【実施例】
【0073】
実施例1:ポリアミンを加えた脂質製剤
(略語):
GFP:緑色蛍光タンパク質
MES:2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
TE緩衝液:Tris/EDTA緩衝液
HBS:HEPES緩衝液
PEI:ポリエチレンイミン
ハンクスBSS:ハンクス平衡塩類溶液
DOTAP:ジオレオイル トリメチルアンモニウムプロパン
DOPC:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン
Chol:コレステロール
DOPE:1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン
CHEMS:コレステリル ヘミコハク酸
PEG:ポリエチレングリコール
PEG−DSG:PEG−ジステアロイルグリセロール
DOSPA:N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチル−アンモニウム トリフルオロ酢酸
CHIM:コレステロール イミダゾール誘導体
DiI(3)−DS:カチオン性脂質染料:
【0074】
【化1】
【0075】
(リポソームの調製)
50%エタノール/50%の20mMのMES(pH5.1)中で、ポリアミンをGFPプラスミドDNAと混合した。脂質混合物を50%エタノール/50%2mMのTE緩衝液(pH8.0)に溶解した。ポリアミン混合物と脂質混合物を60℃で2分間加熱し、混合して、撹拌しながら室温まで冷却した。混合物を透析カセット(MWCO 10,000)に移して、生理食塩水(2回)及び次いでHBS(pH7.25)に対して透析した。4時間の総透析時間後に、試料を取り出して、DNA濃度、色素到達性及びサイズについて試験した。Picogreen(登録商標)色素到達性アッセイは、実施例12に下記するように実施された。
【0076】
PEI(分子量600)、PEI(分子量1800)及びスペルミンをポリアミン分子として用いた。PEI(窒素)のDNA(リン)に対する2つの比、N/P=1.33及び0.67を用いた。濁りの出現を観察すると、N/P=1.33でDNAは50%エタノール混合物中で凝集する。
【0077】
抗Her2−脂質結合物を添加して試料を免疫標的化し、GFPトランスフェクションを測定した。上記のようにして試料を調製して、例えば、米国特許第6,210,707号に記載されている挿入方法によって、F5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物の15μg/μmolPCを加えて標的化(T)した。非標的化(NT)粒子は、抗体結合物を添加していない粒子である。
【0078】
SKBR3細胞(10%のFBSを有するMcCoy’s5A培地中で生育した、ATCC(登録商標)#HTB−30(登録商標))を前日に100,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに固定した。製造会社の説明書に記載のようにしてDNAをリポフェクタミン(登録商標)と混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。1μgの封入したDNA及び遊離のDNAも各ウェルに添加した(2通り)。24時間後に、細胞を洗浄して、1mLの培地を加えた。さらに24時間後、細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)についてアッセイした。これにはハンクスBSS溶液で2回洗浄し、GFP陽性細胞を蛍光顕微鏡で観察することを伴った。GFP発現は、多数の視野に渡る(n>3)蛍光細胞数/総細胞数×100として計算する。
【0079】
(脂質製剤)
脂質の量は、DOTAP/DOPC/Chol/DOPE/CHEMS/CHIM/Dil(3)−DSとして示す。
製剤1:1μgのDNA当り6/20/7/5/6/3.67/0.47/0.05の比で上記のような脂質を含む。
製剤2:DNAにN/P=1.33で加えたPEI600とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤3:DNAにN/P=1.33で加えたPEI1800とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤4:DNAにN/P=1.33で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤5:DNAにN/P=0・67で加えたPEI600とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤6:DNAにN/P=0・67で加えたPEI1800とともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤7:DNAにN/P=0.67で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当り3/16/4/15/5/0.225/0.045ナノモルの比で上記のような脂質を含む。
製剤8:DNAにN/P=0.9で加えたスペルミンとともに、1μgのDNA当りDOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS(0.3/15/10/0.3/0.03)nmolの脂質製剤。
【0080】
(結果)
製剤番号 サイズnm±nm 色素到達性%
1 114.7±50.4 21.4±1.2
2 149.3±46.2 35.0±1.0
3 147.8±49.1 26.5±0.8
4 155.6±31.8 45.1±1.9
5 126.3±54.0 24.4±1.1
6 115.4±51.2 23.3±1.1
7 126.1±45.3 35.8±1.9
