(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁板と、前記半導体素子と、前記プリント基板とは封止材によりパッケージングされ、前記外部接続端子は一端が前記第2の金属箔に固定され、他端が前記封止材の外側にあることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
主面に第1の金属箔及び第2の金属箔が導通して形成された絶縁板と、表面電極及び裏面電極を有する半導体素子と、主面に第3の金属箔が形成され、めっき層が内壁に設けられた複数のスルーホールが線対称に形成され、前記スルーホールに複数のポスト電極が複数の列を構成し、それらが線対称となるように配置してそれぞれ固定されたプリント基板と、外部接続端子とを準備する工程と、
前記第1の金属箔上に前記半導体素子を配置し、前記半導体素子が配置された前記絶縁板の前記主面に対向するように前記プリント基板を配置して前記半導体素子の前記表面電極と前記表面電極に線対称となるように配列した前記ポスト電極との間を鉛フリーの半田を介して電気的に接続し、前記外部接続端子を前記プリント基板に形成された貫通孔を貫通させて、前記第2の金属箔に固定し、前記裏面電極と前記第1の金属箔との間を鉛フリーの半田を介して接合し、前記第2の金属箔及び前記第1の金属箔を介して前記半導体素子の前記裏面電極と前記外部接続端子とを電気的に接続する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
前記外部接続端子の一端が前記第2の金属箔に固定され、他端が封止材の外側にあるように、前記絶縁板と、前記半導体素子と、前記プリント基板とを前記封止材によりパッケージングすることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置、無停電電源装置、工作機械、産業用ロボット等では、その本体装置とは独立して半導体装置(汎用モジュール)が使用されている。
例えば、半導体装置として、所定の厚みを有した金属ベース板を基体とし、金属ベース板上にパワー半導体素子を搭載したパッケージ型タイプのものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。その構造を
図20に示す。
【0003】
図20はパッケージ型タイプの半導体装置の要部模式図である。
この半導体装置100は、金属ベース板101を基体とし、金属ベース板101上には、半田層を介して金属箔102が接合されている。そして、金属箔102上には、絶縁板103が接合され、絶縁板103上には、金属箔104が接合されている。さらに、金属箔104上に、半田層105を介して、半導体素子106が接合されている。ここで、半導体素子106は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子等が該当する。
【0004】
また、金属ベース板101の両側の上端縁からは、半導体素子106を取り囲むように、成形された樹脂ケース107が固着されている。また、金属ベース板101の上端縁上に位置する樹脂ケース107には、リードフレーム108,109,110が内設され、リードフレーム108は、半導体素子106の主電極(例えば、エミッタ電極)と、リードフレーム110は、半導体素子106の主電極(例えば、コレクタ電極)に導通した金属箔104と、夫々、金属ワイヤ111,112を介して電気的に接続されている。また、リードフレーム109は、半導体素子106の制御電極(例えば、ゲート電極)と、金属ワイヤ113を介して電気的に接続されている。
【0005】
また、樹脂ケース107内には、金属ワイヤ111,112,113の接触防止や、半導体素子106を水分、湿気、塵から保護等するために、シリコーン系材料で構成されたゲル114が封止されている。そして、金属ベース板101下には、グリースを介して、冷却フィン(図示しない)を接合する。
【0006】
しかし、このような半導体装置100は、半導体素子106の主電極並びに制御電極と、リードフレーム108,109,110とを、多数本の金属ワイヤ111,112,113を用い、ワイヤボンディングにより接続している。
【0007】
従って、ボンディングに要する製造工程を短縮できないという問題があった。
このような問題に対し、近年、金属ワイヤレスの半導体装置200が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図21は金属ワイヤレス構造の半導体装置の模式図である。
図示する半導体装置200は、金属ベース板201、金属ベース板201上に接合された絶縁板202、絶縁板202上にパターニングされた導体パターン203a,203b,203c,203dと、を備え、導体パターン203b上に半田層204bを介して、半導体素子205が接合されている。
【0009】
そのほか、導体パターン203d上には、半田層204dを介してトランス206、コンデンサ207、抵抗208の素子が電気的に接続されている。また、半導体装置200外に導出させる外部導出端子209が導体パターン203a上に半田層204aを介して電気的に接続されている。
【0010】
ここで、半導体素子205は、チップの両面に電極を有する構造であって、その裏面電極が導体パターン203b上に半田層204bを介し接続されている。
また、夫々のチップ素子、外部導出端子209上に位置するプリント基板210には、スルーホール210a、パターニングされた導体パターン211が設けられている。そして、この半導体装置200においては、導電性ポスト212aが半導体素子205の上面電極に半田層204eを介して接合されている。さらに、別の導電性ポスト212bが所定の位置に配置された導体パターン211に接合されている。
【0011】
また、プリント基板210に配設させた導体パターン213上には、制御IC214が実装されている。そして、プリント基板210の制御IC214が実装されている面を、半導体素子205等が搭載された絶縁板202の主面に対向するように配置させている。
【0012】
