合する気液混合器を備えるので、蒸発器に入る前の冷媒について気液混合を促進することにより、蒸発器伝熱面に均質な冷媒を供給して蒸発器伝熱面を有効に活用し、冷凍サイクル装置の効率を向上させることができる。
【0014】
つまり、気液混合器は、仕様点から部分負荷にかけて蒸発器に入る前の冷媒について気液の混合を促進し、蒸発器伝熱面に均質な冷媒を供給することで、伝熱面を偏り無く有効活用することができる。また、部分負荷時に、従来では冷媒供給の偏りにより活用できなかった伝熱面を、蒸発器伝熱面に均質な冷媒を供給することで、充分に活用して部分負荷時の効率を向上させることができる。また、本実施例の混合器は、冷媒流路上に大きな圧損にならない程度の流路内断面形状の変化を付けることで流れを乱して気液の混合を促進するため、減圧膨張による混合促進方法と比べて、膨張弁のサイズを大きくする必要がないのでコスト削減を図ることができる。
【0015】
本発明を用いる冷凍サイクルについて
図5を用いて説明する。本実施例では、圧縮式冷凍機を例にして説明する。一般的な圧縮式冷凍機は、冷媒の蒸発を用いて冷水15を作る蒸発器6、蒸発した冷媒を圧縮する圧縮機7、冷媒を凝縮する凝縮器8、凝縮した冷媒を蒸発器に戻すために圧力を減圧する膨張弁9によって構成される。蒸発器としては、プレート熱交換器や乾式シェルアンドチューブ式を用いることができる。
【0016】
冷媒の流れは以下の通りである。まず、蒸発器6で冷水15の熱を奪い気化した冷媒10は、圧縮機7に吸込まれて圧縮される。圧縮された冷媒11は、凝縮器8に流入し冷却水16によって冷却されて凝縮する。液化した冷媒12は、膨張弁9を経て減圧された冷媒13となり、蒸発器6に戻る。このようにして冷媒が循環して冷凍サイクルが構成される。
【0017】
本実施の圧縮機冷凍機では、冷凍サイクルを構成する膨張弁9と蒸発器6の間に気液混合器1を配置する。気液混合器1により、蒸発器に入る前の冷媒について気液混合を促進することで、均質流を形成して伝熱面への冷媒分配を良好にすることができ、その結果、蒸発圧力の上昇により性能向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第1の実施例について
図1を用いて説明する。混合器1は、膨張弁9から蒸発器6に繋がる冷媒流路中に設置される。また、膨張弁9から蒸発器6にかけて曲がり部が存在する場合は、蒸発器6入口につながる直線配管上に配置する。膨張弁9から蒸発器6に繋がる冷媒流路にフランジ継ぎ手部を設け、混合器1をフランジに挟み込むか又はフランジと一体化することで、混合器1を設置する。
【0019】
混合器1の冷媒流路内断面形状を
図3に示す。流路内に多孔混合器を配置することで流れを乱し、密度差によって分離した冷媒の気相と液相が混合される。
図3に示す多孔混合器は、流れ方向に沿った複数の穴が空いたもの又は網状のものである。これらの形状は、流路断面において対称な形状を有するので、流路断面全域において偏りなく気液冷媒が攪拌混合される。
【0020】
図3(A)では、異なる大きさの穴(流路)が流路断面全体に対称(点対称)に配置される。流路径が違うこと及びこれらの流路が対象に配置されることにより、流路断面全体により大きな攪拌効果を得ることができる。
【0021】
図3(B)では、同様の流路が流路断面全体に点対称に配置される。具体的には、十字状の障害物を配置し、この十字状障害物と混合器外径部との間に4つの流路を形成する。流路断面を対称に4分割することにより、流路断面積を確保しつつ、分割部位において、流れを乱すことで攪拌効果を得ることができる。
【0022】
図3(C)では、メッシュ状の混合器網部により流路全体を細分化する。流路全体を細分化することにより、密度差によって起こる偏流を整流化することができる。
【0023】
尚、これら
図3(A)-(B)に記載の分配器を直列に複数設置することで、より大きな攪拌混合効果を得ることも可能である。
【0024】
本実施例によれば、蒸発器に入る前の冷媒について気液混合を促進することで均質流を形成し、蒸発器の伝熱面を有効活用し、簡易な構造でサイクルの効率を向上させることができる。
【0025】
本発明の第2の実施例について
図2を用いて説明する。膨張弁9を複数(本実施例では2個)用いて蒸発器6に接続する場合の実施例である。膨張弁9の上流側で冷媒流路が並列に複数分割され、分割されたそれぞれの冷媒流路に膨張弁9が配置される。膨張弁9の下流側で、これら複数の冷媒流路が合流した後、気液混合器1に合流する。冷媒は、気液混合器1で気液混合が促進された後、蒸発器6に流入する。冷媒流路の合流により偏った流れが形成されても気液混合器1により、気液混合を促進することで、蒸発器の伝熱面を有効活用し、簡易な構造でサイクルの効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…混合器
2…混合器外径部
3…混合器多孔部
4…混合器網部
5…オリフィス
6…蒸発器
7…圧縮機
8…凝縮器
9…膨張弁
10…気化冷媒
11…圧縮冷媒
12…液化冷媒
13…減圧冷媒
14…気液混合促進後冷媒
15…冷水
16…冷却水