(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、特有の性質で知られている。例えば、強度はスチールの約100倍であり、熱伝導率はダイヤモンドにほぼ匹敵するほど高く、熱安定性は真空中2800℃にまで及び、導電率は銅の数倍であり得る。しかしながら、これらの構造に関連する特徴は、カーボンナノチューブを均一に分布させることができ、チューブと媒体を最大限接触させることができる(即ち、チューブを媒体と混合でき、従って、安定に分散させることができる)場合にしか、分子レベルで得ることはできない。導電性に関しては更に、チューブが末端部のみで理想的に接触してまたは十分に接近してチューブの網目が形成されていなければならない。従って、カーボンナノチューブは、可能な限り分離した状態で、即ち凝集せずに、整列せずに、そのような網目が形成される濃度で存在しなければならない。これは、カーボンナノチューブ濃度に依存した導電率の急上昇(パーコレーション限界)に反映される。導電性分散体を直接使用する例は、導電性インキである(例えばEP−A 1514280参照)。カーボンナノチューブの良好な分散および分離は、組成物、例えばエポキシドのような反応性樹脂において改良された物理的性質を得るためにも必要とされる。なぜなら、より大きい凝集物は破損部の原因となり(Zhou, eXPRESS Polym. Lett. 2008, 2, 1, 40-48)、その結果、そのような組成物の物理的性質が損なわれる傾向が見られるからである。
【0003】
従って、産業上の応用例にとって、CNTを液状ビヒクルに配合することは、関心の的となっており、また、必要とされている。調製後、CNTは一次凝集物状で存在する。数ミリメートルまでの大きさを有し得るこの一次凝集物は、そのままでは産業用途に適していない。実際、CNTが分離した状態で存在し、安定な分散体を生成でき、例えば薄層状で処理表面に適用できるように、一次凝集物をばらばらにしなければならない。分離したCNTは、望ましい特性、例えば導電性を得るためにも必要とされる。
【0004】
従って、カーボンナノチューブを使用することによって例えば物質を導電性にしたい、および/または物理的に改良したい場合は、カーボンナノチューブの安定な分散体を成功裏に製造するために、カーボンナノチューブ凝集物を完全にばらばらに分離すること、カーボンナノチューブの高い再凝集傾向を抑制することが重要である。そのような分散体は、使用分野に応じて様々な特性を有さなければならない。例えば、インクジェット印刷法におけるインキの使用にとっては、ノズルが閉塞しない程度に、残留凝集物寸法が十分小さいことが望ましい。スクリーン印刷法についても、大きすぎる凝集物はスクリーン上にブリッジを形成し、従って閉塞をもたらすことがあるので、同じことがいえる。
【0005】
しかしながら同時に、例えば導電性インキの場合に、印刷工程の効率を可能な限り上げるために、分散体においてCNTを高濃度にすることも望まれる。これには2つの理由が存在する:一段階で達成することができる湿潤層厚さは、典型的な印刷工程では制限される。一段階印刷工程で適用できるCNT量、従って達成できる単位面積あたりの導電率は、分散体中のCNT濃度に比例する。特定の表面導電性が要求される場合、その要求および印刷方法に応じて、複数の印刷工程が必要となる場合がある。これによって、費用は増大し、印刷構造物の精度に問題が生じることがある。最終生成物において適当な濃度を得ることも可能となるように、CNT含有出発物質にとって、高濃度であることが望ましい。
【0006】
また、CNT分散体が少なくとも6ヶ月にわたって粒子沈降について安定であることが、産業用途にとって重要である。産業的応用例では、トン規模に達する大量の分散体の製造が必要とされる。そのような大量生産は、先行技術文献には記載されていない。
【0007】
CNT含有分散体は、様々な既知の方法によって製造することができる。当業者に知られている方法は、例えば、“Dispersion of Carbon Nanotubes in Liquids”, Journal of Dispersion Science and Technology, 第24巻、第1号、2003年1月、第1〜41頁に記載されている。
【0008】
同文献に記載されている方法は以下である。
・超音波を用いた分散:この方法は、実験室での方法にとって非常に一般的であるが、必要とされるエネルギー投入量が大きく、利用可能な超音波機器の性能が技術的に制限されるので、工業的製造にはまず利用できないという欠点を有する。また、極めて局所的に集中してエネルギーが投入されるので、広い粒度分布がもたらされる。CNTをより多く充填すると、粘度が上昇し、キャビテーションに実質的に基づいて超音波分散メカニズムが著しく損なわれるという結果をもたらす。
・ボールミル摩砕:同文献に記載されているように、この方法は、CNTが著しく損なわれるという欠点を有し、この欠点は、特に導電性のような特性に悪影響を及ぼす。
・摩砕:この方法では、ボールミル摩砕より更に、CNTの構造が、従って特性が損なわれる。
・高圧混合:ディーゼルエンジンのためのバルブにおける分散(ASTM D5275)は、CNT構造の著しい破壊をもたらす。
【0009】
