特許第6054313号(P6054313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054313一種類以上の溶質を沈殿させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054313
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】一種類以上の溶質を沈殿させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/10 20060101AFI20161219BHJP
   G21C 19/46 20060101ALI20161219BHJP
   B01J 14/00 20060101ALI20161219BHJP
   C07C 55/06 20060101ALI20161219BHJP
   C07C 51/43 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G21F9/10 G
   G21C19/46 M
   B01J14/00 Z
   C07C55/06
   C07C51/43
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-555828(P2013-555828)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公表番号】特表2014-514133(P2014-514133A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012053134
(87)【国際公開番号】WO2012116930
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月17日
(31)【優先権主張番号】1151610
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピカール ロマン
(72)【発明者】
【氏名】デュアメ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】オド ドニ
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−501735(JP,A)
【文献】 特開2007−044678(JP,A)
【文献】 特開2011−020004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/10
G21C 19/46
B01J 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料処理に使用する反応器において少なくとも一種類の溶質を沈殿させるための方法であって、
a)前記少なくとも一種類の溶質を有する第1液相と溶質沈殿試薬を有し、前記第1液相と接触することによって前記少なくとも一種類の溶質の沈殿粒子を有する懸濁状態の混合物を生成する第2液相と、および前記混合物のための分散相を形成する第3液相が、反応器において並流で接触されるステップと、
b)ステップa)の前記混合物が前記第3相の流れにより流動化されるステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記第1液相と前記第2液相とが相互に混和性であるのに対して、前記第3液相が前記第1液相と前記第2液相とを有する前記混合物と非混和性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1液相と前記第2液相とが同じ高さで前記反応器へ注入され、前記第3相が前記第1液相および前記第2液相の高さより下方で前記反応器へ注入され、前記第1液相と前記第2液相と前記第3液相との注入が注入ゾーンを形成する前記反応器の下方部分で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1液相と前記第2液相とが同じ高さで前記反応器へ注入され、前記第3液相が前記第1液相および前記第2液相の高さより上方で前記反応器へ注入され、前記第1液相と前記第2液相と前記第3液相との注入が注入ゾーンを形成する前記反応器の上方部分で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1液相および/または前記第2液相の供給流量よりも多い供給流量で前記第3液相が前記反応器へ注入される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)の後に、ステップb)に由来する前記混合物の沈降ステップを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記沈降ステップの後に、形成された前記沈殿物を収集するステップを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第3液相の再利用ステップを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1液相と前記第2液相と前記第3液相との注入に使用される下方部分と、
