【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
a)溶質を有する第1液相と溶質沈殿試薬を有する第2液相とが反応器において並流で接触することにより懸濁状態の沈殿粒子を有する混合物が生成され、第3液相がこの混合物のための分散相を形成するステップと、
b)ステップa)で言及された混合物が第3相により流動化されるステップと、
を有する、反応器において少なくとも一種類の溶質を沈殿させるための方法を扱う。
【0014】
本発明による方法は、これら二つのステップに固有の性質による以下の長所を有する。
−沈殿物の粒子を有する混合物の第3液相による封入と、壁でのこれら粒子の滞留を防止して粒子を包囲する液滴が壁の表面で弾むようにするこの同じ第3液相による混合物の流動化とにより、反応器壁への沈殿物の付着が見られないこと。
−(特に、溶質の最適な沈殿を行うため第3液相の流れを変化させることによる)流動化条件の柔軟性によって反応器での混合物の滞留時間の調節を最適化することが可能であり、反応器壁へ付着しない大型の沈殿粒子を生成するようにこの滞留時間が選択されること。
−本発明による基準に適合していると仮定して、第2液相および第3液相の適切な選択により、沈殿される溶質に応じて方法を適応させることが可能であるという良好な使用柔軟性。
【0015】
上述したように、本発明による方法は、溶質を有する第1液相を、溶質沈殿試薬を有する第2液相と反応室において並流で接触させ、結果的に懸濁状態の沈殿粒子を有する混合物が生成され、第3液相がこの混合物の分散相を形成する第1ステップa)を含む。
【0016】
第1液相と第2液相とが相互に混和性であって、第3液相が第1液相および第2液相を有する混合物と非混和性であると、好都合である。
【0017】
並流は、第1液相と第2液相と第3液相とが同じ方向に循環することを意味し、この並流循環を可能にする方式でこれらが反応器に注入されることをこれが暗示していることに注意する。
【0018】
実用的な観点から見ると、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より高い事例では特に、第1液相と第2液相と第3液相とが、例えば反応器の下方部分で反応器へ注入され、この下方部分が注入ゾーンを形成する。例えば、第1液相の流入口と第2液相の流入口とが注入ゾーンで同じ高さに配設されて相互に対向するため、同時に注入されるとすぐにこれら二つの相が接触し、こうして沈殿粒子の懸濁液を有する混合物を自然に形成する。この構成により、第3液相の流入口は第1液相および第2液相の流入口より下方の注入ゾーンにあるとよい。
【0019】
第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より低い場合には、第1液相と第2液相と第3液相とが、例えば反応器の上方部分で反応器へ注入されるとよく、この上方部分が注入ゾーンを形成する。例えば、第1液相の流入口と第2液相の流入口とが注入ゾーンで同じ高さに配設されて相互に対向するため、同時に注入されるとすぐにこれら二つの相が接触し、こうして沈殿粒子の懸濁液を有する混合物を自然に形成する。この構成によれば、第3液相の流入口は第1液相および第2液相の流入口より上方の注入ゾーンにあるとよい。
【0020】
第1液相と第2液相と第3液相とは連続的または半連続的に注入されるとよい。ここで半連続的注入とは、上述した液相の少なくとも一つが連続的に注入されて、上述した液相の少なくとも一つが(例えば周期的スタート・ストップ型、傾斜型、またはディラック型の注入により)非連続的に注入されることを意味する。
【0021】
分散相とは、第3液相が、沈殿物が形成された第2液相と第1液相を接触させることにより形成される混合物が第3液相に液滴の形で分散される相であることを意味し、通常はこの第3液相が第1液相と第2液相とから生じる混合物と非混和性となるように選択されることに注意する。
【0022】
接触を行うステップa)は、反応器の特定ゾーン、例えば反応器の下方部分(注入ゾーンと呼ばれる)または反応器の上方部分への第1液相と第2液相と第3液相との注入によって従来から行われており、第1液相および第2液相から生じる混合物を第3液相が流動化できるように、好ましくは第3液相の供給流を第1液相および/または第2液相の供給流より多くすべきであることが分かっている。
【0023】