WO 2009/100865は、カーボンナノチューブおよび少なくとも1種の分散助剤を含んでなる導電性水性組成物の製造方法であって、少なくとも下記工程:
a)任意に、カーボンナノチューブを酸化前処理する工程、
b)ポリマー分散助剤を水性溶媒に溶解し、得られた溶液にカーボンナノチューブを添加および分散させることによって、水性予備分散体を調製する工程、
c)カーボンナノチューブ凝集物の凝集直径が実質的に5μm以下、好ましくは3μm以下、特に好ましくは2μm以下になるまで、少なくとも10
4J/m
3、好ましくは少なくとも10
5J/m
3、特に好ましくは10
7〜10
9J/m
3の(好ましくは剪断エネルギーの形態での)体積エネルギー密度を予備分散体に投入する工程
を含む方法を開示している。
【0010】
工程c)では好ましくは高圧ホモジナイザーを使用することが開示されており、予備分散体を高圧ホモジナイザーに複数回通過させることが好ましい。この方法の欠点は、組成物において得られる最大濃度が、予備分散体において確立される最大濃度に対応することである。同特許文献の実施例3には、高圧ホモジナイザーを3回別個に通過させることによって、ポリビニルピロリドン溶液95g中にH
2O
2精製CNT0.5gを分散させることが開示されている。0.53重量%直下の濃度での粘度は、室温および剪断速度1/sで既に1.68Pa・sである。このようにCNTの濃度が低い場合は、導電性塗膜を得るために、大量の水を蒸発させなければならない。分散CNTの濃度が上昇するにつれてCNT分散体の粘度が著しく上昇するので、より高いCNT濃度では著しく高い粘度が予想され、これは産業用途の可能性を著しく制限する。乾燥後に達した導電率は、3000S/mであった。
【0011】
US 2005/0224764 A1は、表面への適用および乾燥後に導電性になり、その剪断減粘性の故に例えばスクリーン印刷に適しているCNT分散体を記載している。同分散体は、キャリヤー物質(水または有機溶媒)、ポリマーバインダー、典型的には分散助剤を含有する。同特許文献に記載されている導電率は、変換すると、WO 2009/100865の導電率にほぼ一致する。同特許文献には、CNT分散体が0.1〜5%のCNTを含有してよいことが開示されている。しかしながら、US 2005/0224764 A1には、CNT含量が上昇するにつれて濃度が上昇することも記載されている。そのため、まず0.5%以下のCNTを含有する希薄溶液を超音波によって予備分散させ、その後に濃厚化し、更に、CNTを短小化する摩砕工程により分散させることによって、分散体を調製している。同特許文献の実施例では、CNT含量は最大3.5重量%、ほとんどの場合は2.5重量%以下であり、先に記載した理由からある例では望ましい場合であっても、同文献に記載の方法によって、十分な特性でより高い濃度を確立することは不可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の範囲においてカーボンナノチューブは、例えばUS−A 5,747,161に記載されているような例えば円筒型の、例えばWO 86/03455に記載されているようなスクロール型、マルチスクロール型、片端が閉じたまたは両端が開いた円錐形カップからなるカップスタック型(例えばEP−A 198,558およびUS 7018601 B2)の、或いはオニオン型構造を有する、単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)または多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)である。円筒型、スクロール型、マルチスクロール型およびカップスタック型の多重壁カーボンナノチューブ、またはそれらの混合物を使用することが好ましく、以下に記載するように、マルチスクロール型を含む混合物が特に好ましい。カーボンナノチューブが5以上、好ましくは100以上の、長さの外径に対する比を有することが有利である。
【0018】
連続または中断されたグラフェン層を1つしか有さないスクロール型の前記した既知のカーボンナノチューブとは対照的に、重なって組み合わさり丸くなった複数のグラフェン層からなるカーボンナノチューブ構造体もまた存在する。本明細書では、用語「マルチスクロール型」を使用する。そのようなカーボンナノチューブは、DE 10 2007 044031 A1に記載されており、同文献の全内容を引用してここに組み込む。この構造体は、多重壁円筒型カーボンナノチューブ(円筒型MWNT)構造体の単一壁円筒型カーボンナノチューブ(円筒型SWNT)構造体に対する関係に相当する、単純スクロール型カーボンナノチューブに対する関係を有する。
【0019】
オニオン型構造体とは違い、これらのカーボンナノチューブにおける個々のグラフェンまたはグラファイト層は、断面から見ると、中断せずにカーボンナノチューブの中心から外縁まで連続して広がっていることがわかる。これにより例えば、単純スクロール構造を有するカーボンナノチューブ(Carbon 1996, 34, 1301-3)またはオニオン型構造を有するCNT(Science 1994, 263, 1744-7)と比べて、より開いた縁が、挿入物のための入口として利用できるので、チューブ構造への別の物質の挿入を改善およびより迅速化することが可能になる。
【0020】