8 166.1±72.8 35.9±3.8
【0081】
(観察された遺伝子発現結果)
24時間後に、標的化されたリポソームの大部分が取込まれたのに対して、非標的化リポソームは取り込まれなかったことが明らかになった。これは脂質マーカーとして用いた、DiI(3)−DS蛍光発光によって判定された。しかしながら、リポフェクタミン(登録商標)2000試料のみが何れかのGFPシグナルを示す。48時間時点で、番号3,5及び6の標的化バージョンが番号1、2、4又は7の標的化バージョンより高いGFPシグナルを発した。しかし、標的化試料8は他の何れのリポソームよりほぼ2倍高いレベルのGFPを発した。全ての場合において、非標的化試料はGFPシグナルを有していなかった。リポフェクタミン(登録商標)2000は48時間時点で最も高いGFPシグナルを発した。
【0082】
(結論)
ポリアミンは、粒子の広範な凝集を引き起こさずに、リポソーム内に首尾良く取り込むことができる。しかしながら、このリポソームは色素到達性により感受性が高く、そしてリポソームが僅かに大きいということは注目に値する。色素到達性の増大が不完全なDNA封入に起因するのか否か、又はリポソームが封入されたDNAの保護を減少させるのか否かは、この時点では分かっていない。
【0083】
製剤8がDNAの保護をもたらすことは全く意外なことであった。この製剤はトランスフェクションアッセイにおいてどの試料のそれより最も高いGFPシグナルを発した。この製剤に存在するカチオン性脂質の量(+/−=0.1)は、このような方法でカチオン性リポソームを形成するためにDNAに結合する期待される量(先行技術に基づく)をはるかに下回っている。製剤DOTAP/POPC/Cholを用いるカチオン性リポソームは+/−<1.67では適切に形成されない(これは透析の間に凝集する)。
【0084】
実施例2
(方法)
上記のようにして50%エタノール溶液中でDNA(100μg)を調製した。PEI600の原液から、N/Pが0.067、1.33及び4になるような体積で一定量を加えた。別に、2mMのTE緩衝液(pH8.0)及びエタノール(50v/v%)を調製した。溶液を60℃に2分間加熱して混合した。試料を上記のように冷却して透析した。DNA濃度及び色素到達性を上記のように測定した。
【0085】
(結果)
プレート1 プレート2 色素到達性
試料 [dna]ng/ml stdev [dna]ng/ml stdev % stdev [DNA] ug/ml stdev
空
DNA 729.11 6.8 779.12 17.8 93.6 2.31 23.37 0.53
N/P 0.67 695.12 1.76 771.96 17.95 90.0 2.11 23.16 0.54
N/P 1.33 505.75 3.72 527.79 19.23 95.8 3.56 15.83 0.58
N/P 4.0 467.52 2.63 506.85 17.8 92.2 3.28 15.21 0.53
【0086】
(結論)
PEIのDNAへの添加はPicogreen(登録商標)の結合を阻害しなかった。従って、リポソーム封入方法の間にDNAに提供される何れの保護も、たとえ製剤中にPEIが含まれていても、脂質の封入によりもたらされたはずである。
【0087】
実施例3
以下の実施例は、リポソーム組成物からカチオン性脂質を除去できるか否かを検討するために行った。
【0088】
(方法)
脂質製剤=DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA1μg当り30/1500/1000/30/3nmol
製剤1:DNA(プラスPEI N/P=0.9)と混合した上記の脂質
製剤2:DNA+PEI N/P=0.9
製剤3:DNAと混合した上記の脂質
製剤4:DNA(+PEI N/P=0.9)と混合した上記の脂質(ただし、DOTAP無し)
【0089】
(結果)
製剤 色素到達性
% stdev サイズ(nm)
1 21.5 0.9 183.5±60
2 93.2 2.4 N.D.
3 31.2 1 248.8±67.2
4 24.0 0.7 289.6±112.5
【0090】
(結論)
ポリアミン又は高分子アミンと前もって接触させたDNAを用いると、カチオン性脂質を用いずに、>75%のDNAを封入しているリポソーム粒子を製造できる。
【0091】
実施例4
一本鎖陽イオン性界面活性剤の効果を検討するために追加試験を行った。
【0092】
(方法)
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)及びテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)をDOTAPの代わりに用いる以外は、実施例3、製剤1と同様にリポソームを調製した。
【0093】
製剤 色素到達性 サイズ(nm)
%
HTAB 31.6±0.6 202.8±48.3
TTAB 27.6±0.8 193.4±69.0
【0094】
(結論)
一本鎖陽イオン性両親媒性物質は、ポリアミン/高分子アミンと予め濃縮されたDNAを有する低−カチオン性−脂質リポソームを作成するために用いることができる
【0095】
実施例5
DNAのポリアミン又は高分子アミンとの事前接触が、カチオン性脂質を何ら含んでいない中性脂質リポソーム内にDNAを効果的に封入できるかを試験する。DiI(3)−DSは実験を助ける目的で包含させたが、治療目的のリポソームには通常包含させない。
【0096】
(方法)
製剤1:DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り0/1500/1000/30/3nmol
製剤2;DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り0/1500/1000/30/3nmol(+スペルミン、N/P=1)