また、導電性ポスト212a,212bについては、プリント基板210のスルーホール210aに貫通させて接続している。特に、導電性ポスト212bは、半田層204cを介し、導体パターン203cに接合されている。従って、半導体素子205の上面電極並びに導体パターン203cは、金属ワイヤに依らず、導電性ポスト212a,212bを介してプリント基板210上に電気的に引き出される。なお、プリント基板210と絶縁板202との間には樹脂220が充填されている。
【0013】
このように、半導体装置200では、金属ワイヤを用いない構造としている。また、金属ベース板201とプリント基板210とを樹脂封止により、一体化させた構造とし、それらの間にチップ素子等を配置した構造としている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。最初に、本実施の形態における半導体装置の構造について説明する。
図1は半導体装置の構造を説明する要部模式図である。ここで、図(A)は、半導体装置の要部上面図であり、図(B)は、半導体装置の要部断面図である。また、図(B)においては、図(A)のA−Bの位置における断面図が示されている。
【0025】
図示する半導体装置1は、絶縁基板10と、絶縁基板10に対向させたプリント基板30とがアンダーフィル材40の封止により、一体的になった構造をなし、絶縁基板10上に、複数の半導体素子20,21が実装されている。さらに、この半導体装置1は、樹脂ケースによりパッケージングされ(不図示)、例えば、汎用IGBTモジュールとして機能する。
【0026】
絶縁基板10は、絶縁板10aと、絶縁板10aの下面にDCB(Direct Copper Bonding)法で形成された金属箔10bと、絶縁板10aの上面に同じくDCB法で形成された、複数の金属箔10c,10dを備えている。これらの金属箔10c,10dは、絶縁板10aの上面に選択的にパターン形成されている。
【0027】
さらに、金属箔10c,10d上には、錫(Sn)−銀(Ag)系の鉛フリーの半田層11を介して、少なくとも一つの半導体素子20の主電極側(例えば、コレクタ電極)、または、半導体素子21のカソード側が接合されている。
【0028】
ここで、半導体素子20は、例えば、IGBT素子、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の縦型のパワー半導体素子が該当する。また、半導体素子21は、例えば、FWD(Free Wheeling Diode)素子等のパワーダイオード素子が該当する。
【0029】
なお、絶縁板10aは、例えば、アルミナ(Al
2O
3)焼結体、窒化シリコン(SiN)等のセラミックで構成され、金属箔10b,10c,10dは、銅(Cu)を主成分とする金属で構成されている。
【0030】
また、絶縁板10aの厚みは、0.3〜0.7mmであり、金属箔10b,10c,10dの厚みは、例えば、0.2〜0.6mmである。
また、半導体装置1においては、半導体素子20,21の上方に、インプラントプリント基板(以下、プリント基板)30が絶縁基板10と対向するように配置されている。
【0031】
このプリント基板30は、多層構造をなし、例えば、樹脂層30aを中心部に配置し、その上面に、少なくとも一つの金属箔30bが選択的にパターン形成されている。また、その下面においても、少なくとも一つの金属箔30cが選択的にパターン形成されている。
【0032】
ここで、樹脂層30aの材質は、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等である。また、必要に応じて、ガラス繊維で構成されたガラスクロスを樹脂層30a内部に含浸させてもよい。また、金属箔30b,30cは、例えば、銅を主たる成分により構成されている。
【0033】
また、プリント基板30の剛性については、所定の剛性を備えた硬いタイプのものでもよく、プリント基板30全体が歪曲可能になるフレキシブルなものであってもよい。
また、プリント基板30の最表面には、樹脂製の保護層31が形成されている。なお、図(A)では、金属箔30bのパターン形状を明確に説明するために、保護層31を、図示していない。
【0034】
また、半導体装置1においては、半導体素子20の主電極(例えば、エミッタ電極)が位置する領域直上のプリント基板30に、およそ線対称となるように、複数のスルーホール30dが設けられている。そして、このスルーホール30d内に、薄厚の筒状めっき層(図示しない)が設けられ、スルーホール30d内に、円筒状のポスト電極30eが筒状めっき層を介し、注入(インプラント)されている。
【0035】
また、各々のポスト電極30eは、スルーホール30d内で半田付けされ、プリント基板30の主面に配設された金属箔30b,30cと導通された状態にある。プリント基板の両面に金属箔を配設する場合には、このように筒状めっき層を介してポスト電極を注入し、半田付けしておくことで、良好な電気的接続と機械的強度を確保することができる。なお、後述する第2の変形例のように、プリント基板の片面に比較的肉厚の金属箔を形成しポスト電極を注入する場合は、筒状めっき層や半田付けを省略してもよい。
【0036】
ここで、ポスト電極30eの配置においては、例えば、半導体素子20のエミッタ電極の領域直上には、5個を組としたポスト電極30eが列を構成し、それらが線対称となるように、2列に配置されている。そして、このようなポスト電極30eのピッチは、均一に構成されている。また、夫々のポスト電極30eの下端は、半導体素子20のエミッタ電極に、半田層12を介して電気的に接続されている。
【0037】
また、半導体素子21のアノード側領域直上には、4個を組としたポスト電極30eが列を構成し、それらが線対称となるように、2列に配置されている。そして、このようなポスト電極30eのピッチは、均一に構成されている。また、夫々のポスト電極30eの下端が半導体素子21のアノード側に、半田層を介して電気的に接続されている。
【0038】
これにより、半導体装置1においては、半導体素子20のエミッタ電極と、半導体素子21のアノード側との電気的な接続が、ポスト電極30e並びに金属箔30bを経由して確保されている。
【0039】