前記第1液相および前記第2相から生じる前記混合物の前記第3液相による流動化に使用される中間部分と、
形成される前記沈殿物の沈降に使用される上方部分と、
を有して垂直主軸を持つ流動床反応器に使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第1液相と前記第2液相と前記第3液相との注入に使用される上方部分と、
前記第1液相および前記第2液相から生じる前記混合物の前記第3液相による流動化に使用される中間部分と、
形成される前記沈殿物の沈降に使用される下方部分と、
を有して垂直主軸を持つ流動床反応器に使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記溶質がアクチニド元素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一種類のアクチニド元素のシュウ酸沈殿のための方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1液相が、少なくとも一種類のアクチニド元素を溶質として有する水溶液であり、
前記第2液相が、前記第1液相に存在する前記アクチニド元素の沈殿試薬を含有する水溶液であって、前記沈殿試薬がシュウ酸であり、
前記第3液相が、前記第1液相および前記第2液相と非混和性の有機溶媒を有する有機溶液である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒がドデカンまたは水素化テトラプロピレンである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相に含有される一種類以上の溶質を沈殿させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この方法は使用済み核燃料の処理および再利用に用途が見られ、これについては、特に現在では使用済み燃料に存在するウランおよびプルトニウムを回収するために、核燃料処理プロセスの後で発生すアクチニドのシュウ酸準備に特に好都合である。
【0003】
より正確に述べると、使用済み核燃料処理プロセスは、クラッディングの除去および濃硝酸中での溶解を行う従来ステップの後に、いくつかのサイクル、特に三つの精製サイクルを有するとよい。すなわち、
−二種類のアクチニド(III)であるウランおよびプルトニウム、アメリシウムおよびセリウム、そして大部分の分裂生成物を同時に除染すること、そしてウランおよびプルトニウムを二つの流れに分割することを目的とする第1サイクル。
−分割の後にウランおよびプルトニウムを別々に精製することを目的とする、「第2ウランサイクル」および「第2プルトニウムサイクル」とそれぞれ呼ばれる二つの補足的サイクル。
【0004】
こうして分離されたプルトニウムは次に、シュウ酸プルトニウムPu(Cを沈殿させるシュウ酸沈殿ステップを受け、この沈殿物はその後で酸化プルトニウムに変換可能である。
【0005】
沈殿方法、特にシュウ酸沈殿方法の難点の一つは、沈殿反応が行われている反応器の壁に一部が粘着する沈殿物の粘着性に存する。
【0006】
先行技術による沈殿方法は多くのタイプの反応器で使用が可能である。
【0007】
単純な設計の反応器は、結晶器タイプの反応器と渦流タイプの反応器とを含む。
【0008】
結晶器タイプの反応器は、沈殿される溶質の結晶化につながる沈殿溶液の段階的過飽和増加の原則に基づいており、このタイプの反応器は従来、工業規模で沈殿を行うという状況に使用が限定される不連続方式で作動する。この短所を克服する一つの解決策は、反応器の数を増やして、異なるタイミングで並行して機能させることである。
【0009】
例えば特許文献1および特許文献2で定義されているような渦流タイプの反応器は、従来、ガラス容器から成り、その中身が内側のロッドの回転によって撹拌されて、二つの機能、すなわち沈殿物を水相のままでガラス壁から離間させる機能と、沈殿粒子の成長に充分な滞留時間を保証してその粘着性を低下させるという機能を持つ渦流を発生させる。しかし、これらの反応器は周期的に閉塞し、これらの反応器のサイズを大きくしなければならない時には亜臨界条件を保証するのが困難である。
【0010】
パルス対向流システムと、内側ライニングが施された塔での有機相による沈殿物の封入とを使用するが、以下の制約、すなわち、
*せん断力を発生させるとともに試薬と接触させるのに必要な内側ライナを塔に使用すると、沈殿物に露出される面積を大きく増大させるが、それにもかかわらず、ライニング面が高疎水性材料で計画的にコーティングされていない場合には露出面への沈殿物の付着を起こし得るという制約、および、
*パルス対向流システムの使用は塔にデッドゾーンを発生させ、ここでは液滴が塔のライニングに付着することで沈殿物の堆積が生じるという制約、
が見られる特許文献3に開示のいわゆる「パルス塔」反応器を含む、より複雑な設計の反応器も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第395,988号明細書
【特許文献2】米国特許第4,464,341号明細書
【特許文献3】仏国特許第2905283号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そのため、以下の短所、すなわち、