製剤3:DOTAP/DOPC/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DSをDNA1μg当り30/1500/1000/30/3nmol(+スペルミン、N/P=0.9)
【0097】
(結果)
製剤 色素到達性 サイズ(nm)
%
1 80.3±4.3 260.7±70.9
2 26.2±0.9 193.4±69.0
3 32.2±1.1 194.3±47.3
【0098】
(結論)
カチオン性脂質の非存在下で、核酸濃縮剤として作用するもの、例えば、スペルミンのような、ポリアミン又は高分子アミンの核酸溶液への添加は、有機−水性単相法を用いる中性脂質リポソーム内へのDNAの効果的な封入をもたらす。ポリアミン又は高分子アミンがないと、DNAは効果的に封入されない。
【0099】
実施例6
スペルミンで事前濃縮したDNA(N/P=1)を有するDOPC/Chol(3:2)及び1%PEG−DSGの製剤を用いて、DNA封入及び粒子サイズの総脂質量に対する依存度を試験する。
【0100】
(方法)
実施例1のように粒子を作成した。
脂質製剤:DOPC/Chol/PEG−DSG
製剤A:DNA1μg当りの脂質比率1200/800/20
製剤B:DNA1μg当りの脂質比率1000/667/17.5
製剤C:DNA1μg当りの脂質比率750/500/12.5
製剤D:DNA1μg当りの脂質比率500/333/8.3
製剤D:DNA1μg当りの脂質比率1500/1000/25
【0101】
(結果)
製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
A 19.9±0.7 182.6±52.8
B 22.2±0.8 201.2±82.2
C 25.2±0.9 193.4±86.2
D 34.4±1.2 222.4±97.0
E 21.8±0.7 213.2±85.0
【0102】
(結論)
製剤A、B、及びEは約20%の色素到達性を有していた。試料Cは多少高い色素到達性を有していた。最も高い色素到達性及び最も大きいサイズの粒子は試料Dであった。従って、DNAmg当り500/333/8.3ミリモルの成分の脂質量は低すぎるかもしれず、これより大きい比率で用いることが好ましい。高すぎる比率はDNAを何ら含んでいないリポソームを誘導する可能性もあるので、DNAを安定に封入する脂質の最小量が好ましいだろう。従って、試料B又はCが最適である。
【0103】
実施例7
以前のリポソームは、pH滴定可能な脂質/カチオン性及び中性脂質を混合しており、DNAとの静電相互作用を最大にするためには、混合時に溶液のpHを5.5未満にする方法で作成された。その後、低いpHは、ルシフェラーゼ及びGFPの両方をコードするプラスミド活性の活性に有害作用を有していることが分かった。
【0104】
この検討は、中性脂質及びDNAのポリアミン又は高分子アミンとの事前混合を用いて作成するリポソームが低いpHでなければならないかを、及び室温で混合することでそれらを作成できるかどうかも確かめるためであった。また、不飽和脂質HSPC(水素化大豆ホスファチジルコリン)をDOPCの代わりに用いて、その効果を測定した。
【0105】
(方法)
製剤1:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
溶液のpHが5.5である方法で混合。60℃で2分間加熱。実施例1に詳細に記載。
製剤2:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、60℃で2分間混合。
製剤3:DOPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、23℃で2分間混合。
製剤4:HSPC/Chol/PEG−DSG:DNA(+スペルミンN/P=1)
DNA1μg当り(750/500/12.5)
5mMのHepes中、pH7.4、23℃で2分間混合。
【0106】
(結果)
製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
1 21.3±0.9 237.6±105.4
2 18.1±0.8 233.5±100.5
3 20.0±0.7 463.7±223.3
4 96.9±3.2 250.8±113.4
【0107】
(結論)
高いDNA保護及び小サイズを兼ね備えたリポソームを作成するためには60℃で混合することが必要であると思われる。室温での混合は凝集を引き起こした。一方をpH5.5で混合(#1)して、他方をpH7.4で混合(#2)した以外は同様に調製したリポソームは色素到達性及びサイズの両方で非常に似ているとみられる。従って、ポリアミン又は高分子ポリアミンと事前混合した(このケースではスペルミンと事前混合した)DNAを含有している中性リポソームを調製するために低いpHは必要ではないだろう。
【0108】
本検討におけるHSPCの使用はDNAの封入をもたらさなかった。しかし、脂質又はPC/Chol比に対するDNAの比率を、DNA封入を増大させるために最適化できる。
【0109】
実施例8
製剤においてPEG−DSGの量を増大することの効果を次の実験で検討した。
【0110】
(方法)
脂質及びDNAを50%エタノール/50%5mM Hepes(pH7.4)に別々に溶解して、混合する前に2分間加熱した。DNAはスペルミンと前もって濃縮した(N/P=0.9)。上記のようにして透析を行った。
【0111】
製剤5:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/0/1.67 0%PEG−DSG
製剤6:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/8.33/1.67 0.5%PEG−DSG