1つの態様では、カーボンナノチューブを官能化した状態で使用する。カーボンナノチューブの官能化は知られている。例えばN. Tsubokawaによる概説(Polymer Journal 2005, 37, 637-655)に、様々な方法が記載されている。
【0021】
本発明によれば、工程1では、カーボンナノチューブは凝集物状で供給される。凝集した状態とは、市販されているカーボンナノチューブの状態である。複数の構造の型によって凝集物は区別される(例えばMoyによるUS 6294144 B1参照):鳥の巣構造(BN)、コーマ糸構造(CY)およびオープンネット構造(ON)。別の凝集構造体、例えば、カーボンナノチューブが集束糸状に配置されているものも知られている(HockeによるWO PCT/EP2010/004845)。カーペット状でまたは林立した状態で表面上に平行に整列したナノチューブ、いわゆる「林立」構造体も記載されている(例えばDaiによるUS 6232706、およびLemaireによるUS 7744793 B2)。このチューブでは、隣接したチューブが、互いに主に平行に整列している。記載されている凝集物は、所望通りに互いに混合してよいか、または混合ハイブリッド(即ち1つの凝集物中に種々の構造体が存在する)として使用してよい。
【0022】
供給される凝集物は、0.02mm以上の平均凝集物寸法を有する。この値は、レーザー回折分光測定によって測定できる(機器の例は、Hydro S分散ユニットを備えたMastersizer MS 2000(Malvern製)である;水中)。凝集物寸法の上限は、例えば6mm以下であってよい。平均凝集物寸法は、好ましくは0.05mm〜2mm、より好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0023】
本発明の方法において使用される分散剤は、室温で液状の無機または有機化合物、例えば溶媒である。溶媒の例は、水、アセトン、ニトリル、アルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ピロリドン誘導体、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、アルキルベンゼン、およびシクロヘキサン誘導体である。分散剤は、純物質であってよい。或いは、分散剤自体が溶液または分散体であってよい。また、反応性系成分であるかまたはそのような成分を含有する物質も好ましい。本明細書では特に、反応してポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂を生成する、ポリオール、イソシアネート、エポキシド、アミンおよびフェノールが挙げられる。分散剤は、ポリマーに一般的に配合される物質であってもよい。その例は、溶媒を伴わないかまたは分散体状のまたは溶媒中の、防炎剤、離型剤、可塑剤、安定剤、またはポリマー産業において一般的な添加剤である。分散体の用途に応じて、添加剤、例えば、グラファイト状または非晶質状カーボンブラック、導電性塩、着色剤、安定剤、加工助剤などを添加してもよい。
【0024】
分散助剤は、ポリマーまたは非ポリマー分散助剤である。例えば、ポリマー分散助剤は、水溶性ホモポリマー、水溶性ランダムコポリマー、水溶性ブロックコポリマー、水溶性グラフトポリマー、特にポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニルのコポリマー、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、ゼラチン、ゼラチン誘導体、アミノ酸ポリマー、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、ポリスルホン酸、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタレンスルホネート、リグニンスルホネート、アクリル単量体のコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリ(2−ビニルピリジン)、ブロックコポリエーテル、ポリスチレンブロック含有ブロックコポリエーテル、およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドからなる群から選択してよい。
【0025】
少なくとも1種のポリマー分散助剤は、好ましくは、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリエーテル、ポリスチレンブロック含有ブロックコポリエーテル、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルプロピルセルロース、ゼラチン、ゼラチン誘導体、およびポリスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種のポリマー分散助剤である。好ましい分散助剤は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、並びにポリスルホン酸塩およびリグニンスルホン酸塩である。
【0026】
