【実施例】
【0024】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。特に断りの無い限りまたは文脈から明らかでない限り、百分率は重量によるものである。実施例において用いられるセルロースは100℃において2時間真空乾燥したものである。トリエチルアミンおよびアセトニトリルを標準的な方法により精製および乾燥させた。ヒドロキシド担持強塩基イオン交換樹脂(PuroliteからのSGA550OH)を使用前にメタノールで繰り返し洗浄した。
【0025】
測定方法:
NMRスペクトルは、CDCl
3中への試料の溶解ならびにBruker Avance250および400MHzの分光計(
1HNMRスペクトルに対しそれぞれ16スキャン)または63もしくは101MHzの分光計(
13CNMRスペクトルに対し1024スキャンまで)における測定により記録された。
【0026】
元素分析はCHNS932分析器(Leco)によって実施した。強吸湿性の試料を過塩素酸塩の形態で測定した。前記テトラアルキル塩化アンモニウムまたはテトラアルキル臭化アンモニウム塩の融点は標準的な方法により測定した。試料を小さなガラス製のチューブに導入し、乾燥機内において減圧条件下、24時間、五酸化リン上で乾燥させた。次いで、ガラス製のチューブを封止し、ビュッヒ融点測定装置B−545内で融点を測定した。
【0027】
合成は、マイクロ波照射の下、開閉式反応槽を使用するCEM Mars5により行った。反応混合物を15分間選択した温度まで加熱し、200Wの出力のマイクロ波を適用すると同時にこの温度で望ましい反応時間の間維持させた。
【0028】
溶媒およびポリマー溶液(1wt%溶液)上における粘度測定は、20℃において、Haake−MarsIIコーンプレートレオメーターにより行った。剪断速度は1〜1000s
−1まで変化した。個々の測定は、5分間の間の剪断速度の増減サイクルにおいて行われ、再現性を確保し、チクソ性の有無を確認した。低粘度のシリコンオイル(η
20 ℃=9.5mPas)の薄いフィルムを測定セルの縁に設置し、さらに窒素不活性化溶媒トラップ(nitrogen-inertized solvent trap)を用いて吸湿を防いだ。
【0029】
実施例1 トリエチルオクチル臭化アンモニウム(TEC
8Br)−典型的方法
方法A:
100mlフラスコを窒素でパージし、8.84g(0.087mol)のトリエチルアミン、20.33g(0.105mol)の1−ブロモオクタンおよび31.04gのアセトニトリルをフラスコ中へ導入した。
【0030】
混合物を48時間、80℃において保護窒素ガス(protective nitrogen gas)下で攪拌した。次いで、揮発性物質を減圧条件下で取り除いた。組生成物を酢酸エチル/アセトン混合物から結晶化し、18.55g(0.063mol)のトリエチルオクチル臭化アンモニウム(吸湿性白色結晶)を得た。トリエチルアミンに対する収率は72%であった。
【0031】
方法B:
窒素でパージした500mLフラスコを21.84g(0.216mol)のトリエチルアミン、49.85g(0.258mol)のブロモオクタンおよび74.60gのアセトニトリルで満たした。混合物を15分間、電子レンジで80℃まで加熱し、次いで80℃、200Wのマイクロ波出力において、6時間以上攪拌した。次いで、反応混合物の揮発性成分を減圧条件下で取り除き、酢酸エチル/アセトンの混合物から残査を結晶化した。これは55.60g(0.190mol)のトリエチルオクチル臭化アンモニウムを含んでいた。トリエチルアミンに対する収率は88%であった。
【0032】
1HNMR (300MHz; CDCl
3 as solvent; -scale; t = triplet, q = quadruplet, m = multiplet): 3.53 (q, 6H, ethyl-NCH
2-), 3.29 (t, 2H, octyl-NCH
2-), 1.39 (t, 9H, ethyl-CH
3), 1.27 (m, 10H, octyl-CH
2-), 0.88 (t, 3H, octyl-CH
3);
13CNMR (62.5MHz; CDCl
3 as solvent; -scale): 57.5 (C1), 53.5 (C1´), 31.6 (C6), 29.1, 29.0 (C4, C5), 26.5 (C3), 22.6 (C7), 22.1 (C2), 14.1 (C8), 8.1 (C2´)
元素分析:
C
14H
32ClNO
4についての計算値:C:53.57%、H:10.28%、N:4.46%;
実測値:C:53.76%、H:10.14%、N:4.33%