製剤7:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/16.7/1.67 1.0%PEG−DSG
製剤8:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/33.3/1.67 2.0%PEG−DSG
製剤9:DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DS
1000/667/83.3/1.67 5.0%PEG−DSG
【0112】
上記のようにして試料を調製して、例えば、米国特許第6,210,707号に記載されている挿入手法によって、15μg/umolPCのF5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物を加えて標的化(T)した。非標的化(NT)リポソームは抗体結合物を加えていない粒子である。
【0113】
(結果)
製剤 色素到達性 サ イ ズ
% nm
5 37.0±1.2 405.5±209.2
6 42.0±1.4 289.2±124.5
7 25.5±0.8 216.4±85.4
8 29.3±0.7 203.6±89.9
9 23.6±0.8 201.6±84.1
【0114】
SKBR3細胞(10%FBSを有するMcCoy’5A培地で生育)を100,000細胞/ウェルの密度で前日に24ウェルのプレートに蒔いた。DNAをリポフェクタミン(登録商標)2000と製造会社の説明書に記載されているようにして混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。1μgのDNAを封入したリポソーム、及び遊離DNAのリポソームもそれぞれのウェルに添加した(2通りに)。24時間後に、細胞を洗浄して1mLの培地を加えた。更に24時間後、細胞を緑色蛍光タンパク質(GFP)についてアッセイした。これは、ハンクスのBSS溶液で2回洗浄すること、及びGFP陽性細胞を蛍光顕微鏡下で観察することを伴っていた。GFP発現は、多数の視野(n>3)に渡って、(蛍光発光細胞数/総細胞数)×100として計算する。
【0115】
GFP発現についてのPEG−DSG含量の依存
ウェル当り100,000細胞を蒔種−48時間時点
試料番号 PFG-DSG% 細胞数 GFP数 GFP% ave stdev
6NT 0.5 67 0 0 0 0
6T 81 2 2.5 2.5 0
7NT 1 57 0 0.0 0 0
7T 57 7 12.3 9.8 3.2
46 5 10.9
64 4 6.3
8NT 2 71 0 0.0 0.0 0.0
8T 81 4 4.9 9.3 6.2
76 5 6.6
55 9 16.4
9NT 5 41 0 0.0 0 0
9T 53 9 17.0 15.1 6.1
73 6 8.2
45 9 20.0
LIP2000 53 13 24.5 33.2 9.4
69 22 31.9
44 19 43.2
DNA 52 0 0.0 0 0
細胞 73 0 0 0 0
ウェル当り30,000細胞を蒔種−48時間時点
7NT 1 34 0 0 0 0
7T 40 3 7.5 11.5 6.0
38 7 18.4
23 2 8.7
8NT 2 17 0 0 0 0
8T 26 5 19.2 16.1 9.7
39 2 5.1
21 5 23.8
9NT 5 43 0 0.0 0 0
9T 22 5 22.7 14.1 8.4
44 6 13.6
50 3 6.0
【0116】
(結論)
特定量のPEG−DSGは最適なリポソーム形成に有益である。0.5モル%を越えると合理的に効率的なDNA封入を可能にして小さい粒子を生じさせる。0.5モル%未満では、より大きい粒子の形成を招く。増大したポリエチレングリコール化はGFP発現を阻害しない。
【0117】
実施例9
実施例8の製剤を用いて、DOPEの包含を検討した。
【0118】
(方法)
製剤9:上記のとおり(実施例8を参照)
製剤11:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(900/100/667/83.3/1.67) 10モル%DOPE
製剤12:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(800/200/667/83.3/1.67) 20モル%DOPE
製剤13:DOPC/DOPE/Chol/PEG−DSG/DiI(3)−DS
DNA(+スペルミンN/P=0.9)1μg当り(600/400/667/83.3/1.67) 40モル%DOPE
【0119】
上記のように試料を調製して、15mg/ミリモルPCのF5−PEG−DSPEである抗体−脂質結合物を加えて標的化した。30分間60℃で加熱して挿入手法を開始した。得られた溶液を氷水中で急冷し、0.45μmのPESフィルターを通して試料を滅菌した。試料をSKBR3細胞に添加して遺伝子発現も試験して、48時間後にGFP陽性細胞をカウントした。
【0120】
(結果)
試料 DOPE 色素到達性 サイズ Stdev
モル% % nm(平均) (ガウス分布)
9NT 0 23.6±0.7 201.6 84.1
9T 0 25.6±0.9
11NT 10 26±0.8 206.2 72.9
11T 10 34.1±1.3
12NT 20 26.9±1.1 223.1 101.3
12T 20 38±0.6
13NT 40 33.7±1.4 213.1 92.7
13T 40 39±0.77
【0121】
トランスフェクション効果
DOPE 細胞 GFP+ GFP ave stdev
番号 モル% 数 数 %
9NT 0 44 0 0 0 0
9T 0 38 7 18.4 23.1 6.3
34 7 20.6
33 10 30.3
11NT 10 36 0 0 0
