特許第6054308号(P6054308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054308
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】核酸を細胞へ送達する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161219BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20161219BHJP
   B01J 13/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A61K31/7088
   A61K9/127
   A61K47/18
   A61K47/24
   A61K48/00
   B01J13/02
【請求項の数】18
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2013-553671(P2013-553671)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-508518(P2014-508518A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】US2012025324
(87)【国際公開番号】WO2012112730
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2015年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/443,246
(32)【優先日】2011年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513204078
【氏名又は名称】メリマック ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MERRIMACK PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】マーク イー. ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ ビー. キルポーチン
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−207157(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/045512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/096779(WO,A1)
【文献】 特開2005−145843(JP,A)
【文献】 特表平10−506395(JP,A)
【文献】 特表2011−500520(JP,A)
【文献】 Molecular Therapy,2007年,Vol.15, No.4,pp.713-720
【文献】 Bioconjugate Chem.,2010年,Vol.21, No.5,pp.844-852
【文献】 Bioorg. Med. Chem.,2009年,Vol.17, No.9,pp.3257-3265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 − 15/90
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームが内層及び外層を有し、該リポソームは、
核酸、
スペルミン、スペルミジン、及びプトレシンよりなる群から選ばれるポリアミン、及び
脂質成分を含
脂質成分が、1種又はそれ以上の性脂質を含、及びカチオン性脂質を含まないか又は脂質成分の0.5%未満の1種又はそれ以上のカチオン性脂質を含み、
核酸と脂質成分が、核酸1マイクログラム当り5〜100ナノモルの脂質の比率で存在し、及び
リポソームが直径30〜500ナノメートルである、
水性媒体中にリポソームを含んでなる組成物。
【請求項2】
ポリアミンがスペルミンである、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
核酸がDNAである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
核酸がRNAである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
RNAがsiRNAである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
RNAがshRNAである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
中性脂質が、DOPC、DOPE、コレステロール、又はPEG−DSGを含んでいる、請求項の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
カチオン性脂質がDOTAP又はDOSPAを含んでいる、請求項1〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
脂質成分がカチオン性脂質及び中性脂質を含んでいる、請求項の何れか一項に記載の組成物。
【請求項10】
脂質成分が、0.1%未満のカチオン性脂質を含んでいる、請求項の何れか一項に記載の組成物。
【請求項11】
脂質成分が、カチオン性脂質を含んでいない、請求項1〜7の何れか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、モル%を超えるDOPEを含んでいない、請求項1〜11の何れか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物がDOPEを含んでいない、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
リポソームが直径70〜300ナノメートルである、請求項13の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
リポソームが、リポソームに取り込まれてその外層に付着した抗体又はその断片をさらに含み、抗体又はその断片が特異的な細胞表面抗原と結合する、請求項14の何れか一項に記載の組成物
【請求項16】
抗体又はその断片が、抗体−脂質結合物としてリポソームの外層に付着し、該抗体−脂質結合物が抗Her2−脂質結合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
抗Her2−脂質結合物がF5−PEG−DSPEである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
細胞を請求項15〜17の何れか一項に記載の組成物と接触させること、
を含んでなり、
前記リポソームが、それが細胞に取り込まれる条件下で細胞と接触させて培養すると、少なくとも100,000分子の抗原を発現している細胞によって取り込まれる、
核酸を細胞へ送達する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2011年2月15日出願の米国仮特許出願第61/443,246号の利益及び優先権を主張し、この内容の全ては参照により本明細書に取り込まれている。
【背景技術】
【0002】
核酸を生体細胞へ取り込むことは最新の生物学的研究、産業、及び医学において重要なプロセスである。機能的な核酸の生体細胞への効率的な送達は、遺伝子工学、組み換えタンパク質の生産、及び遺伝子治療として知られている医療技術の不可欠な要素である。
【0003】
例えば、遺伝子治療は、正常で、機能的な遺伝子物質を特定の細胞へ導入して不足又は欠陥がある遺伝子産物に起因する異常を正すことに関与している。インビボ、インビトロの両方、又はエクスビボにおいて遺伝子導入を促進するための様々な方法が開発されている。
【0004】
核酸治療は、病的細胞を修正又は取り除く目的で、正常及び/又は病的細胞へ天然又は合成のオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの導入を含んでいる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド並びにsiRNA及びshRNAのような干渉RNAが細胞におけるタンパク質発現の望ましくない経路を妨害するために用いられる。プラスミド、例えば、1つ又はそれ以上のタンパク質をコードする配列を含有しているプラスミドを、遺伝子又は遺伝子産物の欠陥又は不在に関連している細胞欠陥を修正するために、又は腫瘍細胞死を誘発するために、細胞へ取り込むことができる。ポリ(I、C)又はメチル化GC対を有しているオリゴ−及びポリヌクレオチドのような、ポリヌクレオチドの免疫誘発剤がウィルス又は癌細胞のような病原体に対する患者の防御を増大させるために用いられる。リボザイムは、病的細胞、例えば、癌細胞又はウィルス感染細胞において他のポリヌクレオチドの選択的分解を触媒するリボ核酸である。オリゴ−及びポリヌクレオチドは一般に細胞膜を通り抜ける透過性が低く、そして身体から急速に取り除かれるので、細胞内送達の増強、及び分解及び/又は身体からの除去の保護を可能にするオリゴ/ポリヌクレオチド送達手段が必要とされている。
【0005】
核酸治療をもたらす1つの有用な方法は、治療用核酸を患者に投与するのに適しているリポソーム内に封入することである。リポソーム技術は開発されていて、従来の医薬品の送達のために商品化されているが、今日まで治療用核酸を含有しているリポソームは商品化されていない。今日まで多くの公表文献が、リポソーム−プラスミドDNA複合体は培養細胞中で効率的な遺伝子の一時的発現を仲介できるが、インビボのトランスフェクション効率は乏しいことを明らかにしている。ウィルスベクター製剤とは異なって、リポソーム−核酸複合体は安定性が不十分であるので、全身投与には適していない。
【0006】
核酸を細胞へ送達するリポソームの能力は、適切なレベルのカチオン性脂質をリポソームの脂質二重層に添加することによって増強できるが、カチオン性脂質は細胞特異的ではない。癌のような、多くの疾患は特定の臓器、組織又は細胞型に限局されるので、臓器、組織又は細胞に選択的な手法で核酸を導入することが望ましい。免疫リポソームすなわち外部抗体機能性を含んでいるリポソームは、核酸の細胞へのこのような細胞選択的導入を達成することを可能にする。リポソームにおける大量のカチオン性脂質の存在はリポソーム内にある治療実体の細胞への取り込みを達成するために有用である。しかしながら、免疫リポソームでは、このような効果を達成するために有効であるカチオン性脂質の量は、望ましくない細胞への非特異的結合をもたらす可能性があり、これはリポソーム−核酸複合体を標的細胞又は細胞型へ特異的に誘導する能力を減少させる。
【0007】
特定の細胞型を選択的に標的とする免疫リポソームとして製造できる、又はこれに転換できる、小さく、活性で、及び生体適合性である改善されたリポソーム−核酸複合体及びそのような複合体を製造する方法を有することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はリポソーム−核酸複合体並びにそのような複合体を製造及び使用する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、核酸及び脂質成分を含んでいるリポソームを製造する方法であって、方法が、核酸及び脂質成分を含有するリポソームを形成するような条件下で、水、水混和性有機溶媒及びポリアミンを含んでいる混合物中で、脂質成分と核酸成分を混合することを含んでいる。
【0010】
ある特定の実施態様では、ポリアミンは、オリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミン、又はポリアミノC〜C10アルカンである。ある特定の実施態様では、ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、及びプトレシンからなる群から選ばれる。ある特定の実施態様では、ポリアミンはスペルミンである。
【0011】
ある特定の実施態様では、核酸はDNAである。別の実施態様では、核酸はRNAである。ある特定の実施態様では、RNAはsiRNAである。ある特定の実施態様では、RNAはshRNAである。別の実施態様では、RNAは二本鎖ダイサー基質RNAである。
【0012】
ある特定の実施態様では、脂質成分は、非カチオン性脂質を含む。ある特定の実施態様では、非陽イオン性脂質は中性脂質である。ある特定の実施態様では、中性脂質は、DOPC、DOPE、コレステロール、又はPEG−DSGを含む。
【0013】
ある特定の実施態様では、リポソームはさらに、カチオン性脂質を含む。ある特定の実施態様では、カチオン性脂質は、DOTAP又はDOSPAを含む。ある特定の実施態様では、脂質成分は、カチオン性脂質を含有しない。
【0014】
ある特定の実施態様では、水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、又は2−プロパノールを含む。ある特定の実施態様では、水混和性有機溶媒はエタノールを含む。ある特定の実施態様では、水と水混和性有機溶の比率は約2:1〜1:2である。ある特定の実施態様では、水と水混和性有機溶媒の比率は約1:1である。
【0015】
ある特定の実施態様では、ポリアミン窒素の核酸リン酸基に対する比率(N/P)は少なくとも約0.5である。ある特定の実施態様では、N/Pは約0.8〜約1.5である。
【0016】
ある特定の実施態様では、混合する工程は約60℃以下の温度で実施する。ある特定の実施態様では、混合する工程は約40℃〜約50℃の温度で実施する。
【0017】
ある特定の実施態様では、脂質成分はカチオン性脂質を含み、そしてカチオン性脂質窒素の核酸リン酸基に対する比率(N/P)は約0.5又はそれ以下である。
【0018】
ある特定の実施態様では、脂質成分は中性リン脂質を含み且つカチオン性脂質を含まず、そしてここで、核酸及び脂質成分は、核酸のマイクログラム当り5ナノモルの脂質から核酸のマイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に5〜20又は30、好ましくは10)ナノモルの脂質の比率で存在し、そしてリポソームは直径が30〜500ナノメートルである。
【0019】
ある特定の実施態様では、混合する工程は約6.5以上のpHで実施する。ある特定の実施態様では、混合する工程はpH約7.0〜約8.0で実施する。リポソームがRNAを含む特定の実施態様では、混合する工程はpH約5.5〜約6.5で実施する。