融点:107℃
【0033】
トリエチルオクチル塩化アンモニウム(TEC
8Cl)の合成−典型的方法
方法A:
窒素でパージした500mLフラスコを28.96g(0.286mol)のトリエチルアミン、55.23g(0.371mol)の1−クロロオクタンおよび78.11gのアセトニトリルで満たした。混合物を96時間、窒素下、80℃において攪拌した。次いで、反応混合物の揮発性成分を減圧条件下で取り除き、残査をヘプタンおよび酢酸エチルで洗浄し、10.34g(0.069mol)のトリエチルオクチル塩化アンモニウム(吸湿性の白色塩)を得た。トリエチルアミンに対する収率は24%であった。
【0034】
トリエチルプロピル塩化アンモニウム〜トリエチルへプチル塩化アンモニウム(TEC
3Cl,TEC
4Cl,TEC
5Cl,TEC
6ClおよびTEC
7Cl)は同じような方法で調製した。
【0035】
方法B:
マグネチックスターラー(magnetic stirrer)および圧力計に適したステンレス鋼オートクレーブを窒素でパージし、次いで、36.13g(0.357mol)のトリエチルアミン、46.28g(0.311mol)の1−クロロオクタンおよび81.40gのアセトニトリルで満たした。オートクレーブを封止し、25barの窒素で加圧した。次いで、オートクレーブ中の混合物を80℃まで加熱し、48時間攪拌した。その後、超大気圧を開放し、反応混合物の揮発性成分を減圧条件下において取り除いた。粗生成物をヘプタンおよび酢酸エチルで連続的に洗浄し、8.30g(0.033mol)のトリエチルオクチル塩化アンモニウム(吸湿性の白色塩)を得た。1−クロロオクタンに対する収率は11%であった。
【0036】
方法C:
480mlのメタノール(=0.1モル溶液)中の14.11g(0.048mol)のトリエチルオクチル臭化アンモニウムの溶液を、強塩基性アニオン交換樹脂で包んだイオン交換カラムに適用し、メタノールで溶出した。溶出液を希塩酸で中和し、溶媒を取り除き、11.92g(0.048mol)のトリエチルオクチル塩化アンモニウム(吸湿性の白色塩)を残させた。収率は99%であった。
【0037】
1HNMR (250MHz; CDCl
3 as solvent; -scale): 3.48 (q, 6H, ethyl-N-CH
2-), 3.22 (t; 2H, octyl-N-CH
2-), 1.68 (m, 2H, octyl-CH
2-), 1.38 (t, 9H, ethyl-CH
3), 1.26 (m, 10H, octyl-CH
2-), 0.68 (t, 3H, octyl-CH
3);
13CNMR (62.5MHz; CDCl
3 as solvent; -scale): 57.4 (C1), 53.4 (C1´), 31.6 (C6), 29.1, 29.0 (C4, C5), 26.5 (C3), 22.5 (C7), 22.0 (C2), 14.0 (C8), 8.0 (C2´).
元素分析:
C
14H
32ClNO
4についての計算値:C:53.57%、H:10.28%、N:4.46%;
実測値:C:53.47%、H:10.31%、N:4.44%
融点:81℃
【0038】
トリエチルオクチル酢酸アンモニウム(TEC
8Ac)の合成−典型的方法:
1Lのメタノール(=0.1モル溶液)中の29.35g(0.1mol)のトリエチルオクチル臭化アンモニウム溶液を強塩基性アニオン交換樹脂で包んだイオン交換カラムに適用し、メタノールで溶出した。溶出液を酢酸で中和し、溶媒を取り除き、26.60g(0.097mol)のトリエチルオクチル酢酸アンモニウム(吸湿性の黄色液体)を残させた。収率は97%であった。
【0039】
1HNMR (250MHz; CDCl
3 as solvent; -scale): 3.34 (q, 6H, ethyl-N-CH
2-), 3.11 (t; 2H, octyl-N-CH
2-), 1.86 (s, 3H, acetat-CH
3-), 1.56 (m, 2H, octyl-CH
2-), 1.25 (t, 9H, ethyl-CH
3), 1.17 (m, 10H, octyl-CH
2-), 0.77 (t, 3H, octyl-CH
3);
13CNMR (62.5MHz; CDCl
3 as solvent; -scale): 176.0 (C=O), 57.1 (C1), 53.0 (C1´), 31.5 (C6), 29.0, 28.9 (C4, C5), 26.3 (C3), 24.1 (C7), 22.4 (C2), 21.3 (acetat-CH
3), 13.9 (C8), 7.6 (C2´).