11T 10 49 8 16.3 16.7 3.6
39 8 20.5
30 4 13.3
12NT 20 40 0 0 0
12T 20 32 9 28.1 23.4 6.6
32 6 18.8
13NT 40 47 0 0 0
13T 40 40 2 5.0 10.5 6.9
36 3 8.3
33 6 18.2
Lipo2000 26 13 50.0 60.0 14.1
10 7 70.0
DNA+スペルミン 35 0 0.0 0.0 0.0
1:0.9 46 0 0.0
DNA 49 0 0 0.0 0.0
細胞 42 0 0 0 0
【0122】
(結論)
脂質に基づく担体によるトランスフェクションに対する「ヘルパー」脂質としてのDOPEの役割について従来の見解に反して、DOPEの包含はこれらのリポソームのトランスフェクション効率を増大しなかった。逆に、DOPEを含有している標的化試料は10%未満のDOPEを有している対応する試料より実質的に高い色素到達性を有している事は注目に値する。更に、スペルミンはそのままでは細胞内にDNAを発現させることはできず、DNAの発現は遺伝子発現を引き起こす事前濃縮DNAを封入している標的化−リポソームの組み合わせであることを示唆している。
【0123】
実施例10
50%エタノール水性溶液中、60℃で培養した後のレポータープラスミドの活性に対するpHの効果を評価するために、以下の実験を行った。
【0124】
(方法)
TE緩衝液(pH8.0)中の保存DNA溶液由来の50μg/mlのDNA濃度でpH範囲が約4〜7.2の緩衝溶液中で、GFP及びルシフェラーゼレポータープラスミドを調製した。適切なpH範囲に広がるように、選ばれた2つの緩衝液は、共に5mM濃度の、HepesとMESであった。上記溶液の1mLアリコートに、同体積のエタノールを加え、混合して、得られた溶液を60℃で10分間培養した。冷却後、試料をHepes緩衝食塩水(HBS、pH7.25)に対して1晩透析した。試料を無菌条件下で滅菌濾過して、DNA濃度を260nmにおけるUV吸収によって測定した。
【0125】
SKBR3細胞(10%FBSを有するMcCoy’5A培地中で生育)を24ウェルのプレートに前日、100,000細胞/ウェルの密度で蒔いた。DNAをリポフェクタミン(登録商標)2000と製造会社の説明書に記載のように混合して、ウェル当り1μgのDNAを細胞に添加した。6時間後、細胞を洗浄して1mLの培地を添加した。更に18時間後に、それぞれのレポーター遺伝子についてアッセイした。GFPプラスミドについては、ハンクスのBSS溶液で2回の洗浄、及びGFP陽性細胞について蛍光顕微鏡下での観察、又はルシフェラーゼ発現については、0.1Mリン酸ナトリウム溶液に溶解すること、及びルシフェリン投与後に照度計を用いるルシフェラーゼ読み出しを伴っていた。精製したルシフェラーゼを用いて標準曲線を作成して、MicroBCA(登録商標)アッセイ(Pierce)を用いてタンパク質を測定した。GFP発現は多数の視野に渡って(n>3)、蛍光細胞の数/細胞の総数×100として計算した。ルシフェラーゼ量を総タンパク質1μg当りのルシフェラーゼngとして表わした。結果を以下に示す。両方のグラフは、それぞれの保存溶液からのDNA(すなわち、DNAはエタノール添加及び加熱処理されていない)とリポフェクタミン(登録商標)2000との複合体から得られた発現に正規化した。「GFP発現細胞に対するpHの効果」は、各種pHにて50%エタノール中で事前培養したGFPをコードするプラスミドDNAのDNA細胞−トランスフェクション活性に対する効果を意味する。
【0126】
(結論)
プラスミドDNAをpH7以下の水性エタノール溶液中で60℃に10分間加熱することはプラスミドを様々な程度に不活性化する(
図1)。このプロセスは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子でも観察されるので、GFP遺伝子の配列に特異的ではない。
【0127】
実施例11
低いpHの50%エタノール中への最小DNA暴露時間におけるDNAトランスフェクション活性に対する効果を試験するために、以下の実験を行った。
【0128】
(方法)
DNAの低pH環境への暴露を最小限にするために、DNAをより高いpHの緩衝液中で加熱して、脂質含有エタノール溶液と混合するときだけpH滴定可能な脂質と相互作用するのに適しているレベル(pH5.5)にpHを下げるように、50%エタノール中の混合条件を最適化することにした。
【0129】
第1に、溶液を55〜60℃にするのに必要な時間を確認した。結果を
図2に示す。溶液を所望温度にするのに約2分で十分であることが分かった。
【0130】
第2に、低pH条件へのDNAの暴露を最小限にするために、7.0を越えるpHで比較的低い緩衝液(例えば、TE、5mMのTris−HCl、−2mMのEDTA、pH8.0)でDNA溶液を調製して事前加熱し、次いで、より低いpH及び/又はより強力な緩衝液の事前加熱した脂質溶液と混合して、そして次いで素早く冷却することが推奨された。2mMのTE緩衝液(2mMのTris、0.4mMのEDTA、pH8.0)の溶液を等体積の20mMのMES(pH5.1)と混合するとpH5.5の溶液を生じることが分かった。
【0131】
2mM TE緩衝液のエタノール溶液(50v/v%)中のDNA(50μg)を等体積の20mM MES(pH5.1)のエタノール溶液(50v/v%)と混合して60℃で2分間培養した後、得られた溶液を透析し、精密濾過で滅菌して、上記のようにリポフェクタミン(登録商標)2000を用いてそのトランスフェクション活性を検討した。結果は次の通りである:非処置DNA(陽性コントロール)、100±1.4%;処置DNA,72.7±9.7%。
【0132】
(結論)
上記の方法でDNAを処置するとプラスミドが受ける損傷を最小化して、70%を超えるレポーター遺伝子の活性を保持する。