【0020】
別の態様では、本発明は、水性媒体中にリポソーム含んでいる組成物を提供し、リポソームは内層及び外層を有し、ここでリポソームは、核酸、ポリアミン及び脂質成分を含んでいて、
ここで脂質成分は、中性リン脂質を含み且つ本質的にカチオン性脂質を含まず、そして核酸及び脂質成分は、核酸のマイクログラム当り5ナノモルの脂質から核酸のマイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に5〜20又は30、好ましくは10)ナノモルの脂質の比率で存在し、そしてリポソームは直径が30〜500ナノメートルである。
【0021】
ある特定の実施態様では、ポリアミンは、オリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミン又はポリアミノC〜C10アルカンである。ある特定の実施態様では、ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン及びプトレシンからなる群から選ばれる。ある特定の実施態様では、ポリアミンはスペルミンである。
【0022】
ある特定の実施態様では、核酸はDNAである。別の実施態様では、核酸はRNAである。ある特定の実施態様では、RNAはsiRNAである。ある特定の実施態様では、RNAはshRNAである。
【0023】
ある特定の実施態様では、非カチオン性脂質は、DOPC、DOPE、コレステロール、PEG−DSGを含む。ある特定の実施態様では、脂質成分は本質的にカチオン性脂質を含まない(例えば、0.1重量%未満のカチオン性脂質を有する)。
【0024】
他の実施態様では、脂質成分はカチオン性脂質及び非カチオン性脂質を含む。ある特定の実施態様では、カチオン性脂質はDOTAP又はDOSPAを含む。
【0025】
ある特定の実施態様では、リポソームは直径が70〜300ナノメートルである。
【0026】
別の態様では、本明細書に提供されるリポソームの使用方法が提供される。方法は、取り込まれる抗体又はその断片(この抗体又はその断片は、特定の細胞表面抗原に結合する)をリポソームの外層に付着することを含み、ここで抗体を付着した状態のリポソームは、それが取り込まれる条件下で細胞と接触及び培養すると、少なくとも100,000又は少なくとも1,000,000分子の抗原を発現している細胞によって取り込まれる。
【0027】
ある特定の実施態様では、リポソームの細胞への取り込みは細胞の特性の変化をもたらす。
【0028】
本発明の組成物のある特定の実施態様では、リポソームは、リポソームの外層に付着した、取り込まれている抗体又はその断片をさらに含んでいて、ここで抗体又は断片は特定の細胞表面抗原と結合する。
【0029】
別の態様では、核酸を細胞へ送達する方法が提供され、この方法は、細胞を、リポソームの外層に付着した、取り込まれている抗体又はその断片を含んでいるリポソームを含有する組成物と接触させることを含んでいて、ここで抗体又は断片は特定の細胞表面抗原と結合し、そして取り込まれている抗体又はその断片を付着した状態のリポソームは、それが取り込まれる条件下で細胞と接触及び培養すると、少なくとも100,000又は少なくとも1,000,000分子の抗原を発現している細胞によって取り込まれる。
【0030】
さらに別の態様では、治療を必要としている患者を、核酸を用いて治療する方法が提供され、この方法は、リポソームの外層に付着した、取り込まれている抗体又はその断片を含んでいるリポソームを含有する組成物の有効量を患者に投与することを含んでいて、ここで抗体又は断片は、核酸治療に応答する疾患について患者が治療されるような条件下で、特定の細胞表面抗原と結合する。
【0031】
さらに別の態様では、本明細書に記載されている何れかの方法で製造される組成物が提供され、この組成物は、水性媒体中のリポソームを含んでいて、ここでリポソームは、核酸、ポリアミン及び脂質成分を含む。ある特定の実施態様では、脂質成分は中性リン脂質を含み且つカチオン性脂質を含まず、そして核酸及び脂質成分は、核酸のマイクログラム当たり5ナノモルの脂質から核酸のマイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に5〜20又は30、好ましくは10)ナノモルの脂質の比率で存在し、そしてリポソームは直径が30〜500ナノメートルである。
【0032】
本明細書に記載されている組成物のある特定の実施態様では、組成物は僅か約5モル%又は1モル%のDOPEを含んでいる。ある特定の実施態様では、組成物は実質的にDOPEを含んでいない(例えば、0.1重量%未満のDOPEを有している)。ある特定の実施態様では、核酸の細胞へのトランスフェクションは、DOPEが存在しないか又は、存在しても、総脂質の僅か5モル%の濃度で存在する場合は、総脂質の5モル%以上の濃度でカチオン性脂質が存在すること以外は同一の組成物を用いた核酸の細胞へのトランスフェクションと比較して、少なくとも約10%さらに効率的(又は少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%さらに効率的)であり、ある特定の実施態様では、トランスフェクション効率は、総脂質の10モル%の濃度でDOPEが存在すること以外は同一の組成物のトランスフェクション効率である。ある特定の実施態様では、組成物の色素到達性(dye accessibility)%は、DOPEが存在しないか又は、存在しても、総脂質の僅か5モル%の濃度で存在する場合は、総脂質の5モル%以上の濃度でカチオン性脂質が存在すること以外は同一の組成物を用いた核酸の細胞へのトランスフェクションと比較して、少なくとも約10%大きく(又は少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%大きい)、ある特定の実施態様では、色素到達性%は総脂質の10モル%の濃度でDOPEが存在すること以外は同一の組成物の色素到達性%である。
【0033】
ある特定の実施態様では、リポソームはさらに、リポソームの外層に付着した、取り込まれている抗体又はその断片を含んでいて、ここで、その抗体又は断片は特定の細胞表面抗原と結合する。
すなわち、本発明は、以下の(1)から(51)に関する。
(1)核酸及び脂質成分を含むリポソームが形成される条件下で、水、水混和性有機溶媒、及びポリアミンを含む混合物中で脂質成分及び核酸成分を混合することを含んでなる、核酸及び脂質成分を含んでいるリポソームを製造する方法。
(2)ポリアミンが、オリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミン、又はポリアミノC〜C10アルカンである、前記(1)に記載の方法。
(3)ポリアミンが、スペルミン、スペルミジン、及びプトレシンよりなる群から選ばれる、前記(2)に記載の方法。
(4)ポリアミンがスペルミンである、前記(3)に記載の方法。
(5)核酸がDNAである、前記(1)〜(4)の何れかに記載の方法。
(6)核酸がRNAである、前記(1)〜(4)の何れかに記載の方法。
(7)RNAがsiRNAである、前記(6)に記載の方法。
(8)RNAがshRNAである、前記(6)に記載の方法。
(9)脂質成分が非カチオン性脂質を含んでいる、前記(1)〜(8)の何れかに記載の方法。
(10)非カチオン性脂質が中性脂質である、前記(1)〜(9)の何れかに記載の方法。
(11)中性脂質が、DOPC、DOPE、コレステロール、又はPEG−DSGを含んでいる、前記(10)に記載の方法。
(12)リポソームが更に、カチオン性脂質を含んでいる、前記(9)に記載の方法。
(13)カチオン性脂質が、DOTAP又はDOSPAを含んでいる、前記(12)に記載の方法。
(14)水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、又は2−プロパノールを含んでいる、前記(1)〜(13)の何れかに記載の方法。
(15)脂質成分がカチオン性脂質を含有していない、前記(1)〜(11)及び(14)の何れかに記載の方法。
(16)水と水混和性有機溶媒との比率が約2:1〜1:2である、前記(1)〜(15)の何れかに記載の方法。
(17)水と水可溶性有機溶媒との比率が約1:1である、前記(1)〜(16)の何れかに記載の方法。
(18)核酸のリン酸基に対するポリアミン窒素の比率(N/P)が、少なくとも約0.5である、前記(17)に記載の方法。
(19)核酸のリン酸基に対するポリアミン窒素の比率(N/P)が、約0.8〜約1.5である、前記(18)に記載の方法。
(20)混合する工程が約60℃を超えない温度で実施される、前記(1)〜(19)の何れかに記載の方法。
(21)混合する工程が約40℃〜約50℃の温度で実施される、前記(20)に記載の方法。
(22)混合する工程が約6.5以上のpHで実施される、前記(1)〜(21)の何れかに記載の方法。
(23)混合する工程が約7.0〜約8.0のpHで実施される、前記(21)に記載の方法。
(24)脂質成分がカチオン性脂質を含み、及び核酸のリン酸基に対する脂質の窒素の比率(N/P)が約0.5又はそれ以下である、前記(1)〜(11)及び(14)の何れかに記載の方法。
(25)脂質成分が中性リン脂質を含んでいてカチオン性脂質を含んでおらず、並びにここで核酸と脂質成分が、核酸1マイクログラム当り5ナノモルの脂質〜核酸1マイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に5〜20、又は30、好ましくは10)ナノモルの脂質の比率で存在し、並びにここでリポソームが直径30〜500ナノメートルである、前記(1)〜(11)及び(14)の何れかに記載の方法。
(26)核酸がRNAである、前記(22)に記載の方法。
(27)リポソームが内層及び外層を有していて、ここでリポソームは、核酸、ポリアミン、及び脂質成分を含んでいて、ここで、脂質成分が中性リン脂質を含んでいて、及び実質的にカチオン性脂質を含んでおらず、ここで、核酸と脂質成分が、核酸1マイクログラム当り5ナノモルの脂質〜核酸1マイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に5〜20、又は30,好ましくは10)ナノモルの脂質の比率で存在し、及びここで、リポソームが直径30〜500ナノメートルである、水性媒体中にリポソームを含んでなる組成物。
(28)ポリアミンが、オリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミン、又はポリアミノC〜C10アルカンである、前記(27)に記載の組成物。
(29)ポリアミンが、スペルミン、スペルミジン、及びプトレシンよりなる群から選ばれる、前記(27)に記載の組成物。
(30)ポリアミンがスペルミンである、前記(29)に記載の組成物。
(31)核酸がDNAである、前記(27)〜(30)の何れかに記載の組成物。
(32)核酸がRNAである、前記(27)〜(30)の何れかに記載の組成物。
(33)RNAがsiRNAである、前記(32)に記載の組成物。
(34)RNAがshRNAである、前記(32)に記載の組成物。
(35)非カチオン性脂質が、DOPC、DOPE、コレステロール、又はPEG−DSGを含んでいる、前記(27)〜(34)の何れかに記載の組成物。
(36)脂質成分が実質的にカチオン性脂質を含んでいない、前記(27)〜(34)の何れかに記載の組成物。
(37)脂質成分がカチオン性脂質及び非カチオン性脂質を含んでいる、前記(27)〜(35)の何れかに記載の組成物。
(38)カチオン性脂質がDOTAP又はDOSPAを含んでいる、前記(37)に記載の組成物。
(39)リポソームが直径70〜300ナノメートルである、前記(27)〜(38)の何れかに記載の組成物。
(40)取り込まれている抗体及びその断片をリポソームの外層に付着させること、ここで、抗体又はその断片は特定の細胞表面抗原と結合する、を含んでなり、ここで、リポソームが取り込まれる条件下で細胞と接触させて培養すると、少なくとも100,000又は少なくとも1,000,000分子の抗原を発現している細胞によって、抗体を付着した状態のリポソームが取り込まれる、前記(27)〜(39)の何れかに記載のリポソームを使用する方法。
(41)リポソームの細胞への取り込みが細胞の特性の変化をもたらす、前記(40)に記載の方法。
(42)リポソームが、リポソームの外層に付着した、取り込まれている抗体又はその断片をさらに含み、ここで抗体又は断片が特異的な細胞表面抗原と結合する、前記(27)〜(39)の何れかに記載の組成物。
(43)細胞を前記(42)に記載の組成物と接触させること、を含んでなり、ここで、取り込まれている抗体又はその断片を付着した状態のリポソームが、それが取り込まれる条件下で細胞と接触させて培養すると、少なくとも100,000又は少なくとも1,000,000の分子の抗原を発現している細胞によって取り込まれる、核酸を細胞へ送達する方法。
(44)患者が核酸治療に応答する疾患を治療される条件下で、前記(42)に記載の組成物の治療有効量を患者に投与すること、を含んでなる、核酸を用いて治療を必要としている患者を治療する方法。
(45)組成物が、水性媒体中にリポソームを含んでなり、ここで、リポソームは、核酸、ポリアミン、及び脂質成分を含んでいる、前記(1)〜(26)の何れかに記載の方法で製造される組成物。
(46)組成物が、わずか5モル%又は1モル%のDOPEを含んでいる、前記(27)又は(45)に記載の組成物。
(47)組成物が実質的にDOPEを含んでいない、前記(46)に記載の組成物。
(48)核酸の細胞内へのトランスフェクションが、DOPEが存在していないか、又は存在していても、総脂質の5モル%を超えない濃度で存在しているときに、総脂質の5モル%を超える濃度でカチオン性脂質が存在していることを除いて同一である組成物を用いる細胞内への核酸のトランスフェクションと比べて、少なくとも約10%より効率的である、前記(46)又は(47)に記載の組成物。
(49)組成物の色素到達性%が、DOPEが存在していないか、又は存在していても、総脂質の5モル%を超えない濃度で存在しているときに、総脂質の5モル%を超える濃度でカチオン性脂質が存在していることを除いて同一である組成物の色素到達性%と比べて、少なくとも約10%高い、前記(46)又は(47)に記載の組成物。
(50)トランスフェクション効率が、総脂質の10モル%の濃度でDOPEが存在していることを除いて同一である組成物のトランスフェクション効率である、前記(48)に記載の組成物。
(51)色素到達性%が、総脂質の10モル%の濃度でDOPEが存在していることを除いて同一である組成物の色素到達性%である、前記(49)に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1A及び1Bは、それぞれGFP発現及びルシフェラーゼ発現に対するpHの効果を示すグラフである。