なお、半導体素子20のコレクタ電極と、半導体素子21のカソード側との電気的な接続については、金属箔10c,10dを経由して確保されている。
また、ポスト電極30eの材質は、例えば、銅、アルミニウム(Al)、錫−銀系の鉛フリーの半田材、または、これらの金属からなる合金を主たる成分で構成されている。また、各々のポスト電極30eの長さは、均一である。
【0040】
また、上記の例では、半導体素子20のエミッタ電極に接合させたポスト電極30eの個数を10個に限定して例示したが、1個の半導体素子20に接合させるポスト電極30eは、この数に限るものではない。例えば、ポスト電極30eの径を0.3〜0.6mmとした場合、1個のポスト電極30eに、8〜20Aの電流が通電可能である。従って、この電流値から半導体素子20の容量に応じて、半導体素子20に接合させるポスト電極30eの本数を割り出し、その数において配置すればよい。
【0041】
このような複数のポスト電極30eの配置により、例えば、半導体素子20においては、主電極間に大電流を通電させても、当該大電流が夫々のポスト電極30eを経由して、主電極に分散・通電することになる。
【0042】
また、プリント基板30においては、半導体素子20のエミッタ電極領域外の上方に、別途、スルーホール30fが設けられ、当該スルーホール30f内にも、円筒状のポスト電極30gが注入・接合されている。そして、このポスト電極30gは、半導体素子20の制御電極(例えば、ゲート電極)に、半田層を介して、電気的に接続されている。
【0043】
このように、半導体素子20の主面に配置された主電極または制御電極、半導体素子21のアノード側がポスト電極30e,30gに接合されている。
なお、上述したポスト電極30e,30gの構造については、棒状とは限らす、その内部を中空にさせたパイプ状にしてもよい。
【0044】
さらに、半導体装置1においては、絶縁基板10とプリント基板30の間隙に、アンダーフィル材40を充填している。これにより、半導体装置1は、絶縁基板10とプリント基板30により一体化されている。
【0045】
また、半導体装置1には、半導体素子20,21等を取り囲むように、例えば、PPS(ポリ・フェニレン・サルファイド)製の樹脂ケースが備えられている(図示しない)。この樹脂ケースの内面には、素子、回路等の保護を目的として、例えば、シリコーンを主成分とするゲル、またはエポキシ樹脂で構成された封止材が充填されている(図示しない)。
【0046】
あるいは、樹脂ケース(図示なし)を使用しないで、金属金型(図示なし)を用いて、半導体装置1を取り囲むようにエポキシ樹脂をポッティングあるいはトランスファーモールドして構成しても良い。
【0047】
さらに、
図1においては、特に、図示されていないが、プリント基板30には、外部接続用端子としてのリードフレームが複数個、垂直に貫通し、それらと半導体素子20,21の各電極との電気的な接続が確保されている。
【0048】
また、
図1においては、特に、図示されていないが、絶縁基板10より広面積の金属ベース板を、この半導体装置1の基体としてもよい。例えば、金属箔10bの下に半田層を介して、数ミリ厚の金属ベース板を接合させてもよい。また、半導体素子20,21上に、放熱体として知られるヒートスプレッタを設置してもよい。
【0049】
次に、半導体装置1の細部の構造についての理解を深めるために、
図1よりさらに拡大させた図を用いて、半導体装置1の構造について説明する。なお、以下の図では、
図1と同一の部材には、同一の符号を付し、その説明の詳細については省略する。
【0050】
図2は半導体装置の構造を説明する要部断面模式図である。この図では、半導体装置1に配設したポスト電極30eと、ポスト電極30eに接合された半導体素子20の周辺の拡大図が主に示されている。
【0051】
上述したように、半導体装置1は、金属箔10d上に、半田層11を介して半導体素子20の主電極(コレクタ電極)が接合されている。
また、半導体素子20の上方には、プリント基板30が配置され、プリント基板30内に、複数のスルーホール30dが形成されている。そして、スルーホール30dの内壁には、例えば、銅で構成された筒状めっき層30hが配置されている。
【0052】
また、プリント基板30の上下の主面には、パターン形成された金属箔30b,30cが配設される。これらの金属箔30b,30cは、筒状めっき層30hで覆われ、筒状めっき層と電気的に接続されている。
【0053】
また、上述したポスト電極30eは、筒状めっき層30h内部の中途まで注入され、半田層30iによって、筒状めっき層30hに固設されている。これにより、ポスト電極30eと、金属箔30b,30cとの電気的接続並びに接合部における機械的強度が確保される。
【0054】
また、複数配置されたポスト電極30eの下端は、半導体素子20のもう一つの主電極(エミッタ電極)に、半田層12を介して電気的に接続されている。これにより、例えば、半導体素子20の制御電極がオン状態で、半導体素子20のエミッタ−コレクタ電極間が通電状態になると、金属箔30b,30cと金属箔10d間に、夫々のポスト電極30eを介して大電流が通電する。
【0055】
なお、半田層12の側面は、フィレット構造を形成し、ポスト電極30eの下端と、半導体素子20の主電極との接合を強固なものにしている。
さらに、半導体装置1においては、プリント基板30と絶縁基板10との間隙に、アンダーフィル材40が充填されている。このアンダーフィル材40は、例えば、エポキシ系樹脂、シアネート系樹脂、シリコン系樹脂のいずれかを主たる成分とし、無機材料で構成されるフィラー材を含有している。フィラー材としては、例えば、窒化ボロン(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン等の高熱伝導率を備えた無機材料を用いる。
【0056】
このような半導体装置1の構成によれば、金属ワイヤを必要としない。従って、半導体装置1の外部接続用端子から半導体素子20,21の主電極またはアノード側にまで連通する通電路のL成分が大きく低減する。
【0057】
また、半導体装置1を作動させたときに、半導体素子20による発熱と冷却により、半導体素子20近傍の温度の昇温・降温が繰り返されるが、このような状況下においても、半導体素子20の主電極とポスト電極30eとを接合する半田層12に過剰な応力が印加されることがない。
