特許第6054328号(P6054328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054328
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】インクジェット記録用紙
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20161219BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20161219BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20161219BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20161219BHJP
   D21H 19/56 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   B41M5/00 B
   D21H27/00 Z
   D21H19/56
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-63061(P2014-63061)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-182402(P2015-182402A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 宏二
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−010213(JP,A)
【文献】 特開2000−079752(JP,A)
【文献】 特開2009−208471(JP,A)
【文献】 特開2012−040788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
D21H 19/00 − 19/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度が5%以下であるインクジェット記録用紙において、支持体と、支持体の少なくとも片面上にインク受理層とを有し、支持体のJIS P8122:2004に準拠して測定されるステキヒトサイズ度(秒)を支持体の厚さ(μm)で除して得られる値が1.00秒/μm以上且つ支持体の密度が1.00g/cmより大きく、インク受理層が、平均粒子径9μm以上12μm以下であるシリカ、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含有し、インク受理層中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂に対するシラノール変性ポリビニルアルコールの含有質量比が6以上14以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用紙に関し、好適には、光沢感を有しないマット調のインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影された写真データの印刷、デザインやアート作品の印刷あるいはサイン看板やPOPを作成するための印刷に、インクジェットプリンタ、インクジェット大判プリンタあるいはインクジェット大判プロッターが使用されている。
【0003】
印刷に用いられる記録媒体の支持体として、代表的に、フィルム、樹脂被覆紙(RC紙)および紙がある。支持体として、平滑性に富むことで比較的画質品質に優れるフィルムやRC紙が好まれる。しかしながら、記録媒体のコスト、後加工などの取り扱いおよび廃棄処理の問題から、紙を支持体に用いるインクジェット記録用紙を使用する場合が多数存在する。
【0004】
支持体に紙を用いるインクジェット記録用紙特有の問題として、水分による紙の波打ち現象(コックリング)がある。
インクジェット記録は、水などの溶媒に色材を溶解あるいは分散して調製されたインクを微細なノズルから吐出させて行われる。高精細・高画質・高色濃度を達成するために、インク側では、インクの多色化・インク中の色材濃度の低下・インクの吐出量の増加などの方法がとられている。これらの方法は、紙のコックリングを発生させる方向にある。
【0005】
インクジェット記録用紙がコックリングを発生し易くなると、プリンタやプロッターで印刷する折からコックリングを発生して、酷い時は用紙の搬送不良をもたらす。搬送不良にならなくとも、ノズルと用紙との距離が微妙にずれるために画像鮮鋭性の低下をもたらすことがある。また、印刷後ではコックリングがほとんど認められなくとも、印刷中に一時的にコックリングの状態になると画像鮮鋭性の低下をもたらすことがある。
【0006】
インクジェット印刷品質に優れ、かつコックリングが生じにくいインクジェット用記録シートとして、支持体の表面にインク受容層を設け、前記インク受容層は、シリカ系顔料と有機高分子接着剤とを含有し、且つ、前記有機高分子接着剤としてポリビニルアルコールとエチレン酢酸ビニル系高分子とを含み、(ポリビニルアルコール/エチレン酢酸ビニル系高分子)の配合比率が質量比で40/100〜75/100の範囲にあり、且つ、前記シリカ系顔料と前記有機高分子接着剤の配合比率が、前記シリカ系顔料100質量部に対して前記有機高分子接着剤が28質量部を超えて42質量部未満であり、且つ、前記インク受容層の乾燥塗工量が片面当たり5g/mを超えて20g/m未満であるインクジェット用記録シートが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−166351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
JIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度が5%以下である、所謂マット調のインクジェット記録用紙の特有の問題として、印刷後の印刷部光沢感バラツキがある。「印刷部光沢感バラツキ」とは、インクジェットプリンタ、インクジェット大判プリンタあるいはインクジェット大判プロッターの搬送途中にある搬送ロールに接触した印刷部に光沢感が発現する現象である。マット調であるインクジェット記録用紙において印刷部に光沢感が発現すること、さらには発現が部分的であることは、印刷後の品質上および外観上の問題となる。