図2図2は、60℃の油浴に浸漬した後の、50体積%のエタノール溶液の温度平衡の時間経過を示すグラフである。
図3図3は、リポソーム(Her2標的化及び単純な非標的化)で24時間処置した細胞の蛍光顕微鏡検査の結果を示す。(Rhフィルターセットを用いて1秒暴露)。右側の値は、DNAに対するカチオン性脂質の比率を用いて測定した理論上の電荷、及びリポソーム内に封入されたDNA%を意味する色素到達性%を示す。
図4図4は、他の成分を一定に維持して、カチオン性脂質成分の量を変化させて製造したリポソームの色素到達性%を示すグラフである。製剤はDOSPA/DOPC/Chol/DOPE/PEG−DSG/Dil(3)−DSで、組成はX/15/10/4/0.3/0.03ナノモル/μgDNAであった。
図5図5は、スペルミン、典型的なリン脂質であるジオレオイル−sn−グリセロ−フォスファチジルコリン(DOPC)の化学構造及びスペルミンのDNAの二重螺旋との相互作用の3D描写を示す。
図6図6Aは、利用可能なアニオン性リン酸塩の10%電荷と結合させるために製剤中に一定の量のカチオン性脂質を含有しているリポソームについて、スペルミンの量を変化させて添加したときの封入分析を示す図であり、そして図6Bは、0.2μmのPESフィルターで無菌濾過する前と後のリポソームのサイズ及び濾過効率を示す表である。
図7図7Aは、利用可能なアニオン性リン酸塩の25%電荷と結合させるために製剤中に一定の量のカチオン性脂質を含有しているリポソームについて、スペルミンの量を変化させて添加したときの封入分析を示す図であり、そして図7Bは、0.2μmのPESフィルターで無菌濾過する前と後のリポソームのサイズ及び濾過効率を示す表である。
図8図8Aは、利用可能なアニオン性リン酸塩の50%電荷と結合させるために製剤中に一定の量のカチオン性脂質を含有しているリポソームについて、スペルミンの量を変化させて添加したときの封入分析を示す図であり、そして図8Bは、0.2μmのPESフィルターで無菌濾過する前と後のリポソームのサイズ及び濾過効率を示す表である。
図9図9は、Dil(3)−DS標識リポソーム−DOSPA(0.1)製剤に24時間暴露した後のMCF7/クローン18細胞の顕微鏡検査を示す(1/4秒、蛍光発光;8秒、位相差)。NTは単純な「非標的化」製剤を、Tは「標的化」抗Her2受容体製剤を示す。N/PはそれぞれDOSPA/DNAの窒素/リン酸の比を示す。
図10図10は、Dil(3)−DS標識リポソーム−DOSPA(0.25)製剤に24時間暴露した後のMCF7/クローン18細胞の顕微鏡検査を示す(1/4秒、蛍光発光;8秒、位相差)。NTは単純な「非標的化」製剤を、Tは「標的化」抗Her2受容体製剤を示す。N/PはそれぞれDOSPA/DNAの窒素/リン酸の比を示す。
図11図11は、Dil(3)−DS標識リポソーム−DOSPA(0.25)製剤に24時間暴露した後のMCF7/クローン18細胞の顕微鏡検査を示す(1/4秒、蛍光発光;8秒、位相差)。NTは単純な「非標的化」製剤を、Tは「標的化」抗Her2受容体製剤を示す。N/PはそれぞれDOSPA/DNAの窒素/リン酸の比を示す。
図12図12は、精製したリポソーム試料及び各種量のF5−PEG−DSPEを含んでいる標準品を示しているSDS−PAGEゲルを示す。ゲルバンドの密度はImageJソフトウェアを用いて測定した。標準曲線への外挿から、脂質のマイクロモル当りに取り込まれたタンパク質の量は、N/P=1.5及びN/P=3.0についてそれぞれ、13.64±0.64及び10.59±0.39であった(2通り)。
図13図13は、温度における各種siRNA溶液の260nmでの吸光度を示す。
図14図14は、標的化結合物の挿入効率を試験するために各種温度に加熱した精製リポソームのF5−PEG−DSPE含量を示しているSDS−PAGEゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
核酸、特にDNA又はRNAを送達するための改善されたリポソーム組成物が、有機−水性単相構築方法を用いて、及び/又はポリアミン又は高分子アミン添加剤を取り込んで製造できることを見出した。ある特定の実施態様では、リポソーム組成物中で用いられるカチオン性脂質の量は(従来のカチオン性リポソームと比べて)減少又は除去された。
【0036】
ある特定の実施態様では、核酸を、中性又はより高いpHで、及び比較的低い緩衝能力を有している有機−水性単相に予め溶解し、そして脂質及び/又はその他のリポソーム形成成分を中性より低いpHで、及び比較的高い緩衝能力を有している有機−水性単相に溶解し、そして外気温より高い温度で2つの溶液を混合し、外気温又はそれ以下まで急速に冷やして核酸の不活性化を防ぐ。水性−有機単相、例えば50体積%エタノールにおける、DNA核酸の中性より低いpH(例えば、pH6.5未満)への暴露がトランスフェクション活性の損失を導くことを意外にも見出した。しかしながら、より短い暴露時間(1〜2分)及び/又は溶液のより高いpH(pH6.5又はそれより高い)での保持が、DNAのトランスフェクション能力を維持する。いくつかのRNAに関しては、より低いpHが好ましいことがある。
【0037】
本発明は核酸を細胞へ取り込むための組成物を提供し、その組成物はポリアミン又は高分子アミンとの複合体中の核酸を含んでおり、リポソーム中に脂質も含んでいて、ここで脂質は比較的少量のカチオン性脂質を含んでいるか、又はカチオン性脂質を全く含んでおらず、そしてリポソームに封入されている核酸の量は多い、例えば、核酸の1マイクログラム当たり5〜30ナノモルの脂質である。一般に、例えば、リガンドが細胞によって取り込まれている場合、リガンドに向けられた細胞の標的化の無い場合には、組成物はトランスフェクション活性を有さないか又は殆ど有さないが、リポソーム表面に付加した細胞標的化リガンドが存在すると驚くほどに高いトランスフェクション活性を有し、トランスフェクション活性は高レベル(例えば、総脂質の25%より高い)カチオン性脂質を含んでいる同様なリポソームのそれさえ上回る。PEG−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)、PEG−ジステアロイルグリセロール(PEG−DSG)、又はPEG−ジ(C12〜C18)アルキルアミン(ここで、PEGは非脂質誘導体化末端が任意にメチル化されている)のような、親水性重合体−改変脂質の有無に関わらず、ホスファチジルコリン(PC)及びコレステロールのような、非カチオン性脂質を含有している核酸運搬リポソームを産生するための、先に公表されている方法は、低い封入効率に終わっている。
【0038】
本発明者らは、ジオレオイル−PC(DOPC)及びコレステロールのような、非カチオン性脂質と核酸とを、任意にPEG−DSG(PEGの分子量、2,000)を用いて、例えば、50体積%の水性エタノールのような、有機−水性単相中で、好ましくは外気温以上の温度、例えば、50〜60℃で混合すること、それに続き外気温まで冷却して、及び透析によってエタノールを除去すると、核酸の核酸結合親水性色素への到達性の減少(20〜30%到達性、すなわち少なくとも70〜80%のDNAが取り込まれ色素から保護される)から明らかなように、小さいリポソーム粒子(サイズ<300nm)への核酸の非常に効率的な封入がもたらされることを意外にも見出した。これらのリポソームは核酸を細胞へトランスフェクトしなかったが、取り込み可能な細胞特異的リガンド(例えば、scFv抗体)がリポソームに付加している場合は、GFP導入遺伝子の発現から明らかなように、これらは核酸を非常に効率的にトランスフェクトした(以下の実施例1〜9を参照されたい)。
【0039】
カチオン性脂質がない場合のより高い封入効率は、当該技術分野の従来の教示に反するものであり、その教示には、核酸分子に疎水性脂質相に対する親和性をもたらして、有機溶媒の存在下での核酸の溶解性を保証するための(ここで、有機溶媒は核酸とリポソームの脂質成分を混合するために用いられる)、カチオン性脂質の必要性が述べられている。リポソームにおける親水性ポリマー−結合脂質(例えば、PEG−DSPE)の増大は、従来の考え方に反して、リガンドで標的化されたリポソームのトランスフェクション効率を減少させず、むしろそれを増大させた。同様に、従来の考え方に反して、二重層を形成しない、いわゆる「ヘルパー」脂質、例えばDOPEのリポソームの脂質成分への追加は、トランスフェクションの有効性を増大しなかった。スペルミン、スペルミジン、短鎖(n=4〜5)オリゴマーエチレンイミン、及び直鎖及び分岐鎖両方のポリエチレンイミン(分子量:400〜1800)を試験して、本発明のリポソームを製造するために適していることが分かった。有機−水性単相におけるポリアミン又は高分子アミンの核酸に対する非沈降比率の範囲は濁度滴定で測定できる。
【0040】
ある特定の実施態様では、正電荷(ポリアミン又は高分子アミン)と負電荷(核酸のリン酸基)の適切な比率は約0.9:1又は約1:1である。ポリアミン又は高分子アミンがない場合は、有機−水性単相中で混合して有機溶媒を除去した後に核酸はリポソームへほとんど封入されなかった(色素到達率:約80〜90%)。上で示したように、DNAを高分子アミン又はポリアミンと混合した場合、及びカチオン性脂質の量を減少させた場合、又はカチオン性脂質が単一の炭化水素鎖脂質であった場合、又はカチオン性脂質を組成物から完全に除去した場合は、DNAはDOPC及びコレステロールのリポソームに非常に効率的に取り込まれた(以下の実施例1〜9を参照されたい)。粒子は体積−重量平均200nmに近い小さいサイズを有していて、付加された細胞に取り込まれたリガンドを介してインビトロで癌細胞へ送達された場合、蛍光顕微鏡データによると、リポソーム物質の分布は、点状であり個別の細胞内コンパートメントに集中しているように見えるカチオン性脂質を含んでいる同様に製造したリポソームの分布と比較して、より拡散して均一であった。
【0041】
この観察は、通常の量(すなわち、約0.5〜2.0の正対負(DNA)電荷比)のカチオン性脂質を含んでいるリポソームと比べた、本発明のリポソームによるこれらの細胞中の送達されたプラスミドDNAのより効果的なトランス遺伝子(GFP)発現と一致していた。例えば、脂質成分とDNA−ポリアミン/高分子アミン成分の溶液を混合して、50体積%のエタノール−pH7.0〜7.5の低イオン緩衝液中、50〜60℃で混合し、続いて冷却、そして例えば塩化ナトリウムの生理濃度の中性水性緩衝液に対して透析して、エタノールを除去すると、非カチオン性脂質及びポリアミン/高分子アミン−核酸のリポソームが効率的に形成された。このプロセスは、「高い転移温度」の脂質成分を含んでいないにも関わらず、成分を外気温ではなく、上昇させた(50〜60℃)温度で混合するとより良い結果をもたらすということが、意外にも分かった。さらに本発明者らは、ステロール(コレステロール)の存在が50体積%のエタノール−有機相へのDOPCの効果的な溶解を得るために有用であったことを見いだした。このことは、コレステロール自体がこの種の水性−有機単相に余り溶解しないという事実を越えて意外なことである。
【0042】
(定義)
本明細書で用いられる用語「カチオン性脂質」は、当該技術分野で認識されていて、正味の正電荷を有している脂質部分を示す。カチオン性脂質の例には、ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド(「DOTAP」);3β−(N−(N',N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」);N−(1,2−ジミリスチル−3−プロピル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」);N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロ酢酸(「DOSPA」);ジオクタデシルアミドグリシル カルボキシスペルミン(「DOGS」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド(「DODMA」);1,2−ジオレオイル−sn−3−グリセロ(エチルホスフォリル)−コリン(「DOEPC」);1,2−ジミリストイル−sn−3−グリセロ(エチルホスフォリル)−コリン(「DMEPC」);1−パルミトイル−2−オレオイル−3−グリセロ(エチルホスフォリル)−コリン(「POEPC」);1,2−ジステアロイル−3−グリセロ(エチルホスフォリル)−コリン(「DSEPC」);N−アグリニル−1,2−ジオレオイルホスファチジルエタノールアモン(「Arg−DOPE」);及び1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(「DODAP」)が包含される。
【0043】
本明細書で用いられる用語「中性脂質」は、当該技術分野で認識されていて正味の電荷を有していない脂質部分を示す。中性脂質は電荷を持たないか、又は両性イオン性であってもよい。中性脂質の例には、1,2−ジオレオイル−sn−3−ホスフォエタノールアミン(「DOPE」);1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン(「DOPC」);ポリエチレングリコール−ジステアロイルグリセロール(「PEG−DSG」);1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−エチルホスフォコリン(「EPC」);1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン(「POPC」);及びコレステロールのようなステロール類が包含される。
【0044】
本明細書で用いられる用語「リポソーム」は、従来のリポソーム(内部に水相を有している)、並びに内部の水含量が低いナノ粒子を意味する。
【0045】