元素分析:
C
14H
32ClNO
4についての計算値:C:53.57%、H:10.28%、N:4.46%;
実測値:C:53.50%、H:10.33%、N:4.41%
融点:常温において液体
【0040】
さらに、トリエチルアルキル塩化アンモニウムおよびトリエチルアルキル臭化アンモニウムの融点、トリエチルオクチル塩化アンモニウム(TMC
8Cl)、トリプロピルオクチル塩化アンモニウムおよびトリプロピルオクチル臭化アンモニウム(それぞれTMC
8ClおよびTMC
8Br)ならびにトリブチルオクチル塩化アンモニウムおよびトリブチルオクチル臭化アンモニウム(それぞれTBC
8ClおよびTBC
8Br)の融点、また溶液の総重量に対する、塩中のセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC;MS(HE)=1.97;SE Tylose GmbHからのH27NG4)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC;MS(HP)=1.16)の溶解度(wt%)は下の表1に表す。
【表1】
【0041】
実施例2 有機溶媒を添加しないセルロース溶液の調製−典型的方法:
窒素でパージした50mlフラスコ内において、4.5gのTEC
8Clを120℃に加熱した。融成物を0.5gのセルロースと混合し、この温度で30分間機械的に攪拌し、半透明の溶液を得た。
【0042】
実施例3 有機溶媒の添加を伴うセルロース溶液の調製−典型的方法:
方法A:
窒素でパージした50mlフラスコを5.10gのTEC
8Cl、0.56gのセルロースおよび1.86gのN,N−ジメチルアセトアミドで満たした。混合物を60℃で2時間機械的に攪拌し、透明な溶液を得た。
【0043】
方法B:
窒素でパージした50mlフラスコを4.5gのTEC
8Cl、0.5gのセルロースおよび5gのアセトンで満たした。混合物を60℃で3時間機械的に攪拌し、半透明な溶液を得た。
【0044】
実施例4 有機溶媒の添加を伴うセルロースエーテル溶液の調製−典型的方法:
窒素でパージした50mlフラスコを2.27gのTEC
8Cl、0.11gのヒドロキシエチルセルロース(MS(HE)=1.97;SE Tylose GmbHからのH27NG4)および2.51gのアセトンで満たした。混合物を50℃で3時間機械的に攪拌し、透明な溶液を得た。
【0045】
実施例5 有機溶媒の添加を伴うセルロース溶液からのセルロースの再生−典型的方法:
アセトンを実施例3の方法Bで得られた溶液に徐々に滴下し、温度を60℃までに調節した。7.5gのアセトンを加えた後、セルロースは沈殿し始めた。沈殿は総量で20gのアセトンが加えられた時に完了する。続いて、減圧条件下、20gのアセトンを取り除くことによって、半透明のセルロース溶液を再度得ることができた。
【0046】
表2は、測定温度20℃における、様々な溶媒および溶媒混合物の粘度ならびにこれら溶媒/溶媒混合物中の1wt%セルロース/ヒドロキシエチルセルロース溶液の粘度についての下記一覧を与える。
【表2】
【0047】
実施例6 トリエチルオクチル塩化アンモニウム中のトシルセルロースの合成:
窒素でパージした50mlのフラスコにおいて、2.01gのTEC
8Clを120℃まで加熱した。融成物を0.25gのセルロースと混合し、この温度において30分間機械的に攪拌し、半透明の溶液を得た。室温まで冷却した後、1.3mlのピリジン中の0.75gの4−塩化トルエンスルホニルを徐々に滴下し、室温で24時間攪拌した。反応溶液は200mlの冷水中に沈殿した。沈殿物を100mlの水および100mlのエタノールで3回洗浄し、次いでジエチルスルホキシド/イソプロパノールから再沈殿させた。60℃、減圧条件下で3日間の乾燥により、0.37gのトシルセルロース(98%、DS
S=0.5、DS
Cl=0.2)が残った。
元素分析:
実測値:C:46.58%、H:4.91%、N:0.00%、S:6.63%、Cl:3.22%