【0009】
特許文献1に記載されるが如くのインクジェット用記録シートは、塗工面質、印刷部の滲みおよび濃度に優れるものの、コックリングに関して、さらなる発生抑制を求められている。また、画像鮮鋭性および印刷部光沢感バラツキに関して、改善が求められている。
【0010】
コックリングの発生は、インク受容層の構成だけでなく、インク受容層が設けられる支持体から改善しなければ、さらなる抑制が困難である。
【0011】
本発明の目的は、JIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度が5%以下である、所謂マット調のインクジェット記録用紙であって、コックリングの発生を良好に抑えることができ(耐コックリング性)、印刷部光沢感バラツキを良好に抑えることができ(印刷部光沢感抑制性)、画像鮮鋭性が良好なインクジェット記録用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記の目的は、JIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度が5%以下であるインクジェット記録用紙において、支持体と、支持体の少なくとも片面上にインク受理層とを有し、支持体のJIS P8122:2004に準拠して測定されるステキヒトサイズ度(秒)を支持体の厚さ(μm)で除して得られる値が1.00秒/μm以上且つ支持体の密度が1.00g/cmより大きく、インク受理層が、平均粒子径9μm以上12μm以下であるシリカ、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含有し、インク受理層中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂に対するシラノール変性ポリビニルアルコールの含有質量比が6以上14以下であることを特徴とするインクジェット記録用紙によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、JIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度が5%以下であるマット調のインクジェット記録用紙であって、耐コックリング性、印刷部光沢感抑制性および画像鮮鋭性が良好であるインクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のインクジェット記録用紙について、詳細に説明する。
【0015】
本発明の支持体は、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの製紙分野で従来公知の木材パルプを主成分とし、填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの製紙分野で従来公知の各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙、さらに原紙に、澱粉、ポリビニルアルコールなどでサイズプレス処理された上質紙、あるいはアンカーコート層などを設けた塗工紙が含まれる。
【0016】
本発明において、支持体は、JIS P8122:2004に準拠して測定されるステキヒトサイズ度(秒)を厚さ(μm)で除して得られる値が1.00秒/μm以上且つ密度が1.00g/cm超である。これら範囲にある支持体と後記のインク受理層とによって、インクジェット記録用紙は、耐コックリング性、印刷部光沢感抑制性および画像鮮鋭性を良好に得ることができる。支持体がこれら範囲に該当しない場合は、本発明の効果のいずれかを良好に得ることができない。画像鮮鋭性や印刷部光沢感抑制性の点から、ステキヒトサイズ度(秒)を厚さ(μm)で除して得られる値は1.35秒/μm以下が好ましい。印刷部光沢感抑制性の点から、密度は1.15g/cm以下が好ましい。
【0017】
これら範囲にある支持体は、製紙分野で従来公知の方法によって得ることができる。例えば、サイズ剤を紙料に配合する方法、表面サイズ剤を含有する液でサイズプレス処理する方法、填料を紙料に配合する方法、マシンカレンダー・TGカレンダー・ソフトカレンダーなどのカレンダー装置でカレンダー処理する方法を挙げることができる。
【0018】
上記の関係から、本発明の支持体は、ステキヒトサイズ度が大きく・厚さが小さく・密度が大きいという傾向が好ましいとなる。厚さが薄いあるいは密度が大きいと耐コックリング性に悪影響になると考えられるが、本発明は、本発明の効果において、ステキヒトサイズ度および厚さと密度との関係によってかかる範囲を見出したものである。
【0019】
本発明において、インクジェット記録用紙は、支持体の少なくとも片面上にインク受理層を有する。インク受理層の片面あたりの塗工量は、特に限定されないが、乾燥固形分で5g/m以上15g/m以下が好ましく、7g/m以上10g/m以下がさらに好ましい。この理由は、塗工量が上記範囲であると、インクジェット記録用紙の印刷後のカール発生などが軽減されるからである。
【0020】
本発明において、インク受理層は、平均粒子径が9μm以上12μm以下であるシリカを含有する。平均粒子径が9μm未満の場合、インクジェット記録用紙は印刷部光沢感抑制性を良好に得ることができない。平均粒子径が12μm超の場合、インクジェット記録用紙は耐コックリング性や画像鮮鋭性を良好に得ることができない。
【0021】
本発明において、シリカは、製造法によって湿式法シリカまたは気相法シリカである。さらに湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカとゲル法シリカとに分類される。本発明において、湿式法シリカが好ましい。ここで、本発明にかかるシリカではゾル法シリカを含まない。
【0022】
沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造する。粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカは、例えば、エボニックデグサ社からカープレックスとして、水澤化学工業社からミズカシルとして、東ソー・シリカ社からニップシールとして市販されている。
【0023】