本発明の実施態様で有用な核酸は、例えば、その生体細胞への送達によって、産生されるべき所望の生物学的又は生理学的効果に従って選ばれる。このような選択は分子生物学及び医学の分野の当業者にとって周知である。核酸は、核酸であるか、又はそれが共有結合した繰り返し分子単位(モノマーとも呼ばれる)の主鎖を示し及び生物学的又は生理学的効果を有するという点でその構造及び機能が核酸に似ている高分子物質である。核酸は天然の、改変した又は合成した塩基及び主鎖成分を包含できる。核酸は天然又は合成起源のものであってよく、核酸(すなわち、共有結合した繰り返し分子単位の主鎖に結合している複数の核酸塩基を含んでいる高分子)、DNA、RNA、天然及び合成オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、長さが約30塩基対でダイサー酵素基質として作用できる二本鎖RNA、核タンパク質、ペプチド、核酸、リボザイム、DNA含有核タンパク質(例えば、無傷又は部分的に脱タンパク質化されたウィルス粒子(ビリオン)のようなもの)、DNA以外のオリゴマー及びポリマー陰イオン性化合物(例えば、酸性多糖類及び糖タンパク質)等を包含できる。DNA又はRNAが好ましく、そして発現可能な遺伝子の配列を担持しているDNA又はsiRNAがより好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドはもう一つの好ましいタイプの核酸である。生細胞へ外因性の核酸を導入するプロセスを表わすために、特定種の核酸に、又はそのように導入される核酸によって細胞内で行われる特定の機能に限定されることなく、本発明者らは用語「トランスフェクション(transfection)」を用いる。トランスフェクションは治療される対象の体内の細胞上(インビボ)又は対象の外部に保持されている細胞上(インビトロ又はエクスビボ)で実施できる。用語「トランスフェクション」と「送達(delivery)」は本明細書では同様に用いられる。特定の適用に対して有利な場合は、リポソームは構造、機能、又はヌクレオチド配列に関して一種以上の核酸を含むことができる。
【0046】
本明細書で用いられる「ポリアミン」又は「高分子アミン」は、正電荷を有することが可能な複数の(少なくとも2つの)塩基性窒素部分を有している非脂質化合物である。ポリアミンは、2〜20のアミノ基を有している直鎖、分岐鎖又は環状化合物を包含する。ある特定の実施態様では、ポリアミンは約2000ダルトンを越えない、又は約1800ダルトンを越えない、又は約600ダルトンを越えない、又は約400、300若しくは250ダルトンを越えない分子量を有している。ある特定の実施態様では、ポリアミンは合計20を越えない炭素原子を有している。ポリアミンの例には、スペルミン、スペルミジン、プトレシン、及びポリアミノC〜C10アルカン(例えば、α,ω−アミノC〜C10アルカン)が包含され、ここで、脂肪族鎖は1個又は2個の窒素原子によって中断されていてもよい。ある特定の実施態様では、ポリアミンはスペルミンである。高分子アミンはオリゴエチレンイミン、ポリエチレンイミン等のような化合物を包含する。
【0047】
(組成物及び組成物を作成する方法)
一般に、本明細書に提供される組成物は、核酸を含んでいる第1溶液及び脂質成分を含んでいる第2溶液を提供すること、リポソームを製造するのに適切な条件下でこの二つの溶液を一緒に混合することによって製造される。
【0048】
ある特定の実施態様では、第1及び第2溶液の一方又は両方は水混和性の有機溶媒を含んでいる。水混和性有機溶媒は一般に、脂質成分−核酸混合のために選択される条件下、及び下記の有機溶媒減量工程条件下で、すなわち、約0.01体積%〜約60体積%の全範囲に渡って、水(単一液相又は単相)との完全な混和性を保持する。
【0049】
この工程の水混和性有機溶媒はアルコール、又は非プロトン性溶媒が好ましく、生物製剤で用いるのに適しているものが好ましい。アルコール溶媒の例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)等が包含される。メタノール、エタノール又はtert−ブタノールが、特にエタノールが好ましい。非プロトン性溶媒には、エーテル、エステル、ケトン、ニトリル、アミド、又はスルホキシドが包含される。非プロトン性溶媒はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドが好ましい。
【0050】
脂質成分溶液を核酸溶液と、所望の微粒子複合体を形成するために十分な条件下で、混合することができる。水と上記のようにして選択された水混和性有機溶媒を含む単一液相(すなわち、単相を)を有する溶液中で選択された核酸を脂質成分と混合する。単相組成物は、以下で検討する光学的透明度に関わらず、液−液界面が存在しないことを特徴とする混合物である。脂質成分及び核酸を、当該技術分野で公知の何れかの方法を用いて混合することができる。水性/有機溶媒混合物中の体積パーセントによる有機溶媒の割合は、プロセスで用いられる核酸及び脂質成分のタイプによって変化するだろう。この割合は約10体積%〜約60体積%の範囲でよく、一般に約55体積%以下である。このプロセスを実施する温度範囲は水性/有機溶媒混合物の凝固点以上であるが、有機溶媒の沸点以下であり;典型的には環境気圧下で約0℃〜約100℃に変化するだろう。30℃〜70℃、特に約40℃〜約65℃のような外気温以上の温度が好ましい。一般に、より長く、より安定な核酸のためには温度をより高くしてもよく;siRNA又はshRNAのような、より短く、より不安定なオリゴヌクレオチドのためには、オリゴヌクレオチド二本鎖の変性を減らすために温度をより低くしてもよい。
【0051】
一つの好ましい方法は、本質的に水性媒体中に核酸の溶液を調製すること、有機溶媒中の溶液として脂質成分を調製すること、及び、例えば機械的混合によって、有機溶媒の必要含量を混合物中にもたらす体積比で、二つの溶液を混合することである。得られる混合物中の有機溶媒の含量は、核酸の部分的脱水及び/又は濃縮をもたらす一方、核酸を溶解状態に維持することが好ましく、そして同時に、有機含量は脂質成分を非小胞性形態、例えばミセル形態に可溶化する。
【0052】
別の好ましい方法は、水と第1体積%の水混和性有機溶媒を含んでいる単一流体相中に核酸の溶液を調製すること、水と第2体積%の水混和性有機溶媒を含んでいる単一流体相中に脂質成分の溶液を調製すること、及び、例えば機械的混合によって、以下で特定するような有機溶媒の必要含量を混合物中にもたらす体積比で、これらの二つの溶液を混合することである。これらの二つの溶液中の有機溶媒の第1及び第2体積パーセントは同じであることが好ましい。第1(核酸)溶液中の有機溶媒の体積%は、移行、例えば、核酸分子を濃縮した状態及び/又は水和化が少ない形態に移行すること、を促進するように選ばれることが好ましく、それに対して、第2(脂質成分)溶液中の有機溶媒の体積%は、例えば、脂質をミセルのような小胞を形成しない形態に可溶化する。従って当業者は、核酸及び脂質溶液中の、並びに得られた混合物中の有機溶媒の含量を、核酸の脱水及び/又は濃縮を促進するための必要、及び脂質の可溶化のための必要の両方を満足するように選択するだろう。
【0053】
三番目に好ましい方法によると、脂質成分は整った形態(neat form)で、好ましくは、不溶性基質に被着したフィルムのように、広い表面積を有する形態で提供され、次いで、核酸の脱水/濃縮及び/又は脂質成分の可溶化の必要を満足する体積パーセント(このパーセントはより具体的に以下に定義される)で水混和性有機溶媒及び水を含んでいる単一流体相中で核酸溶液と接触させる。整えられた(neat)脂質成分の核酸溶液との接触は、接触を実施する容器の低速回転又は往復運動のような、機械的撹拌を伴うことが好ましく、それによって脂質成分が可溶化して核酸と好ましくは濃縮状態で接触して、微小粒子複合体の形成を確実にする。撹拌は通常整えられた脂質成分の全てが溶解するまで続ける。
【0054】
得られる核酸/脂質成分溶液中の有機溶媒は、核酸などの核酸と脂質成分の両方を独立して分子状又はミセル状に溶解できる体積濃度で存在させることが好ましい。すなわち、核酸を脂質成分と混合した後に生成される有機−水性単相は、溶解の間に核酸及び脂質成分の両者を存在させる必要なしで、核酸又は脂質成分の何れかを分子的又はミセル的溶液の形態に溶解できるだろう。好ましくは、核酸と脂質成分を混合する場合の有機溶媒の含量、及び/又は温度が低下すると、脂質成分は、自己集合、非ミセル、凝縮相、例えば二重層、逆ヘキサゴナル、キュービック、液晶、又は非結晶相など、を形成する。水性環境において、二重層、キュービック、又はリオトロピック液晶として知られている、逆ヘキサゴナル相のような、秩序凝縮相を形成する脂質成分が特に好ましい。このような脂質成分は当該技術分野において公知である。二重層形成脂質成分は水性環境で一般に、小胞のような、密閉構造を形成する。優先的に、単層において有機溶媒濃度の低下によって脂質成分が自己集合凝縮相を形成する能力は核酸が存在しているか否かとは無関係である。水性環境で自己集合、非ミセル、凝縮相を形成する脂質成分の典型的なタイプは、当該技術分野で公知であって、通常の実験のみを用いて当業者が選択できる。このような典型的な脂質成分は、クラスI−不溶性、非膨張性両親媒性物質(界面に広がって安定な単相を形成する:水に不溶であるか又は非常に低い溶解度を有している)及びクラスII−不溶性、膨張性両親媒性物質(広がって界面に安定な単相を形成し、不溶性であるが水中で膨張してリオトロピック液晶を形成する)と呼ばれる。脂質成分の特定の例は本明細書に開示されている。
【0055】
何れか所定の混合物について選択された有機溶媒の特定の濃度は、有機溶媒、脂質成分及び核酸の特性;成分を混合するときの温度;水性成分のイオン強度;及び混合物中の脂質成分及び/又は核酸の濃度よって決まるだろう。特定の適用の必要に従って有機溶媒、核酸、水性成分、及び脂質成分が選択されると、本明細書に導かれる当業者は、当該技術分野で公知の単純な溶解性試験を実施することにより有機溶媒の必要濃度を容易に確立できるだろう。例えば、溶解した核酸及び/又は脂質の分子又はミセル特性は動的光散乱によって確認できる。ミセル又は特に分子の(真の)溶液は、粒子、小胞、フィラメント、又は凝集した核酸又は脂質成分相を含むその他の成分を含んでいるものより実質的に低い光散乱を有しているので、光散乱強度を好都合に使用できる。NMR、ESRプローブ、及び蛍光プローブ法のような、当該技術分野で公知のその他の方法を、ミセル又は分子溶液以外の状態における核酸又は脂質成分の存在を検出するために用いることができる。
【0056】
混合物中の有機溶媒の量は、核酸及び脂質成分が得られる水性−有機溶媒単相中に独立してミセル状に又は分子状に溶解できるように選択される。具体的にこの量は約10体積%〜約60体積%、好ましくは約30体積%〜約55体積%、そして最も好ましくは約45体積%〜約55体積%である。
【0057】
脂質成分は中性又はカチオン性脂質を含むことができる。好ましい実施態様では、カチオン性脂質の量は、総脂質の僅か5モル%(任意に、総脂質の僅か4モル%、3モル%、2モル%、1モル%、若しくは0.5モル%、又は実質的にカチオン性脂質を含まない)の濃度で存在する。非カチオン性脂質の特定な量の何れも、この脂質、選ばれたカチオン性脂質、核酸、及び有機溶媒の特性によって決まる。ステロールは非カチオン性脂質の最大100%までの量で存在させることができる。例えば、ホスファチジルコリンのような、リン脂質が存在する場合は、例えば、コレステロールのような、ステロール類は非カチオン性脂質の最大50%を構成してもよい。核酸溶液及び脂質(溶液であるか整った形態であるかを問わず)は、外気温以上且つ溶液に存在している脂質の最高相転移温度以上であるが、有機溶媒の沸点以下で、より好ましくは約30℃〜約80℃、さらにより好ましくは約40℃〜約70℃、そして最適には約50℃〜約65℃で混合することが好ましい。核酸と脂質成分を混合する際の正確な温度は、選択された単相における両方の成分の分子状又はミセル状の溶解ももたらす。この温度は、例えば、上記の溶解性試験によって確定できる。
【0058】
流体相の水性成分は低いイオン強度であることが、すなわち生理的な値(すなわち、144mMのNaCl)かそれ以下が好ましく、50mMのNaClより低いことがより好ましく、そして10mMのNaCl未満が最も好ましい。イオン強度は、それらのイオン電荷の2乗を乗じた溶液中の全イオン濃度の和の2分の1と定義されている。特定の理論によって制限されることなく、脂質成分/核酸混合工程における低いイオン強度が、リポソームの凝集及び沈殿のリスクを減少させて、この工程の間、立体的に安定化している脂質成分が存在することの必要性を取り除くと考えられる。水性成分は、所望のpH、典型的には約3.0〜約10.0の範囲、より好ましくは約4.0〜約9.0の生理的pH範囲、を保持するために緩衝物質を含んでいてもよい。ある特定の実施態様では、pHは約5.5〜約6.5である。緩衝物質の量は、イオン強度を上記のイオン強度範囲内に、低く保持するように選択される。
【0059】
好ましい実施態様では、ポリアミン又は高分子アミンは、核酸溶液を脂質成分溶液と混合する前に、核酸の溶液に加えられる。
【0060】
核酸と脂質成分を混合した後、混合物中の有機溶媒の量は、リポソームの形成を達成するために減らされる。有機溶媒含量の減少が濃縮した核酸/脂質コアの周囲の脂質二重層の形成を促進し、これがリポソームの形成及び安定化をもたらすと考えられている。従って、有機溶媒の量は、核酸/脂質成分が粒子内へ自己集合する程度まで優先的に減らされる。例えば、粒子サイズの測定から分かるように、単相工程で核酸/脂質粒子の形成が生じた場合、有機溶媒の除去は選択的であって、例えば、トランスフェクトする製剤の生体適合性を改善する目的に役立つだろう。有機溶媒の量を、二重層形成が達成される程度まで、又はそれ以下まで減らすことが好ましい。一般に、この量は約20体積%未満である。最も好ましくは、実質的に全ての有機溶媒を、例えば0.01体積%以下まで除去することである:しかし、皮膚細胞への核酸送達のような、幾つかの局所的適用においては、それは薬学的に許容される有機溶媒には有利であって、組成物中にある割合の溶媒(例えば、エタノール)を保持するのが好都合である。有機溶媒の削減は、例えば、透析、ゲルクロマトグラフィー、吸収、減圧下の蒸発、限外濾過、サイズ排除クロマトグラフィー、凍結乾燥、又はこれらの組み合わせによるなどの、当該技術分野で入手可能な何れかの手段で達成される。貯蔵又は最終使用のためにリポソームを適切な媒体中に導入することも可能である。混合物中の有機溶媒を削減する前、又はその過程中に、例えば、高濃度の塩溶液を添加し、続いて混合することにより、媒体のイオン強度を生理的な値(144mMのNaCl)まで上げることができる。リポソームが、凝集阻止ポリマー−脂質複合体の非存在下であっても、生理食塩水中で凝集に対して安定なままであることが意外にも見出された。
【0061】
有機溶媒を除去する際の温度は、核酸を脂質成分と混合する際のものであることが好ましい。しかしながら、温度を最初に外気温又は最高で4〜8℃の凍結温度まで下げることができる。不飽和脂肪酸鎖を含有しているもの(相転移温度<4℃)のような、相移動温度が低い脂質を用いる場合は後者がより好ましい。
【0062】