1つの態様では、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリスチレンブロック含有ブロックコポリエーテルをポリマー分散助剤として使用する。特に適しているポリビニルピロリドンは、5000〜400,000の範囲の分子量M
nを有する。適当なものとして、例えば、Fluka製PVP K15(分子量約10,000amu)、Fluka製PVP K90(分子量約360,000amu)、または7:2単位のC
2ポリエーテルブロック長とC
3ポリエーテルブロック長の比を有し、乾燥分散助剤に基づいて62重量%のC
2ポリエーテル、23重量%のC
3ポリエーテルおよび15重量%のポリスチレンを含有するポリスチレンブロック含有ブロックコポリエーテル(例えばBYK-Chemie(ヴェーゼル)製Disperbyk 190)が存在する。
【0027】
必要とされる分散助剤の量は、分散助剤のタイプおよび使用するCNTの量に依存する。分散助剤とCNTとの比が0.5:1〜1:1であることが好ましい。好ましい態様では、分散助剤は、2〜10重量%の濃度で存在する。本発明の分散体の別の特定の態様では、分散助剤は、最終分散体の総重量に基づいて、有利には0.01重量%〜10重量%の量で、好ましくは0.1重量%〜7重量%の量で、特に好ましくは0.5重量%〜5重量%の量で存在する。
【0028】
一般的に使用されており、好ましいポリマー分散助剤は、上記量で使用することが特に有利である。なぜなら、そのような量の分散助剤によって、カーボンナノチューブが適当に分散されるだけでなく、本発明の分散体の粘度を調節することが可能になるからである。ポリマー分散助剤の使用によって、表面張力、フィルム形成および付着力を調節することもでき、このことは、例えば分散体をインキとして使用する場合に有用である。
【0029】
工程2における任意の予備分散は、様々な既知の方法で実施してよい。その例は、超音波、ボールミル、ローター−ステーターシステム、またはホモジナイザーである。ローター−ステーターシステムまたはホモジナイザーが好ましく、高圧ホモジナイザーが最も好ましい。
【0030】
工程3における初期分散体の調製、および工程4における最終分散体の調製は、高圧ホモジナイザーで実施する。
【0031】
特に適当な高圧ホモジナイザーは基本的に、例えば文献Chemie Ingenieur Technik, 第77巻、第3号(第258〜262頁)から知られている。最も好ましい高圧ホモジナイザーは、ジェットディスパーサー、ナローギャップホモジナイザー、およびMicrofluidizer(登録商標)型高圧ホモジナイザーである。
【0032】
高圧ホモジナイザーは、ポンプおよび1つ以上のノズルを含んでなる。特に適当な高圧ホモジナイザーは基本的に、例えば文献Chemie Ingenieur Technik, 第77巻、第3号(第258〜262頁)から知られている。
【0033】
高圧ホモジナイザーのポンプは、例えば、ピストンポンプ、ギヤーポンプまたはホースポンプの形態であってよい。ピストンポンプが好ましい。
【0034】
好ましい変法では、(分散剤、分散助剤およびCNTを含有する)CNT含有混合物が高圧ホモジナイザーのポンプに流入する際の圧力損失を解決するために、CNT含有混合物を、供給ポンプによって高圧ホモジナイザーのポンプに供給する。好ましい態様では、供給ポンプは、高圧ホモジナイザーのポンプより高い処理量で運転する。この場合、CNT含有混合物は好ましくは、再び貯蔵容器に別に供給される。高圧ホモジナイザーのポンプの上流で初期圧力を設定するために、好ましくは、貯蔵容器へ戻す箇所の上流で圧力保持弁を使用する。
【0035】
高圧ホモジナイザーのノズルについては、当業者に知られている様々な選択肢が存在する。その例は、開口板、ジェットディスパーサー(開口板により生じた噴流が互いに接触する、開口板の特定の形状)、特殊なノズル形状、例えばMicrofluidizer
TM、ばね荷重ノズルシステム、例えば環状ギャップノズルである。ジェットディスパーサーおよび環状ギャップノズルを使用することが好ましい。全ての方法の一般的な特徴は、強乱流による微粉砕効果、および任意にキャビテーションである。
【0036】
高圧ホモジナイザーで使用される圧力は、一般的には50〜4000bar、好ましくは100〜2000bar、最も好ましくは200〜1500barである。
【0037】
分散のために開口板システムを使用する場合は、本発明によれば、ノズルを交換することによってノズル直径を変えることができる。最初は、閉塞を防ぐために、最大CNT凝集物直径より大きい直径を有するノズルを使用することが好ましい。分散が進行するにつれて、より高い圧力損失、従ってより高いエネルギー投入を実現するために、ノズル直径を小さくする。当業者に知られているように、ノズル直径、圧力損失および処理量の関係を示す一般式は、以下である。
【数1】
式中、Δpは圧力損失(単位:パスカル)であり、ζはノズル形状に依存する因子であって、典型的には0.7〜1であり、ρは密度(単位:kg/m
3)であり、uは流体の平均速度であって、
【数2】
[式中、
【数3】
は体積流量であり、A
Dはノズル断面積である]
である。円形断面積を有するノズルについては、
【数4】
[式中、Dはノズル直径である]
である。ホール型ノズルを使用して分散を開始する際の好ましいノズル直径は、1.5mm〜0.6mmであり、好ましい圧力損失は20〜100barである。