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。ゲル法シリカは、例えば、エボニックデグサ社からカープレックスとして、水澤化学工業社からミズカシルとして、東ソー・シリカ社からニップゲルとして、グレースジャパン社からサイロイド、サイロジェットとして市販されている。
【0024】
気相法シリカは、湿式法シリカに対して乾式法とも呼ばれ、一般的に火炎加水分解法を用いて製造する。具体的には四塩化ケイ素を水素および酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル社からアエロジル、トクヤマ社からレオロシールとして市販されている。
【0025】
本発明において、平均粒子径は、単粒子で存在する場合は単粒子の平均粒子径であり、二次粒子等の凝集粒子を形成する場合は凝集粒子の平均粒子径である。平均粒子径は、塗工紙となった状態から求めることができる。その方法としては、例えば、エネルギー分散形X線分光器などの元素分析機能付走査型電子顕微鏡を用いてインクジェット記録用紙表面の電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された粒子を面積が近似する球形と見なして粒子径を計算し、撮影画像内に存在する100個から粒子を測定することによって、平均粒子径を算出する方法である。
【0026】
本発明において、インク受理層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のシリカ以外に製紙分野で従来公知の顔料を含有することができる。顔料の例としては、アルミナ水和物、アルミナ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、サチンホワイト、クレー、タルク、酸化チタン、カオリン、焼成カオリン、酸化亜鉛、活性白土、珪藻土、レーキ、プラスチックピグメントなどを挙げることができる。
【0027】
本発明において、インク受理層は、シラノール変性ポリビニルアルコールおよびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を含有する。なおかつ、インク受理層中におけるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂に対するシラノール変性ポリビニルアルコールの含有比が6以上14以下である。これらを満足することによって、インクジェット記録用紙は、耐コックリング性、印刷部光沢感抑制性および画像鮮鋭性を良好に得ることができる。これらを満足しない場合は、本発明の効果のいずれかを良好に得ることができない。
【0028】
本発明において、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のシラノール変性ポリビニルアルコールおよびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂以外にバインダーとして製紙分野で従来公知の水分散性バインダーおよび/または水溶性バインダーを含有することができる。水分散性バインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体あるいはメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などのアクリル系共重合体ラテックス、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン樹脂ラテックス、アルキド樹脂ラテックス、不飽和ポリエステル樹脂ラテックス、またはこれらの各種共重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性共重合体ラテックス、あるいはメラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂を挙げることができる。水溶性バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、シラノール変性ポリビニルアルコールを除くポリビニルアルコールまたはその変性物などのポリビニルアルコール誘導体、カゼイン、ゼラチンまたはそれらの変性物、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミンなどの天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー、アルギン酸ソーダ、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸またはその共重合体などを挙げることができる。
【0029】
本発明において、インク受理層中のシラノール変性ポリビニルアルコールおよびエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂並びに他バインダーの合計含有量は、インク受理層の顔料100質量部に対して30質量部以上40質量部以下の範囲が好ましい。この理由は、インクジェット記録用紙のインク吸収性が良化するからである。
【0030】
本発明のインク受理層は、インク定着剤としてカチオン性樹脂および/または水溶性多価金属塩を含有することができる。カチオン性樹脂や多価金属塩は、それぞれ単独または2種以上を併用することができる。また、カチオン性樹脂と多価金属塩とを併用することが好ましい。
【0031】
本発明において、カチオン性樹脂とは、一般的に使用されているカチオン性ポリマーまたはカチオン性オリゴマーである。好ましいカチオン性樹脂は、プロトンが配位し易く、水に溶解したとき離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を含有するポリマーまたはオリゴマーである。具体例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミジン、ポリアミンスルホン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物およびこれらの塩酸塩、さらにポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドおよびジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミド等との共重合物、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリアミン−エピハロヒドリン重縮合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明において、水溶性多価金属塩とは、20℃の水に1質量%以上溶解することができる多価金属イオンを含む塩をいう。