【0058】
例えば、半導体素子20近傍においては、ポスト電極30eの形状が細長く、半導体素子20の主電極とポスト電極30eとの接合面積を小さくしている。このため、ポスト電極30e自体の線膨張が増加し、温度の高低が繰り返されても、ポスト電極30eが横方向(長さ方向に垂直な方向)に大きく熱膨張・伸縮することがない。従って、半導体装置1の動作時において、過剰な応力が半田層12に印加されることがない。
【0059】
さらに、このようなポスト電極30eを半導体素子20の主電極に、複数本に分けて接合させているので、応力が半田層12に印加されたとしても、夫々のポスト電極30e下で均等に分散される。従って、夫々の半田層12に印加される応力は、分散され、極力低減する。
【0060】
また、半導体装置1の動作時において、昇温・降温により、プリント基板30または半導体素子20,21が歪曲・変形しても、ポスト電極30eが細長い形状を有していることから、プリント基板30または半導体素子20,21の変形に応じて、ポスト電極30e自体が撓む(変形)ことができる。その結果、夫々の半田層12に印加される応力が大きく減少する。
【0061】
また、このように、ポスト電極30eを複数本、半導体素子20,21の主電極またはアノード側上に分散配置しているので、放熱性が格段に向上する。
例えば、半導体素子20においては、大電流がエミッタ電極から複数のポスト電極30eにより分散されて流入するので、半導体素子20内に局部的な温度上昇が生じることがない。また、半導体素子20が発熱しても、当該熱は、夫々のポスト電極30eを伝導し、プリント基板30に分散・放熱される。
【0062】
また、ポスト電極30eと、半導体素子20,21の主電極またはアノード側との接合面積が小さい故、半田層12内にボイドが残存することもない。導電性ポストと半導体素子の接合部の面積が大きいと、半田材内に存在する空孔がリフロー時に当該半田材内に残存し、半田層内にボイドが形成する場合がある。
【0063】
しかし、半導体装置1では、ポスト電極30eと半導体素子20,21の主電極、アノード側との接合面積を小さくしている。従って、半田材内に存在する空孔がリフロー時において、半導体素子20,21とポスト電極30eとの間隙から逃げ易くなり、半田層12内に、ボイドが残存することがない。その結果、半導体素子20,21の主電極、アノード側とポスト電極30eとの間隙に半田層12が密に充填されるので、半田層12の接触不良等が発生することがない。
【0064】
さらに、半導体装置1を高い動作周波数において作動させると、半導体素子20,21の主電極またはアノード側に接合させた電極表面に表皮効果が発生する場合がある。しかし、半導体装置1は、棒状またはパイプ状のポスト電極30eを複数本、半導体素子20,21のエミッタ電極、アノード側上に分散配置し、その全表面積を大きくしている。
【0065】
従って、表皮効果が発生しても、当該大電流が複数のポスト電極30eの表面を介し、エミッタ電極から分散されて流入する。
その結果、高い動作周波数においても、半導体素子20内に局部的な温度上昇が生じず、放熱性が大きく向上する。
【0066】
なお、半導体素子20,21の主電極、アノード側と、ポスト電極30eとの接合については、上述した半田接合のほか、超音波接合や圧接等の直接接合により、接合させた構造であってもよい(図示しない)。これにより、半導体素子20,21の主電極またはアノード側と、ポスト電極30eとがより強固に接合する。
【0067】
さらに、半導体装置1は、プリント基板30と絶縁基板10との間隙がアンダーフィル材40で封止され、絶縁基板10とプリント基板30とが一体となった構造をなしている。これにより、半導体装置1全体の機械的強度が確保される。
【0068】
また、アンダーフィル材40内に、高熱伝導率を備えたフィラー材を含有させているので、絶縁基板10上に、高パワーの半導体素子20を搭載しても、半導体素子20からの発熱が充分に放熱され得る。
【0069】
以上の結果から、半導体装置1の信頼性は高く、良好な動作特性を有する。また、半導体装置1のパワーサイクル耐量がより向上する。
次に、半導体素子20,21の上方に配置したプリント基板30の全体構造について、詳細に説明する。
【0070】
図3はプリント基板の全体構造を説明する要部図である。ここで、図(A)は、プリント基板の要部裏面図である。即ち、図(A)では、
図1に示す絶縁基板10側から眺めたプリント基板の主面が示されている。また、図(B)は、プリント基板の要部断面図であり、図(A)のA−Bの位置における断面図が示されている。
【0071】
図示するプリント基板30は、一例として、インバータ回路を構成する6組のIGBTとFWDの並列接続回路を1パッケージに格納する半導体装置(6in1構造)に対応した構造のものが示されている。
【0072】
上述したように、プリント基板30を構成する樹脂層30aのいずれかの主面には、複数の金属箔30c,30jがパターン形成されている。さらに、樹脂層30a並びに金属箔30c,30j上には、保護層31が形成されている。なお、図(A)では、金属箔30c,30jのパターン形状を明確に示すために、プリント基板30の最表面に形成させた保護層31は図示していない。
【0073】
このような金属箔30c,30jは、その一部が半導体素子20のエミッタ電極並びに半導体素子21のアノード側の領域上に位置するように配設されている。そして、当該分に、ポスト電極30eを複数配置する。
【0074】
例えば、半導体素子20のエミッタ電極並びに半導体素子21のアノード側の領域直上に位置する金属箔30c,30j内には、複数のポスト電極30eが線対称となるように配置されている。
【0075】
具体的には、半導体素子20のエミッタ電極領域上の金属箔30c,30jには、5個を組とし、2組のポスト電極30eが線対称に2列になって配置している。従って、半導体素子20のエミッタ電極領域上の金属箔30c,30jには、合計10個のポスト電極30eが配置されている。
【0076】