【0133】
実施例12
製剤中のDNAに対するカチオン性脂質の比率を変えることにより、リポソーム上の正味電荷を負から正まで変えるように一連のリポソームを作成した。カチオン性脂質、中性双性リン脂質DOPC及びDOPE、コレステロール、PEG化脂質、並びに蛍光脂質(粒子の可視化を補助するため)をカチオン性脂質の量だけを変えるような方法を用いて、組成がX/15/10/4/0.3/0.03nmol/μgDNAである、製剤DOSPA/DOPC/Chol/DOPE/PEG−DSG/DiI(3)−DSを用いて、リポソームを調製した。各試料の一部を、先に記載されているように(M.E. Hayes et al., Genospheres: self-assembling nucleic acid-lipid nanoparticles suitable for targeted gene delivery, Gene Ther. 13(2006) 646-651)、15μg/umolリン脂質の比でF5−PEG(2000)−DSPE結合物を挿入してHER2に標的化した。
【0134】
リポソームを作成した後、これらを蛍光顕微鏡によって、DNA封入及びHER2受容体を過剰発現する培養ヒト癌細胞(SKBR3)と相互作用する能力について試験した(
図3)。
【0135】
(DNA封入効率の測定)
一般に、DNA(又はsiRNA/オリゴヌクレオチド)封入は、Picogreen(登録商標)色素到達性アッセイと呼ばれる、簡単で、速い蛍光によるアッセイで測定される。これは、Picogreen(登録商標、Invitorgen)のような分子はDNAと結合すると強い蛍光を発するという見解に基づいている。その非結合状況においては、それは弱い蛍光を発する。Picogreen(登録商標)をリポソームの溶液に添加すると、それは「アクセス可能な」DNAの何れかと結合することによって、蛍光性を示す。アクセス可能な色素は全く封入されていないDNA(遊離DNA)又は部分的に若しくは不完全に封入されているDNAと結合できる。色素は脂質二重層を横切らない。従って、適切に封入されているDNAは何れも色素から保護される。(界面活性剤溶液を添加する方法で)リポソームが崩壊してDNAが放出されると、Picogreen(登録商標)は存在するDNAの総量と結合する能力を有する。標準曲線に外挿することによって、アクセス可能な全てのDNAの濃度を測定できる。それぞれの比率は「色素到達性%」をもたらして、以下のように計算される:
色素到達性%=[DNA]
界面活性剤が非存在/[DNA]
界面活性剤が存在×100
【0136】
標的化核酸リポソームを送達することには、高い陽イオン電荷を有さずに、リポソーム内へDNAを効率的に封入する必要性を含む、多くの主要な難関が存在し、実際に、このような1/1未満の総電荷を有していることは非特異的細胞相互作用を阻止するために好ましい。しかしながら、+/−<1未満の陽イオン比では、DNA封入の効率は劇的に減少する(
図4)。スペルミンのようなポリアミンは静電相互作用を介してDNAと結合できることが知られていて(例えば、
図5を参照されたい)、これはDNA構造において構造変化を誘発できることが示唆されている(Furerstein BG et al., Spermine-DNA interactions: A theoretical study, Proc. Nat. Acad. Sci. USA August 1986, vol. 83, pp5948-5952)。核酸へのスペルミンの添加が何れのカチオン性脂質を使用せずにリポソーム内への封入をもたらせることが観察されている。18−merオリゴヌクレオチド及びsiRNAのような、低分子量の核酸も何れのカチオン性脂質を用いずに効果的に封入できることも見出されている。
【0137】
(検討の説明)
リポソームの小さいサイズ(<200nm)を保持しながら、最適なオリゴ封入をもたらすためにスペルミンと組み合わせて使用できるカチオン性脂質(この場合はDOSPA)の最小量を見つけるために以下の実験を行った。DOSPAとスペルミンの量を変えて、その他の全ての脂質を一定に保持しながら、製剤DOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSによるリポソームを調製した。封入効率、サイズ、濾過性(滅菌0.2μmフィルターを通過する効率)及びリポソームの細胞取り込みを測定した。
【0138】
(カチオン性脂質/DNAリン酸比の算出)
DNA塩基対分子量=330g/mol、
=>1g/330gmol
−1=DNA(又はRNA)1g当り0.00303mol
すなわち、3.03nmolリン酸(又はホスホロチオエート)=1μgDNA(又は(RNA)
【0139】
0.075nmolDOSPA×4(頭部基)DOSPA当りの正電荷=0.3nmol「正」電荷。従って、0.075nmolDOSPAは1μgのオリゴの総リン酸電荷の10%で中和される(又は、結合する)はずである。従って、モル比がオリゴ1μg当り0.075/30/20/8/1.74/0.058nmol脂質のDOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSに対応する製剤は、オリゴから発生する総陰イオン電荷の10%が錯体化されていることを意味している。この試料をDOSPA0.1と称する。従って、25%の電荷と結合するのに十分なDOSPAを有している製剤、すなわち、オリゴ1μg当り0.1875/30/20/8/1.74/0.058nmolのモル脂質比を有するDOSPA/DOPC/Chol/DOPE/Peg−DSG/DiI(3)−DSをDOSPA0.25と称する。この少量のカチオン性脂質は、オリゴの封入を補助するためにスペルミンが補完され、そして以下にN/Pと示される(DNAリン酸に対するスペルミン由来の総Nを示す)。