ある特定の実施態様では、本明細書で提供されるリポソームは従来のリポソームと比べて減少した水含量を有している。減少した水含量を有しているある特定の組成物及びそのような組成物を製造する方法を検討するために、例えば、その内容が参照により本明細書に取り込まれている、米国特許出願公開第2007/0171077号を参照されたい。脂質殻が核酸含有コアを密接に取り囲んでいるのでコアと殻の間に外来小分子(溶質)を保持する空間が殆ど無い。具体的には、この殻で囲まれている内部空間の水性含量は粒子サイズから算出したものの50%未満、そしてより好ましくは20%又はそれ以下である。後者の値は粒子内に含まれている核酸の水和相に固定化されていると予期される水の量に対応している。従って、水性媒体中のこれらの実施態様のリポソームは、封入された核酸で固定化された水和水に近似した量の封入された水を含有している可能性がある。ある特定の実施態様では、リポソームは濃縮状態の核酸を含有している閉鎖内部容積を有している内室を有し、閉鎖内室はリポソーム粒子サイズから算出した容積の約50%未満の水性含量を有しているか、又は水性含量が容積の20%又はそれ以下である。
【0063】
本明細書で提供されるリポソームは任意に、リポソームの細胞への侵入を促進するリガンド、すなわち、細胞特異的リガンドをリポソームに結合させて含んでもいる。リガンドは、分子、官能基、又はそれらの断片のような、化学部分であって、これは最適な細胞と特異的に反応する一方、他の細胞と余り反応しないので、リポソームに核酸を、選択的に最適な細胞内へ、導入することの利点をもたらす。「反応」するとは、細胞又は組織に対して結合親和性を有していること、又は細胞に取り込めることを意味し、ここで結合親和性は、当該技術分野で公知の何れかの方法で、例えば、ELISA、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、表面プラズモン共鳴、等のような、何れかの標準的インビトロアッセイによって、検出可能できる。通常リガンドは特定の分子部分−分子、官能基、又は細胞又は組織と結合している分子複合体のような、エピトープと結合して2つのメンバーの結合対を形成する。結合対では、何れかのメンバーがリガンドであってよいのに対して、他方はエピトープであると認識されている。このような結合対は当該技術分野において公知である。例示的な結合対は、抗体−抗原、ホルモン−受容体、酵素−基質、栄養素(例えば、ビタミン)−輸送タンパク質、成長因子−成長因子受容体、炭水化物−レクチン、及び相補配列を有している2つのポリヌクレオチドである。リガンドの断片は、断片が適切な細胞表面エピトープと結合する能力を保持している限り、リガンドと考えられて用いることができる。リガンドが免疫グロブリンの抗原結合配列を含んでいるタンパク質及びペプチドであることが好ましい。さらに好ましくは、リガンドはFc配列を欠如している抗原−結合抗体である。このような好ましいリガンドは免疫グロブリンのFab断片、免疫グロブリンのF(ab)断片、Fv抗体断片、又は一本鎖Fv抗体断片である。これらの断片は酵素的に誘導できるか又は遺伝子組み換えで産生できる。これらの機能面では、リガンドは取込み可能なリガンド、すなわち、例えば、エンドサイト−シスのプロセスにより、最適な細胞によって取込まれているリガンドが好ましい。同様に、置換又はその他の改変を有しているが、エピトープ結合能力を保持しているリガンドを用いることができる。リガンドは、病的細胞、例えば、悪性細胞又は感染体を認識するために好都合に選択される。細胞表面エピトープに結合するリガンドが好ましい。リガンドの特に好ましい1つの群は、多くの腫瘍の細胞表面に過剰発現されるチロシンキナーゼ成長因子受容体と結合対を形成するものである。例示的なチロシンキナーゼ成長因子は、VEGF受容体、FGF受容体、PDGF受容体、IGF受容体、EGF受容体、TGF−α受容体、TGF−β受容体、HB−EGF受容体、ErbB2受容体、ErbB3受容体、及びErbB4受容体である。EGF受容体vIII及びErbB2(HER2)受容体は、これらの受容体が悪性細胞に対してより特異的である一方、正常細胞には希であるので、リポソームを用いる癌治療という状況で特に好ましい。或いは、リガンドは、有益な遺伝子を取込むことにより遺伝子修正、又は遺伝子改変を必要としている、肝細胞、上皮細胞、遺伝的欠陥臓器の内分泌細胞、インビトロ胎芽細胞、胚細胞、幹細胞、生殖細胞、ハイブリッド細胞、植物細胞、又は産業プロセスで用いられる細胞のような、細胞を認識するように選択される。
【0064】
リガンドは、当該技術分野で入手可能な何れかの適切な方法によって、リポソームに付着できる。付着は共有結合又は、吸着又は複合体形成によるような、非共有結合であってよい。付着は、共有結合又は非共有結合を形成してリガンドと結合できて、「アンカー」と呼ばれる、親油性分子部分を含んでいることが好ましい。アンカーは、脂質ミセル、二重層、及びその他の凝集相のような親油性環境に対して親和性を有しているので、リガンドを脂質−核酸微粒子に付着する。親油性アンカーを介するリガンド付着の方法は当該技術分野で公知である。典型的には、リガンド結合をもたらすのに有効な量の脂溶性アンカーをリポソーム形成の前、又はその間に、脂質成分、例えば、脂質に含ませておく。あるいは、アンカーとリガンドの結合を最初に形成して、次いでそれらの形成前に脂質に加えることによって、又は水性懸濁液の形成後に結合物を水性懸濁液に加えることによって、リポソーム内に取り込ませる。リポソームへリガンドを結合するのに特に適している方法は、媒介親水性ポリマーリンカーを介して親油性アンカーと結合しているリガンドを使用することによるものである。従って、リガンドは微粒子の表面上を自由に移動して細胞表面の到達しにくいエピトープとでさえも反応できる。親水性ポリマー媒介リンカーを介して親油性アンカーと結合しているリガンドは好都合に、水性媒体中の結合リガンドとリポソームの共培養中に、機能している核酸−脂質リポソームと安定に結合するようになる。(米国特許第6,210,707号、この内容は参照により本明細書に取り込まれている)。標的部分及びそれらのリポソームへの取り込みのさらなる検討については、例えば、米国特許第7,244,826号;米国特許第7,507,407号;及び米国特許第6,794,128号を参照されたい;これらの特許のそれぞれの内容は参照により本明細書に取り込まれている。
【0065】
リポソームはさらに、細胞をトランスフェクトするその機能のために有益なその他の成分を含んでいる。これらはトランスフェクション増強成分、すなわち、外因性核酸の生細胞への送達を改善するリポソームと結合した実体と見なされる。これらの有益な、トランスフェクション増強成分は、これに限定されないが、エンドソーム回避剤、核局在化因子、サイトゾルへの強化された導入を誘発可能な手段、pH感受性化合物、熱及び放射線誘発可能放出、及び膜融合増強又は膜融合誘発化合物のような膜融合促進剤、細胞間核酸放出増強又は誘発成分、転写因子、及び促進剤−調節化合物を包含する。
【0066】
ある特定の好ましい実施態様では、本明細書に提供されるリポソームは核酸溶液中の核酸を高い割合で封入することができる。例えば、好ましい実施態様では、核酸溶液に(脂質成分溶液と混合する前に)存在している核酸の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%又は90%がリポソーム内に封入される。核酸の封入の程度は本明細書の実施例に記載されているアッセイのようなアッセイを用いて測定できる。
【0067】
ある特定の好ましい実施態様では、脂質の核酸に対する比率は、核酸1マイクログラム当り1ナノモル(nmol)の脂質から核酸1マイクログラム当り20、30、40、50、60、70、80、90、又は100(任意に、2.5〜20又は30、好ましくは、10、又は5〜20、又は5〜10)ナノモルの脂質である。脂質の核酸に対する比率が核酸の1マイクログラムあたり少なくとも2.5ナノモルのときに核酸の封入がより効果的であることが現在分かっている。
【0068】
ある特定の実施態様では、リポソームは直径が30〜500ナノメートル(nm)である。別の実施態様では、リポソームは直径が約40〜約250nmであるか、又は約40〜約200nmである。
【0069】
(医薬組成物)
本明細書に提供されるリポソームを含んでいる医薬組成物は標準的な技術を用いて製造され、そして薬学的に許容される担体をさらに含んでいる。一般に、生理食塩水が薬学的に許容される担体として用いられる。その他の適切な担体は、例えば、水、緩衝水、0.4%の食塩水、0.3%のグリシン、及びアルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の増強した安定性のための糖たんぱく質を含むその他のものを包含する。これらの組成物は、従来の、周知滅菌技術で滅菌できる。得られた水性溶液を使用のために包装でき、又は無菌条件下で濾過して凍結乾燥でき、凍結乾燥した製剤は投与する前に無菌水性溶液と混合する。組成物は、pH調節剤及び緩衝剤、張度調節剤等のような生理条件に近づけるのに必要な薬学的に許容される補助剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を含有できる。さらに、リポソーム懸濁液は、貯蔵によるフリーラジカル及び脂質過酸化損傷に対して脂質を保護する脂質保護材を包含できる。アルファ・トコフェロールのような親油性フリーラジカル抑制剤、及びフェリオキサミンのような水溶性鉄特異的キレート剤が適している。
【0070】
医薬組成物中のリポソームの濃度は広範囲に、すなわち、約0.05重量%未満、通常は約2〜5重量%又はすくなくともそれから、10〜30重量%程度までにわたって変化して、主に選択された特定の投与方法に従って、流体量、粘度等により選択される。例えば、濃度は治療に関連する流体負荷が低下するまで増大できる。これは、アテローム性動脈硬化に関連している鬱血性心不全又は重度の高血圧を有している患者に特に望ましい。投与されるリポソームの量は用いられる特定の脂質及び標的リガンド、治療する病気の状態、送達される治療薬、及び医師の判断によって決まる。一般に、投与されるリポソームの量は特定の核酸の治療有効用量を送達するのに十分のものであろう。治療有効用量を送達するのに必要なリポソームの量は、治療する疾患の考察と共に上記の取り込みアッセイによって確認できる。例えば、免疫リポソームの用量は体重1kg当り約0.01〜約50mg、又は約0.1〜約10mg/体重kgでよい。
【0071】
好ましくは、医薬組成物は非経口で、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下、直接脳内注射によって(髄腔内又は流動増強送達を介して)又は筋肉内に投与される。ある特定の実施態様では、医薬組成物はボーラス注入法で静脈内又は腹腔内に投与される。この用途に適している特定の製剤は当該技術分野において周知である。一般的に、製剤は許容可能な担体、好ましくは水性担体中に懸濁したリポソームの溶液を含んでいる。多種の水性担体、例えば、水、緩衝水、0.9%等張食塩水、等を用いることができる。これらの組成物は、例えば濾過によって、滅菌できる。得られる水溶液はそのまま使用できるように包装できる。ある特定の例では、溶液を凍結できる。組成物は、pH調節及び緩衝剤、張度調節剤、湿潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンラウリン酸モノエステル、オレイン酸トリエタノールアミン等のような、生理的な状態に近づけるのに必要な薬学的に許容される補助物質を含むことができる。
【0072】
ある特定の実施態様では、本明細書で提供されるナノ粒子(リポソーム)は、その内容が参照により本明細書に取り込まれている、米国特許第7,846,440号に開示されている何れかの癌を治療するために用いることができる。さらに、ナノ粒子(リポソーム)は米国特許第7,846,440号に開示されている1つ又はそれ以上の抗癌剤(例えば、米国特許第7,846,440号の第19欄〜第24欄にわたる抗癌剤の表に開示されているような)と併用して癌治療に用いることができる。
以下の実施例は説明のために提供されていて、限定するものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1:ポリアミンを加えた脂質製剤
(略語):
GFP:緑色蛍光タンパク質
MES:2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
TE緩衝液:Tris/EDTA緩衝液
HBS:HEPES緩衝液
PEI:ポリエチレンイミン
ハンクスBSS:ハンクス平衡塩類溶液
DOTAP:ジオレオイル トリメチルアンモニウムプロパン
DOPC:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン
Chol:コレステロール
DOPE:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン
CHEMS:コレステリル ヘミコハク酸
PEG:ポリエチレングリコール
PEG−DSG:PEG−ジステアロイルグリセロール
DOSPA:N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチル−アンモニウム トリフルオロ酢酸
CHIM:コレステロール イミダゾール誘導体
DiI(3)−DS:カチオン性脂質染料:
【0074】
【化1】
【0075】
(リポソームの調製)
50%エタノール/50%の20mMのMES(pH5.1)中で、ポリアミンをGFPプラスミドDNAと混合した。脂質混合物を50%エタノール/50%2mMのTE緩衝液(pH8.0)に溶解した。ポリアミン混合物と脂質混合物を60℃で2分間加熱し、混合して、撹拌しながら室温まで冷却した。混合物を透析カセット(MWCO 10,000)に移して、生理食塩水(2回)及び次いでHBS(pH7.25)に対して透析した。4時間の総透析時間後に、試料を取り出して、DNA濃度、色素到達性及びサイズについて試験した。Picogreen(登録商標)色素到達性アッセイは、実施例12に下記するように実施された。
【0076】
PEI(分子量600)、PEI(分子量1800)及びスペルミンをポリアミン分子として用いた。PEI(窒素)のDNA(リン)に対する2つの比、N/P=1.33及び0.67を用いた。濁りの出現を観察すると、N/P=1.33でDNAは50%エタノール混合物中で凝集する。
【0077】
抗Her2−脂質結合物を添加して試料を免疫標的化し、GFPトランスフェクションを測定した。上記のようにして試料を調製して、例えば、米国特許第6,210,707号に記載されている挿入方法によって、F5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物の15μg/μmolPCを加えて標的化(T)した。非標的化(NT)粒子は、抗体結合物を添加していない粒子である。
【0078】