【0038】
ばね荷重
ばね荷重環状ギャップノズルを本発明に使用してもよい。放射状ノズルまたはフラットノズルとも称されるそのようなばね荷重環状ギャップノズルは、例えばミルクの乳化または均質化のために、文献から知られている。そのようなノズルは実質的に、シートにはめ込まれたばね荷重板に通じる中央入口からなる。入口における液圧が板を持ち上げ、液体がノズルを通って放射状に外へ流れる。ノズルにおける圧力損失は、ばねバイアスによって設定される。板とシートの間に積み上がった粒子が流れを妨げ、その結果、シートが開く。これは、ばね荷重環状ギャップノズルが著しく低減された閉塞傾向を示すという利点を有する。従って、ノズルを取り替える必要がないし、予備分散工程を省くことができる。
【0039】
高圧ホモジナイザーのノズルの下流で、好ましくは、CNT含有混合物を貯蔵容器に供給する。貯蔵容器は撹拌されるものであってもよいし、または撹拌されないものであってもよい。撹拌貯蔵容器が好ましい。
【0040】
工程2、3および4の好ましい態様では、CNT含有混合物を、貯蔵容器から再び取り出し、もう一度高圧ホモジナイザーに供給し、再び貯蔵容器に供給する(ループモード)。この好ましい態様は、単純であるという利点を有するが、一部のCNTはノズルを何回も通過し、他のCNTはノズルを何回も通過しないという結果となることがある。
【0041】
別の好ましい態様では、各々の場合に1つの貯蔵容器から次の貯蔵容器に供給される一連の2つ以上の貯蔵容器に、CNT含有混合物をガイドする。これは、連続的または不連続的に実施してよい。これは、ループモードで、即ち、CNT含有混合物をノズルに複数回、ただしより狭い滞留時間分布で通過させて実施してもよい。
【0042】
別の好ましい態様では、生成物を2つの受器に交互に移し(受器Aからノズルを介して受器Bに、続いて受器Bから再びノズルを介して受器Aに)、それによって、可能な限り狭い滞留時間分布を実現する。
【0043】
初期分散体は、典型的には0〜7重量%、好ましくは1〜6重量%、特に好ましくは3〜5.5重量%のCNT濃度を有する。
【0044】
工程3の間、初期分散体を調製するために、貯蔵容器中のCNT濃度を高めることによって、別のCNTを混合物に連続的または不連続的に添加する。これは例えば、典型的には数分間にわたって、乾燥状CNTを受器に添加(別の計量添加)することによって実施してよい。しかしながら、例えば、CNTと液体の高濃度混合物を貯蔵容器に添加することも可能である。予備調製分散体でCNTを湿潤し、それらを混合するためには、撹拌受器が好ましい。
【0045】
好ましい変法では、この初期分散体は、ループモードで調製する。特に好ましくは、粘度が低下してから、別のCNT計量添加を実施する。意外なことに、高圧ホモジナイザーにおいて、まず、分散時間の経過に伴ってCNT含有分散体の粘度が上昇し、次いで、一旦最大値に達してから著しく低下することが見いだされた。この粘度低下の結果は、CNTの解凝集には比例しておらず、例えば実施例に記載されているように、CNT含有分散体の粘度を短い間隔で調べることによって容易に測定することができる。
【0046】
添加されるCNTの量は、典型的には0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%、特に好ましくは1重量%〜2.5重量%である。添加の際、分散を中断してもよいし、または継続していてもよい。
【0047】
別の計量添加に続いて、別の分散を実施する(工程4)。この別の分散もまた、高圧ホモジナイザーで実施することが好ましい。分散の終点は、好ましくは、CNT分散体の粘度が別の最大値に達し、その値を通り越したことによって決定される。ループモードでは、別の計量添加の間、典型的には1/4〜50パス、好ましくは1/2〜30パス、特に好ましくは1〜16パス実施する。
【0048】
後の分散を伴った別の計量添加工程は、本発明によれば、一回または複数回実施してよい。1〜15回が好ましい。
【0049】
別の好ましい変法では、先に記載したように初期分散体を調製するが、特に好ましくは、このとき粘度の低下が生じる。続いて、分散を継続しながら、受器、好ましくは撹拌受器にCNTを連続的に添加する。CNT処理量は、高圧ホモジナイザー内を一周するのに要する時間および分散体の総重量に基づいており、典型的には一周期あたり0.03〜2重量%、好ましくは一周期あたり0.05〜1.5重量%、特に好ましくは一周期あたり0.1〜1重量%である。
【0050】
所望の最終濃度に達するまで、別のCNTを分散体に添加する。典型的には20重量%まで、好ましくは1〜18重量%、特に好ましくは5〜16重量%、5.5〜15重量%、6〜15重量%のCNTを含有する濃CNT分散体が得られる。別の好ましい態様では、分散体は、7〜15重量%、特に好ましくは8.0〜14.5重量%のCNTを含有する。とりわけ、8重量%超のCNTを含有する分散体が好ましい。記載した重量パーセントは全て、分散体の総重量に基づく。
【0051】
連続添加、混合および/または分散は、分散体の結果への悪影響を伴わずに、短時間または長時間中断することもできる。
【0052】