また、半導体素子21のアノード側領域上の金属箔30c,30jには、4個を組とし、2組のポスト電極が線対称に2列になって配置している。従って、半導体素子21のアノード側領域上の金属箔30c,30jには、合計8個のポスト電極30eが配置されている。
【0077】
なお、同じ列内に配置されたポスト電極30eのピッチは、均一である。
また、上記の例では、ポスト電極30eの配置数について、特定の数値を例示したが、半導体素子20,21それぞれ1個あたりに接合されるポスト電極30eの個数は、上述の如く、この数に限定されるものではない。
【0078】
さらに、プリント基板30には、上記の金属箔30c,30jのほか、線幅の狭い金属箔30k,30lがパターン形成され、その一部が半導体素子20の制御電極(例えば、ゲート電極)の領域上に位置するように配設されている。また、半導体素子20の制御電極の領域上に位置する金属箔30k,30l内には、ポスト電極30gが配置されている。
【0079】
また、この図に示すように、半導体素子20,21搭載領域直上以外のプリント基板30の広い領域に、金属箔30jから、金属箔30ja,30jb,30jcを延出させている。上述したように、金属箔30jは、半導体素子20,21のエミッタ電極またはアノード側に導通している。
【0080】
プリント基板30内に、このような金属箔30ja,30jb,30jcが存在すると、電磁シールドが促進され、半導体装置1の動作時におけるノイズ(例えば、半導体素子20のスイッチングにより発せられる放射ノイズ等)を低減させることができる。即ち、金属箔30ja,30jb,30jcは、電磁シールド用金属箔として機能する。
【0081】
例えば、金属箔30ja,30jb,30jcの部分が存在しないプリント基板に比べ、金属箔30ja,30jb,30jcをパターン形成させたプリント基板30を半導体装置1に搭載した場合、当該放射ノイズが所定の周波数帯域内で5dB低減している。
【0082】
なお、金属箔30ja,30jb,30jcについては、プリント基板30の裏面だけではなく、主面側に選択的に配置させてもよい。
また、金属箔30c,30ja,30jb,30jc,30k,30lを形成させた領域以外においては、複数の貫通孔32が形成されている。これらの貫通孔32は、
図2に示すアンダーフィル材40を、絶縁基板10とプリント基板30の間隙に流入させるための注入口である。このような注入口をプリント基板30に複数個設けることにより、プリント基板30と絶縁基板10との間隙に、ペースト状のアンダーフィル材を円滑に流入させることができる。これにより、当該間隙に、流入させたアンダーフィル材を硬化させた後、アンダーフィル材40の内部にボイド等が残存することなく、アンダーフィル材40を絶縁基板10とプリント基板30との間隙に密に充填させることができる。
【0083】
次に、プリント基板の上面側の構造について説明する。
図4はプリント基板の表面側の構造を説明する要部図である。また、この図では、金属箔30b,30mのパターン形状を明確に示すために、プリント基板30の最表面に形成させた保護層31は図示していない。
【0084】
プリント基板30の上面側の構造は、
図3に示したプリント基板30の裏面側の構造に対応するように、金属箔30b,30m、貫通孔32が配置されている。
また、ポスト電極30eを注入している、夫々のスルーホール30d内には、半田層30iが埋設されている。
【0085】
ここで、このプリント基板30においては、図示するように、金属箔30b,30m以外の領域に、IC回路部33、コンデンサ部34、抵抗部35を設けている。
このようなIC回路部33、コンデンサ部34、抵抗部35をプリント基板30の主面に配置することにより、半導体装置1内に、温度センサー回路や過電圧・過電流保護回路等が組み込まれた、小型・薄型サイズのインテリジェントパワーモジュールが実現する。
【0086】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。ここで、半導体装置1は、2つの製造方法により作製される。
最初に、第1の製造方法について説明する。
【0087】
<第1の製造方法>
図5は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
先ず、この図に示すように、半導体装置1の基体となる絶縁基板10を準備する。具体的には、絶縁板10aの下面側には、金属箔10bをDCB法により接合し、絶縁板10aの上面側には、パターニングされた、少なくとも一つの金属箔10c,10d,10eをDCB法により接合させておく。なお、金属箔10cが複数ある場合、絶縁基板10の上方から見た、それらのパターンは同じである。金属箔10d、10eについても同様である。そして、金属箔10cと金属箔10dのいずれかと金属箔10eとは導通している。
【0088】
続いて、金属箔10c,10d,10e上に、ペースト状の半田材11aを選択的に印刷する。なお、半田材11aの材質は、例えば、錫−銀系の鉛フリーで構成されている。また、半田材11aにおいては、ペースト状ではなく、シート状のものを金属箔10c,10d上に載置してもよい。
【0089】
図6は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、半導体素子20の裏面電極(例えば、コレクタ電極)側が半田材11aと接触するように、半田材11a上に、半導体素子20を載置する。そして、半導体素子20の上面側に配設された主電極(例えば、エミッタ電極)上にペースト状の半田材12aを選択的に印刷する。また、制御電極(例えば、ゲート電極)上にも、ペースト状の半田材12aを選択的に印刷する(不図示)。なお、半田材12aの材質は、例えば、錫−銀系の鉛フリーで構成されている。また、半田材12aにおいては、ペースト状ではなく、シート状のものを半導体素子20上に載置してもよい。
【0090】
図7は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、半導体素子20等を搭載した絶縁基板10をカーボン製の下冶具50内に載置する。そして、上述したプリント基板30を、絶縁基板10に対向するように配置させる。
【0091】