SKBR3細胞(10%のFBSを有するMcCoy’s5A培地中で生育した、ATCC(登録商標)#HTB−30(登録商標))を前日に100,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに固定した。製造会社の説明書に記載のようにしてDNAをリポフェクタミン(登録商標)と混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。1μgの封入したDNA及び遊離のDNAも各ウェルに添加した(2通り)。24時間後に、細胞を洗浄して、1mLの培地を加えた。さらに24時間後、細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)についてアッセイした。これにはハンクスBSS溶液で2回洗浄し、GFP陽性細胞を蛍光顕微鏡で観察することを伴った。GFP発現は、多数の視野に渡る(n>3)蛍光細胞数/総細胞数×100として計算する。
【0079】
(脂質製剤)
脂質の量は、DOTAP/DOPC/Chol/DOPE/CHEMS/CHIM/Dil(3)−DSとして示す。
製剤1:1μgのDNA当り6/20/7/5/6/3.67/0.47/0.05の比で上記のような脂質を含む。
製剤2:DNAにN/P=1.33で加えたPEI600とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤3:DNAにN/P=1.33で加えたPEI1800とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤4:DNAにN/P=1.33で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤5:DNAにN/P=0・67で加えたPEI600とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤6:DNAにN/P=0・67で加えたPEI1800とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤7:DNAにN/P=0.67で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤8:DNAにN/P=0.9で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当りDOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS(0.3/15/10/0.3/0.03)nmolの脂質製剤。
【0080】
(結果)
製剤番号 サイズnm±nm 色素到達性%

1 114.7±50.4 21.4±1.2
2 149.3±46.2 35.0±1.0
3 147.8±49.1 26.5±0.8
4 155.6±31.8 45.1±1.9
5 126.3±54.0 24.4±1.1
6 115.4±51.2 23.3±1.1
7 126.1±45.3 35.8±1.9
8 166.1±72.8 35.9±3.8
【0081】
(観察された遺伝子発現結果)
24時間後に、標的化されたリポソームの大部分が取込まれたのに対して、非標的化リポソームは取り込まれなかったことが明らかになった。これは脂質マーカーとして用いた、DiI(3)−DS蛍光発光によって判定された。しかしながら、リポフェクタミン(登録商標)2000試料のみが何れかのGFPシグナルを示す。48時間時点で、番号3,5及び6の標的化バージョンが番号1、2、4又は7の標的化バージョンより高いGFPシグナルを発した。しかし、標的化試料8は他の何れのリポソームよりほぼ2倍高いレベルのGFPを発した。全ての場合において、非標的化試料はGFPシグナルを有していなかった。リポフェクタミン(登録商標)2000は48時間時点で最も高いGFPシグナルを発した。
【0082】
(結論)
ポリアミンは、粒子の広範な凝集を引き起こさずに、リポソーム内に首尾良く取り込むことができる。しかしながら、このリポソームは色素到達性により感受性が高く、そしてリポソームが僅かに大きいということは注目に値する。色素到達性の増大が不完全なDNA封入に起因するのか否か、又はリポソームが封入されたDNAの保護を減少させるのか否かは、この時点では分かっていない。
【0083】
製剤8がDNAの保護をもたらすことは全く意外なことであった。この製剤はトランスフェクションアッセイにおいてどの試料のそれより最も高いGFPシグナルを発した。この製剤に存在するカチオン性脂質の量(+/−=0.1)は、このような方法でカチオン性リポソームを形成するためにDNAに結合する期待される量(先行技術に基づく)をはるかに下回っている。製剤DOTAP/POPC/Cholを用いるカチオン性リポソームは+/−<1.67では適切に形成されない(これは透析の間に凝集する)。
【0084】
実施例2
(方法)
上記のようにして50%エタノール溶液中でDNA(100μg)を調製した。PEI600の原液から、N/Pが0.067、1.33及び4になるような体積で一定量を加えた。別に、2mMのTE緩衝液(pH8.0)及びエタノール(50v/v%)を調製した。溶液を60℃に2分間加熱して混合した。試料を上記のように冷却して透析した。DNA濃度及び色素到達性を上記のように測定した。
【0085】
(結果)
プレート1 プレート2 色素到達性
試料 [dna]ng/ml stdev [dna]ng/ml stdev % stdev [DNA] ug/ml stdev

DNA 729.11 6.8 779.12 17.8 93.6 2.31 23.37 0.53
N/P 0.67 695.12 1.76 771.96 17.95 90.0 2.11 23.16 0.54
N/P 1.33 505.75 3.72 527.79 19.23 95.8 3.56 15.83 0.58
N/P 4.0 467.52 2.63 506.85 17.8 92.2 3.28 15.21 0.53
【0086】
(結論)
PEIのDNAへの添加はPicogreen(登録商標)の結合を阻害しなかった。従って、リポソーム封入方法の間にDNAに提供される何れの保護も、たとえ製剤中にPEIが含まれていても、脂質の封入によりもたらされたはずである。
【0087】
実施例3
以下の実施例は、リポソーム組成物からカチオン性脂質を除去できるか否かを検討するために行った。
【0088】
(方法)
脂質製剤=DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA1μg当り30/1500/1000/30/3nmol
製剤1:DNA(プラスPEI N/P=0.9)と混合した上記の脂質
製剤2:DNA+PEI N/P=0.9
製剤3:DNAと混合した上記の脂質
製剤4:DNA(+PEI N/P=0.9)と混合した上記の脂質(ただし、DOTAP無し)
【0089】
(結果)



製剤 色素到達性
% stdev サイズ(nm)
1 21.5 0.9 183.5±60
2 93.2 2.4 N.D.
3 31.2 1 248.8±67.2
4 24.0 0.7 289.6±112.5
【0090】
(結論)
ポリアミン又は高分子アミンと前もって接触させたDNAを用いると、カチオン性脂質を用いずに、>75%のDNAを封入しているリポソーム粒子を製造できる。
【0091】
実施例4
一本鎖陽イオン性界面活性剤の効果を検討するために追加試験を行った。
【0092】
(方法)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)及びテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)をDOTAPの代わりに用いる以外は、実施例3、製剤1と同様にリポソームを調製した。
【0093】


製剤 色素到達性 サイズ(nm)


HTAB 31.6±0.6 202.8±48.3
TTAB 27.6±0.8 193.4±69.0
【0094】
(結論)
一本鎖陽イオン性両親媒性物質は、ポリアミン/高分子アミンと予め濃縮されたDNAを有する低−カチオン性−脂質リポソームを作成するために用いることができる
【0095】
実施例5
DNAのポリアミン又は高分子アミンとの事前接触が、カチオン性脂質を何ら含んでいない中性脂質リポソーム内にDNAを効果的に封入できるかを試験する。DiI(3)−DSは実験を助ける目的で包含させたが、治療目的のリポソームには通常包含させない。
【0096】
(方法)
製剤1:DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り0/1500/1000/30/3nmol
製剤2;DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り0/1500/1000/30/3nmol(+スペルミン、N/P=1)
製剤3:DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り30/1500/1000/30/3nmol(+スペルミン、N/P=0.9)
【0097】
(結果)







製剤 色素到達性 サイズ(nm)

1 80.3±4.3 260.7±70.9
2 26.2±0.9 193.4±69.0
3 32.2±1.1 194.3±47.3
【0098】
(結論)
カチオン性脂質の非存在下で、核酸濃縮剤として作用するもの、例えば、スペルミンのような、ポリアミン又は高分子アミンの核酸溶液への添加は、有機−水性単相法を用いる中性脂質リポソーム内へのDNAの効果的な封入をもたらす。ポリアミン又は高分子アミンがないと、DNAは効果的に封入されない。
【0099】
実施例6
スペルミンで事前濃縮したDNA(N/P=1)を有するDOPC/Chol(3:2)及び1%PEG−DSGの製剤を用いて、DNA封入及び粒子サイズの総脂質量に対する依存度を試験する。
【0100】
(方法)
実施例1のように粒子を作成した。
脂質製剤:DOPC/Chol/PEG−DSG
製剤A:DNA1μg当りの脂質比率1200/800/20
製剤B:DNA1μg当りの脂質比率1000/667/17.5
製剤C:DNA1μg当りの脂質比率750/500/12.5
製剤D:DNA1μg当りの脂質比率500/333/8.3
製剤D:DNA1μg当りの脂質比率1500/1000/25
【0101】
(結果)

製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
A 19.9±0.7 182.6±52.8
B 22.2±0.8 201.2±82.2
C 25.2±0.9 193.4±86.2
D 34.4±1.2 222.4±97.0
E 21.8±0.7 213.2±85.0
【0102】
(結論)
製剤A、B、及びEは約20%の色素到達性を有していた。試料Cは多少高い色素到達性を有していた。最も高い色素到達性及び最も大きいサイズの粒子は試料Dであった。従って、DNAmg当り500/333/8.3ミリモルの成分の脂質量は低すぎるかもしれず、これより大きい比率で用いることが好ましい。高すぎる比率はDNAを何ら含んでいないリポソームを誘導する可能性もあるので、DNAを安定に封入する脂質の最小量が好ましいだろう。従って、試料B又はCが最適である。
【0103】
実施例7
以前のリポソームは、pH滴定可能な脂質/カチオン性及び中性脂質を混合しており、DNAとの静電相互作用を最大にするためには、混合時に溶液のpHを5.5未満にする方法で作成された。その後、低いpHは、ルシフェラーゼ及びGFPの両方をコードするプラスミド活性の活性に有害作用を有していることが分かった。
【0104】
この検討は、中性脂質及びDNAのポリアミン又は高分子アミンとの事前混合を用いて作成するリポソームが低いpHでなければならないかを、及び室温で混合することでそれらを作成できるかどうかも確かめるためであった。また、不飽和脂質HSPC(水素化大豆ホスファチジルコリン)をDOPCの代わりに用いて、その効果を測定した。
【0105】
(方法)
製剤1:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
溶液のpHが5.5である方法で混合。60℃で2分間加熱。実施例1に詳細に記載。
製剤2:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、60℃で2分間混合。
製剤3:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、23℃で2分間混合。
製剤4:HSPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、23℃で2分間混合。
【0106】
(結果)

製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
1 21.3±0.9 237.6±105.4
2 18.1±0.8 233.5±100.5
3 20.0±0.7 463.7±223.3
4 96.9±3.2 250.8±113.4
【0107】
(結論)
高いDNA保護及び小サイズを兼ね備えたリポソームを作成するためには60℃で混合することが必要であると思われる。室温での混合は凝集を引き起こした。一方をpH5.5で混合(#1)して、他方をpH7.4で混合(#2)した以外は同様に調製したリポソームは色素到達性及びサイズの両方で非常に似ているとみられる。従って、ポリアミン又は高分子ポリアミンと事前混合した(このケースではスペルミンと事前混合した)DNAを含有している中性リポソームを調製するために低いpHは必要ではないだろう。
【0108】
本検討におけるHSPCの使用はDNAの封入をもたらさなかった。しかし、脂質又はPC/Chol比に対するDNAの比率を、DNA封入を増大させるために最適化できる。
【0109】
実施例8
製剤においてPEG−DSGの量を増大することの効果を次の実験で検討した。
【0110】
(方法)
脂質及びDNAを50%エタノール/50%5mM Hepes(pH7.4)に別々に溶解して、混合する前に2分間加熱した。DNAはスペルミンと前もって濃縮した(N/P=0.9)。上記のようにして透析を行った。
【0111】
製剤5:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/0/1.67 0%PEG−DSG
製剤6:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/8.33/1.67 0.5%PEG−DSG
製剤7:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/16.7/1.67 1.0%PEG−DSG