多価金属イオンとしては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、亜鉛、銅、鉄、コバルト、スズ、マンガン等の二価金属イオン、アルミニウム、鉄、クロム等の三価金属イオン、またはチタン、ジルコニウム等の四価金属イオン、並びにそれらの錯イオンである。多価金属イオンと塩を形成する陰イオンとしては、無機酸および有機酸のいずれでもよく、特に限定されない。無機酸としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸等が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸としては、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、有機スルホン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、水酸化アルミニウムを塩酸に溶解して重合反応させて得られるポリ塩化アルミニウム等も、水溶性多価金属塩に含まれる。
【0033】
インク受理層中の含有量は、インク受理層中の顔料100質量部に対して、カチオン性樹脂が10質量部以上30質量部以下であり水溶性多価金属塩が2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。この理由は、インク定着性が得られるだけでなく、インク定着剤による耐コックリング性や印刷部光沢感抑制性への悪影響を避けることができるからである。また、画像の発色性が良好になるからである。
【0034】
本発明のインク受理層は、必要に応じて、製紙分野で一般的に用いられる各種添加剤、例えば、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、紙力増強剤などを適宜含有することができる。
【0035】
本発明において、支持体上にインク受理層を設ける方法としては、例えば、インク受理層塗工液をオンマシンコーターまたはオフマシンコーターによって従来公知の各種塗工装置によって塗工する方法を挙げることができる。従来公知の塗工装置の例としては、エアナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、キャストコーター、サイズプレスなどを挙げることができる。また、塗工後の仕上げに、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどによってカレンダー処理を施して構わない。
【0036】
また、塗工後の仕上げとして乾燥は、熱風乾燥装置等の従来公知の乾燥装置を用いて実施することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す質量部および質量%は乾燥固形分あるいは実質成分の値を示す。また、塗工量は、乾燥固形分の値を示す。
【0038】
<耐コックリング性の評価>
キヤノン社製インクジェットプリンタ「ImagePROGRAF iPF610」でブラックベタを印刷し、印刷部分のコックリングの発生度合いを目視により次の4段階にて官能評価した。本発明において、3または4の評価であればインクジェット記録用紙は耐コックリング性が良好であるとする。
4:コックリングの発生が無く、極めて良好なレベル。
3:コックリングの発生が僅かであり、良好なレベル。
2:コックリングの発生が見られ、良好とはいえず、実用上の下限レベル。
1:コックリングの発生が見られ、実用上問題となるレベル。
【0039】
<画像鮮鋭性の評価>
キヤノン社製インクジェットプリンタ「ImagePROGRAF iPF610」で所定の評価画像を印刷し、ブラック・シアン・マゼンタ・イエローの各色ベタ画像部に配置した抜き文字の細部にわたる鮮明さ、色間境界のくっきり度を判断材料にして次の4段階にて官能評価した。本発明において、3または4の評価であればインクジェット記録用紙は画像鮮鋭性が良好であるとする。
4:極めて良好なレベル。
3:上記「4」より劣るが、良好なレベル。
2:上記「3」より劣り、良好とはいえず、実用上の下限レベル。
1:上記「2」より劣り、実用上問題となるレベル。
【0040】
<印刷部光沢感抑制性の評価>
キヤノン社製インクジェットプリンタ「ImagePROGRAF iPF610」でブラックベタを印刷し、印刷部の光沢ムラを次の4段階にて官能評価した。本発明において、3または4の評価であればインクジェット記録用紙は印刷部光沢感抑制性が良好であるとする。
4:印刷部光沢感が認識できず、極めて良好なレベル。
3:印刷部光沢感が僅かに認識できるが、良好なレベル。
2:印刷部光沢感が幾分認められ、良好とはいえず、実用上の下限レベル。
1:印刷部光沢感が認められ、実用上問題となるレベル。
【0041】
<支持体の作製>
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)をカナディアン・スタンダード・フリーネスで350mlになるまで叩解し、パルプスラリーを得た。これに填料として炭酸カルシウム、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー、紙力増強剤としてポリアクリルアミド、カチオン化澱粉およびポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を配合し、水で希釈して1質量%の紙料を調成した。この紙料を長網抄紙機で抄造し、乾燥・調湿した後、マシンカレンダーにてカレンダー処理を施し支持体を作製した。この時、最終的に所望のステキヒトサイズ度、厚さ、密度となるように、サイズ剤の配合量およびカレンダー条件を主に調整した。得られた支持体を以下に示す。
【0042】
<支持体1>
ステキヒトサイズ度127秒、紙厚117μm、密度1.03g/cm
<支持体2>
ステキヒトサイズ度150秒、紙厚113μm、密度1.06g/cm
<支持体3>
ステキヒトサイズ度75秒、紙厚117μm、密度0.77g/cm
<支持体4>