具体的には、プリント基板30のポスト電極30eが突出している主面を絶縁基板10に対向させ、ポスト電極30eの下端が半田材12aを介して、半導体素子20の主電極または制御電極(不図示)と接触するように配置する。
【0092】
また、プリント基板30には、外部接続用端子用のリードフレームを貫通させるための貫通孔36が所定の位置に、少なくとも一つ設けられている。また、貫通孔36近傍の樹脂層30aには、金属箔37が配設されている。そして、この貫通孔36の上端縁にも、ペースト状の半田材13aを選択的に配置しておく。なお、半田材13aの材質は、例えば、錫−銀系の鉛フリー半田で構成されている。また、半田材13aにおいては、ペースト状ではなく、シート状のものを当該上端縁に載置してもよい。
【0093】
ここで、絶縁基板10並びにプリント基板30の外周端は、下冶具50により固定されている。従って、絶縁基板10並びにプリント基板30の下冶具50への載置により、複数のポスト電極30eの下端の位置は固定される。
【0094】
なお、プリント基板30を絶縁基板10に対向させ、プリント基板30を絶縁基板10上に配置した後に、下冶具50内に、絶縁基板10並びにプリント基板30を一括して載置してもよい。
【0095】
図8は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、下冶具50に、カーボン製の上冶具51を嵌合させる。そして、外部接続用端子用のリードフレーム60を上冶具51に設けられた貫通孔38に挿入し、さらに、リードフレーム60をプリント基板30の貫通孔36を通過させ、リードフレーム60の一端を金属箔10e上に配置した半田材11a上に接触させる。
【0096】
続いて、上冶具51並びに下冶具50によって挟持された絶縁基板10、プリント基板30等を、上冶具51並びに下冶具50と共に、加熱炉内に設置し(図示しない。)、半田材11a,12a,13aを加熱溶融して半田接合を行う。即ち、リフロー処理を行う。
【0097】
図9は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、上冶具51並びに下冶具50から、絶縁基板10、プリント基板30等を取り出す。
【0098】
この状態で、半導体素子20と金属箔10c,10dとの間、ポスト電極30eと半導体素子20の主電極並びに制御電極(不図示)との間、リードフレーム60と金属箔10eとの間には、半田層11,12,13が形成され、それぞれが電気的に接続される。
【0099】
続いて、絶縁基板10とプリント基板30との間隙に、ペースト状のアンダーフィル材を流入する。ペースト状のアンダーフィル材は、貫通孔32から流入させてもよいし、絶縁基板10とプリント基板30の端部の間隙から流入させてもよい。また、貫通孔32から、ペースト状のアンダーフィル材内の気泡を抜くようにしてもよい。続いて、アンダーフィル材を硬化させ、絶縁基板10とプリント基板30との間隙をアンダーフィル材40で封止する。貫通孔32はプリント基板30の金属箔30c等を除く任意の領域に形成されうる。このような貫通孔32の配置はプリント基板の面積を有効活用するものである。
【0100】
また、ポスト電極30eの周辺の狭い空間にアンダーフィル材40が注入されやすいよう、金属箔30c等の領域の、複数のポスト電極30eの間に貫通孔を設けてもよい。また、アンダーフィル材40を注入した後、絶縁基板10等を減圧下に置くことでポスト電極30e周辺の狭い部分にもアンダーフィル材を隙間無く、注入することができる。
【0101】
さらに、この後においては、アンダーフィル材40によって、一体となった絶縁基板10とプリント基板30とを樹脂ケースによりパッケージングする。
図10は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
【0102】
例えば、PPS製の樹脂ケース70内に、アンダーフィル材40によって、一体となった絶縁基板10とプリント基板30とを収容し、この樹脂ケース70の内面に、例えば、シリコーンを主成分とするゲル、またはエポキシ樹脂で構成された封止材41を充填・固化させる。
【0103】
これにより、当該樹脂ケース70によって、絶縁基板10、半導体素子20,21並びにプリント基板30等がパッケージングされた半導体モジュール2が完成する。
このような製造方法によれば、半田材11a,12a,13aのリフロー処理が1回行われ、半導体素子20と金属箔10c,10d、ポスト電極30eと半導体素子20の主電極並びに制御電極(図示しない。)、リードフレーム60の一端と金属箔10eが、半田層11,12,13を介して接合される。従って、半導体装置の製造工程の短縮化を大きく図ることができる。
【0104】
特に、本実施の形態の製造方法では、
図8に示すように、プリント基板30並びに絶縁基板10の外周端を下冶具50により固定し、半導体素子20の主電極並びに制御電極上に位置させるポスト電極30eを固定しながら、半田材11a,12a,13aのリフローを行っている。
【0105】
このとき、上述のごとく、半導体素子20の主電極上に位置するポスト電極30eは、列を構成し、線対称となるように複数個配設されている。従って、リフローによって、夫々のポスト電極30e下に位置する半田材12aが溶解しても、夫々のポスト電極30eの位置に均等に、半田材12aが凝集・固化する。その結果、セルフアライメント(自己整合)効果が促進し、半田付け後の半導体素子20の金属箔10c,10dに対する位置ずれが確実に防止される。また、リードフレーム60の金属箔10eに対する位置ずれも確実に防止される。
【0106】
次に、第2の製造方法について説明する。
<第2の製造方法>
図11は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
【0107】
先ず、この図に示すように、下冶具52内の所定の位置に、半導体素子20を載置する。この載置により、下冶具52内に半導体素子20の位置が固定される。
続いて、半導体素子20の上面側に配設された主電極(例えば、エミッタ電極)上にペースト状の半田材12aを選択的に印刷する。また、制御電極(例えば、ゲート電極)上にも、ペースト状の半田材12aを選択的に印刷する(不図示)。