製剤8:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/33.3/1.67 2.0%PEG−DSG
製剤9:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/83.3/1.67 5.0%PEG−DSG
【0112】
上記のようにして試料を調製して、例えば、米国特許第6,210,707号に記載されている挿入手法によって、15μg/umolPCのF5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物を加えて標的化(T)した。非標的化(NT)リポソームは抗体結合物を加えていない粒子である。
【0113】
(結果)

製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
5 37.0±1.2 405.5±209.2
6 42.0±1.4 289.2±124.5
7 25.5±0.8 216.4±85.4
8 29.3±0.7 203.6±89.9
9 23.6±0.8 201.6±84.1
【0114】
SKBR3細胞(10%FBSを有するMcCoy’5A培地で生育)を100,000細胞/ウェルの密度で前日に24ウェルのプレートに蒔いた。DNAをリポフェクタミン(登録商標)2000と製造会社の説明書に記載されているようにして混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。1μgのDNAを封入したリポソーム、及び遊離DNAのリポソームもそれぞれのウェルに添加した(2通りに)。24時間後に、細胞を洗浄して1mLの培地を加えた。更に24時間後、細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)についてアッセイした。これは、ハンクスのBSS溶液で2回洗浄すること、及びGFP陽性細胞を蛍光顕微鏡下で観察することを伴っていた。GFP発現は、多数の視野(n>3)に渡って、(蛍光発光細胞数/総細胞数)×100として計算する。
【0115】
GFP発現についてのPEG−DSG含量の依存








ウェル当り100,000細胞を蒔種−48時間時点
試料番号 PFG-DSG% 細胞数 GFP数 GFP% ave stdev
6NT 0.5 67 0 0 0 0
6T 81 2 2.5 2.5 0
7NT 1 57 0 0.0 0 0
7T 57 7 12.3 9.8 3.2
46 5 10.9
64 4 6.3
8NT 2 71 0 0.0 0.0 0.0
8T 81 4 4.9 9.3 6.2
76 5 6.6
55 9 16.4
9NT 5 41 0 0.0 0 0
9T 53 9 17.0 15.1 6.1
73 6 8.2
45 9 20.0
LIP2000 53 13 24.5 33.2 9.4
69 22 31.9
44 19 43.2
DNA 52 0 0.0 0 0
細胞 73 0 0 0 0
ウェル当り30,000細胞を蒔種−48時間時点
7NT 1 34 0 0 0 0
7T 40 3 7.5 11.5 6.0
38 7 18.4
23 2 8.7
8NT 2 17 0 0 0 0
8T 26 5 19.2 16.1 9.7
39 2 5.1
21 5 23.8
9NT 5 43 0 0.0 0 0
9T 22 5 22.7 14.1 8.4
44 6 13.6
50 3 6.0
【0116】
(結論)
特定量のPEG−DSGは最適なリポソーム形成に有益である。0.5モル%を越えると合理的に効率的なDNA封入を可能にして小さい粒子を生じさせる。0.5モル%未満では、より大きい粒子の形成を招く。増大したポリエチレングリコール化はGFP発現を阻害しない。
【0117】
実施例9
実施例8の製剤を用いて、DOPEの包含を検討した。
【0118】
(方法)
製剤9:上記のとおり(実施例8を参照)
製剤11:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(900/100/667/83.3/1.67) 10モル%DOPE
製剤12:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(800/200/667/83.3/1.67) 20モル%DOPE
製剤13:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(600/400/667/83.3/1.67) 40モル%DOPE
【0119】
上記のように試料を調製して、15mg/ミリモルPCのF5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物を加えて標的化した。30分間60℃で加熱して挿入手法を開始した。得られた溶液を氷水中で急冷し、0.45μmのPESフィルターを通して試料を滅菌した。試料をSKBR3細胞に添加して遺伝子発現も試験して、48時間後にGFP陽性細胞をカウントした。
【0120】
(結果)
試料 DOPE 色素到達性 サイズ Stdev
モル% % nm(平均) (ガウス分布)
9NT 0 23.6±0.7 201.6 84.1
9T 0 25.6±0.9
11NT 10 26±0.8 206.2 72.9
11T 10 34.1±1.3
12NT 20 26.9±1.1 223.1 101.3
12T 20 38±0.6
13NT 40 33.7±1.4 213.1 92.7
13T 40 39±0.77
【0121】
トランスフェクション効果

DOPE 細胞 GFP+ GFP ave stdev
番号 モル% 数 数 %
9NT 0 44 0 0 0 0
9T 0 38 7 18.4 23.1 6.3
34 7 20.6
33 10 30.3
11NT 10 36 0 0 0
11T 10 49 8 16.3 16.7 3.6
39 8 20.5
30 4 13.3
12NT 20 40 0 0 0
12T 20 32 9 28.1 23.4 6.6
32 6 18.8
13NT 40 47 0 0 0
13T 40 40 2 5.0 10.5 6.9
36 3 8.3
33 6 18.2
Lipo2000 26 13 50.0 60.0 14.1
10 7 70.0
DNA+スペルミン 35 0 0.0 0.0 0.0
1:0.9 46 0 0.0
DNA 49 0 0 0.0 0.0
細胞 42 0 0 0 0
【0122】
(結論)
脂質に基づく担体によるトランスフェクションに対する「ヘルパー」脂質としてのDOPEの役割について従来の見解に反して、DOPEの包含はこれらのリポソームのトランスフェクション効率を増大しなかった。逆に、DOPEを含有している標的化試料は10%未満のDOPEを有している対応する試料より実質的に高い色素到達性を有している事は注目に値する。更に、スペルミンはそのままでは細胞内にDNAを発現させることはできず、DNAの発現は遺伝子発現を引き起こす事前濃縮DNAを封入している標的化−リポソームの組み合わせであることを示唆している。
【0123】
実施例10
50%エタノール水性溶液中、60℃で培養した後のレポータープラスミドの活性に対するpHの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0124】
(方法)
TE緩衝液(pH8.0)中の保存DNA溶液由来の50μg/mlのDNA濃度でpH範囲が約4〜7.2の緩衝溶液中で、GFP及びルシフェラーゼレポータープラスミドを調製した。適切なpH範囲に広がるように、選ばれた2つの緩衝液は、共に5mM濃度の、HepesとMESであった。上記溶液の1mLアリコートに、同体積のエタノールを加え、混合して、得られた溶液を60℃で10分間培養した。冷却後、試料をHepes緩衝食塩水(HBS、pH7.25)に対して1晩透析した。試料を無菌条件下で滅菌濾過して、DNA濃度を260nmにおけるUV吸収によって測定した。
【0125】
SKBR3細胞(10%FBSを有するMcCoy’5A培地中で生育)を24ウェルのプレートに前日、100,000細胞/ウェルの密度で蒔いた。DNAをリポフェクタミン(登録商標)2000と製造会社の説明書に記載のように混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。6時間後、細胞を洗浄して1mLの培地を添加した。更に18時間後に、それぞれのレポーター遺伝子についてアッセイした。GFPプラスミドについては、ハンクスのBSS溶液で2回の洗浄、及びGFP陽性細胞について蛍光顕微鏡下での観察、又はルシフェラーゼ発現については、0.1Mリン酸ナトリウム溶液に溶解すること、及びルシフェリン投与後に照度計を用いるルシフェラーゼ読み出しを伴っていた。精製したルシフェラーゼを用いて標準曲線を作成して、MicroBCA(登録商標)アッセイ(Pierce)を用いてタンパク質を測定した。GFP発現は多数の視野に渡って(n>3)、蛍光細胞の数/細胞の総数×100として計算した。ルシフェラーゼ量を総タンパク質1μg当りのルシフェラーゼngとして表わした。結果を以下に示す。両方のグラフは、それぞれの保存溶液からのDNA(すなわち、DNAはエタノール添加及び加熱処理されていない)とリポフェクタミン(登録商標)2000との複合体から得られた発現に正規化した。「GFP発現細胞に対するpHの効果」は、各種pHにて50%エタノール中で事前培養したGFPをコードするプラスミドDNAのDNA細胞−トランスフェクション活性に対する効果を意味する。
【0126】
(結論)
プラスミドDNAをpH7以下の水性エタノール溶液中で60℃に10分間加熱することはプラスミドを様々な程度に不活性化する(図1)。このプロセスは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子でも観察されるので、GFP遺伝子の配列に特異的ではない。
【0127】
実施例11
低いpHの50%エタノール中への最小DNA暴露時間におけるDNAトランスフェクション活性に対する効果を試験するために、以下の実験を行った。
【0128】
(方法)
DNAの低pH環境への暴露を最小限にするために、DNAをより高いpHの緩衝液中で加熱して、脂質含有エタノール溶液と混合するときだけpH滴定可能な脂質と相互作用するのに適しているレベル(pH5.5)にpHを下げるように、50%エタノール中の混合条件を最適化することにした。
【0129】
第1に、溶液を55〜60℃にするのに必要な時間を確認した。結果を図2に示す。溶液を所望温度にするのに約2分で十分であることが分かった。
【0130】
第2に、低pH条件へのDNAの暴露を最小限にするために、7.0を越えるpHで比較的低い緩衝液(例えば、TE、5mMのTris−HCl、−2mMのEDTA、pH8.0)でDNA溶液を調製して事前加熱し、次いで、より低いpH及び/又はより強力な緩衝液の事前加熱した脂質溶液と混合して、そして次いで素早く冷却することが推奨された。2mMのTE緩衝液(2mMのTris、0.4mMのEDTA、pH8.0)の溶液を等体積の20mMのMES(pH5.1)と混合するとpH5.5の溶液を生じることが分かった。
【0131】
2mM TE緩衝液のエタノール溶液(50v/v%)中のDNA(50μg)を等体積の20mM MES(pH5.1)のエタノール溶液(50v/v%)と混合して60℃で2分間培養した後、得られた溶液を透析し、精密濾過で滅菌して、上記のようにリポフェクタミン(登録商標)2000を用いてそのトランスフェクション活性を検討した。結果は次の通りである:非処置DNA(陽性コントロール)、100±1.4%;処置DNA,72.7±9.7%。
【0132】
(結論)
上記の方法でDNAを処置するとプラスミドが受ける損傷を最小化して、70%を超えるレポーター遺伝子の活性を保持する。
【0133】
実施例12
製剤中のDNAに対するカチオン性脂質の比率を変えることにより、リポソーム上の正味電荷を負から正まで変えるように一連のリポソームを作成した。カチオン性脂質、中性双性リン脂質DOPC及びDOPE、コレステロール、PEG化脂質、並びに蛍光脂質(粒子の可視化を補助するため)をカチオン性脂質の量だけを変えるような方法を用いて、組成がX/15/10/4/0.3/0.03nmol/μgDNAである、製剤DOSPA/DOPC/Chol/DOPE/PEG−DSG/DiI(3)−DSを用いて、リポソームを調製した。各試料の一部を、先に記載されているように(M.E. Hayes et al., Genospheres: self-assembling nucleic acid-lipid nanoparticles suitable for targeted gene delivery, Gene Ther. 13(2006) 646-651)、15μg/umolリン脂質の比でF5−PEG(2000)−DSPE結合物を挿入してHER2に標的化した。
【0134】
リポソームを作成した後、これらを蛍光顕微鏡によって、DNA封入及びHER2受容体を過剰発現する培養ヒト癌細胞(SKBR3)と相互作用する能力について試験した(図3)。
【0135】
(DNA封入効率の測定)
一般に、DNA(又はsiRNA/オリゴヌクレオチド)封入は、Picogreen(登録商標)色素到達性アッセイと呼ばれる、簡単で、速い蛍光によるアッセイで測定される。これは、Picogreen(登録商標、Invitorgen)のような分子はDNAと結合すると強い蛍光を発するという見解に基づいている。その非結合状況においては、それは弱い蛍光を発する。Picogreen(登録商標)をリポソームの溶液に添加すると、それは「アクセス可能な」DNAの何れかと結合することによって、蛍光性を示す。アクセス可能な色素は全く封入されていないDNA(遊離DNA)又は部分的に若しくは不完全に封入されているDNAと結合できる。色素は脂質二重層を横切らない。従って、適切に封入されているDNAは何れも色素から保護される。(界面活性剤溶液を添加する方法で)リポソームが崩壊してDNAが放出されると、Picogreen(登録商標)は存在するDNAの総量と結合する能力を有する。標準曲線に外挿することによって、アクセス可能な全てのDNAの濃度を測定できる。それぞれの比率は「色素到達性%」をもたらして、以下のように計算される:
色素到達性%=[DNA]界面活性剤が非存在/[DNA]界面活性剤が存在×100
【0136】