−形成される沈殿物が反応器の壁に付着し、最終的に反応器の閉塞を発生させるという短所、
−疎水性コーティングで反応器の壁をコーティングして壁への沈殿物の付着を制限することが不可欠であるという短所、
−沈殿反応器にデッドゾーンが出現して、これらのゾーンでの反応器の閉塞につながるという短所、
を含まない、一種類以上の溶質を沈殿させる方法が必要となった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
a)溶質を有する第1液相と溶質沈殿試薬を有する第2液相とが反応器において並流で接触することにより懸濁状態の沈殿粒子を有する混合物が生成され、第3液相がこの混合物のための分散相を形成するステップと、
b)ステップa)で言及された混合物が第3相により流動化されるステップと、
を有する、反応器において少なくとも一種類の溶質を沈殿させるための方法を扱う。
【0014】
本発明による方法は、これら二つのステップに固有の性質による以下の長所を有する。
−沈殿物の粒子を有する混合物の第3液相による封入と、壁でのこれら粒子の滞留を防止して粒子を包囲する液滴が壁の表面で弾むようにするこの同じ第3液相による混合物の流動化とにより、反応器壁への沈殿物の付着が見られないこと。
−(特に、溶質の最適な沈殿を行うため第3液相の流れを変化させることによる)流動化条件の柔軟性によって反応器での混合物の滞留時間の調節を最適化することが可能であり、反応器壁へ付着しない大型の沈殿粒子を生成するようにこの滞留時間が選択されること。
−本発明による基準に適合していると仮定して、第2液相および第3液相の適切な選択により、沈殿される溶質に応じて方法を適応させることが可能であるという良好な使用柔軟性。
【0015】
上述したように、本発明による方法は、溶質を有する第1液相を、溶質沈殿試薬を有する第2液相と反応室において並流で接触させ、結果的に懸濁状態の沈殿粒子を有する混合物が生成され、第3液相がこの混合物の分散相を形成する第1ステップa)を含む。
【0016】
第1液相と第2液相とが相互に混和性であって、第3液相が第1液相および第2液相を有する混合物と非混和性であると、好都合である。
【0017】
並流は、第1液相と第2液相と第3液相とが同じ方向に循環することを意味し、この並流循環を可能にする方式でこれらが反応器に注入されることをこれが暗示していることに注意する。
【0018】
実用的な観点から見ると、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より高い事例では特に、第1液相と第2液相と第3液相とが、例えば反応器の下方部分で反応器へ注入され、この下方部分が注入ゾーンを形成する。例えば、第1液相の流入口と第2液相の流入口とが注入ゾーンで同じ高さに配設されて相互に対向するため、同時に注入されるとすぐにこれら二つの相が接触し、こうして沈殿粒子の懸濁液を有する混合物を自然に形成する。この構成により、第3液相の流入口は第1液相および第2液相の流入口より下方の注入ゾーンにあるとよい。
【0019】
第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より低い場合には、第1液相と第2液相と第3液相とが、例えば反応器の上方部分で反応器へ注入されるとよく、この上方部分が注入ゾーンを形成する。例えば、第1液相の流入口と第2液相の流入口とが注入ゾーンで同じ高さに配設されて相互に対向するため、同時に注入されるとすぐにこれら二つの相が接触し、こうして沈殿粒子の懸濁液を有する混合物を自然に形成する。この構成によれば、第3液相の流入口は第1液相および第2液相の流入口より上方の注入ゾーンにあるとよい。
【0020】
第1液相と第2液相と第3液相とは連続的または半連続的に注入されるとよい。ここで半連続的注入とは、上述した液相の少なくとも一つが連続的に注入されて、上述した液相の少なくとも一つが(例えば周期的スタート・ストップ型、傾斜型、またはディラック型の注入により)非連続的に注入されることを意味する。
【0021】
分散相とは、第3液相が、沈殿物が形成された第2液相と第1液相を接触させることにより形成される混合物が第3液相に液滴の形で分散される相であることを意味し、通常はこの第3液相が第1液相と第2液相とから生じる混合物と非混和性となるように選択されることに注意する。
【0022】
接触を行うステップa)は、反応器の特定ゾーン、例えば反応器の下方部分(注入ゾーンと呼ばれる)または反応器の上方部分への第1液相と第2液相と第3液相との注入によって従来から行われており、第1液相および第2液相から生じる混合物を第3液相が流動化できるように、好ましくは第3液相の供給流を第1液相および/または第2液相の供給流より多くすべきであることが分かっている。
【0023】
さらに、第3液相についてのこのような供給流の選択は、第1液相と第2液相との間の反応により形成される沈殿粒子を反応器壁に付着させないようにすることもできる。
【0024】
上述したように、第1液相と第2液相とはステップa)の使用中に相互反応を行って、溶質の沈殿物を有する混合物を形成し、この混合物は、流動床条件(上述したステップb)に対応し、流動化とも呼ばれる)で第3液相によって飛沫同伴される。
【0025】