別のCNT計量添加および後分散を伴った、初期分散体を調製する本発明の工程に続いて、好ましくは、残留CNT凝集物を更に微粉砕して最終分散体を調製するために、最終分散工程(工程4)を実施する。
【0053】
本発明の方法によって、CNTの微分散体を調製することができ、8重量%以上の濃分散体を高い処理量で調製することができる。このことは特に、CNT混合物の粘度が最初は上昇し、次いで分散を継続するにつれて低下するという意外な知見によるものである。別のCNT添加は、粘度が再度低下したときに実施することが好ましい。
【0054】
本発明の方法は、スケールアップできるという利点を有する。有効処理量は例えば2L/時以上であり、更に、例えば10L/時以上に、50L/時以上に増大することができる。
【0055】
本発明に従って調製された分散体は、好ましくは、別の製造方法で調製した場合と比べて比較的低い粘度を有すると同時に、良好な導電性を有する。本発明の分散体は、1ヶ月を超えて、好ましくは3ヶ月を超えて安定であり、これは、分散体をその期間貯蔵している間、導電率変化が小さいことによって示される。分散体は小さい平均粒径を有する。この値は、例えばレーザー回折分光測定(機器の例は、Hydro S分散ユニットを備えたMastersizer MS 2000(Malvern製)である)によって測定される。別の分散法、特に摩砕と比べて、CNTはより小さい応力に付されており、これは、CNTの短小化がより少ないことによって示される。良好な分散特性は、分散体並びに分散体から製造された塗料および物質の良好な導電性からも明らかである。
【0056】
そのようなカーボンナノチューブ分散体は、多くの様々な方法で産業的に使用することができる。1つの例は、例えばDE 102008008837 A1に記載されているような、導電性ラッカーおよび塗料としての使用、例えば導電性表面または電気回路を製造するための導電性インキとしての使用である。この場合、回路または導電性表面の製造は、印刷によって実施される。その後、使用した液体は、例えば乾燥によって除去する。印刷では、例えばインクジェット印刷またはスクリーン印刷のような様々な方法が使用される。このようにして、例えばRFIDチップ上に導電路を作成することができる。
【0057】
カーボンナノチューブ含有分散体の使用の更なる例は、ポリマー物質を調製するための導電性前駆物質、およびCNT含有組成物を調製するため(例えばCNTを様々なマトリックス、特にポリマーに配合するため)の出発物質である。カーボンナノチューブ含有分散体は、ガラス繊維サイズ剤に、セラミックを含浸するために、コンクリートを強化するために、ラテックス(ゴムなど)を変性するために、分散塗料(墨黒、電磁遮蔽剤)において、付加的に使用される。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
〔1〕1.分散剤、分散助剤および任意にカーボンナノチューブの混合物を調製する工程、
2.工程1においてカーボンナノチューブを添加した場合は、任意に工程1の混合物を予備分散させる工程、
3.工程1の混合物または工程2の予備分散混合物を分散させる工程であって、高圧ホモジナイザーを使用して分散を実施し、分散中、混合物の全てまたは一部をループにガイドし、分散中、別のCNT(カーボンナノチューブ)凝集物を混合物に連続的または不連続的に添加し、初期分散体を得ることを特徴とする工程、
4.工程3で得た初期分散体を、場合によりループモードで、高圧ホモジナイザーで更に分散させて、最終分散体を得る工程
を含む、カーボンナノチューブ含有分散体の製造方法。
〔2〕工程3において、別のCNT凝集物を、分散体の粘度が最大値を通り越したときに添加することを特徴とする、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕分散体の総重量に基づいて5重量%超のCNT濃度を有する最終分散体を得、有効処理量が2L/時より大きいことを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法によって得ることができるカーボンナノチューブ最終分散体であって、分散体の総重量に基づいたCNTの割合が5重量%超、好ましくは5.5重量%超、特に好ましくは6重量%超であることを特徴とする、カーボンナノチューブ最終分散体。
〔5〕レーザー回折分光測定によって測定されるD90値が5μm未満であることを特徴とする、上記〔4〕に記載のカーボンナノチューブ最終分散体。
〔6〕分散助剤がポリマー分散助剤からなる群から選択されることを特徴とする、上記〔4〕または〔5〕に記載のカーボンナノチューブ最終分散体。
〔7〕カーボンナノチューブがマルチスクロール型カーボンナノチューブを含むことを特徴とする、上記〔4〕〜〔7〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブ最終分散体。
〔8〕カーボンナノチューブが完全にまたは部分的に官能化されていることを特徴とする、上記〔4〕〜〔8〕のいずれかに記載のカーボンナノチューブ最終分散体。
〔9〕上記〔4〕〜〔9〕のいずれかに記載の最終分散体の、導電性塗料またはインキとしての、或いはポリマー物質製造用前駆物質としての使用。
【実施例】
【0058】
乾燥分散体の導電率の測定