標的化核酸リポソームを送達することには、高い陽イオン電荷を有さずに、リポソーム内へDNAを効率的に封入する必要性を含む、多くの主要な難関が存在し、実際に、このような1/1未満の総電荷を有していることは非特異的細胞相互作用を阻止するために好ましい。しかしながら、+/−<1未満の陽イオン比では、DNA封入の効率は劇的に減少する(図4)。スペルミンのようなポリアミンは静電相互作用を介してDNAと結合できることが知られていて(例えば、図5を参照されたい)、これはDNA構造において構造変化を誘発できることが示唆されている(Furerstein BG et al., Spermine-DNA interactions: A theoretical study, Proc. Nat. Acad. Sci. USA August 1986, vol. 83, pp5948-5952)。核酸へのスペルミンの添加が何れのカチオン性脂質を使用せずにリポソーム内への封入をもたらせることが観察されている。18−merオリゴヌクレオチド及びsiRNAのような、低分子量の核酸も何れのカチオン性脂質を用いずに効果的に封入できることも見出されている。
【0137】
(検討の説明)
リポソームの小さいサイズ(<200nm)を保持しながら、最適なオリゴ封入をもたらすためにスペルミンと組み合わせて使用できるカチオン性脂質(この場合はDOSPA)の最小量を見つけるために以下の実験を行った。DOSPAとスペルミンの量を変えて、その他の全ての脂質を一定に保持しながら、製剤DOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSによるリポソームを調製した。封入効率、サイズ、濾過性(滅菌0.2μmフィルターを通過する効率)及びリポソームの細胞取り込みを測定した。
【0138】
(カチオン性脂質/DNAリン酸比の算出)
DNA塩基対分子量=330g/mol、
=>1g/330gmol−1=DNA(又はRNA)1g当り0.00303mol
すなわち、3.03nmolリン酸(又はホスホロチオエート)=1μgDNA(又は(RNA)
【0139】
0.075nmolDOSPA×4(頭部基)DOSPA当りの正電荷=0.3nmol「正」電荷。従って、0.075nmolDOSPAは1μgのオリゴの総リン酸電荷の10%で中和される(又は、結合する)はずである。従って、モル比がオリゴ1μg当り0.075/30/20/8/1.74/0.058nmol脂質のDOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSに対応する製剤は、オリゴから発生する総陰イオン電荷の10%が錯体化されていることを意味している。この試料をDOSPA0.1と称する。従って、25%の電荷と結合するのに十分なDOSPAを有している製剤、すなわち、オリゴ1μg当り0.1875/30/20/8/1.74/0.058nmolのモル脂質比を有するDOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSをDOSPA0.25と称する。この少量のカチオン性脂質は、オリゴの封入を補助するためにスペルミンが補完され、そして以下にN/Pと示される(DNAリン酸に対するスペルミン由来の総Nを示す)。
【0140】
次いで、これらの製剤を先に記載されているように標的化して(例えば、G.Thurston et al., Cationic liposomes target angiogenic endothelial cells in tumors and chronic inflammation in mice, J. Clin. Invest. 101 (1998) 1401-1413 を参照されたい)、Her2過剰発現細胞(MCF7(ATCC(登録商標)#HTB−22(登録商標))/クローン18)内への取込み能力について試験した。
【0141】
(結果)
製剤中に存在するカチオン性脂質の量(陽イオン/陰イオン電荷の準モル比で)に関わらず、N/P=約0.9(N/Pは添加したスペルミン/オリゴリン酸比である)を越える比のスペルミンがオリゴに高い効率で封入をもたらすことが見出された(図6〜8)。「DOSPA0.1」と称する製剤の場合は、0.9のN/P比で約10%のオリゴが遊離で保持された。「DOSPA0.25」と称される製剤については、0.8のN/Pで遊離オリゴの量は約5%であり、そして「DOSPA0.5」製剤では、N/P=1の最も低い測定値で遊離オリゴは約5%であった。粒子サイズは一連の検討全てについておよそ同一であって、濾過性は全ての場合で79%を越えて、「0.1」及び「0.5」製剤で最も高かった。図9〜11は、スペルミンを補完した、低量のカチオン性脂質で調製したリポソームが、観察可能な非特異的細胞相互作用なしで、特異性の高い標的化取り込みを提示することを示す。
【0142】
実施例13
(検討の説明)
SSBハウスキーピング遺伝子に対する21−23nt siRNAを低いカチオン性脂質含量のリポソーム内への封入について試験した。先のオリゴヌクレオチドを用いる製剤検討から、DNA(又はRNA)由来の陰イオン電荷の10%に結合するのに十分なDOSPAを有している製剤を続く検討に用いるべきであると確定した。封入効率及びサイズの観点からより高いレベルのDOSPAを含有しているものと同様の結果をもたらすという理由で、最も低い含量を有する製剤を選択したが、最小の陽イオンレベルは血流及び内皮の成分との非特異的相互作用がより少ないので、インビボにおける標的化に対する選択性の増強をもたらし得る。図6〜8から、過剰なスペルミン、すなわち、良好な封入のための最小量より高い比率を有することは、サイズ、封入効率又は標的特異的細胞相互作用に関して悪影響を何ももたらさないと思われる。従って、リポソーム封入及び保管中の安定性を試験するためにN/P=1.5及び3.0のスペルミンの比率を用いる、1つの独特な脂質製剤を選ぶことを選択した。
(脂質製剤)
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
これらの試料は、次いで、先に記載したようにF5−PEG−DSPEの添加により抗Her2受容体特異的にして、水にセファロース(登録商標)4B−Clカラム上で精製して、その後濃縮溶液から、5mM Hepes、144mMNaCl、pH7.25(HBS)、又は5mM Hepes、pH7.25、10%スクロース(w/w)の最終保管緩衝液を作成した。
【0146】
試料を上記のように溶液中4℃で又は凍結して−80℃での何れかで1晩保管した。(注記;セファロース(登録商標)4B−Clカラム上で精製した後、遊離物(封入されないsiRNA)が分離されるので、精製した試料で色素到達性が低いというのが正常である)。精製後に、上記の試料は、(N/P=1.5、NT、F5)及び(N/P=3.0、NT、F5)の色素到達性がそれぞれ15.41±0.61、18.85±0.32、14.67±0.58及び19.37±0.55であった。
【0147】
【表3】
【0148】
(結果)
リポソームはF5−PEG−DSPEと共培養して37℃で1晩加熱すると標的化できる。添加されたタンパク質結合物の初期量は15μg/umolPLであった。取り込まれなかった結合物からリポソームを精製すると、リポソームに結合した結合物の量は、試験した2つの製剤で13.64±0.64及び10.59±0.39であった。これは70%を越える取り込み効率を示す。このことは、siRNAと低量のカチオン性脂質を含有しているリポソームがこの方法で容易に標的化できることを示している。
【0149】
一般に核酸は、しかしより具体的にはsiRNA/shRNAは、保管中に非常に分解されやすく、凍結保管がベストである。siRNA/shRNAを扱う作業には特別な取扱い予防措置が推奨される。リボヌクレアーゼはヒトに接触する表面の殆どに豊富に存在しているので、特別なリボヌクレアーゼ除去溶液で完全に除去すべきである。要するに、最も注意深い取扱い手段によってもsiRNA/shRNA分解を引き起こすことは非常に簡単である。RNAiのノックダウン効果が配列特異的であるように、部分分解はしばしば所定のsiRNA/shRNAが所望のノックダウン効果を有する能力に逆の影響を与える。従って、ヌクレアーゼ由来の化学的分解及び/又は生物学的分解を阻止する媒体中でリポソームを貯蔵することが大いに有益である。
【0150】
リポソームは凍結前に10%スクロースの抗凍結剤溶液と混合して凍結保管できるという仮説を検証した。スクロースは、リン脂質頭部基の水和を保持し、そして脂質の再整列及び二重層変形を阻害することによってリポソームの凍結を助けることが知られている。
【0151】
上の結果から、スクロースの存在下でリポソームを凍結することは、緩衝食塩水中に冷凍保存された試料と比べてサイズ又はsiRNA封入効率に悪影響を及ぼさないことが観察された。24時間が凍結状態におけるより長い時間を表わすと仮定すると、これはリポソームにより長い保管寿命をもたらして、これらを脂質又は核酸分解から保護できる。
【0152】
(siRNA/shRNAを有するリポソームの製造における特別な予防措置)
本発明の方法は、粒子形成脂質がミセルを超えて凝集相を形成せず、そしてDNA自体が混合前に未だ可溶性である環境において、DNA−脂質リポソームの組み立てを可能にする。このような条件は50%(v/v)エタノールを含有している多数の異なった有機溶媒/水混合物中で満たされることを見出した。しかしながら、これは通常脂質及びDNA溶液を混合前に加熱することによって達成される。閉鎖環状プラスミドDNAの封入のための、最適な温度は60℃であることを見出した。しかしながら、DNA(又はRNA)の短い断片はより低い温度で「溶解」又は変性することは周知である。DNAの溶解は二本鎖(デオキシ)リボ核酸が、塩基間の水素結合の切断を介して巻き戻されて一本鎖に分かれるプロセスである。
【0153】
RNAiは、RNA−誘発サイレンシング複合体(RISC)によって制御されて、細胞の細胞質内の短い一本鎖RNA分子によって開始されるRNA依存性遺伝子サイレンシングプロセスである。従って、二本鎖siRNAの送達は非常に重要である。封入前のsiRNA又はshRNAの変性は非活性粒子を生じさせると思われるので、siRNA又はshRNA配列それぞれの溶解温度を封入前に測定することが賢明である。
【0154】
溶解温度(Tm)(すなわち、siRNAのうちの50%が一本鎖形態で、50%が二本鎖形態であるときの温度として定義される、siRNA溶解転移温度)を測定するために、siRNAを最適な緩衝液(表4を参照されたい)に希釈して、各種温度における260nmの吸光度を測定した。260nmにおける吸光度の増大はsiRNA鎖巻き戻しを示す(図13を参照されたい)。
【0155】
【表4】
【0156】
siRNA又はshRNAの配列における比較的小さな変化は二本鎖の熱安定性に著しく影響を及ぼし得る。特に、末端におけるA−Uを多く含む塩基対合は二本鎖を末端で不安定にして巻き戻しを誘導する。微粒子/リポソーム製剤で一般的に用いられる溶液中でSSB及びコントロールのsiRNAを試験した。エタノールとの50/50混合物中の5mM Hepes(pH7.25)のようなイオン強度が低い緩衝液が好ましい緩衝液である。二本鎖形態を保持するために、SSB siRNA又はshRNAを用いるリポソームの調製は53℃より低い温度で行わなければならない。40℃及び45℃でSSB siRNAを含有しているリポソームの封入効率及びサイズを測定した。
【0157】
【表5】
【0158】
図13は、コントロールのsiRNAが45℃で巻き戻しに対して安定であることを示す。従って、この温度を安定温度として用いて、45℃及びより低い温度、40℃で、より不安定なSSB siRNAを含有しているリポソームと比較した。微粒子/リポソーム製剤は、N/P=1.5の比率でスペルミンを有するsiRNA100μg当り7.5/1000/667/50/5nmol比のDOSPA/DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DSであった。
【0159】
この低量のカチオン性脂質を含有している製剤を用いる、より低い温度でのSSBリポソームの調製は、封入効率及びサイズに対して悪影響を及ぼさなかった。従って、溶解を最小にして良好な封入を保持するために比較的低い温度でリポソームを調製することが可能である。
【0160】
更に、プラスミドリポソームに対する標的化リガンドの挿入は通常60℃で行われる。温度を上昇させずにこの方法でリポソームを標的化できるか否かを評価するために、SSB siRNAを含有している同一のリポソームの低い温度での挿入効率を試験した(図14を参照されたい)。
【0161】
【表6】
【0162】
(結果)
siRNA(又はshRNA)の分解を起こしにくくして、標的化リガンド(F5−PEG−DSPE)の取り込みを低温で効率的に実施できることが見出された。リポソーム製剤は大部分はDOPC及びコレステロールからなり、そして低い脂質転移温度は恐らくscFV−脂質結合物の二重層への取り込みを補助する。
【0163】
(結論)
RNAの短い配列及び短いオリゴヌクレオチドは、カチオン性脂質を含んでいないか、又は非常に少量のカチオン性脂質を含んでいるリポソームに封入することができ、そしてリポソーム形成プロセスを補助してより再現可能な製剤を提供するだろう。製剤中のカチオン性脂質の量は典型的に総脂質の0.5%未満であって、これは多くの代替製剤、例えば、30%のカチオン性脂質を含む典型的な非標的化SNALP製剤で用いられるより極めて少なく、それらを肝臓のような臓器を標的にするために有用にするが、標的化送達のための遠位の腫瘍部位への到達には適していない(Morrissey DV et al., Potent and persistent in vivo anti-HBV activity of chemically modified siRNA, Nature Biotechnology (2005) Aug: 23(8):1002-7)。
【0164】
その他の実施態様
上述の説明より、本明細書に記載されている本発明はそれを多種の用途及び条件に適用させるために変更及び修正できることは明らかである。このような実施態様も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0165】
本明細書の変数についての何れかの定義における要素の列挙の記述は、当該変数が、列挙されている要素のうちの何れか単一の要素又はそれらの組合せ(又はサブ組合せ)として定義されることを包含している。本明細書の実施態様の列挙は、何れかの単一の実施態様又はその他の何れかの実施態様若しくはその一部との組合せとしての実施態様を包含している。
【0166】
この明細書に述べられている全ての特許及び刊行物は、それぞれの独立した特許及び刊行物が参照により取り込まれていることを具体的に及び個々に示しているのと同じ程度に、参照により本明細書に取り込まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]