流動化とは、形成された沈殿粒子を含有する液滴を上向き流体流へ懸濁させることを意味し、粒子を含有するこの液滴は流動床を形成し、上向き流体流は第3液相から成ることに注意する。
【0026】
流動床条件の使用は特に、壁への粒子の付着も防止する粒子サイズの増加の結果であり、加えて、この付着が第3液相により発生される封入によっても防止されるという事実によるものでもある。
【0027】
ステップa)およびb)の他に、この方法は、ステップb)に由来する混合物の沈降ステップを含んでもよく、この沈降ステップはは単純な沈下によって行うことができ、この沈降ステップの後にこの沈殿物を収集するステップが続いてもよい。
【0028】
収集ステップは一般的に、沈降した沈殿粒子を抽出することによって行われるとよい。この収集の後には、沈殿粒子が抽出された液相を沈殿粒子から除去するように、濾過、遠心分離、または他のタイプの操作などの固体・液体分離操作と、洗浄および/または乾燥操作が続く。
【0029】
本発明による方法は、上述した注入ゾーンへ再注入され得る第3液相の再利用ステップも含む。
【0030】
本発明による方法は、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度よりも高い事例では特に、
−第1液相と第2液相と第3液相との注入に使用される下方部分(底部分とも呼ばれる)と、
−第1液相および第2液相から生じる混合物の第3液相による流動化に使用される中間部分(中央部分とも呼ばれる)と、
−形成される沈殿物の沈降に使用される上方部分(上部分とも呼ばれる)と、
を有する垂直主軸を持つ流動床反応器において使用されると、好都合である。
【0031】
逆に、第1液相と第2液相との混合物の密度が第3液相の密度より低い事例では、
−第1液相と第2液相と第3液相との注入に使用される上方部分(上部分とも呼ばれる)と、
−第1液相および第2液相から生じる混合物の第3液相による流動化に使用される中間部分(中央部分とも呼ばれる)と、
−形成される沈殿物の沈降に使用される下方部分(底部分とも呼ばれる)と、
を有する垂直主軸を持つ流動床反応器においてこの方法が使用されるのも好都合である。
【0032】
本発明による方法が、特に使用済み燃料の処理のためのアクチニドのシュウ酸沈殿に特化したものである時には、本方法の枠組みの中で形成される沈殿物はアクチニドシュウ酸塩の沈殿物である。
【0033】
この事例では、
−第1液相は従来通り、少なくとも一種類のアクチニド元素を含む溶質を有する水溶液である(この水溶液は以下では「アクチニド溶液」と呼ばれる)。
−第2液相は従来通り、第1液相に存在するアクチニド元素の沈殿試薬を含有する水溶液であり、この沈殿試薬はシュウ酸である(この溶液は以下では「シュウ酸溶液」と呼ばれる)。
−第3液相は従来通り、第1液相および第2液相と非混合性である有機溶媒を有する有機溶液であり、この有機溶媒はドデカンまたは水素化テトラプロピレン(HTPの略字で知られる)としてもよい。
【0034】
アクチニド溶液は従来通り、硝酸塩の形のアクチニドを含有する。なぜならこれが、通常は使用済み核燃料処理施設でこれらの元素が生成される際の形だからである。
【0035】
特に、本発明による方法が使用済み燃料の処理に使用される時には、関連するアクチニドはウラン、プルトニウム、ネプツニウム、トリウム、アメリシウム、および/またはキュリウムでよい。
【0036】
特に、形成されるシュウ酸塩沈殿物が、酸化物、炭化物、窒化物タイプの核燃料ペレットの製造に使用可能であるアクチニド化合物に変換されることが予定されている時には、これらはウラン、プルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、および/またはキュリウムでよい。
【0037】
以下に記載される特定の実施形態に関して本発明がこれから説明され、この実施形態は例示および非限定を目的として挙げられている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の方法によるシュウ酸セリウムの沈殿物の準備に適切な反応器を示す図である。
図2図1に示された(注入ゾーンを形成する)反応器の下方部分の詳細を示す図である。
図3】以下の例で提示される異なる操作方式について反応器の中間部分(第1垂直部分)で採取されたプレートに対応する。
図4】以下の例で提示される異なる操作方式について反応器の中間部分(第1垂直部分)で採取されたプレートに対応する。
図5】以下の例で提示される異なる操作方式について反応器の中間部分(第1垂直部分)で採取されたプレートに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
実施例:シュウ酸セリウムの沈殿
図1に概略的に示された反応器1は、シュウ酸セリウムの沈殿に関連する試験に使用される。
【0040】
垂直主軸を持つこのガラス反応器は三つの部分から成る。
−硝酸セリウムの形のセリウムを有する水溶液で構成される第1液相と、シュウ酸溶液で構成される第2液相と、水素化テトラプロピレンの有機溶液で構成される第3液相との注入ゾーンを形成する下方部分3。この下方部分は、図2に詳しく示されている。
−第1液相および第2液相から形成される乳化混合物の第3液相による流動化に使用される中間部分5。この中間部分は、一定の断面(直径15mm)を持つ第1垂直部分7と湾曲部分9と第2垂直部分11とを有する円筒管で構成される。