乾燥分散体の導電率を測定した。そのために、0.5重量%の濃度になるように、対象の分散体を蒸留水で希釈した。次いで、各々の場合について、マイクロメーターシリンジで200μL採取し、1cm×2cm寸法の、取り外し可能な仕切りを有する角形ウェルに導入した。続いて、分散体を、乾燥室において60℃で少なくとも4時間乾燥した。その後、ウェルの仕切りを取り外すと、1cm×2cm寸法の乾燥分散体の「スポット」が基材上に残った。次いで、1cm四方の正方形の導電率が測定されるように、長方形短辺の両側で、金属製クランプを用いて乾燥懸濁液を電気的に接続した。概算では、約0.5gのCNTが正方形内に存在した。続いて、この正方形の抵抗を、Multimeter ITT Instruments MX52Sを用いて測定した。
種々の試験のために層厚さを測定した。層厚さは約4〜6μmであった。
【0059】
実施例1(粘度低下の結果):
工程1:混合物の調製
5460gの蒸留水、240gのリグニンスルホン酸ナトリウム塩(MW=52,000g/mol、Sigma Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国)製LSSNa)、および300gのBaytubes(登録商標) C 150 P(Bayer Material Science AG(ドイツ国)製)を容器に導入した。
【0060】
工程2:予備分散
この混合物を、LDF型のKotthoff “Mischsirene”(バッチ運転においてローター−ステーターシステムとなる、バッチ運転のためのKotthoff “Mischsirene” FLUKO laboratory分散装置LDF)を用いて4分間均質化した。次いで、分散体を撹拌容器に移し、空気ポンプによって均質化した。それぞれの場合に、生成物を受器に戻した。第一段階ではループで、第二段階では処理量200kg/時で直径1.4mmのノズルを介して、生成物をポンプ輸送した。
試料1−1を取り出した。
【0061】
工程3a:粘度最大値を通り越すまでの予備分散物の均質化
工程2で調製した分散体5610gを、種々のノズルを有するジェットディスパーサーで分散させた(ノズル直径およびノズル口数については表1を参照)。ノズル通過後、生成物を主容器に戻した。容積測定によって処理量を測定したように、達成された圧力を測定した。
【0062】
個々の工程後、試料を取り出し、粘度を測定した。粘度は、25℃でCouetteギャップにおいてPhysica MCR 301型レオメーターを用いて測定した。まず、剪断速度を0.01〜100/sに設定し、上昇させた。
【0063】
以下の表1は、個々の工程の概要、並びに0.1/s、1/sおよび10/sでの測定粘度を示す。試験を実施すると、試料1−4および1−5の粘度が、試料1−1、1−2および1−3の粘度より著しく小さいことが明らかになった。
【表1】
【0064】
図1は、表1の粘度値をグラフで示している。
【0065】
実施例2(粘度低下の結果):
工程1:混合物の調製
2275gの水を3L容ガラス製ビーカーに導入し、その中に、100gのポリビニルピロリドン40T(PVP 40T、Sigma-Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国)製)を、直径60mmおよび速度500/分のクロスアーム撹拌機を用いて撹拌しながら溶解した。125gのBaytubes(登録商標) C 150Pカーボンナノチューブを添加した。
【0066】
工程2:予備分散
実施例1と同様に、この混合物を、Kotthoff “Mischsirene”を用いて4分間均質化した。次いで、生成物を撹拌容器に移した。第一段階ではループで、第二段階では処理量200kg/時で直径1.4mmのノズルを介して、生成物をポンプ輸送した。
【0067】
工程3a:粘度最大値を通り越すまでの予備分散物の均質化
予備分散において調製した分散体2282gを、種々のノズルを有するジェットディスパーサーで分散させた(ノズル直径およびノズル口数については表2を参照)。ノズル通過後、生成物を主容器に戻した。
【0068】
以下の表2は、個々の工程の概要、並びに0.1/s、1/sおよび10/sでの測定粘度を示す。
【表2】
【0069】
図2は、表2の粘度値をグラフで示している。
【0070】
実施例3:本発明に従った、カーボンナノチューブのLSSNa含有分散体の製造方法
工程1:混合物の調製
5160gの蒸留水、360gのLSSNaおよび300gのBaytubes(登録商標) C 150 Pを容器に導入した。
【0071】
工程2:予備分散
工程1で調製した混合物を、LDF型のKotthoff “Mischsirene”(実施例1参照)を用いて4分間均質化した。次いで、分散体を撹拌容器に移し、空気ポンプによって均質化した。それぞれの場合に、生成物を受器に戻した。第一段階ではループで、第二段階では処理量200kg/時で直径1.4mmのノズルを介して、生成物をポンプ輸送した。
【0072】
工程3:初期分散体の調製
工程2で調製した分散体5547gを、種々のノズルを有するジェットディスパーサーで分散させた(ノズル直径およびノズル口数については表3を参照)。各々のノズルを通過し、それによって表3に示す工程パラメータが確立された後、各々の場合に、生成物を主容器に戻した。
【0073】
【表3】