さらに、第3液相についてのこのような供給流の選択は、第1液相と第2液相との間の反応により形成される沈殿粒子を反応器壁に付着させないようにすることもできる。
【0024】
上述したように、第1液相と第2液相とはステップa)の使用中に相互反応を行って、溶質の沈殿物を有する混合物を形成し、この混合物は、流動床条件(上述したステップb)に対応し、流動化とも呼ばれる)で第3液相によって飛沫同伴される。
【0025】
流動化とは、形成された沈殿粒子を含有する液滴を上向き流体流へ懸濁させることを意味し、粒子を含有するこの液滴は流動床を形成し、上向き流体流は第3液相から成ることに注意する。
【0026】
流動床条件の使用は特に、壁への粒子の付着も防止する粒子サイズの増加の結果であり、加えて、この付着が第3液相により発生される封入によっても防止されるという事実によるものでもある。
【0027】
ステップa)およびb)の他に、この方法は、ステップb)に由来する混合物の沈降ステップを含んでもよく、この沈降ステップはは単純な沈下によって行うことができ、この沈降ステップの後にこの沈殿物を収集するステップが続いてもよい。
【0028】
収集ステップは一般的に、沈降した沈殿粒子を抽出することによって行われるとよい。この収集の後には、沈殿粒子が抽出された液相を沈殿粒子から除去するように、濾過、遠心分離、または他のタイプの操作などの固体・液体分離操作と、洗浄および/または乾燥操作が続く。
【0029】
本発明による方法は、上述した注入ゾーンへ再注入され得る第3液相の再利用ステップも含む。
【0030】
本発明による方法は、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度よりも高い事例では特に、
−第1液相と第2液相と第3液相との注入に使用される下方部分(底部分とも呼ばれる)と、
−第1液相および第2液相から生じる混合物の第3液相による流動化に使用される中間部分(中央部分とも呼ばれる)と、
−形成される沈殿物の沈降に使用される上方部分(上部分とも呼ばれる)と、
を有する垂直主軸を持つ流動床反応器において使用されると、好都合である。
【0031】
逆に、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より低い事例では、
−第1液相と第2液相と第3液相との注入に使用される上方部分(上部分とも呼ばれる)と、
−第1液相および第2液相から生じる混合物の第3液相による流動化に使用される中間部分(中央部分とも呼ばれる)と、
−形成される沈殿物の沈降に使用される下方部分(底部分とも呼ばれる)と、
を有する垂直主軸を持つ流動床反応器においてこの方法が使用されるのも好都合である。
【0032】
本発明による方法が、特に使用済み燃料の処理のためのアクチニドのシュウ酸沈殿に特化したものである時には、本方法の枠組みの中で形成される沈殿物はアクチニドシュウ酸塩の沈殿物である。
【0033】
この事例では、
−第1液相は従来通り、少なくとも一種類のアクチニド元素を含む溶質を有する水溶液である(この水溶液は以下では「アクチニド溶液」と呼ばれる)。
−第2液相は従来通り、第1液相に存在するアクチニド元素の沈殿試薬を含有する水溶液であり、この沈殿試薬はシュウ酸である(この溶液は以下では「シュウ酸溶液」と呼ばれる)。
−第3液相は従来通り、第1液相および第2液相と非混合性である有機溶媒を有する有機溶液であり、この有機溶媒はドデカンまたは水素化テトラプロピレン(HTPの略字で知られる)としてもよい。
【0034】
アクチニド溶液は従来通り、硝酸塩の形のアクチニドを含有する。なぜならこれが、通常は使用済み核燃料処理施設でこれらの元素が生成される際の形だからである。
【0035】
特に、本発明による方法が使用済み燃料の処理に使用される時には、関連するアクチニドはウラン、プルトニウム、ネプツニウム、トリウム、アメリシウム、および/またはキュリウムでよい。
【0036】
特に、形成されるシュウ酸塩沈殿物が、酸化物、炭化物、窒化物タイプの核燃料ペレットの製造に使用可能であるアクチニド化合物に変換されることが予定されている時には、これらはウラン、プルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、および/またはキュリウムでよい。
【0037】
以下に記載される特定の実施形態に関して本発明がこれから説明され、この実施形態は例示および非限定を目的として挙げられている。