【0140】
次いで、これらの製剤を先に記載されているように標的化して(例えば、G.Thurston et al., Cationic liposomes target angiogenic endothelial cells in tumors and chronic inflammation in mice, J. Clin. Invest. 101 (1998) 1401-1413 を参照されたい)、Her2過剰発現細胞(MCF7(ATCC(登録商標)#HTB−22(登録商標))/クローン18)内への取込み能力について試験した。
【0141】
(結果)
製剤中に存在するカチオン性脂質の量(陽イオン/陰イオン電荷の準モル比で)に関わらず、N/P=約0.9(N/Pは添加したスペルミン/オリゴリン酸比である)を越える比のスペルミンがオリゴに高い効率で封入をもたらすことが見出された(
図6〜8)。「DOSPA0.1」と称する製剤の場合は、0.9のN/P比で約10%のオリゴが遊離で保持された。「DOSPA0.25」と称される製剤については、0.8のN/Pで遊離オリゴの量は約5%であり、そして「DOSPA0.5」製剤では、N/P=1の最も低い測定値で遊離オリゴは約5%であった。粒子サイズは一連の検討全てについておよそ同一であって、濾過性は全ての場合で79%を越えて、「0.1」及び「0.5」製剤で最も高かった。
図9〜11は、スペルミンを補完した、低量のカチオン性脂質で調製したリポソームが、観察可能な非特異的細胞相互作用なしで、特異性の高い標的化取り込みを提示することを示す。
【0142】
実施例13
(検討の説明)
SSBハウスキーピング遺伝子に対する21−23nt siRNAを低いカチオン性脂質含量のリポソーム内への封入について試験した。先のオリゴヌクレオチドを用いる製剤検討から、DNA(又はRNA)由来の陰イオン電荷の10%に結合するのに十分なDOSPAを有している製剤を続く検討に用いるべきであると確定した。封入効率及びサイズの観点からより高いレベルのDOSPAを含有しているものと同様の結果をもたらすという理由で、最も低い含量を有する製剤を選択したが、最小の陽イオンレベルは血流及び内皮の成分との非特異的相互作用がより少ないので、インビボにおける標的化に対する選択性の増強をもたらし得る。
図6〜8から、過剰なスペルミン、すなわち、良好な封入のための最小量より高い比率を有することは、サイズ、封入効率又は標的特異的細胞相互作用に関して悪影響を何ももたらさないと思われる。従って、リポソーム封入及び保管中の安定性を試験するためにN/P=1.5及び3.0のスペルミンの比率を用いる、1つの独特な脂質製剤を選ぶことを選択した。
(脂質製剤)
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
これらの試料は、次いで、先に記載したようにF5−PEG−DSPEの添加により抗Her2受容体特異的にして、水にセファロース(登録商標)4B−Clカラム上で精製して、その後濃縮溶液から、5mM Hepes、144mMNaCl、pH7.25(HBS)、又は5mM Hepes、pH7.25、10%スクロース(w/w)の最終保管緩衝液を作成した。
【0146】
試料を上記のように溶液中4℃で又は凍結して−80℃での何れかで1晩保管した。(注記;セファロース(登録商標)4B−Clカラム上で精製した後、遊離物(封入されないsiRNA)が分離されるので、精製した試料で色素到達性が低いというのが正常である)。精製後に、上記の試料は、(N/P=1.5、NT、F5)及び(N/P=3.0、NT、F5)の色素到達性がそれぞれ15.41±0.61、18.85±0.32、14.67±0.58及び19.37±0.55であった。
【0147】
【表3】
【0148】
(結果)
リポソームはF5−PEG−DSPEと共培養して37℃で1晩加熱すると標的化できる。添加されたタンパク質結合物の初期量は15μg/umolPLであった。取り込まれなかった結合物からリポソームを精製すると、リポソームに結合した結合物の量は、試験した2つの製剤で13.64±0.64及び10.59±0.39であった。これは70%を越える取り込み効率を示す。このことは、siRNAと低量のカチオン性脂質を含有しているリポソームがこの方法で容易に標的化できることを示している。
【0149】
一般に核酸は、しかしより具体的にはsiRNA/shRNAは、保管中に非常に分解されやすく、凍結保管がベストである。siRNA/shRNAを扱う作業には特別な取扱い予防措置が推奨される。リボヌクレアーゼはヒトに接触する表面の殆どに豊富に存在しているので、特別なリボヌクレアーゼ除去溶液で完全に除去すべきである。要するに、最も注意深い取扱い手段によってもsiRNA/shRNA分解を引き起こすことは非常に簡単である。RNAiのノックダウン効果が配列特異的であるように、部分分解はしばしば所定のsiRNA/shRNAが所望のノックダウン効果を有する能力に逆の影響を与える。従って、ヌクレアーゼ由来の化学的分解及び/又は生物学的分解を阻止する媒体中でリポソームを貯蔵することが大いに有益である。
【0150】
リポソームは凍結前に10%スクロースの抗凍結剤溶液と混合して凍結保管できるという仮説を検証した。スクロースは、リン脂質頭部基の水和を保持し、そして脂質の再整列及び二重層変形を阻害することによってリポソームの凍結を助けることが知られている。
【0151】
上の結果から、スクロースの存在下でリポソームを凍結することは、緩衝食塩水中に冷凍保存された試料と比べてサイズ又はsiRNA封入効率に悪影響を及ぼさないことが観察された。24時間が凍結状態におけるより長い時間を表わすと仮定すると、これはリポソームにより長い保管寿命をもたらして、これらを脂質又は核酸分解から保護できる。
【0152】
(siRNA/shRNAを有するリポソームの製造における特別な予防措置)