ステキヒトサイズ度120秒、紙厚117μm、密度0.77g/cm
<支持体5>
ステキヒトサイズ度127秒、紙厚113μm、密度1.15g/cm
<支持体6>
ステキヒトサイズ度150秒、紙厚110μm、密度1.20g/cm
<支持体7>
ステキヒトサイズ度110秒、紙厚117μm、密度1.04g/cm
【0043】
<インク受理層塗工液1の調製>
水に、シリカ(エボニックデグサ社製カープレックスBS−510BX、平均粒子径10.5μm)100質量部を添加し、ノコギリ型ブレードを有する分散機を用いて十分に分散した。次いでシラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製Rポリマー1130)30質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(中央理化工業社製リカボンドBEF−9857)5質量部を添加・攪拌し、その後、ポリアミン−エピハロヒドリン重縮合物(BASF社製Magnafloc LT7990)10質量部、ポリビニルアミジン(ハイモ社製ハイマックスSC−700M)10質量部、塩化カルシウム2水和物を3質量部添加し、十分攪拌してインク受理層塗工液1を調製した。
【0044】
<インク受理層塗工液2の調製>
インク受理層塗工液1のシラノール変性ポリビニルアルコールを33質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を3.5質量部とした以外はインク受理層塗工液1と同様にして、インク受理層塗工液2を調製した。
【0045】
<インク受理層塗工液3の調製>
インク受理層塗工液1のシラノール変性ポリビニルアルコールを35質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を2.5質量部とした以外はインク受理層塗工液1と同様にして、インク受理層塗工液3を調製した。
【0046】
<インク受理層塗工液4の調製>
インク受理層塗工液2のシリカ(エボニックデグサ社製カープレックスBS−510BX、平均粒子径10.5μm)を、シリカ(水澤化学工業社製ミズカシルP−78D、平均粒子径12μm)に変更した以外はインク受理層塗工液2と同様にして、インク受理層塗工液4を調製した。
【0047】
<インク受理層塗工液5の調製>
インク受理層塗工液2のシリカ(エボニックデグサ社製カープレックスBS−510BX、平均粒子径10.5μm)をシリカ(グレースジャパン社製サイロイドED5、平均粒子径9μm)に変更した以外はインク受理層塗工液2と同様にして、インク受理層塗工液5を調製した。
【0048】
<インク受理層塗工液6の調製>
インク受理層塗工液1のシラノール変性ポリビニルアルコールを30質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を7.25質量部とした以外はインク受理層塗工液1と同様にして、インク受理層塗工液6を調製した。
【0049】
<インク受理層塗工液7の調製>
インク受理層塗工液1のシラノール変性ポリビニルアルコールを32質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を1.8質量部とした以外はインク受理層塗工液1と同様にして、インク受理層塗工液7を調製した。
【0050】
<インク受理層塗工液8の調製>
インク受理層塗工液3のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂を0質量部とした以外はインク受理層塗工液3と同様にして、インク受理層塗工液8を調製した。
【0051】
<インク受理層塗工液9の調製>
インク受理層塗工液8のシラノール変性ポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)とした以外はインク受理層塗工液8と同様にして、インク受理層塗工液9を調製した。
【0052】
<インク受理層塗工液10の調製>
インク受理層塗工液2のシリカ(エボニックデグサ社製カープレックスBS−510BX、平均粒子径10.5μm)をシリカ(グレースジャパン社製サイロジェットP508、平均粒子径8μm)に変更した以外はインク受理層塗工液2と同様にして、インク受理層塗工液10を調製した。
【0053】
<インク受理層塗工液11の調製>
インク受理層塗工液2のシリカ(エボニックデグサ社製カープレックスBS−510BX、平均粒子径10.5μm)をシリカ(水澤化学工業製ミズカシルP−78F:平均粒子径18μm)に変更した以外はインク受理層塗工液2と同様にして、インク受理層塗工液11を調製した。
【0054】
<インク受理層塗工液12の調製>
インク受理層塗工液1のシラノール変性ポリビニルアルコール(クラレ社製Rポリマー1130)をポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)に変更した以外はインク受理層塗工液1と同様にして、インク受理層塗工液12を調製した。
【0055】
<インクジェット記録用紙の作製>
インク受理層塗工液を塗工量が9g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて支持体上に塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥し、得られた塗工紙をソフトカレンダーでカレンダー処理を施し、各実施例および各比較例のインクジェット記録用紙を作製した。
【0056】
表1に、用いた支持体、支持体の「ステキヒトサイズ度/厚さ」の値および密度、用いたインク受理層塗工液、インク受理層のシリカの平均粒子径および「シラノール変性ポリビニルアルコール/エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂」の含有質量比、並びに各評価結果を示す。なお、各実施例および各比較例のインクジェット記録用紙のJIS Z8741:1997で規定される85度表面光沢度はいずれも5%以下であった。
【0057】
【表1】
【0058】
表1から、本発明に相当する各実施例は、耐コックリング性、印刷部光沢感抑制性、画像鮮鋭性が良好であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない各比較例は、これらのいずれかが良好でないと分かる。