パスc)の後、即ち試料3−4では、粘度の低下は見られなかった。
【0074】
別の計量添加および後分散
パスc)の後、別のCNT54gを主容器に添加した。次いで、この混合物を、下記パスからなる手順によって逐次均質化した:
d)1.4mmのノズル2つを有するジェットディスパーサーで25分間、
e)0.75mmのノズル4つを有するジェットディスパーサーで25分間、
f)0.6mmのノズル1つを有するジェットディスパーサーで25分間。
この場合も、それぞれの場合において、ループで、生成物を緩衝容器に戻した。パスd)においてCNTを添加した後、粘度上昇が再び観察されたが、この上昇の程度は、より少ない未分散CNTの量(1重量%)の故に、主分散開始時(5重量%)ほどではなかった。更なるパスでは、粘度の低下が再び観察された。
別の計量添加および後均質化からなるこの手順を、別の計量添加およびパスd)〜f)からなる上記手順に従って更に2回繰り返した。その場合も、それぞれの添加後、粘度上昇が観察され、手順が進行するにつれて、上昇の程度の減少が観察された。結果的に、合計162gのCNTを三段階で添加した。
【0075】
工程4:最終分散体の調製
別の計量添加の第三段階の後に得られた初期分散体から出発して、直径0.4mmのノズルによって60分間、均質化を実施した。それによって、試料3−5を得た。
【0076】
最後に、試料を分割し、各小分け試料を59℃に加熱し、逆混合を伴わずに1000barの圧力で直径0.2mmのノズルを介して2回ガイドした。小分け試料を混合した後、試料3−6を得た。
試料3−6の粒度を、Malvern製Mastersizer 2000 Hydro Sを用いてレーザー回折によって測定した。この方法によって測定したD90値は1.62μmであり、非常に良好な分散特性であった。固形分を、乾燥天秤によって測定した。固形分は、分散体の総重量に基づいて14.1重量%であった。CNT含量は、分散体の総重量に基づいて7.9重量%であった。
1週間後、試料3−6の粘度を、25℃でCouetteギャップにおいてPhysica MCR 301型レオメーターを用いて測定した。まず、剪断速度を0.01〜100/sに設定し、上昇させた。粘度を以下に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
先に記載した方法によって、乾燥分散体の導電率を測定した。CNT0.5mgを有する1cm×1cm正方形5つの導電率を測定したところ、30.8Ω〜43.9Ωの値を得た。平均値は37.4Ωであった。4μmの層厚さでは、これは、約6700S/mの導電率に相当する。
【0079】
実施例4:本発明に従った、カーボンナノチューブのPVP含有分散体の製造方法
図3に示した装置を使用した。撹拌容器1は出口に、圧力保持弁3を介して生成物を撹拌容器1に再び戻すことができるポンプ2を有していた。生成物は更に、高圧ポンプ4に流れることができる。通常、ポンプ2の処理量は高圧ポンプ4の処理量より大きく、これにより、圧力保持弁3を介して高圧ポンプ4の初期圧力を調節することが可能になる。高圧ポンプ4を通過した一部の生成物は、逐次配置された1つ以上のノズルによってばらばらにされる。この場合では、ノズルは2つのばね荷重環状ギャップノズル5および6であった。撹拌容器1は、上方から別の固体および液体が計量添加される可能性を有する。
【0080】
工程1:混合物の調製
8509gの蒸留水、573gのポリビニルピロリドンK 30(PVP K30、Sigma-Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国)製)、および478gのBaytubes(登録商標) C 150 Pを、容器に導入した。
【0081】
工程2:予備分散
この混合物を、LDI型Kotthoff “Mischsirene”を用いて4分間均質化した。次いで、分散体を撹拌容器に移し、空気ポンプによって均質化した。それぞれの場合に、生成物を受器に戻した。第一段階ではループで、第二段階では処理量200kg/時で直径1.4mmのノズルを介して、生成物をポンプ輸送した。
【0082】
工程3:初期分散体の調製
続いて、混合物を撹拌容器1に移した。ポンプ2を始動し、ポンプ2の下流の圧力を、弁3を用いて約2barに設定した。その後、高圧ポンプ4を始動し、高圧ポンプ4の下流の圧力を、弁5によって1200barに設定し、弁5の下流の圧力を、弁6によって約200barに設定した。従って、弁5での圧力損失は約1000barであり、弁6の圧力損失は約200barであった。高圧ポンプ4の処理量は、全体で110〜120L/時であった。
【0083】
別の計量添加および後分散
開始から20分、25分、30分、35分、40分、55分、60分、65分、70分、75分、80分および85分の後、各々の場合に、37gのCNTを約1分間にわたって添加した。
【0084】
工程4:最終分散体の調製
CNTの最終添加後、工程3に示したパラメータを用いて、試験を更に80分間継続し、終了した。
装置の有効処理量は9L/165分=3.2L/時であった。
実施例4に従った最終分散体の固形分は、分散体の総重量に基づいて14.4重量%であった。CNT含量は、分散体の総重量に基づいて8.9重量%であった。
粒度は、先に記載したように測定した。D90値は1.7μmであった。