本発明の方法は、粒子形成脂質がミセルを超えて凝集相を形成せず、そしてDNA自体が混合前に未だ可溶性である環境において、DNA−脂質リポソームの組み立てを可能にする。このような条件は50%(v/v)エタノールを含有している多数の異なった有機溶媒/水混合物中で満たされることを見出した。しかしながら、これは通常脂質及びDNA溶液を混合前に加熱することによって達成される。閉鎖環状プラスミドDNAの封入のための、最適な温度は60℃であることを見出した。しかしながら、DNA(又はRNA)の短い断片はより低い温度で「溶解」又は変性することは周知である。DNAの溶解は二本鎖(デオキシ)リボ核酸が、塩基間の水素結合の切断を介して巻き戻されて一本鎖に分かれるプロセスである。
【0153】
RNAiは、RNA−誘発サイレンシング複合体(RISC)によって制御されて、細胞の細胞質内の短い一本鎖RNA分子によって開始されるRNA依存性遺伝子サイレンシングプロセスである。従って、二本鎖siRNAの送達は非常に重要である。封入前のsiRNA又はshRNAの変性は非活性粒子を生じさせると思われるので、siRNA又はshRNA配列それぞれの溶解温度を封入前に測定することが賢明である。
【0154】
溶解温度(Tm)(すなわち、siRNAのうちの50%が一本鎖形態で、50%が二本鎖形態であるときの温度として定義される、siRNA溶解転移温度)を測定するために、siRNAを最適な緩衝液(表4を参照されたい)に希釈して、各種温度における260nmの吸光度を測定した。260nmにおける吸光度の増大はsiRNA鎖巻き戻しを示す(
図13を参照されたい)。
【0155】
【表4】
【0156】
siRNA又はshRNAの配列における比較的小さな変化は二本鎖の熱安定性に著しく影響を及ぼし得る。特に、末端におけるA−Uを多く含む塩基対合は二本鎖を末端で不安定にして巻き戻しを誘導する。微粒子/リポソーム製剤で一般的に用いられる溶液中でSSB及びコントロールのsiRNAを試験した。エタノールとの50/50混合物中の5mM Hepes(pH7.25)のようなイオン強度が低い緩衝液が好ましい緩衝液である。二本鎖形態を保持するために、SSB siRNA又はshRNAを用いるリポソームの調製は53℃より低い温度で行わなければならない。40℃及び45℃でSSB siRNAを含有しているリポソームの封入効率及びサイズを測定した。
【0157】
【表5】
【0158】
図13は、コントロールのsiRNAが45℃で巻き戻しに対して安定であることを示す。従って、この温度を安定温度として用いて、45℃及びより低い温度、40℃で、より不安定なSSB siRNAを含有しているリポソームと比較した。微粒子/リポソーム製剤は、N/P=1.5の比率でスペルミンを有するsiRNA100μg当り7.5/1000/667/50/5nmol比のDOSPA/DOPC/Chol/Peg−DSG/DiI(3)−DSであった。
【0159】
この低量のカチオン性脂質を含有している製剤を用いる、より低い温度でのSSBリポソームの調製は、封入効率及びサイズに対して悪影響を及ぼさなかった。従って、溶解を最小にして良好な封入を保持するために比較的低い温度でリポソームを調製することが可能である。
【0160】
更に、プラスミドリポソームに対する標的化リガンドの挿入は通常60℃で行われる。温度を上昇させずにこの方法でリポソームを標的化できるか否かを評価するために、SSB siRNAを含有している同一のリポソームの低い温度での挿入効率を試験した(
図14を参照されたい)。
【0161】
【表6】
【0162】
(結果)
siRNA(又はshRNA)の分解を起こしにくくして、標的化リガンド(F5−PEG−DSPE)の取り込みを低温で効率的に実施できることが見出された。リポソーム製剤は大部分はDOPC及びコレステロールからなり、そして低い脂質転移温度は恐らくscFV−脂質結合物の二重層への取り込みを補助する。
【0163】
(結論)
RNAの短い配列及び短いオリゴヌクレオチドは、カチオン性脂質を含んでいないか、又は非常に少量のカチオン性脂質を含んでいるリポソームに封入することができ、そしてリポソーム形成プロセスを補助してより再現可能な製剤を提供するだろう。製剤中のカチオン性脂質の量は典型的に総脂質の0.5%未満であって、これは多くの代替製剤、例えば、30%のカチオン性脂質を含む典型的な非標的化SNALP製剤で用いられるより極めて少なく、それらを肝臓のような臓器を標的にするために有用にするが、標的化送達のための遠位の腫瘍部位への到達には適していない(Morrissey DV et al., Potent and persistent in vivo anti-HBV activity of chemically modified siRNA, Nature Biotechnology (2005) Aug: 23(8):1002-7)。
【0164】
その他の実施態様
上述の説明より、本明細書に記載されている本発明はそれを多種の用途及び条件に適用させるために変更及び修正できることは明らかである。このような実施態様も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0165】
本明細書の変数についての何れかの定義における要素の列挙の記述は、当該変数が、列挙されている要素のうちの何れか単一の要素又はそれらの組合せ(又はサブ組合せ)として定義されることを包含している。本明細書の実施態様の列挙は、何れかの単一の実施態様又はその他の何れかの実施態様若しくはその一部との組合せとしての実施態様を包含している。
【0166】
この明細書に述べられている全ての特許及び刊行物は、それぞれの独立した特許及び刊行物が参照により取り込まれていることを具体的に及び個々に示しているのと同じ程度に、参照により本明細書に取り込まれている。