【0108】
続いて、上述したプリント基板30を、半導体素子20に対向するように配置させる。
具体的には、プリント基板30のポスト電極30eが突出している主面を半導体素子20に対向させ、ポスト電極30eの下端が半田材12aを介して、半導体素子20の主電極または制御電極(不図示)と接触するように配置する。
【0109】
これにより、半導体素子20並びにプリント基板30の外周端は、下冶具52により固定される。従って、半導体素子20並びにプリント基板30の下冶具52への載置により、複数のポスト電極30eの下端の位置は固定される。
【0110】
そして、下冶具52によって固定された半導体素子20、プリント基板30を、下冶具52と共に、加熱炉内に設置し(図示しない。)、半田材12aを加熱溶融して半田接合し、リフロー処理を行う。
【0111】
図12は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
この図では、リフロー後、下冶具52から取り出した半導体素子20、プリント基板30の状態が示されている。
【0112】
リフローによって、ポスト電極30eと半導体素子20の主電極並びに制御電極(不図示)との間には、半田層12が形成され、電気的に接合される。
図13は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
【0113】
次に、半導体装置1の基体となる絶縁基板10を準備する。具体的には、絶縁板10aの下面側には、金属箔10bをDCB法により接合し、絶縁板10aの上面側には、パターニングされた、少なくとも一つの金属箔10c,10d,10eをDCB法により接合させておく。なお、金属箔10cが複数ある場合、絶縁基板10の上方から見た、それらのパターンは同じである。金属箔10d、10eについても同様である。そして、金属箔10cと金属箔10dのいずれかと金属箔10eとは導通している。
【0114】
続いて、金属箔10c,10d,10e上に、ペースト状の半田材11aを選択的に印刷する。なお、半田材11aの材質は、例えば、錫−銀系の鉛フリーで構成されている。また、半田材11aにおいては、ペースト状ではなく、シート状のものを金属箔10c,10d上に載置してもよい。
【0115】
そして、絶縁基板10を下冶具53内に載置する。
図14は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、下冶具53内に載置した絶縁基板10に対向するように、半導体素子20をポスト電極30eに接合させたプリント基板30を配置させる。このとき、半導体素子20と半田材11aとが接触する。また、下冶具53により、絶縁基板10、半導体素子20をポスト電極30eに接合させたプリント基板30の外周端が固定される。
【0116】
そして、プリント基板30の貫通孔36の上端縁に、半田材13aを塗布する。
図15は半導体装置の製造方法の一工程を説明する要部断面模式図である。
次に、下冶具53に、カーボン製の上冶具54を嵌合させる。そして、外部接続用端子用のリードフレーム60を上冶具54に設けられた貫通孔38に挿入し、さらに、リードフレーム60をプリント基板30の貫通孔36を通過させ、リードフレーム60の一端を金属箔10e上に配置した半田材11a上に接触させる。
【0117】
続いて、上冶具54並びに下冶具53によって挟持された絶縁基板10、プリント基板30等を、上冶具54並びに下冶具53と共に、加熱炉内に設置し(図示しない。)、半田材11a,13aのリフローを行う。
【0118】
そして、この後においては、上冶具54並びに下冶具53から、絶縁基板10、プリント基板30等を取り出し、絶縁基板10とプリント基板30との間隙に、貫通孔32からペースト状のアンダーフィル材を流入し、アンダーフィル材を硬化させ、絶縁基板10とプリント基板30との間隙をアンダーフィル材40で封止する。
【0119】
さらに、この後においては、アンダーフィル材40によって、一体となった絶縁基板10とプリント基板30とを樹脂ケースによりパッケージングする。
そして、PPS製の樹脂ケース70内に、アンダーフィル材40によって、一体となった絶縁基板10とプリント基板30とを収容し、この樹脂ケース70の内面に、例えば、シリコーンを主成分とするゲル、またはエポキシ樹脂で構成された封止材41を充填・固化させる。
【0120】
これにより、
図10に示す半導体モジュール2と同様の構成の半導体モジュールが完成する。
このような製造方法によれば、半田材11a,12a,13aのリフロー処理が2回行われ、半導体素子20と金属箔10c,10d、ポスト電極30eと半導体素子20の主電極並びに制御電極(図示しない。)、リードフレーム60の一端と金属箔10eが、半田層11,12,13を介して接合される。
【0121】
特に、本実施の形態の製造方法では、
図11に示すように、半導体素子20並びにプリント基板30の外周端を下冶具52により固定し、半導体素子20の主電極並びに制御電極上に位置させるポスト電極30eを確実に固定しながら、半田材12aのリフローを行っている。従って、リフローによって、夫々のポスト電極30e下に位置する半田材12aが溶解しても、リフロー時に発生する半導体素子20の金属箔10c,10dに対する位置ずれが発生することはない。
【0122】
また、
図15に示すように、絶縁基板10並びにプリント基板30の外周端を下冶具53並びに上冶具54により固定し、半導体素子20の主電極(コレクタ電極)と金属箔10c,10dとの位置、または、リードフレーム60と金属箔10eとの位置を確実に固定しながら、半田材11a,13aのリフローを行っている。従って、リフロー時に発生する半導体素子20の金属箔10c,10dに対する位置ずれ、リードフレーム60の金属箔10eに対する位置ずれが確実に防止される。
【0123】
なお、ポスト電極30e,30gと半導体素子20の主電極または制御電極、あるいは、ポスト電極30eと半導体素子21のアノード側とを電気的に接続する方法として、半田接合に代えて、金属間の直接接合を用いてもよい。かかる接合の方法は、超音波接合、圧接等の方法である。
【0124】