−反応器の中間部分を形成する管の第2垂直部分11の開放端部が浸漬される沈下タンクで構成される、形成された沈殿物を沈降によって回収するのに使用される上方部分13。
【0041】
より正確に述べると、図2に詳しく示された下方部分は、下方端部15で閉じられた一定断面(直径15mm)を持つ円筒管から成る。
【0042】
試薬、言い換えると、水素化テトラプロピレンの有機溶液(第3液相を形成)、セリウムを有する溶液(第1液相を形成)、そしてシュウ酸溶液(第2液相を形成)が、以下を介してこの下方部分へ導入される。
−管の下方端部を貫通し、バルブ18を介して反応器の下方部分に有機溶液を供給する垂直ノズル17。
−注入ゾーンの高さ中央に配置されて相互に径方向反対にある二つのノズル19,21。これらのノズル19,21は、流入口を始端として(反応器の下方部分に貫入するノズル部分に対応する)エルボの形の流出口を終端とする水平ガラス管から成り、これらのノズルは、シュウ酸溶液とセリウムを有する溶液とをそれぞれ反応器の下方部分へ供給する。
【0043】
反応器の下方部分3は、反応器から排水を行うのに使用される管体23もその下方端部に備え、この管はバルブ27が装着された導管25に接続されている。
【0044】
有機溶液の供給流量を調節できるポンプ33が取り付けられた導管31を介して、垂直ノズル17は有機溶液供給タンク29に接続されている。
【0045】
シュウ酸溶液とセリウム含有溶液との供給流量を調節するため、ポンプ43,45とバルブ47,49も取り付けられた導管39,41を介して、ノズル19,21がシュウ酸溶液供給タンク35とセリウム含有溶液供給タンク37とに接続されている。
【0046】
シュウ酸溶液とセリウム含有溶液とはこの反応器の下方部分で接触し、第1および第2液相に由来する水相の混合物の中のシュウ酸セリウム沈殿物をその場で発生させ、この混合物は次に、有機溶液に分散された液滴の中にこの混合物を封入する有機溶液を介して、反応器の中間部分へ飛沫同伴される。
【0047】
図1および2に見られるように、反応器は撹拌器を含有せず、この反応器へのこれらの異なる相の供給流のみによって異なる相が混合される。
【0048】
上述したように、中間部分は一定断面(直径15mm)の垂直円筒管で構成され、反応器の下方部分を形成するこの管は1m以上の高さまで延出(こうして第1垂直部分を形成)し、それを越えるとこの管が湾曲して第2垂直部分となり、その端部は反応器の上方部分に浸漬され、管は全長にわたって同じ断面を有する。
【0049】
最後に、沈下操作中に有機溶液による飛沫同伴が可能な微粉(超微小液滴に相当)の融合を強制する格子51と、細い下方部分にバルブ55が装着されて沈殿物を排出するとともに沈下タンクの排水管路も形成する流出口53と、シュウ酸母液の排出のためバルブ59が装着された流出口57とを備える沈下タンクで、反応器の上方部分13が構成される。
【0050】
上方部分において、沈下タンクは、有機相の全体が導管63を介して有機相タンク29へ移送されるようにする溢流路61も有する。
【0051】
第1液相(濃度24g/Lの硝酸セリウムの硝酸塩水溶液(1.5N))と、第2液相(濃度0.7mol/Lのシュウ酸水溶液)と、第3液相(水素化テトラプロピレンHTPの有機溶液)とから始まる粘着性沈殿条件で、三種類の試験(それぞれA,B,C)が実行された。
【0052】
第1試験Aは、以下の液相流によって行われた。
*0.4L/hの硝酸セリウム(III)
*0.4L/hのシュウ酸
*100L/hのHTP
【0053】
反応器の中間部分(より正確には湾曲部分の前方の第1垂直部分)で採取された、図3に示されたプレートは、(第1液相と第2液相との混合物から生じる)比較的単分散の液滴分布を示し、形成中の沈殿物が識別される。
【0054】
第2試験Bは、試験Aよりも有機相流を減少することによって行われ、対応する液相流は以下の通りである。
*0.4L/hの硝酸セリウム(III)
*0.4L/hのシュウ酸
*80L/hのHTP
【0055】
図3と同じ高さの反応器で採取された、図4に示されたプレートは大型液滴の出現を示し、大型液滴の内側に付着した沈殿物が識別される。
【0056】
第3試験Cは、試験Bの値から有機相流をさらに減少させることによって行われ、対応する液相流は以下の通りである。
*0.4L/hの硝酸セリウム(III)
*0.4L/hのシュウ酸
*60L/hのHTP
【0057】
図5に示されたプレートでは、大型液滴が凝集し始めて組織化され、沈殿物を含有する液滴の集合体を形成する。これらの集合体は周期的に形成されて、沈殿が発生する別々のゾーンを画定する。これらの集合体は従来、有機溶液で生成される大型液滴よりも低い変位速度を有し、純粋なピストン流によって上向きに飛沫同伴される。
【0058】
この方式は、有機溶液による沈殿物集合体の安定的な封入と反応器での長い滞留時間とを可能にするため、特に興味深い。
【0059】
この操作方式はまた、第1液相(硝酸セリウムを含有する相)において比較的高い供給流を吸収できる。
【0060】
ゆえに、200mL/hから1000mL/hまで変化する第1液相での供給流では、沈殿物集合体の外観について以下の機能的な点が観察された。
【0061】
【表1】

図1
図2
図3
図4
図5