超音波接合の場合は、例えば、周波数20KHz、荷重40kgf、時間0.3secで、ポスト電極30e,30gを半導体素子20、21上へ接合することができる。このとき、半導体素子20、21の表面電極に形成されているアルミニウム電極膜の厚さは5〜20μmとする。あるいは、超音波接合の場合に、予め、半導体素子20,21のアルミニウム電極膜上に、銅めっきを施してもよい。
【0125】
圧接の場合は、半導体素子20,21の表面電極と、ポスト電極30eとの接合表面の粗さを100nm程度までCMP(化学的機械的研磨)装置で加工し、その後、加工した面を不活性雰囲気内で活性化、清浄させ、10nm以下の粗さ面とする。そして、半導体素子20,21と、ポスト電極30eとの接合面とを重ね合わせ、圧力をかけて両者間に金属結合等を形成する。なお、表面状態によっては、熱処理を施してもよい。
【0126】
これらの方法は半導体素子20の他の主電極と金属箔10c、10dとの接合にも用いることができる。
次に、半導体装置1の構造についての変形例について例示する。
【0127】
<第1の変形例>
図16は半導体装置の構造の変形例を説明する要部断面模式図である。
図示するように、この実施の形態では、半導体素子20の主電極であるエミッタ電極20aの表面粗さを調節し、エミッタ電極20a表面に、このような所定の粗さを形成させることにより、ポスト電極30eとエミッタ電極20a間の距離をより短縮させている。
【0128】
これにより、半田層12の厚さをより薄くさせることができ、半導体素子20とプリント基板30間の熱伝導が向上する。その結果、半導体素子20の放熱性が向上する。
また、半田層12の厚さがより薄くなることから、電気抵抗が低減する。さらに、エミッタ電極20aの表面構造によりアンカー効果が促進し、半田層12とエミッタ電極20aとが強固に接合する。
【0129】
なお、ポスト電極30eの下端においても、このような粗さを形成させてもよい。これにより、半田層12の厚さをさらに薄くさせることができ、半導体素子20とプリント基板30間の熱伝導がより向上する。その結果、半導体素子20の放熱性がより向上する。
【0130】
<第2の変形例>
図17は半導体装置の構造の変形例を説明する要部断面模式図である。
図示するように、この実施の形態では、半導体素子(例えば、IGBT素子、パワーMOSFET素子等)20のエミッタ電極にポスト電極30eを介して導通する平板状の金属箔30baと、半導体素子20のコレクタ電極に、ポスト電極10ca並びに金属箔10cを介して導通する平板状の金属箔30caとが、プリント基板30内において、対向するように配置させている。即ち、金属箔30baの下の位置に、金属箔30caが重複するように、配置させている。そして、金属箔30baに導通するリードフレーム61、金属箔30caに導通するリードフレーム62をプリント基板30に貫入・設置する。
【0131】
このような構造によれば、例えば、リードフレーム61が正極、リードフレーム62が負極とした場合、金属箔30baから放射される磁界と金属箔30caから放射される磁界とが打ち消し合い、寄生インダクタを低減させることができる。これにより、半導体素子20に印加されるサージ電圧が低下し、半導体素子20を安定して作動させることができる。
【0132】
なお、本実施の形態の変形例においては、半導体素子20に代えて、半導体素子(FWD素子)21を用いてもよい。
また、金属箔30baと金属箔30caとの配置については、立体的な撚り型構造としてもよい。その構造を第3の変形例として、
図18に図示する。
【0133】
<第3の変形例>
図18は半導体装置の構造の変形例を説明する要部模式図である。
図示するように、この実施の形態では、金属箔30baと金属箔30caとの配置を立体的な撚り型構造としている。ここで、図(A)においては、金属箔30baと金属箔30caのみの配置が示され、図(B)においては、図(A)のA−B間の位置のプリント基板30の構造が示されている。但し、図(B)においては、金属箔30caの図(A)における断面部分のみが図示されている。
【0134】
例えば、金属箔30baにおいては、樹脂層30aを間に挟み、金属箔30caと互いに交差するように、立体的に配置され、すべての金属箔30baがポスト電極30nを介して、一体的に電気的に連通している。また、詳細な図示はしていないが、金属箔30caにおいても同様の構造を有している。
【0135】
このような構造によれば、金属箔30baと金属箔30caとが撚り型構造をなし、金属箔30baから放射される磁界と金属箔30caから放射される磁界とが打ち消し合い、寄生インダクタを低減させることができる。特に、撚り型構造により、磁界の閉じ込め効果が促進し、効率よく磁界が打ち消し合う。これにより、半導体素子20に印加されるサージ電圧がより低下し、半導体素子20を安定して作動させることができる。
【0136】
また、プリント基板30に配設した金属箔30b,30c,30j,30ja,30jb,30jc,30m,30ba,30caについては、保護層31の剥離を防止するために、アンカーを形成させてもよい。その構造を金属箔30b,30cを例に、第4の変形例として、
図19に図示する。
【0137】
<第4の変形例>
図19は半導体装置の構造の変形例を説明する要部模式図である。ここで、図(A)においては、プリント基板30の要部上面模式図が示され、図(B)においては、プリント基板30の要部断面模式図が示されている。なお、図(A)では、金属箔30bのパターン形状を明確に表すために、保護層31を図示していない。
【0138】
図示するように、この実施の形態では、金属箔30bに複数の孔部30bbを設けている。そして、金属箔30b上に保護層31を形成している。
このような構造によれば、孔部30bb内に保護層31が回り込み、孔部30bbによるアンカー効果により、保護層31の金属箔30bからの剥離を抑制することができる。
【0139】
なお、孔部30bbを上から眺めた形状は、矩形状に限らず、矩形状以外の多角形状、円形状等であってもよい。
また、図には、一例として、金属箔30b表面から樹脂層30aまで貫通する貫通孔を示したが、特に貫通させない構造であってもよい。例えば、断面が凹状の孔部30bbであってもよい。